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第三講　財産分与

Aiko Kobayashi

問題数 31 • 5/16/2025

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財産分与の３要素

夫婦財産の清算（清算的要素）、②離婚後の扶養（扶養的要素）、③損害賠償（慰謝料的要素）

財産分与請求権が発生する時は？

離婚の成立により発生

財産分与の具体的内容はどのように決定されるか？

当事者の協議または裁判所の処分

家庭裁判所に対する財産分与の具体的内容を決定する請求は、いつまでに行わなければならないか？

離婚の時から 5 年以内に行わなければならない

家庭裁判所が財産分与の具体的内容を決定するに当たっての考慮要素

①当事者双方がその婚姻中に取得し、または維持した財産の額、②その取得または維持についての各当事者の寄与の程度、③婚姻の期間、④婚姻中の生活水準、⑤婚姻中の協力および扶助の状況、⑥各当事者の年齢、⑦心身の状況、⑧職業および収入、⑨その他一切の事情を考慮して、分与の是非・額・方法を決定

2分の１ルールとは？

①当事者双方がその婚姻中に取得し、または維持した財産の取得または維持についての各当事者の寄与の程度が原則等しいとする考え方

財産分与の清算的要素の意義は？

婚姻解消時に夫婦財産の実質的平等を実現する意義

清算の対象となる財産は？

(1) 夫婦双方が婚姻中に取得・維持した財産（２）過去の婚姻費用

清算の対象とならない財産は？

特有財産夫婦の一方が婚姻前から有していた財産および相続や贈与によって無償取得した財産は、それらの維持に他方の寄与があった場合を除き、清算の対象とならない。

扶養的要素の意義

離婚後に経済的に自立することが困難な元配偶者に対して、その生計を維持するため

扶養的財産分与が認められるための要件２つ

①請求者の要扶養性 ②相手方の扶養能力

扶養的財産分与の補充性とは？

清算および慰謝料の要素によって生計の維持に必要な財産を取得することができない場合にのみ、この要素が考慮されること

扶養的要素の根拠通説は？

扶養義務説婚姻が終生の生活の安定と向上を図る経済的共同体でもあることから導かれる婚姻の事後的効果（余後効）、あるいは、国家による社会保障の代替として、離婚後の扶養義務を正当化

後効）、あるいは、国家による社会保障の代替として、離婚後の扶養義務を正当化とは？

婚姻中の性別的役割分担により所得能力が減少した当事者は、その補償として財産分与を求めることができるとする考え方

夫婦の一方の有責行為より離婚に至った場合、他方が請求しうる慰謝料の種類２つ

(1) 離婚慰謝料 (2) 離婚原因慰謝料

離婚慰謝料とは？

離婚自体による精神的苦痛に対する慰謝料

離婚原因慰謝料とは？

暴力・不貞行為・悪意の遺棄など、離婚原因となった相手方の個別の不法行為に対して認められる慰謝料

離婚慰謝料は、不法行為による損害賠償の性質を有するところ、これを財産分与に含めて処理することはできるか。また逆に、財産分与がされた後に、別途離婚慰謝料を請求することは可能か。

財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によって離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがって、すでに財産分与がなされたからといって、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられない。もっとも、裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額および方法を定めるについては、当事者双方におけるいっさいの事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であって、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被った精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることもできると解すべき

【設例 7】X と Y は婚姻し、3 人の子を儲け、甲建物に居住していた。ところが、X が勤務先の A と不貞関係となったことから、Y は、離婚を決意し、その旨を X に申し入れた。X は、この申入れを受け入れ、さらに Y の意向に沿って、 X の特有財産であった甲とその敷地乙および乙上の丙建物全部を、財産分与として Y に譲渡することを約した。この財産分与契約に基づき、 Y は、各不動産につき所有権移転登記を経由した。財産分与契約を締結する際、 X は、財産分与を受ける Y に課税されることを心配してこれを気遣う発言をしており、また、Y も、自己に課税されるものと理解していた。ところが、離婚後、X は、上司の指摘によって自己に課税されることを知り、その額は 2 億円を超えることが判明した。そこで、X は、財産分与契約の錯誤取消しを主張して、Y に対し甲につき所有権移転登記の抹消登記手続を求めて提訴した（最判平成元・9・14 家月 41‐11‐75 をもとにした事案）。 Xの請求は認められるか？

財産分与として不動産を譲渡した場合には、学説上は批判があるものの、分与者の側に譲渡所得税（資産の値上がりによって所有者に帰属する増加益を、所有権移転の機会に所得として清算させる税）が課される。このことを知らず、分与を受ける側に課税されるものと信じて財産分与契約を締結した事案につき、錯誤の主張（当時は錯誤無効）が認められた例がある

選択的共同親権制への移行理由３つ

(1) 親の責任としての親権親権は、親の子に対する権利というよりも、責任である。そう考えると、離婚後においても、父母が共同して子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましい。 (2) 子の利益子の利益の観点からも、父母が責任をもって養育に当たること、また、子の養育の多様なあり方を法に反映させることが望ましい。 (3) 家庭内暴力・虐待への対応離婚後共同親権に対しては、DV や虐待の原因になりうるなどの懸念が示されてきた

協議離婚の場合の親権者の定め方

① まずは父母の協議で、その双方または一方を親権者と定める（819 条 1 項）。 ② 協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に対し協議に代わる審判を申し立てることができる（同条 5 項、家事別表第二 8 項）。

裁判離婚の場合の親権者の定め方

裁判所が、父母の双方または一方を親権者と定める（819 条 2 項）。

子の出生前に離婚した場合の親権者の定め方

① 第一次的には、母が親権者となる（819 条 3 項本文）。 ② 子の出生後に、父母の協議で、父母の双方または父を親権者と定めることができる（同項ただし書）

親権者を変更できるのは、どのような時で誰の請求でできるか？

子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子またはその親族の請求により、親権者を変更することができる（819 条 6 項

親権者の指定・変更にかかる裁判において裁判所が考慮すべき事情は？

子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮

親権者の指定・変更にかかる裁判において裁判所の判断基準は？

父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定める

父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定める場合２つ

① 父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき（同項 1 号）。 ② 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき（同項 2 号）。

協議により定められた親権者を変更する場合の考慮事情

当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮

監護者とは？

親権の内容のうち子の身上監護を行う者

監護者の権限３つ

①子の監護・教育（820・821 条）、②居所の指定・変更（822 条）、③職業の許可・その取消し・制限（823 条）について、親権者と同一の権利義務を有し、これらを単独で行うことができる（824条の 3 第 1 項）。

事実上子を監護してきた第三者が監護者指定の審判を申し立てることは、認められるか？

認められない

第三講 財産分与

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