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第6回国家 ④ 国家免除（主権免除）

Aiko Kobayashi

問題数 27 • 6/17/2025

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問題一覧

免除とは？

ある対象について国家管轄権が及ばないこと

なぜ国家は外国の管轄権から免除されるのか？

主権平等原則

国家免除について定めている条約は？

国連国家免除条約

絶対免除主義とは？

国家やその元首などに対して、外国の裁判権が一切及ばないとする

約束手形金請求為替訴訟事件（大審院判決・1928年）とはどのような事件か？

概要（事案の背景）原告：日本人商人被告：中華民国政府原告は、中華民国政府が発行した約束手形に基づいて、手形金の支払いを日本の裁判所に請求。法的争点：外国国家（中華民国）に対して、日本の裁判所が裁判管轄権を持ちうるか？判決：外国国家に対しては、たとえ**私法的取引（約束手形の発行）**であっても、裁判権を及ぼすことはできない（＝国家免除が妨げになる）日本がかつて絶対免除主義を採っていたことを示す代表的な判例。

制限免除主義とは？

国家が外国で訴えられた場合でも、「主権的行為（公的行為）に対しては免除されるが、「業務管理行為（商人として行う行為）に対しては免除されない」

テイト書簡（Tate Letter, 1952）の内容は？

国と商業取引を行う私人は、裁判所で救済を得られるようにしなければならない

Philippine Admiral号事件とはどのような事件か？

事件の舞台：マレーシア領海内の港当事者：被告：フィリピン政府が所有する貨物船「Philippine Admiral」号原告：船の修理等の民間業者原告は、修理費などの債務不履行に基づき、この船に対してアドミラルティ裁判所（海事裁判所）での差押え手続きを求めた。 ▶ 外国国家が商業的目的で運航する船舶に対し、他国（ここではイギリス）の裁判所が差押え・裁判権を行使できるか？ ←国家免除は認められない（商業目的のために運航されていたため）

横田基地夜間飛行差し止め訴訟（最高裁判決・2002年4月12日）の意義は？

場所：東京都西部の横田基地（在日米軍基地）原告：周辺住民被告：日本国（国）請求内容： ▶ 横田基地における米軍機の夜間飛行によって発生する騒音により、原告らの人格権が侵害されているとして、 ① 損害賠償請求 ② 夜間飛行の差止めを求めた →外国国家の主権的行為については、民事裁判権が免除される

パキスタン貸金請求事件とは？

パキスタンがパソコンの代金を払わなかった事件外国国家は主権的行為について法廷地国の民事裁判権に服することを免除される旨の国際慣習法の存在については、これを引き続き肯認することができるものの〔…〕外国国家は私法的ないし業務管理的な行為についても法廷地国の民事裁判権から免除される旨の国際慣習法はもはや存在しない外国国家が商取引に関与した場合、日本の裁判所において裁判権免除を主張できないとする『制限免除主義』を明確に採用した画期的な判例

裁判権免除が例外となるときは？４つ

（1）免除の放棄（2）商業的取引（3）法廷地での不法行為（4）重大人権侵害

免除の放棄の仕方２つ

書面による明示的放棄外国政府自ら訴訟を提起・応訴（ただし、免除援用のための出廷は免除を放棄したことにはならない）

商業的取引の判断基準に関する学説２つは？

行為性質説、行為目的説

例1　A国の外務省がB国OA用品企業からオフィス用デスクを購入例2　A国の軍隊が（i）B国軍事会社から戦闘機を購入／（ii）B国アパレル会社から制服を購入行為性質説をとると、例１、２に免除は及ぶか？

例１は免除されないが、例２には免除が及ぶ

例1　A国の外務省がB国OA用品企業からオフィス用デスクを購入例2　A国の軍隊が（i）B国軍事会社から戦闘機を購入／（ii）B国アパレル会社から制服を購入行為目的説を取ると、例１、２には免除が及ぶか？

主権的行為とみなされ両方とも免除が及ぶ

行為性質説と行為目的説、どちらが主権的行為とみなされる範囲が広くなるか？

行為目的説

先進国と途上国は、行為目的説と行為性質説、どちらの説をとる傾向にあるか？

先進国：行為性質説途上国：行為目的説（免除の範囲が広い方がいい）

国連国家免除条約はどのように商業的取引であるか否かを決定しているか？

① その契約又は取引の性質を主として考慮（第一に行為性質説をとっている）すべきただし、契約若しくは取引の当事者間でその契約若しくは取引の目的も考慮すべきことについて合意した場合又は法廷地国の慣行により契約若しくは取引の目的がその契約若しくは取引の非商業的な性質を決定することに関係を有する場合 ②当該契約又は取引の目的も考慮（行為目的説）すべき

行為性質説に立つ判例は？

パキスタン賃金請求事件

アルゼンチン対 Weltover事件どのような事件か？

アルゼンチン政府は、1980年代に**国際債券（Bonods）**を発行（＝国家債務）原告の**Weltover社（パナマ法人）**などはこの債券を購入アルゼンチンは財政危機により、債券の償還を一方的に延期債権者は、これに反発して米国の裁判所で損害賠償請求訴訟を提起 → アルゼンチンは「これは**国家の主権的行為（公的政策）**であり、主権免除が適用される」と主張法的争点アルゼンチンによる国債償還延期は、商業的活動（commercial activity）に該当するか？米連邦最高裁の判断（結論）行為性質説を取り、アルゼンチンの行為は「商業的活動」にあたる（免除なし）

軍事機密の詰まった、F-35の取引は商業的取引にあたるか？

あたらない根本的に主権的な性質を持った行為であるため、国家免除が及ぶ

ディストモ村事件

📍 ギリシャ中部・ディストモ村（Distomo） 📅 1944年6月10日、ナチス・ドイツの親衛隊（SS部隊）が村民218人を殺害（女子供を含む）ギリシャ最高裁は： ▶ ドイツの主権免除を否定！ ▶「戦争犯罪など重大な人権侵害行為については、民事責任についても国家免除は適用されない」

リドリキ村事件（特別最高裁、2002年）

この事件は、**ギリシャ中部・リドリキ村（Leontari、別称：Lidoriki）**において、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ軍が行った住民虐殺行為に関連しています。被害者遺族であるギリシャ人らが、日本国内にあるドイツ資産（債権）を差し押さえることによって損害賠償を得ようとした事件です。ドイツは、「自国は**外国国家としての主権免除（sovereign immunity）**を有する」と主張。戦争犯罪等に基づく損害賠償請求においても、国家免除は適用されるか？特別最高裁の判断（2002年） ▶ 国家免除を認め、ギリシャ人原告の請求を退けた。国家免除原則は、他国の主権の尊重と国際礼譲に基づくものであり、日本もこの慣行を採用してきた。

フェリーニ事件（破棄院、2004年）（イタリアの兵士をナチスドイツが連れ去る）免除は認められたか？

認められない

裁判権免除事件（独対伊、ICJ、2012年 ⇒資料第二次世界大戦中、ドイツ軍はイタリア人を強制労働などに従事させる等の戦争犯罪を行った。戦後、イタリアの国内裁判所では、個人被害者がドイツに対し損害賠償請求訴訟を提起。イタリア裁判所はドイツの主権免除を否定して審理・判決を下す（違法とされる行為への例外を認めた）。ドイツはこれを「国家主権免除の侵害」として、イタリアをICJに提訴。 ①法廷地不法行為例外は武力紛争中の外国軍隊の行為にも適用されるか？ ②重大人権侵害を免除対象外とする慣習国際法は成立しているか？ ③強行規範（戦争犯罪の禁止）は国家免除原則に優越するか

①適用されない国家実行から支持される命題は、主権的行為に関する国家免除は、たとえ当該行為が法廷地の領域で行われたとしても、軍隊および他の国家機関が武力紛争遂行中に行った、死亡、傷害または財産の損害を生じさせる行為に関する民事訴訟にも依然として及ぶ国家は、武力紛争遂行の過程で、他国の領域においてその軍隊および他の国家機関が行ったとされる不法行為に関する訴訟において免除を付与され続ける ②成立していない免除が、当該国家が実際に国際人権法や武力紛争法の重大な違反を行ったか否かに左右されるとすれば、国内裁判所は、管轄権の有無を判断するために本案の検討をすることが必要（管轄権がないはずなのに本案で扱うべき重大な人権侵害において免除が及ぶかの問題を先に議論している）になる現時点での慣習国際法上、国家は、国際人権法または武力紛争の国際法の重大な違反の誹りを受けているという理由で免除を否認されることはない ③強行規範と国家免除原則の抵触は存在しない国家免除規則は性質上手続的であり、一国の裁判所が他国に関して裁判権を行使できるかを決定するのみである。それは当該訴訟の対象行為が合法か違法かには関わらない。

強制執行手続きからの免除と裁判手続きからの免除は同じか？

異なる

判決の執行から免除されない場合３つ

①：強制措置への明示的同意 ②：判決履行のための財産の自発的割当て・特定 ③：「政府の非商業的目的（主権的目的による行為）以外」で特定的に使用

第6回 国家 ④ 国家免除（主権免除）

第6回国家 ④ 国家免除（主権免除）