暗記メーカー

ログイン

第二六回、二七回　共犯の諸問題２、３（承継的共同正犯、共犯関係の解消）（教科書26講）

Aiko Kobayashi

問題数 20 • 7/24/2024

記憶度

完璧

3問

覚えた

7問

うろ覚え

0問

苦手

0問

未解答

0問

アカウント登録して、解答結果を保存しよう

問題一覧

承継的共犯とは？

ある者が特定の犯罪の事実に着工し、まだ実行行為を全部終了しない間に、他のものがその事情を知りながら残りの実行行為に関与すること

承継的共同正犯に関する学説３つ

全面肯定説全面否定説（有力）中間説（多数説）

全面肯定説とは？

一個の犯罪を２つに分解して論ずることは許されないとの理解にたって、常に後行者に対し犯罪全体の共同正犯を認めるという考えほとんど支持されていない

全面否定説（有力説）とは？

関与以前の先行者の行為や結果については後行者の行為が因果関係を持つことはありえないことを理由に、承継的共同正犯を一切否定する考え共同正犯も自らの行為と因果関係のある部分についてしか責任を負わない以上、犯行途中から共同正犯として加わったものに、関与前の部分を含めた刑事責任を問うことはできない

中間説（多数説）とは？

部分的に承継的共同正犯を肯定する考え中間説の中にも C―１．後行者が、自己の犯罪行為遂行の手段として、先行者の行為等を積極的に利用していると言える場合あるいは C−２.先行者の行為が後行者の関与後も効果を持ち続けている場合には、承継的共同正犯を肯定するという２つの考えがある

事例１：強盗致死傷の事例 Xは強盗を計画しAに暴行を加えて傷害し、その後、Yを呼び出して一緒にAから財物を奪取した全面的肯定説、全面的否定説、中間説の場合どういった罪に問われるか？

A：Yには強盗致傷罪の共同正犯が成立。 B：Yには窃盗罪の共同正犯が成立 C：Yには強盗罪の共同正犯が成立

事例２：傷害罪の事例α XはAに暴行を加えて腕を骨折させた。その後、Yが犯行に加わり、XとYで共同してAに暴行を加え、Aの頭部を骨折させた（傷害罪の事例１）。全面的肯定説、全面的否定説、中間説に立つと、Yにはどういった罪が問われるか？

A：Yには傷害罪（腕と頭部の骨折両方）の共同正犯が成立。 B、C―２：Yには傷害罪（頭部骨折のみ）の共同正犯が成立 C―１：場合によってはAと同じ結論となる余地を認める。

事例３：傷害罪の事例β XはAに暴行を加えて、その後、Yが犯行に加わり、XとYで共同してAに暴行を加えた。Aは頭部骨折の傷害を負ったが、その傷害の原因となった暴行は不明である。全面的肯定説、全面的否定説、中間説に立つと、Yにはどういった罪が問われるか？

A：Yには傷害罪の共同正犯が成立。 B、C―２：Yには暴行罪の共同正犯が成立 C―１：場合によってはAと同じ結論となる余地を認める。

詐欺罪の事例α 　XはAに息子のふりをして電話をかけ「交通事故で妊婦を流産させたから慰謝料が必要になった」と虚偽の事実を申し述べ、AにB宅へ現金を送付させた。その後、XはYを雇って、詐欺の仕事への関与であることを告げ、YにB宅へ現金を取りにいかせた。全面的肯定説、全面的否定説、中間説にたつとYの罪はどうなるか？

A、C：Yには詐欺罪（詐欺未遂罪）の共同正犯が成立。 B：Yは不可罰

事例６：監禁の事例　XはAを監禁していたが、途中からYもXに加勢し、代わる代わる監視を続けた。AはYの関与前に監禁場所から脱出しようとして怪我を負った。全面的肯定説、全面的否定説、中間説に立つとYの罪は？

A：Yには監禁致傷罪の共同正犯が成立。 B、C―２：Yは監禁罪の共同正犯が成立 C―１：場合によってはAと同じ結論となる余地を認める。

Aらが激しい暴行を加え流血・負傷したＣらに対し、Ａらと共謀のうえ、激しい暴行を加え、一連の暴行により重傷を負わせた事案

「被告人は、共謀加担前にＡらが既に生じさせていた傷害結果については、被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから、傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく、共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によってＣらの傷害の発生に寄与したことについてのみ、傷害罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当〔ⅰ〕である」。被告人において、ＣらがＡらの暴行を受けて負傷し、逃亡や抵抗が困難になっている状態を利用して更に暴行に及んだという事実があったとしても、「それは、被告人が共謀加担後に更に暴行を行った動機ないし契機にすぎず〔ⅱ〕、共謀加担前の傷害結果について刑事責任を問い得る理由とはいえない（ⅰ）因果的共犯論に親和的な表現（ⅱ）（傷害罪の限度で）C―１説の理屈を排除

特殊詐欺において、騙されたふり作戦が開始された（被害者が欺罔に気づいた後）に犯行に故意・共謀のもと加わった被告人について、詐欺未遂の成否が問題になった事案。

「被告人は、本件詐欺につき、共犯者による本件欺罔行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、被告人は、その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。」 →詐欺罪の承継的共同正犯を明らかに肯定

共犯の中止犯例：XとYは、A宅に強盗に入り、Aにナイフを突きつけたが、おびえるAの様子を見て後悔したXは、Yを説得して犯行を中止しA宅から立ち去った。

XとYには住居侵入罪と強盗未遂罪の共同正犯が成立。　Xは、自己の意思により犯罪を中止したので強盗未遂については中止犯成立。　※中止犯は一身専属的に判断されるので、Yについては別途中止犯の成立を検討。

共犯関係の解消とは？

関与者の一部（離脱者）が遂行前・遂行途中の犯行への関与を中止し、あるいは、犯行を阻止した場合（「共犯から離脱」した場合）、共犯関係の解消が認められれば、解消後の他の共犯者（残余者）の犯行は、離脱者には帰属しない

共犯の解消の判断基準である因果性遮断説（通説）とは？

自らの関与によって及ぼした因果的影響力が遮断されたと言える場合に共犯関係の解消が認められる離脱者が、離脱行為によって、それまでに及ぼした因果的影響力を解消させたかという判断

実行の着手前であれば、どうすれば共犯が解消されたことになるか？

基本的には犯意の（明示・黙示の）放棄と、それについての共犯者の認識重要な物理的寄与、あるいは、通常の程度を超えた心理的寄与を及ぼしている場合は、それらの影響力を除去することが必要

実行の着手後において、どうすれば共犯の解消が認められるか？

着手前と異なり、多大な心理的・物理的寄与を既に及ぼしており、解消が認められるためにはその除去が必要共犯者の犯行を積極的に防止することが必要

被告人は，共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀したところ，共犯者の一部が家人の在宅する住居に侵入した後，見張り役の共犯者が既に住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい，先に帰る」などと一方的に伝えただけで，被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく待機していた場所から見張り役らと共に離脱したにすぎず，残された共犯者らがそのまま強盗に及んだ事例

たとえ被告人も見張り役の上記電話内容を認識した上で離脱し，残された共犯者らが被告人の離脱をその後知るに至ったという事情があったとしても，当初の共謀関係が解消したということはできず，その後の共犯者らの強盗も当初の共謀に基づいて行われたものと認めるのが相当本件では、強盗の着手には至っていないとしても、既に住居侵入は果たされており結果発生の一定程度の危険はあるほか、被告人の共謀段階の関与態様も通常以上の心理的寄与を及ぼしたと評価可能。

一方的な排除による解消 X･Yが被害者に暴行を加えたがYの暴行が激しかったのでXが制止しようとしたところ、YがXの顔面を殴りXは失神。Yはは別の場所に移動して他の共犯者とさらに被害者に暴行（傷害結果が誰の暴行から生じたかは不明）。

Yを中心とし被告人を含めて形成された共犯関係は、被告人に対する暴行とその結果失　神した被告人の放置というY自身の行動によって一方的に解消され、その後の第2の暴　行は被告人の意思・関与を排除してYらのみによってなされたと解すべき。

デニーズ事件 AがXYZの友人Bの髪をつかみ引き回すなどしたため、XYZがBを助けるためにAに暴行を加えた（第一暴行）。その後、Bの髪から手を離してその場を移動したAの後をYが追いかけ顔面を殴打し傷害を負わせた（第二暴行）。その際、XはYを止めず傍観していた。

第一暴行単独でみれば、正当防衛に該当。 Yについては、両暴行を一連の暴行と評価して、36条2項（過剰防衛）が適用。相手方の侵害に対し、複数人が共同して防衛行為としての暴行に及び、相手方からの侵害が終了した後に、なおも一部の者が暴行を続けた場合において、後の暴行を加えていない者〔X〕について正当防衛の成否を検討するに当たっては、侵害現在時と侵害終了後とに分けて考察するのが相当であり、侵害現在時における暴行が正当防衛と認められる場合には、侵害終了後の暴行については、侵害現在時における防衛行為としての暴行の共同意思から離脱したかどうかではなく、新たに共謀が成立したかどうかを検討すべきであって、共謀の成立が認められるときに初めて、侵害現在時及び侵害終了後の一連の行為を全体として考察し、防衛行為としての相当性を検討すべき

第二六回、二七回 共犯の諸問題２、３（承継的共同正犯、共犯関係の解消）（教科書26講）

第二六回、二七回　共犯の諸問題２、３（承継的共同正犯、共犯関係の解消）（教科書26講）