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（2）職務懈怠

Aiko Kobayashi

問題数 14 • 6/9/2025

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問題一覧

○ 電電公社目黒電報電話局事件（#24）・＜再掲＞政治的メッセージの入ったプレートを着用して勤務。プレートの着用行為は、就業規則の規定に反していた。懲戒解雇事由の職務懈怠に該当するか？

＜判旨の構造＞ ① プレート着用は形式的には規定違反だが、実質的に職場秩序を乱さない「特別の事情」があれば規定違反にはならない←合理的限定解釈。 ② だが、メッセージの入ったプレート着用は、「職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならない」とする「職務専念義務」に反し、職場秩序を乱す。実害の発生がなければいけないわけではない。プレートを着用したことだけで懲戒事由に該当する訳ではないが、メッセージの内容が「職務専念義務」違反になり、企業秩序を害する。

○ ＜例＞ドリームエクスチェンジ事件・東京地判平成28・12・28 ・ 7か月間、勤務時間中に、概算で1日あたり300回以上業務に関連しないチャットを他の従業員に送信していた労働者Xが懲戒解雇された。この懲戒解雇は有効か？

有効 →Xのチャット回数は「社会通念上，社内で許される私語の範囲を逸脱したものと言わざるを得ず，職務専念義務に違反する」が、業務懈怠自体は「単なる債務不履行であり，これが就業に関する規律に反し，職場秩序を乱したと認められた場合に初めて懲戒事由になる」。 →しかし、Xが送信したチャットには、他の従業員に顧客情報を流出させようとしたり、会社が潰れるとかいう情報を流したりする内容が含まれていたことから懲戒解雇は有効。

私生活上の行為が、懲戒解雇事由として有効と認められる場合は？

労働者の私生活上の行為が会社の社会的評価を落としたような場合

小川建設事件（#29）＜事実＞・無許可でキャバレーの会計係を終業後午後6時から深夜0時までやっていたことがわかり、ほんらいは懲戒解雇であるところを普通解雇。この解雇は有効か？

＜判旨の構造＞・就業時間外は労働者の自由時間……兼業の全面禁止は合理性を欠く。・しかし、①疲労回復、②内容によっては企業の対外的信用・体面が傷つけられることもあることから、許可制は合理性あり。 →6時間は①の観点から長すぎるので、普通解雇は有効。全面禁止は合理性がないが、許可制は合理的→無許可兼業は懲戒事由に該当する。 →もっとも、労働者の私生活の自由（副業・兼業と深夜まで飲み歩いたりゲームをしたりするのとは何が違うのか？）の観点から、懲戒事由に該当したとしても企業秩序への影響が小さければ相当性を欠くといえるかもしれない

ノーワーク・ノーペイの原則とは？

労働契約に別段の定めがない限り、「債務の本旨に従った」労務提供を行わなければ賃金請求権は発生しないこと

賞与（ボーナス）とは？

年に数回、会社の業績や各労働者の成績に応じ柔軟に支給される。

賞与の性格３つ

「賃金後払的性格」「功労報償的性格」「勤続奨励的性格」

退職金の性格２つ

「賃金後払的性格」「功労報償的性格」

賞与支給につき会社に裁量があるタイプの契約・就業規則において賞与請求権は認められるか？

抽象的に「賞与を支給する（ことがある）」という規定の存在だけでは具体的な賞与請求権が認められない

支給日在籍要件とは？

算定（評価）期間に就労していても、支給日に在籍していない場合には賞与を支給しないとする就業規則の規定

支給日在籍要件は「賃金後払的性格」から合理性を欠くとはいえないか？

判例は「合理性あり」とする（勤続奨励的性格を意識）。

小田急電鉄事件（#96）・鉄道会社の社員が、他社の路線で痴漢行為をして捕まったことを理由に、懲戒解雇にされた。・裁判所は懲戒解雇を有効としたが、当該社員は、懲戒解雇が有効だとしても、就業規則規定の退職金の全額不支給はおかしいと主張。どのように退職金の不支給が合理的かどうかを判断するか？

・「全額不支給」＝「労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為がある」ときのみ。・かつ、職務外の非違行為が原因の場合＝犯罪行為に匹敵するような強度な背信性　・会社の名誉信用を著しく害し、会社に無視しえないような現実的損害を生じさせるなど ①ゆえに…… ・不信行為の内容×労働者の功労　に応じ一定割合を支給すべき。

・原則、使用者の業務命令により具体的労働義務が定まる……現に就業を命じられた業務ができないが他の業務ならできるという場合、使用者としては当該他の業務への労務提供の受領を拒絶し（自宅待機命令を発するなど）、賃金を支払わないことができるか。

できない労働者が「債務の本旨に従った履行」をすることができるのに、使用者がその受領を拒絶した場合、帰責事由あり

片山組事件（#89）＜事実＞・労働者が病気により、外勤ができなくなってしまった。もっとも、内勤はできるという状況であった。・会社は現場監督を命じたが、労働者はこれができないとしたため、自宅治療命令が出され、その間の賃金が支払われなかった。 →賃金請求権の有無は？

職種・業務内容の特定の有無（※ある場合は、特定された職種で業務を行うことが「債務の本旨に従った履行」→できなければ賃金請求権なし）。・特定がない場合→現に就業を命じられた特定の業務が十全にできないからといって、債務の本旨に従った履行ができないとはいえない。 →配置される現実的可能性のある他の業務について労務提供ができる場合、債務の本旨に従った履行可能（＋申し出ていれば履行の提供がある） →※使用者の受領拒絶に帰責事由あり→賃金請求権あり。・現実的可能性の判断要素 ① 労働者側の事情（能力・経験・地位） ② 使用者側の事情（規模、業種、配置・異動の実情および難易）