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第１６回一般不法行為の要件（２）故意・過失、権利侵害各論

Aiko Kobayashi

問題数 23 • 7/27/2024

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故意とは？

結果が発生することを認識しながら、それを「認容」していること（結果発生を積極的に意欲していることまでは必要ない）。

主観的過失とは？

結果が発生することを認識すべきであったにもかかわらず、不注意により、それを認識せず、結果の発生につながる一定の行為（不作為を含む）をするという心理状態（「主観的過失」）

客観的過失とは？

客観的にみて、結果発生の予見可能性があったにもかかわらず、結果の発生を回避するために要求される一定の行為を行わなかったこと

大阪アルカリ事件 Y 社の工場から排出された硫酸ガス等により、近隣の X の農作物に被害が生じ、X が Y に対し、損害賠償を請求した。Y は、経営上可能な一定の範囲では、煙害防止設備を施していた。

大審院では、過失とは、（結果の予見可能性を前提とし、）結果回避のための義務に違反したことであるとの立場を前提とし、「事業ノ性質ニ従ヒ相当ナル設備ヲ施シタル以上ハ偶々他人ニ損害ヲ被ラシメタルモ」これにより、損害賠償責任を認めることはできない、と判断された（差戻審では、ガスの噴出等を回避するための措置が十分ではなかったとの認定がされ、Y 社の結果回避義務違反を認め、責任を肯定）。

信頼責任の考え方とは？

社会での共同生活において、各構成員は、互いに、他の構成員が他人の権利を侵害しないように客観的に要求される行動をとるであろうことを信頼できるのでなければならない。客観的過失の認められる行為（結果回避義務に違反した行為）は、そのような要求に反した行為であり、共同社会の信頼を裏切る行為に当たること

抽象的過失（通説）とは？

通常人の能力を基準とする過失

具体的過失とは？

行為者本人の能力を基準とする過失

過失の判断時期は？

行為時を基準

公害や薬害といった一定の領域においては、結果発生のおそれ（「抽象的危険」）が感じられる場合には、予見義務や予見可能性が認められるか？

結果を予見するための調査研究を行う義務（「予見義務」）を課す。調査・研究を尽くせば予見できたはずの危険については、予見可能性があったものとされる。

具体的な行為義務の判断要素３つ

① 結果発生の蓋然性（結果が発生する危険の程度） ② 被侵害権利・利益の重大性 ③ 結果回避のための行為義務（結果回避のために一定の措置をとる義務）を課すことによって犠牲になる利益「①×②＞③」となる場合には、結果を回避するための行為義務が認められる（その措置をとらなかった者には過失が認められる）（「ハンドの公式」）

債権侵害（第三者による債権侵害）にもとづく不法行為責任はどのような場合に認められるか

第三者が、債務者の債権者に対する給付行為を妨害することにより、債権者が本来の給付を受けられないことによる債権侵害

生活妨害とは？

一定の生活環境のもとでの他人の生活を妨害し、悪影響を与える行為

生活利益とは？

一定の生活環境のもとで快適な生活を享受しうる利益

積極的侵害とは？

騒音・振動、大気汚染、水質汚濁のように、有害物を周囲に拡散する場合

消極的侵害とは？

日照妨害・通風妨害、眺望妨害・景観破壊のような、従来与えられていたものをさえぎる場合

生活妨害が問題となる場面における一般的な判断基準

受忍限度論被害が一般社会生活上受忍すべき限度を越えるものであるかどうかが問われ、受忍限度を越えると認められる場合に、不法行為責任の成立が認められる

国立マンション事件（最判平成１８・３・３０民集６０巻３号９４８頁【百選７９】）大学通りの周辺の調和のとれた良好な景観が、高層マンションの建築によって害されたことにより、近接地域の居住者等が損害賠償（及び建築差し止め（完成後は一定の高さ以上の部分の撤去））を求めた。

（１）「景観利益」は７０９条によって保護される利益にあたるか「良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり、これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益（「景観利益」）は、法律上保護に値する」。（２）景観利益の違法な侵害があるかどうか「建物の建築が第三者に対する関係において景観利益の違法な侵害となるかどうかは、被侵害利益である景観利益の性質と内容、当該景観の所在地の地域環境、侵害行為の態様、程度、侵害の経過等を総合的に考察して判断すべきである」。「ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、少なくとも、その侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められる」。

「名誉」（民法７１０条、７２３条参照）とは？

人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価

名誉毀損の免責法理２つ

真実性の抗弁行為が公共の利害に関する事項に係り（公表事項の公共性）、かつ、その目的がもっぱら公益を図ることにあった場合（公益目的での公表）には、摘示した事実が真実であったことが証明されれば、その行為は違法性を欠き、不法行為責任は成立しない。相当性の抗弁真実であることの証明ができなかったとしても、（公表事項の公共性と公益目的での公表という要件を満たす場合において、）行為者において摘示事実を真実と信じるについて相当の理由があると認められるときには、故意・過失が否定され、不法行為責任は成立しない。

意見・論評による社会的評価の低下において名誉毀損は成立するか？

原則として、名誉毀損を理由とする不法行為責任は成立しない。

意見・論評の際に基礎とした事実の摘示による社会的評価の低下において、名誉毀損が成立するか？

名誉毀損を理由とする不法行為責任が成立する可能性

プライバシーとは？

私生活を秘匿する権利・平穏生活権、自己情報コントロール権

プライバシーが争点となる裁判において用いられる不法行為責任判断基準

比較衡量ある事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由との比較衡量

第１６回 一般不法行為の要件（２）故意・過失、権利侵害各論

第１６回一般不法行為の要件（２）故意・過失、権利侵害各論