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第 8 講 法律行為の効力否定原因Ⅳ

第 8 講 法律行為の効力否定原因Ⅳ
36問 • 2年前
  • Aiko Kobayashi
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    問題一覧

  • 1

    消費者契約法の目的は?

    消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的

  • 2

    民法における契約法の基本原則2つ

    (1) 自己決定・自己責任の原則 (2) 契約交渉による正当性保障

  • 3

    消費者契約における構造的な格差2つ

    (1) 契約締結過程における情報・交渉力の格差 (2) 契約条項についての情報・交渉力の格差

  • 4

    業法規制(消費者契約法の制定前の前身となる法律)の問題点2つ

    (1) 分野の限定性 (2) 行政規制の問題点

  • 5

    消費者と事業者の峻別方法と理由

    事業概念「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」によって峻別 一方当事者が同種の行為を反復継続的に行っているのに対して、他方当 事者はそうではないことが、消費者契約における情報・交渉力の格差の原因として想定されているから

  • 6

    【設例 1】大学のラグビーチームであり、権利能力なき社団である X の幹事 A は、夏合宿のために、旅 行業者を通じて、Y が経営する旅館に宿泊を予約した(以下、「本件宿泊契約」とする。)。ところが、 宿泊開始日の前日、部員の一部が新型インフルエンザにり患したため、 A は、旅行業者および Y に対し て、宿泊を取り止める旨を伝えた。そこで、Y は、A に対して合計宿泊料の 70 パーセント相当の取消 料の支払を求め、A は、これを支払った。本件宿泊契約には、宿泊前日に予約を取り消した場合に 100 パーセントの取消料が発生する旨の条項が含まれていた。X は、本件宿泊契約は消費者契約にあたり、 取消料条項は消費者契約法 9 条 1 号により無効であるとして、取消料の返還を請求した(東京地判平成 23・11・17 判時 2150‐49)。 消費者契約法の定義に文字どおりに従えば、法人その他の団体は、常に消費者ではないことになる。 しかしながら、そのような法解釈でよいのかについては、争いがある。

    (1) 消費者性否定説 多くの裁判例は、条文どおりに、法人その他の団体の消費者性を否定している 5。学説にも、条文ど おりの説明が見られる (2) 消費者性肯定説 これに対して、前掲東京地判平成 23 年は、X と Y の情報・交渉力の格差に鑑みて、X は消費者に該 当し、当該宿泊契約は消費者契約に該当するものとしている。 学説にも、①法人成りした個人事業者が、自己の事業と直接関係のない商品・役務について事業者と 契約した場合には、消費者契約法を類推適用すべきとする見解 、②消費者契約法 2 条 1 項にいう「個 人」は、事業活動を行わない法人その他の団体に拡大解釈されるべきとする見解 、③専門的知識のない団体が専門業者と契約する場合について、消費者と同視する可能性を指摘する見解 などがある

  • 7

    消費者契約法の構造の3つの柱

    1 不当勧誘規制――消費者の取消権(4~7 条) 事業者の不適切な勧誘により、消費者が誤認または困惑し、消費者契約を締結する意思表示 をした場合、または、事業者の勧誘により、消費者が過量な内容の消費者契約を締結する意思表示をし た場合に、当該消費者に当該意思表示の取消しを認めている。 2 不当条項規制(8~10 条) 第二に、消費者契約における不当な契約条項を無効とすることを定めている。 3 適格消費者団体による差止請求 10(12~47 条) 第三に、適格消費者団体に、事業者に対して不当勧誘または不当条項の使用についての差止めを請求 する権利を認めている。

  • 8

    消費者契約法における事業者の努力義務4つ

    平明作成努力義務 消費者契約の内容に関する情報提供努力義務 定型約款の開示請求に関する情報提供努力義務 解除権行使に関する情報提供努力義務

  • 9

    努力義務の意義

    消費者契約法 10 条等に基づく不明確な条項の無効、不適切な情報提供が行われた場合における 消費者契約法 4 条に基づく取消しや不法行為(民法 709 条)に基づく損害賠償請求権を基礎づける、原 理としての意義

  • 10

    【設例 2】健康食品の小売販売等を営む Y 社は、クロレラには免疫力を整え細胞の働きを活発にするな どの効用がある旨の記載や、クロレラの摂取により高血圧、腰痛、糖尿病等の様々な疾病が快復した旨 の体験談などの記載があるチラシ(以下、「本件チラシ」とする。)を、新聞に折り込んで配布した。適 格消費者団体 X は、Y に対して、Y が本件チラシを配布することが、不実告知(消費者契約法 4 条 1 項 1 号)に該当すると主張し、同法 12 条 1 項および 2 項に基づき、新聞折込チラシに上記の記載をする ことの差止めを請求した(最判平成 29・1・24 民集 71‐1‐1)。 問題の所在 消費者契約法 4 条 1~4 項は、「事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し」、所定の行為 をした場合に、消費者に取消権を認めている。 4 条所定の行為の差止請求権を規定する 12 条 1・ 2 項も、同様に規定している。個別具体的な消費者に対して直接に契約締結の働きかけがされた場合には、勧誘があったことに問題はない。それでは、設例 2 における新聞チラシのように、不特定多数の相手方に向 けられた働きかけは、「勧誘」に当たるといえるか。

    (1) 勧誘否定説 消費者契約法の立案担当者は、かつて、「特定の者に向けた勧誘方法は『勧誘』に含まれるが、不特 定多数向けのもの等客観的にみて特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接に影響 を与えているとは考えられない場合(例えば、広告、チラシの配布、商品の陳列……等)は『勧誘』に 含まれない。」としていた 12。前掲最判平成 29 年の原審は、同様の見解に基づき、差止請求を棄却した。 (2) 勧誘肯定説 これに対して、前掲最判平成 29 年は、事業者が消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為 をしたことにより、消費者が意思表示をした場合に、取消しを認める、という法の趣旨・目的を前提に、 以下のように判示した 「例えば、事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件 その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に 向けて働きかけを行うときは、当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり 得るから、事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう『勧誘』に 当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは、上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい 難い。「したがって,事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが法 12 条 1 項及び 2 項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。」 この判例によると、「勧誘」該当性の判断においては、個別消費者の意思形成に直接影響を与え得る 働きかけであったかどうか 14が、決定的な意味を有する。

  • 11

    【設例 3】A は、中古車販売業者 B から、事故車ではないことを確認して、中古車甲を購入した。とこ ろが、後日、甲が事故車であることが判明した。 【設例 4】ヒールの硬い革靴を探していた C は、靴店 D において、店員が「この靴はヒールが硬い」と 勧めてきた革靴乙を購入した。しかしながら、実際に乙を履いて道路を歩いてみると、それまで履いて いた靴と比べて違いがあるとは思われなかった。 不実告知(事実と異なることを告げること)はどのように判断するか?

    不実告知の対象は、客観的に真実または真正であるか否かを判断することができる事柄である。主観 的な評価を述べるにすぎない言明は、不実告知に該当しない。

  • 12

    断定的判断の提供(1項 2号) (1) 将来における変動が不確実な事項 【設例 5】Xは、Y証券会社の担当者Aに電話で勧誘されて、外債を購入した。その際に、X は A に、 円高にはならないと言われたが、実際には円高になった。

    4 条 1 項 2 号は、「将来における変動が不確実な事項」について断定的判断が提供された場合に限っ て、取消しを認めている。典型的には、金融商品の取引に関して、将来の各種の指数・数値、金利、通 貨価値などについて、断定的な判断が提供された場合である。

  • 13

    断定的判断とは?

    「断定的判断」とは、確実でないものが確実であると誤解させるような決めつけ方

  • 14

    消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)の特徴2つ

    ①単なる不利益事実の不告知ではなく、先行する利益事実の告知を要求していること ②事業者の故意または重過失を要件としていること

  • 15

    不実告知および不利益事実の不告知による取消しが認められるもの

    4 条 5 項に規定された重要事項のみ

  • 16

    4条5項1・2号の「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべき もの」とは?

    契約締結時点の社会通念に照らし、一般的・平均的消費者が当該消費者契約を締結しようとした場合に、その判断を左右すると考えられるような、基本的事項

  • 17

    消費者を困惑させる場所型3つ

    ① 不退去(1 号) ② 退去妨害(2 号) ③ 退去困難な場所への同行(3 号)

  • 18

    消費者を困惑させる型のうち4条3項4号に規定されている型

    連絡妨害(4 号)

  • 19

    困惑型の一つである契約前活動型2つ

    ① 契約締結前の履行または目的物の現状変更による原状回復困難(9 号) ② 契約締結前の事業活動に対する損失補償請求(10 号)

  • 20

    不安助長型4つ

    ① 消費者の願望の実現についての不安をあおる行為(5 号) ② 恋愛感情を利用する行為(恋愛商法、6 号) ③ 判断力の低下した消費者の不安をあおる行為(7 号) ④ 霊感等による知見として消費者の不安をあおり、またはこれに乗じる行為(霊感商法、8 号)

  • 21

    【設例 9】認知症の症状のあった老女 X は、呉服等の販売業者 Y の店舗をたびたび訪れていたところ、 店員から「娘や孫のために」などと言葉巧みに勧誘され、高額な着物やバッグなど合計 50 点余を購入 し、預貯金のほとんどを使ってしまった。

    4 条 4 項は、認知症の高齢者等が不必要な物を大量に購入させられる被害事例に対処するための規定 である。消費者が過量な内容の契約を締結してしまうのは、当該消費者に、当該契約を締結するか否か について合理的な判断をすることができない事情がある場合であると考えられる。事業者がそのような 事情につけこんで契約を締結させたことが、取消しの根拠となっている。したがって、4 条 4 項は、過 量契約に契約内容の不当性を見ているというよりも、不当勧誘の表れとして過量契約を捉えている。

  • 22

    返還義務の範囲は?

    消費者契約法 6 条の 2 によれば、4 条の規定により消費者が意思表示を取り消した場合において、給付受領時にその意思表示を取り消すことができることを知らなかったときは、当該消費者に利得消滅の 抗弁が認められる。

  • 23

    取消権の行使期間は?

    追認をすることができる時から 1 年(4 条 3 項 8 号については 3 年) 、契約締結時から 5 年(4 条 3 項 8 号については 10 年)

  • 24

    (1) 全部免責条項 【設例 10】 A は、 B が経営する有料の地下駐車場に自動車甲を駐車したところ、天井に設置されていた 蛍光灯が甲の上に落下し、フロントガラスが傷つくなどの被害が生じた。そこで、A は、B に対して損 害賠償を請求した。これに対して、B は、当該駐車場の出入り口に掲示されていた B の約款に、「当駐 車場において自動車に損害が生じたとしても、B は、一切の損害賠償責任を負いません。」と書かれて いることを指摘した。 全部免責条項は許されるのか?

    事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は、無効とされ る(8 条 1 項 1 号)。不法行為責任についても、同様である(同 3 号)。

  • 25

    (2) 故意・重過失がある場合の一部免責条項(責任制限条項) 【設例 11】X は、旅行期間中、飼い犬乙を Y ペットホテルに預けた。ところが、Y の従業員 A の重大 な過失により、乙が死亡してしまった。そこで、X は、Y に対して、20 万円の損害賠償を請求した。 ① Y の約款には、「Y の側の故意または過失によって、お預かりしたペットに損害が生じた場合には、 10 万円を限度として賠償いたします。」と書かれていた。 ② Y の約款には、「法令に反しない限り、お預かりしたペットに生じた損害は、10 万円を限度として賠償いたします。」と記載されていた。 こうした免責条項は有効とされるのか?

    ア)故意・重過失がある場合の責任制限条項の無効 事業者らの故意または重過失による債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を 免除する条項は、無効とされる(8 条 1 項 2 号)。不法行為責任の一部免除も、同様である(同 4 号) イ)軽過失の場合にのみ適用されることを明確にしない責任制限条項の無効 事業者の債務不履行または不法行為責任を制限する条項であって、事業者らの重過失を除く過失によ る行為にのみ適用されることを明らかにしていないものも、無効とされる(8 条 3 項、2022 年新設)。 この規定は、ある種のサルベージ条項 21(不当条項の効力を法に反しない範囲で維持することを目的と する条項)を条項の明確性の観点から規制したものである。

  • 26

    (3) 責任の有無・限度の決定権限付与条項 【設例 10-2】設例 10 において、B の約款には、「当駐車場において自動車に損害が生じたとしても、 B は、一切の損害賠償責任を負いません。ただし、 B の調査により B に過失があると認められたならば、一定の補償をいたします。」と書かれていた

    損害賠償責任の有無または限度について事業者に決定権限を付与する条項は、上記の免責条項規制を 潜脱するために使用される可能性が高いため、実質的に免責条項と同じ効果を有するものと評価して、 無効とされている

  • 27

    有償契約における目的物の契約不適合に基づく事業者の責任を免除する条項およびその責任につい て決定権限を事業者に付与する条項について8条1項1・2号が適用されず無効とならない場合2つ

    (1) 消費者に他の救済手段が与えられている場合 事業者が追完責任または代金・報酬減額の責任を負う場合 (2) 他の事業者が損害賠償責任または追完責任を負う場合 消費者と事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約、または事業者と他の事業者との間 の消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結以前に締結されたものにおいて、当該他の事業者 が、損害賠償責任の全部もしくは一部、または追完責任を負うこととされている場合

  • 28

    事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させ 23、または当該事業者にその解除権の有 無を決定する権限を付与する条項(解除権放棄条項等)は有効か?

    無効(8 条の 2)

  • 29

    【設例 14】不動産賃貸業を営む Y は、賃貸借契約書において、賃借人が成年被後見人または被保佐人 の審判開始または申立てをうけたときは、Y は契約を解除することができる旨の条項を使用していた。 適格消費者団体 X は、Y に対して、この条項の使用差止めを請求した(大阪高判平成 25・10・17 消費 者法ニュース 98‐283 をもとにした事案)。 この解除権付与条項は有効か?

    消費者が後見開始・保佐開始または補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する 条項は、無効とされる 。後見開始の審判を踏まえ、当該消費者の取引適合性を個別に判断した結果、 契約に拘束すべきでないと結論付けられる場合に解除を認める条項は、これに該当しない。

  • 30

    【設例 15】 A は、 B 社との間で、 B 社が提供するサービスに関して期間内に実施されるアンケート調査 に回答し、謝礼を受け取る旨のモニター契約を締結した。この契約には、モニターが後見開始等の審判 を受けた場合には、B は契約を解除することができる旨の条項が、含まれていた。 この解除権付与条項は有効となるか?

    有効 消費者が事業者に対し、物品・権利・役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとさ れている契約では、上記の条項は無効とならない

  • 31

    【設例 16】Y は、X に対して新古車を注文したが、契約締結の翌々日には注文を撤回した。これに対し て、X は、「自動車注文書」の裏面に記載されていた「万一私の都合で契約を撤回した場合は、損害賠 償金(車両価格の 15/100)及び損害作業金(実費)を請求されても異議ありません」との条項に基づき、違約金を請求した(大阪地判平成 14・7・19 金判 1162‐32)。 解除に伴う損害賠償額の予定または違約金条項(1 号)は有効か?

    消費者契約の解除に伴って損害賠償額の予定を規定し、または違約金を定める条項は、「これらを合 算した額が、当該条項において設定された 28解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種 の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」場合に、当該超える部分 について無効

  • 32

    【設例 17】アパートの賃貸借契約において、「毎月の家賃(70,000 円)は、前月末までに支払うものと する。前期期限を過ぎた場合には、1 か月の料金に対し、年 30%の遅延損害金を支払うものとする」と いう条項が使用された。 金銭債務の不履行に伴う賠償額の予定または違約金条項(2 号)は有効とされるか?

    消費者が金銭債務の全部または一部を支払期日までに支払わない場合における損害賠償の額を予定 し、または違約金を定める条項は、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日まで の期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のう ち既に支払われた額を控除した額に年 14.6%の割合を乗じた額を超える場合に、当該超える部分が無効

  • 33

    消費者契約法 10 条の条項無効要件3つ

    (1) 任意規定からの逸脱 (2)消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示 をしたものとみなす条項 (3)民法第 1 条第 2 項に規定する基本原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害する もの(信義則違反)

  • 34

    【設例 19】X は、保険会社 Y との間で、医療保険契約および生命保険契約を締結した 本件各保険契約の保険約款には、以下の①~⑤の条項が存在した。 ① 第 2 回目以後の保険料は、月単位の契約応当日の属する月の初日から末日まで(払込期月)の間 に払い込む。 ② 第 2 回目以後の保険料の払込みについては、払込期月の翌月の初日から末日までを猶予期間とす る。 ③ ②の猶予期間内に保険料の払込みがないときは、保険契約は、猶予期間満了日の翌日から効力を 失う。 ④ ②の猶予期間が過ぎた場合でも、払い込むべき保険料と利息の合計額が解約返戻金の額を超えな いときは、自動的に Y が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる。 ⑤ 保険契約者は、保険契約の失効日から起算して 1 年以内(医療保険の場合)または 3 年以内(生 命保険の場合)であれば、Y の承諾を得て、保険契約を復活させることができる。 X は、猶予期間内に保険料の払込みをしなかった。X が、本件各保険契約が存在することの確認を請 求したのに対して、Y は、③条項による失効を主張した。これに対して、X は、③条項は消費者契約法 10 条により無効であると主張した(最判平成 24・3・16 民集 66‐5‐2216)。 ③条項のような無催告失効条項は有効か?

    有効 ③条項は、「保険料の払込みがされない場合に、その回数にかかわらず、履行の催告(民法 541 条) なしに保険契約が失効する旨を定めるものであるから、この点において、任意規定の適用による場合に 比し、消費者である保険契約者の権利を制限するものであるというべきである。」 2-2 10 条後段該当性 (1) 消費者の不利益 履行の催告は、債務者に債務不履行があったことを気付かせ、契約が解除される前に履行の機会を与 える機能を有するところ、催告なしに保険契約が失効する旨を定める③条項によって保険契約者が受け る不利益は、決して小さなものとはいえない。 (2) 不利益に対する補償 他方で、(i)1 か月の猶予期間、(ii)自動貸付条項、(iii)契約失効前に保険料払込みの督促を行う実務上 の確実な運用により、保険契約者の権利保護を図るために配慮がされているのであれば、③条項は、信 義則に反して消費者の利益を一方的に害するものではない

  • 35

    【設例 20】A は、旅行社 B との間で、ドイツ周遊ツアーの旅行契約を締結した。 ① 契約締結後、A が改めて同ツアーの料金を、他社の同種・同等商品と比較すると、2 倍近く高いこ とが判明した。 ② 同ツアーのパンフレットには、ノイシュヴァンシュタイン城の写真が印刷されており、A は、同所 を訪問できるものと信じて契約を締結した。ところが、A が旅程を再度確認すると、同所の見学は予定 されていないことが判明した。 不当条項規制は本来的には付随的条項を対象としているが、契約の目的物や価格を定める条項(中心条項)も規制対象とすべきか?

    1-1 規制不要説 34 次のような理由から、中心条項は不当条項規制の対象とならないとする。 (1) 規制必要性の欠如 不当条項規制を市場メカニズムの機能不全を補う制度と考えるならば、市場メカニズムが働く場面で は、規制が不要となる。契約において提供される商品・役務とその価格との均衡性は、市場経済システ ムにおいて需要と供給とのバランスによって決定されるものであり、不当条項規制は必要ない。 (2) 規制可能性の欠如 契約の主要な目的(例えば、旅行契約における行き先)については、当事者が決めるしかない問題で あり、法的な規制のための基準を観念することが困難である。 1-2 規制必要説 35 次のような理由から、中心条項についても不当条項規制の対象となりうるとする。 (1) 中心条項と付随条項の区別の困難 中心条項と付随条項とを明確に区別することができない場合があるうえに、区別のための基準が明確 でない。 (2) 中心部分について消費者が合理的に判断できるだけの契約締結基盤の欠如 中心部分について内容規制を要しないといえるためには、当該部分について消費者が合理的に判断で きるだけの基盤が、契約準備交渉・締結段階で必要である。よって、締結段階での規制(情報開示規制 など)が十分に機能していない場合には、中心部分についても内容規制によって対処する必要がある。 (3) 市場メカニズムの完全機能に対する疑問 中心部分への不介入は、市場メカニズムが完全に機能していることを前提としなければ成り立たない が、そのような前提には疑問がある。 (4) 「弱者としての消費者」保護の要請 上記(2)における消費者の自己決定基盤を完全に整備したとしても、なお消費者保護にとって十分な保 護とはいえないのではないか、との疑問が呈されている。さらに、「年齢・不十分な知的能力・経験不 足・経済的立場の弱さ・行動能力や理解能力の欠如といった理由による社会的弱者として、消費者を保 護すべきである」との思想を考慮する必要あるとする。このような意味での弱者保護の思想を取り込ん だ形で、暴利行為の問題を、不当条項規制の中で独自に処理すべきであるとする。

  • 36

    【設例 21】X は、平成 15 年 4 月 1 日、Y との間で、京都市内の共同住宅の 1 室甲につき、期間を同日 から 1 年間、賃料を月額 3 万 8 千円、更新料を賃料の 2 か月分とする賃貸借契約(以下、「本件契約」 とする。)を締結し、同日、甲の引渡しを受けた。本件賃貸借契約に係る契約書には、「X は、本件契約 を更新するときは、1 年経過するごとに、Y に対し、更新料として賃料の 2 か月分を支払わなければな らない。」と定められていた。 X は、 3 回にわたって本件契約を更新し、 Y に対して、合計 22 万 8 千円の更新料を支払った。その後、 X は、上記条項は消費者契約法 10 条により無効であると主張して、Y に対して、支払済み更新料の返 還を請求した(最判平成 23・7・15 民集 65‐5‐2269[百選Ⅱ-55]) 。 居住用建物賃貸借における更新料条項が消費者契約法 10 条により無効となるか?

    有効 更新料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借 人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし 前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当で ある。」 2-2 10 条前段該当性 (1) 判旨 「賃貸借契約は、賃貸人が物件を賃借人に使用させることを約し、賃借人がこれに対して賃料を支払 うことを約することによって効力を生ずる(民法 601 条)のであるから、更新料条項は、一般的には賃 貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において、任意規定の適用 による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するものに当たるというべきである。」 (2) 中心条項論への影響 以上の判旨は、中心条項の規制可能性との関係では、次のような意味を有する。すなわち、この判例 によれば、当該契約類型の要素を成す対価以外の付随的な対価・料金は、 10 条前段に該当するものとし て、広く不当条項規制の対象となりうることになる。価格コントロールは市場に委ねるべきであるとす る規制不要説の立場からは、このような判例の帰結を受け入れることができるか、また、受け入れると したら、どのような理由によるのか、が問われる。 2-3 10 条後段該当性 もっとも、前掲最判平成 23 年は、10 条後段該当性につき、 「更新料条項が賃貸借契約書に一義的か つ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、 賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほ どの格差が存するとみることもできない」としたうえで、「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載さ れた更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」後段に該当しない、との判断基準を示した。このような判断基準によれば、 更新料条項が実際に無効とされることは、そう多くない(前掲最判平成 23 年の事案でも、有効と判断 された)。

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    2 国際関係論入門

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    3 国際関係論入門

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    4国際関係論入門

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    5・6 国際関係論入門

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    7・8・9 国際関係論入門

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    11・12 国際関係論入門

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    第3講 法律行為総論・意思表示

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    第 4 講 法律行為の解釈・無効と取消し

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    第 5 講 法律行為の効力否定原因Ⅰ

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    第 6 講 法律行為の効力否定原因Ⅱ

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    第 7 講 法律行為の効力否定原因Ⅲ

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    第 9 講 条件と期限・代理Ⅰ(代理総論・有権代理)

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    第 10講 代理Ⅱ(無権代理)

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    第 11講 代理Ⅲ(表見代理)

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    第 12講 権利の主体Ⅱ(法人Ⅰ)

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    第 14講 時効Ⅰ

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    第 15講 時効Ⅱ

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    第 16講 物権法序論・物権変動総論

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    第 17講 法律行為を原因とする物権変動・不動産物権変動Ⅰ(不動産登記)

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    第 18講 不動産物権変動Ⅱ(177条総論・94 条 2項類推適用)

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    第 19講 不動産物権変動Ⅲ(177条各論)

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    第 20講 動産物権変動

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    第 21講 所有権Ⅰ(総論・添付)

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    第 1 講 憲法学への招待

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    第 2 講 法の支配と権力分立

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    第 3 講 議院内閣制

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    第 4 講 象徴天皇制

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    第5講 国民代表・政党・選挙

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    第 6 講 国会の地位と構造

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    第 7 講 内閣の地位と構造

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    第8講 立法作用

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    第9講 行政作用 第 10 講 戦争の放棄

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    第 11 講 司法権と違憲審査

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    第 12 講 司法権の限界

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    第 13 講 憲法判断の方法と効果

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    第 22講 所有権Ⅱ(共有)

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    第 23講 物権的請求権・占有(権)Ⅰ

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    第 24講 占有(権)Ⅱ

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    第一回「憲法上の権利」の観念

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    刑法1

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    英単語4

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    第1回

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    英単語5

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    第2回 司法審査制と「憲法訴訟」の基礎

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    第3回 思想・良心の自由

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    第4回〜7回

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    第4回 第5回 因果関係

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    教科書の内容

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    英単語 7

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    英単語 8

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    英単語 10

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    英単語13

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    英単語 14

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    英単語15

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    英単語 16

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    英単語20

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    第6回 不作為犯

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    第七回 故意(構成要件的故意)

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    第八回、第九回 事実の錯誤

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    第十回 過失

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    第十一回 違法性の本質・正当行為・被害者の承諾(同意)

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    第十三回、第十四回 正当防衛

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    第十三回、第十四回 正当防衛

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    第十五回 緊急避難

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    第十六回 責任の意義・責任能力、原因において自由な行為

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    第十七回 正当化事情の錯誤(責任故意)、違法性の意識

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    第3回 同時履行の抗弁・不安の抗弁

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    第十八回、第十九回 未遂犯の基礎・実行の着手、不能犯

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    Aiko Kobayashi · 56問 · 1年前

    第十八回、第十九回 未遂犯の基礎・実行の着手、不能犯

    第十八回、第十九回 未遂犯の基礎・実行の着手、不能犯

    56問 • 1年前
    Aiko Kobayashi

    第4回

    第4回

    Aiko Kobayashi · 31問 · 1年前

    第4回

    第4回

    31問 • 1年前
    Aiko Kobayashi

    問題一覧

  • 1

    消費者契約法の目的は?

    消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的

  • 2

    民法における契約法の基本原則2つ

    (1) 自己決定・自己責任の原則 (2) 契約交渉による正当性保障

  • 3

    消費者契約における構造的な格差2つ

    (1) 契約締結過程における情報・交渉力の格差 (2) 契約条項についての情報・交渉力の格差

  • 4

    業法規制(消費者契約法の制定前の前身となる法律)の問題点2つ

    (1) 分野の限定性 (2) 行政規制の問題点

  • 5

    消費者と事業者の峻別方法と理由

    事業概念「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」によって峻別 一方当事者が同種の行為を反復継続的に行っているのに対して、他方当 事者はそうではないことが、消費者契約における情報・交渉力の格差の原因として想定されているから

  • 6

    【設例 1】大学のラグビーチームであり、権利能力なき社団である X の幹事 A は、夏合宿のために、旅 行業者を通じて、Y が経営する旅館に宿泊を予約した(以下、「本件宿泊契約」とする。)。ところが、 宿泊開始日の前日、部員の一部が新型インフルエンザにり患したため、 A は、旅行業者および Y に対し て、宿泊を取り止める旨を伝えた。そこで、Y は、A に対して合計宿泊料の 70 パーセント相当の取消 料の支払を求め、A は、これを支払った。本件宿泊契約には、宿泊前日に予約を取り消した場合に 100 パーセントの取消料が発生する旨の条項が含まれていた。X は、本件宿泊契約は消費者契約にあたり、 取消料条項は消費者契約法 9 条 1 号により無効であるとして、取消料の返還を請求した(東京地判平成 23・11・17 判時 2150‐49)。 消費者契約法の定義に文字どおりに従えば、法人その他の団体は、常に消費者ではないことになる。 しかしながら、そのような法解釈でよいのかについては、争いがある。

    (1) 消費者性否定説 多くの裁判例は、条文どおりに、法人その他の団体の消費者性を否定している 5。学説にも、条文ど おりの説明が見られる (2) 消費者性肯定説 これに対して、前掲東京地判平成 23 年は、X と Y の情報・交渉力の格差に鑑みて、X は消費者に該 当し、当該宿泊契約は消費者契約に該当するものとしている。 学説にも、①法人成りした個人事業者が、自己の事業と直接関係のない商品・役務について事業者と 契約した場合には、消費者契約法を類推適用すべきとする見解 、②消費者契約法 2 条 1 項にいう「個 人」は、事業活動を行わない法人その他の団体に拡大解釈されるべきとする見解 、③専門的知識のない団体が専門業者と契約する場合について、消費者と同視する可能性を指摘する見解 などがある

  • 7

    消費者契約法の構造の3つの柱

    1 不当勧誘規制――消費者の取消権(4~7 条) 事業者の不適切な勧誘により、消費者が誤認または困惑し、消費者契約を締結する意思表示 をした場合、または、事業者の勧誘により、消費者が過量な内容の消費者契約を締結する意思表示をし た場合に、当該消費者に当該意思表示の取消しを認めている。 2 不当条項規制(8~10 条) 第二に、消費者契約における不当な契約条項を無効とすることを定めている。 3 適格消費者団体による差止請求 10(12~47 条) 第三に、適格消費者団体に、事業者に対して不当勧誘または不当条項の使用についての差止めを請求 する権利を認めている。

  • 8

    消費者契約法における事業者の努力義務4つ

    平明作成努力義務 消費者契約の内容に関する情報提供努力義務 定型約款の開示請求に関する情報提供努力義務 解除権行使に関する情報提供努力義務

  • 9

    努力義務の意義

    消費者契約法 10 条等に基づく不明確な条項の無効、不適切な情報提供が行われた場合における 消費者契約法 4 条に基づく取消しや不法行為(民法 709 条)に基づく損害賠償請求権を基礎づける、原 理としての意義

  • 10

    【設例 2】健康食品の小売販売等を営む Y 社は、クロレラには免疫力を整え細胞の働きを活発にするな どの効用がある旨の記載や、クロレラの摂取により高血圧、腰痛、糖尿病等の様々な疾病が快復した旨 の体験談などの記載があるチラシ(以下、「本件チラシ」とする。)を、新聞に折り込んで配布した。適 格消費者団体 X は、Y に対して、Y が本件チラシを配布することが、不実告知(消費者契約法 4 条 1 項 1 号)に該当すると主張し、同法 12 条 1 項および 2 項に基づき、新聞折込チラシに上記の記載をする ことの差止めを請求した(最判平成 29・1・24 民集 71‐1‐1)。 問題の所在 消費者契約法 4 条 1~4 項は、「事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し」、所定の行為 をした場合に、消費者に取消権を認めている。 4 条所定の行為の差止請求権を規定する 12 条 1・ 2 項も、同様に規定している。個別具体的な消費者に対して直接に契約締結の働きかけがされた場合には、勧誘があったことに問題はない。それでは、設例 2 における新聞チラシのように、不特定多数の相手方に向 けられた働きかけは、「勧誘」に当たるといえるか。

    (1) 勧誘否定説 消費者契約法の立案担当者は、かつて、「特定の者に向けた勧誘方法は『勧誘』に含まれるが、不特 定多数向けのもの等客観的にみて特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接に影響 を与えているとは考えられない場合(例えば、広告、チラシの配布、商品の陳列……等)は『勧誘』に 含まれない。」としていた 12。前掲最判平成 29 年の原審は、同様の見解に基づき、差止請求を棄却した。 (2) 勧誘肯定説 これに対して、前掲最判平成 29 年は、事業者が消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為 をしたことにより、消費者が意思表示をした場合に、取消しを認める、という法の趣旨・目的を前提に、 以下のように判示した 「例えば、事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件 その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に 向けて働きかけを行うときは、当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり 得るから、事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう『勧誘』に 当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは、上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい 難い。「したがって,事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが法 12 条 1 項及び 2 項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。」 この判例によると、「勧誘」該当性の判断においては、個別消費者の意思形成に直接影響を与え得る 働きかけであったかどうか 14が、決定的な意味を有する。

  • 11

    【設例 3】A は、中古車販売業者 B から、事故車ではないことを確認して、中古車甲を購入した。とこ ろが、後日、甲が事故車であることが判明した。 【設例 4】ヒールの硬い革靴を探していた C は、靴店 D において、店員が「この靴はヒールが硬い」と 勧めてきた革靴乙を購入した。しかしながら、実際に乙を履いて道路を歩いてみると、それまで履いて いた靴と比べて違いがあるとは思われなかった。 不実告知(事実と異なることを告げること)はどのように判断するか?

    不実告知の対象は、客観的に真実または真正であるか否かを判断することができる事柄である。主観 的な評価を述べるにすぎない言明は、不実告知に該当しない。

  • 12

    断定的判断の提供(1項 2号) (1) 将来における変動が不確実な事項 【設例 5】Xは、Y証券会社の担当者Aに電話で勧誘されて、外債を購入した。その際に、X は A に、 円高にはならないと言われたが、実際には円高になった。

    4 条 1 項 2 号は、「将来における変動が不確実な事項」について断定的判断が提供された場合に限っ て、取消しを認めている。典型的には、金融商品の取引に関して、将来の各種の指数・数値、金利、通 貨価値などについて、断定的な判断が提供された場合である。

  • 13

    断定的判断とは?

    「断定的判断」とは、確実でないものが確実であると誤解させるような決めつけ方

  • 14

    消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)の特徴2つ

    ①単なる不利益事実の不告知ではなく、先行する利益事実の告知を要求していること ②事業者の故意または重過失を要件としていること

  • 15

    不実告知および不利益事実の不告知による取消しが認められるもの

    4 条 5 項に規定された重要事項のみ

  • 16

    4条5項1・2号の「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべき もの」とは?

    契約締結時点の社会通念に照らし、一般的・平均的消費者が当該消費者契約を締結しようとした場合に、その判断を左右すると考えられるような、基本的事項

  • 17

    消費者を困惑させる場所型3つ

    ① 不退去(1 号) ② 退去妨害(2 号) ③ 退去困難な場所への同行(3 号)

  • 18

    消費者を困惑させる型のうち4条3項4号に規定されている型

    連絡妨害(4 号)

  • 19

    困惑型の一つである契約前活動型2つ

    ① 契約締結前の履行または目的物の現状変更による原状回復困難(9 号) ② 契約締結前の事業活動に対する損失補償請求(10 号)

  • 20

    不安助長型4つ

    ① 消費者の願望の実現についての不安をあおる行為(5 号) ② 恋愛感情を利用する行為(恋愛商法、6 号) ③ 判断力の低下した消費者の不安をあおる行為(7 号) ④ 霊感等による知見として消費者の不安をあおり、またはこれに乗じる行為(霊感商法、8 号)

  • 21

    【設例 9】認知症の症状のあった老女 X は、呉服等の販売業者 Y の店舗をたびたび訪れていたところ、 店員から「娘や孫のために」などと言葉巧みに勧誘され、高額な着物やバッグなど合計 50 点余を購入 し、預貯金のほとんどを使ってしまった。

    4 条 4 項は、認知症の高齢者等が不必要な物を大量に購入させられる被害事例に対処するための規定 である。消費者が過量な内容の契約を締結してしまうのは、当該消費者に、当該契約を締結するか否か について合理的な判断をすることができない事情がある場合であると考えられる。事業者がそのような 事情につけこんで契約を締結させたことが、取消しの根拠となっている。したがって、4 条 4 項は、過 量契約に契約内容の不当性を見ているというよりも、不当勧誘の表れとして過量契約を捉えている。

  • 22

    返還義務の範囲は?

    消費者契約法 6 条の 2 によれば、4 条の規定により消費者が意思表示を取り消した場合において、給付受領時にその意思表示を取り消すことができることを知らなかったときは、当該消費者に利得消滅の 抗弁が認められる。

  • 23

    取消権の行使期間は?

    追認をすることができる時から 1 年(4 条 3 項 8 号については 3 年) 、契約締結時から 5 年(4 条 3 項 8 号については 10 年)

  • 24

    (1) 全部免責条項 【設例 10】 A は、 B が経営する有料の地下駐車場に自動車甲を駐車したところ、天井に設置されていた 蛍光灯が甲の上に落下し、フロントガラスが傷つくなどの被害が生じた。そこで、A は、B に対して損 害賠償を請求した。これに対して、B は、当該駐車場の出入り口に掲示されていた B の約款に、「当駐 車場において自動車に損害が生じたとしても、B は、一切の損害賠償責任を負いません。」と書かれて いることを指摘した。 全部免責条項は許されるのか?

    事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は、無効とされ る(8 条 1 項 1 号)。不法行為責任についても、同様である(同 3 号)。

  • 25

    (2) 故意・重過失がある場合の一部免責条項(責任制限条項) 【設例 11】X は、旅行期間中、飼い犬乙を Y ペットホテルに預けた。ところが、Y の従業員 A の重大 な過失により、乙が死亡してしまった。そこで、X は、Y に対して、20 万円の損害賠償を請求した。 ① Y の約款には、「Y の側の故意または過失によって、お預かりしたペットに損害が生じた場合には、 10 万円を限度として賠償いたします。」と書かれていた。 ② Y の約款には、「法令に反しない限り、お預かりしたペットに生じた損害は、10 万円を限度として賠償いたします。」と記載されていた。 こうした免責条項は有効とされるのか?

    ア)故意・重過失がある場合の責任制限条項の無効 事業者らの故意または重過失による債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を 免除する条項は、無効とされる(8 条 1 項 2 号)。不法行為責任の一部免除も、同様である(同 4 号) イ)軽過失の場合にのみ適用されることを明確にしない責任制限条項の無効 事業者の債務不履行または不法行為責任を制限する条項であって、事業者らの重過失を除く過失によ る行為にのみ適用されることを明らかにしていないものも、無効とされる(8 条 3 項、2022 年新設)。 この規定は、ある種のサルベージ条項 21(不当条項の効力を法に反しない範囲で維持することを目的と する条項)を条項の明確性の観点から規制したものである。

  • 26

    (3) 責任の有無・限度の決定権限付与条項 【設例 10-2】設例 10 において、B の約款には、「当駐車場において自動車に損害が生じたとしても、 B は、一切の損害賠償責任を負いません。ただし、 B の調査により B に過失があると認められたならば、一定の補償をいたします。」と書かれていた

    損害賠償責任の有無または限度について事業者に決定権限を付与する条項は、上記の免責条項規制を 潜脱するために使用される可能性が高いため、実質的に免責条項と同じ効果を有するものと評価して、 無効とされている

  • 27

    有償契約における目的物の契約不適合に基づく事業者の責任を免除する条項およびその責任につい て決定権限を事業者に付与する条項について8条1項1・2号が適用されず無効とならない場合2つ

    (1) 消費者に他の救済手段が与えられている場合 事業者が追完責任または代金・報酬減額の責任を負う場合 (2) 他の事業者が損害賠償責任または追完責任を負う場合 消費者と事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約、または事業者と他の事業者との間 の消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結以前に締結されたものにおいて、当該他の事業者 が、損害賠償責任の全部もしくは一部、または追完責任を負うこととされている場合

  • 28

    事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させ 23、または当該事業者にその解除権の有 無を決定する権限を付与する条項(解除権放棄条項等)は有効か?

    無効(8 条の 2)

  • 29

    【設例 14】不動産賃貸業を営む Y は、賃貸借契約書において、賃借人が成年被後見人または被保佐人 の審判開始または申立てをうけたときは、Y は契約を解除することができる旨の条項を使用していた。 適格消費者団体 X は、Y に対して、この条項の使用差止めを請求した(大阪高判平成 25・10・17 消費 者法ニュース 98‐283 をもとにした事案)。 この解除権付与条項は有効か?

    消費者が後見開始・保佐開始または補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する 条項は、無効とされる 。後見開始の審判を踏まえ、当該消費者の取引適合性を個別に判断した結果、 契約に拘束すべきでないと結論付けられる場合に解除を認める条項は、これに該当しない。

  • 30

    【設例 15】 A は、 B 社との間で、 B 社が提供するサービスに関して期間内に実施されるアンケート調査 に回答し、謝礼を受け取る旨のモニター契約を締結した。この契約には、モニターが後見開始等の審判 を受けた場合には、B は契約を解除することができる旨の条項が、含まれていた。 この解除権付与条項は有効となるか?

    有効 消費者が事業者に対し、物品・権利・役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとさ れている契約では、上記の条項は無効とならない

  • 31

    【設例 16】Y は、X に対して新古車を注文したが、契約締結の翌々日には注文を撤回した。これに対し て、X は、「自動車注文書」の裏面に記載されていた「万一私の都合で契約を撤回した場合は、損害賠 償金(車両価格の 15/100)及び損害作業金(実費)を請求されても異議ありません」との条項に基づき、違約金を請求した(大阪地判平成 14・7・19 金判 1162‐32)。 解除に伴う損害賠償額の予定または違約金条項(1 号)は有効か?

    消費者契約の解除に伴って損害賠償額の予定を規定し、または違約金を定める条項は、「これらを合 算した額が、当該条項において設定された 28解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種 の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」場合に、当該超える部分 について無効

  • 32

    【設例 17】アパートの賃貸借契約において、「毎月の家賃(70,000 円)は、前月末までに支払うものと する。前期期限を過ぎた場合には、1 か月の料金に対し、年 30%の遅延損害金を支払うものとする」と いう条項が使用された。 金銭債務の不履行に伴う賠償額の予定または違約金条項(2 号)は有効とされるか?

    消費者が金銭債務の全部または一部を支払期日までに支払わない場合における損害賠償の額を予定 し、または違約金を定める条項は、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日まで の期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のう ち既に支払われた額を控除した額に年 14.6%の割合を乗じた額を超える場合に、当該超える部分が無効

  • 33

    消費者契約法 10 条の条項無効要件3つ

    (1) 任意規定からの逸脱 (2)消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示 をしたものとみなす条項 (3)民法第 1 条第 2 項に規定する基本原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害する もの(信義則違反)

  • 34

    【設例 19】X は、保険会社 Y との間で、医療保険契約および生命保険契約を締結した 本件各保険契約の保険約款には、以下の①~⑤の条項が存在した。 ① 第 2 回目以後の保険料は、月単位の契約応当日の属する月の初日から末日まで(払込期月)の間 に払い込む。 ② 第 2 回目以後の保険料の払込みについては、払込期月の翌月の初日から末日までを猶予期間とす る。 ③ ②の猶予期間内に保険料の払込みがないときは、保険契約は、猶予期間満了日の翌日から効力を 失う。 ④ ②の猶予期間が過ぎた場合でも、払い込むべき保険料と利息の合計額が解約返戻金の額を超えな いときは、自動的に Y が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる。 ⑤ 保険契約者は、保険契約の失効日から起算して 1 年以内(医療保険の場合)または 3 年以内(生 命保険の場合)であれば、Y の承諾を得て、保険契約を復活させることができる。 X は、猶予期間内に保険料の払込みをしなかった。X が、本件各保険契約が存在することの確認を請 求したのに対して、Y は、③条項による失効を主張した。これに対して、X は、③条項は消費者契約法 10 条により無効であると主張した(最判平成 24・3・16 民集 66‐5‐2216)。 ③条項のような無催告失効条項は有効か?

    有効 ③条項は、「保険料の払込みがされない場合に、その回数にかかわらず、履行の催告(民法 541 条) なしに保険契約が失効する旨を定めるものであるから、この点において、任意規定の適用による場合に 比し、消費者である保険契約者の権利を制限するものであるというべきである。」 2-2 10 条後段該当性 (1) 消費者の不利益 履行の催告は、債務者に債務不履行があったことを気付かせ、契約が解除される前に履行の機会を与 える機能を有するところ、催告なしに保険契約が失効する旨を定める③条項によって保険契約者が受け る不利益は、決して小さなものとはいえない。 (2) 不利益に対する補償 他方で、(i)1 か月の猶予期間、(ii)自動貸付条項、(iii)契約失効前に保険料払込みの督促を行う実務上 の確実な運用により、保険契約者の権利保護を図るために配慮がされているのであれば、③条項は、信 義則に反して消費者の利益を一方的に害するものではない

  • 35

    【設例 20】A は、旅行社 B との間で、ドイツ周遊ツアーの旅行契約を締結した。 ① 契約締結後、A が改めて同ツアーの料金を、他社の同種・同等商品と比較すると、2 倍近く高いこ とが判明した。 ② 同ツアーのパンフレットには、ノイシュヴァンシュタイン城の写真が印刷されており、A は、同所 を訪問できるものと信じて契約を締結した。ところが、A が旅程を再度確認すると、同所の見学は予定 されていないことが判明した。 不当条項規制は本来的には付随的条項を対象としているが、契約の目的物や価格を定める条項(中心条項)も規制対象とすべきか?

    1-1 規制不要説 34 次のような理由から、中心条項は不当条項規制の対象とならないとする。 (1) 規制必要性の欠如 不当条項規制を市場メカニズムの機能不全を補う制度と考えるならば、市場メカニズムが働く場面で は、規制が不要となる。契約において提供される商品・役務とその価格との均衡性は、市場経済システ ムにおいて需要と供給とのバランスによって決定されるものであり、不当条項規制は必要ない。 (2) 規制可能性の欠如 契約の主要な目的(例えば、旅行契約における行き先)については、当事者が決めるしかない問題で あり、法的な規制のための基準を観念することが困難である。 1-2 規制必要説 35 次のような理由から、中心条項についても不当条項規制の対象となりうるとする。 (1) 中心条項と付随条項の区別の困難 中心条項と付随条項とを明確に区別することができない場合があるうえに、区別のための基準が明確 でない。 (2) 中心部分について消費者が合理的に判断できるだけの契約締結基盤の欠如 中心部分について内容規制を要しないといえるためには、当該部分について消費者が合理的に判断で きるだけの基盤が、契約準備交渉・締結段階で必要である。よって、締結段階での規制(情報開示規制 など)が十分に機能していない場合には、中心部分についても内容規制によって対処する必要がある。 (3) 市場メカニズムの完全機能に対する疑問 中心部分への不介入は、市場メカニズムが完全に機能していることを前提としなければ成り立たない が、そのような前提には疑問がある。 (4) 「弱者としての消費者」保護の要請 上記(2)における消費者の自己決定基盤を完全に整備したとしても、なお消費者保護にとって十分な保 護とはいえないのではないか、との疑問が呈されている。さらに、「年齢・不十分な知的能力・経験不 足・経済的立場の弱さ・行動能力や理解能力の欠如といった理由による社会的弱者として、消費者を保 護すべきである」との思想を考慮する必要あるとする。このような意味での弱者保護の思想を取り込ん だ形で、暴利行為の問題を、不当条項規制の中で独自に処理すべきであるとする。

  • 36

    【設例 21】X は、平成 15 年 4 月 1 日、Y との間で、京都市内の共同住宅の 1 室甲につき、期間を同日 から 1 年間、賃料を月額 3 万 8 千円、更新料を賃料の 2 か月分とする賃貸借契約(以下、「本件契約」 とする。)を締結し、同日、甲の引渡しを受けた。本件賃貸借契約に係る契約書には、「X は、本件契約 を更新するときは、1 年経過するごとに、Y に対し、更新料として賃料の 2 か月分を支払わなければな らない。」と定められていた。 X は、 3 回にわたって本件契約を更新し、 Y に対して、合計 22 万 8 千円の更新料を支払った。その後、 X は、上記条項は消費者契約法 10 条により無効であると主張して、Y に対して、支払済み更新料の返 還を請求した(最判平成 23・7・15 民集 65‐5‐2269[百選Ⅱ-55]) 。 居住用建物賃貸借における更新料条項が消費者契約法 10 条により無効となるか?

    有効 更新料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借 人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし 前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当で ある。」 2-2 10 条前段該当性 (1) 判旨 「賃貸借契約は、賃貸人が物件を賃借人に使用させることを約し、賃借人がこれに対して賃料を支払 うことを約することによって効力を生ずる(民法 601 条)のであるから、更新料条項は、一般的には賃 貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において、任意規定の適用 による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するものに当たるというべきである。」 (2) 中心条項論への影響 以上の判旨は、中心条項の規制可能性との関係では、次のような意味を有する。すなわち、この判例 によれば、当該契約類型の要素を成す対価以外の付随的な対価・料金は、 10 条前段に該当するものとし て、広く不当条項規制の対象となりうることになる。価格コントロールは市場に委ねるべきであるとす る規制不要説の立場からは、このような判例の帰結を受け入れることができるか、また、受け入れると したら、どのような理由によるのか、が問われる。 2-3 10 条後段該当性 もっとも、前掲最判平成 23 年は、10 条後段該当性につき、 「更新料条項が賃貸借契約書に一義的か つ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、 賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほ どの格差が存するとみることもできない」としたうえで、「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載さ れた更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」後段に該当しない、との判断基準を示した。このような判断基準によれば、 更新料条項が実際に無効とされることは、そう多くない(前掲最判平成 23 年の事案でも、有効と判断 された)。