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第 11講相続の効力②　２

Aiko Kobayashi

問題数 12 • 7/20/2025

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遺産に属する財産が滅失・損傷した場合の損害賠償請求権や損害保険金請求権は代償財産に当たるか？

あたる

【設例 20】A が死亡し、その相続人は、妻 X および前妻との間の子 Y・B・C・D であった。A の遺産には、複数の不動産（以下、「本件各不動産」とする。）が含まれていたところ、A の相続人らは、本件各不動産から生ずる賃料等について、遺産分割により本件各不動産の帰属が確定した時点で清算することとし、それまでの期間に支払われる賃料等を管理するために銀行口座（以下、「本件口座」とする。）を開設し、本件各不動産の賃借人らに本件口座に賃料を振り込ませた。遺産分割決定により本件各不動産の帰属が確定したが、本件口座の残金約 2 億円の分配をめぐって、X と Y ら子との間で紛争が生じた。X は、本件各不動産から生じた賃料債権は、相続開始時に遡って、本件各不動産を取得した各相続人に帰属するものとして分配額を算定すべきと主張した（約 1 億 9000万円が X に帰属する。）。これに対し、Y らは、遺産分割決定の確定日までは法定相続分に従って各相続人に帰属し、確定日の翌日から本件各不動産を取得した各相続人に帰属するものとして、分配額を算定すべきと主張した（X に帰属するのは、約 1 億円に留まる。）。そこで、 A の相続人らは、争いのない範囲で残金を分配し、争いのある分については Y が保管したうえで、訴訟によって帰属を確定することとした。これを受けて X は、 X 主張の計算方法により Y 保管金は X が全て取得すべきものであるとして、Y に対し保管金の返還を求めて提訴した（最判平成 17・9・8 民集 59‐7‐1931［百選Ⅲ－68］）。１問題の所在相続開始後・遺産分割前に相続財産から生じた果実は、遺産分割の対象となるか。ここには、より精確には、次のような諸問題が存在する。 ① 相続財産の果実は、そもそも遺産を構成するのか。それとも共同相続人の固有財産に属するのか。 ② 果実の分配は、遺産分割によるべきか。その他の方法によるべきか。 ③ 遺産分割には遡及効があるところ（909 条本文、後述）、遺産分割前に生じた果実も、遡及的に元物の取得者に帰属することにはならないか。

① 遺産共有の状態にある「賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべき」である。 ② 同賃料債権は、「各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」。 ③ 各共同相続人が確定的に取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。 ①・②では、遺産に属する財産の売却代金（既述）と同様の処理がされている。すなわち、通常の共有関係にある不動産から生じた果実として準共有の状態となるところ、可分債権として当然分割されている（427 条）。なお、売却代金と同様に考えると、共同相続人全員の合意があれば、賃料債権を遺産分割の対象にすることも可能となる（実務における支配的見解）

遺産分割の内容３つ

① 現物分割 ② 代償分割（家事 195 条）：具体的相続分を超える現物を取得した相続人に、具体的相続分に満たない財産しか取得しなかった相続人に対し債務を負担させる方法。部分的価格賠償と全面的価格賠償の両方を含む。 ③ 換価分割（家事 194 条）：遺産の全部または一部を任意売却または競売により換価し、その代金を分配する方法

配偶者居住権とは？

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合、遺産分割または遺贈により、その居住建物の全部について無償で使用収益する権利

【設例 21】X が死亡し、妻 W と成年の子 A がこれを相続した。X の遺産は、W と共に居住していた自宅建物甲（2000 万円）および銀行預金 3000 万円であった。高齢の W は、これからも甲に住み続けることを希望している。配偶者居住権が認められない場合と、認められる場合とでどのように遺産分割がされるか？

配偶者居住権が認められない場合、 W が甲の所有権（2000 万円）および預金 500 万円を取得し、 A が預金 2500 万円を取得するというように、遺産分割を行うことが考えられる。これでは、W の金融資産は、将来の生活を維持するうえで心もとない。これに対し、配偶者居住権を利用することができれば、W が甲の配偶者居住権（1000 万円）および預金 1500 万円を取得し、A が負担付所有権（1000 万円）および預金 1500 万円を取得するといった遺産分割が可能となる。これにより、生存配偶者により多くの金融資産を取得させることが可能

配偶者居住権の要件２つ

①被相続人の配偶者であること ②被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していたこと

配偶者居住権の取得原因２つ

(1) 遺産分割 (2) 遺贈

【設例 22】X が死亡し、妻 W および子 A・B・C・D がこれを相続した。X の遺産として甲土地があったが、W が X から甲につき生前贈与を受けたものと信じ込んでいたため、A ら子は、W の単独所有としても近い将来自分たちが相続することになると考え、W と共に、甲を W の単独所有とする旨の遺産分割協議を行った。ついで W が死亡し、遺言により A が甲を単独で相続した。ところが、その後、「甲を 3 分割し、A・C・D にそれぞれ相続させる」旨の X の遺言が発見された。そこで、B・C・D は、A に対し、錯誤取消しを主張して、 X の遺産分割協議のやり直しを求めた（最判平成 5・12・16 家月 46‐ 8‐47 をもとにした事案）。この錯誤取り消しは認められるか？

遺言の有無は基礎事情であり、その基礎事情に錯誤が認められるため、取り消しが認められる相続人が遺産分割協議の意思決定をする場合において、遺言で分割の方法が定められているときは、その趣旨は遺産分割の協議及び審判を通じて可能な限り尊重されるべきものであり、相続人もその趣旨を尊重しようとするのが通常であるから、相続人の意思決定に与える影響力は格段に大きい。 C 及び D は、X 遺言の存在を知っていれば、特段の事情のない限り、甲を Wが単独で相続する旨の本件遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高いものというべき

【設例 23】A が死亡し、妻 B および子 Y・X₁～X₄の 6 名がこれを相続した。遺産分割協議により、長男である Y は、法定相続分よりも多くの遺産を取得する一方、他の共同相続人に対し、①X₃・X₄と仲良く交際する、②B と同居する、③B を扶養し、B にふさわしい老後を送ることができるように最善の努力をし、Y の妻と共に B の身の回りの世話をする、④先祖の祭祀を承継し、各祭事を誠実に行う、という 4 項目を約した。ところが、Y が B と同居を開始した後、両者の関係が険悪になり、Y は、B を扶養せずに虐待するなどした。そのため、X らは、Y に対し上記 4 項目の履行を催告したうえ、遺産分割協議の解除を主張して、原状回復を請求した。なお、B は、一審係属中に死亡した（最判平成元・2・9 民集 43‐2‐1［百選Ⅲ－75］）。判例によれば、遺産分割協議において共同相続人の一部に債務を負担させたが、当該共同相続人がその債務を履行しなかった場合、他の共同相続人は、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することができるか。

判例は遺産分割協議の法定解除を認めていない。 ①債務を負担した相続人に不履行があったとしても、それは、遺産の帰属を定めた協議自体の不履行ではない。 ② 遺産分割協議の解除を認めると、民法 909 条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、（共同相続人間の 43）法的安定性が著しく害される

遺産分割による財産の取得についての考え方２つ

(1) 宣言主義各相続人は、遺産分割により取得した財産を、被相続人から直接承継したものとする。 (2) 移転主義被相続人の財産は、遺産共有の状態を経て、各相続人に移転するものとする。

遺産分割の効力はいつから生じるか？

相続開始時に遡って生じる

909条「遺産分割の効力」但書における「第三者の権利を害することはできない」の第三者は誰か？

相続開始後・遺産分割前に共同相続人の持分について権利を取得した者（遺産分割前の第三者）である。善意・悪意は問わないが、対抗要件（権利保護資格要件）を備えることが必要である（通説

第 11講 相続の効力② ２

第 11講相続の効力②　２