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第 14講 時効Ⅰ

第 14講 時効Ⅰ
41問 • 2年前
  • Aiko Kobayashi
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    問題一覧

  • 1

    初日不算入の原則

    日の端数は計算に加えず、期間の初日は算入しない原則

  • 2

    初日不算入の原則の例外2つ

    (1) 初日が完全に一日ある場合 (2) 初日を参入する法令がある場合

  • 3

    期間の満了点について5つ

    ① 末日の終了をもって、期間満了となる(141 条)。 ② 末日が、日曜日・祝日その他の休日にあたり、かつ、その日に取引をしない慣習がある場合には、 その翌日をもって期間満了となる(142 条)。 ③ 週・月・年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する(143 条 1 項)。 ④ 週・月・年の初めから期間を起算しないときは、最後の週・月・年において起算日に応当する日 の前日に満了する(143 条 2 項本文)。 ⑤ ただし、最後の月に応当日がない場合には、その月の末日に満了する(143 条 2 項ただし書)。

  • 4

    時効とは?

    一定の事実状態が継続した場合に、この状態が真実の権利関係に合致するものであるかを問わずに、その事実状態をそのまま尊重し、これをもって権利関係と認める制度

  • 5

    時効の種類2つ

    取得時効、消滅時効

  • 6

    取得時効とは?

    権利者らしい状態が一定期間継続することによって権利取得の効果が生じる時効

  • 7

    消滅時効とは?

    権利が行使されない状態が一定期間継続することによって、権利消滅の効果が生じる時効

  • 8

    非権利者保護・実体法説(通説)について (1) 時効制度の目的 (2) 時効制度の位置づけ

    (1)非権利者を保護するため (2)実体法上の権利変動原因の 1 つ

  • 9

    非権利者保護・実体法説による時効制度の正当化根拠3つ

    (1) 社会の法律関係の安定 永続した事実状態を権利関係と認めることにより、事実状態を信頼して築き上げられてきた社会の法 律関係の安定を図る。ここには、当事者の生活関係の保護と第三者の保護との趣旨が含まれる。 (2) 証拠保全の困難救済 永続した事実関係は、真実の法律関係に合致している蓋然性が高いので、この事実関係を正当なもの とみなす(または推定する)ことにより、証拠保全の困難を救済する。 (3) 権利行使懈怠者へのサンクション 「権利の上に眠る者は、保護に値しない。 」すなわち、権利行使を怠った者は、権利を奪われてもや むを得ない。

  • 10

    権利者保護・訴訟法説について時効制度の目的と位置づけ

    長期間を経て権利を証明することができない権利者を保護するためであり、真の権利状態があることを前提として、権利の証明困難を救済する機能

  • 11

    法定証拠説とは?

    一定の事実状態が所定の期間継続していたことが示されれば、それに対応した法律関係の存在が、法 律上当然に証明されたものとする考え

  • 12

    法律上の推定説とは?

    一定の事実状態が所定の期間継続していたことが示されれば、それに対応した法律関係が、法律上推 定されたものとする考え

  • 13

    取得時効の効果は原始取得、承継取得のどちらか?

    原始取得

  • 14

    取得時効の対象となる権利2つ

    所有権と、所有権以外の財産権

  • 15

    取得時効の対象とならない権利

    継続的な権利行使に馴染まない権利と直接法律の規定によって成立する権利

  • 16

    時効完成に必要な事実状態4つ

    ①所有の意思をもって、②平穏かつ公然と、③(他人の)物を、④占有すること

  • 17

    所有権の取得時効の要件となるのは自主占有と他主占有のどちらか?

    自主占有

  • 18

    自主占有とは?

    所有者として占有する意思をもってする占有

  • 19

    他主占有とは?

    所有の意思を有しない占有

  • 20

    平穏とは?

    暴行・強迫などによらずに、占有を取得し保持していること

  • 21

    平穏の反対語は?

    強暴

  • 22

    公然とは?

    密かに隠して占有しているのではないこと

  • 23

    公然の反対語は?

    隠秘

  • 24

    【設例 6】X は、A との間で、A 所有の甲不動産を X が購入する旨の契約を締結したが、A は、まもな く死亡した。X は、A の遺族から甲の引渡しを受けたが、紛争が生じ、所有権移転登記手続がされない まま、10 年以上が経過した。そうこうするうちに、A の養子である Y が、甲を相続したとして、所有 権移転登記を経由した。X が Y に対して、代金と引換えに所有権移転登記手続を求めたところ、Y は、 事情変更(貨幣価値の変動)を理由として代金増額を求めてきたため、X は取得時効を主張した 設例 6 において、X は、A との売買契約が有効に成立している限り、契約成立の時点で甲の所有権を 取得している(176 条)。それにもかかわらず、 X は、 Y に対して、取得時効を主張することができるか。

    ア)取得時効肯定説(判例) 契約当事者間においても、永続した事実状態を尊重するという時効制度の趣旨が妥当することに変わ りはないことから、162 条の要件を充足する限り、取得時効が認められるとする。 イ)取得時効否定説 契約当事者間で時効取得が認められると、契約に基づく主張が認められないことになる。設例 6 にお いて、契約に基づく所有権移転登記手続請求であれば、Y は代金支払との同時履行の抗弁(533 条)を 出すことができるが、時効取得に基づく請求であれば、代金の支払を受けることができない。このよう な帰結は、当事者間の公平に反するとする。

  • 25

    【設例 7】Y は、兄 A から家屋乙を贈与され、その引渡しを受けた。ところが、A は、所有権移転登記 を経ていないことを幸いに、Y に無断で乙に抵当権を設定した。Y が乙の贈与を受けてから 9 年 10 カ 月ほど経過した後、この抵当権が実行され、X が競落し、所有権移転登記を経由した。そこで、X は、 Y に対して、乙の明渡しを求めたが、その時点で既に 10 年が経過していたため、Y が取得時効を援用 した 設例 7 において、X と Y は、ともに A から乙の所有権を譲り受けており、対抗関係に立つ。このと き、Y は、先に登記を具備した X に対して所有権を主張することができず、X の明渡請求に応じざるを 得ない(177 条) 。それでは、Y は、取得時効を主張することで、X の請求を拒絶することができるか。

    ア)取得時効肯定説(判例 6) この場合にも、永続した事実状態を尊重するという制度趣旨が妥当すると考えられることから、取得 時効が認められるとする。 取得時効が認められると、時効完成時点での所有者との関係では、登記を要さずに所有権を対抗する ことができる(判例 7) 。したがって、Y は、X の請求を拒絶することができ、逆に所有権移転登記手続 を請求することができる。 イ)取得時効否定説 8 二重譲渡型においては、177 条の原則どおり、登記の有無によって権利関係を決するべきであるとす る。設例 7 において、Y は、登記を怠った以上、X に対して甲の所有権取得を対抗することができない としても、やむをえない。ただし、X が所有権を取得した時点または登記した時点から 162 条所定の期 間を満了した場合には、取得時効が認められるとする。

  • 26

    取得時効の起算点は?

    取得時効の基礎となった事実が開始した時点

  • 27

    162条2項「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」の善意とは?

    権利が自分に属すると信じたこと

  • 28

    (1) 占有の承継 【設例 8】B は、A の代理人 Z との間で、A から甲土地を購入する契約を締結し、甲の B への引渡しと B 名義への移転登記が行われたが、Z には、この契約を締結する代理権がなかった。B は、無権代理で あることを契約締結時に知っていた。B は、甲を 3 年間占有した後、C に売却した。その際、C は、B が甲の所有権を有すると無過失で信じていた。 C は、甲を 5 年間占有した後、 D に売却した。 D もまた、C の所有権を無過失で信じていた。D が占有を始めてから 7 年後に、A が、甲の所有権は自己に属すると主張して、D に甲の返還を求めてきた。 ア)占有期間の合算 イ)占有の瑕疵の承継 それぞれについてどうなるか?

    ア)占有期間の合算 時効期間中に占有者が変更した場合、時効援用者は、自己の占有のみを主張するか、前の占有者の占 有を併せて主張するかを、選択することができる(187 条 1 項)。設例 8 において、D は、B や C の占有期間を合算して、10 年ないし 20 年の時効期間の満了を主張することができる。 イ)占有の瑕疵の承継 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、占有の瑕疵(悪意・有過失・強暴・隠避など取得時効 の完成に不利になる事由)を承継しなければならない(187 条 2 項)。設例 8 において、D が B の占有を合わせて主張する場合、B の悪意を承継し、20 年の占有期間が要求される。よって、この場合には、時効期間が満了していないことになる。 逆に、悪意占有者が善意占有者の占有期間を合わせて主張する場合には、後者の占有開始時を基準に 善意・無過失が判断される(判例 10)。

  • 29

    時効援用者が主張・立証しなければならない所有権取得時効の完成要件

    下記の他に、時効援用の意思表示が成立要件となる。――。 ア)長期取得時効 ① ○年○月○日に、目的物を占有していたこと ② ①の時点から 20 年を経過した□年□月□日終了時に、目的物を占有していたこと イ)短期取得時効 ① ○年○月○日に、目的物を占有していたこと ② ①の時点から 10 年を経過した□年□月□日終了時に、目的物を占有していたこと ③ 目的物が自己の所有であると信じるにつき、過失がなかったとの評価を根拠づける事実

  • 30

    所有権取得時効の完成を争う相手方の阻却要件 ア)長期・短期共通の阻却要件4つ イ)短期取得時効の阻却要件2つ

    ア)長期・短期共通の阻却要件 ① 所有の意思の不存在 ② 占有の強暴性 ③ 占有の隠秘性 ④ 占有の中断 イ)短期取得時効の阻却要件 ① 占有者が占有開始時に悪意であったこと ② 占有者に過失がなかったとの評価を妨げる事実

  • 31

    消滅時効の対象となる権利2つ

    債権、債権又は所有権以外の財産権

  • 32

    人の生命・身体侵害を理由とする損害賠償請求権 【設例 9】A は、Y 病院において早期発見癌の切除手術を受けたが、執刀医 B のミスにより死亡した。 そこで、A の相続人 X が、Y に対して損害賠償を請求した。 ① X は、Y に対して、診療契約上の債務不履行を理由として損害賠償を請求した。 ② X は、Y に対して、不法行為(715 条の使用者責任)を理由として損害賠償を請求した。 時効期間はそれぞれどうなるか?

    (1) 短期時効期間 不法行為による損害賠償請求権も、短期時効期間が 5 年となる(724 条の 2)。 (2) 長期時効期間 債務不履行による損害賠償請求権も、長期時効期間が 20 年となる(167 条)。

  • 33

    定期金債権とは?

    一定の期間にわたり金銭その他の物を給付させることを目的とする債権

  • 34

    法的可能性説(通説)とは?

    「権利を行使することができる時」とは、権利を行使することについて法律上の障害がなくなった時 とする説

  • 35

    現実的期待可能性説(通説じゃない)とは?

    「権利を行使することができる時」とは、 権利行使が可能であることを知っているべき時、すなわち、 債権者の職業・地位・教育などから、「権利を行使することを期待ないし要求することができる時期」 であるとする説

  • 36

    166 条 1 項 1 号の時効期間が進行するためには、「権利を行使することができることを知った」ことに加えて、何が必要か?

    客観的にも権利を行使することができることが必要

  • 37

    【設例 3】Y は、20 年以上前に甲土地を買い受け、同地上に家屋を建てて居住していた。その後、近時 に至り、隣地乙を所有する X が、建物を建築するために乙土地を測量したところ、甲・乙両土地間の境 界となっていたブロック塀が、乙土地側に 1 メートルほど越境していることが判明した。そこで、X は Y に対して、越境部分の土地の明渡しを求めた。 取得時効は認められるか?

    権利者らしい状態が一定期間継続することによって権利取得の効果が生じる時効を、「取得時効」と いう。設例 3 において、Y に越境部分の土地所有権につき取得時効が認められれば、Y は、X の明渡請 求に応じなくてよいことになる。

  • 38

    【設例 4】A は、B から 100 万円を借りたが、返済期日から 5 年が経過するまで、B から音沙汰のない 状態が続いた。その後、B が、突如として、債務の弁済を請求してきた。 消滅時効が認められるか?

    権利が行使されない状態が一定期間継続することによって、権利消滅の効果が生じる時効を、「消滅 時効」という。設例 4 において、B の債権につき消滅時効が認められれば、A は債務の履行を免れるこ とができる。

  • 39

    【設例 12】X は、道路上を歩行中にひき逃げに遭い、後遺障害を負った。そこで、X は、加害車両の運 転者として嫌疑をかけられていた A に対して、自賠法 3 条に基づき損害賠償を請求する訴訟を提起した。 しかしながら、X の症状固定から 3 年以上が経過した後、A を加害車両の保有者とは認めがたいとの理 由で、X 敗訴の判決が言い渡され、それが確定した。そこで、X は、自動車保有者が明らかでないため に自賠法 3 条により損害賠償を請求できない被害者に政府に対する損害填補請求権を認める自賠法 72 条 1 項前段に基づき、Y(国)に対し、後遺障害による損害の填補を請求した。これに対して、Y は、 自賠法 75 条の時効を主張した(最判平成 8・3・5 民集 50‐3‐383 をもとにした事案)。 判例の考え方は?

    かつては、判例も法的可能性説であるとされていたが 15、近年の判例は、①権利の行使につき法律上 の障害がないだけではなく 、さらに、②権利の性質上、権利行使が現実に期待のできるものであるこ とを要する 、としている。②の分だけ現実的期待可能性説に近づいているものの、債権者の個人的事 情まで考慮されているわけではない。 例えば、自賠法 75 条は、「(請求権)を行使することができる時」から 3 年の時効期間を定めている ところ、前掲最判平成 8 年は、ある者が交通事故の加害自動車の保有者であるか否かをめぐって、その 者と被害者との間で自賠法 3 条の損害賠償請求権の存否が争われている場合について、 自賠法 3 条の請 求権が存在しないことが確定した時が起算点になるとした。

  • 40

    【設例 13】A と B は、A が甲建物の所有権を取得した場合には、A が甲を B に無償で譲る旨の停止条 件付贈与契約を締結した。A が甲の所有権を取得したが、B がそれを知ったのは、それから 2 年後であ った。さらに 3 年が経過してから、B は、A に対して、甲の引渡しと登記移転手続を請求した。 時効期間が進行するのはいつか?

    不確定期限または停止条件が付されている権利については、当該期限が到来し、または、当該条件が 成就した後に、期限の到来または条件成就の事実を知ったことが必要とされる。

  • 41

    イ)法的評価が一義的でない発生原因に基づく権利 【設例 14】A は、宝飾品店 Y の従業員であったが、夜間の単独宿直中に、盗みに入った B により殺害 された。 A の父母・相続人である X らが事件の経緯を調査したところ、事件発生から 5 年が経過した後、Y は、それまでも盗難被害があったにもかかわらず、のぞき窓・インターホン・防犯チェーン・防犯ベルといった防犯設備を設置せず、また、宿直員を適宜増員する等の措置も講じていなかったことが判明 した。そこで、X らは、Y に対して、労働契約上の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償を請求した 時効期間が進行するのはいつか?

    法的評価が一義的でない原因によって権利が発生した場合には、債権者が発生原因ありとの法的評価 を認識していることまでは要求されないが、一般人であれば発生原因ありとの評価するに足りる事実を 認識していれば、時効期間が進行するものと考えられる。 例えば、設例 14 の事案において、使用者 Y は、労働契約に基づき A に対して、「労働者が労務提供のため設置する場所・設備もしくは器具等を使用し、または、使用者の指示のもとに労務を提供する過 程において、労働者の生命および身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」を負う。このような 安全配慮義務の違反を理由とする損害賠償請求権は、166 条 1 項の時効期間に服するが、安全配慮義務 違反があったか否かは、様々な事情を総合的に判断する必要があり、労働者の生命・身体が害された事 実を知っただけでは、直ちに「権利を行使することができることを知った」とはいえない

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    第十八回、第十九回 未遂犯の基礎・実行の着手、不能犯

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    第4回

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    第4回

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    31問 • 1年前
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    問題一覧

  • 1

    初日不算入の原則

    日の端数は計算に加えず、期間の初日は算入しない原則

  • 2

    初日不算入の原則の例外2つ

    (1) 初日が完全に一日ある場合 (2) 初日を参入する法令がある場合

  • 3

    期間の満了点について5つ

    ① 末日の終了をもって、期間満了となる(141 条)。 ② 末日が、日曜日・祝日その他の休日にあたり、かつ、その日に取引をしない慣習がある場合には、 その翌日をもって期間満了となる(142 条)。 ③ 週・月・年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する(143 条 1 項)。 ④ 週・月・年の初めから期間を起算しないときは、最後の週・月・年において起算日に応当する日 の前日に満了する(143 条 2 項本文)。 ⑤ ただし、最後の月に応当日がない場合には、その月の末日に満了する(143 条 2 項ただし書)。

  • 4

    時効とは?

    一定の事実状態が継続した場合に、この状態が真実の権利関係に合致するものであるかを問わずに、その事実状態をそのまま尊重し、これをもって権利関係と認める制度

  • 5

    時効の種類2つ

    取得時効、消滅時効

  • 6

    取得時効とは?

    権利者らしい状態が一定期間継続することによって権利取得の効果が生じる時効

  • 7

    消滅時効とは?

    権利が行使されない状態が一定期間継続することによって、権利消滅の効果が生じる時効

  • 8

    非権利者保護・実体法説(通説)について (1) 時効制度の目的 (2) 時効制度の位置づけ

    (1)非権利者を保護するため (2)実体法上の権利変動原因の 1 つ

  • 9

    非権利者保護・実体法説による時効制度の正当化根拠3つ

    (1) 社会の法律関係の安定 永続した事実状態を権利関係と認めることにより、事実状態を信頼して築き上げられてきた社会の法 律関係の安定を図る。ここには、当事者の生活関係の保護と第三者の保護との趣旨が含まれる。 (2) 証拠保全の困難救済 永続した事実関係は、真実の法律関係に合致している蓋然性が高いので、この事実関係を正当なもの とみなす(または推定する)ことにより、証拠保全の困難を救済する。 (3) 権利行使懈怠者へのサンクション 「権利の上に眠る者は、保護に値しない。 」すなわち、権利行使を怠った者は、権利を奪われてもや むを得ない。

  • 10

    権利者保護・訴訟法説について時効制度の目的と位置づけ

    長期間を経て権利を証明することができない権利者を保護するためであり、真の権利状態があることを前提として、権利の証明困難を救済する機能

  • 11

    法定証拠説とは?

    一定の事実状態が所定の期間継続していたことが示されれば、それに対応した法律関係の存在が、法 律上当然に証明されたものとする考え

  • 12

    法律上の推定説とは?

    一定の事実状態が所定の期間継続していたことが示されれば、それに対応した法律関係が、法律上推 定されたものとする考え

  • 13

    取得時効の効果は原始取得、承継取得のどちらか?

    原始取得

  • 14

    取得時効の対象となる権利2つ

    所有権と、所有権以外の財産権

  • 15

    取得時効の対象とならない権利

    継続的な権利行使に馴染まない権利と直接法律の規定によって成立する権利

  • 16

    時効完成に必要な事実状態4つ

    ①所有の意思をもって、②平穏かつ公然と、③(他人の)物を、④占有すること

  • 17

    所有権の取得時効の要件となるのは自主占有と他主占有のどちらか?

    自主占有

  • 18

    自主占有とは?

    所有者として占有する意思をもってする占有

  • 19

    他主占有とは?

    所有の意思を有しない占有

  • 20

    平穏とは?

    暴行・強迫などによらずに、占有を取得し保持していること

  • 21

    平穏の反対語は?

    強暴

  • 22

    公然とは?

    密かに隠して占有しているのではないこと

  • 23

    公然の反対語は?

    隠秘

  • 24

    【設例 6】X は、A との間で、A 所有の甲不動産を X が購入する旨の契約を締結したが、A は、まもな く死亡した。X は、A の遺族から甲の引渡しを受けたが、紛争が生じ、所有権移転登記手続がされない まま、10 年以上が経過した。そうこうするうちに、A の養子である Y が、甲を相続したとして、所有 権移転登記を経由した。X が Y に対して、代金と引換えに所有権移転登記手続を求めたところ、Y は、 事情変更(貨幣価値の変動)を理由として代金増額を求めてきたため、X は取得時効を主張した 設例 6 において、X は、A との売買契約が有効に成立している限り、契約成立の時点で甲の所有権を 取得している(176 条)。それにもかかわらず、 X は、 Y に対して、取得時効を主張することができるか。

    ア)取得時効肯定説(判例) 契約当事者間においても、永続した事実状態を尊重するという時効制度の趣旨が妥当することに変わ りはないことから、162 条の要件を充足する限り、取得時効が認められるとする。 イ)取得時効否定説 契約当事者間で時効取得が認められると、契約に基づく主張が認められないことになる。設例 6 にお いて、契約に基づく所有権移転登記手続請求であれば、Y は代金支払との同時履行の抗弁(533 条)を 出すことができるが、時効取得に基づく請求であれば、代金の支払を受けることができない。このよう な帰結は、当事者間の公平に反するとする。

  • 25

    【設例 7】Y は、兄 A から家屋乙を贈与され、その引渡しを受けた。ところが、A は、所有権移転登記 を経ていないことを幸いに、Y に無断で乙に抵当権を設定した。Y が乙の贈与を受けてから 9 年 10 カ 月ほど経過した後、この抵当権が実行され、X が競落し、所有権移転登記を経由した。そこで、X は、 Y に対して、乙の明渡しを求めたが、その時点で既に 10 年が経過していたため、Y が取得時効を援用 した 設例 7 において、X と Y は、ともに A から乙の所有権を譲り受けており、対抗関係に立つ。このと き、Y は、先に登記を具備した X に対して所有権を主張することができず、X の明渡請求に応じざるを 得ない(177 条) 。それでは、Y は、取得時効を主張することで、X の請求を拒絶することができるか。

    ア)取得時効肯定説(判例 6) この場合にも、永続した事実状態を尊重するという制度趣旨が妥当すると考えられることから、取得 時効が認められるとする。 取得時効が認められると、時効完成時点での所有者との関係では、登記を要さずに所有権を対抗する ことができる(判例 7) 。したがって、Y は、X の請求を拒絶することができ、逆に所有権移転登記手続 を請求することができる。 イ)取得時効否定説 8 二重譲渡型においては、177 条の原則どおり、登記の有無によって権利関係を決するべきであるとす る。設例 7 において、Y は、登記を怠った以上、X に対して甲の所有権取得を対抗することができない としても、やむをえない。ただし、X が所有権を取得した時点または登記した時点から 162 条所定の期 間を満了した場合には、取得時効が認められるとする。

  • 26

    取得時効の起算点は?

    取得時効の基礎となった事実が開始した時点

  • 27

    162条2項「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」の善意とは?

    権利が自分に属すると信じたこと

  • 28

    (1) 占有の承継 【設例 8】B は、A の代理人 Z との間で、A から甲土地を購入する契約を締結し、甲の B への引渡しと B 名義への移転登記が行われたが、Z には、この契約を締結する代理権がなかった。B は、無権代理で あることを契約締結時に知っていた。B は、甲を 3 年間占有した後、C に売却した。その際、C は、B が甲の所有権を有すると無過失で信じていた。 C は、甲を 5 年間占有した後、 D に売却した。 D もまた、C の所有権を無過失で信じていた。D が占有を始めてから 7 年後に、A が、甲の所有権は自己に属すると主張して、D に甲の返還を求めてきた。 ア)占有期間の合算 イ)占有の瑕疵の承継 それぞれについてどうなるか?

    ア)占有期間の合算 時効期間中に占有者が変更した場合、時効援用者は、自己の占有のみを主張するか、前の占有者の占 有を併せて主張するかを、選択することができる(187 条 1 項)。設例 8 において、D は、B や C の占有期間を合算して、10 年ないし 20 年の時効期間の満了を主張することができる。 イ)占有の瑕疵の承継 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、占有の瑕疵(悪意・有過失・強暴・隠避など取得時効 の完成に不利になる事由)を承継しなければならない(187 条 2 項)。設例 8 において、D が B の占有を合わせて主張する場合、B の悪意を承継し、20 年の占有期間が要求される。よって、この場合には、時効期間が満了していないことになる。 逆に、悪意占有者が善意占有者の占有期間を合わせて主張する場合には、後者の占有開始時を基準に 善意・無過失が判断される(判例 10)。

  • 29

    時効援用者が主張・立証しなければならない所有権取得時効の完成要件

    下記の他に、時効援用の意思表示が成立要件となる。――。 ア)長期取得時効 ① ○年○月○日に、目的物を占有していたこと ② ①の時点から 20 年を経過した□年□月□日終了時に、目的物を占有していたこと イ)短期取得時効 ① ○年○月○日に、目的物を占有していたこと ② ①の時点から 10 年を経過した□年□月□日終了時に、目的物を占有していたこと ③ 目的物が自己の所有であると信じるにつき、過失がなかったとの評価を根拠づける事実

  • 30

    所有権取得時効の完成を争う相手方の阻却要件 ア)長期・短期共通の阻却要件4つ イ)短期取得時効の阻却要件2つ

    ア)長期・短期共通の阻却要件 ① 所有の意思の不存在 ② 占有の強暴性 ③ 占有の隠秘性 ④ 占有の中断 イ)短期取得時効の阻却要件 ① 占有者が占有開始時に悪意であったこと ② 占有者に過失がなかったとの評価を妨げる事実

  • 31

    消滅時効の対象となる権利2つ

    債権、債権又は所有権以外の財産権

  • 32

    人の生命・身体侵害を理由とする損害賠償請求権 【設例 9】A は、Y 病院において早期発見癌の切除手術を受けたが、執刀医 B のミスにより死亡した。 そこで、A の相続人 X が、Y に対して損害賠償を請求した。 ① X は、Y に対して、診療契約上の債務不履行を理由として損害賠償を請求した。 ② X は、Y に対して、不法行為(715 条の使用者責任)を理由として損害賠償を請求した。 時効期間はそれぞれどうなるか?

    (1) 短期時効期間 不法行為による損害賠償請求権も、短期時効期間が 5 年となる(724 条の 2)。 (2) 長期時効期間 債務不履行による損害賠償請求権も、長期時効期間が 20 年となる(167 条)。

  • 33

    定期金債権とは?

    一定の期間にわたり金銭その他の物を給付させることを目的とする債権

  • 34

    法的可能性説(通説)とは?

    「権利を行使することができる時」とは、権利を行使することについて法律上の障害がなくなった時 とする説

  • 35

    現実的期待可能性説(通説じゃない)とは?

    「権利を行使することができる時」とは、 権利行使が可能であることを知っているべき時、すなわち、 債権者の職業・地位・教育などから、「権利を行使することを期待ないし要求することができる時期」 であるとする説

  • 36

    166 条 1 項 1 号の時効期間が進行するためには、「権利を行使することができることを知った」ことに加えて、何が必要か?

    客観的にも権利を行使することができることが必要

  • 37

    【設例 3】Y は、20 年以上前に甲土地を買い受け、同地上に家屋を建てて居住していた。その後、近時 に至り、隣地乙を所有する X が、建物を建築するために乙土地を測量したところ、甲・乙両土地間の境 界となっていたブロック塀が、乙土地側に 1 メートルほど越境していることが判明した。そこで、X は Y に対して、越境部分の土地の明渡しを求めた。 取得時効は認められるか?

    権利者らしい状態が一定期間継続することによって権利取得の効果が生じる時効を、「取得時効」と いう。設例 3 において、Y に越境部分の土地所有権につき取得時効が認められれば、Y は、X の明渡請 求に応じなくてよいことになる。

  • 38

    【設例 4】A は、B から 100 万円を借りたが、返済期日から 5 年が経過するまで、B から音沙汰のない 状態が続いた。その後、B が、突如として、債務の弁済を請求してきた。 消滅時効が認められるか?

    権利が行使されない状態が一定期間継続することによって、権利消滅の効果が生じる時効を、「消滅 時効」という。設例 4 において、B の債権につき消滅時効が認められれば、A は債務の履行を免れるこ とができる。

  • 39

    【設例 12】X は、道路上を歩行中にひき逃げに遭い、後遺障害を負った。そこで、X は、加害車両の運 転者として嫌疑をかけられていた A に対して、自賠法 3 条に基づき損害賠償を請求する訴訟を提起した。 しかしながら、X の症状固定から 3 年以上が経過した後、A を加害車両の保有者とは認めがたいとの理 由で、X 敗訴の判決が言い渡され、それが確定した。そこで、X は、自動車保有者が明らかでないため に自賠法 3 条により損害賠償を請求できない被害者に政府に対する損害填補請求権を認める自賠法 72 条 1 項前段に基づき、Y(国)に対し、後遺障害による損害の填補を請求した。これに対して、Y は、 自賠法 75 条の時効を主張した(最判平成 8・3・5 民集 50‐3‐383 をもとにした事案)。 判例の考え方は?

    かつては、判例も法的可能性説であるとされていたが 15、近年の判例は、①権利の行使につき法律上 の障害がないだけではなく 、さらに、②権利の性質上、権利行使が現実に期待のできるものであるこ とを要する 、としている。②の分だけ現実的期待可能性説に近づいているものの、債権者の個人的事 情まで考慮されているわけではない。 例えば、自賠法 75 条は、「(請求権)を行使することができる時」から 3 年の時効期間を定めている ところ、前掲最判平成 8 年は、ある者が交通事故の加害自動車の保有者であるか否かをめぐって、その 者と被害者との間で自賠法 3 条の損害賠償請求権の存否が争われている場合について、 自賠法 3 条の請 求権が存在しないことが確定した時が起算点になるとした。

  • 40

    【設例 13】A と B は、A が甲建物の所有権を取得した場合には、A が甲を B に無償で譲る旨の停止条 件付贈与契約を締結した。A が甲の所有権を取得したが、B がそれを知ったのは、それから 2 年後であ った。さらに 3 年が経過してから、B は、A に対して、甲の引渡しと登記移転手続を請求した。 時効期間が進行するのはいつか?

    不確定期限または停止条件が付されている権利については、当該期限が到来し、または、当該条件が 成就した後に、期限の到来または条件成就の事実を知ったことが必要とされる。

  • 41

    イ)法的評価が一義的でない発生原因に基づく権利 【設例 14】A は、宝飾品店 Y の従業員であったが、夜間の単独宿直中に、盗みに入った B により殺害 された。 A の父母・相続人である X らが事件の経緯を調査したところ、事件発生から 5 年が経過した後、Y は、それまでも盗難被害があったにもかかわらず、のぞき窓・インターホン・防犯チェーン・防犯ベルといった防犯設備を設置せず、また、宿直員を適宜増員する等の措置も講じていなかったことが判明 した。そこで、X らは、Y に対して、労働契約上の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償を請求した 時効期間が進行するのはいつか?

    法的評価が一義的でない原因によって権利が発生した場合には、債権者が発生原因ありとの法的評価 を認識していることまでは要求されないが、一般人であれば発生原因ありとの評価するに足りる事実を 認識していれば、時効期間が進行するものと考えられる。 例えば、設例 14 の事案において、使用者 Y は、労働契約に基づき A に対して、「労働者が労務提供のため設置する場所・設備もしくは器具等を使用し、または、使用者の指示のもとに労務を提供する過 程において、労働者の生命および身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」を負う。このような 安全配慮義務の違反を理由とする損害賠償請求権は、166 条 1 項の時効期間に服するが、安全配慮義務 違反があったか否かは、様々な事情を総合的に判断する必要があり、労働者の生命・身体が害された事 実を知っただけでは、直ちに「権利を行使することができることを知った」とはいえない