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現代紛争論 Week10紛争の終焉

Aiko Kobayashi

問題数 31 • 6/20/2025

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紛争の終焉とは？

内戦と特定する際に使用されている、組織されたアクター、政治的目的、暴力これらのものがなくなれば紛争の終焉

紛争が終焉した日を特定することが難しい理由３つ

• 武装勢力内部の細分化：妥協する穏健派と、和平プロセスを台無しにする過激派の分裂 • 合意と履行：和平合意を締結するのと、履行するのは別（例：南スーダン 2018年 R-ARCSS（和平合意）締結 → 2023年3月現在も履行中） • 暴力の継続：元戦闘員、社会の暴力

低強度の紛争になり継続した紛争の事例

ミャンマー（KNU）カレン民族同盟（KNU）： • カレン族の自治権拡充を目的に、カレン族指導者により設立 • 1976年以降、ミャンマー軍政に対して自治権やカレン族の権利尊重を要求 • 2012年1月、政府との停戦協定に合意 • 2013年11月以降、政府と少数民族側との間で、全土停戦協定（NCA）に関する公式協議 • 2015年10月、KNUを含む8組織が同協定に署名 • 2020年5月、国軍兵士の増強などを受け、国軍側が停戦協定に違反したと非難 • 2020年12月以降、KNUの軍事部門KNLAと国軍が衝突

内戦は何かの要因によって生じるのであれば、その要因を満足的に対処すれば、平和になるというアプローチの問題点２つ

①どの要因が重要かについてのコンセンサスがない ②内戦の発生の要因 ≠ 内戦の再発の要因

内戦の５０年前と現在の違い

５０年前；これまでに国家に挑戦したことのなかった反政府武装勢力によって生じていた現在の内戦：ほとんどが再発により生じている

内戦が再発する理由

Conflict Trap （Collier et al 2003）：一度内戦や武力紛争を経験した国は、経済的・政治的に不安定になり、将来的にも再び紛争に陥りやすくなるという「負の連鎖」のこと

内戦による破壊の影響３つ

• 紛争後生活水準が悪化→反乱に参加したほうがいい生活に • インフラが整っていない→政府の領土支配の能力が限られる・より脆弱な政治・社会制度 →平和的に政治的目的を達成するのが困難　　　↓ 反乱の機会費用が下がる

内戦が再発する要因の一つであるBad governance （悪いガバナンス）（Walter 2015）とは？

国家が腐敗していて透明性がなく、国民の声に応えず、権力が特定の集団に偏っているような状態

Walter （2015）：内戦が再発したとみなす条件３つ

①2年間の平和な時期が存在すること ②新しい紛争は、1000人以上の死者を生じさせること ③同じ戦闘員により、同じ争点について争われていること

Conflict outcome（紛争のアウトカム）（Mason et al 2011）が内戦を再発させるという考え方内戦がどのように終結したか」が、その後の再発の可能性を大きく左右するとの考え方

決定的な勝利は内戦を再発させにくい和平合意はコミットメント問題を生じさせやすい

どのように紛争が終焉したかによって、紛争後のForeign Direct Investmentにも変化がある（Bak and Lee 2021） FDIを控える場合と増加する場合

控える場合紛争の再発が懸念される場合、紛争が決定的に終焉していない場合増加する場合政府の勝利により終焉した内戦国、大国が和平合意に関与している場合

紛争の再発に伴う投資の懸念は？３つ

政策に対する不確定要素物資への物質的ダメージ武装したアクターに利用される →内戦が決定的に終焉していない状況では、政府は受け取った投資を武装勢力への戦闘に使用する可能性

Fragmentation （細分化）（Rudloff and Findley 2016）からみた内戦の再発の理由の説明

もとの反政府武装勢力から新しい勢力が分離する→もとの反政府武装勢力の戦闘員が、戦略やゴールにおいて意見の不一致→交渉で包括的に合意するのが困難

Amnesty（恩赦）（Dancy 2018）から内戦が再発する理由を説明すると？

和平合意に恩赦がある場合には、内戦が再発する可能性が低くなる←和平合意を履行するインセンティブがある

External support（外部の支援）（Karlén 2017）が内戦の再発に与える影響

外部の支援があると再動員を容易にするため再発しやすい

Ansorg, Haass, Strasheimにより提案された３つの異なる社会レベルによる平和の捉え方

Micro level: → 一般大衆の態度や行動に焦点ー一般大衆にどの程度政治的暴力が受け入れ・拒否されており、行われているか Meso level: → 集団の態度や行動に焦点ー政府に挑戦したり他の集団を攻撃するのに暴力を使用することを集団が支持するかどうか Macro level： → 政治的・官僚エリートの視点や行動に焦点ー政治的違いを解決するのに、武力を使用するかどうか

Peace Triangleとは？

争点（Issues）、行動（Behaviour）、態度（Attitudes）の３つの要素がバランスよく対処されることで持続可能な平和が可能になるという考え方

Stability （安定性）から見た平和

関係の均衡が保たれている状態

平和の指標：Everyday Peace Indicatorsはどのように平和を評価するか？

紛争の被害を受けたコミュニティに焦点を当て、生活の経験に基づき平和の質、平和への脅威をコミュニティメンバー自身が評価する

Conflict trapの社会的・経済的影響

社会的影響：集団間の不信経済的影響：経済発展を妨げる

Peace Triangleの要素の一つである争点（Issues）から見た平和の種類３つ

1. Unresolved Peace（解決されていない平和）争点（Issues）が解決されていないが、暴力行動は一時的に停止している。 2. Restored Peace（修復された平和）アクター間で暴力が止み、争点に対して一定の解決が見られる。 3. Contested Peace（紛争中の平和）「平和」とされているが、アクター間でその定義や実態が争われている状態。

Restored Peaceの事例は？

シエラレオネ内戦 • 1991年3月 Revolutionary United Front （RUF）はリベリア領内からシエラレオネ侵攻を開始（ダイヤモンド輸出が政府に独占されていることが地方の貧困を生じさせたと批判し、雇用機会の確保などを掲げる） • 1999年7月 RUFとシエラレオネ政府がローマで和平合意締結 • 2000年4月反政府武装勢力が約500人の国連の兵士を人質にとる • 2000年～2002年イギリス軍によるシエラレオネ内戦への介入作戦 • 2002年1月内戦が終焉、後に紛争後の複数政党制選挙を実施 • 治安が改善し、国連平和維持活動は2005年に撤退 • しかし、紛争後の状況は脆弱なまま・・・ → 腐敗、若者の高失業率、約束した政治・経済改革が行われていないことへの人々の恨み → 内戦の発端となった社会の不満は残ったまま

Peace Triangleの一つである、行動（Behaviour）から見た平和３つ

1. 🧩 Partial Peace（部分的平和）暴力が一部の地域または集団でのみ停止している状態。 2. 🗺 Regional Peace（地域の平和）特定の地理的地域だけで平和が達成されている 3. ⚠ Insecure Peace（安全ではない平和）一見暴力が止んでいるように見えても、人々が依然として不安や恐怖の中で暮らしている状態。

Peace Triangleのうちの一つである、態度（Attitudes）から見た平和３つ当事者や市民の間にある「感情・認識・信頼・敵意」などの心理的要素が平和の質にどう影響するか

1. 🧊 Polarised Peace（極化した平和）社会が深く分断され、対立する立場の人々の間で敵意や不信が残っている状態。 2. ⚖ Unjust Peace（不公平な平和）一方の側が力で平和を押しつけ、他方は不満や屈辱を抱えている状態。 3. 😨 Fearful Peace（恐ろしい平和）市民が抑圧・報復を恐れて沈黙している状態。

安全から見る平和な状態は？

危険・脅威がなく安心して暮らせること

Resilience（レジリエンス）から見た平和な状態とは？

危機やショック（例えば紛争、災害、経済危機）に直面しても、柔軟に対応し、変化に適応しながら持続していける状態

レジリエンスの特徴３つ

・社会の特徴に注目する・能力の構築（Capacity building）　社会や人々が困難に対応する力を育てること。・地域の人々のエンパワーメント（Local empowerment）　外部からの支援ではなく、地域の人々自身が主体的に問題に対処できるようになること。

平和の指標：Fragile State Indexによる平和の評価の仕方は？

暴力的内戦への脆弱性の観点で評価

平和の指標：Positive Peace Indexによる平和の評価の仕方は？

８つの積極的平和の要素により平和的な社会を維持する態度、制度、構造をとらえる

Quality Peace（質の高い平和）による平和とは？

単に戦闘が終わっただけの「平和」ではなく、紛争後の社会が持続可能で安定し、暴力が再発しない状態

Quality Peaceの評価要素４つ

①Post war security（紛争後の安全）：From bullet to ballot ②Governance（ガバナンス） ③Reconciliation and transitional justice（和解と移行正義）： • Quality Peaceが先に達成されるべきか、正義が先か ④Civil society（市民社会）