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第8回空間①陸（1）領土の得喪

Aiko Kobayashi

問題数 21 • 6/17/2025

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問題一覧

国家領域とは？

国家が主権を行使する物理的な空間の総体

地球を国際法的に二つの領域に分けると？

国家領域、国際公域

国際化地域とは？

特定の国家の単独支配下にはなく、国際的な機関・複数国によって管理・規制される地域

国際公域とは？

いかなる国家の主権にも属さず、すべての国（＝国際社会全体）の共同の利益のために利用されるべき領域

領域主権の２つの側面

所有権的側面：領土の排他的な処分権支配権的側面：領域内での排他的な管轄権行使

領域使用の管理責任とは？

国家が自国の領域を利用するにあたり、他国や国際社会に対して損害を及ぼさないように、適切な注意義務（due diligence）をもって管理・監督する義務

原始取得（所有者のいない土地）における領土の取得原因２つは？

先占：① 領有意思を伴う② 無主地の③ 占有添付： ①自国領域内での② 無主地の③ 出現

領域権原とは？

領土の取得の根拠となる事実

先占の要件４つ

①主体：国家 ②客体；無主地 ③主観的要件：領有意思 ④客観的要件：実効的占有

クリッパートン島事件（墨・仏、1931年）百選25 仏海軍による編入宣言＋在ホノルル領事への通報・英字新聞での公表とは？

争点：　太平洋上の無人島「クリッパートン島（Clipperton Island）」の主権がメキシコかフランスか、どちらにあるかを争った領有権紛争事件。 🔸 フランスの行動（領有主張） 1858年：フランス海軍が島に編入宣言を掲げた記念碑を設置（いわゆる「宣言による取得」）同年：フランス政府、在ホノルル領事を通じて編入を公表（通報）英字新聞にも掲載：一般に領有の意思を知らしめる形となった 👉 これらの一連の行為が「先占（occupation）」による有効な領有の証拠とされた。仲裁判断（1931年、スイスの王立仲裁人）フランスの領有を認定理由：フランスによる「明示的な意思表示（宣言）と通知」があり、その後の継続的実効支配はなくとも、当時の先占の要件としては十分無人島のような特殊な地域については、必ずしも継続的な実効支配（administration）がなくても、先占の意思表示と外部への通知・公開があれば、主権取得の効果がある←先占の実効的占有という要件が満たされていなくても先占が認められる場合がある。

先住民族居住地が無主地と言えるか？西サハラ事件勧告的意見（ICJ、1975年）判国76

言えない、原初的先占の対象とはならない〔19世紀後半には〕社会的および政治的な組織を有する部族や人々の住まう土地は無主地とはみなされていなかった。こうした土地の場合、主権の取得は無主地の『先占』を通じた原初的権原としてではなく、現地首長との間の協定を通じて一般に行う

添付とは？

国家領域内での新たな陸地の成立（自然・人工）

領土の取得原因６つ

先占、添付、取得時効、征服、割譲、併合

民法162条で法的安定性の確保の観点から認められている取得時効（他の国の領土を長い時間占有していた場合、その領土を取得することができるか？）は国際関係にも適用できるのか？ CASE チャミザル事件（墨・米、1911年）百選26 紛争の背景リオ・グランデ川はアメリカとメキシコの国境の一部を成していたが、1864年の洪水により流路が自然に変化。この変化によって、元々メキシコ側だった土地がアメリカ領のように扱われるようになった。双方が土地の帰属を主張し、国境が自然現象で移動した場合の法的効果が争点となった。

争いあり占有された領土について抗議していなければ、黙示的に承認したものとみなす「河川の自然な移動（アクレション）」は国境線を動かすが、「急激な流路変更（アブレージョン）」や人工的改変によるものは国境に影響を与えない。本件は急激な変更であるとして、メキシコの主張を認めた（領有権はメキシコにある）。米国の援用する時効の権利が国際法の原則として受け入れられているかという非常に争いのある問題を判断する必要はない。私法では、時効の中断は訴訟により行われるが、国家間の関係ではこれはもちろん不可能。

領土紛争解決が困難な理由３つ

①公示制度・義務的裁判制度の不存在 ②実効性の要請↔️合法性の要請←実効支配を行なっている国に対して領土の取得を認めるのがわかりやすいが、実効的に支配している国による領土取得を認めてしまうと、武力行使による領土取得も認めることになる ③終局的かつ平和的な領土紛争の解決が必要であること

CASE パルマス島事件（米・蘭、仲裁、1928年）紛争の背景 1898年の米西戦争の結果、アメリカはスペインからフィリピン諸島を譲り受けた。アメリカはその中にパルマス島も含まれると主張。一方でオランダは、長年この島を実効的に支配していたとして自国領と主張。両国は争いを国際仲裁に付託。

✅ 結論：パルマス島の主権はオランダにある・発見だけでは主権の根拠にはならず、その後の実効的行為（行政行為など）による支配が必要実際に ① 継続的かつ ② 平穏に ③ 国家機能が表示されているかが、紛争の場合には領域主権の妥当で自然な基準・「時際法（intertemporal law）」：権利の創設と権利の存続の区別 → 創設時に有効だった権原（発見）は、その後に成立した新たな権原（先占）に優越される

領土紛争の解決基準２つ

継続的かつ平穏な実効的支配領土区分の継続性：ウティ・ポシデティス原則：独立時の国境は、旧宗主国の時代における行政境界をそのまま国境とする

継続的かつ平穏な実効的支配の要件３つ

①国家機能の実効的な表示 ②平穏：他国による承認・黙認（抗議の欠如） ③継続的：決定的期日（紛争解決の基準となる日）

CASE ペドラ・ブランカ／プラウ・バツ・プテー事件（マレーシア対シンガポール、ICJ、2008年）百選28 シンガポールの実行的支配に対して、マレーシアが抗議を行わなかった場合、シンガポールの領有権は認められるか？

認められる←黙示の承認

ウティ・ポシデティス原則（Uti Possidetis）とは？

実行的支配に関わらず独立時の国境は、旧宗主国の時代における行政境界をそのまま国境とする

CASE ブルキナファソ・マリ国境紛争事件（ICJ、1986年）判国39 百選5 両国はともにフランスの旧植民地で、独立後の国境が不明確な部分が存在していた。両国の住民の民族や言語が国境を越えて混在していたため、国境線に関する緊張が高まり、1985年末に武力衝突が発生。 1986年、当事国は紛争をICJに付託。植民地が独立して、植民地時代の境界が曖昧な場合、どのように紛争の解決を図るか？

両当事国は「植民地時代の実効的支配（colonial effectivités）」、すなわち、植民地期に当該地域で領域的管轄権が実効的に行使されていたことの証拠としての行政当局の行為を援用している。植民地時代の**実効的支配（effectivités）**は、植民地行政文書（法的権原）と結びつきながら、ウティ・ポシデティス原則の適用において補助的・解釈的な役割を果たす ①法的権原と一致する場合：effectivitésは単にその権利行使を裏付ける。 ②法的権原と矛盾する場合：権原が優先される。 ③法的権原が存在しない場合：effectivitésは重要な根拠として考慮される。 ④権原の地理的範囲が曖昧な場合：effectivitésはその解釈を補完する決定的要素となる。

第8回 空間①陸（1）領土の得喪

第8回空間①陸（1）領土の得喪