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第６回

Aiko Kobayashi

問題数 10 • 7/17/2024

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自動車の一斉検問(不審車両だけではなく無差別に検問)により酒気帯び運転の事実が確認されて起訴された被告人が、一斉検問は何ら法的根拠もなく行われたものであるとして争った事例。検問に法律の根拠は必要か？

警察法2条1項が『交通の取締』を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるしかし、国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでないことも同条2項及び警察官職務執行法1条などの趣旨にかんがみ明らかしかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべき

河川法・漁港法（当時）上の占用許可なしにヨットの係留施設（鉄杭）が設置され、船舶の航行に危険が生じたため、当時の浦安町長（Y）（後に浦安町は市制施行により浦安市となる）は権限行使の根拠規定なしに鉄杭の撤去を行った。それに対して、浦安市の住民Xは、かかる撤去作業は根拠規定のない違法な行為であり、それに要した費用が違法に支出されたとして、当時の地方自治法242条の2に基づき、浦安市に代位して、Y個人が鉄杭の撤去に要した費用を浦安市に賠償することを求めて住民訴訟を提起した事例。 Xの請求は認められるか？

Xの請求は却られる上告人〔Y〕は、……船舶航行の安全を図り、住民の危難を防止するため、その存置の許されないことが明白であって、撤去の強行によってもその財産的価値がほとんど損なわれないものと解される本件鉄杭をその責任において強行的に撤去したものであり、本件鉄杭撤去が強行されなかったとすれば、千葉県知事による除却が同月9日以降になされたとしても、それまでの間に本件鉄杭による航行船舶の事故及びそれによる住民の危難が生じないとは必ずしも保障し難い状況にあったこと、その事故及び危難が生じた場合の不都合、損失を考慮すれば、むしろ上告人の本件鉄杭撤去の強行はやむを得ない適切な措置であったと評価すべき上告人が浦安町の町長として本件鉄杭撤去を強行したことは、漁港法及び行政代執行法上適法と認めることのできないものであるが、右の緊急の事態に対処するためにとられたやむを得ない措置であり、民法720条の法意に照らしても、浦安町としては、上告人が右撤去に直接要した費用を同町の経費として支出したことを容認すべきものであって、本件請負契約に基づく公金支出については、その違法性を肯認することはできず、上告人が浦安市に対し損害賠償責任を負うものとすることはできないといわなければならない。

住民訴訟とは？

地方公共団体の公金や財産の管理に違法な点があった場合に、当該地方公共団体の住民であれば誰でも提起できる訴訟

信頼保護の原則とは？

行政の言動を信頼して行動した者を保護しようとする原則

青色申告制度とは？

一定の帳簿書類を備えて、これに基づき申告を行う納税者に様々な特典を与える制度

更正処分とは？

納税申告書の提出があった場合において、当該申告書に記載された課税標準等または税額等が法令の規定に従っていなかったときなどに、これを変更するために行われる課税処分

過少申告加算税とは？

期限内申告書が提出された場合において、修正申告または更正がなされ、当初の申告税額が結果的に過少になったときに課される税

Xが青色申告の承認を受けることなく、税務署長Aに所得税について青色申告書による確定申告をしたところ、AはXに青色申告の承認があるか否かを確認せずに申告書を受理し、さらに以後4年間Xに青色申告用紙を送付するなどして、Xの申告に係る所得税を収納しつづけた。しかし後になって、AはXが青色申告の承認を受けていないことに気づき、過去2年分の所得税について青色申告の効力を否定し、更正処分と過少申告加算税の賦課処分を行なった。これらの処分は許されるか。

信頼保護原則の存在を認めず、更生処分などの課税処分を適法とした。法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理〔信頼保護の原則〕の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、〔a〕税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、〔b〕納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、〔c〕のちに右表示に反する課税処分が行われ、〔d〕そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか，また、「e〕納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠青色申告書の受理や申告用紙の送付によって、青色申告の承認がなされたとはいえないとして、〔a〕の要件の存在を否定租税関係：信頼保護の原則は法律による行政の原理（法律で定められた税額を必ず徴収することが行政には要請されている）と対立する。

宜野座村工場誘致政策変更事件　Y村では、村長BがX会社に対して製紙工場の誘致を積極的に進め、工場用地の無償提供などの便宜を図ることを約束した。それを受けて、XはY村への工場進出を決定し、機械設備の発注および敷地の整備を完了していた。ところが、その後の村長選挙で誘致反対派のCが村長に当選し、Cは誘致不協力を宣言した。そのため、Xは工場の建設・操業を断念せざるをえなくなった。XはY村に対して損害賠償を請求できるか。村長Bが協力してくれることで、製紙工場が創業できるというXの信頼を保護できるかが問題、住民自治の点から村長が変わった場合、政策が変わることは予測できるため、信頼保護が否定されるはずだという主張

地方公共団体の施策を住民の意思に基づいて行うべきものとするいわゆる住民自治の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。しかし、右決定が、〔a〕単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、〔b〕その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合には、右特定の者は、右施策が右活動の基盤として維持されるものと信頼し、これを前提として右の活動ないしその準備活動に入るのが通常である。このような状況のもとでは、たとえ右勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に右施策の維持を内容とする契約が締結されたものとは認められない場合であっても、右のように密接な交渉を持つに至った当事者間の関係を規律すべき信義衡平の原則に照らし、その施策の変更にあたってはかかる信頼に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである。すなわち、〔c〕右施策が変更されることにより、前記の勧告等に動機づけられて前記のような活動に入った者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、〔d〕地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、〔e〕それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。

信頼保護の原則が適用されるかどうかを検討する際のポイント４つ

原告に対する行政の個別具体的な働きかけの有無原告が行政の言動を信頼した期間の長さ信頼保護の原則の適用を否定した場合の損害の大きさ信頼保護原則と「法律による行政の原理」が対立するか否か（対立する場合には、信頼保護が認められる可能性が小さくなる）