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第 10講相続の効力①

Aiko Kobayashi

問題数 27 • 7/4/2025

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包括承継の対象とならない権利義務３つ

① 一身専属権（896 条ただし書） ② 相続人の固有財産に属する権利義務 ③ 祭祀財産（897 条）

一身専属権が包括承継の対象とならない権利義務とされている理由

個人の人格や法的地位と密接不可分な関係にあるため、他の者に帰属させることが適当でないから

保証債務は相続の対象となるか？

対象となる

身元保証（被用者の雇入れによって使用者に生じる損害の担保を目的とする保証）は相続の対象となるか？

対象とならない

不動産賃借権は相続の対象となるか？

対象となる

【設例 2】A は、同人名義の預貯金通帳・印章および同通帳から引き出した金員を B に交付し、A の入院中の諸費用の病院への支払、A の死後の葬式を含む法要の施行とその費用の支払、A が入院中に世話になった家政婦 C および友人 D に対する応分の謝礼金の支払を依頼する旨の委任契約を、B との間で締結した。その後まもなく、A は死亡した（最判平成 4・9・22 金法 1358‐55）。この委任契約は有効か？

有効 (1) 原則委任契約は、当事者間の人的信頼関係を基礎とするものであることから、当事者の一方の死亡により終了する（653 条 1 号）。 (2) 例外委任者の死亡後の事務処理を委任する趣旨の契約である場合には、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意を包含しており、 653条もそのような合意の効力を否定するものではない（判例 8）。

被相続人が締結した生命保険契約に基づく生命保険金は、相続の対象となるか？

受取人の固有財産に属するものであり、相続の対象とならない ① 特定人が受取人に指定されていたときは、その者が保険契約から生ずる固有の権利として保険金請求権を取得する。したがって、保険金請求権は、受取人の固有財産であり、相続財産に属さない ② 受取人を単に「相続人」と指定していたときは、特段の事情のない限り、「被保険者の死亡の時における、すなわち保険金請求権発生当時の相続人たるべき者個人」を指定したものと解釈される。受取人の固有財産に属することは、①と同様である ③ 受取人を「相続人」と指定する中には、特段の事情のない限り、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれている

死亡退職金・遺族年金は相続対象となるか？

ならない受給権者の固有財産に属する

【設例 6】A は宗教家であり、B はその妻であったが、まず B が死亡し、ついで A も死亡した。A の相続人は、養子である X のみであった。他方、 A と B の遺骨は、埋葬されることなく、 A の信者であった Y₁・Y₂夫婦が占有していた。そこで X は、A の菩提寺に埋葬するため、Y らに対して遺骨の引渡しを請求した（最判平成元・7・18 家月 41‐10‐128）。祭祀に関連して、遺体・遺骨が誰に帰属するのか、が問題

(1) 埋葬された古い遺体・遺骨墳墓に納められている古い遺体・遺骨の所有権の帰属については、墳墓の所有権と一体的に 897 条によって処理 (2) 埋葬前または埋葬後まもない遺体・遺骨埋葬前の遺体・遺骨または埋葬後まもないそれらの所有権の帰属については、相続人とする説や喪主とする説もあるが、設例 6 の事案において最高裁は、慣習上の祭祀主宰者である X に帰属したものとした原審の判断を、正当として是認した。

複数の相続人によって承継される相続財産は、その共有に属するものと当然に分割承継されるものとに区別されるがその制度のことをなんというか２つ

(1) 遺産共有 (2) 当然分割

共同相続人間では、遺産分割手続きと共有分割手続きのどちらが優先するか？

遺産分割手続（258 条の 2）

遺産共有の二元的構造とは？

(1) 包括財産の共有関係と(2) 個別財産の共有関係があること

遺産共有の法的性質は？

共有説遺産共有は 249 条以下に規定する共有とその性質を異にするものではない、との立場

遺産に含まれる不動産は、遺産共有の対象となる。この場合の不動産登記の手続き方法２つ

(1) 共同相続登記 → 遺産分割後の持分移転登記 ① まず、相続を原因として、法定相続分または指定相続分による共有登記（共同相続登記）を行う。相続人の 1 人が単独で申請することができる（不動産登記法 63 条 2 項）。 ② 遺産分割後に、遺産分割を原因として、当該不動産の取得者への持分移転登記を行う。 (2) 遺産分割後の所有権移転登記共同相続登記をせずに、遺産分割を行ってから、相続を原因として、被相続人から所有権を取得した相続人への所有権移転登記を行うこと

【設例 7】甲土地を所有する A が遺言を残さずに死亡し、子 X と B が相続した。ところが、 B は、甲につき相続を原因として単独名義への所有権移転登記をしたうえで、これを Y に譲渡し、登記も移転した。そこで、X は、Y に対し抹消登記手続を請求した。【設例 7－2】設例 7 において、 A は、 X の相続分を 4 分の 3、 B の相続分を 4 分の 1 とする遺言を残していた。ところが、 B は、法定相続分での共同相続登記をしたうえで、登記上の持分 2 分の 1 を Y に譲渡し、その旨の持分移転登記を行った。そこで、X は、Y に対し抹消登記手続を請求した。 Xの持分についての登記は第三者に対抗できるか？

共同相続人の 1 人が相続により承継した不動産の持分については、法定相続分の限度で登記なしに第三者に対抗することができるが、法定相続分を超える指定相続分については、登記を備えなければ第三者に対抗することができない（899 条の 2 第 1 項）←Xは４分の２については第三者に対抗できるが、残る４分の１については対抗できない

被相続人が負担していた金銭債務のうち、可分債務については、法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する。その理由は？

仮に非分割承継とした場合（共同相続人の連帯債務になるとした場合）、相続債権者は、限定承認または財産分離がされない限り、各共同相続人の固有財産も全て債権全額の引当てとする事ができることになる。このような過大な利益を相続債権者に与えるよりも、相続分の限度で債務を負担させることで、相続人の固有財産を保護すべきであるから

【設例 8】A が遺言を残さずに死亡し、その相続人は、妻 B および子 C と D であった。 ① A は、G₁に対し 1000 万円の借入金債務を負っていた。どの様に債務が相続されるか？

法定相続分に応じて、B が 500 万円、C と D が各 250 万円の債務を、G₁に対し負担することになる。

【設例 8】A が遺言を残さずに死亡し、その相続人は、妻 B および子 C と D であった。 ② A は、H から住宅甲を賃料月額 10 万円で賃借し、B らと共に生活していた。A の死亡時、賃料 20万円が未払となっていた。

B らは A の賃借権を承継し、賃料債務を負担することになるが、この債務は、各共同相続人が賃借物全部を使用収益することができることとの対応上、可分債務ではなく、連帯債務として処理される

【設例 8】A が遺言を残さずに死亡し、その相続人は、妻 B および子 C と D であった。 ③ A は、E・F と共に、G₂に対し 1500 万円の連帯債務を負っていた（各人の内部的な負担部分は平等であったものとする。）。判例によれば、どの様に債務が分割されるか？

(1) 分割承継説（判例）通常の可分債務の処理を連帯債務にも妥当させる。すなわち、「連帯債務者の 1 人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる」設例 8③では、A の債務 1500 万円を、法定相続分に応じて、B が 750 万円、C と D が各 375 万円の債務として分割承継する。B らは、それぞれ E・F と連帯して G₂に対し債務を負うことになるが、B・ C・D の間では連帯債務の関係にはならない。

相続分の指定がない場合、分割承継の割合は？

法定相続分に応じて、可分な相続債務を承継

相続分の指定がある場合、共同相続人間における承継割合は？

指定相続分による

相続分の指定がある場合における共同相続人と相続債権者の関係内容２つ

① 相続債権者は、相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができる（902 条の 2 本文）。法定相続分を下回る指定を受けた共同相続が、法定相続分に応じて弁済した場合には、法定相続分を上回る指定を受けた共同相続人に対し、求償すべきことになる。 ② 相続債権者は、共同相続人の 1 人に対し指定相続分に応じた債務の承継を承認することで、指定相続分に応じた債務の履行を請求することができる（同条ただし書）。

共同相続人全員が合意すれば、原則分割されるはずの相続債務を協議分割・調停分割の対象とすることができるか？

できる

相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは、どの様に承継されるか？

法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する（判例）

相続分の指定により法定相続分を超える割合で債権を分割承継した場合、債務者と第三者に対抗するためには次の３つのいずれかの対抗要件を備えなければならないその対抗要件とは？

① 共同相続人全員による債務者に対する債権承継の通知（899 条の 2 第 1 項、467 条 1 項） ② 法定相続分を超えて承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容を明らかにして行う、債務者に対する債権承継の通知（899 条の 2 第 2 項） ③ 債務者の承諾（899 条の 2 第 1 項、467 条 1 項）

特定の相続人に承継することを指定された金銭債権を遺産分割することができるか？

共同相続人全員の合意があれば、遺産分割の対象とすることができる

判例によれば、共同相続された普通預金債権（通常貯金債権）・定期預金債権（定期貯金債権）は、「いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」この理由は？実質的な理由と理論的な理由（普通預金債権と定期預金債権に分けて理論的理由は述べる）

(1) 実質的な理由――現金との類似性←評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるにあたっての調整に資する財産であること (2) 理論的な理由ア）普通預金債権普通預金債権は、1 個の債権として同一性を保持しながら、常にその残高が変動し得るもの（入出金により）→預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、当該債権は確定額の債権として分割されることはない→入金があるたびに、誰の持分になるかを逐一計算する必要があり、計算が煩雑で合理的意思に反するイ）定期預金債権定期預金は、一定期間払い戻しをしないことを条件に利率が高いという特徴を持ち、当然に相続により分割された場合、共同相続人は共同して払い戻しを求めざるを得ないから。

第 10講 相続の効力①

第 10講相続の効力①