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第11回　空間③海洋（1）大陸棚、排他的経済水域、公海

Aiko Kobayashi

問題数 35 • 7/2/2025

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トルーマン宣言とは？

アメリカが自国沿岸の大陸棚にある天然資源について主権的権利（管轄権）を初めて主張した外交宣言

大陸棚において沿岸国が持つ権利は？

天然資源への排他的権利　非生物資源：鉱物資源　生物資源：「大陸棚の上又は下に存在し、非生物的鉱物及びその他の非生物的資源並びに、採捕に適した段階において海底若しくはその下で静止しており又は絶えず海底若しくはその下に接触していなければ動くことのできない生物」

大陸棚条約における大陸棚の定義は？

沿岸国の領域の海岸に隣接する、水深200メートルまでの海底、またはそれ以上の深さでも天然資源の開発が可能な水域の海底及びその下の区域

UNCLOSにおける大陸棚の定義は？

① 沿岸国の陸地の自然な延長（地形的なつながり）が続くところまで ② ただし、地形的につながっていなくても、基線から200海里までは自動的に大陸棚とみなす

沿岸国が200海里を超えて大陸棚を拡張したい場合に、その科学的・技術的妥当性を評価し、勧告を出す国連の専門機関は？

大陸棚限界委員会

ニカラグア200海里以遠大陸棚境界画定事件（ニカラグア対コロンビア、2023年）重判令5 ニカラグアは、自国の大陸棚が200海里を超えて拡張し、コロンビアの基線から200海里以内の区域にまで及ぶと主張。これは、「自国の大陸棚が他国の200海里以内まで食い込めるか？」という国際法上の根本的な争点を含む事件

コロンビア勝訴慣習国際法上、いかなる国の200海里を超える大陸棚も、他国の基線から200海里以内には延び得ない。

EEZの範囲は？

基線から200海里までの上部水域・海底・地下

EEZにおける沿岸国の権利３つ

① 天然資源の探査・開発・保存・管理その他経済的な探査・開発の主権的権利 ② 人工島・海洋科学調査・海洋環境保護のための管轄権 ③ UNCLOS上のその他の権利例：接続水域、大陸棚

EEZ内において沿岸国が自国の資源（特に漁業）を守るために外国船に対してどのような法執行ができるか？

沿岸国は、自国のEEZ内での**漁業規制違反などに対し、次のような措置を取ることができる：・乗船（boarding）・検査（inspection）・拿捕（arrest）・司法上の手続（judicial proceedings）

EEZで拿捕された外国船舶や乗組員に対する沿岸国が負う義務は？３つ

①速やかな釈放義務←合理的な保証が提供された場合 ②身体刑・拘禁の禁止 ③旗国への速やかな通報

バンカリングとは？

船舶に燃料（バンカー）を補給すること

サイガ号事件（II）（1999年 ⇒資料）百選31 背景船舶：セント・ヴィンセント籍の給油タンカー「サイガ号」が、ギニアのEEZ内で他国漁船への燃料供給（バンカリング）を実施。拿捕：ギニア当局がこれを密輸行為と見なし、船籍やEEZでの給油を理由に拿捕・乗組員抑留・燃料押収。 nippon.zaidan.info 提訴：セント・ヴィンセントが1997年11月にITLOSへ提訴し、即時釈放を求めた（第I号事件）。争点内容：　ギニアは、自国の排他的経済水域（EEZ）内で外国船がバンカリング（燃料供給）を行ったことを「密輸・違法経済活動」として、自国の関税法や刑法を適用して取り締まった。対立する主張：ギニア（沿岸国）： EEZ内での経済行為（給油）は自国の経済的利益に関わるため、関税法を適用できる。セント・ヴィンセント（船籍国）： EEZ内では「航行の自由」などが原則であり、沿岸国は限られた管轄権しか持たず、関税法の適用は国際法上許されない。

セント・ヴィンセント勝訴裁判所の判断：　沿岸国のEEZにおける管轄権は国連海洋法条約（UNCLOS）に基づいて限定されており、ギニアが自国の関税法を適用して拿捕・処罰したのは違法。 EEZにおいても外国船には航行の自由や無害通航が広く認められており、沿岸国がそれを制限できるのは国連海洋法条約で特に認められた場合に限る。

ヴァージニアG号事件（2014年 ⇒資料）船舶名：ヴァージニアG号（Virginia G）船籍国：パナマ（原告）沿岸国：ギニアビサウ（被告）ヴァージニアG号は、ギニアビサウの排他的経済水域（EEZ）内で操業していた外国漁船に対し、燃料を補給（バンカリング）していた。このバンカリング行為に関して、ギニアビサウ当局は「事前の許可なくEEZ内で漁業関連活動を行った」として、ヴァージニアG号を拿捕・検査・押収。さらに、乗組員の一部が拘束され、船舶や燃料も没収される事態となった。 3. ギニアビサウの主張ヴァージニアG号が行った給油行為は、漁業活動に密接に関連する商業活動であり、国内法（漁業法）により事前許可が必要とされている。許可を得ていなかったため、同国のEEZ管轄権のもとで取り締まり可能と主張。 4. パナマの主張（提訴内容）ヴァージニアG号は公海自由やEEZ内の正当な航行活動の一環として給油を行っており、ギニアビサウがそれを不当に制限し、船を没収したことはUNCLOS（国連海洋法条約）に違反していると主張。また、旗国であるパナマに対して迅速な通報をしなかったことも手続違反と訴えた。

・ギニアビサウは、EEZ内において外国漁船に燃料供給（バンカリング）を行う行為を規制する権限を有する・EEZ内では、沿岸国に相当な規制・取締権限が認められるが、行使は「必要かつ相当」である必要がある。・没収などの強い措置は例外的であり、比例原則を超えると違法になる。・旗国への通報義務（UNCLOS第73条4項）は厳格に遵守されるべき国際義務

公海（high seas）とは？

いずれの国の内水・領海・群島水域・EEZにも含まれない海域

公海自由の原則の内容３つ

①公海の領有禁止 ②全ての国への開放 ③権利行使の際に他国の権利への妥当な考慮・権利濫用の禁止

船舶の国籍のことをなんというか？

旗国

船舶の国籍が認められるための要件２つ

①国籍唯一要件：船舶は、原則として一国のみの旗（国籍）を持たなければならない ②真正な連関：旗国とその船舶との間に、実質的な経済的・行政的なつながりが必要という原則

旗国は、自国の国籍を与えた船舶に対してどの様な義務を負うか？

管理義務：乗組員の労働条件、船の構造・設備の安全性

便宜置籍とは？

実際の運航者・所有者の所在国ではなく、規制の緩い国に船舶を登録して国籍を得ること

CASE ノースター号事件（パナマ対伊、2019年、ITLOS ⇒資料）背景まとめ船舶：パナマ船籍のオイルタンカー「Norstar」所有者：ノルウェー企業 Inter Marine & Co. AS 活動内容：**1994〜1998年、地中海（公海）でヤットへの燃料供給（バンカリング）**を実施イタリア当局はこれを、イタリア領海外で行われた脱税行為とみなし、1998年8月にイタリア・サボーナ地裁が押収令を発し、その後スペイン・マヨルカ島のパルマで搭載中に拿捕イタリアによるパナマ船籍ノースター号の押収・拘束が国際法に違反するか？具体的には、イタリアが公海上で行った刑事・関税法の適用（船舶の押収）が、国連海洋法条約（UNCLOS）第87条（航行の自由）に違反するか。

イタリアの行為は、パナマ船籍船の航行自由（UNCLOS第87条）を侵害しており、違法と認定。イタリアは公海での管轄権を超えて介入した。

CASE ローテュス号事件（トルコ対仏、PCIJ、1927年）被害船舶の旗国（フランス）にも、海上の事故に関して管轄権が認められるか？

PCIJは、被害船舶の旗国にも一定の管轄権があると認めた←しかし、船舶の国籍国の管轄権強化を認めたため、国際海運業界から強い反対があった。というのも、被害船舶の旗国が管轄権を主張しやすくなると、海上事故の処理が多国間で複雑になり、運航に混乱やリスクが増大するとの懸念があったため。

ローチュス号事件における海運業界からの強い反発を受けて、UNCLOSで船舶事故時の刑事管轄権が認められるのは？

加害船舶の旗国or船長・船員の国籍国に限定

旗国主義（船舶の管轄権は旗国が有するという考え方）の例外（7章6節（3））２つ

1. 公海秩序の維持：海上犯罪への対処 2. 沿岸国法令の執行：追跡権（right of hot pursuit）

海賊の定義要件５つ

①主体：「私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客」 ②目的：「私的目的（private ends）のために行う」 ③行為：「すべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為」 ④客体：「他の船舶若しくは航空機又はこれらの内にある人若しくは財産」 ⑤場所：「公海」または「いずれの国の管轄権にも服さない場所」

CASE シーシェパード事件（2013年、米国第9巡回区控訴裁、日鯨研HP）背景シーシェパードは、商業捕鯨に反対して捕鯨船に妨害行為をした環境保護団体。彼らの行為が国際海洋法上の「海賊行為」に該当するかが問題となった。

結論として、シーシェパードの行為は海賊行為には該当しないと判断された行為は環境保護という理念に基づくもので、商業的利益を目的としないため、海賊行為の構成要件を満たさない。 ←しかし、海賊の定義の要件の一つである「私的目的」は金銭的利得に限定されず、倫理的・個人的・哲学的な動機も含まれると判断

公海上における非旗国（旗国以外の国）が他国の船舶に対して行使できる権利３つ

①近接権（right of approach）：船外から国旗・国籍を確認（慣習法上の権利） ②臨検権（right of visit）：乗船して船内調査 ③拿捕（seizure; arrest）

臨検権（right of visit）の要件は？

犯罪・無国籍・国籍偽装を疑うに足る「十分な根拠」があること

公海上において非旗国が拿捕できる対象は？３つ

奴隷取引・海賊、無許可放送

追跡権とは？

沿岸国が自国の管轄海域外に逃げた違反船舶を追跡・拿捕できる国際法上の権利

内水・群島水域・領海において適用される法令は？

自国の法令

接続水域・EEZ・大陸棚における適用される法令は？

当該海域に適用される法令

追跡権の要件２つ

①法令違反を「信ずるに足りる十分な理由」が必要 ②追跡の主体が軍艦・軍用航空機・明確な表示のある政府船舶であること

作業艇が海域内にあり、海域外に母船がある場合、追跡は可能か？

可能

追跡の方法３つ

①停止信号の発出 ②継続性：中断してはならない ③必要かつ合理的な実力行使

追跡権が消滅するのは？

追跡している船舶が他国領海へ入域した場合

第11回 空間③海洋（1）大陸棚、排他的経済水域、公海

第11回　空間③海洋（1）大陸棚、排他的経済水域、公海