第 11講 代理Ⅲ(表見代理)
問題一覧
1
無権代理ではあるが、代理権があるかのような事情が存在する場合に、そのような事情から代理権が あると信頼して取引関係に入った相手方を保護するために、当該無権代理行為の効果を本人に帰属させ る制度
2
① 代理権授与の表示による表見代理(109 条 1 項) ② 権限外の行為の表見代理(110 条) ③ 代理権消滅後の表見代理(112 条 1 項) ④ ①と②を組み合わせた場合(109 条 2 項) ⑤ ②と③を組み合わせた場合(112 条 2 項)
3
表見代理が成立する場合には、有権代理の場合と同様に、無権代理行為の効果が本人に帰属する
4
表見代理が成立する場合においても、相手方は、選択的に無権代理人の責任(117 条)を追及するこ とができる。相手方の催告権(114 条)や取消権(115 条)も認められる。
5
1 取引安全・代理制度の信用維持説 2 権利外観法理説
6
「たまたま代理権がないために、契約の効力を主張することができないとすることは、 代理人と取引をする者の地位を著しく危険にし、取引の安全に反する」や「相手方は、代理権の有無という本人・代理人間の内部関係を容易に知りえず、表見代理を認めなければ、代理制度それ自体の信用が失われる」との理由から、表見代理制度を基礎づける考え方
7
①代理権が存在するかのような外観の作出について本人に帰責性があり、かつ、②相手方がその外観を正当に信頼した場合には、無権代理行為の本人への効果帰属を認めてよいとする考え方
8
① 自称代理人と相手方との間で代理行為がされたこと(顕名を含む。) ② ①の行為に先立って、本人が相手方に対して代理権授与表示をしたこと ③ ①の行為が、②の代理権授与表示の範囲内であること
9
①代理権の不存在 ②①について、相手方の悪意、または過失があったとの評価を根拠づける事実
10
外部に対して何らかの行為をするという本人の意識(行為意識)が存在しなければ、代理権授与表示 の成立を認めることができない。設例 3 の A は、そのような意識を、およそ有していない。
11
行為意識の不存在と表示意識必要説の考えによる表示意識の存在
12
設例 4 において、印鑑証明書の交付申請は、行政に対する行為であって、私法上の法律関係を形成す る行為(法律行為)ではない。したがって、A は、外部的な行為をするという意識は有しているとして も、何らかの法律行為をすることになるという意識(表示意識)を全く有していない。通説によれば、 この場合にも代理権授与表示が成立しうる(表示意識不要説)。これに対して、表示意識必要説に立つな らば、この場合に代理権授与表示は成立しない。
13
代理人名や委任事項など記載されるべき事項の一部が空欄になっている委任状
14
設例 6 の事案において、A は、通常、実際に名義書換をするのは誰であっても構わないという意思を もって、白紙委任状を交付しているものと考えられる。このように、それを正当に取得した者であれば 誰が代理権を行使しても差し支えないという趣旨で、白紙委任状が交付される場合がある。この場合に は、本人が白紙委任状の取得者に対して代理権を授与しているため、有権代理
15
本人が輾転を予定することなく白紙委任状を交付し、それを取得した者が、白紙委任状を濫用 して無権代理行為をする場合のこと
16
直接型:本人から直接に交付を受けた者が白紙委任状を濫用する場合 間接型:転得者がこれを流用する場合
17
ア)109 条 1 項構成 C に呈示された委任状などの書類から、 B の代理行為に対応する A による代理権授与表示が認定され るならば、109 条 1 項を適用することができる。 イ)110 条構成 A から登記手続についての代理権を与えられた B が、その代理権の範囲を超えて、 C との間で抵当権 設定契約を締結している。このような場合には、110 条を適用することができる。
18
本人から代理権を与えられていないが白紙委任状を交付された者が、それを濫用して無権代 理行為をすることがありうる。この場合は、端的に 109 条 1 項の問題として処理される。
19
第一に、単に代理人欄ないし相手方欄の空白が濫用されたにとどまり、委任事項欄の濫用は、たとえ あっても顕著ではない場合がある。設例 8 では、本人 A が意図していた委任事項(保証)と無権代理行 為(連帯保証)とが、基本的に一致している。このような事案では、表見代理の成立を認めたとしても、 本人の負担が、当人が覚悟していた負担に比して、それほど大きくならない。判例は、このような事案 において、109 条 1 項の適用による相手方 D の保護を肯定している。
20
たとえ代理人であっても、本人から与えられた代理権の範囲外の代理行為をすれば、無権代理である。 もっとも、代理人がどの範囲で代理権を与えられているかは、相手方から見て、必ずしも明確ではない。 そこで、110 条は、代理人が代理権の範囲外の行為をし、相手方が、その行為につき代理権があるもの と正当に信じた場合に、表見代理の成立を認めている。
21
① 自称代理人と相手方との間で代理行為がされたこと ② ①の行為の際に、当該行為以外の特定事項について、代理人が代理権を有していたこと(=「権限」) ③ 相手方が①の行為について自称代理人に代理権があると信じたこと、および、その信頼につき正当 な理由があったとの評価を根拠づける事実(=「正当な理由」)
22
原則 110 条にいう「権限」を、原則として法律行為をする代理権(基本代理権)でなければならないとする考え方 例外 判例は、公法上の行為である登記申請行為の代理権について、一定の場合に基本代理権た ることを認めている。
23
110 条にいう「権限」とは、法律行為であるか事実行為であるかを問わず、対外的に重要な行為をす る権限であれば足りる、とする説
24
無権代理行為の直接の相手方のみを指し、無権代理行為の目的物の転得者を含まない
25
「正当な理由」は、代理権があると信じたこと(善意)につき過失がなかったことを意味
26
ア)代理権の存在を推測させる中核的事情の存在 イ)不審事由がある場合 ウ)相手方の調査・確認義務
27
95条(錯誤)
28
(1) 適用肯定説(判例) 表見代理を取引安全のための制度だとする見解からは、相手方に正当な理由があれば、本人が代理権 を与えたわけではない法定代理の場合にも、110 条を適用してよいとされている。 (2) 適用否定説 表見代理の趣旨を権利外観法理に求める現在の有力説からは、本人が代理権授与に関与していない法 定代理の場合には、本人の帰責性が欠けており、110 条を適用することができないとされる。
29
本人 X と代理人 A の間の委任関係が終了し、代理権が消滅すれば、A がその後に行った代理行為は 無権代理となる。しかしながら、 X への効果帰属が認められないと、代理権の存在を信じて A と取引関 係に入った相手方 Y は、不測の損害を被るおそれがある。そこで、112 条 1 項は、代理権消滅後に代理 行為が行われたが、相手方が代理権の消滅を知らなかった場合にも、表見代理の成立を認めている。
30
① 自称代理人が、かつて代理権を有していたこと ② ①の代理権の範囲内において、自称代理人と相手方との間で代理行為がされたこと ③ ②の代理行為時に、①の代理権が消滅していたこと ④ 相手方が代理権消滅の事実を知らなかったこと
31
⑤ 代理権消滅の事実を知らなかったことについて、相手方に過失があったとの評価を根拠づける事実
32
112 条 1 項が「他人に代理権を与えた者は」と規定していることから、適用できない
33
X には、A との委任関係を終了したにもかかわらず、白紙委任状などを適切に回収し なかった帰責性がある。他方で、 Y は、このような場合にも A に代理権ありと正当に信じる可能性があ る。そこで、このような場合にも、代理権が存在するものと正当に信頼した相手方を保護するために、 表見代理の成立が認められている
34
① 自称代理人が、かつて代理権を有していたこと ② ④の代理行為時に、①の代理権が消滅していたこと ③ 相手方が代理権消滅の事実を知らなかったこと(善意) ④自称代理人と相手方との間で、①の代理権の範囲を超える代理行為がされたこと ⑤ ④の行為について、自称代理人に代理権があると信じたこと、および、そう信ずべき正当な理由があ ったとの評価を根拠づける事実
35
①代理権消滅の事実を知らなかったことについて、相手方に過失があったとの評価を根拠づける事実 ②正当な理由があったとの評価を妨げる事実
36
1 109 条 2 項の意義 設例 18 のような場合には、109 条 1 項の表見代理も 110 条の表見代理も成立しない。B が呈示した 書類の中に売渡証書が含まれていることから、X に対してされた代理権授与表示は、甲売却に関する B への代理権授与を示すものであるといえる。これに対して、実際に B がした代理行為は、交換契約であ るため、代理権授与表示の範囲内での無権代理行為がされたわけではない。ゆえに、109 条 1 項の表見 代理は成立しない。また、B は、Y から何らかの基本代理権を与えられていたわけではない。したがっ て、110 条の表見代理も成立しない。 しかしながら、Y には、所持人が代理人であると見られるような書類を交付した点で帰責性がある。 そこで、この場合にも、代理権の存在を正当に信頼した相手方を保護するために、表見代理の成立が認 められている
37
① ②の行為に先立って、本人が相手方に対して代理権授与表示をしたこと ② 自称代理人と相手方との間で、①の代理権授与表示の範囲を超える代理行為がされたこと ③ ②の行為について自称代理人に代理権があると信じたこと、および、そう信ずべき正当な理由があ ったこと
38
①代理権授与表示に対応する代理権の不存在について、相手方の悪意または過失があったとの評価を 根拠づける事実 ②正当な理由があったとの評価を妨げる事実
39
およそ、一般に、他人に自己の名称、商号等の使用を許し、もしくはその者が自己 のために取引をする権限ある旨を表示し、もってその他人のする取引が自己の取引なるかの如く見える 外形を作り出した者は、この外形を信頼して取引した第三者に対し、自ら責に任ずべきであ(る) 」と述 べ、「東京地方裁判所当局が、『厚生部』の事業の継続処理を認めた以上、これにより、東京地方裁判所 は、『厚生部』のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出したものと認めるべきであり、 若し、『厚生部』の取引の相手方である上告人(X)が善意無過失でその外形を信頼したものとすれば、 同裁判所は上告人に対し本件取引につき自ら責に任ずべきものと解するのが相当である ここでは、「他人に対して自己の名で行為することを許諾した者は、それに基づいて当該他人が自己 の名で行為し、相手方が自己への効果帰属を信頼した場合に、相手方の信頼を保護するために、当該行 為の効果を負担しなければならない。」という 109 条 1 項の趣旨が、実際の行為者と行為者が使った名 称が示す者とが同一であると相手方が信じた場合に拡張されている。
40
(A) 代理権授与表示否定説 11 最高裁裁判例には、このような場合に代理権授与表示が成立しないとしたものがある。それによると、 不動産登記手続に要する書類は、輾転流通することを常態とするものではないため、本人がとくに誰が 行使しても差し支えない趣旨で交付した場合は別として、転得者が濫用した場合にまで、本人が契約の 効果を甘受しなければならないものではない。ここでは、転得者によって表示が行われるということを 本人が認識していたような場合でなければ、転得者による表示を本人に帰責することができない――本 人による表示であるということはできない――、という判断がされている。
41
(1) 静的安全と取引安全の調和 18 第一に、110 条が取引安全を図る制度であるとの理解をもとに、相手方の動的安全に対して、本人の 静的安全を保護するための最小限の要件として、基本代理権が要求される、とする見解 (2) 表示意識必要説 19 第二に、表示意識を意思表示の成立要件とすることを前提に、110 条の表見代理についても、本人に 法律行為をするという意識がなければ、本人に帰責することができないとの主張がされている。この見 解によれば、公法上の行為を委任したにすぎない者や、対外的な事実行為を委任したにすぎない者は、 法律行為をするという認識を有していないため、これらの者に法律行為責任を負わせることはできない。 ただし、登記申請が法律行為を原因として行われる場合、登記が されれば債務の弁済とその受領という私法上の効果が生じるため、この登記申請の委託を、法律行為に よる法律関係形成に準じるものとみることができ、基本代理権性を肯定してよいとする。
42
設例 10 では、保証契約締結についての代理権が与えられているため、B に基本代理権が 存在する 17。これに対して、設例 11 においては、A に勧誘という事実行為の代行しか委ねられていな いため、基本代理権があるとはいえない。また、設例 12 についても、印鑑証明書下付申請手続は公法 上の行為に過ぎないため、その代理権は基本代理権にあたらない。設例 13 のような事案において、「単なる公法上の行為についての代理権は民法 110 条の規定による表見代理の成立の要件たる基本代理権にあたらないと解すべきであるとしても、その行為が特定の私法上の取引行為の一環としてなされるものであるときは、右規定の適用に関しても、その行為の私法上の作用を看過することはできない」として、契約の履行として行われる登記申請行為の代理権が基本代理権たりうることを認めた。
43
設例 10 や 13 のほか、設例 11 の場合についても、110 条の表見代理が成立する可能性がある
44
(1) 本人の帰責性=外観作出への関与 (2) 法律行為と事実行為という区別の不当性 事実行為の中にも対外的に重要な意味を有するものがあるのに対して(多額の投資取引の勧誘など)、 法律行為の中にもごく些細な取引が含まれる(数百円の文具購入など)。そうすると、上記の意味での帰 責性があるか否かを判断するうえで、法律行為か事実行為かという区別は不当
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31問 • 1年前問題一覧
1
無権代理ではあるが、代理権があるかのような事情が存在する場合に、そのような事情から代理権が あると信頼して取引関係に入った相手方を保護するために、当該無権代理行為の効果を本人に帰属させ る制度
2
① 代理権授与の表示による表見代理(109 条 1 項) ② 権限外の行為の表見代理(110 条) ③ 代理権消滅後の表見代理(112 条 1 項) ④ ①と②を組み合わせた場合(109 条 2 項) ⑤ ②と③を組み合わせた場合(112 条 2 項)
3
表見代理が成立する場合には、有権代理の場合と同様に、無権代理行為の効果が本人に帰属する
4
表見代理が成立する場合においても、相手方は、選択的に無権代理人の責任(117 条)を追及するこ とができる。相手方の催告権(114 条)や取消権(115 条)も認められる。
5
1 取引安全・代理制度の信用維持説 2 権利外観法理説
6
「たまたま代理権がないために、契約の効力を主張することができないとすることは、 代理人と取引をする者の地位を著しく危険にし、取引の安全に反する」や「相手方は、代理権の有無という本人・代理人間の内部関係を容易に知りえず、表見代理を認めなければ、代理制度それ自体の信用が失われる」との理由から、表見代理制度を基礎づける考え方
7
①代理権が存在するかのような外観の作出について本人に帰責性があり、かつ、②相手方がその外観を正当に信頼した場合には、無権代理行為の本人への効果帰属を認めてよいとする考え方
8
① 自称代理人と相手方との間で代理行為がされたこと(顕名を含む。) ② ①の行為に先立って、本人が相手方に対して代理権授与表示をしたこと ③ ①の行為が、②の代理権授与表示の範囲内であること
9
①代理権の不存在 ②①について、相手方の悪意、または過失があったとの評価を根拠づける事実
10
外部に対して何らかの行為をするという本人の意識(行為意識)が存在しなければ、代理権授与表示 の成立を認めることができない。設例 3 の A は、そのような意識を、およそ有していない。
11
行為意識の不存在と表示意識必要説の考えによる表示意識の存在
12
設例 4 において、印鑑証明書の交付申請は、行政に対する行為であって、私法上の法律関係を形成す る行為(法律行為)ではない。したがって、A は、外部的な行為をするという意識は有しているとして も、何らかの法律行為をすることになるという意識(表示意識)を全く有していない。通説によれば、 この場合にも代理権授与表示が成立しうる(表示意識不要説)。これに対して、表示意識必要説に立つな らば、この場合に代理権授与表示は成立しない。
13
代理人名や委任事項など記載されるべき事項の一部が空欄になっている委任状
14
設例 6 の事案において、A は、通常、実際に名義書換をするのは誰であっても構わないという意思を もって、白紙委任状を交付しているものと考えられる。このように、それを正当に取得した者であれば 誰が代理権を行使しても差し支えないという趣旨で、白紙委任状が交付される場合がある。この場合に は、本人が白紙委任状の取得者に対して代理権を授与しているため、有権代理
15
本人が輾転を予定することなく白紙委任状を交付し、それを取得した者が、白紙委任状を濫用 して無権代理行為をする場合のこと
16
直接型:本人から直接に交付を受けた者が白紙委任状を濫用する場合 間接型:転得者がこれを流用する場合
17
ア)109 条 1 項構成 C に呈示された委任状などの書類から、 B の代理行為に対応する A による代理権授与表示が認定され るならば、109 条 1 項を適用することができる。 イ)110 条構成 A から登記手続についての代理権を与えられた B が、その代理権の範囲を超えて、 C との間で抵当権 設定契約を締結している。このような場合には、110 条を適用することができる。
18
本人から代理権を与えられていないが白紙委任状を交付された者が、それを濫用して無権代 理行為をすることがありうる。この場合は、端的に 109 条 1 項の問題として処理される。
19
第一に、単に代理人欄ないし相手方欄の空白が濫用されたにとどまり、委任事項欄の濫用は、たとえ あっても顕著ではない場合がある。設例 8 では、本人 A が意図していた委任事項(保証)と無権代理行 為(連帯保証)とが、基本的に一致している。このような事案では、表見代理の成立を認めたとしても、 本人の負担が、当人が覚悟していた負担に比して、それほど大きくならない。判例は、このような事案 において、109 条 1 項の適用による相手方 D の保護を肯定している。
20
たとえ代理人であっても、本人から与えられた代理権の範囲外の代理行為をすれば、無権代理である。 もっとも、代理人がどの範囲で代理権を与えられているかは、相手方から見て、必ずしも明確ではない。 そこで、110 条は、代理人が代理権の範囲外の行為をし、相手方が、その行為につき代理権があるもの と正当に信じた場合に、表見代理の成立を認めている。
21
① 自称代理人と相手方との間で代理行為がされたこと ② ①の行為の際に、当該行為以外の特定事項について、代理人が代理権を有していたこと(=「権限」) ③ 相手方が①の行為について自称代理人に代理権があると信じたこと、および、その信頼につき正当 な理由があったとの評価を根拠づける事実(=「正当な理由」)
22
原則 110 条にいう「権限」を、原則として法律行為をする代理権(基本代理権)でなければならないとする考え方 例外 判例は、公法上の行為である登記申請行為の代理権について、一定の場合に基本代理権た ることを認めている。
23
110 条にいう「権限」とは、法律行為であるか事実行為であるかを問わず、対外的に重要な行為をす る権限であれば足りる、とする説
24
無権代理行為の直接の相手方のみを指し、無権代理行為の目的物の転得者を含まない
25
「正当な理由」は、代理権があると信じたこと(善意)につき過失がなかったことを意味
26
ア)代理権の存在を推測させる中核的事情の存在 イ)不審事由がある場合 ウ)相手方の調査・確認義務
27
95条(錯誤)
28
(1) 適用肯定説(判例) 表見代理を取引安全のための制度だとする見解からは、相手方に正当な理由があれば、本人が代理権 を与えたわけではない法定代理の場合にも、110 条を適用してよいとされている。 (2) 適用否定説 表見代理の趣旨を権利外観法理に求める現在の有力説からは、本人が代理権授与に関与していない法 定代理の場合には、本人の帰責性が欠けており、110 条を適用することができないとされる。
29
本人 X と代理人 A の間の委任関係が終了し、代理権が消滅すれば、A がその後に行った代理行為は 無権代理となる。しかしながら、 X への効果帰属が認められないと、代理権の存在を信じて A と取引関 係に入った相手方 Y は、不測の損害を被るおそれがある。そこで、112 条 1 項は、代理権消滅後に代理 行為が行われたが、相手方が代理権の消滅を知らなかった場合にも、表見代理の成立を認めている。
30
① 自称代理人が、かつて代理権を有していたこと ② ①の代理権の範囲内において、自称代理人と相手方との間で代理行為がされたこと ③ ②の代理行為時に、①の代理権が消滅していたこと ④ 相手方が代理権消滅の事実を知らなかったこと
31
⑤ 代理権消滅の事実を知らなかったことについて、相手方に過失があったとの評価を根拠づける事実
32
112 条 1 項が「他人に代理権を与えた者は」と規定していることから、適用できない
33
X には、A との委任関係を終了したにもかかわらず、白紙委任状などを適切に回収し なかった帰責性がある。他方で、 Y は、このような場合にも A に代理権ありと正当に信じる可能性があ る。そこで、このような場合にも、代理権が存在するものと正当に信頼した相手方を保護するために、 表見代理の成立が認められている
34
① 自称代理人が、かつて代理権を有していたこと ② ④の代理行為時に、①の代理権が消滅していたこと ③ 相手方が代理権消滅の事実を知らなかったこと(善意) ④自称代理人と相手方との間で、①の代理権の範囲を超える代理行為がされたこと ⑤ ④の行為について、自称代理人に代理権があると信じたこと、および、そう信ずべき正当な理由があ ったとの評価を根拠づける事実
35
①代理権消滅の事実を知らなかったことについて、相手方に過失があったとの評価を根拠づける事実 ②正当な理由があったとの評価を妨げる事実
36
1 109 条 2 項の意義 設例 18 のような場合には、109 条 1 項の表見代理も 110 条の表見代理も成立しない。B が呈示した 書類の中に売渡証書が含まれていることから、X に対してされた代理権授与表示は、甲売却に関する B への代理権授与を示すものであるといえる。これに対して、実際に B がした代理行為は、交換契約であ るため、代理権授与表示の範囲内での無権代理行為がされたわけではない。ゆえに、109 条 1 項の表見 代理は成立しない。また、B は、Y から何らかの基本代理権を与えられていたわけではない。したがっ て、110 条の表見代理も成立しない。 しかしながら、Y には、所持人が代理人であると見られるような書類を交付した点で帰責性がある。 そこで、この場合にも、代理権の存在を正当に信頼した相手方を保護するために、表見代理の成立が認 められている
37
① ②の行為に先立って、本人が相手方に対して代理権授与表示をしたこと ② 自称代理人と相手方との間で、①の代理権授与表示の範囲を超える代理行為がされたこと ③ ②の行為について自称代理人に代理権があると信じたこと、および、そう信ずべき正当な理由があ ったこと
38
①代理権授与表示に対応する代理権の不存在について、相手方の悪意または過失があったとの評価を 根拠づける事実 ②正当な理由があったとの評価を妨げる事実
39
およそ、一般に、他人に自己の名称、商号等の使用を許し、もしくはその者が自己 のために取引をする権限ある旨を表示し、もってその他人のする取引が自己の取引なるかの如く見える 外形を作り出した者は、この外形を信頼して取引した第三者に対し、自ら責に任ずべきであ(る) 」と述 べ、「東京地方裁判所当局が、『厚生部』の事業の継続処理を認めた以上、これにより、東京地方裁判所 は、『厚生部』のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出したものと認めるべきであり、 若し、『厚生部』の取引の相手方である上告人(X)が善意無過失でその外形を信頼したものとすれば、 同裁判所は上告人に対し本件取引につき自ら責に任ずべきものと解するのが相当である ここでは、「他人に対して自己の名で行為することを許諾した者は、それに基づいて当該他人が自己 の名で行為し、相手方が自己への効果帰属を信頼した場合に、相手方の信頼を保護するために、当該行 為の効果を負担しなければならない。」という 109 条 1 項の趣旨が、実際の行為者と行為者が使った名 称が示す者とが同一であると相手方が信じた場合に拡張されている。
40
(A) 代理権授与表示否定説 11 最高裁裁判例には、このような場合に代理権授与表示が成立しないとしたものがある。それによると、 不動産登記手続に要する書類は、輾転流通することを常態とするものではないため、本人がとくに誰が 行使しても差し支えない趣旨で交付した場合は別として、転得者が濫用した場合にまで、本人が契約の 効果を甘受しなければならないものではない。ここでは、転得者によって表示が行われるということを 本人が認識していたような場合でなければ、転得者による表示を本人に帰責することができない――本 人による表示であるということはできない――、という判断がされている。
41
(1) 静的安全と取引安全の調和 18 第一に、110 条が取引安全を図る制度であるとの理解をもとに、相手方の動的安全に対して、本人の 静的安全を保護するための最小限の要件として、基本代理権が要求される、とする見解 (2) 表示意識必要説 19 第二に、表示意識を意思表示の成立要件とすることを前提に、110 条の表見代理についても、本人に 法律行為をするという意識がなければ、本人に帰責することができないとの主張がされている。この見 解によれば、公法上の行為を委任したにすぎない者や、対外的な事実行為を委任したにすぎない者は、 法律行為をするという認識を有していないため、これらの者に法律行為責任を負わせることはできない。 ただし、登記申請が法律行為を原因として行われる場合、登記が されれば債務の弁済とその受領という私法上の効果が生じるため、この登記申請の委託を、法律行為に よる法律関係形成に準じるものとみることができ、基本代理権性を肯定してよいとする。
42
設例 10 では、保証契約締結についての代理権が与えられているため、B に基本代理権が 存在する 17。これに対して、設例 11 においては、A に勧誘という事実行為の代行しか委ねられていな いため、基本代理権があるとはいえない。また、設例 12 についても、印鑑証明書下付申請手続は公法 上の行為に過ぎないため、その代理権は基本代理権にあたらない。設例 13 のような事案において、「単なる公法上の行為についての代理権は民法 110 条の規定による表見代理の成立の要件たる基本代理権にあたらないと解すべきであるとしても、その行為が特定の私法上の取引行為の一環としてなされるものであるときは、右規定の適用に関しても、その行為の私法上の作用を看過することはできない」として、契約の履行として行われる登記申請行為の代理権が基本代理権たりうることを認めた。
43
設例 10 や 13 のほか、設例 11 の場合についても、110 条の表見代理が成立する可能性がある
44
(1) 本人の帰責性=外観作出への関与 (2) 法律行為と事実行為という区別の不当性 事実行為の中にも対外的に重要な意味を有するものがあるのに対して(多額の投資取引の勧誘など)、 法律行為の中にもごく些細な取引が含まれる(数百円の文具購入など)。そうすると、上記の意味での帰 責性があるか否かを判断するうえで、法律行為か事実行為かという区別は不当