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Ⅱ　不当労働行為の救済手続と救済命令

Aiko Kobayashi

問題数 32 • 7/3/2025

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不当労働行為をした使用者はどうなるか?

不当労働行為を受けたと感じた労働組合や労働者が「労働委員会」（→２）に救済申し立て→労働委員会は使用者に不当労働行為の結果発生したことの是正を命ずる「不当労働行為救済命令」を出す

労働委員会と救済手続きの流れ

都道府県労委への救済申立→審査を行い救済命令を出すかどうかを決定

都道府県労委の決定に不服のある当事者（労働組合または使用者）は、何をすることができるか？

東京にある「中央労働委員会」に再審査の申立てをすることができる

不当労働行為を行政が救済する意義は？

正常な集団的労使関係秩序の迅速な確保・回復

都道府県労委または中労委の決定に不服のある当事者（労働組合または使用者）はさらにどうすることができるか？

当該労働委員会の決定の取消しを求めて、国または都道府県を相手取って、地方裁判所に行政訴訟を提訴することができる

不当労働行為に対する救済命令の具体的内容

１　不利益取扱いがなかったものと取り扱う命令・使用者は、Xが組合員であることを理由に解雇したという「不利益取扱い」の不当労働行為をしたので、それがなかったものとしなければならない（現職復帰と、未払賃金の支払）という命令。２　団体交渉に応じる義務を課す（団交応諾命令）３　文書手交／ポスト・ノーティス（文書手交と同じ文書を掲示）・使用者は、「労働委員会で不当労働行為と認められました」「もうそうした行為はしません」という約束を紙に書いて、労働組合に渡さなければいけないという命令（文書手交命令）。

不利益取扱いの禁止の趣旨は？

労働者の団結権などを保障するため

黄犬契約とは？

労働組合への不加入・脱退を雇用の条件にすること

不当労働行為の一つである、不利益取り扱いの禁止の要件は？３つ

① 組合員であること／加入・結成しようとしたこと／正当な行為をしたこと ② 「故をもって」（不当労働行為意思）……組合員であること等の認識／組合嫌悪が理由 ③ 不利益な取扱いをすること

不当労働行為の一つである不利益取り扱いの内容は？２つ

（1）賃金減額を伴わない不利益取扱い（組合活動を熱心に行う者を業務上の必要性の名のもとに「飛ばす」ような場合）（2）採用拒否

賃金減額を伴わない不利益取扱いの判断の仕方は？要素２つ

① 従業員の一般的認識に照らして通常不利益なものと受け止められるかどうか ② 組合活動意思が萎縮→組合活動一般に対して制裁的効果が及ぶかどうか

JR北海道・日本貨物鉄道事件（#180）＜事実＞・国鉄の分割民営化の時点でJR各社に採用されなかった者がいたところ、JR北海道の職員に欠員が生じたことからそれらの者の一部を採用することとしたが（6月採用）、国鉄時代から「国労」の組合員であった者は応募者1,901人中82人しか採用されなかった（採用予定人員は約280人）。 ※「国労」は国鉄時代から激しい闘争を行ってきた労働組合である。 →「国労」所属組合員のうち採用されなかった者が不当労働行為救済申立。当該採用拒否は不利益取り扱いに当たるか？

・原則：不利益取扱いにあたらない／例外：特段の事情……従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならない場合 →6月採用は国鉄ではなくJR北海道独自の新規採用→不当労働行為にはあたらない。

青山会事件（#183）・事業譲渡に際し全員退職→新規採用の形をとったが、組合員は不採用となった。この採用拒否は不利益取り扱いに当たるか？

→採用の実態＝承継したに等しい。 →不採用は解雇に等しい＝不利益取扱い（労働組合法7条1号）に該当。不当労働行為意思（反組合的な目的）も推認される→採用を義務付ける命令は適法。

支配介入の要件２つ

①組合への干渉行為（自主性・独立性を阻害） ②組合を弱体化させる行為（団結力・組織力を損なう）

支配介入か判断する際の考慮要素４つ

・行為の態様・内容（何を）（※動機・目的（なぜ））・行為者の地位・身分（誰が）・時期・状況（いつ）・不利益・影響

支配介入かどうかの判断プロセス

・支配介入に該当し得る行為の場合→使用者に不当労働行為意思があるか。・使用者の行為までの経緯から、「労働組合を嫌悪しこれを軽視する姿勢がみられる」場合→①または②の「意図が推認される」。・特に上記姿勢がみられない場合→干渉・弱体化の「結果を認識・認容」していた場合→①または②の「意図が推認される」。・組合嫌悪・結果の認識・認容もない場合→不当労働行為意思があるとはいえない。

使用者のどのような発言が支配介入にあたるか

使用者が労働組合一般や特定の組合活動に対する意見表明（批判）を行う場合、組合員に対して「威嚇的効果」を与えるような発言が支配介入の不当労働行為にあたる

プリマハム事件（#188）＜事実＞・団体交渉が決裂して、組合がストライキを決行しようとするときに社長が全事業所に「会社も現在以上の回答を出すことは絶対不可能でありますので、重大な決意をせざるを得ません。お互いに節度ある行動をとられんことを念願いたしております」。という文の入った掲示をした。結果、193名のストライキ脱落者が出た。こうした言動は支配介入に当たるか？

当たる「重大な決意」との文言は、一般的にいって組合員に対する威嚇的な効果をもつことは否定できず」、「「節度ある行動をとるように」との文言は、……ひっきょう、組合員に対するストライキ不参加の呼びかけというのほかない」。「以上を総合して考えると、本件社長声明文は、ストライキをいつどのような方法で行うか等という、組合が自主的に判断して行動すべきいわゆる組合の内部運営に対する支配介入行為にあたる

北日本倉庫港運事件・札幌地判昭和56・5・8 ・営業次長が従業員の集まる詰所に行き、組合が予定しているストライキをしたら会社の客が他にとられてしまい、会社が窮地に陥る旨演説。結果、ストライキが決行されなくなった。この演説は支配介入に当たるか？

あたる営業次長の発言内容には「会社の現状を相当正確に訴える部分があり、また表現自体にはスト中止を呼びかける直接的発言あるいは利益誘導や不利益取扱の言辞がなくとも、……右発言は分会組合員らに対し、原告会社の将来への強い危機感を与え、団結権に影響を与えるおそれのある威嚇的効果を有するも

誰の発言が支配介入になるか

管理職など使用者に近接する地位にある従業員などが、使用者の意思を受けて、または使用者の「意を体して」発言したような場合

不当労働行為に該当する恐れのある便宜供与とは？

労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること

支配介入にあたらないとされる使用者の便宜供与の例３つ

ア　労働時間中の団体交渉・労使協議の有給保障、イ　福利厚生基金への補助、ウ　最小限の広さの事務所の供与

大阪市事件（#185）・長きにわたり行われてきたチェック・オフの廃止。この廃止は支配介入に該当するか？

・チェック・オフなどの便宜供与を行うかどうかは原則使用者の裁量だが、便宜供与の終了は組合に少なからぬ不利益を与える。 →廃止には相応の理由、手続的配慮（説明・協議や猶予期間の設定）が必要これらがない場合は支配介入となる

例外として認められている便宜供与も、支配介入の不当労働行為とみなされる場合は？

合理的理由・手続上の配慮なく便宜供与を終了することによって組合活動に干渉し支障をもたらすような場合

使用者の中立保持義務とは？

労働組合が複数ある場合において、特定の一つに肩入れしないこと

組合事務所を一方組合に対し貸与し、他方組合に貸与しない場合、支配介入の不当労働行為に該当するか？

合理的な理由」が存在しない限り支配介入の不当労働行為に該当

ある企業に複数の労働組合があり、数に差がある場合、労働基本権（団結権、団体交渉権、団体行動権）に差が生じるか？

生じない等しく保障

団体交渉に応じた使用者の義務

誠実交渉義務（誠実に団体交渉に応ずべき義務）

誠実交渉義務の具体的内容２つ

① 論拠説明義務……応じられない、譲歩できない理由を示す。 ② 資料提示義務……主張の裏付けとなる資料を提示

義務的団交事項の要件４つ

① 団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の ② 労働条件その他の待遇 ③ 当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項 ④ 使用者に処分可能なもの

非組合員についての交渉にも使用者は応じなければならないか？

原則応じなくて良い

会社の経営に関する事項（経営上の理由からある部門や工場を廃止・外注する／合併や事業譲渡／役員の変更／新機械の導入）は労働者の労働条件その他の待遇に関する事項と言えるか？

それ自体は組合員の「労働条件」や「待遇」に関するものではなく、経営者が自ら判断すべきことであるから使用者は拒否可能、しかし、それに伴って組合員の労働条件に変動が生じ得るような場合には、義務的団交事項になる（工場の閉鎖→工場に組合員がいれば解雇、配転の可能性は十分あり得る。新機械の導入も、それにより必要な人員が削減される可能性もある。）

Ⅱ 不当労働行為の救済手続と救済命令

Ⅱ　不当労働行為の救済手続と救済命令