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第７回　受領遅滞

Aiko Kobayashi

問題数 8 • 10/29/2024

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受領遅滞とは？

債務者が履行しようとするのに債権者が受領しようとしないこと（受領拒絶）と履行を受けることができないこと（受領不能）

債務不履行説とは？

一般的に債権者の受領義務を認める（付随義務として債権者に責任を求める）その不履行により損害賠償請求および解除が認められる

法定責任説とは？

債権者には権利行使義務はないので、債権一般について受領義務が生じることはない。受領遅滞により損害賠償請求および解除が認められることはない（多数説）

折衷説とは？

契約類型によって、特約または信義則によって、個別的に受領義務が認められる。

【事案】ゴルフ場クラブハウスの給排水その他の設備の工事の注文を受けたＹは、工事のために必要な物品の製作をＸに注文した。しかし、Ｘは製作を期日までに搬入せず、ＹはＸに対して契約を解除すると告げた。Ｘは、Ｘが物品の製作をほぼ完成させてＹに引き取りを請求したところ、Ｙがこれに応じないため、契約を解除し、完成させた物品をスクラップとして他に売却せざるを得なかったため、製作代価とスクラップとしての価格の差額の損害が生じたと主張し、損害の賠償請求をした。1審は、Yの債務不履行による解除が有効であるのに、Ｘが解除をすることができないとし、Ｘの請求を棄却した。原審は債権者の受領遅滞に基づいて解除できないとしてＸの控訴を棄却した。

【判旨】「論旨は、債権者にも信義則の要求する程度において給付の実現に協力すべき法律上の義務があり、給付の不受領はあたかも債務者が履行しない場合と同じく債務不履行となるものと解すべきである、と主張し、債権者は債権の目的物を受領する義務なく債権者の受領遅滞を理由として債務者は契約解除をなしえない旨の原判決の判断は，民法の基本原則である信義則に違反する、という。　しかし、債務者の債務不履行と債権者の受領遅滞とは、その性質が異なるのであるから、一般に後者に前者と全く同一の効果を認めることは民法の予想していないところというべきである。民法四一四条、四一五条、五四一条等は、いずれも債務者の債務不履行のみを想定した規定であること明文上明らかであり、受領遅滞に対し債務者のとりうる措置としては、供託・自動（助）売却等の規定を設けているのである。されば、特段の事由の認められない本件においてYの受領遅滞を理由としてXは契約を解除することができない旨の原判決の判断は正当であつて、論旨は採用することができない。」 ←受領遅滞について、債権者に受領義務はないとする法定責任説と、債権者の協力を要する給付について、債権者には信義則上履行に協力する義務・受領義務が一般にあるとする債務不履行責任説で学説が対立していた中で、本判決は受領遅滞に基づく解除を否定した。

【事案】昭和33年4月16日に、XはYとの間で、契約期間を同年12月末（その後昭和33年12月末に延長）として、Xが採掘した硫黄鉱石の全量をYに売り渡す契約を締結した。ＹはＸに400万円の前渡金を差し入れていた。XはYの指示を受けて、採掘のための準備を整え、113.91トンを出荷してYに通知したが、Yは市況の悪化を理由に受取りを拒んだが、最終的にはこれを引き取った。しかし、その後Ｘは採掘の中止を余儀なくされ、既に採掘した分は出荷の準備を整えたままとなった。契約期間の満了後に、Ｘは、Ｙが引き取りを拒絶したことによる損害について、ＸがＹに返還すべき前渡金と相殺した残額のうち423万円余を求めて訴えを提起し

「鉱石売買契約においては、Xが右契約期間を通じて採掘する鉱石の全量が売買されるべきものと定められており、XはYに対し右鉱石を継続的に供給すべきものなのであるから、信義則に照らして考察するときは、Xは、右約旨に基づいて、その採掘した鉱石全部を順次Yに出荷すべく、Yはこれを引き取り、かつ、その代金を支払うべき法律関係が存在していたものと解するのが相当である。したがつて、Yには、Xが採掘し、提供した鉱石を引き取るべき義務があつたものというべきであり、Yの前示引取の拒絶は、債務不履行の効果を生ずるものといわなければならない。」 ←債権者の引取義務を信義則に照らして認めている。その前提として、契約期間を通じて採掘される鉱石の全量が売買契約の対象とされ、鉱石が継続的に供給されるすべきものであるとされていた点を挙げている。受領遅滞を理由とする契約解除を否定した先例のもとでは、本判決は特段の事由がある場合として債権者の受領義務を肯定したものと位置づけられる。

受領遅滞の効果４つは？

a) 目的物の保存についての注意義務の軽減（413条1項）善良な管理者の注意義務をもって保存する義務（400条）　　→自己の財産に対するのと同一の注意義務に軽減される b) 増加費用の負担（413条2項）受領遅滞により増加した履行の費用を債権者が負担　←債務者の履行の提供は要件ではない c) 履行不能における帰責事由の割当て（413条の２第2項）受領遅滞の状態にある場合、履行の提供があった時以降に当事者双方の責めに帰することができない事由により履行不能が生じたときは、その履行不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる →①債権者は損害賠償を請求することができない（415条1項ただし書）　②契約を解除することができない（543条）　③反対給付の履行を拒むことができない（536条2項） d) 弁済供託が可能となる債務者は、弁済の目的物を供託（金銭や有価証券などの財産を国家機関である供託所に預け、供託所を通じて特定の相手に受け取らせることで、一定の法律上の目的を達成する制度）して、債権を消滅させることができる(494条1項)

弁済の提供の効果４つ

債務者が債務不履行責任を免れる (ア) 契約を解除されない (イ) 損害賠償義務を負わない (ウ) 担保権が実行されない (エ) 債権者の同時履行の抗弁権が消滅（533条）

第７回 受領遅滞

第７回　受領遅滞