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第八回、第九回 事実の錯誤

第八回、第九回 事実の錯誤
27問 • 1年前
  • Aiko Kobayashi
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    問題一覧

  • 1

    具体的事実の錯誤とは?

    認識事実と発生事実が同じ構成要件に該当

  • 2

    抽象的事実の錯誤とは?

    認識事実と発生事実が異なる構成要件に該当

  • 3

    客体の錯誤とは?

    狙った客体の属性が異なる場合

  • 4

    方法の錯誤とは?

    狙った客体(法益主体)と別の客体(法益主体)に当たった場合

  • 5

    因果関係の錯誤とは?

    実際にたどった因果経過が行為者の予想と異なる場合

  • 6

    因果関係の錯誤は具体的事実の錯誤の場合しか起こり得ない それはなぜか?

    因果関係の錯誤は、認識した因果経過(溺死)も現実の因果経過(打撲死)もどちらも同一の構成要件に該当する事実だから これは抽象的事実の錯誤の異なる構成要件に該当する事実であることに反するから。

  • 7

    具体的事実の錯誤の問題の解決基準の一つである法定的符号説とは?

    認識事実と発生事実がそれぞれ同じ構成要件に該当していれば、発生事実に対する故意(責任)が認められる(「故意は阻却されない」)(Aを殺そうとしてBを殺した場合、Aに対する故意があるのであれば、Bに対する故意もあると認められる) 発生事実と同じ構成要件に該当する事実を認識していれば、構成要件の実現を思いとどまること(反対動機の形成)が可能であるため(規範は抽象的な構成要件の形で与えられている)、内容に食い違いがあっても、故意犯としての処罰には十分

  • 8

    有力説である具体的符号説とは?

    認識事実と発生事実が具体的に一致していない限り、故意(責任)は認められない。 どの程度の一致が必要かは見解が分かれている 1法益主体が一致していれば良い 2行為の危険性と攻撃の方向の一致までは必要

  • 9

    Aだと思って撃ったら死んだのはBだった場合 1法定的符号説 2具体的不合説

    1客観と主観がどちらも殺人罪の構成要件に該当しているので殺人既遂 2客観と主観は犯人が狙っている「その人」という限度で具体的に一致しているので殺人既遂

  • 10

    Aを狙った弾が明後日の方向に飛び予想外のBに命中して死亡させた場合 1法定的符号説 2具体的不合説

    1客観と主観がどちらも殺人罪の構成要件に該当しているので、故意は阻却されず、Bに対する殺人既遂罪が成立 2客観と主観が具体的に一致していないので、故意は阻却され、Bに対する殺人既遂は成立せず、(重)過失致死罪が成立

  • 11

    Aを狙った弾がAを貫通して傷害を負わせた後、予想外のBに命中してBを死亡させた場合(併発事例、2つの構成要件該当事実が発生している) 1法定的符号説 2具体的符号説

    1  A―1.数故意犯説:認識事実と同一の構成要件が発生していれば、発生した数だけ故意犯を認める。  →Aに対する殺人未遂とBに対する殺人既遂が成立 A―2.一故意犯説(少数説):一つの故意しかない以上は、故意犯の成立も一つだけ。その基準は、第一に一番重い結果に成立、二次的には行為者が意図していた客体に成立    →Bに対する殺人既遂と、Aに対する過失傷害が成立 2Aに対する殺人未遂(狙っている相手)と、B(予想外の存在)に対する(重)過失致死

  • 12

    Aの所有するベンツのガラスを割ろうと石を投げたら、予想外に隣に駐車していたAのレクサスに命中してガラスを割った場合

    法定的符合説:Aに対する器物損壊罪が成立 具体的符合説  B―1:法益主体は同じA(同じAの財産)なので、具体的な一致があり、Aに対する器物損壊罪成立  B―2:攻撃方向が異なるので、故意は阻却され不可罰(過失の器物損壊はない)。

  • 13

    びょう打銃事件 被告人が、巡査Aから拳銃を強奪しようとして、Aに対してびょう打銃を撃ったところ、びょうはAに命中して重傷を負わせるとともに、Aの身体を貫通してたまたま30m先にいたBにも命中し重傷を負わせたという事案 法定的符号説、数故意犯説から考えるとどうなるか?

    犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもつて足りる 被告人が人を殺害する意思のもとに手製装薬銃を発射して殺害行為に出た結果、被告人の意図した巡査Aに右側胸部貫通銃創を負わせたが殺害するに至らなかつたのであるから、同巡査に対する殺人未遂罪が成立し、同時に、被告人の予期しなかつた通行人Bに対し腹部貫通銃創の結果が発生し、かつ、右殺害行為とBの傷害の結果との間に因果関係が認められるから、同人に対する殺人未遂罪もまた成立 被告人のAに対する所為についてはもちろんのこと、Bに対する所為についても強盗殺人未遂罪が成立する

  • 14

    遅すぎた構成要件の実現とは?

    行為者が第一行為によって結果を実現したと思い、第二行為を行ったところ、その第二行為で初めて結果が実現された場合

  • 15

    遅すぎた構成要件実現の処理の仕方 殺害後死体遺棄するつもりであったが、殺害行為(第一行為)では死亡しておらず、その後の死体遺棄行為(第二行為)で死亡した場合(行為者は第一行為で殺したと誤信)

    (一般的).両者を別個の行為と理解して、第二行為を第一行為の後の介在事情として位置付ける。第一行為と第二行為を分ける →客観的な因果関係(自己の行為の介在)と、因果関係の錯誤の問題がクリアできれば、第一行為は殺人、第二行為は過失致死(重なり合いのない抽象的事実の錯誤)となって、第二行為は第一行為に吸収。死体遺棄行為はそれほど不自然な介在事情ではない

  • 16

    行為者が認識しているものよりも重い犯罪を行った場合はどうなるか?

    行為者の認識しているものより重い犯罪では「処断できない」

  • 17

    法定的符号説による抽象的事実の錯誤の処理の仕方

    認識していた事実については故意の未遂犯の成否を検討し、発生した事実については(当該構成要件該当事実を認識していない以上故意は認められないので)過失犯の成否を検討し、両者が共に罪となる場合にはその観念的競合を認める

  • 18

    構成要件が形式的に重なり合っている場合、故意犯はどちらの罪に認められるか? 例:殺人(199)と同意殺人(201)(殺人があることは重なっている)、強盗(236)と窃盗(235)(窃盗は強盗に含まれる)

    重なり合っている軽い限度で故意犯を認める

  • 19

    構成要件の重なり合いの判断基準は?

    行為態様の共通性かつ保護法益の共通性

  • 20

    コカイン、大麻、覚醒剤の罪の軽い順

    大麻、コカイン、覚醒剤

  • 21

    覚醒剤を輸入するつもりでヘロインを輸入 客観:麻薬(ヘロイン)取締法違反(営利目的輸入)=主観:覚醒剤取締法違反(営利目的輸入) 実際に行った行為が認識していた行為よりも軽かった場合。成立する罪は?

    客観的に実現した麻薬(ヘロイン)取締法違反成立 麻薬と覚せい剤との間には、実質的には同一の法律による規制に服しているとみうるような類似性があるというべき……両罪は、その目的物が覚せい剤か麻薬かの差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であり、その法定刑も全く同一であるところ、前記のような麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合つているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべき

  • 22

    客観:関税法の禁制品輸入罪>主観:関税法の無許可(覚醒剤)輸入罪〔当時〕 禁制品輸入罪の方が罪が重い 自分が想定していたよりも現実に行った罪が重い場合、罪はどうなるか?

    主観的に認識していた軽い無許可輸入罪成立 覚せい剤を無許可で輸入する罪と輸入禁制品である麻薬を輸入する罪とは、ともに通関手続を履行しないでした類似する貨物の密輸入行為を処罰の対象とする限度において、その犯罪構成要件は重なり合つているものと解するのが相当である。本件において、被告人は、覚せい剤を無許可で輸入する罪を犯す意思であつたというのであるから、輸入にかかる貨物が輸入禁制品たる麻薬であるという重い罪となるべき事実の認識がなく、輸入禁制品である麻薬を輸入する罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い覚せい剤を無許可で輸入する罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべき

  • 23

    コカインを所持するつもりで覚醒剤を所持  客観:覚醒剤取締法違反(所持)>主観:麻薬(コカイン)取締法違反(所持)

    主観的に認識していた軽い麻薬(コカイン)所持罪成立 「両罪は、その目的物が麻藻か覚せい剤かの差異があり、後者につき前者に比し重い刑が定められているだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であるところ、麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合つているものと解するのが相当である。被告人には、所持にかかる薬物が覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がないから、覚せい剤所持罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い麻薬所持罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべき

  • 24

    構成要件に重なり合いがない場合 例:Xは、Aを殺害しようとして銃を撃ったが、Aには当たらずAの飼い犬に当たった。 客観:器物損壊、主観:殺人

    両者は保護法益が異なる(財産と生命)ので、重なり合いは認められない。   器物損壊についての故意は阻却。   過失の器物損壊はないので不可罰。(民法上は処罰される可能性がある)  ※ただし、Aに対する殺人未遂は成立。

  • 25

    構成要件に重なり合いがある場合 客観:軽、主観:重の場合 例:覚醒剤を購入しようとするつもりが、コカインであった場合

    二つの構成要件は保護法益が同じで行為態様も類似なので、実質的重なり合いが認められる。   ※形式的には重なり合っていない   重なり合う軽いコカイン譲受け罪の故意が認められ、同罪が成立。

  • 26

    客観と主観の重さが同じ場合 例:覚醒剤を購入しようとするつもりが、ヘロインであった場合 客観:ヘロイン譲受け、主観:覚醒剤譲受け

    両者には実質的重なり合いが認められるので、客観的に実現したヘロイン譲受け罪の故意が認められ、同罪が成立。

  • 27

    客観:重、主観:軽の場合 例:コカインを購入しようとするつもりが、覚醒剤であった場合 客観:覚醒剤譲受け、主観:コカイン譲受け

    両者には実質的重なり合いが認められるので、認識していた軽いコカイン譲受け罪の故意が認められ、同罪が成立(判例)

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    問題一覧

  • 1

    具体的事実の錯誤とは?

    認識事実と発生事実が同じ構成要件に該当

  • 2

    抽象的事実の錯誤とは?

    認識事実と発生事実が異なる構成要件に該当

  • 3

    客体の錯誤とは?

    狙った客体の属性が異なる場合

  • 4

    方法の錯誤とは?

    狙った客体(法益主体)と別の客体(法益主体)に当たった場合

  • 5

    因果関係の錯誤とは?

    実際にたどった因果経過が行為者の予想と異なる場合

  • 6

    因果関係の錯誤は具体的事実の錯誤の場合しか起こり得ない それはなぜか?

    因果関係の錯誤は、認識した因果経過(溺死)も現実の因果経過(打撲死)もどちらも同一の構成要件に該当する事実だから これは抽象的事実の錯誤の異なる構成要件に該当する事実であることに反するから。

  • 7

    具体的事実の錯誤の問題の解決基準の一つである法定的符号説とは?

    認識事実と発生事実がそれぞれ同じ構成要件に該当していれば、発生事実に対する故意(責任)が認められる(「故意は阻却されない」)(Aを殺そうとしてBを殺した場合、Aに対する故意があるのであれば、Bに対する故意もあると認められる) 発生事実と同じ構成要件に該当する事実を認識していれば、構成要件の実現を思いとどまること(反対動機の形成)が可能であるため(規範は抽象的な構成要件の形で与えられている)、内容に食い違いがあっても、故意犯としての処罰には十分

  • 8

    有力説である具体的符号説とは?

    認識事実と発生事実が具体的に一致していない限り、故意(責任)は認められない。 どの程度の一致が必要かは見解が分かれている 1法益主体が一致していれば良い 2行為の危険性と攻撃の方向の一致までは必要

  • 9

    Aだと思って撃ったら死んだのはBだった場合 1法定的符号説 2具体的不合説

    1客観と主観がどちらも殺人罪の構成要件に該当しているので殺人既遂 2客観と主観は犯人が狙っている「その人」という限度で具体的に一致しているので殺人既遂

  • 10

    Aを狙った弾が明後日の方向に飛び予想外のBに命中して死亡させた場合 1法定的符号説 2具体的不合説

    1客観と主観がどちらも殺人罪の構成要件に該当しているので、故意は阻却されず、Bに対する殺人既遂罪が成立 2客観と主観が具体的に一致していないので、故意は阻却され、Bに対する殺人既遂は成立せず、(重)過失致死罪が成立

  • 11

    Aを狙った弾がAを貫通して傷害を負わせた後、予想外のBに命中してBを死亡させた場合(併発事例、2つの構成要件該当事実が発生している) 1法定的符号説 2具体的符号説

    1  A―1.数故意犯説:認識事実と同一の構成要件が発生していれば、発生した数だけ故意犯を認める。  →Aに対する殺人未遂とBに対する殺人既遂が成立 A―2.一故意犯説(少数説):一つの故意しかない以上は、故意犯の成立も一つだけ。その基準は、第一に一番重い結果に成立、二次的には行為者が意図していた客体に成立    →Bに対する殺人既遂と、Aに対する過失傷害が成立 2Aに対する殺人未遂(狙っている相手)と、B(予想外の存在)に対する(重)過失致死

  • 12

    Aの所有するベンツのガラスを割ろうと石を投げたら、予想外に隣に駐車していたAのレクサスに命中してガラスを割った場合

    法定的符合説:Aに対する器物損壊罪が成立 具体的符合説  B―1:法益主体は同じA(同じAの財産)なので、具体的な一致があり、Aに対する器物損壊罪成立  B―2:攻撃方向が異なるので、故意は阻却され不可罰(過失の器物損壊はない)。

  • 13

    びょう打銃事件 被告人が、巡査Aから拳銃を強奪しようとして、Aに対してびょう打銃を撃ったところ、びょうはAに命中して重傷を負わせるとともに、Aの身体を貫通してたまたま30m先にいたBにも命中し重傷を負わせたという事案 法定的符号説、数故意犯説から考えるとどうなるか?

    犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもつて足りる 被告人が人を殺害する意思のもとに手製装薬銃を発射して殺害行為に出た結果、被告人の意図した巡査Aに右側胸部貫通銃創を負わせたが殺害するに至らなかつたのであるから、同巡査に対する殺人未遂罪が成立し、同時に、被告人の予期しなかつた通行人Bに対し腹部貫通銃創の結果が発生し、かつ、右殺害行為とBの傷害の結果との間に因果関係が認められるから、同人に対する殺人未遂罪もまた成立 被告人のAに対する所為についてはもちろんのこと、Bに対する所為についても強盗殺人未遂罪が成立する

  • 14

    遅すぎた構成要件の実現とは?

    行為者が第一行為によって結果を実現したと思い、第二行為を行ったところ、その第二行為で初めて結果が実現された場合

  • 15

    遅すぎた構成要件実現の処理の仕方 殺害後死体遺棄するつもりであったが、殺害行為(第一行為)では死亡しておらず、その後の死体遺棄行為(第二行為)で死亡した場合(行為者は第一行為で殺したと誤信)

    (一般的).両者を別個の行為と理解して、第二行為を第一行為の後の介在事情として位置付ける。第一行為と第二行為を分ける →客観的な因果関係(自己の行為の介在)と、因果関係の錯誤の問題がクリアできれば、第一行為は殺人、第二行為は過失致死(重なり合いのない抽象的事実の錯誤)となって、第二行為は第一行為に吸収。死体遺棄行為はそれほど不自然な介在事情ではない

  • 16

    行為者が認識しているものよりも重い犯罪を行った場合はどうなるか?

    行為者の認識しているものより重い犯罪では「処断できない」

  • 17

    法定的符号説による抽象的事実の錯誤の処理の仕方

    認識していた事実については故意の未遂犯の成否を検討し、発生した事実については(当該構成要件該当事実を認識していない以上故意は認められないので)過失犯の成否を検討し、両者が共に罪となる場合にはその観念的競合を認める

  • 18

    構成要件が形式的に重なり合っている場合、故意犯はどちらの罪に認められるか? 例:殺人(199)と同意殺人(201)(殺人があることは重なっている)、強盗(236)と窃盗(235)(窃盗は強盗に含まれる)

    重なり合っている軽い限度で故意犯を認める

  • 19

    構成要件の重なり合いの判断基準は?

    行為態様の共通性かつ保護法益の共通性

  • 20

    コカイン、大麻、覚醒剤の罪の軽い順

    大麻、コカイン、覚醒剤

  • 21

    覚醒剤を輸入するつもりでヘロインを輸入 客観:麻薬(ヘロイン)取締法違反(営利目的輸入)=主観:覚醒剤取締法違反(営利目的輸入) 実際に行った行為が認識していた行為よりも軽かった場合。成立する罪は?

    客観的に実現した麻薬(ヘロイン)取締法違反成立 麻薬と覚せい剤との間には、実質的には同一の法律による規制に服しているとみうるような類似性があるというべき……両罪は、その目的物が覚せい剤か麻薬かの差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であり、その法定刑も全く同一であるところ、前記のような麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合つているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべき

  • 22

    客観:関税法の禁制品輸入罪>主観:関税法の無許可(覚醒剤)輸入罪〔当時〕 禁制品輸入罪の方が罪が重い 自分が想定していたよりも現実に行った罪が重い場合、罪はどうなるか?

    主観的に認識していた軽い無許可輸入罪成立 覚せい剤を無許可で輸入する罪と輸入禁制品である麻薬を輸入する罪とは、ともに通関手続を履行しないでした類似する貨物の密輸入行為を処罰の対象とする限度において、その犯罪構成要件は重なり合つているものと解するのが相当である。本件において、被告人は、覚せい剤を無許可で輸入する罪を犯す意思であつたというのであるから、輸入にかかる貨物が輸入禁制品たる麻薬であるという重い罪となるべき事実の認識がなく、輸入禁制品である麻薬を輸入する罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い覚せい剤を無許可で輸入する罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべき

  • 23

    コカインを所持するつもりで覚醒剤を所持  客観:覚醒剤取締法違反(所持)>主観:麻薬(コカイン)取締法違反(所持)

    主観的に認識していた軽い麻薬(コカイン)所持罪成立 「両罪は、その目的物が麻藻か覚せい剤かの差異があり、後者につき前者に比し重い刑が定められているだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であるところ、麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合つているものと解するのが相当である。被告人には、所持にかかる薬物が覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がないから、覚せい剤所持罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い麻薬所持罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべき

  • 24

    構成要件に重なり合いがない場合 例:Xは、Aを殺害しようとして銃を撃ったが、Aには当たらずAの飼い犬に当たった。 客観:器物損壊、主観:殺人

    両者は保護法益が異なる(財産と生命)ので、重なり合いは認められない。   器物損壊についての故意は阻却。   過失の器物損壊はないので不可罰。(民法上は処罰される可能性がある)  ※ただし、Aに対する殺人未遂は成立。

  • 25

    構成要件に重なり合いがある場合 客観:軽、主観:重の場合 例:覚醒剤を購入しようとするつもりが、コカインであった場合

    二つの構成要件は保護法益が同じで行為態様も類似なので、実質的重なり合いが認められる。   ※形式的には重なり合っていない   重なり合う軽いコカイン譲受け罪の故意が認められ、同罪が成立。

  • 26

    客観と主観の重さが同じ場合 例:覚醒剤を購入しようとするつもりが、ヘロインであった場合 客観:ヘロイン譲受け、主観:覚醒剤譲受け

    両者には実質的重なり合いが認められるので、客観的に実現したヘロイン譲受け罪の故意が認められ、同罪が成立。

  • 27

    客観:重、主観:軽の場合 例:コカインを購入しようとするつもりが、覚醒剤であった場合 客観:覚醒剤譲受け、主観:コカイン譲受け

    両者には実質的重なり合いが認められるので、認識していた軽いコカイン譲受け罪の故意が認められ、同罪が成立(判例)