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第８回　市民への暴力

Aiko Kobayashi

問題数 19 • 6/13/2025

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問題一覧

政治的戦略による文民保護の可能性とは？

紛争の当事者が自分たちが最終的に統治を行うことを想定し、正統性を整えるために市民への暴力を控える

国際法が圧力をかけることにより、文民保護の効果はあるか？

効果なしとの研究戦略的インセンティブによって圧倒される

国連平和維持活動（PKO）による文民保護のメカニズム３つ

①：軍によって戦闘員を分離 ②：警察によってパトロール ③：監視団により紛争プロセスを監視

死因への暴力が行われた事例

ティグレ紛争（エチオピア）： 2020年11月～2022年11月 • 2020年11月、アビー・アハメド首相が、政府軍の拠点が攻撃されたとして、政府軍に対し、TPLF （ティグレ人民解放戦線）の軍事部門への攻撃を命令背景： • 1974年～軍事政権 • 1995年：民族自決を掲げたエチオピア人民革命主戦線（Ethiopian People’s Revolutionary Democratic Front: EPRDF)が、軍事政権を打倒し、民族を基盤とした連邦制を導入 → EPRDFは4つ地方政党の連合体：オロモ人民民主機構、アムハラ民族民主運動、南エチオピア人民民主運動、ティグレ人民解放戦線（TPLF）（エチオピアの民族構成比：オロモ人34％、アムハラ人27％、ティグライ人6％） → TPLFが中心となりEPRDFを率いる • 2019年、EPRDFの複数政党を一つに統合することが承認され、繁栄党に • 2020年TPLFは正式に繁栄党への不参加を決定 • 連邦政府はコロナウイルスを理由に総選挙を2020年8月から2021年6月に延期 • ティグライ州政府は2020年9月、州議会選挙を実施 → TPLFの圧勝 → 連邦議会議員の任期が法的に終了した後は、連邦議会が制定した法には従わないことを決定 https://theconversation.com/ethiopia-why-the-sidama-secession-demand-needs-to-be-negotiated-120734 民間人の死者数推定： • 300,000～400,000人（Financial Times) • 約600,000人（Ghent University） → （本当であれば、10年間のシリア内戦での2倍の民間人の被害レベルに、エチオピアではたったの2年で達したことに） → 直接攻撃で死亡しただけでなく、飢餓、医療ケアのアクセスを失い亡くなった人も含む戦闘地の死者数：200,000～300,000人 → （死者数としては、50年以上続いたコロンビア内戦よりも多い）性的暴行も多発

コンゴ民主共和国における市民への暴力

コンゴ・ザイール解放民主勢力連合（AFDL） VS ザイール（現：コンゴ民主共和国） • 1994年のルワンダ虐殺の際、フツ族がコンゴ民主共和国に逃れる • 1996年、AFDL（ルワンダとウガンダ軍に支援される）が国の東側からキャンペーンを行う • 最初はコンゴ民主共和国とルワンダの国境にある難民キャンプを標的に → キャンプにはルワンダからの何千ものフツ族の民間人が滞在

Kalyvas (2006)による市民への暴力の分類２つ

① Selective violence（選択的暴力）：特定の個人や集団を狙った暴力 ② Indiscriminate violence（無差別暴力）：特定せずに広範な住民に対して行われる暴力。

Balcells (2011)による暴力の種類２つ

① Direct violence（直接的暴力）：加害者が被害者と直接に接触して行う暴力。 ② Indirect violence（間接的暴力）：地雷、空爆、爆弾、放火など、直接的接触がない手段による暴力

市民への選択的暴力が生じるメカニズム３つ

① Defection（背信行為）；反乱勢力は、支配地域の住民が敵側に寝返らないよう抑止する必要 ②Information (情報の非対称性）；誰が寝返っているのか判断するのが難しい ③Denunciation（告発）：市民が他の市民を「反乱勢力への協力者」や「政府のスパイ」などと訴える行為

選択的暴力は効果的なのか？

効果的選択的暴力は、裏切り（defection）に対する合理的で限定的な制裁手段であるため、一般市民に対して「協力せずに黙っている方が安全」という動機づけが働くしかし、このためには市民に、選択的暴力であると知覚されていることが重要

イスラエルが行った「家屋の解体」が、パレスチナ人による自爆テロに与える影響は？

懲罰的な家屋解体（＝選択的暴力）（テロ組織や実行者本人を正確に標的にしたとき）に限り、自爆テロの抑止効果があるが、予防的な家屋解体（＝無差別暴力に近い）においては、自爆テロが増加した

無差別暴力が起こるメカニズム２つ

1. Identification Problem（識別の問題）：戦時において、敵の協力者（裏切り者）を特定することは極めて難しい 2. Deterrence（抑止）：無差別な報復によって「恐怖を与え」、協力を控えさせる

識別問題を左右する3つの構造的要因

①民族の均一性（Siroky & Dzutsati）：民族的に結束が強い地域は、内部告発が困難 ②国家の能力（Winward）：国家の行政・軍事能力が情報収集力に直結 ③地元の民兵（Clayton & Thomson）：地域社会に通じた内部者の存在

無差別暴力が効果的な理由２つ

①敵の支持者を抹消 ②反乱軍の活動を妨げる

無差別暴力が効果的でない理由

市民は暴力を行ったアクターの反対勢力を支援する

組織内部の関係性からみた、市民への暴力の要因２つ

1. Principal-Agent Problemとしての暴力：反乱組織は、「リーダー（プリンシパル）」と「兵士（エージェント）」の目的や動機が一致しないことで、統制が難しくなり、エージェントによる暴力行使が逸脱する 2. 社会的結合（cohesion）を高めるための暴力：兵士同士の間に**信頼と連帯感（social cohesion）を生み出すために、意図的に市民への暴力（とくに集団暴力・性暴力）**が用いられる

相対的なパワーを高めるための暴力とは？

市民を恐怖で支配し、協力を強制することにより、敵の情報網や支援を減少させ、結果的に自分たちの力を相対的に高める

敵への応対のための暴力とは？

敵が支援を受けにくくするため、敵の支持基盤を攻撃し、敵の資源・情報収集のルートを断つ

大量虐殺はゲリラ戦と伝統的な戦いと、どちらにおいて起こりやすいか？

伝統的な戦い

インテリジェンスの支援により、市民への暴力は減少するか？

減少する情報収集の制度が向上し、情報の非対称性が改善されるため

第８回 市民への暴力

第８回　市民への暴力