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第16回多数当事者の債権関係（1）―債権者債務者複数の場合（500-557頁）

Aiko Kobayashi

問題数 33 • 12/2/2024

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分割債権とは？

債権の目的が性質上可分である場合において、複数の債権者がいるとき、各債権者に分割された債権

分割の割合はどうなるか？

特段の意思表示がなければ平等（427条）

分割債権の効力は？

各債権者は単独で自己の分の権利を行使することができる

連帯債権とは？

債権の目的がその性質上可分である場合（ex.200万円の金銭債権）において、複数の債権者（Ａ・Ｂ）がいる時、各債権者が独立して、全債権者のために履行請求することができ、債務者は債権者のうちだれに対して履行してもよい（432条―435条の２）法令の規定または意思表示により成立する（432条）

連帯債権の効力３つ

① 連帯債権者は、全債権者のために、債務者に対し履行請求することができる。 ② 相対的効力の原則（435条の２本文）　連帯債権者の1人について生じた事由は、他の連帯債権者に対して効力を生じない ←例外:絶対的効力（432条―435条）履行の請求、履行、更改、免除、相殺、混同は、他の連帯債権者に対しても効力を生じる ③法令の規定または当事者の意思表示による特別の定めがない場合には、連帯債権者の1人が履行を受けたときは、他の全債権者に、内部関係の割合に応じて、分与すべき（割合は、平等と推定される）

不可分債権とは？

債権の目的がその性質上不可分である場合において、複数の債権者（Ａ・Ｂ）がいるとき、各債権者が独立して、全債権者のために履行請求することができ、債務者は債権者のうちの誰に履行してもよい（428条）

不可分債権の効力３つは？

①不可分債権者は、全債権者のために、債務者に対し履行請求することができる。債務者は、どの債権者に履行しても、全債権者に対して履行したことになる（428条・432条）←債権者全員が共同して請求しなくてもよい ②相対的効力の原則（428条・435条の２本文）　不可分債権者の1人について生じた事由は、他の不可分債権者に対して効力を生じない ←例外: 絶対的効力（428条・432条・434条・435条の２ただし書）履行請求、履行、相殺は、他の連帯債権者に対しても効力を生じる ③内部関係法令の規定または当事者の意思表示による特別の定めがない場合には、連帯債権者の1人が履行を受けたときは、他の全債権者に、内部関係の割合に応じて、分与すべき（割合は、平等と推定される） ←ただし、民法に明文の規定なし

分割債務とは？

債務の目的が性質上可分（ex.200万円の金銭債務）である場合において、複数の債務者（A・B）がいる時、各債務者に分割された債務　←分割の割合は、特段の意思表示がなければ平等（427条）

分割債務の効力２つは？

各債務者は自己の分の債務だけを履行すればよい内部関係は分割債務者相互の取決めによる。たとえば、200万円の可分債務の分割債務者Ａ・BのうちAが、自己の分100万円を超えて120万円を弁済した場合には、超えた分の20万円について、他の分割債務者Bに求償することができる

連帯債務とは？

債務の目的が性質上可分である場合において、複数の債務者がいるとき、各債務者がそれぞれ独立して全部の給付をすべき債務債務者の１人または数人が全部の給付をすれば、全債務者について消滅。

連帯債務において、債権者はどのような請求をすることができるのか？

債権者は ①連帯債務者の１人に対して、全部または一部の履行を請求することができる ②全債務者に対して、同時/順次に、全部または一部の履行を請求することができる（436条）

連帯債務における全部給付義務とは？

債務者は、各自の負担部分と無関係に、債権者に対して、それぞれ全部の給付をする義務を負う（436条）

債務者のうち誰かが履行した場合、他の債務者は債務を免れることができるか？

債務を免れ、重ねて履行する必要はない

相対的効力の原則とは？

連帯債務者の1人について生じた事由は、他の不可分債権者に対して効力を生じない

求償権とは？

弁済等により債務を消滅させた債務者は、他の債務者に対して、各自の負担部分に応じた求償権を行使することができる（442条）

通説である個数論とは？

債務者の数だけ債務があるとみる債務者複数説

　2017債権法改正による変化３つ

①連帯債務は、「法令の規定又は当事者の意思表示によって」成立するとの規定を新設　　　→当事者の意思表示だけではなく、法規定により連帯債務が生じる（Ex.761条夫婦の日常家事債務についての連帯債務） ②意思表示による不可分債務を廃止（430条参照）　←連帯債務と不可分債務の区別が明確になる ③ 連帯債務における絶対的効力事由を大幅に削減

連帯債務の成立の仕方２つ

（１）当事者の意思表示による場合（２）法令の規定による場合 Ex.併存的債務引受（470条1項）、共同不法行為（719条）、夫婦の日常家事債務（761条）

連帯債務の効力は？

(1) 対外的効力債権者は、各債務者に対し、債務全部の履行を請求できる相対的効力の原則原則として、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してはその効力を生じない（441条）例外：いくつかの法定の絶対的効力事由（436条・438条・439条1項・440条）および、当事者の意思表示（441条ただし書）

連帯債務における法定の絶対的効力事由（連帯債務者1人について生じた事由が、他の連帯債務者に対してもその効力を生じる事由）４つは？

履行、更改、相殺、混同

連帯債務における相対的効力事由３つは？

① 時効に関する事由 ② 履行の請求に関する事由　 ③ 債権譲渡に関する事由

連帯債務者相互で各自が負担する割合

① 連帯債務者間の合意により、②合意がない場合は、各債務者の利益の割合（通説）により、③利益の割合が同じ場合には、平等（通説）となる

弁済等をした連帯債務者は、免除された債務者等に求償権を行使できるか？

できる（445条）

求償権の要件

「自己の財産をもって共同の免責を得た」こと

求償権の効果は？

求償権は自己の負担部分について生じる　　　←自己の負担部分額以下の弁済等によっても求償できる（442条1項）　趣旨：一部の弁済等においても、負担部分に応じた求償を認める法が、債務者の公平を図ることができるただし、共同不法行為によって生じる連帯債務（719条）について、共同不法行為者間では、自己の負担部分を超えて賠償したことを要するとする

求償権を行使しようとする連帯債務者は、弁済等をする前に、他の債務者に通知をしなければならない理由

弁済等に先立って、他の連帯債務者に通知し、他の連帯債務者が債権者に対抗できる事由があれば、それを主張する機会を与える必要がある＊ただし、弁済等をしようとする連帯債務者が、他の連帯債務者がいることを知らなかったときはこの限りではない

連帯債務者は、弁済等をしたときは、そのことを他の連帯債務者に通知する必要がある。（弁済後に通知）理由は？

他の連帯債務者の二重の弁済等を防止するため＊ただし、弁済をした連帯債務者が、他の連帯債務者がいることを知らなかったときはこの限りではない

連帯債務者の中に無資力者がいる場合

求償者が弁済を受けられない部分は、他の資力のある連帯債務者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担（444条1項）

不真正連帯債務とは？

　436条以下の連帯債務とは類似するが若干異なる多数当事者の債務を、2017年債権法改正前に不真正連帯債務と呼んでいた Ex.被用者（709条）と使用者（715条）の損害賠償債務（最判昭和45・4・21判時595号54頁）、718条の占有者の債務と保管者の債務

伝統的な学説における不真正連帯債務の一般的な連帯債務との違い３つ

① 債務者間に共同目的による主観的な関連がない　 ←現行法における連帯債務は主観的な関連がなくても成立 ② 弁済等の限られた事由以外は、相対的効力しかない ←現行法における連帯債務では、原則として相対効しかない ③ 求償関係が当然に認められるわけではない ←現行法における連帯債務では、負担部分に応じた求償が認められる

不可分債務とは？

債務の目的がその性質上不可分である場合において、複数の債務者がいるとき、各債務者が独立して全部の給付をすべき債務（430条）

不可分債務の効力は？

債権者は、どの不可分債務者に対してでも、全部の履行を請求することができる（430条・436条）相対的効力の原則（430条・441条本文）とその例外としての絶対的効力がある限られた事由（430条・436条・438条・439条・441条ただし書）は連帯債務と同じである＊ただし、混同は相対的効力事由

【事案】A社は、B社との間の補償金交渉に際して、X・Yに交渉費用として5650万円を支出したが、B社との交渉に失敗し、補償金を得ることはできなかった。昭和51年9月に、X・Y・Aの間で、執行認諾文言付の公正証書を作成し、XとYが5650万円の連帯債務者であることを確認し、弁済期を翌年6月とする合意がされた。昭和52年9月、Xは土地によりAに代物弁済した。しかし、YはXの代物弁済を知らずに、、昭和52年12月にAに200万円を支払い、さらに昭和53年12月にAから執行証書謄本の送達を受け、昭和54年5月、同年8月に計800万円を支払った。 Xは、代物弁済によって連帯債務は消滅したと主張し、Yに2850万円を求償した。 XおよびYの両者が通知を怠った場合に、どちらの弁済を有効とすべきかが問題となった。

【判旨】「連帯債務者（Y）の一人が弁済その他の免責の行為をするに先立ち、他の連帯債務者に通知することを怠つた場合は、既に弁済しその他共同の免責を得ていた他の連帯債務者（X）に対し、民法四四三条二項の規定により自己の免責行為を有効であるとみなすことはできないものと解するのが相当である。けだし、同項の規定は、同条一項の規定を前提とするものであつて、同条一項の事前の通知につき過失のある連帯債務者までを保護する趣旨ではないと解すべきであるからである」 ←本判決は、事前通知がないことを過失とし、443条2項が同条1項を前提とするとみることで、Yの事前通知義務を導いている。事前通知にも、二重支払を回避する機能があると捉えられている。事前通知を怠ったものが事後通知を怠ったことを責めることはできない。Yが事前通知をしていれば、二重弁済は避けられたはず。

第16回 多数当事者の債権関係（1）―債権者債務者複数の場合（500-557頁）

第16回多数当事者の債権関係（1）―債権者債務者複数の場合（500-557頁）