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第 17講 法律行為を原因とする物権変動・不動産物権変動Ⅰ(不動産登記)

第 17講 法律行為を原因とする物権変動・不動産物権変動Ⅰ(不動産登記)
63問 • 2年前
  • Aiko Kobayashi
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    問題一覧

  • 1

    物権変動を生じさせる法律行為についての立法例2つ

    意思主義と形式主義

  • 2

    物権変動を生じさせる法律行為の立法例の一つである意思主義とは?

    物権変動を生じさせる法律行為は、何らの形式をも必要としないとする立法例

  • 3

    物権変動を生じさせる法律行為についての立法例の一つである形式主義とは?

    、物権変動を生じさせる法律行為を、外部から認識可能な一定の形式 (不動産については登記、 動産については引渡し) を備えなければ効力を生じない要式行為とする立法例

  • 4

    176条「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」は意思主義と形式主義どちらを採用したものか?

    意思主義

  • 5

    債権行為とは?

    債権の発生を目的とする法律行為

  • 6

    物権行為とは?

    物権変動を目的とする法律行為

  • 7

    物権行為の独自性とは?

    物権行為と債権行為とは、常に別個の法律行為であり、物権変動が生じるには前者が必要であるとす る考え方

  • 8

    物権行為の独自性肯定説とは?

    売買契約に基づいて目的物の所有権を移転する場合、売買契約から生じるのは、「目 的物の所有権を移転せよ」という債権だけであり、この債権に基づいて「目的物の所有権を移転する」 という物権的合意がされない限り、所有権移転は生じない。

  • 9

    物権行為の独自性否定説とは?

    契約を成立させる 1 個の合意によって、債権の発生とともに物権の変動まで生じるとみて差し支えな いとする。この見解によると、「買う」 ・ 「売る」という意思表示が合致し売買契約が成立すれば、それだけで目的物の所有権が移転しうる――ただし、売買契約とは別に所有権移転合意がされる可能性があ ることを、否定するわけではない。――

  • 10

    物権行為の無因性とは?

    売買など物権変動の原因となった債権行為(原因行為)の 効力が無効・取消しなどにより失われた場合、物権行為の効力は影響を受けないとする考え方

  • 11

    判例・通説では物権行為の独自性肯定説と否定説、どちらの立場に立っているか?

    物権行為の独自性否定説

  • 12

    【設例 1-2】設例 1 において、A と B は、2020 年 5 月 1 日に、甲を 5000 万円で売買する旨の口頭の 合意をした。その後、同年 5 月 10 日に契約書の交換と代金の支払、5 月 20 日に引渡し、5 月 30 日に 登記移転が行われた。 設例 1-2 において、B はいつの時点から甲の所有者になるのだろうか

    (1) 原則 当事者が最終的に物権変動を生じさせる法律行為をしたときは、原則として、その成立時点で物権変 動が生じる。 (2) 例外 ① 直ちに物権変動を生じるとすることに支障がある場合(例えば、不特定物売買・他人物売買・将 来の物の売買)には、その支障がなくなった時点(不特定物が特定した時、他人物売主が所有権を取得 した時、目的物が現存するに至った時)で、当然に物権変動が発生する。 ② 当事者が物権変動の時期について特別な合意をしていれば、支障がない限り、それに従う。

  • 13

    物権行為の独自性肯定説、否定説によれば、物権変動の時期はいつとなるか

    (1) 物権行為の独自性肯定=代金支払・登記・引渡時変動説 (2) 物権行為の独自性否定=契約時変動説 (3) 物権行為の独自性否定=代金支払時変動説 (4) 確定不要説(なし崩し的移転説・段階的移転説)

  • 14

    不動産物権変動と動産物権変動の公示方法は?

    不動産物権変動=登記、動産物権変動=引渡し

  • 15

    公示の原則とは?

    「物権変動は外部から認識しうる何らかの表象を伴うことを必要とする」

  • 16

    【設例 4】Y は、甲建物を新築し居住していたが、所有権保存登記をしていなかった。A は、これを奇 貨として、甲につき自己名義の所有権保存登記をしたうえで、X に甲を譲渡した。X は、Y に対して、 所有権に基づき甲の明渡しを求めた この請求は妥当か?

    承継取得においては、前主が権利を有していなければ、後主がそれに基づく権利を得ることはできな い。設例 4 において、A が甲の所有権を有していなかった以上、X は、A から甲の所有権を譲り受ける ことはできない。設例4 において、X は、A の登記名義を信頼したからといって、甲の所有権を取得することができない。もっとも、不実の登記を信頼した者を保護するために、判例は、94 条 2 項類推適用を用いている。

  • 17

    公信の原則とは?

    「真実の権利状態と異なる公示が存在した場合に、それを信頼して取引した 者を保護するために、公示どおりの権利が存在したものとみなすべきである」との原則

  • 18

    不動産登記には公信力があるか?

    不動産登記には公信力が認められていない

  • 19

    動産の占有には公信力が認められているか?

    動産の占有には公信力が認められており、即時取得の制度が置かれている (192 条) 。

  • 20

    不動産登記とは?

    ①不動産の客観的状況と権利関係とを一定の公の帳簿(不動産登記簿)に記載する こと、または②その記載そのものを意味

  • 21

    登記簿の編成に関わる主義2つ

    物的編成主義と人的編成主義

  • 22

    物的編成主義とは?

    土地や建物を中心として登記簿を編成する方法

  • 23

    人的編成主義とは?

    人を中心として登記簿を編成する方法

  • 24

    登記記録の区分2つ

    表題部と権利部

  • 25

    保存登記とは?

    不動産について最初に行われる所有権の登記

  • 26

    登記の内容による登記の種類5つ

    記入登記、変更登記、更生登記、抹消登記、回復登記

  • 27

    登記の形式による登記の種類2つ

    付記登記と主登記

  • 28

    付記登記とは?

    既にされた権利に関する登記についての登記で、その権利に関する登記と一体のもの として公示する必要があるもの

  • 29

    主登記とは?

    付記登記の対象となる既にされた権利に関する登記

  • 30

    付記登記の順位はどうなるか?

    付記登記の順位は、主登記の順位により、同一の主登記についての付記登記の順位は、その前後によ る(不登 4 条 2 項)。

  • 31

    登記の効力による登記の分類2つ

    本登記と仮登記

  • 32

    仮登記が認められる場合2つ

    ① 登記原因である物権変動は生じているが、登記申請のために登記所に提供しなければならない情報 を、提供することができない場合(不登 105 条 1 号) ② 本登記の対象となる権利の変動に関する請求権を保全しようとする場合(同 2 号)

  • 33

    当事者共同申請主義とは?

    当事者申請主義と共同申請主義を組み合わせたもの。 不動産登記は、原則として、当事者の申請を受けて行われる(不登 16 条 1 項)。 権利に関する登記の申請は、原則として、登記権利者と登記義務者とが共同して行わなければならな い(不登 60 条)

  • 34

    登記権利者とは?

    権利に関する登記により、登記上、直接に利益を受ける者

  • 35

    登記義務者とは?

    権利に関する登記により、直接に不利益を受ける登記名義人

  • 36

    形式審査主義とは?

    登記申請を受けた登記官は、申請が不動産登記法の形式的要件を満たすかどうかだけ を審査し、登記事項が真実であるかを審査しない主義

  • 37

    登記請求権とは?

    登記義務者が登記申請に協力しない場合に、登記権利者が、登記義務者に対して登記申請に協力する ことを求める請求権

  • 38

    登記請求権の類型3つ

    物権的登記請求権、債権的登記請求権、物権変動的登記請求権

  • 39

    物権的登記請求権とは?

    現在の実体的な物権関係と登記とが一致しない場合には、この不一致を除去するために、物権そのも のの効力(妨害排除請求権)としての登記請求権

  • 40

    債権的登記請求権とは?

    動産賃貸借契約において賃借権登記(605 条)の合意がされた場合など、当事者間での合意によっての登記請求権

  • 41

    物権変動的登記請求権とは?

    物権変動の過程・態様と登記とが一致しない場合、その不一致を除去するために、物権変動それ自体 から、これに対応する登記請求権

  • 42

    登記引取請求権とは?

    登記義務者び登記権利者に対して登記申請に協力するよう求める権利

  • 43

    本登記の効力2つ

    対効力と権利推定力

  • 44

    登記による権利推定の性質についての説2つ

    (1) 法律上の推定説 「甲事実がある場合に、A 権利があるものと推定する。」という法規がある場合に、それに基づいて される推定を、 「法律上の権利推定」という。これを登記の推定力にあてはめ、「登記(という事実)がある場合に、その記載どおりの権利があるものと推定する。」という法規定があるものとする。このよ うな明文の規定は存在しないが、188 条を類推しうることが根拠とされる。法律上の権利推定があると、立証責任が転換され、推定を覆そうとする者は、A 権利の不存在について完全な立証(本証)をしなければならない。そのため、登記の権利推定力を法律上の推定とすると、これを覆そうとする者は、登記記載の権利が存在しないことを立証しなければならない。この見解に対しては、このような権利不存在の立証が極めて困難であるとの批判がある。 (2) 事実上の推定説(判例 12) 自由心証主義のもとで、経験則に照らして、甲事実の存在が立証された場合に、乙事実の存在が推定 される場合を、 「事実上の推定」 という。 事実上の推定説によると、登記の存在が立証されたとしても、裁判所は、その記載どおりの権利が存在するとの心証を得るだけである。これによって、立証責任が転換されるわけではなく、推定を覆そうとする者は、裁判官の確信を動揺させ、当該権利の存在につき真 偽不明の状態に追い込めば足りる(反証)。

  • 45

    仮登記の効力

    順位保全効

  • 46

    順位保全効とは?

    仮登記に基づいて本登記をした場合、その本登記の順位は、仮登記の順位によることになること

  • 47

    【設例 12】A・B 間で、2015 年 11 月 1 日に、A が B に返済期日を 2016 年 11 月 1 日として 3000 万 円を貸し与え、期日までに返済されない場合には、B は所有する甲土地をもって代物弁済する旨の契約 が結ばれた。同日、A の所有権移転請求権を保全するための仮登記がされた。その後、2016 年 4 月 1 日に、B が C に甲を譲渡し、所有権移転登記がされた。 【設例 12-2】設例 12 において、C は、2016 年 7 月 1 日に、甲を D に賃料月額 10 万円で賃貸した。 本登記の効力発生時期はどうなるか?

    仮登記につき本登記がされたとしても、本登記の対効力が仮登記の時点に遡って生じるわけではない。 本登記の効力は本登記の時点で生じ、ただその順位が仮登記の順位によるというだけである(判例・通 説)。したがって、設例 12-2 において、本登記がされたとしても、それより前の C の占有・得た利益 が、不法占有・不当利得になるわけではない。

  • 48

    不動産登記の効力が認められる要件2つ

    形式的有効要件 不動産登記は、不動産登記法の規定する手続に従ってなされるべきものであり、それに従わない登記 申請は却下される(不登 25 条)。 実質的有効要件 登記が有効であるためには、当該登記が表示する不動産が現に存在し、かつ、登記に符合する実体上 の権利関係ないしその変動が存在しなければならない。実際には、登記が現在の実体的権利関係 に符合していれば、実質的有効要件を充たすものとされている。

  • 49

    如実主義とは?

    不動産登記法は、登記簿の記載が、物権変動に関する現在の実体的権利関係に符合するのみならず、 現在に至るまでの物権変動の過程(例えば、A→B→C という順で移転したこと)と態様(いかなる原 因によるかなど)をも如実に公示することを理想とする主義

  • 50

    【設例 13】A は、実際には存在しない乙建物について、所有権保存登記を行った。 【設例 14】A は、甲不動産を所有していた。何の権限も有しない B が、A の名義を冒用して、C との 間で甲の売買契約を締結し、所有権移転登記を経由した こうした登記の処理は有効とされるか?

    目的不動産が存在しないのに存在するとしてされた保存登記や、実体上物権変動がないのに、あった ものとしてされた登記などは、無効である。

  • 51

    【設例 15】 甲不動産は、 A の所有であったが、 A・ B 間で仮装売買がされ、登記名義は B となっていた。C が、A から甲を買い受け、引渡しを受けたところ、これに不満をもった B もまた、A から甲を買い受けた このような登記の処理は有効とされるか?

    設例 15 において、仮装売買契約に基づく B 名義の登記は、本来であれば、実体的権利関係を欠くも のとして無効である。しかしながら、判例は、B が A から真実有効に甲を買い受け、その所有権を取得 したことにより、それ以降登記が現在の実体的権利状態に合致するに至っているとして、この所有権取 得を第三者 C に対抗することができるとしている。

  • 52

    【設例 16】B は、所有する甲建物が滅失したため、同じ敷地に乙建物を新築した。ところが、B は、登 録免許税を節約するために、甲についての滅失登記の申請も、乙についての保存登記の申請もしなかっ た。 B が A に乙を売却し、これに基づいて甲について A への移転登記が行われた。その後、 B は、乙を C にも売却し、乙を引き渡した。A が、C に乙の明渡しを求めた。 滅失した旧建物の登記が新築された新建物に流用された場合、新建物の登記として流用された登記はどうなるか?

    無効である

  • 53

    【設例 17】Z の G に対する 500 万円の債務の担保として、Z の所有する丙土地に抵当権が設定され、 その登記も行われた。Z は債務を完済したが、抵当権設定登記は抹消されていなかった。その後に、Z が Y から 500 万円を借り受け、Z・Y 間で丙に抵当権を設定する契約が結ばれたが、その旨の登記では なく、G の抵当権が Y に譲渡された旨の付記登記がされた。次の各場合において、X は、この付記登記 の抹消登記手続を請求した。 ① Z が G に債務を返済する前に、 X が丙について第 2 順位の抵当権の設定を受け、その旨の登記がさ れていた。 ② Y への抵当権譲渡の付記登記の後に、X が丙について第 2 順位の抵当権の設定を受け、その旨の登 記がされていた。 流用登記は有効とされるか?

    (1) 流用前に利害関係を有する第三者が出現している場合(①) 流用前に出現した第三者との関係では、登記が無効とされる。実体と合致しない登記は無効とすべき ことに加えて、流用登記が有効とされると、第三者の順位上昇への期待が害されるからである。 (2) 流用後に利害関係を有する第三者が出現した場合(②) 有効。流用後に出現した第三者は、特別の事情がない限り、流用登記の無効を主張するにつき正当な利益を有しないとされる 。 第三者の出現時点において、登記にほぼ対応する現実の権利状態が存在しており、当該第三者は、そのような登記を前提として利害関係を取得したからである。

  • 54

    中間省略登記とは?

    A→B→C と物権が変動しているのに、 A から C に対して直接に移転登記がされる場合のこと

  • 55

    中間省略登記請求の可否

    ア)原則 中間省略登記は、実体的な権利変動の過程と異なるものであり、そのような登記を請求する権利は、 当然には発生しない 。権利者 C が登記名義人 A から登記を得るには、中間者 B が A に対して有する 登記請求権を代位行使したうえで(423 条の 7)、さらに B から登記移転を受ける必要がある。 イ)例外 ただし、中間省略登記をすることについて、 A および B の同意がある場合には、中間省略登記の請求 が認められる

  • 56

    既にされた中間省略登記の効力について ア)中間者の同意がある場合 イ)中間者の同意がない場合

    ア)中間者の同意がある場合 3 当事者間での合意に基づいてされた中間省略登記は、有効とされる 。 イ)中間者の同意がない場合 (A) 中間者の抹消登記手続請求権 中間者の同意を得ずにされた中間省略登記であっても、 抹消登記手続を求める正当な利益を有してい ない中間者は、これを請求することができない 。例えば、通常、代金支払と登記移転とが同時履行関 係になるところ、中間者が代金支払を受けていれば、もはや正当な利益はないと考えられる 。 (B) 中間者以外の抹消登記手続請求権 中間者以外の第三者は、中間省略登記の無効を主張して、抹消登記手続を求めることができない

  • 57

    【設例 19】A は、甲土地を X に贈与したが、A から Y への所有権移転登記がされた。そこで、X は、Y に対し、Y から X への所有権移転登記手続を求めた この場合、登記処理はどうなるか?

    設例 19 において X が甲の登記名義を得るには、本来であれば、A→Y の所有権移転登記を抹消した うえで、改めて A→X の登記手続をすべきところである。しかしながら、判例は、このような 2 段階の 登記手続に代えて、 X が Y に対し「真正な登記名義の回復」を登記原因として所有権移転登記手続を請 求することも認めている

  • 58

    【設例 20】A・B 間で、A が所有する甲土地につき仮装売買がされ、A から B への所有権移転登記がさ れた。つづいて、B は、善意の C のために抵当権を甲に設定し、登記を経由した。その後、A は、B に 対して、甲の売買は無効であるとして、所有権移転登記手続を求めた。 申請な登記名義の回復を原因とする移転登記手続は認められるか?

    A が B 名義の所有権登記を抹消するには、利害関係人 C の承諾が必要である(不 登 68 条)。そして、A が C に対して売買の無効を対抗できない場合(94 条 2 項)には、C の承諾を得 ることは不可能である。そこで、 このような場合には、 C の抵当権登記を残したまま A 名義の所有権登 記を実現するために、B から A への所有権移転登記手続を認めざるを得ないとされる

  • 59

    【設例 21】Y は、自己が所有する甲土地を A に贈与したが、持分 10 分の 3 につき Y 名義の持分登記 が残された。その後、A が死亡し、遺産分割協議により、共同相続人の 1 人である X が、甲を単独で相 続した。そこで、X は、Y に対して、上記持分登記の移転登記手続を請求した 真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続請求が認められるか?

    設例 21 のように、無権利者からの登記回復が問題ではなく、かつ、本来の物権変動の過程を反映し た登記が困難ではない場合について、判例は、真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続請求を 認めていない

  • 60

    176 条の意義 【設例 1】A と B は、A が所有する甲土地を B に 5000 万円で売る旨の契約を締結した。 問題の所在 前講で述べたように、物権変動は、何らかの変動原因が存在することによって生じる。そのような物 権変動の原因のうち、とりわけ重要なのが、法律行為(契約)である。法律行為による物権変動に関し て、176 条は、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」として いる。この規定は、いかなる意味を有するのか。

    (1) 意思主義 一方で、物権変動を生じさせる法律行為は、何らの形式をも必要としないとする立法例がある(フラ ンス民法など)。このような立法例を、「意思主義」という。例えば、売買契約に基づいて目的物の所有 権を移転する場合、特別な形式を備えなくても、当事者の合意があれば、所有権移転が生じるとする。 この主義は、当事者が物権変動を生じさせようと意図する限り、なるべくそれを尊重しようとするも のであり、私的自治の原則を重視するものと見ることができる。 (2) 形式主義 他方で、物権変動を生じさせる法律行為を、外部から認識可能な一定の形式 (不動産については登記、 動産については引渡し) を備えなければ効力を生じない要式行為とする立法例がある(ドイツ民法など)。 このような立法例を、「形式主義」という。例えば、売買契約に基づいて不動産の所有権を移転する場 合、所有権移転の合意だけでなく、登記がされなければ、所有権移転は生じないとする。 この主義は、外部から認識可能な形式を要求する点で、取引の安全や第三者の保護を重視したものと いうことができる。 3 意思主義の採用 当事者の意思表示のみによって物権変動の効力が生じるとする 176 条は、意思主義を採用したもので ある。したがって、登記や引渡しは、物権変動を第三者に対抗するための要件に過ぎず(177・ 178 条)、物権変動の効力発生要件ではない。 法律行為について私的自治を重視するならば、それを物権変動の場面でも貫徹するものとして、意思 主義を支持することができる。また、意思主義のもとでも、対抗要件制度により、第三者ないし取引安 全の保護が達成することができる。これに対して、形式主義をとると、形式を備えていない物の取得者 は、およそ物権に基づく法的主張をなしえないということになってしまう。

  • 61

    【設例 10】甲土地には、A から X への売買を原因とする所有権移転登記がされていた。ところが、Y が甲を占有していた。そこで、X は、Y に対して、甲の明け渡しを求めた。 登記による権利推定が働くのか?

    設例 10 のように登記名義人と占有者との間で紛争が生じた場合が、権利推定力の働く代表的な場面 である。この場合には、反証がない限り、X は所有者であると推定

  • 62

    【設例 11】甲土地は、Y が占有し、X から Y への売買を原因とする所有権移転登記がされていた。こ れに対して、X は、そのような売買の事実はないとして、Y に対して、所有権に基づき抹消登記手続を 求めた(最判昭和 38・10・15 民集 17‐11‐1497 をもとにした事案)。 登記による権利推定がされるのか?

    登記簿上の不動産の直接の前所有名義人が、現所有名義人に対し当該所有権の移転を争う場合には、 登記の推定力が働かない(判例) 。このように登記簿上の直接当事者間で権利の存否が争われる場合に は、登記簿の記載の真偽が実質的な争点であり、このような場合にまで登記の推定力を認めると、一方 当事者を不当に利することになるからである。

  • 63

    【設例 18】A は、所有する甲不動産を B に売却し、B はさらに C に転売した。ところが、登記は、A から C に直接移転された。 (1) 問題の所在 A→B→C と物権が変動しているのに、 A から C に対して直接に移転登記がされる場合を、 「中間省略 登記」という。従来、登記費用の節約などのために、このような登記がしばしば行われていた。このよ うな登記も、物権変動の実際の過程・態様に合致しておらず、その効力が問題となる。

    (1) 中間省略登記請求の可否 ア)原則 中間省略登記は、実体的な権利変動の過程と異なるものであり、そのような登記を請求する権利は、 当然には発生しない 。権利者 C が登記名義人 A から登記を得るには、中間者 B が A に対して有する 登記請求権を代位行使したうえで(423 条の 7)、さらに B から登記移転を受ける必要がある。 イ)例外 ただし、中間省略登記をすることについて、 A および B の同意がある場合には、中間省略登記の請求 が認められる (2) 既にされた中間省略登記の効力 ア)中間者の同意がある場合 3 当事者間での合意に基づいてされた中間省略登記は、有効とされる 19 イ)中間者の同意がない場合 (A) 中間者の抹消登記手続請求権 中間者の同意を得ずにされた中間省略登記であっても、 抹消登記手続を求める正当な利益を有してい ない中間者は、これを請求することができない 例えば、通常、代金支払と登記移転とが同時履行関係になるところ、中間者が代金支払を受けていれば、もはや正当な利益はないと考えられる 21 (B) 中間者以外の抹消登記手続請求権 中間者以外の第三者は、中間省略登記の無効を主張して、抹消登記手続を求めることができない

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    第 6 講 法律行為の効力否定原因Ⅱ

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    第 7 講 法律行為の効力否定原因Ⅲ

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    第 8 講 法律行為の効力否定原因Ⅳ

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    第5講 国民代表・政党・選挙

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    第 6 講 国会の地位と構造

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    第一回「憲法上の権利」の観念

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    第2回

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    第4回〜7回

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    英単語6

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    英単語 10

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    英単語 14

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    英単語20

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    第6回 不作為犯

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    第八回、第九回 事実の錯誤

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    第十六回 責任の意義・責任能力、原因において自由な行為

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    問題一覧

  • 1

    物権変動を生じさせる法律行為についての立法例2つ

    意思主義と形式主義

  • 2

    物権変動を生じさせる法律行為の立法例の一つである意思主義とは?

    物権変動を生じさせる法律行為は、何らの形式をも必要としないとする立法例

  • 3

    物権変動を生じさせる法律行為についての立法例の一つである形式主義とは?

    、物権変動を生じさせる法律行為を、外部から認識可能な一定の形式 (不動産については登記、 動産については引渡し) を備えなければ効力を生じない要式行為とする立法例

  • 4

    176条「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」は意思主義と形式主義どちらを採用したものか?

    意思主義

  • 5

    債権行為とは?

    債権の発生を目的とする法律行為

  • 6

    物権行為とは?

    物権変動を目的とする法律行為

  • 7

    物権行為の独自性とは?

    物権行為と債権行為とは、常に別個の法律行為であり、物権変動が生じるには前者が必要であるとす る考え方

  • 8

    物権行為の独自性肯定説とは?

    売買契約に基づいて目的物の所有権を移転する場合、売買契約から生じるのは、「目 的物の所有権を移転せよ」という債権だけであり、この債権に基づいて「目的物の所有権を移転する」 という物権的合意がされない限り、所有権移転は生じない。

  • 9

    物権行為の独自性否定説とは?

    契約を成立させる 1 個の合意によって、債権の発生とともに物権の変動まで生じるとみて差し支えな いとする。この見解によると、「買う」 ・ 「売る」という意思表示が合致し売買契約が成立すれば、それだけで目的物の所有権が移転しうる――ただし、売買契約とは別に所有権移転合意がされる可能性があ ることを、否定するわけではない。――

  • 10

    物権行為の無因性とは?

    売買など物権変動の原因となった債権行為(原因行為)の 効力が無効・取消しなどにより失われた場合、物権行為の効力は影響を受けないとする考え方

  • 11

    判例・通説では物権行為の独自性肯定説と否定説、どちらの立場に立っているか?

    物権行為の独自性否定説

  • 12

    【設例 1-2】設例 1 において、A と B は、2020 年 5 月 1 日に、甲を 5000 万円で売買する旨の口頭の 合意をした。その後、同年 5 月 10 日に契約書の交換と代金の支払、5 月 20 日に引渡し、5 月 30 日に 登記移転が行われた。 設例 1-2 において、B はいつの時点から甲の所有者になるのだろうか

    (1) 原則 当事者が最終的に物権変動を生じさせる法律行為をしたときは、原則として、その成立時点で物権変 動が生じる。 (2) 例外 ① 直ちに物権変動を生じるとすることに支障がある場合(例えば、不特定物売買・他人物売買・将 来の物の売買)には、その支障がなくなった時点(不特定物が特定した時、他人物売主が所有権を取得 した時、目的物が現存するに至った時)で、当然に物権変動が発生する。 ② 当事者が物権変動の時期について特別な合意をしていれば、支障がない限り、それに従う。

  • 13

    物権行為の独自性肯定説、否定説によれば、物権変動の時期はいつとなるか

    (1) 物権行為の独自性肯定=代金支払・登記・引渡時変動説 (2) 物権行為の独自性否定=契約時変動説 (3) 物権行為の独自性否定=代金支払時変動説 (4) 確定不要説(なし崩し的移転説・段階的移転説)

  • 14

    不動産物権変動と動産物権変動の公示方法は?

    不動産物権変動=登記、動産物権変動=引渡し

  • 15

    公示の原則とは?

    「物権変動は外部から認識しうる何らかの表象を伴うことを必要とする」

  • 16

    【設例 4】Y は、甲建物を新築し居住していたが、所有権保存登記をしていなかった。A は、これを奇 貨として、甲につき自己名義の所有権保存登記をしたうえで、X に甲を譲渡した。X は、Y に対して、 所有権に基づき甲の明渡しを求めた この請求は妥当か?

    承継取得においては、前主が権利を有していなければ、後主がそれに基づく権利を得ることはできな い。設例 4 において、A が甲の所有権を有していなかった以上、X は、A から甲の所有権を譲り受ける ことはできない。設例4 において、X は、A の登記名義を信頼したからといって、甲の所有権を取得することができない。もっとも、不実の登記を信頼した者を保護するために、判例は、94 条 2 項類推適用を用いている。

  • 17

    公信の原則とは?

    「真実の権利状態と異なる公示が存在した場合に、それを信頼して取引した 者を保護するために、公示どおりの権利が存在したものとみなすべきである」との原則

  • 18

    不動産登記には公信力があるか?

    不動産登記には公信力が認められていない

  • 19

    動産の占有には公信力が認められているか?

    動産の占有には公信力が認められており、即時取得の制度が置かれている (192 条) 。

  • 20

    不動産登記とは?

    ①不動産の客観的状況と権利関係とを一定の公の帳簿(不動産登記簿)に記載する こと、または②その記載そのものを意味

  • 21

    登記簿の編成に関わる主義2つ

    物的編成主義と人的編成主義

  • 22

    物的編成主義とは?

    土地や建物を中心として登記簿を編成する方法

  • 23

    人的編成主義とは?

    人を中心として登記簿を編成する方法

  • 24

    登記記録の区分2つ

    表題部と権利部

  • 25

    保存登記とは?

    不動産について最初に行われる所有権の登記

  • 26

    登記の内容による登記の種類5つ

    記入登記、変更登記、更生登記、抹消登記、回復登記

  • 27

    登記の形式による登記の種類2つ

    付記登記と主登記

  • 28

    付記登記とは?

    既にされた権利に関する登記についての登記で、その権利に関する登記と一体のもの として公示する必要があるもの

  • 29

    主登記とは?

    付記登記の対象となる既にされた権利に関する登記

  • 30

    付記登記の順位はどうなるか?

    付記登記の順位は、主登記の順位により、同一の主登記についての付記登記の順位は、その前後によ る(不登 4 条 2 項)。

  • 31

    登記の効力による登記の分類2つ

    本登記と仮登記

  • 32

    仮登記が認められる場合2つ

    ① 登記原因である物権変動は生じているが、登記申請のために登記所に提供しなければならない情報 を、提供することができない場合(不登 105 条 1 号) ② 本登記の対象となる権利の変動に関する請求権を保全しようとする場合(同 2 号)

  • 33

    当事者共同申請主義とは?

    当事者申請主義と共同申請主義を組み合わせたもの。 不動産登記は、原則として、当事者の申請を受けて行われる(不登 16 条 1 項)。 権利に関する登記の申請は、原則として、登記権利者と登記義務者とが共同して行わなければならな い(不登 60 条)

  • 34

    登記権利者とは?

    権利に関する登記により、登記上、直接に利益を受ける者

  • 35

    登記義務者とは?

    権利に関する登記により、直接に不利益を受ける登記名義人

  • 36

    形式審査主義とは?

    登記申請を受けた登記官は、申請が不動産登記法の形式的要件を満たすかどうかだけ を審査し、登記事項が真実であるかを審査しない主義

  • 37

    登記請求権とは?

    登記義務者が登記申請に協力しない場合に、登記権利者が、登記義務者に対して登記申請に協力する ことを求める請求権

  • 38

    登記請求権の類型3つ

    物権的登記請求権、債権的登記請求権、物権変動的登記請求権

  • 39

    物権的登記請求権とは?

    現在の実体的な物権関係と登記とが一致しない場合には、この不一致を除去するために、物権そのも のの効力(妨害排除請求権)としての登記請求権

  • 40

    債権的登記請求権とは?

    動産賃貸借契約において賃借権登記(605 条)の合意がされた場合など、当事者間での合意によっての登記請求権

  • 41

    物権変動的登記請求権とは?

    物権変動の過程・態様と登記とが一致しない場合、その不一致を除去するために、物権変動それ自体 から、これに対応する登記請求権

  • 42

    登記引取請求権とは?

    登記義務者び登記権利者に対して登記申請に協力するよう求める権利

  • 43

    本登記の効力2つ

    対効力と権利推定力

  • 44

    登記による権利推定の性質についての説2つ

    (1) 法律上の推定説 「甲事実がある場合に、A 権利があるものと推定する。」という法規がある場合に、それに基づいて される推定を、 「法律上の権利推定」という。これを登記の推定力にあてはめ、「登記(という事実)がある場合に、その記載どおりの権利があるものと推定する。」という法規定があるものとする。このよ うな明文の規定は存在しないが、188 条を類推しうることが根拠とされる。法律上の権利推定があると、立証責任が転換され、推定を覆そうとする者は、A 権利の不存在について完全な立証(本証)をしなければならない。そのため、登記の権利推定力を法律上の推定とすると、これを覆そうとする者は、登記記載の権利が存在しないことを立証しなければならない。この見解に対しては、このような権利不存在の立証が極めて困難であるとの批判がある。 (2) 事実上の推定説(判例 12) 自由心証主義のもとで、経験則に照らして、甲事実の存在が立証された場合に、乙事実の存在が推定 される場合を、 「事実上の推定」 という。 事実上の推定説によると、登記の存在が立証されたとしても、裁判所は、その記載どおりの権利が存在するとの心証を得るだけである。これによって、立証責任が転換されるわけではなく、推定を覆そうとする者は、裁判官の確信を動揺させ、当該権利の存在につき真 偽不明の状態に追い込めば足りる(反証)。

  • 45

    仮登記の効力

    順位保全効

  • 46

    順位保全効とは?

    仮登記に基づいて本登記をした場合、その本登記の順位は、仮登記の順位によることになること

  • 47

    【設例 12】A・B 間で、2015 年 11 月 1 日に、A が B に返済期日を 2016 年 11 月 1 日として 3000 万 円を貸し与え、期日までに返済されない場合には、B は所有する甲土地をもって代物弁済する旨の契約 が結ばれた。同日、A の所有権移転請求権を保全するための仮登記がされた。その後、2016 年 4 月 1 日に、B が C に甲を譲渡し、所有権移転登記がされた。 【設例 12-2】設例 12 において、C は、2016 年 7 月 1 日に、甲を D に賃料月額 10 万円で賃貸した。 本登記の効力発生時期はどうなるか?

    仮登記につき本登記がされたとしても、本登記の対効力が仮登記の時点に遡って生じるわけではない。 本登記の効力は本登記の時点で生じ、ただその順位が仮登記の順位によるというだけである(判例・通 説)。したがって、設例 12-2 において、本登記がされたとしても、それより前の C の占有・得た利益 が、不法占有・不当利得になるわけではない。

  • 48

    不動産登記の効力が認められる要件2つ

    形式的有効要件 不動産登記は、不動産登記法の規定する手続に従ってなされるべきものであり、それに従わない登記 申請は却下される(不登 25 条)。 実質的有効要件 登記が有効であるためには、当該登記が表示する不動産が現に存在し、かつ、登記に符合する実体上 の権利関係ないしその変動が存在しなければならない。実際には、登記が現在の実体的権利関係 に符合していれば、実質的有効要件を充たすものとされている。

  • 49

    如実主義とは?

    不動産登記法は、登記簿の記載が、物権変動に関する現在の実体的権利関係に符合するのみならず、 現在に至るまでの物権変動の過程(例えば、A→B→C という順で移転したこと)と態様(いかなる原 因によるかなど)をも如実に公示することを理想とする主義

  • 50

    【設例 13】A は、実際には存在しない乙建物について、所有権保存登記を行った。 【設例 14】A は、甲不動産を所有していた。何の権限も有しない B が、A の名義を冒用して、C との 間で甲の売買契約を締結し、所有権移転登記を経由した こうした登記の処理は有効とされるか?

    目的不動産が存在しないのに存在するとしてされた保存登記や、実体上物権変動がないのに、あった ものとしてされた登記などは、無効である。

  • 51

    【設例 15】 甲不動産は、 A の所有であったが、 A・ B 間で仮装売買がされ、登記名義は B となっていた。C が、A から甲を買い受け、引渡しを受けたところ、これに不満をもった B もまた、A から甲を買い受けた このような登記の処理は有効とされるか?

    設例 15 において、仮装売買契約に基づく B 名義の登記は、本来であれば、実体的権利関係を欠くも のとして無効である。しかしながら、判例は、B が A から真実有効に甲を買い受け、その所有権を取得 したことにより、それ以降登記が現在の実体的権利状態に合致するに至っているとして、この所有権取 得を第三者 C に対抗することができるとしている。

  • 52

    【設例 16】B は、所有する甲建物が滅失したため、同じ敷地に乙建物を新築した。ところが、B は、登 録免許税を節約するために、甲についての滅失登記の申請も、乙についての保存登記の申請もしなかっ た。 B が A に乙を売却し、これに基づいて甲について A への移転登記が行われた。その後、 B は、乙を C にも売却し、乙を引き渡した。A が、C に乙の明渡しを求めた。 滅失した旧建物の登記が新築された新建物に流用された場合、新建物の登記として流用された登記はどうなるか?

    無効である

  • 53

    【設例 17】Z の G に対する 500 万円の債務の担保として、Z の所有する丙土地に抵当権が設定され、 その登記も行われた。Z は債務を完済したが、抵当権設定登記は抹消されていなかった。その後に、Z が Y から 500 万円を借り受け、Z・Y 間で丙に抵当権を設定する契約が結ばれたが、その旨の登記では なく、G の抵当権が Y に譲渡された旨の付記登記がされた。次の各場合において、X は、この付記登記 の抹消登記手続を請求した。 ① Z が G に債務を返済する前に、 X が丙について第 2 順位の抵当権の設定を受け、その旨の登記がさ れていた。 ② Y への抵当権譲渡の付記登記の後に、X が丙について第 2 順位の抵当権の設定を受け、その旨の登 記がされていた。 流用登記は有効とされるか?

    (1) 流用前に利害関係を有する第三者が出現している場合(①) 流用前に出現した第三者との関係では、登記が無効とされる。実体と合致しない登記は無効とすべき ことに加えて、流用登記が有効とされると、第三者の順位上昇への期待が害されるからである。 (2) 流用後に利害関係を有する第三者が出現した場合(②) 有効。流用後に出現した第三者は、特別の事情がない限り、流用登記の無効を主張するにつき正当な利益を有しないとされる 。 第三者の出現時点において、登記にほぼ対応する現実の権利状態が存在しており、当該第三者は、そのような登記を前提として利害関係を取得したからである。

  • 54

    中間省略登記とは?

    A→B→C と物権が変動しているのに、 A から C に対して直接に移転登記がされる場合のこと

  • 55

    中間省略登記請求の可否

    ア)原則 中間省略登記は、実体的な権利変動の過程と異なるものであり、そのような登記を請求する権利は、 当然には発生しない 。権利者 C が登記名義人 A から登記を得るには、中間者 B が A に対して有する 登記請求権を代位行使したうえで(423 条の 7)、さらに B から登記移転を受ける必要がある。 イ)例外 ただし、中間省略登記をすることについて、 A および B の同意がある場合には、中間省略登記の請求 が認められる

  • 56

    既にされた中間省略登記の効力について ア)中間者の同意がある場合 イ)中間者の同意がない場合

    ア)中間者の同意がある場合 3 当事者間での合意に基づいてされた中間省略登記は、有効とされる 。 イ)中間者の同意がない場合 (A) 中間者の抹消登記手続請求権 中間者の同意を得ずにされた中間省略登記であっても、 抹消登記手続を求める正当な利益を有してい ない中間者は、これを請求することができない 。例えば、通常、代金支払と登記移転とが同時履行関 係になるところ、中間者が代金支払を受けていれば、もはや正当な利益はないと考えられる 。 (B) 中間者以外の抹消登記手続請求権 中間者以外の第三者は、中間省略登記の無効を主張して、抹消登記手続を求めることができない

  • 57

    【設例 19】A は、甲土地を X に贈与したが、A から Y への所有権移転登記がされた。そこで、X は、Y に対し、Y から X への所有権移転登記手続を求めた この場合、登記処理はどうなるか?

    設例 19 において X が甲の登記名義を得るには、本来であれば、A→Y の所有権移転登記を抹消した うえで、改めて A→X の登記手続をすべきところである。しかしながら、判例は、このような 2 段階の 登記手続に代えて、 X が Y に対し「真正な登記名義の回復」を登記原因として所有権移転登記手続を請 求することも認めている

  • 58

    【設例 20】A・B 間で、A が所有する甲土地につき仮装売買がされ、A から B への所有権移転登記がさ れた。つづいて、B は、善意の C のために抵当権を甲に設定し、登記を経由した。その後、A は、B に 対して、甲の売買は無効であるとして、所有権移転登記手続を求めた。 申請な登記名義の回復を原因とする移転登記手続は認められるか?

    A が B 名義の所有権登記を抹消するには、利害関係人 C の承諾が必要である(不 登 68 条)。そして、A が C に対して売買の無効を対抗できない場合(94 条 2 項)には、C の承諾を得 ることは不可能である。そこで、 このような場合には、 C の抵当権登記を残したまま A 名義の所有権登 記を実現するために、B から A への所有権移転登記手続を認めざるを得ないとされる

  • 59

    【設例 21】Y は、自己が所有する甲土地を A に贈与したが、持分 10 分の 3 につき Y 名義の持分登記 が残された。その後、A が死亡し、遺産分割協議により、共同相続人の 1 人である X が、甲を単独で相 続した。そこで、X は、Y に対して、上記持分登記の移転登記手続を請求した 真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続請求が認められるか?

    設例 21 のように、無権利者からの登記回復が問題ではなく、かつ、本来の物権変動の過程を反映し た登記が困難ではない場合について、判例は、真正な登記名義の回復を原因とする移転登記手続請求を 認めていない

  • 60

    176 条の意義 【設例 1】A と B は、A が所有する甲土地を B に 5000 万円で売る旨の契約を締結した。 問題の所在 前講で述べたように、物権変動は、何らかの変動原因が存在することによって生じる。そのような物 権変動の原因のうち、とりわけ重要なのが、法律行為(契約)である。法律行為による物権変動に関し て、176 条は、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」として いる。この規定は、いかなる意味を有するのか。

    (1) 意思主義 一方で、物権変動を生じさせる法律行為は、何らの形式をも必要としないとする立法例がある(フラ ンス民法など)。このような立法例を、「意思主義」という。例えば、売買契約に基づいて目的物の所有 権を移転する場合、特別な形式を備えなくても、当事者の合意があれば、所有権移転が生じるとする。 この主義は、当事者が物権変動を生じさせようと意図する限り、なるべくそれを尊重しようとするも のであり、私的自治の原則を重視するものと見ることができる。 (2) 形式主義 他方で、物権変動を生じさせる法律行為を、外部から認識可能な一定の形式 (不動産については登記、 動産については引渡し) を備えなければ効力を生じない要式行為とする立法例がある(ドイツ民法など)。 このような立法例を、「形式主義」という。例えば、売買契約に基づいて不動産の所有権を移転する場 合、所有権移転の合意だけでなく、登記がされなければ、所有権移転は生じないとする。 この主義は、外部から認識可能な形式を要求する点で、取引の安全や第三者の保護を重視したものと いうことができる。 3 意思主義の採用 当事者の意思表示のみによって物権変動の効力が生じるとする 176 条は、意思主義を採用したもので ある。したがって、登記や引渡しは、物権変動を第三者に対抗するための要件に過ぎず(177・ 178 条)、物権変動の効力発生要件ではない。 法律行為について私的自治を重視するならば、それを物権変動の場面でも貫徹するものとして、意思 主義を支持することができる。また、意思主義のもとでも、対抗要件制度により、第三者ないし取引安 全の保護が達成することができる。これに対して、形式主義をとると、形式を備えていない物の取得者 は、およそ物権に基づく法的主張をなしえないということになってしまう。

  • 61

    【設例 10】甲土地には、A から X への売買を原因とする所有権移転登記がされていた。ところが、Y が甲を占有していた。そこで、X は、Y に対して、甲の明け渡しを求めた。 登記による権利推定が働くのか?

    設例 10 のように登記名義人と占有者との間で紛争が生じた場合が、権利推定力の働く代表的な場面 である。この場合には、反証がない限り、X は所有者であると推定

  • 62

    【設例 11】甲土地は、Y が占有し、X から Y への売買を原因とする所有権移転登記がされていた。こ れに対して、X は、そのような売買の事実はないとして、Y に対して、所有権に基づき抹消登記手続を 求めた(最判昭和 38・10・15 民集 17‐11‐1497 をもとにした事案)。 登記による権利推定がされるのか?

    登記簿上の不動産の直接の前所有名義人が、現所有名義人に対し当該所有権の移転を争う場合には、 登記の推定力が働かない(判例) 。このように登記簿上の直接当事者間で権利の存否が争われる場合に は、登記簿の記載の真偽が実質的な争点であり、このような場合にまで登記の推定力を認めると、一方 当事者を不当に利することになるからである。

  • 63

    【設例 18】A は、所有する甲不動産を B に売却し、B はさらに C に転売した。ところが、登記は、A から C に直接移転された。 (1) 問題の所在 A→B→C と物権が変動しているのに、 A から C に対して直接に移転登記がされる場合を、 「中間省略 登記」という。従来、登記費用の節約などのために、このような登記がしばしば行われていた。このよ うな登記も、物権変動の実際の過程・態様に合致しておらず、その効力が問題となる。

    (1) 中間省略登記請求の可否 ア)原則 中間省略登記は、実体的な権利変動の過程と異なるものであり、そのような登記を請求する権利は、 当然には発生しない 。権利者 C が登記名義人 A から登記を得るには、中間者 B が A に対して有する 登記請求権を代位行使したうえで(423 条の 7)、さらに B から登記移転を受ける必要がある。 イ)例外 ただし、中間省略登記をすることについて、 A および B の同意がある場合には、中間省略登記の請求 が認められる (2) 既にされた中間省略登記の効力 ア)中間者の同意がある場合 3 当事者間での合意に基づいてされた中間省略登記は、有効とされる 19 イ)中間者の同意がない場合 (A) 中間者の抹消登記手続請求権 中間者の同意を得ずにされた中間省略登記であっても、 抹消登記手続を求める正当な利益を有してい ない中間者は、これを請求することができない 例えば、通常、代金支払と登記移転とが同時履行関係になるところ、中間者が代金支払を受けていれば、もはや正当な利益はないと考えられる 21 (B) 中間者以外の抹消登記手続請求権 中間者以外の第三者は、中間省略登記の無効を主張して、抹消登記手続を求めることができない