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合理的選択制度論

Aiko Kobayashi

問題数 32 • 6/25/2025

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合理的選択制度論とは？

個人の合理的行動を出発点として制度の形成や変化、制度の機能を説明しようとする理論枠組み

アロー（K. Arrow）の「一般不可能性定理」（多数決の循環）とは？

複数の個人の選好（好み）を集約して、社会全体の合理的な意思決定を行うことが、特定の合理的な条件のもとでは不可能であること

多数決の循環は、投票によって意思を決定する議会が機能不全に陥る可能性を示唆した。しかし、アメリカの議会は、民主主義的な意思決定機関として立法機能を果たしている。議会が機能している制度的な理由４つ

アジェンダ・セッティング・パワー：議長や委員長が議事進行の手順などを決める独占的な権限を持つこと（最初にAとBで多数決をとり、その勝者とCとで多数決を行う。）選好の単峰性：最も好む1点（ピーク）を持ち、それから遠ざかるにつれて評価が下がっていくような選好の形（その政策分野について詳しい議員のみで議会を構成することにより、非単峰的な選好が表出しにくい状況を作る） • 各委員会が、それぞれの分野についての法的管轄権を独占し、委員会で得られた多数派の結論が、相互に尊重される。・法案への修正を制限する議事進行ルールが確立しており、修正案が無制限に提出されない

合理的選択制度論における政治家の目的は？

再選可能性の最大化、党内での出世や、良き公共政策の実現

プリンシパル・エージェント理論（本人代理人論）とは？

「委任と責任の連鎖」 • 政治学では、有権者（本人）は、政治家（代理人）に委任し、与党の政治家（本人）は、首相などの政党リーダー（代理人）に委任し、首相などの政党リーダー（本人）は官僚（代理人）に委任するという関係ととらえる。

エージェンシー・スラックとは？

本人の期待と代理人の行動によって生じる結果との間のギャップ

アメリカの政治家が官僚の行動を監視できない理由３つ

①情報の非対称性、②政治家の関心の限定性、③本人の複数性

政官関係においてエージェンシー・スラック（代理人たる官僚は、本人たる政治家の意向を実現することが期待されているが、官僚は固有の目的を持っているため、常に政治家が望むように行動するとは限らない。）を小さくする方法２つ

官僚に対する「監視」を強化する方法委任の程度を減らし、自ら政策形成を行う（法律案を自ら書く、しかも実施において官僚が裁量を働かせないように細部まで規定する）方法

• マカビン＆シュオルツ（M. D. McCubbins and T. Schwartz）“Congressional Oversight Overlooked: Police Patrols versusFire Alarms.” American Journal of Political Science 2（1984）による議会が官僚を監視する方法の類型２つ

① パトロール型監視：議会が積極的かつ定期的に行政機関の行動をチェックするスタイル ② 火災報知器型監視（Fire Alarm Oversight）：問題が発生したとき、利害関係者（市民、メディア、団体など）が「火災報知器」となって議会に知らせ、議会が対応するスタイル

アメリカにおいて官僚の逸脱行動を防ぐための制度設計３つ

・政治的任命：政治家が官僚に自らと同じ政策選好を持たせるため、採用・昇進などに介入・官僚制や独立機関の「中立化」「独立化」：政権交代前の与党が官僚制を中立化し、短期的な政治的コントロールを受けにくくすることで、将来の政権党の政策選択を拘束すること・政治家の再選にとって重要であり、かつ執政府が政治家の意図通りに執行すると確信できない政策分野については、政治家は委任を行わず、細部まで規定した法案を書く

• ラムザイヤー＆ローゼンブルース（M. Ramseyer and F. Rosenbluth）（1993）『日本政治の経済学』日本の政治家の官僚制に対するコントロールは、アメリカと同等以上である。その特徴５つ

①自民党は官僚の政策案に対して拒否権を持つ。←事前審査制 ②自民党は官僚の人事をコントロールしている。 ③自民党は様々な情報獲得の手段を持つ。←与党政治家は行政機関間の競争関係、官僚に不満を持つ支持層、将来政治家になることを目指す官僚を利用し情報を入手（火災報知器型監視） ④自民党は、官僚の退職後の天下り先についても影響力を持つ ⑤議員を強く拘束する安定的な支配政党を伴う議院内閣制←大統領が拒否権を持つ大統領制と違い、首相と議会の選好が基本的に重なる

• ラムザイヤー＆ローゼンブルース（M. Ramseyer and F.Rosenbluth）（1993）『日本政治の経済学』 • 日本の政治家の官僚制に対するコントロールは、アメリカと同等以上である。日本では、政治家が官僚をコントロールする諸制度が備わっているため、エージェンシー・スラック（官僚の裁量の余地）は小さく、逸脱行動は抑制される。この議論に対する批判２つ

・政治家による省庁人事への介入や天下りの斡旋は、ごく例外的・政治家が様々な手段を用いて官僚をコントロールすることは理解できるものの、官僚がどのような判断の下、どのように行動するのかは検討されてはいない。

官僚の合理性を担保する方法３つ

①個人利益の追求と組織利益の一体化：官僚組織は、個々の構成員が組織の目標や利益に従って行動するよう、効率的な動機づけを行わなければならない←官僚は組織に従えば出世できる ② 組織への貢献度に基づいて、メンバーの貢献に報いる ③一定の地位への昇進および雇用の安定を確保することで、組織に対する忠誠心を培う

官僚組織の目的は？

組織権力の追求（裁量権の拡大）

官僚の影響力の行使方法

政治家に情報を提供し説得することで、影響力を行使

税制改革における与党議員の目的は？

当選回数を積み重ね、族議員としてのキャリアを積み、出世を目指す

税制改革において付加価値税への賛成が何を示すことになると考えられたか？

政策知識を示す ←大型間接税の導入に賛成

大蔵省の組織利益は？

予算全体を統制すること

税制改革の過程分析において、官僚組織は、公共利益と組織権力のどちらを追求するものなのか？

組織権力の追求（裁量権の拡大）最初は公共利益に基づいて複数の政策から選んでいるが、最終的に一つに絞る際には組織利益を追求することになる

選挙基盤が強固な与党政治家の影響力の行使方法は？

選挙区での個別利益にとらわれず、専門知識に基づいて政策決定を行い、党内の政治家や官僚から評価を受けることによって影響力を行使

大蔵省にとって付加価値税が、なぜ望ましい税制となるのか？

経済状況に左右されにくく、税収が予想しやすいため

大平内閣での一般消費税を導入する際の理由づけは？

財政赤字の削減

中曾根内閣での売上税を導入する際の理由づけは？２つ

直間比率の是正、税制の公平・中立・簡素の原則

竹下内閣での消費税の導入における理由づけは？２つ

不平等税制の是正、高齢者のための社会保障支出の財源確保

建林正彦「中小企業政策と選挙制度」（1997）これはどのような本か？

アメリカと日本の大規模小売業規制の違いを選挙制度の違いから説明

中選挙区制の特徴は？

同じ選挙区から複数の自民党候補者が立候補・当選するため、候補者同士での競争が生まれる。そのため、各候補者は自らの支持基盤を他候補と差別化する必要があり、異なる政策や立場を打ち出して有権者にアピールする戦略が求められる。

中選挙区制において、自民党が複数の候補者を建てた場合、票割りの方法は？２つ

① 地域割り（地理的に支持基盤を分ける） ② セクター割り（政策や業界で分ける）

地域割りの利点は？

同じ選挙区内の自民党候補者が同じ政策分野（農水・建設など）を担当していても、地理的に支持基盤が異なるため、票の競合が起きにくいこと

中選挙区制→小選挙区制に変わったことによる変化は？

議員による政策活動の総花化（多くの部会に所属）と、党執行部の権限強化

合理的選択制度論の特徴３つ

１）政治アクターを合理的であると考える。２）合理的選択論は演繹的である。アクターの目的をあらかじめ設定して、それを基に結論を導く３）合理的選択制度論は変数節約的（パーシモニアス）である（現実を単純化して捉えている）

合理的選択制度論の利点3つ

①制度を独立変数とする分析において、理論的明瞭さと体系性を持つ←制度と政策結果との関係がアクターの計算として明瞭に表すことができる ②合理的選択制度論はアクター中心のアプローチであるため、具体的なミクロの政治過程分析と結びつきうる。←アクターがどのように行動したのかを説明できる ③合理的選択制度論は、制度変化を説明する理論を持つ ←制度が合理的な行為者の目的追求行動に影響を与え、政治的帰結を説明するのであれば、目的合理的な個人は常に制度変更の誘因を持つ

合理的選択論アプローチへの批判３つ

• １）前提となる合理性仮定が非現実的である。 • ２）単純化が適切であるのか、また単純化した人間行動のモデルによってどこまで現実を説明できるのか。 • ３）合理的個人の目的や選好をいかに特定するのか。