第 7 講 法律行為の効力否定原因Ⅲ
問題一覧
1
人を欺罔して錯誤に陥らせ、それによって意思表示をさせようとする行為
2
1詐欺者の故意 2違法な欺罔行為 3因果関係
3
(1) 他人を騙して錯誤に陥らせる故意 (2) その錯誤に基づいて一定の意思表示をさせようという故意
4
欺罔行為による錯誤と錯誤による意思表示
5
第三者(C)が、相手方(B)に対して意思表示をさせるために、表意者(A)に対して詐欺を働く場合
6
相手方による詐欺の取り消しの際に主張・立証が必要な事実 相手方の悪意あるいは過失があった事実
7
詐欺者が、相手方から媒介の委託を受けた者、法人の代表者・従業員であるなど、相手方がその行為について責任を負うべき者である場合
8
相手方による詐欺 第三者による詐欺 沈黙による詐欺
9
情報提供義務
10
(1) 他者加害の禁止 (2) 専門家の責任
11
実質的契約自由の回復と専門家に対する社会的信頼
12
専門家と非専門家との間の取引では、情報格差が存在するため、非専門家の実質的な契約自由を回復するために、専門家に情報提供義務を課すこと
13
錯誤の認識と違法性の認識
14
詐欺の当事者およびその包括承継人以外の者で、詐欺による意思表示によって生じた法律関係について、取り消し前に新たに法律上の利害関係を有するに至った者
15
詐欺の場合には、虚偽表示の場合に比して表意者の帰責性が小さいから
16
他人に害悪を示して畏怖を生じさせ、それによって意思表示をさせようとする行為
17
対抗できる
18
1強迫者の故意 2違法な強迫行為 3因果関係
19
①他人に畏怖を生じさせる故意 ②その畏怖に基づいて意思表示をさせようという故意
20
強迫行為による畏怖と畏怖による意思表示
21
① 内容の確定性 ② 内容の実現可能性 ③ 内容の適法性(強行規定違反) ④ 内容の社会的妥当性(公序良俗違反)
22
法律行為をした後に履行不能となる場合
23
法律行為をした時点で既に履行不能となっている場合
24
法律行為無効説(旧法下の伝統的通説)と法律行為解釈説(現行法)
25
後発的不能の場合には債務不履行の問題となるのに対し 、原始的不能の場合には法律行為が無効となるという考え方
26
412 条の 2 第 2 項は、契約債務の履行が契約成立時に不能であっても、415 条の規定に基づき履行不能による損害の賠償を請求することは妨げられない、とする考え方
27
公の秩序に関する規定
28
無効となる
29
① 私的自治・法律行為制度の前提となる規定(権利能力、意思表示の瑕疵に関する規定など) ② 基本的な社会秩序に関する規定(婚姻・親子・相続などに関する規定など) ③ 第三者の権利義務にかかわる規定(物権法の多くの規定、各種の第三者保護規定など) ④ 一定の取引当事者の保護を目的とする規定(利息制限法・借地借家法など)
30
行政上の取締目的から、一定の取引行為を禁止または制限する規定
31
単なる取締規定と効力規定
32
違反する法律行為の私法上の効力に影響しない規定
33
当該行為を私法上も無効とする規定
34
無効要因と有効要因
35
①規定の趣旨 ②違反行為に対する社会の倫理的非難の程度
36
1取引の安全 2当事者間の信義・公平
37
違反を知りながらあえて製造のうえ同業者に売り渡したという場合には、一般大衆の購買ルートに乗せたものと認められ、その結果公衆衛生を害することになるとして、 90 条違反により取引が無効になるとされた。
38
履行前=規定の趣旨/履行後=一律有効とする見解 (1) 履行前(①) 未だされていない履行を請求することは、取締規定の趣旨と衝突することがある。したがって、この 場合には、規定の趣旨によって履行請求が制限される場合があるとする。 (2) 履行後(②) 一定の行為を未然に防止するという取締規定の目的は、既に履行されてしまった場合に取引を無効と し原状回復を認めることによって、達成されない。他方で、この場合に無効を認めると、契約後の事情 変更によって不利益を受けた当事者に、契約を解消する口実を与えることになり、当事者間の信義・公 平や取引の安全に反する。 履行前=一律無効/履行後=総合判断とする見解 (1) 履行前(①) 法が、一方である行為を禁止しながら、他方でその行為の履行請求を認めることは、法秩序の内部に おける価値矛盾であり、回避されるべきである。このことは、規定の趣旨を問わず要請される。 (2) 履行後(②) この場合には、当事者間の不公平や取引の安全を考慮しなければならないが、取締規定の趣旨によっ ては、無効主張を認めるべき場合がある。契約を私法上も無効とすることによって、より効果的に取締 目的が達成されることは否定できない。
39
古典的公序良俗論 社会的妥当性説 契約正義/経済的公序論 基本権保護・支援義務論
40
公序良俗違反による無効は、例外として限定的に理解された 「公序」とは国家の行政警察・司法に関する事柄であり、「良俗」とは性風俗に関する事柄である
41
公序良俗が私的自治・契約自由に対する例外的制限ではなく、法体系全体を支配する理念 「公序」は国家社会の秩序を主眼とし、「良俗」は道徳観念を指す 公序良俗の具体的内容を類型的に明らかにしようとしたこと
42
(1) 裁判例の傾向変化 (2) 原理論の不在
43
公序良俗違反が、政治秩序や家族秩序を保護するだけでなく、①契約正義(契約における当事者の意思を離れた客観的な公正さ)を確保することや、②経済的秩序(取引における当事者の利益や競争秩序)を保護することに資するものであるとする考え方。「当事者の利益保護」とともに、「社会の秩序維持」を重視
44
上記の意味での私的自治を憲法上の基底的な自由として位置づけ、それを制約する理由づけについても、基本権という個人の自由・権利の保護ないし支援を持ち出す考え方。個人の自由・自律を重視
45
①他人の窮迫・軽率もしくは無経験を利用し(主観的要件)、②著しく過当な利益の獲得を目的とする(客観的要件)法律行為
46
観的要素(契約締結過程の問題性)と客観的要素(契約内容の不当性)から相関的に判断される
47
相手方の代理人が詐欺を行った場合には、相手方本人の善意・悪意にかかわらず、取消しが認められ る(判例 2)。これと同様に考えて、詐欺者が、相手方から媒介の委託を受けた者、法人の代表者・従業 員であるなど、相手方がその行為について責任を負うべき者である場合には、96 条 2 項に該当する第 三者ではないというべきである
48
取り消しの成立要件 ①詐欺者の故意 (1) 錯誤の認識 第一に、表意者が当該事実を知らないことを、相手方が認識していたことが必要とされる。 (2) 違法性の認識 第二に、当該事実を告げなければならないことを、相手方が認識していたことが必要とされる。 ②違法な欺罔行為 2-1 情報提供義務 沈黙が違法な欺罔行為に該当するというためには、「ある事実を告げなければならない」という作為 義務が、信義則上、相手方に課されなければならない。このような義務を、 「情報提供義務」という。 このような義務がある場合にのみ、沈黙も 96 条 1 項にいう「詐欺」にあたる。 2-2 情報提供義務を基礎づける理由 前講において述べたように、契約締結判断に必要な情報は、各人が自ら収集しなければならないこと が、民法の原則である。取引の当事者は、自分だけが知っている事実を、何もかも相手方に伝えなけれ ばならないということはない。むしろ、特別な理由が存在する場合にだけ、情報提供義務が課されるこ とになる。そこで、どのような理由があれば情報提供義務が基礎づけられるのか、が問題となる。近時 の学説には、次のような基礎づけの試みがある (1) 他者加害の禁止 第一に、ある情報を伝えなければ相手方の権利を害することになる場合に、情報提供が要請される。 例えば、設例 4 において X は、居住に適さず住宅として無価値なマンション甲を購入させられている。 このことは、X の財産権の侵害と見ることができる。また、万が一甲が倒壊するような事態となれば、 X の生命・身体が害される恐れがある。 (2) 専門家の責任 第二に、次のような理由から、特に専門家に情報提供義務を課すことができる。設例 4 の Y は、不動 産業者であり、不動産取引の専門家といえる。 ア)実質的契約自由の回復 専門家と非専門家との間の取引では、情報格差が存在するため、非専門家に不利な契約が締結される 可能性が高い。これは、非専門家の契約自由が、実質的には失われていることを意味する。したがって、 非専門家の実質的な契約自由を回復するために、専門家に情報提供義務を課すことが考えられる。 イ)専門家に対する社会的信頼 さらに、専門家は、自己に対する社会的信頼に応えるために、情報提供義務を課される可能性がある。 その理由として、①現代の複雑性の高い取引では、専門家への依存が不可欠であり、専門家に対する社会的信頼が守られなければ、円滑な取引は望めないこと、②専門家は、そうした社会的信頼の上に営業 活動を展開し利益を得ており、それに応じた責任を負うべきことが挙げられる。
49
96 条 3 項によれば、詐欺による意思表示の取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができ ない。この規定は、94 条 2 項と同様に権利外観法理に基づくものであり、①他人に欺罔されて意思表 示をした者にも軽率な面があったこと、および、②詐欺の存在を知らずに取引関係に入った第三者を保 護する必要があることを根拠とする。
50
他人に害悪を示して畏怖を生じさせ、それによって意思表示をさせようとする行為
51
強迫行為についても、社会通念上許される限度を超えた違法なものであることが必要である。違法性 の有無は、目的と手段の正当性を相関的に衡量して判断される。設例 7 において、 X の A に対する貸金 返還請求は、正当な権利行使であり、詰問の態様がよほど不当なものでなければ、違法性は認められな い。もっとも、設例 7 のような事案では、強迫の故意の有無が先決問題となる。
52
有効 設例 9 の事案において、最高裁は、食品衛生法が単なる取締規定に過ぎないものとした。
53
有効 設例 10 の事案においても、最高裁は、①文化財保護法が、所有者の自由な処分権限を前提として、 重要文化財の保存を目的とする国の先買権を規定したにとどまること、②著しく取引の安全を害し、譲 受人に不当な損害を及ぼすこと、③同法の適用を受けない無償譲受人との均衡を失することから、違反 行為を有効とした。
54
無効 設例 11 の委任契約は、弁護士法 72 条違反の非弁活動にあたり、90 条違反により無効とされた。
55
前掲名古屋地判昭和 60 年も、設例 13 の事案において、「法は商取法に従った商品取引所以外の場所、 態様における先物取引を禁じ、違反行為に対しては罰則をもって臨んでいるのであるから、その違反行 為に裁判所が加担することはあり得ないし、ここで X の請求を認容することは、法が一方で禁じたもの を他方で与えることになり、矛盾たるを免れない」と述べ、X・A 間の合意について履行強制は許され ないとしている。
56
戦前から昭和 40 年代まで、暴利行為論に関する裁判例の大半を占めていたのは、金銭消費貸借にお ける過剰な違約金・損害賠償額の予定および過剰担保(とりわけ抵当権設定契約に付随する代物弁済予 約)の問題であった。このことは、契約の周辺部分が暴利行為論の適用領域とされていたこと、また、 暴利行為論が取引内容を部分的に修正する機能を有していたことを意味する。前掲大判昭和 9 年も、金銭消費貸借に付随する担保契約における特約の効力を否定したものであり、伝統的な暴利行為論の典型的な適用事例である。
57
いずれも暴利行為を理由に契約そのものが無効 昭和 50 年代以降、下級審裁判例を中心に、暴利行為論の新たな適用場面として、不当勧誘を伴った 消費者取引・投資取引などが浮上してきた。そこでは、主として、被害当事者を不当な契約そのものか ら解放することが問題となっている。設例 15・16 の裁判例は、いずれも、暴利行為を理由に契約その ものを無効としたものである。
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Aiko Kobayashi · 100問 · 1年前英単語23
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100問 • 1年前第4回
第4回
Aiko Kobayashi · 9問 · 1年前第4回
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9問 • 1年前第3回
第3回
Aiko Kobayashi · 33問 · 1年前第3回
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33問 • 1年前第6回 不作為犯
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Aiko Kobayashi · 26問 · 1年前第6回 不作為犯
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23問 • 1年前第3回 同時履行の抗弁・不安の抗弁
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56問 • 1年前第4回
第4回
Aiko Kobayashi · 31問 · 1年前第4回
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31問 • 1年前問題一覧
1
人を欺罔して錯誤に陥らせ、それによって意思表示をさせようとする行為
2
1詐欺者の故意 2違法な欺罔行為 3因果関係
3
(1) 他人を騙して錯誤に陥らせる故意 (2) その錯誤に基づいて一定の意思表示をさせようという故意
4
欺罔行為による錯誤と錯誤による意思表示
5
第三者(C)が、相手方(B)に対して意思表示をさせるために、表意者(A)に対して詐欺を働く場合
6
相手方による詐欺の取り消しの際に主張・立証が必要な事実 相手方の悪意あるいは過失があった事実
7
詐欺者が、相手方から媒介の委託を受けた者、法人の代表者・従業員であるなど、相手方がその行為について責任を負うべき者である場合
8
相手方による詐欺 第三者による詐欺 沈黙による詐欺
9
情報提供義務
10
(1) 他者加害の禁止 (2) 専門家の責任
11
実質的契約自由の回復と専門家に対する社会的信頼
12
専門家と非専門家との間の取引では、情報格差が存在するため、非専門家の実質的な契約自由を回復するために、専門家に情報提供義務を課すこと
13
錯誤の認識と違法性の認識
14
詐欺の当事者およびその包括承継人以外の者で、詐欺による意思表示によって生じた法律関係について、取り消し前に新たに法律上の利害関係を有するに至った者
15
詐欺の場合には、虚偽表示の場合に比して表意者の帰責性が小さいから
16
他人に害悪を示して畏怖を生じさせ、それによって意思表示をさせようとする行為
17
対抗できる
18
1強迫者の故意 2違法な強迫行為 3因果関係
19
①他人に畏怖を生じさせる故意 ②その畏怖に基づいて意思表示をさせようという故意
20
強迫行為による畏怖と畏怖による意思表示
21
① 内容の確定性 ② 内容の実現可能性 ③ 内容の適法性(強行規定違反) ④ 内容の社会的妥当性(公序良俗違反)
22
法律行為をした後に履行不能となる場合
23
法律行為をした時点で既に履行不能となっている場合
24
法律行為無効説(旧法下の伝統的通説)と法律行為解釈説(現行法)
25
後発的不能の場合には債務不履行の問題となるのに対し 、原始的不能の場合には法律行為が無効となるという考え方
26
412 条の 2 第 2 項は、契約債務の履行が契約成立時に不能であっても、415 条の規定に基づき履行不能による損害の賠償を請求することは妨げられない、とする考え方
27
公の秩序に関する規定
28
無効となる
29
① 私的自治・法律行為制度の前提となる規定(権利能力、意思表示の瑕疵に関する規定など) ② 基本的な社会秩序に関する規定(婚姻・親子・相続などに関する規定など) ③ 第三者の権利義務にかかわる規定(物権法の多くの規定、各種の第三者保護規定など) ④ 一定の取引当事者の保護を目的とする規定(利息制限法・借地借家法など)
30
行政上の取締目的から、一定の取引行為を禁止または制限する規定
31
単なる取締規定と効力規定
32
違反する法律行為の私法上の効力に影響しない規定
33
当該行為を私法上も無効とする規定
34
無効要因と有効要因
35
①規定の趣旨 ②違反行為に対する社会の倫理的非難の程度
36
1取引の安全 2当事者間の信義・公平
37
違反を知りながらあえて製造のうえ同業者に売り渡したという場合には、一般大衆の購買ルートに乗せたものと認められ、その結果公衆衛生を害することになるとして、 90 条違反により取引が無効になるとされた。
38
履行前=規定の趣旨/履行後=一律有効とする見解 (1) 履行前(①) 未だされていない履行を請求することは、取締規定の趣旨と衝突することがある。したがって、この 場合には、規定の趣旨によって履行請求が制限される場合があるとする。 (2) 履行後(②) 一定の行為を未然に防止するという取締規定の目的は、既に履行されてしまった場合に取引を無効と し原状回復を認めることによって、達成されない。他方で、この場合に無効を認めると、契約後の事情 変更によって不利益を受けた当事者に、契約を解消する口実を与えることになり、当事者間の信義・公 平や取引の安全に反する。 履行前=一律無効/履行後=総合判断とする見解 (1) 履行前(①) 法が、一方である行為を禁止しながら、他方でその行為の履行請求を認めることは、法秩序の内部に おける価値矛盾であり、回避されるべきである。このことは、規定の趣旨を問わず要請される。 (2) 履行後(②) この場合には、当事者間の不公平や取引の安全を考慮しなければならないが、取締規定の趣旨によっ ては、無効主張を認めるべき場合がある。契約を私法上も無効とすることによって、より効果的に取締 目的が達成されることは否定できない。
39
古典的公序良俗論 社会的妥当性説 契約正義/経済的公序論 基本権保護・支援義務論
40
公序良俗違反による無効は、例外として限定的に理解された 「公序」とは国家の行政警察・司法に関する事柄であり、「良俗」とは性風俗に関する事柄である
41
公序良俗が私的自治・契約自由に対する例外的制限ではなく、法体系全体を支配する理念 「公序」は国家社会の秩序を主眼とし、「良俗」は道徳観念を指す 公序良俗の具体的内容を類型的に明らかにしようとしたこと
42
(1) 裁判例の傾向変化 (2) 原理論の不在
43
公序良俗違反が、政治秩序や家族秩序を保護するだけでなく、①契約正義(契約における当事者の意思を離れた客観的な公正さ)を確保することや、②経済的秩序(取引における当事者の利益や競争秩序)を保護することに資するものであるとする考え方。「当事者の利益保護」とともに、「社会の秩序維持」を重視
44
上記の意味での私的自治を憲法上の基底的な自由として位置づけ、それを制約する理由づけについても、基本権という個人の自由・権利の保護ないし支援を持ち出す考え方。個人の自由・自律を重視
45
①他人の窮迫・軽率もしくは無経験を利用し(主観的要件)、②著しく過当な利益の獲得を目的とする(客観的要件)法律行為
46
観的要素(契約締結過程の問題性)と客観的要素(契約内容の不当性)から相関的に判断される
47
相手方の代理人が詐欺を行った場合には、相手方本人の善意・悪意にかかわらず、取消しが認められ る(判例 2)。これと同様に考えて、詐欺者が、相手方から媒介の委託を受けた者、法人の代表者・従業 員であるなど、相手方がその行為について責任を負うべき者である場合には、96 条 2 項に該当する第 三者ではないというべきである
48
取り消しの成立要件 ①詐欺者の故意 (1) 錯誤の認識 第一に、表意者が当該事実を知らないことを、相手方が認識していたことが必要とされる。 (2) 違法性の認識 第二に、当該事実を告げなければならないことを、相手方が認識していたことが必要とされる。 ②違法な欺罔行為 2-1 情報提供義務 沈黙が違法な欺罔行為に該当するというためには、「ある事実を告げなければならない」という作為 義務が、信義則上、相手方に課されなければならない。このような義務を、 「情報提供義務」という。 このような義務がある場合にのみ、沈黙も 96 条 1 項にいう「詐欺」にあたる。 2-2 情報提供義務を基礎づける理由 前講において述べたように、契約締結判断に必要な情報は、各人が自ら収集しなければならないこと が、民法の原則である。取引の当事者は、自分だけが知っている事実を、何もかも相手方に伝えなけれ ばならないということはない。むしろ、特別な理由が存在する場合にだけ、情報提供義務が課されるこ とになる。そこで、どのような理由があれば情報提供義務が基礎づけられるのか、が問題となる。近時 の学説には、次のような基礎づけの試みがある (1) 他者加害の禁止 第一に、ある情報を伝えなければ相手方の権利を害することになる場合に、情報提供が要請される。 例えば、設例 4 において X は、居住に適さず住宅として無価値なマンション甲を購入させられている。 このことは、X の財産権の侵害と見ることができる。また、万が一甲が倒壊するような事態となれば、 X の生命・身体が害される恐れがある。 (2) 専門家の責任 第二に、次のような理由から、特に専門家に情報提供義務を課すことができる。設例 4 の Y は、不動 産業者であり、不動産取引の専門家といえる。 ア)実質的契約自由の回復 専門家と非専門家との間の取引では、情報格差が存在するため、非専門家に不利な契約が締結される 可能性が高い。これは、非専門家の契約自由が、実質的には失われていることを意味する。したがって、 非専門家の実質的な契約自由を回復するために、専門家に情報提供義務を課すことが考えられる。 イ)専門家に対する社会的信頼 さらに、専門家は、自己に対する社会的信頼に応えるために、情報提供義務を課される可能性がある。 その理由として、①現代の複雑性の高い取引では、専門家への依存が不可欠であり、専門家に対する社会的信頼が守られなければ、円滑な取引は望めないこと、②専門家は、そうした社会的信頼の上に営業 活動を展開し利益を得ており、それに応じた責任を負うべきことが挙げられる。
49
96 条 3 項によれば、詐欺による意思表示の取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができ ない。この規定は、94 条 2 項と同様に権利外観法理に基づくものであり、①他人に欺罔されて意思表 示をした者にも軽率な面があったこと、および、②詐欺の存在を知らずに取引関係に入った第三者を保 護する必要があることを根拠とする。
50
他人に害悪を示して畏怖を生じさせ、それによって意思表示をさせようとする行為
51
強迫行為についても、社会通念上許される限度を超えた違法なものであることが必要である。違法性 の有無は、目的と手段の正当性を相関的に衡量して判断される。設例 7 において、 X の A に対する貸金 返還請求は、正当な権利行使であり、詰問の態様がよほど不当なものでなければ、違法性は認められな い。もっとも、設例 7 のような事案では、強迫の故意の有無が先決問題となる。
52
有効 設例 9 の事案において、最高裁は、食品衛生法が単なる取締規定に過ぎないものとした。
53
有効 設例 10 の事案においても、最高裁は、①文化財保護法が、所有者の自由な処分権限を前提として、 重要文化財の保存を目的とする国の先買権を規定したにとどまること、②著しく取引の安全を害し、譲 受人に不当な損害を及ぼすこと、③同法の適用を受けない無償譲受人との均衡を失することから、違反 行為を有効とした。
54
無効 設例 11 の委任契約は、弁護士法 72 条違反の非弁活動にあたり、90 条違反により無効とされた。
55
前掲名古屋地判昭和 60 年も、設例 13 の事案において、「法は商取法に従った商品取引所以外の場所、 態様における先物取引を禁じ、違反行為に対しては罰則をもって臨んでいるのであるから、その違反行 為に裁判所が加担することはあり得ないし、ここで X の請求を認容することは、法が一方で禁じたもの を他方で与えることになり、矛盾たるを免れない」と述べ、X・A 間の合意について履行強制は許され ないとしている。
56
戦前から昭和 40 年代まで、暴利行為論に関する裁判例の大半を占めていたのは、金銭消費貸借にお ける過剰な違約金・損害賠償額の予定および過剰担保(とりわけ抵当権設定契約に付随する代物弁済予 約)の問題であった。このことは、契約の周辺部分が暴利行為論の適用領域とされていたこと、また、 暴利行為論が取引内容を部分的に修正する機能を有していたことを意味する。前掲大判昭和 9 年も、金銭消費貸借に付随する担保契約における特約の効力を否定したものであり、伝統的な暴利行為論の典型的な適用事例である。
57
いずれも暴利行為を理由に契約そのものが無効 昭和 50 年代以降、下級審裁判例を中心に、暴利行為論の新たな適用場面として、不当勧誘を伴った 消費者取引・投資取引などが浮上してきた。そこでは、主として、被害当事者を不当な契約そのものか ら解放することが問題となっている。設例 15・16 の裁判例は、いずれも、暴利行為を理由に契約その ものを無効としたものである。