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第６回　不作為犯

Aiko Kobayashi

問題数 26 • 7/8/2024

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問題一覧

母親が赤ん坊に授乳せずに、パチンコを長時間することは作為？不作為？

期待された作為をしないことが不作為　母として授乳するべきだったのにしなかったため罪に問われる

不作為犯の種類２つ

真正不作為犯と不真正不作為犯

真正不作為犯とは？

特定の不作為が明記された条文で処罰される犯罪

不真正不作為犯とは？

作為犯と同じ条文で処罰される犯罪

不作為が条文で明記されていないのに、その条文で不作為犯を処罰することは罪刑法定主義に反するか？

罪刑法定主義違反ではない（通説）作為犯の条文には不作為も含まれるから

（不真正）不作為犯の問題点３つ

①処罰の対象となる不作為が条文で具体的に特定されておらず、条文上明確ではなく、処罰範囲が過度に広汎になる可能性 ②不作為を処罰するということは刑罰で一定の作為を強制することに他ならず、その間は他のことが自由にできなくなるという点で、自由が制約される度合いが大きいこと。 ③作為と異なり、不作為には結果発生に対する因果的影響力・惹起力がない可能性がある

不作為犯の問題点を改善するためには何が必要か？

作為犯を検討し、それが成立しない場合に不作為犯を検討すること。不作為犯は例外的に処罰し、その処罰範囲を明確化すること。

不作為犯の構成要件３つ

実行行為：不作為結果、因果関係故意

不作為犯の実行行為とは？

期待された作為を行う（そしてそれにより結果発生を防止する）法的義務（作為義務）の違反

作為義務の判断に関する説の一つである形式的三分説とは？

法令、契約、及び先行行為（不作為に先行する一定の作為であって、結果発生の危険を創出し、または高めるもの）などの条理上の根拠のうちのどれかが認められれば、作為義務が発生するという考え。

作為義務を判断する説の一つである先行行為説とは？

不作為の前に法益侵害に向かう因果の流れを設定すること（が作為義務の根拠として必要だとする考え

先行行為説に対する批判

先行行為があれば全て不作為犯が成立することになる（例えばひき逃げなど）一方、先行行為がなければ絶対に処罰されないことになる（母親が出産した赤ちゃんを放置する場合）

多数説である作為義務の根拠

保護の引受け、排他的支配を要件とする見解保護の引受け：事実上被害者の法益の保護を引き受ける行為（引受け＋依存関係）　排他的支配：結果防止を期待できる者が他にいないこと

作為義務の判断根拠である多元説とは？

義務を基礎づける諸事情を総合考慮するべきだという考え

多元説の総合考慮の材料となる諸事情の内容７つ

契約、法令、先行行為、事実上の引受け、（排他的）支配、作為の容易性、行為者の心理状態（結果発生を積極的に意図しているかどうか？）

判例は作為義務の判断説のうちどの説に近いか？

多元説

殺人罪の不作為犯の判例

　契約により6か月未満の乳児を預かったが食事を与えずに死亡させた事案仮死状態で生まれてきた嬰児に母親がただちに救急措置をとらなかった事案交通事故を起こした者が被害者を自車にいったん引き入れたが助ける気がなくなり車内で死亡させた事案

シャクティパット事件 X（被告人）は，独自の治療を施す特別の能力をもつなどとして信奉者を集めていたが，信奉者Yから，脳内出血で倒れて病院に入院した同人の父A（痰の除去や水分の点滴等の医療措置が必要な状態）の治療を依頼された。Xは，Yの依頼を受け，病院から遠く離れたXの滞在先ホテルで上記独自の治療を行うとして，Yに指示して，Aを入院中の病院から運び出させた。Xは，ホテルまで運び込まれたAの容態を見て，そのままでは死亡する危険があることをはじめて認識したが，上記の指示の誤りが露呈することを避ける必要などから，上記独自の治療を施すにとどまり，痰の除去や水分の点滴等Aの生命維持のために必要な医療措置を受けさせないまま約1日間放置し、Aを死亡させた先行行為、保護の引き受け、実際の支配に当たる行為はどのような行為か？

先行行為：自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた保護の引き受け、実際の支配：患者が運び込まれたホテルにおいて、被告人を信奉する患者の親族から、重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあった

放火罪における不作為犯の判例

養父とけんかし殺害した被告人が、その際に養父が投げつけた火のついた薪から火が燃え広がっていくのを、容易に消し止められたのに、犯行を隠蔽するために燃えるままにした事案神棚にろうそくをあげたところ傾いてお札の方に傾いていることを認識しながら、火事　になれば保険金が手に入ると思ってそのままにした

会社で火鉢を使って残業していた際に別室に行った間に火事になり、消そうと思えば消　せたが失策の発覚をおそれて逃走し、会社を全焼させた先行行為、保護の引き受け、排他的支配は何か？

先行行為：自己の過失行為により右物件を燃焼させたこと保護の引き受け：物件の管：理者としての地位排他的支配：他に火災現場には誰もいなかったこと

保護責任者遺棄の不作為に関する判例

ひき逃げ後、被害者を病院に連れていこうと車に引き入れたが、路上に置去りにした事案救護義務違反、先行行為（＋明言はないが事実上の引受け＋排他的支配）

作為可能性とは？

義務付けられた作為を実行することが物理的・心理的に可能であったこと

作為容易性とは？

義務付けられた作為を実行することが容易であったこと

結果回避可能性とは？

期待された作為がなされていれば、結果が発生しなかったこと

三菱自工トラック脱輪事件トラックのハブが走行中に輪切り破損したために前輪タイヤ等が脱落し，歩行者らに衝突して死傷させた事故因果関係と結果回避可能性は認められるか？

結果回避可能性：同種ハブを装備した車両につきハブの強度不足のおそれ等からリコール（回収）等の改善措置の実施のために必要な措置を採るべき業務上の注意義務があり，同義務を尽くすことによって同事故の回避可能性を肯定し得る因果関係：同事故がハブの強度不足に起因して生じたものと認められるため同事故と上記義務違反との間に因果関係がある

不真正不作為犯の具体的検討方法（１）Ｘは、離婚して子どものＡ（8歳）と二人で暮らしていたが、恋人ができてＡのことをうとましく感じるようになった。ＸがＡと海水浴に出かけた際、泳いでいたＡは足がつって溺れてしまった。その様子を浜辺で見ていたＸは、このままではＡが死んでしまうとわかっていながら、邪魔なＡがこのまま死んでくれた方がよいと考え、Ａを助けにいかなかった。その結果、Ａは溺死した。現場には、Ｘ以外にＡを助けに行けそうな人はおらず、泳ぎの達者なＸが泳いでＡを助けに行っていれば、Ａの命が助かることは確実であった。（２）（１）と同様の経緯だが、Ｘは泳げなかった。（３）（１）と同様の経緯だが、Ｘが泳いで助けに行ってもＡの救命は間に合わなかった（もしくは、間に合うことが確実とまでは言えなかった）。

・不真正不作為犯の実行行為規範：作為と同価値の不作為＝①作為義務違反＋②作為の可能性・容易性　※一例 ①作為義務違反：作為義務の具体的判断基準を明示（例えば、判例のような総合考慮）　本問では、親子関係、排他的支配などの事情から肯定 ②作為の可能性・容易性　※（２）の場合には否定・因果関係　「Ｘが泳いでＡを助けに行っていれば、Ａの命が助かることは確実であった」で条件関係は肯定。法的因果関係について問題となる点はない。　※（３）は結果回避可能性否定

第６回 不作為犯

第６回　不作為犯