第 6 講 法律行為の効力否定原因Ⅱ
問題一覧
1
表意者が、真意ではないこと(表示行為に対応する効果意思がないこと)を知りながら意思表示をした場合のこと
2
真意を相手方が気づいてくれることを期待して、意思表示を行う場合
3
真意を秘匿し、相手方を誤信させる意図をもって意思表示を行う場合
4
意思表示の効力を妨げられない(93 条 1 項本文)
5
①相手方の信頼保護の必要性 ②意図的に真意でない意思表示をした表意者の重大な帰責性
6
相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り(悪意)、または知ることができたときは (有過失)、意思表示が無効となる(93 条 1 項ただし書)。
7
① 表意者が表示行為に対応する効果意思を有していなかったこと ② 表意者が①の事情を知っていたこと ③ 相手方が①の事情を知っていたこと、または、その事情を知らなかったことについて相手方に過失があったことを根拠づける事実
8
93 条 1 項ただし書による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない(93 条 2 項)。
9
相手方と通じてなす真意でない意思表示
10
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない
11
「真実と異なる外観を作り出した者は、その外観を信頼して行為した者に対して、外観に基づく責任を負わなければならない」という法理
12
権利者の帰責性と第三者の信頼保護
13
虚偽表示の当事者およびその包括承継人(相続人など)以外の者で、外形上の行為に対して新たに法律上の利害関係を有するに至った者
14
一般債権者と差押債権者
15
(1) 第三者非該当説(判例 6) 土地と建物は別物であることから、建物賃借人は、敷地について法律上の利害関係を有しないとする。 (2) 第三者該当説 7 建物の利用は敷地の利用を前提とし、建物所有者 B の土地利用権がなくなると、建物賃借人 C の建 物利用は法律上覆るのだから、C の利害関係は法律上のものであるとする。
16
無過失必要説と無過失不要説がある
17
177 条によれば、対抗要件である登記を備えなければ、他方に対し自己の所有権を主張すること ができない。設例 7 において Y は、「登記を備えない限り、甲に対する X の所有権を認めない」と主張 して、X の請求を拒絶することができる。
18
善意の第三者は真正権利者に対して自己の権利を主張するのに対抗要件としての登記を要しない
19
1 転得者の第三者性(①) 94 条 2 項にいう「第三者」の中には、直接の第三者からの転得者も含まれる 13。したがって、直接の第三者が悪意の場合であっても、転得者が善意であれば、94 条 2 項により保護される。 2 相対的構成と絶対的構成(②) 設例 8 ②の場合には、第三者ごとに善意・悪意を考慮するのか、それともいったん善意の第三者が介 在したならば、そこで権利関係が確定するのか、が問題となる。 2-1 相対的構成 94 条 2 項により保護されるか否かを第三者ごとに相対的に判断する考え方を、「相対的構成」という。 現に虚偽の外形を信頼していなかった D を保護する必要はない、とする見解である。 2-2 絶対的構成(判例 14) いったん善意の第三者が介在した以上、それ以後に悪意の第三者が現れたとしても、真正権利者は自 己の権利を主張することができないとする考え方を、 「絶対的構成」という。
20
94 条 2 項により保護されるか否かを第三者ごとに相対的に判断する考え方
21
いったん善意の第三者が介在した以上、それ以後に悪意の第三者が現れたとしても、真正権利者は自 己の権利を主張することができないとする考え方
22
善意の第三者の保護と善意の第三者の財産処分自由を制約する可能性
23
真正権利者 X と外形的権利者 B との間に、外形上の法律行為(虚偽表示)が存 在せず、94 条を適用する基礎を欠くため、Y は、たとえ善意であっても、94 条 2 項の直接適用によって保護されない。しかしながら、判例は、不実の登記を信頼して取引に入った第三者を保護するために、 94 条 2 項類推適用の法理を形成している
24
意思表示に対応する意思を欠く錯誤
25
表示上の錯誤と内容の錯誤
26
表意者が使用するつもりのない表示手段を使用したことにより、効果意思と表示行為とが一致しなかった場合
27
意者が意図した表示手段を用いているものの、その表示の意味内容を誤解したことにより、効果意思と表示行為とが一致しなかった場合
28
(1) 取消しが認められない場合に表意者が引き受けるリスク (2) リスク転嫁の正当性
29
①それが「錯誤に基づくものであって」 ②その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである」こと
30
設例12の売主の同一性は重要性を有しない。 設例13の買主の同一性は重要性を有する。 設例14の目的物の同一性は重要性を有する。
31
表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
32
性質錯誤と理由の錯誤
33
意思表示の対象である人や物の性質に関する錯誤
34
意思表示を行う理由や前提に関する錯誤
35
(1) 取消しが認められない場合に表意者が引き受けるリスクが情報収集失敗のリスクに過ぎないこと (2) 情報収集に関する自己責任原則
36
95 条 1 項の要件に加えて、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる」
37
信頼主義的理解と合意主義的理解
38
ある事情が法律行為の基礎とされていることが、表意者から相手方に表示されてさえいれば、取消しが認められるとする考え方
39
ある事情が法律行為の基礎とされていることが単に表示されただけでは、錯誤取消しを認めるに十分 ではなく、当該事情を基礎とすることが法律行為の内容になっていることが必要であるとする考え方
40
① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤があること(95 条 1 項 1 号) ② 意思表示が①の錯誤に基づくものであること(95 条 1 項柱書) ③ ①の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(95 条 1 項柱書) ④ 取消しの意思表示(120 条 2 項、123 条)
41
① 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があること(95 条 1 項 2 号) ② 意思表示が①の錯誤に基づくものであること(95 条 1 項柱書) ③ その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたこと(95 条 2 項) ④ ①の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(95 条 1 項柱書) ⑤ 取消しの意思表示(120 条 2 項、123 条)
42
錯誤が表意者の重過失によるものであること
43
(1) 重過失の評価障害事実 (2) 相手方の悪意または重過失 (3) 相手方の共通錯誤
44
消費者が行う電子消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示であること 表示錯誤であり、電子計算機を用いた送信時に、申込み・承諾の意思表示を行う意思が存在しなかった場合、または、異なる内容の意思表示を行う意思があった場合であること
45
事業者が、当該申込みまたは承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、消費 者のその意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合、または、消費者から事業 者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合
46
錯誤取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができない(95 条 4 項)。設例 20 において、A は、B との契約を取り消したとしても、C に対して甲の所有権を主張することができない。
47
仮装譲受人から目的物を譲り受けた者(設例 4-2 の C)や、目的不動産上に抵当権の設定を受けた 者(設例 5 の C)が、典型的な「第三者」である。
48
債権者は、担保物権の設定を受けていない場合にも、債務者の一般財産 4を引き当てにすることができる。設例 5-2 において、D は、B が債務を弁済しない場合でも、甲土地からの債権回収を期待する ことができる。とはいえ、A・B 間の仮装売買が無効とされたところで、D は、債権回収が困難になる かもしれないが、債権自体を失うわけではない。したがって、D は、事実上の利害関係を有するに過ぎ ず、94 条 2 項にいう「第三者」にあたらない。
49
利害関係の程度が高くなれば、債権者も「第三者」にあたる。虚偽表示の目的物を差 し押さえた債権者が、その代表例
50
設例 4-3 のような場合に、善意の第三者 C は、真正権利者 A に対して自己の権利を主張するのに、 対抗要件としての登記を要しない 。C が 94 条 2 項によって保護される場合、不動産所有権がどのよ うに移転するかについては、A から C に直接移転するという見解(判例 12)と、A・B 間の譲渡が有効 だったとみなされる結果、A→B→C と順次移転するとの見解とがある。いずれの見解によっても、Aは、C の前主または前々主として、177 条が想定する対抗関係に立たない。
51
表意者の動機が相手方に表示されてさえいれば、錯誤取消しが可能になるとすると、表意者が当該動機を法律行為の前提としていることを相手方が了承していない場合――あるいは、了承しているものと 評価すべきでない場合――にも、取消しが可能となってしまう。
52
最高裁は、以下のように判示して、錯誤無効を認めた。 「保証契約は、特定の主債務を保証する契約であるから、主債務がいかなるものであるかは、保証契 約の重要な内容である。そして、主債務が、商品を購入する者がその代金の立替払を依頼しその立替金 を分割して支払う立替払契約上の債務である場合には、商品の売買契約の成立が立替払契約の前提とな るから、商品売買契約の成否は、原則として、保証契約の重要な内容であると解するのが相当である。 (中略)本件立替払契約のようなクレジット契約が、その経済的な実質は金融上の便宜を供与するに あるということは、原判決の指摘するとおりである。しかし、主たる債務が実体のある正規のクレジッ ト契約によるものである場合と、空クレジットを利用することによって不正常な形で金融の便益を得る ものである場合とで、主債務者の信用に実際上差があることは否定できず、保証人にとって、主債務が どちらの態様のものであるかにより、その負うべきリスクが異なってくるはずであり、看過し得ない重 要な相違があるといわざるをえない。まして、前記のように、1通の本件契約書上に本件立替払契約と 本件保証契約が併せ記載されている本件においては、連帯保証人である Y は、主債務者である A が本 件機械を買い受けて X に対し分割金を支払う態様の正規の立替払契約であることを当然の前提とし、こ れを本件保証契約の内容として意思表示をしたものであることは、一層明確であるといわなければなら ない。」
53
前掲最判平成 28 年は、以下のように述べて錯誤無効を否定している。 「(1) 信用保証協会において主債務者が反社会的勢力でないことを前提として保証契約を締結し、金 融機関において融資を実行したが、その後、主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合には、 信用保証協会の意思表示に動機の錯誤があるということができる。意思表示における動機の錯誤が法律 行為の要素に錯誤があるものとしてその無効を来すためには、その動機が相手方に表示されて法律行為 の内容となり、もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場 合であることを要する。そして、動機は、たとえそれが表示されても、当事者の意思解釈上、それが法 律行為の内容とされたものと認められない限り、表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相 当である。 (2) 本件についてこれをみると、前記事実関係によれば、X 及び Y は、本件各保証契約の締結当時、 本件指針等により、反社会的勢力との関係を遮断すべき社会的責任を負っており、本件各保証契約の締 結前に A 社が反社会的勢力であることが判明していた場合には、これらが締結されることはなかったと 考えられる。しかし、保証契約は、主債務者がその債務を履行しない場合に保証人が保証債務を履行す ることを内容とするものであり、主債務者が誰であるかは同契約の内容である保証債務の一要素となる ものであるが、主債務者が反社会的勢力でないことはその主債務者に関する事情の一つであって、これ が当然に同契約の内容となっているということはできない。そして、X は融資を、Y は信用保証を行う ことをそれぞれ業とする法人であるから、主債務者が反社会的勢力であることが事後的に判明する場合 が生じ得ることを想定でき、その場合に Y が保証債務を履行しないこととするのであれば、その旨をあ らかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であった。それにもかかわらず、本件基本契約及び本件各 保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないことからすると、主債務者が反社会勢力でないということについては、この点に誤認があったことが事後的に判明した場合に本件各保証契 約の効力を否定することまでを X 及び Y の双方が前提としていたとはいえない。また、保証契約が締 結され融資が実行された後に初めて主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合には、既に上記 主債務者が融資金を取得している以上、上記社会的責任の見地から、債権者と保証人において、できる 限り上記融資金相当額の回収に努めて反社会的勢力との関係の解消を図るべきであるとはいえても、両 者間の保証契約について、主債務者が反社会的勢力でないということがその契約の前提又は内容になっ ているとして当然にその効力が否定されるべきものともいえない。 そうすると、 A 社が反社会的勢力でないことという Y の動機は、それが明示又は黙示に表示されてい たとしても、当事者の意思解釈上、これが本件各保証契約の内容となっていたとは認められず、Y の本 件各保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。」
民法1
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9問 • 1年前第3回
第3回
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33問 • 1年前第6回 不作為犯
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Aiko Kobayashi · 26問 · 1年前第6回 不作為犯
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31問 • 1年前問題一覧
1
表意者が、真意ではないこと(表示行為に対応する効果意思がないこと)を知りながら意思表示をした場合のこと
2
真意を相手方が気づいてくれることを期待して、意思表示を行う場合
3
真意を秘匿し、相手方を誤信させる意図をもって意思表示を行う場合
4
意思表示の効力を妨げられない(93 条 1 項本文)
5
①相手方の信頼保護の必要性 ②意図的に真意でない意思表示をした表意者の重大な帰責性
6
相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り(悪意)、または知ることができたときは (有過失)、意思表示が無効となる(93 条 1 項ただし書)。
7
① 表意者が表示行為に対応する効果意思を有していなかったこと ② 表意者が①の事情を知っていたこと ③ 相手方が①の事情を知っていたこと、または、その事情を知らなかったことについて相手方に過失があったことを根拠づける事実
8
93 条 1 項ただし書による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない(93 条 2 項)。
9
相手方と通じてなす真意でない意思表示
10
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない
11
「真実と異なる外観を作り出した者は、その外観を信頼して行為した者に対して、外観に基づく責任を負わなければならない」という法理
12
権利者の帰責性と第三者の信頼保護
13
虚偽表示の当事者およびその包括承継人(相続人など)以外の者で、外形上の行為に対して新たに法律上の利害関係を有するに至った者
14
一般債権者と差押債権者
15
(1) 第三者非該当説(判例 6) 土地と建物は別物であることから、建物賃借人は、敷地について法律上の利害関係を有しないとする。 (2) 第三者該当説 7 建物の利用は敷地の利用を前提とし、建物所有者 B の土地利用権がなくなると、建物賃借人 C の建 物利用は法律上覆るのだから、C の利害関係は法律上のものであるとする。
16
無過失必要説と無過失不要説がある
17
177 条によれば、対抗要件である登記を備えなければ、他方に対し自己の所有権を主張すること ができない。設例 7 において Y は、「登記を備えない限り、甲に対する X の所有権を認めない」と主張 して、X の請求を拒絶することができる。
18
善意の第三者は真正権利者に対して自己の権利を主張するのに対抗要件としての登記を要しない
19
1 転得者の第三者性(①) 94 条 2 項にいう「第三者」の中には、直接の第三者からの転得者も含まれる 13。したがって、直接の第三者が悪意の場合であっても、転得者が善意であれば、94 条 2 項により保護される。 2 相対的構成と絶対的構成(②) 設例 8 ②の場合には、第三者ごとに善意・悪意を考慮するのか、それともいったん善意の第三者が介 在したならば、そこで権利関係が確定するのか、が問題となる。 2-1 相対的構成 94 条 2 項により保護されるか否かを第三者ごとに相対的に判断する考え方を、「相対的構成」という。 現に虚偽の外形を信頼していなかった D を保護する必要はない、とする見解である。 2-2 絶対的構成(判例 14) いったん善意の第三者が介在した以上、それ以後に悪意の第三者が現れたとしても、真正権利者は自 己の権利を主張することができないとする考え方を、 「絶対的構成」という。
20
94 条 2 項により保護されるか否かを第三者ごとに相対的に判断する考え方
21
いったん善意の第三者が介在した以上、それ以後に悪意の第三者が現れたとしても、真正権利者は自 己の権利を主張することができないとする考え方
22
善意の第三者の保護と善意の第三者の財産処分自由を制約する可能性
23
真正権利者 X と外形的権利者 B との間に、外形上の法律行為(虚偽表示)が存 在せず、94 条を適用する基礎を欠くため、Y は、たとえ善意であっても、94 条 2 項の直接適用によって保護されない。しかしながら、判例は、不実の登記を信頼して取引に入った第三者を保護するために、 94 条 2 項類推適用の法理を形成している
24
意思表示に対応する意思を欠く錯誤
25
表示上の錯誤と内容の錯誤
26
表意者が使用するつもりのない表示手段を使用したことにより、効果意思と表示行為とが一致しなかった場合
27
意者が意図した表示手段を用いているものの、その表示の意味内容を誤解したことにより、効果意思と表示行為とが一致しなかった場合
28
(1) 取消しが認められない場合に表意者が引き受けるリスク (2) リスク転嫁の正当性
29
①それが「錯誤に基づくものであって」 ②その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである」こと
30
設例12の売主の同一性は重要性を有しない。 設例13の買主の同一性は重要性を有する。 設例14の目的物の同一性は重要性を有する。
31
表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
32
性質錯誤と理由の錯誤
33
意思表示の対象である人や物の性質に関する錯誤
34
意思表示を行う理由や前提に関する錯誤
35
(1) 取消しが認められない場合に表意者が引き受けるリスクが情報収集失敗のリスクに過ぎないこと (2) 情報収集に関する自己責任原則
36
95 条 1 項の要件に加えて、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる」
37
信頼主義的理解と合意主義的理解
38
ある事情が法律行為の基礎とされていることが、表意者から相手方に表示されてさえいれば、取消しが認められるとする考え方
39
ある事情が法律行為の基礎とされていることが単に表示されただけでは、錯誤取消しを認めるに十分 ではなく、当該事情を基礎とすることが法律行為の内容になっていることが必要であるとする考え方
40
① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤があること(95 条 1 項 1 号) ② 意思表示が①の錯誤に基づくものであること(95 条 1 項柱書) ③ ①の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(95 条 1 項柱書) ④ 取消しの意思表示(120 条 2 項、123 条)
41
① 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があること(95 条 1 項 2 号) ② 意思表示が①の錯誤に基づくものであること(95 条 1 項柱書) ③ その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたこと(95 条 2 項) ④ ①の錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(95 条 1 項柱書) ⑤ 取消しの意思表示(120 条 2 項、123 条)
42
錯誤が表意者の重過失によるものであること
43
(1) 重過失の評価障害事実 (2) 相手方の悪意または重過失 (3) 相手方の共通錯誤
44
消費者が行う電子消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示であること 表示錯誤であり、電子計算機を用いた送信時に、申込み・承諾の意思表示を行う意思が存在しなかった場合、または、異なる内容の意思表示を行う意思があった場合であること
45
事業者が、当該申込みまたは承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、消費 者のその意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合、または、消費者から事業 者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合
46
錯誤取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができない(95 条 4 項)。設例 20 において、A は、B との契約を取り消したとしても、C に対して甲の所有権を主張することができない。
47
仮装譲受人から目的物を譲り受けた者(設例 4-2 の C)や、目的不動産上に抵当権の設定を受けた 者(設例 5 の C)が、典型的な「第三者」である。
48
債権者は、担保物権の設定を受けていない場合にも、債務者の一般財産 4を引き当てにすることができる。設例 5-2 において、D は、B が債務を弁済しない場合でも、甲土地からの債権回収を期待する ことができる。とはいえ、A・B 間の仮装売買が無効とされたところで、D は、債権回収が困難になる かもしれないが、債権自体を失うわけではない。したがって、D は、事実上の利害関係を有するに過ぎ ず、94 条 2 項にいう「第三者」にあたらない。
49
利害関係の程度が高くなれば、債権者も「第三者」にあたる。虚偽表示の目的物を差 し押さえた債権者が、その代表例
50
設例 4-3 のような場合に、善意の第三者 C は、真正権利者 A に対して自己の権利を主張するのに、 対抗要件としての登記を要しない 。C が 94 条 2 項によって保護される場合、不動産所有権がどのよ うに移転するかについては、A から C に直接移転するという見解(判例 12)と、A・B 間の譲渡が有効 だったとみなされる結果、A→B→C と順次移転するとの見解とがある。いずれの見解によっても、Aは、C の前主または前々主として、177 条が想定する対抗関係に立たない。
51
表意者の動機が相手方に表示されてさえいれば、錯誤取消しが可能になるとすると、表意者が当該動機を法律行為の前提としていることを相手方が了承していない場合――あるいは、了承しているものと 評価すべきでない場合――にも、取消しが可能となってしまう。
52
最高裁は、以下のように判示して、錯誤無効を認めた。 「保証契約は、特定の主債務を保証する契約であるから、主債務がいかなるものであるかは、保証契 約の重要な内容である。そして、主債務が、商品を購入する者がその代金の立替払を依頼しその立替金 を分割して支払う立替払契約上の債務である場合には、商品の売買契約の成立が立替払契約の前提とな るから、商品売買契約の成否は、原則として、保証契約の重要な内容であると解するのが相当である。 (中略)本件立替払契約のようなクレジット契約が、その経済的な実質は金融上の便宜を供与するに あるということは、原判決の指摘するとおりである。しかし、主たる債務が実体のある正規のクレジッ ト契約によるものである場合と、空クレジットを利用することによって不正常な形で金融の便益を得る ものである場合とで、主債務者の信用に実際上差があることは否定できず、保証人にとって、主債務が どちらの態様のものであるかにより、その負うべきリスクが異なってくるはずであり、看過し得ない重 要な相違があるといわざるをえない。まして、前記のように、1通の本件契約書上に本件立替払契約と 本件保証契約が併せ記載されている本件においては、連帯保証人である Y は、主債務者である A が本 件機械を買い受けて X に対し分割金を支払う態様の正規の立替払契約であることを当然の前提とし、こ れを本件保証契約の内容として意思表示をしたものであることは、一層明確であるといわなければなら ない。」
53
前掲最判平成 28 年は、以下のように述べて錯誤無効を否定している。 「(1) 信用保証協会において主債務者が反社会的勢力でないことを前提として保証契約を締結し、金 融機関において融資を実行したが、その後、主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合には、 信用保証協会の意思表示に動機の錯誤があるということができる。意思表示における動機の錯誤が法律 行為の要素に錯誤があるものとしてその無効を来すためには、その動機が相手方に表示されて法律行為 の内容となり、もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場 合であることを要する。そして、動機は、たとえそれが表示されても、当事者の意思解釈上、それが法 律行為の内容とされたものと認められない限り、表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相 当である。 (2) 本件についてこれをみると、前記事実関係によれば、X 及び Y は、本件各保証契約の締結当時、 本件指針等により、反社会的勢力との関係を遮断すべき社会的責任を負っており、本件各保証契約の締 結前に A 社が反社会的勢力であることが判明していた場合には、これらが締結されることはなかったと 考えられる。しかし、保証契約は、主債務者がその債務を履行しない場合に保証人が保証債務を履行す ることを内容とするものであり、主債務者が誰であるかは同契約の内容である保証債務の一要素となる ものであるが、主債務者が反社会的勢力でないことはその主債務者に関する事情の一つであって、これ が当然に同契約の内容となっているということはできない。そして、X は融資を、Y は信用保証を行う ことをそれぞれ業とする法人であるから、主債務者が反社会的勢力であることが事後的に判明する場合 が生じ得ることを想定でき、その場合に Y が保証債務を履行しないこととするのであれば、その旨をあ らかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であった。それにもかかわらず、本件基本契約及び本件各 保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないことからすると、主債務者が反社会勢力でないということについては、この点に誤認があったことが事後的に判明した場合に本件各保証契 約の効力を否定することまでを X 及び Y の双方が前提としていたとはいえない。また、保証契約が締 結され融資が実行された後に初めて主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合には、既に上記 主債務者が融資金を取得している以上、上記社会的責任の見地から、債権者と保証人において、できる 限り上記融資金相当額の回収に努めて反社会的勢力との関係の解消を図るべきであるとはいえても、両 者間の保証契約について、主債務者が反社会的勢力でないということがその契約の前提又は内容になっ ているとして当然にその効力が否定されるべきものともいえない。 そうすると、 A 社が反社会的勢力でないことという Y の動機は、それが明示又は黙示に表示されてい たとしても、当事者の意思解釈上、これが本件各保証契約の内容となっていたとは認められず、Y の本 件各保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。」