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その2
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  • 1

    P.ラザースフェルドらは、エリー調査を始めとする一連の調査からマスメディアの世論への影響を分析し、ラジオ番組のキャスターやニュース解説者のようなオピニオンリーダーの発言が世論に大きな影響を与えることを明らかにした。

    ラザースフェルドらのいうオピニオン・リーダーは、ラジオ番組のキャスターやニュース解説者ではない。オピニオン・リーダーとは、マス・メディアが報道する事柄に常に関心を有し、マス・メディアからの情報を、日常会話などの中でのパーソナル・コミュニケーシヨンによって、直接周囲の知人や友人、家族などに伝達する者である。

  • 2

    J.クラッパーは、20世紀初頭に、マスメディアの世論への影響は限られたものであるとする限定効果説を唱えたが、その後のロシア革命やナチスの台頭過程などの経験を通じて、1960年代にはマスメディアの大きな影響力を認める強力効果説が支配的な学説となった。

    クラッパーが限定効果論を提唱したのは、20世紀初頭ではなく1940年代から1960年代初頭である。また、ナチスの台頭過程などの経験から強力効果論が主張されたのは1930年代であり、1960年代後半から限定効果論を批判する新たな強力効果論が主流となったが、その契機となったのは、アメリカ大統領選挙でのテレビ討論の実施などである。

  • 3

    M.マコームズらは、マスメディアの報道が「いま政治で何が重要か」に関する世論の動向に影響を与えることを通じて、政策決定者による政策的な優先順位の決定にも影響を及ぼすとする、マスメディアの第三者効果仮説を提唱し、後に実証研究によってそうした効果の存在を確認した。

    マス・メディアの報道が、政治における争点に関して世論の動向に影響を与えることを通じて、政策決定者による政策的な優先順位の決定にも影響を与える、というマコームズらの主張は、「議題設定機能仮説」である。なお、第三者効果仮説とは、マス・メディアによる説得的な報道にさらされた人物は、自分自身よりも他人のほうが大きな影響を受けやすいと考える、という仮説であり、ダヴィソンによって提唱された。

  • 4

    S. アイエンガーは、マスメディアが社会問題を取り上げる場合に、争点を描写する際のフレーム(切り口)の違いが、問題の責任をどこに帰属させるかという受け手の解釈に差をもたらした、としてフレーミング効果の存在を示した。

    妥当である。

  • 5

    G.ガーブナーらは、マスメディアの伝える政治情報が、長期的には政治に関する市民の認知的な理解力を増大させ、結果として民主主義の質を高めるという、マスメディアの涵養効一果の存在を主張した。

    ガーブナーらが主張したマス・メディアの涵養効果とは、ドラマを長時間見る人が短時間しか見ない人よりも、ドラマで描かれる内容を現実の社会像として考えがちである、というものである。

  • 6

    ハイマンは、人々は自分の意見が多数派のものなら自分の意見を積極的に表明するが、少数派の意見だと思うと沈黙してしまい、多数意見か少数意見かの判断にマス・メディアが大きな影響を及ぼしているとした。

    妥当である。

  • 7

    マコームズとショーは、マス・メディアは人々に対して、何を問題として何について考えるべきかには影響を与えないが、どのように考えるかには大きな影響を与え、人々の態度を直接的に変えるとした。

    マコームズとショーは、議題設定機能仮説を提示した。それによれば人々は、マス・メディアが強調することにより、ある特定の情報が存在することを知るだけでなく、その情報が重要であることを認知するとされる。つまり、彼らによれば、マス・メディアは何を問題として何について考えるべきかに大きな影響を与える。

  • 8

    クラッパーは、マス・メディアの威力は強大であり、あらゆる受け手に対して即時的な効果をもたらし、受け手の既存の態度を強化する方向で働くよりも、受け手の態度を改変させることになるとした。

    クラッパーは、マス・メディアが直接的かつ即効的な影響を与え、受け手の無批判的な同調性を生み出すという「皮下注射モデル」を批判し、マス・メディアの効果を限定的にとらえた。 クラッパーによれば、マス・メディアは一般的に、受け手に対して直接作用するのではなく、さまざまな要因に媒介されて作用しており、それらの媒介要因によって、通常、受け手の考え方を改変するというよりは補強する傾向が強いとされる。

  • 9

    ガーブナーは、プライミング効果を提起し、マス・メディアの報道によって、ある争点が有権者に重視されるようになると、その争点は有権者が政治指導者や政権を評価する際の基準としても比重を増してくるとした。

    本肢はアイエンガーが指摘したプライミング効果に関する記述である。ガーブナーは培養(涵養)理論を提唱した。

  • 10

    P.ラザースフェルドらは、1940年のエリー調査に基づき、選挙キャンペーンの効果について検証した。その結果、選挙までの半年の間に、マスメディアの影響で投票意図(投票を予定している政党)を変えた有権者がごく少数であったこと、すなわちマスメディアによる改変効果は小さいことを主張した。

    妥当である。P、ラザースフェルドらは1940年の大統領選挙における「エリー調査」に基づき「コミュニケーションの二段の流れ」を発表し、有権者の投票行動に対するマスメディアの影響力よりも、オピニオンリーダーを起点とするパーソナルコミュニケーションの影響力のほうが大きいことを実証的に主張した。

  • 11

    「アナウンスメント効果」とは、マスメディアが選挙前に各政党の公約に関する評価を報じることで、有権者の投票行動に影響が生じる効果をいう。その一種である「判官びいき効果」とは、マスメディアから公約を否定的に評価された政党に有権者から同情が寄せられ、事前予測よりも得票が増える現象をいう。

    「アナウンスメント効果」とは、マスメディアが選挙前に各政党・候補者の優勢・劣勢を報じることが有権者の投票行動に影響を与えるという効果である。そして「判官びいき効果」(アンダードッグ効果)とは、劣勢と報道された政党・候補者に同情が寄せられ、選挙結果として多くの得票を得るという効果である。したがって本肢の「アナウンスメント効果」と「判官びいき効果」の説明が誤りである。

  • 12

    特定の手点がマスメディアで強調されると、その手点は有権者が政治指導者を評価する際の基準として比重を増すという効果を「第三者効果」という。一方、同じ争点についても報道の切り口(枠付け)によっては、受け手が情報のぴょう性に疑いを持ってしまう。この効果を「フレーミング効果」という。

    本肢の前段について、特定の手点をマスメディアが強調して報道することによって有権者の評価基準として比重を増す効果は「プライミング効果」と呼ばれる。また後段について、「フレーミング効果」とは情報の送り手であるメディアが報道内容(報道の視点)をどのようなフレーム(枠付け)で報道するかによって、情報の受け手の意見や態度が異なることになるという効果をいう。したがって本肢は前段の説明文の名称が異なる点、後段の「フレーミング効果」の説明が異なる点で誤りである。

  • 13

    コロンビア学派は、2000年の米国大統領選挙に際して、いわゆるエリー調査を実施し、「コミュニケーションの二段階の流れ」仮説を提唱した。この仮説は、一般の人々はマスメディアから直接情報を摂取するというよりも、政治的関心の高いバッファー・プレイヤーがまずマスメディアから情報をとり、それが日常会話などの中でのパーソナル・コミュニケーションによって周囲の人々に広められるとするものである。

    いわゆるエリー調査は、1940年のアメリカ大統領選挙で実施されたものである。また、「バッファー・プレイヤー」ではなく、「オピニオン・リーダー」である。「バッファー・プレイヤー」とは、1980年代の日本における選挙予測報道のアナウンスメント効果で用いられた概念である。基本的には自民党政権を望むが、政局は与野党の伯仲状況(バッファー)がよいと考え、戦略的な投票行動を行う有権者である。肢5.の「判官びいき効果」を説明する概念となっている。

  • 14

    バンドワゴン効果」とは、マスメディアによって一方の候補者が有利だと報道されると、その候補者の得票が増加する効果であり、小選挙区制における選挙でよく見られる現象である。一方、「判官びいき効果」とは、マスメディアによって不利だと報道された候補者の得票が増加する効果であり、かつての我が国の中選挙区制における選挙でよく見られた現象である。

    妥当である。日本では1996年に小選挙区比例代表制が導入されたことで、バンドワゴン効果がみられるようになっている。一方、「判官びいき効果」とは、「アンダードッグ効果」とも呼ばれ、中選挙区制下の中でも、1980年代の自民党にアンダードッグ効果の現象がみられたとされる。

  • 15

    アーモンドは、政党の機能には、社会における個人や集団が表出する様々な要求、利益、意思などを調整し、政策提案にまとめあげていく利益集約機能があるが、社会問題を政治問題に転換していく利益表出機能は、圧力団体がその機能を果たしているため、政党にはその機能はないとした。

    後半の記述が誤り。政党もまた、社会に散在する潜在的要求を集約し政治的要求としてまとめあげ、これを広く社会に明らかにする、利益表出機能を有しており、これと利益集約機能を合わせて政策形成機能とよぶ。

  • 16

    サルトーリは、政党制を、その国の政党数のほか、政党間のイデオロギー距離を主な基準として7つに分類し、そのうちの1つであるヘゲモニー政党制とは、支配的な政党がないため、極めて多くの政党が乱立している状態であるとした。

    「極めて多くの政党が乱立している状態」は、原子化政党制の説明である。ヘゲモニー政党制とは、一つの政党を中心にしてその周辺に第二次的な小政党の存在を認める政党制であり、小政党は単に存在を許されているにすぎず、政権交代は起こりえない。

  • 17

    シャットシュナイダーは、政党とは、全員が同意しているある特定の原理に基づき、共同の努力によって国民的利益を推進するために結集した人々の集まりであると定義し、徒党と異なり、政党は公的利益実現をめざす存在でなくてはならないとした。

    本肢は、バークが定義した政党に関する記述である。バークはまた、いわゆるブリストルの演説で、議会の議員は選出された一地方の代表者ではなく、全国民の代表者であるという、議会主義の原理の一つである国民代表制の原理を示した。

  • 18

    デュヴェルジェは、政党制を、政党の数を基準として、1つの政党だけが存在し、支配している一党制、2つの強力な政党が存在し、政権をめぐって有効競争をしている二大政党制、3つ以上の政党が存在し、いずれもが過半数を制しておらず、連立によって政権が形成されている多党制に分類した。

    妥当である。デュヴェルジェはさらに、選挙制度によって政党制が規定されるとして、小選挙区制が二大政党制をもたらし、比例代表制が多党制をもたらすと主張した。安定した民主政治は、小選挙区制の下での二大政党制によってのみ可能とする、「二党制の神話」を唱えた。

  • 19

    バークは、政党の発展を選挙権の拡大と関連づけて、政党が、貴族が支配層であった時代の貴族政党から、新たに支配層として台頭してきた名望家による名望家政党を経て、政治的重要性を増してきた大衆を動員するための組織を備えた大衆政党へと発展していったとした。

    本肢は、ウェーバーが類型化した政党に関する説明である。ウェーバーは、イギリスの政党発達史に基づいて、貴族政党、名望家政党、大衆政党という段階を経て政党が発達したと指摘した。

  • 20

    G.サルトーリは1970年代、政党の数と政権交代の回数という二つの基準を用いて、政党システムの分類を行った。その類型の一つである「穏健な多党制(限定的多党制)」は、複数の政党が民主的選挙で競争している一方、結果として特定の一政党が選挙に勝利し続けるため、政権交代が長期間行われない政党システムをさす。

    本肢は、「一党優位政党制」に関する記述である。「穏健な多党制」とは、政党数が3~5で、政党間のイデオロギー距離が比較的小さく、連合交渉がまとまりやすいため、安定した連合政権が可能な政党制である。

  • 21

    M.デュヴェルジェは、「小選挙区制は二大政党制に、比例代表制は多党制につながる」とする法則を提示した。彼は、小選挙区制が二党化を促すメカニズムとして、「機械的要因」と「心理的要因」をあげる。後者は、各選挙区で当選可能性の低い第3党以下の候補者が、有権者の戦略的な投票の結果、淘汰されることをいう。

    妥当である。本肢は、「デュヴェルジェの法則」に関する記述である。デュヴェルジェは、安定した民主政治は、小選挙区制の下での二大政党制によってだけ可能であるとする、「二党制の神話」を主張した。

  • 22

    日本の55年体制下においては、野党第一党の民主党をはじめ、共産党など多数の政党が乱立し、連立なしには単独政権の維持は困難であった。このような体制は、G.サルトーリに代表される現代の政治研究では、一党優位政党制ではなく、多党制に分類されるのが通例である。

    55年体制における野党第一党は、「民主党」ではなく、日本社会党である。55年体制においては、日本社会党の他、民社党、公明党、共産党などの野党も存在したが、現実には自由民主党が政権を維持していたことから、G.サルトーリは、55年体制を「一党優位政党制」と分類した。

  • 23

    G.サルトーリは、政党数と政党間のイデオロギー距離によって政党システムを分類した。 「穏健な多党制」は、三つから五つの政党が存在し、政党間のイデオロギー距離が比較的小さい政党システムを指す。これに対し、「分極的多党制」は、六つから八つの政党が存在し、政党間のイデオロギー距離が比較的大きい政党システムを指す。

    妥当である。サルトーリは政党制を、政党数と政党間のイデオロギー距離によって、①ー党制、②ヘゲモニー政党制、③一党優位政党制、④二党制、⑤穏健な多党制(限定的多党制)、 ⑥極端な多党制(分極的多党制)、⑦原子化政党制の七つに分類した。

  • 24

    Mヴェーバーは、19世紀に各国の政党が貴族政党から近代組織政党へと発展を遂げ、さらに20世紀に入って近代組織政党が名望家政党へと変化しつつあることを指摘した。このうち名望家政党とは、カリスマ的なリーダーシップを持った名望家がマスメディアを用いて有権者に直接訴え、支持を集める政党を指す。

    M.ヴェーバーはイギリスにおける1832年の第一次選挙法改正以前の政党を貴族政党とし、その後の19世紀の政党を名望家政党としており、また名望家政党ではそれぞれの議員が自立し分権的構造を持つ政党であるとした。さらに20世紀に入り普通選挙が実施される時期に大衆政党に変化すると指摘した。したがって本の「19世紀に~を指摘した」の部分、および名望家政党の説明も誤りである。

  • 25

    R.ミヘルスは、20世紀初頭にドイツの社会民主党について分析を行い、この政党が民主主義を掲げているにもかかわらず、組織の内部では一握りのエリートが支配している実態を明らかにした。このことから彼は、あらゆる組織において少数者支配が生じるという「寡頭制の鉄則」を主張した。

    妥当である。R.ミヘルスはドイツ社会民主党のように民主主義を掲げる政党ですら少数の上層部による支配が生じているとする「寡頭制の鉄則」を主張した。

  • 26

    M.デュヴェルジェは、20世紀初頭に、欧米諸国で大衆政党と呼ばれる新しい組繊構造を持った政党が出現したと指摘している。大衆政党は、この時期に新しく選挙権を得た一般大茶に基盤を置く政党で、従来の政党に比べて極めて分権的な組織であるとされる。大衆政党の典型例に、米国の民主党が挙げられる。

    前段は正しく、M.デュヴェルジェは20世紀型の政党として大衆政党を指摘した。しかしデュヴェルジュの指摘する大衆政党は政党幹部に権力が集中する集権的な組織であるとし、その典型例として社会主義政党、共産主義政党、ファシズム政党を挙げており、アメリカの民主党および共和党は党議拘束の弱い幹部政党の例として挙げている。したがって後段で大衆政党が「極めて分権的な組織である」とする点、およびその典型例を米国の民主党とする点が誤りである。

  • 27

    N.ポルスビーは、議会のタイプを変換型議会とアリーナ型議会に整理した。彼によれば、変換型では、政党や議員による意見の調整を通じて、国民の意思を法律に変換することが主な役割になるとし、英国がその典型とした一方、アリーナ型では、政権を担当する政党と、それ以外の政党が議論を闘わせる場としての役割が重視されるとし、米国がこれに対応するとした。

    変換型議会の典型例が米国であり、アリーナ型議会の典型例が英国である。それ以外の記述は正しい。

  • 28

    S.リプセットとS.ロッカンは、第二次世界大戦後の西欧諸国では、社会に存在する民族、言語、宗教、階級といった、人々を区分し、潜在的に対立を引き起こしうる分断線(社会的亀裂)に沿った形で政党が形成されており、1960年代の西欧諸国の政党システムは、少数の重要な例外を除いて、1920年代の亀裂構造を反映しているという政党システムの凍結仮説を唱えた。

    妥当である。

  • 29

    1955年に、講和条約や安全保障条約の締結を巡る対立で分裂していた左派社会党と右派社会党が統一し、民主社会党が誕生したが、1960年に右派の一部が再分裂して日本社会党(社会党)を結成した。

    1955年に左派社会党と右派社会党が統一して誕生したのは、日本社会党(社会党)である。 1960年に右派の一部が離党して結成したのは、民主社会党(民社党)である。

  • 30

    1955年に、自由党と国民民主党とが保守合同し、自由民主党(自民党)が結成され、1993年までの38年間一貫して政権を担当してきたが、こうした政党政治の体制は「55年体制」と呼ばれた。

    1955年の保守合同は、自由党と日本民主党によるものである。これにより自由民主党(自民党)が結成され、1993年まで政権を担当した(55年体制)。

  • 31

    1994年に、非自民連立政権を離脱した社会党の委員長である村山富市を首相に、自民党、社会党、新進党の連立政権が成立し、自民党は政権に復帰した。

    1994年に、非自民連立政権を離脱した社会党の委員長である村山富市を首相として成立したのは、自民党、社会党、新党さきがけの連立政権であった。

  • 32

    1996年に、民主党が結成され、新進党の議員の多くが合流し、2009年の政権交代で民主党 単独政権の鳩山由紀夫内閣が発足したが、2012年の総選挙の結果、自民党政権が成立した。

    1996年に民主党が結成された際、新進党からの合流者はわずかであった。2009年の政権交代では、民主党、社民党、国民新党の連立政権である鳩山由紀夫内閣が発足した。その後も菅内閣、野田内閣と続いたが、2012年の総選挙では自民党が圧勝して政権を奪還し、安倍晋三内閣が成立した。

  • 33

    多数代表制は、ある選挙区における多数派から支持を獲得した候補者や政党を代表として選出する仕組みであり、一選挙区から一人の代表を選出する小選挙区制はその典型であるが、小選挙区制には、次点以下の候補に投じられた票はすべて死票となるといった短所がある。

    妥当である。多数代表制は各選挙区の多数派が議席を独占するもので、地域社会が緊密な一体性を保持している場合に、望ましいとされる。したがって、最大得票者のみが当選する小選挙区制が多数代表制の典型となる。

  • 34

    J.S.ミルは、安定した多数派が形成され、政局の堅実な運営を可能にすることが議院内閣制の下での議会において重要であり、その目的にかなうのは多数代表制であるとした。

    本肢は、バジョットの多数代表制の記述である。バジョットは、議院内閣制を堅実に運営していくためには、議会において安定した多数派を形成することが重要であるとし、多数代表制がその目的に適うとした。

  • 35

    バジョットは、広い選挙区から最も良い候補を選べることで、高度の知性と人格をもつ指導者を選べるようになり、少数者の諸集団は当然有すべき大きさの力を正確に有するとして、比例代表制を支持した。

    本肢は、J.S.ミルの比例代表制の記述である。ミルは、個人の自由を確保するためには、「多数者の専制」に対して少数派の個性を擁護することが重要であると指摘し、少数派も含めた民意を議会に反映できる比例代表制を主張した。

  • 36

    衆議院議員総選挙の小選挙区比例代表並立制においては、衆議院の定数465議席のうち、 289議席は小選挙区から選出され、残りの176議席は比例代表で選出される。小選挙区制では大政党が有利になる一方、比例代表制では小政党でも候補者を当選させることができるため、小選挙区比例代表並立制は、大政党と中小政党間の議席配分上のバランスをとる側面がある。

    妥当である。

  • 37

    衆議院議員総選挙の小選挙区比例代表並立制においては、重複立候補制が採用されている。 これは、立候補した者は自動的に小選挙区と比例区の両方に立候補したこととされる制度である。比例区では名簿に優先順位を付けることはできず、小選挙区で落選した候補者の中で惜敗率の高い候補者から順に当選することとなる。

    非議院議員総選挙において重視立候補をした者は、比例区において、名簿に優先順位を付けることができ、小選挙区での立候補者の全部(もしくはその一部)を同じ順序にすることができる。その他の記述は正しい。

  • 38

    平成27(2015)年、公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、公職選挙法、地方自治法に規定する選挙権年齢及び被選挙権年齢について、20歳以上から18歳以上への引下げの措置が講じられた。法律上の成年年齢等について整合性を図るため、同年、民法、少年法の成年年齢等についても18歳に引下げが行われた。

    平成27(2015)年に、公職選挙法では選挙権年齢を18歳以上に改めた。また、平成30年(2018年)の民法改正により、民法上の成年年齢が18歳に改められた。しかし、少年法上の成年年齢については、18歳への引下げは行われていない。

  • 39

    英国議会の下院議員選挙は、イングランドでは小選挙区制が採用されているが、スコットランドとウェールズでは小選挙区制と比例代表制を組み合わせた制度、北アイルランドでは中選挙区制が用いられているため、それぞれの地域によって小政党の議席獲得率には明確な差が見られる。

    英国議会の下院議員選挙は完全小選挙区制であるが、北アイルランドなどの地方議会選挙では比例代表制が導入される動きも見られる。

  • 40

    欧州議会議員の選出方法は、欧州連合(EU)加盟各国がそれぞれ自由に決定してよいとされているため、国民による直接選挙を行う国と議員による間接選挙を行う国に分かれる。フランスでは、上院議員の投票による間接選挙が採用されている。

    欧州議会議員選挙は、欧州議会議員を成年者による普通選挙・直接選挙で選出する選挙制度である。議席の配分は各国の人口規模を考慮しているが、人口の少ない国には多くの議員数を配分している。各国内での選挙には統一された選挙制度はないが、原則として比例代表制を採用している。

  • 41

    米国の大統領選挙は、各州の有権者が一般投票において選挙人を選挙し、選ばれた選挙人が大統領を選挙するという間接選挙の形態を採っており、選挙人はそれぞれの州で各大統領候補の得票数に比例して選出される。選ばれた選挙人は、一般投票の時点で投票することを誓約している大統領候補に投票しなければならないと合衆国憲法で定められている。

    「選挙人はそれぞれの州で各大統領候補の得票数に比例して選出される」とする記述が誤り。 アメリカでは多くの州で、1位となった大統領候補がその州のすべての大統領選挙人を獲得する「ウイナー・テイク・オール方式」が採用されている。なお、選挙人が制約を違えて別の候補に投票することは、州法によっては無効となる場合があるが、連邦法上は自由である。

  • 42

    我が国の衆議院議員選挙では、小選挙区比例代表並立制が採用されているが、いわゆるー票の較差の是正のため、小選挙区の都道府県別議席配分と比例代表のブロック別議席配分を、国勢調査の結果に基づいて、「アダムズ方式」によって計算し直すことが決定されている。

    妥当である。「アダムズ方式」とは、各都道府県の人口をある定数で割って、小数点以下を切り上げ1議席を加えることにより、各都道府県に予め1議席を配分する「一人別枠方式」よりも、人口比例を反映しやすくする議席配分方式である。

  • 43

    オーストラリアの連邦議会では、下院議員選挙における投票が法律上義務付けられているが、棄権した場合の罰則規定がなく、投票への努力義務規定にとどまっている。そのため、投票率は経済協力開発機構(OECD) 加盟国の中でも低く、投票の義務化が必ずしも投票率の向上につながっているとは言えない。

    オーストラリアでは、有権者に対して選挙において投票を義務付ける義務投票制を採用している。また、同国では正当な理由なく投票しなかった有権者に対して罰金が科せられることにもなっており、そのため投票率は約90%と高投票率となっている。

  • 44

    第二次世界大戦後における我が国の執政制度は、議院内閣制に分類される。この制度では、国民は選挙によって首相を直接選出することはできず、国会議員が衆議院議員の中から首相を選ぶ。首相の地位は国会の任に基づいているため、衆議院が内閣不宿任決議案を可決した場合、内閣は直ちに総辞職する必要がある。

    前段について、我が国は議院内閣制をとるが、首相は「国会議員の中から」選ばれ(日本国憲法67条1項)、衆議院議員に限定されない。また楽議院が内閣不任決議案を可決した場合には、内閣は「10日以内に衆議院が解散されない限り」総辞職しなければならないとしており(日本国憲法69条)、直ちに総辞職しなければならないわけではない。

  • 45

    我が国の国会は英国議会と同様に、本会議中心主義を採っているとみなされる。

    我が国の国会は各院に設置される委員会で実質的な審議を行って採決し、その後本会議で形式的な質疑応答の後採決を行って各院の議決とするという委員会中心主義(アメリカと同様)をとっている。

  • 46

    昭和22 (1947)年から平成5(1993)年までの衆議院議員総選挙では中選挙区制が採用されていた。この制度では各選挙区から10~20名の議員が選出された。我が国の中選挙区制は単記移譲式とも呼ばれ、有権者は複数の候補者に順位を付ける形式で投票した点で、アイルランドの単記非移譲式とは異なる。

    我が国で中選挙区制がとられていた時期は正しいが、各選挙区ではおおむね2〜6名の議員が選出されており、10~20名の議員が選出されたことはない。またこの中選挙区での投票は投票用紙に1名の候補者名を記入し、単純にその数が候補者の得票になるという単記非移譲式がとられていた。アイルランドの下院議員選挙では、単記移譲式による比例代表制が採用されている。

  • 47

    平成6(1994)年の制度改革によって、衆議院議員総選挙の選挙制度が小選挙区比例代表並立制に改められた。この制度では、一人の候補者が小選挙区選挙と比例代表選挙の両方に立候補できる重複立候補制が採られている。比例代表選挙は拘束名簿式で行われ、有権者は政党名を投票用紙に記入して投票を行う。

    妥当である。

  • 48

    昭和22(1947)年以降、各地方公共団体では、議会議員だけでなく、首長も住民の直接選挙によって選出されている。そのため、我が国における地方政治の仕組みは一元代表制に分類される。地方議会の議員選挙は大選挙区制に基づいて行われており、住民は複数の候補者を選択する形式で投票を行う。

    我が国の地方公共団体において首長と議会議員の選挙を別々に実施している仕組みは二元代表制と呼ばれる。また地方議会の議員選挙は単記式となっており、住民(有権者)は1名の候補者を投票用紙に記入する方式である。

  • 49

    比例代表制では、世論の分布を議会に反映させるため、各党の得票数に応じて議席が配分され、その党の獲得議席の分だけ政党が作成した名簿の上位から当選とする非拘東名簿式が多く用いられており、この方式では有権者は政党のみを選ぶこととなる。

    比例代表制において、党の作成した名簿の上位から当選とするのは拘束名簿式である。拘束名簿式では、有権者は政党のみを選ぶ。非拘束名簿式の場合、有権者は政党か候補者のいずれかを選ぶ。日本の場合、衆議院議員選挙の比例代表では拘束名簿式を、参議院議員選挙の比例代表では被東名簿式を採用している

  • 50

    ラザースフェルドを中心とするコロンビア大学のグループは、投票行動を決定する要因として、有権者の政党、政策争点、候補者に対する選好とその強度が重要であることを明らかにした。

    本肢はキャンベルを中心とするミシガン大学のグループに関する記述である。ラザースフェルドを中心とするコロンビア大学のグループは、投票行動は有権者の政治的先有傾向(社会的属性)により規定され、政治的先有傾向は、特に社会経済的地位、宗教および居住地域の三つの要因により形成されることを明らかにした。

  • 51

    ラザースフェルドを中心とするコロンビア大学のグループは、有権者は、候補者や政党のこれまでの業績について判断して投票行動を決定する業績投票モデルを構築した。

    業績投票モデルを提示したのはフィオリーナである。業績投票モデルによれば、有権者の合理性を確認するためには、政権政党の過去の業績に対する判断に基づいて有権者が投票しているかどうかが重要であるとされる。

  • 52

    キャンベルを中心とするミシガン大学のグループは、パネル調査を実施し、社会経済的地位、宗教、居住地域の3因子が政治的先有傾向の形成に高い相関を持ち、この要因が投票行動に大きな関係があることを明らかにした。

    本肢はラザースフェルドを中心とするコロンビア大学のグループに関する記述である。 キャンベルらのミシガン大学のグループによれば、投票行動は、争点態度、候補者イメージおよび政党帰属意識(政党支持態度)で構成される有権者の心理的要因に影響されると指摘した。

  • 53

    キャンベルを中心とするミシガン大学のグループは、有権者と政党との心理的結びつきを政党支持態度とし、この要因によって投票行動を決める場合が最も多いことを示した。

    妥当である。

  • 54

    キャンベルを中心とするミシガン大学のグループは、多くの有権者が投票時における政策争点を認知し、合理的判断によって投票行動していると分析し、全ての有権者が合理的な有権者であるとした。

    キャンベルらのミシガン大学のグループは、有権者が合理的であるか否かを判断するための基準として、有権者が争点投票をしているか香かであるとした。そして1956年アメリカ大統領選挙の世論調査データを分析し、多くの有権者が争点投票をしておらず、合理的判断に基づく投票をしていないことを示した。

  • 55

    ダウンズは、横軸の左端に政府による経済の完全統制、右端に完全自由経済とする左右の政策対立軸を想定し、有権者の選好分布を両極間に位置づけた「空間競争モデル」として政党システムを表現した。

    妥当である。ダウンズは、有権者のイデオロギー的な選好に基づく二大政党制の特質を分析し、有権者の選好の分布が両極に分かれたままの場合を、双峰型とよんだ。

  • 56

    ライカーとオードシュックは、有権者が投票することによって得る効用をR、選挙結果を左右する確率をP、候補者間の期待効用差をB、投票コストをC、市民としての義務感をDとし、「R=PxB-C+D」という方程式を示した。

    妥当である。ある選挙において有権者が、見返りが大きい場合(R>0)ほど投票する可能性が高まり、見返りがない場合(R<0)は棄権することになる。

  • 57

    ローウェルは、議院内閣制国家17か国の議会を対象に政党政治の分析を行い、「連合政権は必然的に不安定であるとはいえない」という事実を実証的に証明した。

    本肢は、ドッドに関する記述である。ドッドは、長期にわたり継続した内閣の多くが多制議会の下で生まれたという事実を明らかにし、小選挙区制は安定した二大政党制をもたらすとする、デュヴェルジェの「二党制の神話」を批判した。

  • 58

    P.ラザースフェルドらコロンビア大学の研究者たちは1940年代、エリー調査の分析を通じ、有権者の社会的属性によって政治意識・投票行動を説明する「社会心理学モデル」の実証を試みた。その結果、社会経済的地位が高く、プロテスタント系の有権者において、民主党に投票する割合が高かったことが明らかにされた。

    「社会心理学モデル」を試みたのはミシガン学派であり、コロンビア学派は「社会学をデル」である。また、「社会経済的地位が高く、プロテスタント系の有権者」においては、共和党に投票する割合が高いとした。

  • 59

    投票行動の理論モデルの一つである「ミシガン・モデル」では、有権者の投票行動は、政党帰属意識、争点態度、イデオロギーという三つの心理学的変数によって説明される。ミシガン学派の主張によると、このうち、政党帰属意識は選挙ごとに大きく変化するものとされ、投票行動を強く規定する短期的要因であるとみなされた。

    「イデオロギー」ではなく、候補者イメージである。ミシガン学派の主張によると、政党帰属意識が、長期的要因によって有権者の投票行動を強く規定するため、「選挙ごとに大きく変化するもの」ではない。

  • 60

    M. フィオリーナにより定式化された「業績投票モデル」では、有権者が現政権の過去の業績を高く評価すれば、政権政党やその候補者に投票するとされる。これまで、特に経済政策面の業績に注目した研究が蓄積され、自分自身や社会全体の経済状況に基づいて投票する有権者の存在が明らかにされてきた。

    妥当である。ミシガン学派によれば、有権者は、争点態度よりも、政党帰属意識や候補者イメージに基づいて投票していることになり、有権者の合理性が疑われる。M.フィオリーナの「業績投票モデル」によれば、政権政党の過去の業績に対する判断に基づく投票行動になるため、有権者のある程度の合理性を確認することができる。

  • 61

    容姿や人柄など、候補者個人のイメージを重視した投票を「個人投票(personal vote)」という。米国では、議会選挙の分析を通じ、こうした有権者の行動が確認された。他方、日本の55年体制期においては、有権者は各政党の党首に注目することが多く、候補者個人を重視した投票は例外的であるとされた。

    個人投票とは、候補者の個人的特性や活動の評価に基づいて投票することをいう。日本では55年体制下、すなわち中選挙区制の下で、多くの場合政党の地方組織が弱く、一般に選挙運動が候補者個人の後援会組織に依存していることから、個人投票の傾向が強かったとみられている。

  • 62

    Aらを中心とするコロンビア大学のグループは、1940年の大統領選挙の時にオハイオ州エリー郡で有権者の調査を行い、有権者のBにより形成される政治的先有傾向が投票行動に大きな関係があることを明らかにした。 一方、A.キャンベルらを中心とするミシガン大学のグループは、Bから投票行動を説明しようとしたコロンビア・グループを批判し、Cを重視していった。また、ミシガン・グループは、政党、争点、候補者に対する選好とその強度が重要であるとし、特に、有権者の政党との結び付きをDとして捉え、この要因を中心に投票行動を分析した。」

    A 「ラザースフェルド」が入る。いわゆるエリー調査では、同一の回答者に繰り返し調査を実施するパネル調査を初めて導入した。 B「社会的属性」が入る。政治的先有傾向は、特に社会経済的地位、宗教および居住地域の三つの要因により形成されるとした。 C「心理的要因」が入る。ミシガン学派は、社会心理学的方法を導入し、投票行動は有権者の心理的要因に影響されるとした。 D「政党帰属意識」が入る。ミシガン学派によると、心理的要因は、政党帰属意識、候補者イメージ、争点態度の順に強い影響があるとした。

  • 63

    C・オッフェは、利益団体を市場団体と政策受益団体に分類した。市場団体には、市場制度から大きな利益を得る大企業を中心とした経済団体や大企業正社員の労働組合などが、また、政策受益団体には、規制や再分配といった政策から利益を得る農業団体、中小自営業の団体、福祉団体などが含まれるとした。

    オッフェのいう市場団体は、市場における財・労働を含めたサービスの供給と需要に関する利益を代表する団体であり、農業団体や中小自営業の団体も市場団体に含まれる。なお、政策受益団体とは、政府の決定や政策によって直接的に影響を受け、それゆえ特定の政策に利書関心をもつメンバーによって構成される団体であり、福祉団体、教育団体などがこれにあたる。

  • 64

    M. オルソンは、団体に所属するメンバーの数と、その団体の利益団体としての活動の活発さとの関連について考察し、メンバー数の多い団体ほど、そのメンバーが当該団体の影響力を大きく認識するため、メンバーの活動への参加がより盛んになり、結果としてその団体の活動が活発化するとした。

    オルソンは、メンバー数の小さい利益団体ほど、そのメンバーが当該団体の影響力を大きく認識するため、メンバーの活動への参加がより盛んになり、結果としてその団体の活動が活発化するとした。反対に、メンバー数の多い団体ほど、フリー・ライダー(ただ乗り)を避けがたい、と指摘した。

  • 65

    R.ソールズベリーは、利益団体は政治的企業家とメンバーの間の便益の交換によって成立し、その交換が継続する限り存続するとした。ただし、こうした役割を果たす便益は物質的・経済的な便益に限られ、メンバーは団体参加に伴う費用と便益を比較して、便益の方が大きければその団体にとどまるとした。

    ソールズベリーは、利益団体が政治的企業家とメンバー間の便益の交換によって成立するとしたが、ここでの便益は物質的・経済的な便益に限られず、考え方への共鳴や参加による一体感などの組織連帯の便益、言論の自由や政治参加といった価値観を表現する便益も含まれる。

  • 66

    D. トルーマンは、利益団体の形成を導く基本的な要因はマクロな社会的変化であるとし、工業化や都市化に伴う社会的分化が利益や価値の多様化を通じて様々な利益団体を生み出し、また、既存の社会勢力間の均衡が崩れると、それにより不利益を被る社会集団の側からの圧力活動が盛んになると論じた。

    妥当である。

  • 67

    アメリカの政治学者ポルズビーは、開放的な政治システムのもとにある議会の機能の中心が、議員・政党等に媒介された社会的要求を政策へ変換することにあるとし、現代議会を大きく次の2類型に整理した。 A型議会は、人々の要求を議員が法案にし、具体的な立法作業を議員が担っている ので、「立法作業の議会」ともいう。そこでは、Bの議会が代表例とされている。 C型議会は、与党の意向に沿って官僚らが法案を作成し、議会は政府法案をめぐり与野党で論戦する「論戦の議会」ともいう。そこでは、Dの議会が代表例とされている。

    A:「変換」が該当する。 B:「アメリカ」が該当する。 C:「アリーナ」が該当する。 D:「イギリス」が該当する。 したがって、正答は2.である。 ポルズビーはいくつかの先進国の議会を変換型とアリーナ型に分類した。変換型議会は、国民の要求を議会が法律という形に変換するという、議員による社会的要求の実質的法案化を特徴とする議会である。対してアリーナ型議会は、与野党が次の選挙を意識しつつ、争点を明確にして政策の優劣を争う討論によって有権者に政策アピールをする場としての議会である。変換型議会をもつ国の例としてはアメリカ合衆国が、アリーナ型議会をもつ国の例としてはイギリスやベルギーがあげられる。

  • 68

    国会法は、「会期中に議決に至らなかつた条件は、後会に継続しない」と定め、会期不継続の原則を規定している。このため、会期末までに成立しなかった案件は審議未了として廃案になる。会期不継続の原則を徹底するため、次の会期において継続して審議することはいかなる場合も認められておらず、野党が審議において与党に抵抗できる機会が減少することから、会期不継続の原則によって議会審議の粘着性は低下すると考えられる。

    議会審議の粘着性は、予算案や内閣提出法案の成立を害したり廃案に追い込む議会の能力を表すものであり、会期不継続の原則により高まる。また、会期不継続の原則には例外があり、委員会は、各議院の議決により特に付託された案件については閉会中も審査することができ(国会法第47条2項)、閉会中審査した議案及び懲罰事の件は次の会期に継続することとされており(国会法68条)、次の会期において継続して審議することはいかなる場合も認められないわけではない。継続審議となった法案は次の会期に委員会審議から始めることが可能であるが、それには議院運営委員会において原則として全会一致での決定が必要であり、野党が与党に抵抗できる機会がある。

  • 69

    N.ポルスビーによれば、変換型議会の役割は、政党や議員による意見の調整を通じて国民の意思を法律に変換することであり、アリーナ型議会の役割は、与野党が次の選挙を意識しつつ、争点を明確にして自らの政策の優劣を争う討論の場を提供する事である。大統領が法案提出権を有している米国では、連邦議会は、大統領の施策に関する争点を明確にする役割を担うことからアリーナ型議会と分類されている。

     アメリカにおいて大統領は法案提出権を有していない。法案提出権は連邦議会の議員のみが有しており、議員が政策立案の主人公となり、立法過程を通じて社会的要求を実質的な法案に変換していくため、アメリカの議会は変換型議会に分類される。

  • 70

    包括政党とは、20世紀以降の大栄社会において出現した巨大な大衆を支持者として獲得しようとする政党の一類型である。特定の社会階層や地域、職業グループ、宗教などに争点を絞らず、どのタイプの有権者層からも支持を取り付けようとする点が特徴である。第二次世界大戦後の我が国を含めた西側諸国では、イデオロギー対立が深刻化したことから包括政党はみられなくなった。

    O.キルヒハイマーによれば、包括政党は「イデオロギーの終焉」が叫ばれた1960年代に、多くみられるようになった。「イデオロギーの終焉」は、D.ベルによって指摘され、脱工業化社会において階級への帰属意識をもたない新中間層が増大したため、資本主義や社会主義といったイデオロギー対立が無意味になった状況を指す。

  • 71

    英国議会では、三回の読会を通して法案審議が行われる。最も実質的な審議が行われる第二読会では、バックベンチャーとよばれる政府と野党の有力議員が議場で向かい合い、法案の原則等について討論する。この審議は全て委員会の場で行われるため、英国議会の在り方は委員会中心主義とよばれる。

    「バックベンチャー」とする記述が誤り。イギリス議会はアリーナ型であるため、議会、とりわけ本会議における与野党の討論を重視する、本会議中心主義である。 中でも第二読会では、与野党の指導者がフロントベンチャーとして向き合って、法案の討論を行い、採決が行われるのである。

  • 72

    戦後日本における法案の作成過程では、与野党による事前審査が大きな役割を果たしてきた。この仕組みの下では、内閣提出法案は全て、与野党の国会対策委員会の間の折衝によって内容が決められたのち、国会に提出されていた。しかしこの仕組みは、2000年代の小泉純一郎内閣の時期に全廃された。

    戦後日本による法案の作成過程では、与党である自由民主党による事前審査が大きな役割を果たした。1960年代以降、自民党による長期単独政権が確立すると、自民党内における事前審査が慣例となった。各省庁の官僚が作成した内閣提出法案は、特定の政策領域に強い族 議員の影響を受けることになり、政策決定における政治主導を確立することになった。なお、現在まで自民党による事前審査制は存続している。

  • 73

    17世紀の英国では、名誉革命により身分制議会が解体され、代わって国民議会という一院制の議会が成立することとなったが、初期の国民議会においては、議会が行使できる権能は国王の課税に対する承諾権に限定されていた。

    身分制議会が解体され、国民議会という一院制議会が成立したのは、フランス革命後のフランスである。イギリス議会は、身分制議会の名残である貴族院を残しつつ、庶民院の権限を強化する二院制談会として、近代議会への転換が図られた。議会の権能が国王の課税に対する承諾権に限定されていたのは身分制議会であって、近代議会は国家意思を主体的に形成する実質的な立法機関となった。

  • 74

    E.バークは、ブリストル演説において有権者と議員の関係について述べ、選挙区ごとに選ばれた議員は、個々の選挙区の利益代弁者としてその選挙民の意志にのみ拘束されるものであり、選挙民は、自己の意志との乖離を理由に議員を罷免することもできるとした。

    バークはブリストル演説において、選挙区ごとに選ばれた議員は、個々の選挙区の利益代弁者ではなく、全国民の代表者であるという「国民代表の原理」を示した。この原理にしたがえば、国民は議員を選出したならば、自己の意志との乖離を理由に議員を罷免することはできない。

  • 75

    公共政策が形成、決定され、実行、フィードバックされていく一連のプロセスを政策過程というが、一般的な政策過程は、課題設定、政策立案、政策実施、政策評価の4つのステージからなる循環過程と考えられている。

    後半の記述が誤り。政策過程は一般的に、課題設定、政策立案、政策決定、政策実施、政策評価の5つのステージからなる循環過程と考えられている。

  • 76

    トルーマンは、1908年に著した「統治の過程」の中で、従来の制度論的政治学を「死せる政治学」と批判し、政治現象を分析するためには、集団間の対立、抗争から利害調整に至るまでの現実の政治を研究する必要があると主張した。

    本肢は、ベントリーに関する記述である。本肢の通り、ベントリーは政治過程論の創始者で、グループ・アプローチの先駆者であり、「政治における人間性』を著したウォーラスとともに、現代政治学の父祖とよばれているが、発表当時のアメリカ政治学会からは無視された。1950年代になって、トルーマンによって再評価されるようになった。

  • 77

    ネオ・コーポラティズムとは、巨大な圧力団体が、国家の政策決定過程における重要なメンバーとなり、政府の政策に協力しながら、自己利益を部分的に反映させ、かつ、集団相互の妥協、調整を図る形態をいう。

    妥当である。コーポラティズムには、巨大な圧力団体の政府からの独立性が低い権威主義的コーポラティズムと、独立性が高い自由主義的コーポラティズムの区別がある。前者は主に戦前期に見られたコーポラティズムであり、それとの違いを強調するために、ネオ・コーポラティズムとよんでいる。

  • 78

    インクリメンタリズムとは、シュミッターが提唱した政策決定モデルであり、「漸増主義」と訳され、現実の政策決定は、現在の政策の延長線上に位置づけられ、その変化は、過去の政策の修正という小さなものにとどまるとした。

    インクリメンタリズムを提唱したのは、リンドブロムである。シュミッターは、多元主義とネオ・コーポラティズムを比較している。多主義においては、政治過程を構成する集団の数は特定されておらず、集団構成員も複数の団体に重複して所属し、自発的な活動をしている。ネオ・コーポラティズムでは、集団の数は限定され、かつ集団構成員は一つの団体にのみ所属し、参加を義務付けられている。

  • 79

    ヨーロッパでは、圧力団体の代理人が、その団体にとって有利な法案の成立や不利な法案の修正、否決のために、議員や官僚に直接働きかける活動が活発であるが、これはアメリカではみられない政策決定過程である。

    ヨーロッパとアメリカが逆である。「圧力団体の代理人」とは、アメリカにおけるロビイストのことである。アメリカでは、圧力団体の依頼を受けたロビイストが、議会や行政に圧力活動を行う。ロビイストには、法律家や新聞記者に加え、議員や官僚など、立法活動に携わった経験を持つ専門家も多い。

  • 80

    サイモンの「満足モデル」によると、政策の選択肢の探求は最善策の選択肢を発見するまで続けられることになる。また、結果を評価する際の基準である「要求水準」は、仮に時間的な制約が差し迫ったとしても、変動することはない。

    「政策の選択肢の探求は最善策の選択肢を発見されるまで続けられる」とする記述は、H.サイモンの「最大化モデル」に関する説明である。「満足モデル」とは、人間の認識能力の限界を前提とし、ある程度目的を満足できる水準に達すれば、それで選択肢の探求をやめて満足するものである。

  • 81

    G.アリソンの「組織内政治モデル」は、組織の決定を役職者たちの間で展開される「駆け引き」の結果とみる。一方で、「組織過程モデル」によると、組織は複数の下位組織の緩やかな連合体であるとする。そして、その下位組織は、それぞれ割り当てられた任務を独自に、あらかじめ決められた手順に従い、ルールに基づいて遂行すると考える。

    妥当である。「組織内政治モデル」は、「官僚政治モデル」や「政府内政治モデル」ともよばれる。なお、本肢の説明に加え、政策決定における決定主体を、単一の行為者とみなし、合理的な決定を行うことを、「合理的行為者モデル」とよぶ。

  • 82

    「合理モデル」の特徴は、選択肢の一部を洗い出し、それぞれの選択肢がもたらすであろう おおよその結果を推測することにある。このモデルでは、評価基準はあらかじめ決められているわけではなく、臨機応変に適切な評価基準を選ぶことが結果を推測する上で最も重要であるとする。

    「合理モデル」の特徴は、あらかじめ定められた評価基準にしたがい、その基準を実現するための政策案として考えられるものをすべて拾い上げ、それらの政策案を選択した際に起こり得る結果をすべて調べ上げ、目的の達成値が最大になるものを選択する。

  • 83

    マスメディアの政策決定への影響については、ナチスのプロパガンダの成功例により、その影響力を絶対視する「限定効果説」が有力に唱えられていた。しかし、その後のエリー調査以降、人種や宗教といった社会的属性に比べると弱いが、周囲の人々とのパーソナルコミュニケーションに比べると強いとする「強力効果説」が唱えられた。

    「限定効果説」と「強力効果説」の説明が逆である。「エリー調査」とは、コロンビア大学が行ったアメリカ大統領選におけるパネル調査のことであり、有権者の投票行動は社会的属性に規定され、またマスメディアよりもオピニオン・リーダーとのパーソナルコミュニケーションの影響力が強いとする、「コミュニケーション二段の流れ」が提唱された。

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    問題数 4012/8/2024

    民法level1その2

    問題数 4412/8/2024

    民法level1その3

    問題数 6212/8/2024

    民法level1その4

    問題数 4412/9/2024

    民法level1その5

    問題数 4312/10/2024

    民法level1その6

    問題数 2812/10/2024

    行政法level1その1

    問題数 5012/11/2024

    行政法level1その2

    問題数 4712/11/2024

    行政法level1その3

    問題数 4912/12/2024

    その1

    問題数 8512/13/2024

    その2

    問題数 7412/13/2024

    行政法level1その4

    問題数 3912/13/2024

    その3

    問題数 7212/14/2024

    行政法level1その5

    問題数 1412/14/2024

    その4

    問題数 6912/15/2024

    その5

    問題数 6612/16/2024

    その6

    問題数 5912/17/2024

    その7

    問題数 6612/18/2024

    その8

    問題数 4812/19/2024

    その1

    問題数 8112/27/2024

    その2

    問題数 8612/27/2024

    マクロ経済学

    問題数 741/1/2025

    マクロ経済学2

    問題数 721/1/2025

    ミクロ経済学

    問題数 571/2/2025

    その1

    問題数 751/4/2025

    その3

    問題数 641/4/2025

    その1

    問題数 891/10/2025

    憲法

    問題数 261/14/2025

    その2

    問題数 961/16/2025

    行政法

    問題数 181/19/2025

    そのI

    問題数 261/21/2025

    その3

    問題数 931/23/2025

    文化史

    問題数 701/28/2025

    政治学 一問一答

    問題数 981/30/2025

    近代ヨーロッパの誕生

    問題数 112/4/2025

    16〜18世紀のヨーロッパ

    問題数 202/4/2025

    市民社会の成長

    問題数 222/4/2025

    ウィーン体制と19世紀の欧米諸国

    問題数 322/4/2025

    米ソ冷戦

    問題数 92/4/2025

    第二次世界大戦後のアジア

    問題数 112/5/2025

    第一次世界大戦からの中東

    問題数 92/5/2025

    農作物

    問題数 92/5/2025

    エネルギー資源

    問題数 152/5/2025

    地形

    問題数 162/5/2025

    東アジア

    問題数 282/5/2025

    南アジアと西アジア

    問題数 132/5/2025

    アフリカ

    問題数 62/5/2025

    アングロアメリカ

    問題数 122/5/2025

    ラテンアメリカ

    問題数 102/5/2025

    オセアニア

    問題数 72/5/2025

    財政理論の基礎

    問題数 232/8/2025

    日本の財政制度・事情

    問題数 342/9/2025

    政党

    問題数 502/9/2025

    予算過程

    問題数 252/11/2025

    立法過程、政策過程

    問題数 242/11/2025

    官僚制

    問題数 82/11/2025

    権力分立

    問題数 232/11/2025

    財政投融資

    問題数 82/12/2025

    租税

    問題数 532/12/2025

    公債

    問題数 392/13/2025

    古代政治思想・近代政治思想

    問題数 202/13/2025

    戦後の日本財政

    問題数 112/14/2025

    地方財政

    問題数 192/14/2025

    財政事情の国際比較

    問題数 102/14/2025

    社会契約論

    問題数 152/14/2025

    保守主義・功利主義・自由民主主義

    問題数 142/14/2025

    現代政治学・政治システム論・現代政治思想

    問題数 152/14/2025

    アメリカ行政学形成から正統派政治学まで

    問題数 312/15/2025

    正統派政治学の批判から能率まで

    問題数 312/15/2025

    その一

    問題数 352/16/2025

    科学的管理法と古典的組織論

    問題数 72/17/2025

    人間関係論・現代組織論・

    問題数 302/17/2025

    生体の構造

    問題数 322/18/2025

    日本の行政組織

    問題数 312/18/2025

    行政改革

    問題数 192/18/2025

    生体内の代謝

    問題数 222/19/2025

    日本の行政改革の流れ

    問題数 162/19/2025

    官僚制論

    問題数 192/19/2025

    公務員制度

    問題数 172/19/2025

    刺激の受容と反応

    問題数 202/22/2025

    国際会議

    問題数 222/22/2025

    法律そのI

    問題数 382/22/2025

    法律その2

    問題数 312/23/2025

    経済財政・通商・環境、男女共同参画、白書

    問題数 182/24/2025

    観光・防衛・厚生労働・防災、白書

    問題数 172/24/2025

    高齢社会・消費者・警察・情報通信、白書

    問題数 162/24/2025

    1

    問題数 712/24/2025

    アメリカ大統領選・中国・パレスチナ・中東情勢

    問題数 212/25/2025

    2

    問題数 732/25/2025

    ウクライナ戦争・BRICS・NATO・台湾情勢

    問題数 152/26/2025

    韓国情勢・IPEFの発行・ヨーロッパでの選挙

    問題数 172/26/2025

    政治学

    問題数 172/26/2025

    体内環境の恒常性と調節

    問題数 172/26/2025

    政策決定

    問題数 262/26/2025