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問題一覧
1
地代の支払は、地上権の成立要件であり、地上権者は土地の所有者に定期の地代を支払わなければならないが、不可抗力により収益について損失を受けたときは、地代の免除又は減額を請求することができる。
地上権は、永小作権や賃借権と異なり、地代を支払うことは地上権成立の要件ではない(民法266条1項参照)。したがって、本肢の「地代の支払は、地上権の成立要件であり、」の部分が誤りである。
2
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができ、この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
妥当である。本肢のように、他人の土地の地下又は空間について上下の範囲を定め工作物を所有するために設定された地上権のことを区分地上権という(民法269条の2第1項)。
3
AがBに土地を売却して引き渡したが、その登記がされないうちに、AがCに当該土地を二重に売却し、Cが登記をした場合において、Cが当該土地を占有するBに対して土地明渡請求をしたときは、Bは、Aに対して有する当該土地の売買契約の不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として、Cに対し、留置権を行使することができる。
判例は、「不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第ーの買主は、第二の買主の当該不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもって、留置権を主張することは許されない」としている。本肢のBはCに対して損害賠償請求をできるわけではなく、Bが留置権を行使しても間接的にAの損害賠償債務の履行を強制する関係には立たないからである。したがって、本肢の「留置権を行使することができる」の部分が誤りである。
4
AがBに土地を売却し、Bが、Aに代金を支払わないうちに、Cに当該土地を転売した場合において、Cが当該土地を占有するAに対して土地明渡請求をしたときは、Aは、Bに対する代金債権を被担保権として、Cに対し、留置権を行使することができる。
妥当である。判例は、「代金債権は土地建物の明渡請求権と同一の売買契約によって生じた債権であるから、295条の規定により、売主は転得者に対し、先の買主から代金の弁済を受けるまで、土地建物につき留置権を行使してその明渡を拒絶することができ」るとしている。
5
建物の賃借人が、賃貸借契約の終了時に、賃借中に支出した必要費若しくは有益費の償還請求権を被担保債権として、建物について留置権を行使したときは、特段の事情のない限り、その償還を受けるまで従前のとおり建物に居住することができる。
妥当である。判例は、「建物の従前の賃借人が、賃借中支出した費用の償還を請求するためその建物につき留置権を行使した場合には、賃借中と同一の態様をもって建物の占有・使用を継続することは、特段の事情のないかぎり、留置権に基づく適法な行為と解すべきである」としている。つまり、本肢は「物の保存に必要な使用(民法298条2項)」にあたる。
6
AがBから宅地造成工事を請け負い、工事が完了した土地を順次Bに引き渡した場合において、Aが、Bの工事代金の未払を理由に残りの土地について留置権を行使するときは、特段の事情のない限り、被担保債権の範囲は、工事代金のうち、工事を請け負った土地全体に占める未だ引き渡していない土地の面積の割合に相当する部分に限られる。
判例は、「留置権者は、留置物の一部を債務者に引き渡した場合においても、特段の事情のない限り、債権の全部の弁済を受けるまで、留置物の残部につき留置権を行使することができる」としている。したがって、本肢の「未だ引き渡していない土地の面積の割合に相当する部分に限られる」の部分が誤りである
7
建物の賃借人Aが、債務不履行により賃貸人Bから賃貸借契約を解除された後、権原のないことを知りながら不法に建物を占有していた場合であっても、建物を不法に占有する間に有益費を支出していたときは、Aは、有益費の償還請求権を被担保債権として、Bに対し、留置権を行使することができる。
判例は、「建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原のないことを知りながら建物を不法に占有する間に有益費を支出しても、その者は、民法295条2項の類推適用により、当該費用の償還請求権に基づいて当該建物に留置権を行使することはできない」としている。したがって、本肢の「留置権を行使することができる」の部分が誤りである。
8
留置権者は、債務者の承諾を得て留置物を賃貸した場合、賃貸によって得た利得を被担保債権の弁済に充当することができる。
正しい。典型担保物権の中で、留置権のみ優先弁済的効力がない。留置物を強制的に売却して、その代金から弁済を受けることはできないのである。しかし、留置物から生ずる果実を収取して弁済に充当することはできる(民法297条1項)。債務者の承諾を得て賃貸した利得は、法定果実にあたり被担保債権の弁済に充することができる。
9
留置権者は、債務者の承諾を得なくても、留置物を使用することができる
誤り。留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用することはできない。ただし、その物の保存に必要な行為をする場合はこの限りではない(民法298条2項)。
10
留置権者は、競売により目的物を換価することができる。
正しい。留置権者には、競売の申立権が認められる(民事執行法195条)。もっとも、競売によって得られた留置物の換価金は留置物の所有者に返還しなければならないため、留置権者が当該換価金から優先弁済を受けられるわけではない。
11
Aは、Bから借りた時計が壊れたため、Cに時計の修理を依頼し、Cは時計を修理した。 この場合には、時計の所有者と修理代金債務の債務者が異なるため、Cは、Bに対し、修理代金を支払うまでは時計を返還しない旨の留置権の主張をすることはできない。
目的物が債務者の所有物ではない場合でも、民法上の留置権は成立すると解されている。 したがって、本肢の「Cは、Bに対し、修理代金を支払うまでは時計を返還しない旨の留置権の主張をすることはできない」の部分が誤りである。
12
Aは、Bに家屋を賃貸したが、Bの賃料不払いにより賃貸借契約を解除した。Bは、賃貸借契約が解除されたことを知っていながら、そのまま家屋に住み続け、屋根の修繕を行った。 この場合には、Bは、Aに対し、修繕費用償還請求権に基づく留置権を主張することができる。
賃貸借契約終了後、賃貸人への返還を拒んでいる賃借人がその間に目的物に必要費を支出しても、民法295条2項の類推適用によりこれを被担保債権として留置権を行使することはできない。したがって、本の「Bは、Aに対し、修繕費用償還請求権に基づく留置権を主張することができる」の部分が誤りである。
13
Aは、Bから家屋を賃借中に、外壁の修繕を行った。この場合には、AB間の賃貸借契約終了後、Aは、Bに対し、修繕費用償還請求権に基づく留置権を主張して家屋の引渡しを拒むことはできるが、債務者の承諾を得ることなく留置物を使用することはできないから、Bの承諾なくして引き続き家屋に住み続けることはできない。
借家人は、借家契約終了時の費用償還請求権に基づき建物全体を留置できる。そこで、留置権を行使した借家人が建物に居住できるかが問題となる。この点、留置権者には留置物を使用収益する権利がないが、借家人が居住を継続することは、「その物の保存に必要な使用」 (民法298条2項但書)として許容される。したがって、本肢の「Bの承諾なくして引き続き家屋に住み続けることはできない」の部分が誤りである。
14
民法第388条は土地又は建物のいずれか一方のみに抵当権が設定された場合を規定するものであり、同一の所有者に属する土地及びその上に存する建物が同時に抵当権の目的となった場合には、同条は適用されず、法定地上権は成立しない。
法定地上権の成立に関する基本的な問題である。 法定地上権の成立要件は、以下の4つであり、それぞれの論点が出題されている。 ① 抵権設定当時、土地上に建物が存在すること ② 抵権設定当時、土地と建物が同一の所有者に帰属すること ③ 土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されること ④ 競売が実行され、土地と建物が異なる所有者に帰属すること ③について問われている。同一の所有者に属する土地及びその上に存する建物が同時に抵権の目的となった場合においても、民法388条の適用がある。したがって、「民法388条が~いずれか一方のみ~」の規定とした部分、及び「法定地上権は成立しない。」とした結論がともに誤っている。
15
Aが所有する土地に抵当権が設定・登記された当時、土地上に建物が存在せず、更地であった場合には、その後、当該土地上にA所有の建物が築造され、抵当権の実行により当該土地がBに競済されたとしても、原則として、法定地上権は成立しない。
法定地上権の成立に関する基本的な問題である。 法定地上権の成立要件は、以下の4つであり、それぞれの論点が出題されている。 ① 抵権設定当時、土地上に建物が存在すること ② 抵権設定当時、土地と建物が同一の所有者に帰属すること ③ 土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されること ④ 競売が実行され、土地と建物が異なる所有者に帰属すること 妥当である。①について問われている。法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時に建物が存在することが必要である。
16
AとBが共有する土地の上にAの所有する建物が存在する場合において、Aが当該土地の自己の共有持分に抵権を設定・登記し、これが実行されて該土地がCに競落されたときは、Bの意思にかかわらず、法定地上権が成立する。
法定地上権の成立に関する基本的な問題である。 法定地上権の成立要件は、以下の4つであり、それぞれの論点が出題されている。 ① 抵権設定当時、土地上に建物が存在すること ② 抵権設定当時、土地と建物が同一の所有者に帰属すること ③ 土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されること ④ 競売が実行され、土地と建物が異なる所有者に帰属すること ②に関する発展的な問題である。土地が共有である場合、土地共有者の一人についてだけ法定地上権の要件が満たされても、他の共有者の意思にかかわらず地上権が設定されたとみなすことはできない。すなわち、法定地上権は成立しない。したがって、「Bの意思にかかわらず、法定地上権が成立する。」とした記載が誤りである。
17
土地の所有者Aが当該土地上の建物をBから譲り受けたが、当該建物の所有権移転登記を経由しないまま当該土地に抵当権が設定・登記された場合において、抵当権の実行により当該土地がCに競落されたときは、法定地上権は成立しない。
法定地上権の成立に関する基本的な問題である。 法定地上権の成立要件は、以下の4つであり、それぞれの論点が出題されている。 ① 抵権設定当時、土地上に建物が存在すること ② 抵権設定当時、土地と建物が同一の所有者に帰属すること ③ 土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されること ④ 競売が実行され、土地と建物が異なる所有者に帰属すること ②について問われている。②の要件は、土地と建物の所有者が同一であればよく、登記名義が異なっていても、あるいは保存登記がなかったとしても法定地上権は成立する。したがって、「移転登記を経由しないまま~抵当権が設定・登記された場合~法定地上権が成立しない。」との記載が誤りである。
18
Aが所有する土地に一番抵権が設定・登記された当時、該土地上の建物をBが所有していた場合には、その後、Aが当該建物をBから譲り受け、当該土地に後順位抵権が設定・登記されたとしても、一番抵当権が実行され、当該土地がCに競落されたときは、法定地上権は成立しない。
法定地上権とは、土地と建物が同一の所有者から別々の所有者になった場合に、建物の所有者に発生する地上権です。 法定地上権の成立に関する基本的な問題である。 法定地上権の成立要件は、以下の4つであり、それぞれの論点が出題されている。 ① 抵権設定当時、土地上に建物が存在すること ② 抵権設定当時、土地と建物が同一の所有者に帰属すること ③ 土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されること ④ 競売が実行され、土地と建物が異なる所有者に帰属すること 妥当である。②に関する発展的な問題である。もっとも本肢については、一番抵当権設定時に土地と建物の所有者が異なるのだから、②の要件を満たさず、原則通り法定地上権は成立しない、と考えればよい。なお、建物に一番抵当権が設定された場合で、建物所有者が土地の所有権を手に入れた後、二番抵権が設定され実行されたときに法定地上権の成立を認めた判例がある。抵当権者が把握している担保価値を重視した判例であるが、紛らわしいので注意が必要である。
19
抵当権者は、目的物が第三者の行為により滅失した場合、物上代位権を行使することにより、その第三者に対して、目的物の所有者が有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる。
正しい。抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、抵当権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法372条、304条)。
20
Aは、自身が所有する建物について抵当権を設定したところ、抵権設定当時、その建物内には畳や建具が備え付けられていた。抵当権者Bは、特約がない限り、畳や建具についても抵当権の効力を主張することができる。
正しい。抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ(民法370条)。この「付加一体物」について判例は、特段の事情のないかぎり、抵当権設定当時に存在した従物(畳や建具)も含むとしている。
21
AのBに対する金銭債権を担保するために、BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された。Aのために抵当権設定登記がされた後にCに対する賃料債権がBからDに譲渡されてその第三者対抗要件が具備された場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。
正しい。抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
22
法定地上権は、公益上の理由に基づき、法律上当然に発生するものであるから、第三者に対し登記なくして法定地上権を対抗することができる。
法定地上権を第三者に対抗する場合にも民法177条が適用される。よって、登記なくして第三者に対抗することはできない。したがって、「第三者に対し~対抗することができる」とする部分が誤りである。
23
所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、当該建物が取り壊され、当該土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたときなど特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。
妥当である(最判平9年2月14日)。
24
Aの所有する土地及び地上建物のうち、建物についてBのために抵当権が設定された。 その後、抵当権が実行されてCが当該建物の買受人となった。この場合、Aは、Cに対して土地利用権限がないことを理由に建物収去・土地明渡しを請求することができる。
本記述は、①土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属し②その土地又は建物につき抵当権が設定され、③その実行により所有者を異にするに至った場合であるので、法定地上権が成立する(民法388条)。これにより、建物について地上権(土地利用権限)が設定されたものとみなされる。よって、Aは、Cに対して土地利用権限がないことを理由に建物収去・土地明渡しを請求することはできない。したがって、本記述の「この場合~できる。」の部分が誤りである。
25
抵当権設定後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者がいる場合、その占有権原の設定に抵当権実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は当該占有者に対して抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。
妥当である(最判平17年3月10日)。
26
抵当権は弁済によって消滅するが、一部弁済の場合、担保物権の不可分性により、抵当権は全体として存続する。
妥当である。抵当権には、担保物権の通有性である不可分性が認められるので、被担保債権が一部弁済されても、それにより抵当権が縮減するものではない。
27
AはBに対する債務を担保するため、自己の所有する甲不動産に抵当権を設定し、登記をした。Aはその後、甲不動産をCに賃貸し、さらにCがこれをDに転貸した。Aが弁済期になっても債務を弁済しない場合、Bは、甲不動産のCの転貸賃料について、原則として物上代位権を行使することができる。
抵当権にも物上代位性が認められる(民法304条1項準用、372条)。そこで、抵当権を設定した不動産の賃借人が転貸により取得する債権について抵権者が物上代位権を行使できるかが争われた事件において、最高裁は「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができないと解すべき」という旨を判示している。したがって、本記述の「転貸賃料について、原則として物上代位権を行使することができる」の部分が誤りである。
28
AはBに対する債務を担保するため、自己の所有する甲不動産に抵当権を設定し、登記をした。Aはその後、甲不動産をCに賃貸し、さらにAはCに対する賃料債権をDに譲渡し、Dは対抗要件を備えた。Aが弁済期になっても債務を弁済しない場合、Bは、AのCに対する賃料債権について、物上代位権を行使することができる。
妥当である。最高裁は、民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の「払渡し又は引渡し」には債権譲渡は含まれないため、抵権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的権を差し押さえて物上代位権を行使することができる旨判示している。よって、AがBに対して有する債権を担保するために抵権を設定したA所有の甲不動産をCに賃貸したことによって発生する賃料債権につき、AがDに債権譲渡し対抗要件が具備された後であっても、Bは当該賃料債権に物上代位権を行使することができるとする本記述は判例に合致し適当である。
29
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗できる権利を有する場合を除き、土地とともにその建物を競売することができ、その優先権は、土地及び建物の代価について行使することができる。
前半は正しい。しかし、抵当地とともに建物を競売する場合、「その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる」(民法389条1項但書)。したがって、本肢の「その優先権は、土地及び建物の代価について…・」の部分が誤りである。
30
最高裁判所の判例では、抵当不動産の賃貸により抵当設定者が取得する賃料債権に対しては、抵当権者は物上代位権を行使することができ、抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権についても、常に物上代位権を行使することができるとした。
不動産所有者は被担保債権の履行について、抵当不動産をもって物的責任を負担しなければならない。しかし、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担すべき立場にない。そのため、抵当権者は、原則として、抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権への物上代位を行使できない。したがって、本肢の「賃借人が取得する転貸賃料債権についても、常に物上代位権を行使することができるとした」の部分が誤りである。
31
最高裁判所の判例では、第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵権者は、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができるとした。
妥当である(最大判平11年11月24日)。
32
Aは、被担保債権の弁済期が到来する前に、甲機械をCに売却した。CがAB間の譲渡担保について単なる悪意である場合、譲渡担保の担保設定という実質を重視する立場によれば、Cは甲機械の所有権を取得し、その結果、Bは甲機械の譲渡担保権を喪失する。
譲渡担保とは、債務者が所有する動産や不動産などの財産を債権者に譲渡して、債務を弁済した後にその財産を買い戻すという担保手法です。 誤り。動産に関して譲渡担保権を設定した場合、譲渡担保の担保設定という実質を重視する立場によれば、所有者は譲渡担保権設定者のままであるから譲受人は所有権を取得することになる。ただ、譲受人が譲渡担保に供されていることを知っている場合は譲渡担保権が付着したまま当該動産を取得することになるから、本肢では悪意の譲受人Cは譲渡担保権の付着した甲機械を取得することとなる。よって、「Bは甲機械の譲渡担保権を喪失する」という点が誤りである。
33
Aは、被担保債権の弁済期が到来する前に、甲機械を債権者であるCへの譲渡担保に重ねて供した。CがAB間の譲渡担保について単なる悪意である場合、譲渡担保の所有権移転という形式を重視する立場によれば、Bは、Cに対して甲機械の譲渡担保権を対抗することができる。
正しい。動産に関して譲渡担保権を設定した場合、譲渡担保の所有権移転という形式を重視する立場によれば、動産の所有権は譲渡担保権者に移転しているから譲渡担保権設定者は無権利であると考えられる。そのため、重ねて譲渡担保に供した場合、後に設定を受けた者については即時取得の成否の問題となり、譲渡担保に供されていることにつき悪意の場合は、即時取得が成立しない(民法 192条)。よって、Cについて即時取得は成立せず、BはCに対して甲機械の譲渡担保権を対抗することができるとする本は妥当である
34
Bは、被担保債権の弁済期が到来する前に、甲機械をCに売却した。CがAB間の譲渡担保について単なる悪意である場合、譲渡担保の所有権移転という形式を重視する立場によれば、Cは、Aに対して甲機械の所有権を主張することができる。
正しい。動産に関して譲渡担保権を設定した場合、譲渡担保の所有権移転という形式を重視する立場によれば、譲渡担保権者に動産の所有権が移転しているため、その譲受人は所有権を取得することになる。よって、所有者であるBから甲機械を譲り受けたCはAに対して所有権の主張ができるとする本肢は妥当である。
35
Aは、被担保債権の弁済期が到来した後であれば、Bが清算金の支払若しくは提供又は清算金がない旨の通知をする前であっても、甲機械の受戻権を放棄することにより、Bに対して清算金の支払を請求することができる。
誤り。譲渡担保権設定者が受戻権を放棄した場合に清算金支払請求できるかが問題となった事件において、最高裁は、譲渡担保権設定者の清算金支払請求権および受戻権は、発生原因の異なる別の権利であることを理由として「譲渡担保権設定者は、譲渡担保権者が清算金の支払又は提供をせず、清算金がない旨の通知もしない間に譲渡担保の目的物の受戻権を放棄しても、譲渡担保権者に対して清算金の支払を請求することはできないものと解すべき」と判示している。よって、Aが甲機械の受戻権を放棄することにより、Bに対しての清算金の支払を請求できるとしている点で誤りである。 知識 譲渡担保とは、債務者が所有する動産や不動産を債権者に譲渡して、債務を弁済するときにその物を買い戻す担保手法です。債務が弁済されない場合は、債権者がその物を確定的に所有することができます。 譲渡担保は、民法に定められていない非典型担保ですが、慣習によって認められています。金融実務上、広く応用されており、その具体例としては、工場で用いる機材を担保に入れて金を借りる場合などがあります。 譲渡担保の実行の流れは次のとおりです。 1.債権者が債務者に譲渡担保を実行する通知を送る 2.債務者が占有をしている場合は、担保物を引渡す 3.債権者は、契約に従い、処分清算型・帰属清算型のいずれかの方法で担保物を処分する 4.債務者の債務額より担保物の価値が高いなら、債権者は差額を清算し、債務者に支払う
36
動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
妥当である。先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法304条1項但書)。抵当権の登記のような公示方法が存在しない動産売買の先取特権については、物上代位の目的債権の譲受人等の第三者はその権利の存在について容易に知りえないものであるから、第三者の利益を保護する必要がある。ゆえに、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、先取特権者は権利を行使することはできない。 判例も同様の立場を採用している。 先取特権とは、法律で定められた特殊な債権によって、債務者の財産や特定の動産・不動産から優先的に弁済を受ける権利です。担保物権の一種で、一定の要件を満たせば法律上当然に成立するため、当事者の合意は不要です。 先取特権の例としては、次のようなものがあります。 ・雇人の最後の6ヵ月分の給料 ・不動産賃貸借関係から生じた賃借人の債務 ・不動産工事の費用や不動産売買の対価およびその利息 ・マンションの管理費の滞納
37
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の前に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。
貸借人は、抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権について抵当権の効力が及ぶことは知りえないのであるから、たとえ抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差押さえた後であっても、これを自働債権として賃料債権と相殺することができる。したがって、「抵当権者に対抗することはできない」の部分が誤りである。なお、賃料債権が差押えられた後に、抵当権設定登記後に取得した債権を自働債権として相殺することはできない点にも注意が必要である。抵当権の効力が及びうることは、すでに抵権設定登記により公示されているからである。
38
抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
抵当権の物上代位については、動産先取特権と異なり、登記という公示方法が存在するため、「払渡し又は引渡し」については、債権譲渡は含まれず、目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるとするのが判例の立場である。したがって、「物上代位権を行使することはできない」の部分が誤りである。 なお、目的債権の債務者は、抵当権者が目的債権を差し押さえた後でも、差押命令の送達を受ける前に弁済をした場合は免責されるため、抵当権者の物上代位権行使を認めても不都合はない。
39
敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅する。
妥当である。敷金については、賃料債権をはじめとした賃貸借契約により生じる賃貸人が賃借人に対して有する一切の債権を担保するものであり、敷金契約が締結された際には賃料債権は敷金の充当を予定した債権となる。したがって賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使して差し押さえた場合には、賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときであっても、敷金の充当によりその限度で賃料債権は消滅するべきというものである。判例も同様に解している。
40
転付命令に係る金銭債権が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においては、転付命令に係る金銭債権が転付債権者に移転するだけであり、転付債権者が第三債務者から弁済を受けない限り、抵権者は転付命令に係る金銭債権について抵当権の効力を主張することができる。
最高裁判所は、転付命令に係る金銭債権が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできない。差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に転付命令に係る金銭債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされるからである。上記の理由により抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないと判示している。したがって、「転付債権者が第三債務者から弁済を受けない限り、~主張することができる」の部分が誤りである。
41
Aは、Bが所有する時計を修理したが、Bが修理代金を支払わないため、その時計を留置している。Bが、Cとの間でその時計を譲渡する契約を修理前に締結していた場合、AはBのCに対する売買代金請求権について物上代位権を行使することができる。
留置権が認められる趣旨は当事者間の公平であり、債務の弁済を受けるまで当然に留置して目的物の返還を拒絶し、それをもとに間接的に弁済を強制する機能はあるものの、あくまで目的物を公平のために留置することがその主たる内容である。つまり、留置権は、その他担保物権のように、目的物の交換価値を把握することを前提とした権利ではないので、物上代位性は認められない。したがって、「Aは~物上代位権を行使することができる」の部分が誤りである。
42
AがBに対して動産売買の先取特権を有している場合、物上代位権行使の目的債権について、Bの一般債権者が差押えをした後であっても、Aは物上代位権を行使することができる。
妥当である。判例は、「先取特権者による物上代位権行使の目的となる債権について、一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは、そののちに先取特権者が当該債権に対し物上代位権を行使することを妨げない」としている。
43
AがB所有の甲土地について抵当権を有している場合、物上代位権行使の目的債権について、Bの一般債権者が差押えをして転付命令が第三債務者に送達された後は、Aは目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。
妥当である。判例は、「抵当権の物上代位の目的となる債権に対する転付命令は、これが第三債務者に送達される時までに抵当権者により当該債権の差押えがなされなかったときは、その効力を妨げられない」としている。
44
Aは、Bに対する金銭債権を担保するため、Bが所有する甲建物に抵当権を有しており、 Bは甲建物をCに賃貸し、Cは甲建物を更にDに転貸している。この場合、Aは、甲建物の賃借人であるCを所有者であるBと同視することが相当でないときであっても、Cが取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができる。
判例は、「抵当権者は、抵不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」としている。したがって、「同視することが相当でないときであっても、~物上代位権を行使することができる」の部分が誤りである。
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