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その3
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  • 1

    1980年代に登場した国家論は、国家の自律性を否定し、大統領や官僚といったアクターは、社会のエージェント(代理人)であり、自律的に政策目標を設定し政策を実施すべきではないとした。国家論の研究書であるE.ノードリンガーの「民主主義国家の自律性について』では、民主主義国家においては、自律的に行動する国家の暴走を抑止することこそが真の民主主義の達成に必要であるとされた。

    1980年代に登場した国家論では、国家の自律性を強調し、国家を制度としてではなく、大統領や官僚といった政府を構成する公的アクターとしてとらえ、国家を政治過程における最大の存在と考える。ノードリンガーも国家論者の一人であり、民主主義体制における国家の自律性を理論的に擁護した。

  • 2

    社会中心主義あるいは社会主義においては、政治や政策といった集合行為を個人行動に還する過程で政府が果たすべき役割が重視される。このため、社会中心主義は、多元主義理論について、政府を様々な利益集団から突き付けられる要求を合成するだけの受動的な風見鶏のような存在とみなす傾向があるとして批判した。

    社会中心主義あるいは社会主義とは、政治現象を社会から説明する立場であり、政府の果たすべき役割は重視されない。多主義理論がこれに含まれる。多主義理論について、政府を様々な利益集団からつきつけられる要求を合成するだけの受動的な風見鶏のような存在とみなす傾向があると批判したのは国家論である。

  • 3

    大衆民主主義の問題が露呈してきた20世紀半ばには行動科学革命が起こった。行動科学は、大衆民主主義と科学技術が発達したことによるメディアの影響力に着目し、社会現象を、それを引き起こしている特定の個人にまで還示して分析した。そして、社会現象は、一般大衆ではなく、メディアを通じて世論形成を行う政治的エリートの行動や意思決定過程により説明されるとした。

    行動科学は、特に一般大衆の政治に関する意識や行動が社会現象に及ぼす影響を重視し、自然科学的な方法論を導入して分析するものである。行動科学では分析の対象となる社会現象を、それを引き起こしている個人にまで還し、その個人の過去の行動、意思決定、態度形成などのパターンを分析し、社会現象の一般的な法則を見出そうとする。

  • 4

    理的選択制度論は、社会秩序や制度もない原初的な無政府状態においては、意思決定を行う独立したアクターが存在し、そのアクターが自分の効用を最大化しようとしているという前提から社会現象や政治現象を説明した。ゲーム理論を使った政治分析がその代表的な分析手法であり、既存の制度や社会的ルールといったものはアクターの行動を規定する要因とはならないと

    妥当である。

  • 5

    M.ウェーバーは、近代官僚制の特徴として、明確な権限の配分、職務の階層的構造、厳格で統一的な官職規律などを挙げた。これらの特徴は官僚の活動を統制し、官僚の活動の予測可能性を高めるものであり、このような統制メカニズムを備えた官僚制組織は、外部からの期待に応じて設定された目的を最大限に達成するという意味において、合理性を最も高い水準で達成する組織形態であるといえるとした。

    妥当である。

  • 6

    M. ウェーバーは、行政の官僚制が一度確立すると、職業的官僚は兼職として職務を司る名望家とは異なりその職務に拘束されるために官僚制から脱出できなくなり、また、官僚制的支配機構が一たび成立すると被支配者の方もこれなしに済ますこともこれを他のものに取り替えることもできなくなるとした。こうして、官僚制は破壊することが最も困難な社会組織となり、永続的な性格を有することとなると主張した。

    妥当である。

  • 7

    M.ウェーバーは、支配の正統性の観点から支配の類型を伝統的支配、カリスマ的支配、合法的支配の三つに分け、合法的支配は最も優れている支配型であり、官僚制を合法的支配の最も純粋な型であるとした。また、官僚制の逆機能については、官僚が政治的な無責任から脱却し、自らの信念に従って断固として行動し、自己の行動の結果に責任を持つことによって乗り越えなければならないと主張した。

    ウェーバーは、近代官僚制の子測可能性、業務の公平無私な処理といった非人格性を根拠に、近代官僚制の卓越性を指摘した。したがって、官僚が政治的な無責任から脱却し、自らの言念に従って断固として行動し、自己の行動の結果に責任を持つことによって乗り越えなければならない、と主張してはいない。

  • 8

    M. ウェーバーは、官僚制は、正確で安定的な事務処理や組織の規律などの面で優れており、合法的支配の最も純粋な組織形態であるとした。また、官僚制は明確な階層構造を必要とする行政機関に適した組織形態であり、官僚制化は、政党、営利企業といった行政機関以外の組織では進展することはなく、行政機関独自の合理化の過程において進行するものであると主張した。

    近代官僚制は、身分の自由な官吏が契約によって構成する官僚制であり、それは近代社会においてはあらゆる組織で生じうる組織形態である。したがって、行政機関だけではなく、政党、営利企業といった行政機関以外の組織でも進展することがある。

  • 9

    アメリカでは、厳格な三権分立制にたって、三権の抑制と均衡を図っており、大統領は、連邦議会に対して法案を提出することはできないが、連邦議会の立法に対する拒否権及び連邦議会を解散する権限を持っている。

    アメリカの大統領は、連邦議会の立法に対する拒否権を持っているが、連邦議会を解散する権限は有していない。その他の記述は正しい。

  • 10

    イギリスでは、成文の憲法典は存在していないが、議院内閣制をとっており、内閣の最高責任者である首相は、国家首である国王が庶民院の第一党の党首を任命するという慣行になっている。

    妥当である。

  • 11

    フランスでは、大統領に強大な権限が付与されており、大統領は、国民議会の解散権を持つが、議院内閣制の要素も加味されており、首相と閣僚の任免権は国民議会が持つ。

    フランスにおいて、首相と閣僚の任免権を持つのは国民議会ではなく大統領である。ただし、国民議会は内閣不信任決議権を有しているため、大統領は国民議会の多数党から首相を任命するのが慣例となっている。そのため異なる党派に属す大統領と首相が共存することがあり、そのような状態をコアビタシオン(保革共存路線)という。

  • 12

    ドイツでは、連邦大統領は国家を代表する首であり、国民の直接選挙により選出されるが、連邦首相は、連邦大統領の提案に基づき、連邦議会により選挙され、連邦大統領によって任命される。

    ドイツの大統領は、連邦議会議員と、これと同数の各州議会代表が構成する連邦議会で間接選挙により選出される。その他の記述は正しい。なお、ドイツの大統領は国家元首であるが、権限は名目的なものに限られ、政治的実権はなく実質的には議院内閣制で運営されている。

  • 13

    米国の大統領制において、行政府の長である大統領は、立法府の議員とは別に国民が選んだ選挙人によって選出される。また大統領は、議会に対する法案提出権や、議会が可決した法案への拒否権を持つ。ただし、議会の上下両院がそれぞれ過半数で再可決すれば、大統領の拒否権は覆される。

    「大統領は、議会に対する法案提出権」を持つとする記述が誤り。アメリカの大統領制では、立法権と行政権を厳格に分立することとされている。したがって、議会は大統領に対する不信任決議権を有していない。なお、大統領は法案拒否権を有しているが、議会の上下両院がそれぞれ3分の2以上で再可決すれば、大統領の拒否権は覆される。

  • 14

    日本では、1885年に内閣制度が発足し、内閣職権においては、内閣総理大臣は各大臣の首班として行政部を続督すると定められた。その後に公布された大日本帝国憲法においては、各大臣が直接に天皇を輔弼することになっており、内閣総理大臣は、内閣における同輩中の首席にすぎなくなった。

    安当である。大日本帝国憲法には、内閣についての規定がないため、内閣は憲法上の機関ではなかった。初めて内閣制度が導入された際に制定された内閣職権では、内閣総理大臣に権限が集中する大宰相主義をとっていた。しかし憲法には、閣僚の任免権や行政各部への指揮監督権を天皇大権と規定したため、内閣職権に代わり制定された内閣官制では、内閣総理大臣の権限が弱められることになり、その地位が同輩中の首席にすぎなくなった。

  • 15

    フランスの大統領は、国民による直接選挙によって選出される。大統領は、首相を任命し、また首相の提案に基づき政府の構成員を任命する。ただし、大統領とは党派の異なる首相が任命されることもあるため、閣議の主宰は首相が行う。

    フランスでは、大統領とは党派の異なる首相が任命されることもあり、そのような状態をコアビタシオン(保革共存路線)というが、大統領には強大な権限があり、閣議の主宰は首相ではなく大統領が行う。

  • 16

    韓国の大統領は、上院議員による間接選挙によって選出される。大統領は、政治的に強い権限を持ち、首相を国会議員の中から任命するが、この人事には国会の同意は必要なく、大統領と首相が異なる党派に属することによって政治が混乱することを防いでいる。

    韓国の大統領は、国民による直接選挙によって選ばれる。大統領は首相(国務総理)を任命するが、任命に際して国会の同意が必要である。また、首相は国会議員である必要はない。

  • 17

    米国の議会は、任期6年の上院と任期2年の下院から成る。上下両院とも議長は現職の議員から選出されるが、通常はそれぞれの院で多数を占める政党の有力議員が選ばれるため、両院議長の所属政党が異なる場合もある。

    下院議長は各政党が候補者を指名し単独多数の票を得た候補者が選出される。上院議長は副大統領が就任する。それ以外の記述は正しい。

  • 18

    英国の議会は、貴族議員によって構成される貴族院と有権者の直接選挙で選出された議員によって構成される庶民院から成る。庶民院での首相指名選挙によって選ばれた者が国王から首相に任命される一方、貴族院は最高裁判所としての機能を有している。

    イギリスでは、慣例として庶民院(下院)で議席を最も多く獲得した政党の党首が、国王に召喚され、首相に任命される。また、2009年に最高裁判所が新設され、貴族院から司法機能についての移管がなされたため、貴族院は最高裁判所としての機能を有していない。

  • 19

    ドイツの議会は、州議会の議員による間接選挙で選出された各州6名の議員によって構成される連邦参議院と、有権者の直接選挙によって選出された議員によって構成される連邦議会から成る。連邦参議院は州の権限・予算に関する法案にのみ議決権を持つが、その他の法案についても意見を表明することができる。

    ドイツの議会は、連邦議会連邦参議院は各州政府の代表者によって構成される。法律上の規定ではないが、通常は各州の首相もしくは閣僚が出席する。したがって、連邦議会のような議員選出のための選挙は行われず、任期という概念も存在しない。

  • 20

    フランスの議会は、有権者の直接選挙によって選出された議員によって構成される国民議会(下院)と、国民議会議員や地方議員らによる間接選挙で選出された議員によって構成される元老院(上院)から成る。両院の議決が一致しない場合、法案が両院間を往復することとなるが、最後には、政府が求めれば国民議会が最終的議決を行う権限を持つ。

    妥当である。

  • 21

    韓国の議会は、有権者の直接選挙によって選出された議員によって構成される下院と、第一級行政区画を単位として地方議員による間接選挙で選出された議員によって構成される上院から成る。上院には解散はないが、その権限は下院の議決に対して意見を表明することにとどまる。

    韓国の議会は、有権者の直接選挙によって選出された議員によって構成される一院制の議会である。

  • 22

    選挙制度は、大きくは、多数代表制と比例代表制の2つに分けることができる。 多数代表制は、1選挙区から1人の代表を選出する小選挙区制がその典型であり、アメリカやAでは相対多数でも当選とする制度だが、Bでは1回目の投票において絶対多数でなければ当選としないとする制度で、一度で決まらない場合、上位者で決選投票を行う。 比例代表制は、個々の有権者の票をできるだけ生かし、有権者の政党支持の分布がそのまま議席比に反映されるように配慮されており、過度の小党乱立を防ぐために、一定の得票率を獲得しないと議席を比例配分しないというCの5%条項は有名である。

    選挙制度は、代表制と選挙制度による分類に大別される。多数代表制とは各選挙区の多数派が議席を独占するものであり、小選挙区制が該当する。小選挙区制であっても、有権者の過半数の得票を得なければ当選できない仕組みを絶対多数代表制と呼び、、フランスで導入されている。一方、得票数が過半数に達しなくても当選できる仕組みは相対多数代表制と呼び、アメリカやイギリス、日本の衆議院小選挙区制で導入されている。 比例代表制は、有権者からの得票数に応じて、各政党に議席を比例配分することで、少数派にも議席獲得の機会を与える仕組みである。しかし、小党分立を招き政局が不安定になる可能性があるため、一定の得票率獲得を当選条件とする場合がある。ドイツでは、比例票の得票率が5%未満であった政党に議席を配分しない「阻止条項」が設けられている。

  • 23

    合衆国憲法は、「本憲法によって各州に委任されず、また連邦政府に対して禁止されなかった権限は、連邦政府に留保される」としており、連邦政府の権限は極めて強いものとなってい る。

    合国憲法修正10条によれば、「この憲法によって合衆国に委任されず、また州に対して禁止していない権限は、それぞれの州または人民に留保される」としており、州以下の地方自治権が強いものとなっている。

  • 24

    連邦議会の上院議員は、各州から2名ずつ選出され、任期は6年であるが、その3分の1が2年ごとに改選され、上院は、条約批准同意権と官更任命同意権を有している。

    妥当である。上院に対して下院は、予算先議権や連邦官吏に対する弾劾訴追権を有する。

  • 25

    連邦議会の下院議員は、各州の人口に比例して選出され、任期は2年であり、下院の議長は、副大統領が兼ねる。

    「下院の議長は、副大統領が兼ねる」とする記述が誤り。副大統領は、上院の議長を兼ねる。 なお、上下両院ともに、小選挙区制による直接選挙で選出される。

  • 26

    J・リンスの主張によると、大統領制と比較して、議院内閣制の下では民主主義体制が不安定になり、権威主義体制に移行しやすい。彼は、その理由として、議院内閣制の執政長官である首相は、国民の直接選挙で選ばれているわけではないため、専制的になっても容易に辞めさせられない点を挙げている。

    大統領制と議院内閣制の記述が逆である。リンスによれば、議院内閣制と比較して、大統領制の下では民主主義体制が不安定になりやすいとされる。その理由として、大統領は国民の直接選挙で選ばれているため、専制的になっても容易に辞めさせられない点が挙げられる。

  • 27

    米国の大統領は、憲法の規定により、連邦議会によって不信任案が可決される場合を除き、任期途中で解任されることはない。また、大統領は、連邦議会の可決した法案に対する拒否権を持っている。他方、連邦議会は、政府提出法案の審議を遅延させることにより、大統領に対抗することができる。

    米国の議会は、大統領に対する不信任決議権を持たない。したがって第一文は誤り。大統領が法案拒否権を持っているとする第二文は正しい。米国で議会への法案提出権を持つのは議員のみであるから、政府提出法案について述べている第三文も誤りである。

  • 28

    C.モンテスキューは、「法の精神」において、行政府や立法府による権力の濫用を防ぐために、国民の政治的自由を制約し、司法府の権限を強めることが必要だと説いた。J・マディソンは、権力分立の原理を更に重視し、行政府の存立を立法府の借任に基づかせる執政制度を理想とした。

    モンテスキューは「法の精神」において、政治的自由を保障するには権力が制限されていることが重要であるとして、立法権、行政権、司法権を別個の機関に委ね、相互に抑制と均衡を図る権力分立論を説いた。したがって、司法権の強化を説いたとする第一文は誤り。また、第四代アメリカ大統領のマディソンは、行政府(大統領)と立法府(議会)の均衡を重視したのであって、行政府の存立を立法府の任に基づかせる執政制度(議院内閣制)を理想とはしていない。

  • 29

    我が国の地方自治法の規定によると、地方公共団体の長(首長)には、議会を解散する権限が与えられていない。他方で、条例案や予算案を議会に提出する権限は、首長と議会の両方に与えられている。また、首長は、議会が下した議決に異議がある場合、議会に再度審議を求めることができる。

    地方自治法の規定により、首長には議会解散権が与えられている(178条1項)。次に、条例案を議会に提出する権限は、議員と首長の両者が有する(112条1項、149条1号)。これに対し、予算案提出権は首長のみが持つ(112条1項但書、149条2号)。最後に、首長は議会が下した議決に異議がある場合、議会に再度審議を求めることができる(176条1項)。

  • 30

    ソクラテスは、「国家」を著し、哲学者が追求すべき最高の実在は書のイデアであり、イデアを認識した哲人王が支配するのが理想的な国家であるとした。

    本肢はソクラテスではなく、プラトンに関する記述である。「国家」はプラトンの主著の一つであり、「善のイデア」や「哲人王」は、プラトンの思想における重要な概念である。なお、ソクラテスは著作を残していない。

  • 31

    プラトンは、「政治学」を考し、人間は、善悪や正義を共有する人々の間でポリスを形成するものであり、本性的にポリス的動物であるとした。

    本肢はプラトンではなく、アリストテレスに関する記述である。「政治学」はアリストテレスの主著の一つであり、彼は人間を「ポリス的動物」と定義した。

  • 32

    アリストテレスは、国家は「統治者、戦士、生産者」という3つの階級からなると主張し、統治者と戦士の私有財産を禁じて共産制を説いた。

    本肢はアリストテレスではなく、プラトンに関する記述である。プラトンは人間の魂を理性、気概、欲望の3つに区分し、理性は知恵の徳を、気概は勇気の徳を、欲望は節制の徳をそなえ、これらが全体として調和したときに正義の徳が実現するとした。国家についても、続治者階級が知恵の徳を、軍人階級が勇気の徳を、生産者階級が制の徳をそなえた、3つの階級からなる国家を理想とした。

  • 33

    アリストテレスは、支配者の数と、共通の利益をめざしているか否かという基準によって国制を6つに分類し、そのうち、多数者支配の堕落した形態を「民主制」と呼んだ。

    妥当である。アリストテレスは、①支配者の数と②統治の内容が良いか悪いかの2つの基準で、政体を6つに分類した。ここで②統治の内容が良いか悪いかとは、支配者と被支配者双方の共通の利益をめざしているか、支配者のみの利益をめさしているかで判断される。彼は、一人の支配で健全な政体を「王政」、堕落した政体を「僭主政」、少数者の支配で健全な政体を「貴族政」、堕落した政体を「寡頭制」、多数者の支配で健全な政体を「ポリティア」、堕落した政体を「民主政」と呼んだ。

  • 34

    マキアヴェリは、君主に対し、国民から恐れられるよりも愛される君主となることを求め、ほとんどの人間は善良であるため、君主が道徳的正しさを発揮することで国家を維持できるとした。

    マキアヴェリは、自律的に秩序を構成する能力を失った人間を前提として国家を維持することを課題とし、君主は民衆から尊敬され愛されるよりも、恐れられる必要があると説いた。 政治的思考を道徳、倫理から分離させたことにより、マキアヴェリは近代政治学の祖とされる。

  • 35

    マキァヴェリは、共和国を理想としたが、イタリアが分裂状態にある現状においては、共和制の実現可能性を見出しえず、君主国の創出にイタリア再生の条件を見出した。

    妥当である。

  • 36

    マキァヴェリは、「君主論」を著し、軍制の改革を訴え、自国の市民からなる軍隊ではなく、外国人を主体とする補兵制度の創設が急務であるとした。

    マキアヴェリは、「君主論』において、外国人を主体とする備兵制度に依存する時の軍制の改革を訴えた。そして、傭兵ではなく統治者に直属し、その手足となって活動する強力な自国の市民からなる軍隊の創設が急務であるとした。

  • 37

    ボダンは、主権は国家に内在する絶対的で永続的な権力ではなく、法律によって拘束されるとともに、国民である臣民からも拘束されるとした。

    ボダンは、「国家論』のなかで、主権を国家の絶対にして永続的権力であると定義した。主権概念は、国家の対外的独立性を保証するとともに、国内における権力の一元的集中を弁護するものである。ボダンは、主権が相互的契約、神法・自然法・自然的正義、王国基本法、私有財産などに制限されると説いたが、臣民から制限されるとはしていない。

  • 38

    ボダンは、「統治論」を著し、主権は神法や自然法に基づいているため、絶対的権威を持つとしたが、これは社会契約説を正当化する理論となった。

    『統治論」を著したのはロックである。ボダンは、国家の構成要素を家族に置いて主権論を展開したのに対し、社会契約説は、個人相互の契約に基づいて国家や社会のあり方を理論づけており対象的である。

  • 39

    保守主義は古くから漠然とした形で存在していたが、18世紀頃、自由主義の挑戦を受けて自覚的な政治思想となった。近代保守主義という場合はこれをいい、代表的な政治思想家は、「A」を著したイギリスのバークである。彼は、古くから存在してきたものはそれだけ「B」で人間性に適したものだとして、伝統的秩序や伝統的価値体系を尊重した。

    A:「フランス革命の祭」が該当する。バークは、フランス革命はそれまでの人々の経験知や歴史的知性を否定し、破壊するものだとして批判した。 B:「自然」が該当する。社会的不平等を含む権威主義的関係は、長く存在したものであるため、人間にとって自然なものと考える。

  • 40

    J.J.ルソーは、人民は、人民各人が不可欠の一部となるような一個の共同体を形成し、この共同体を各人の私的な意志やそれらの単なる総和を超えた一般意志によって運営しなければならないとして、人民主権論を理論的に正当化した。彼は、人民のみが共同体の主権者であり、人民に属する主権は譲渡することも分割することもできない絶対的なものであるとして、代表者が政治的意思決定を行う代表制を批判した。

    妥当である。

  • 41

    J・シュンペーターは、人々は政治について無知であり、合理的・自律的な判断は期待できず、人民の意志や公共性の利益はコントロールされた結果として作られた意志に過ぎないとして市民の理性能力に懐疑的であった。彼は、また、実質的・能動的に政治を担うのは政治エリートであり、人々は競争する政治エリートのうちの誰に政治を委ねるかを選ぶ役割を果たすこともできないとした。

    シュンペーターは、人民の理性的能力に懐疑的であったが、人民の能力に全く期待していなかったというわけではない。シュンペーターは、人民が選挙において、競争する政治エリートのうちの誰に政治を委ねるかを選ぶ能力ならば十分に備えていると考えていた。

  • 42

    A. トクヴィルは、民主主義の進展は不可避の歴史的必然であるが、民主主義の制度には、多数者が数の力で少数者の権利を蹂躙する多数の暴政をもたらす可能性が内在すると主張した。彼は、民主主義の下での平等な社会における物質主義と画一化の浸透は、社会から孤立した私的な世界に閉じこもる自己中心的な個人を生み出すため、孤立した個人は容易に多数者の意向に同調してしまい、個人の自由が失われかねないと指摘した。

    妥当である。

  • 43

    J.ラスキは、政治とは友と敵の区別に関わるものであり、友を友たらしめる同質性を定義することが政治の営みであり、同質性こそが真の徹底した民主主義の本質であると主張して、多的国家論を批判した。彼は、また、議会制は統治者と被治者の民主主義的同一性を妨げており、喝采によって直接に表現された人民の意志の前には議会は存在理由を持たないと主張した。

    本肢はC.シュミットに関する記述である。C.シュミットは「現代議会主義の精神史的地位』のなかで、民主主義は絶対主義や軍国主義、独裁制と対立しないと論じ、これによりナチス政権誕生に理論的根拠を与えることとなった。なお、H. J・ラスキは多元的国家論者であり、国家は他の社会集団と同様に一定の機能を遂行する集団にすぎないとし、複数の集団に所属する個人の忠誠を求めて、各集団は互いに競い合うことになると論じた。

  • 44

    トクヴィルは、「アメリカにおけるデモクラシー」を著し、対立関係にあった自由主義と民主主義を結びつけ、自由民主主義への道をひらいた。

    妥当である。トクヴイルは、19世紀前半にアメリカを訪れた際、ジャクソニアン・デモクラシーを見聞し、アメリカではヨーロッパと違って、自由主義と民主主義が両立していることを見出した。

  • 45

    現代政治学は、1908年に出版された「政治における人間性」と「A」の2冊の書物に始まる。 「政治における人間性」を著したイギリスの政治学者「B」は、人間の政治行動は必ずしも合理的なものではないとして従来の制度論的政治学を批判し、政治学の研究に「C」的なアプローチが必要なことを主張した。 また、「A」を著したアメリカの政治学者ベントレーも、制度論的政治学を「死せる政治学」と呼んで批判し、政治を「D」間の対立と相互作用等と捉え、政治学の研究に社会学的な視点を導入した。

    現代政治学は、1908年に出版された、ウォーラス『政治における人間性」とベントレー『統治過程論」にあるとされる。ウォーラスは、人は常に合理的判断ができるとする主知主義を批判し、心理学的アプローチから人間の非合理性に着目した。一方ベントレーは、社会学的アプローチから、一人の人間が利害を異にする複数の集団に帰属する重複的メンバーシップが、社会を均衡へと向かわせると主張した。 A「統治過程論」が入る。 B「ウォーラス」が入る。 C「心理学」が入る。 D「集団」が入る。

  • 46

    J.ロールズの「正義論」は、1920年代の政治哲学分野における代表的な著作物である。その狙いは、精神的な価値が多元化した社会における新しい共生のルールを正義の原理として定式化することであり、「平等な自由原理」や「機会均等原理」といった古典的な考えを否定し、新たに「格差原理」を導入することで、社会的・経済的不平等の是正という課題に積極的に取り組んだ。

    ロールズは「正義論』を1971年に著し、正義の原理として次の二つを提示した。第一原理とは、「個人は他に人々の類似した自由と両立する限り、もっとも広範な基本的自由への平等な権利を持つべきである(平等な自由原理)」とする原理であり、第二原理は「社会経済的不平等は、最も不遇な人々に最大の利益をもたらすように(格差原理)、かつ公正な機会均等の条件のもとですべての人々に開かれた地位と職務とに付属するように(機会均等原理)、とりきめられるべきである」とするものである。

  • 47

    M. ウェーバーの「職業としての政治』では、国家とはある一定の領域の内部で正統な物理的暴力行使の独占を実効的に要求する人間の共同体であるとされた。そして、政治家は国家の暴力性をはっきり自覚し、高い政治倫理が求められるとする一方で、官僚は党派性を持ち、政治家に正統性のない物理的暴力行使を行うように命された場合は、大衆を守るために断固として拒否すべきであるとされた。

    ウェーバーは『職業としての政治』において、官僚に求められる資質は、党派性を持たず、憤りも偏見もなく上位者の命令に誠実にしたがって行政を担うべきことであると指摘した。 ゆえに、政治家に正統性のない物理的暴力行使を行うよう命令された場合でも、官僚は命令を忠実に実行しなければならないことになる。

  • 48

    M. サンデルの『自由主義と正義の限界』では、人間はあたかも、共同体の規範とは全く無関係に、独立した独自の目的や利書、善悪の観念による「負荷なき自己」を持つとする考えが批判された。そして、むしろ自己と共同体との結び付きを自覚し、共通善に積極的に貢献することのできる市民の存在こそが、リベラリズムを真に支えるとするコミュニタリアニズムが主張された。

    妥当である。

  • 49

    J.S.ミルの「自由論」では、自律こそが人間の尊厳の基盤を成すという考え方から、徹底して個人の自己決定権の重要性が主張された。そして、自己決定権としての自由の障害を排除するためには、初等教育や保健といった福祉分野において国家による積極的な関与が必要であるとされた。

    J.S.ミルは「自由論』において、各人の幸福にとって思想および言論の自由や個人の擁護が不可であり、そのためには私的な領域に対する政府の干渉はできる限り制限されるべきであると論じた。したがって、福祉分野における国家による積極的な関与の必要性を主張してはいない。

  • 50

    J.ロールズは、「正義論」において、正義の第一原理として「平等な自由の原理」、第二原理として「格差原理」を示した。このうち、第一原理における自由とは、最低限の市民的・政治的自由に限られず、自由一般を指す。また、第二原理においては、全ての市民の間に絶対的な平等を達成することが求められると主張した。

    全ての市民の間に絶対的な平等を達成することが求められる」とする記述が誤り。J・ロールズは、人間の生まれ持った能力や才能には差があることを認め、その差異に基づく社会的・経済的不平等の存在を前提としている。ロールズは、完全な社会的・経済的平等の実現を目指すのではなく、能力のある者が能力に恵まれない者の利益になるとする、格差原理も正義の第二原理として主張している。

  • 51

    R.ノージックは、警察・国防業務と私的な契約の執行のみを担う最小国家の構想を批判した。そして、国家が再分配政策を用いて、富裕層の保有資源を貧困層に移転することは、富裕層の合理的な意思に基づくものであるとして、正当化されるとした。

    R.ノージックは、リバタリアニズムの立場から、「最小国家の構想」を主張した。リバタリアニズムとは、ロールズなどが提唱した福祉国家型の自由主義を批判し、国家による再配分を否定する「小さな政府」を擁護するものである。ノージックは、国家は察、防衛、契約履行の保障に限定される最小国家に留めるべきであり、それ以上の「拡張国家」は個人の権原(人間は自己の所有物を思うままに処分する絶対的権利)を侵害し不当であると主張した。

  • 52

    M.サンデルは、国家が行う様々な政治活動を、他者と共有する共通善の実現活動として捉える考え方を批判した。そして、平等で正義にかなった意思決定を行うためには、共同体の規範とは独立した目的や独自の善悪の観念を持ち、何の負荷も課されていない自己として思考することが条件であると主張した。

    M.サンデルは、コミュニタリアニズムの立場から、「国家が行う様々な政治活動を、他者と共有する共通善の実現活動として捉える」ことを主張した。コミュニタリアニズムは、普通に人々が共有している共通の利益としての「共通善」を重視する。つまり、人間は自己が所属する共同体における規範といった負荷が共通に課され、その負荷から「共通善」の実現を目指して、共同体に対する責任を果たしていく存在であるとした。

  • 53

    A.レイプハルトは、オランダやベルギーといったヨーロッパの小国では、宗教的・言語的に多元的な下位文化が存在しており、それぞれの下位文化を代表する勢力の間での合意形成ができず、政治的対立が強まっていると指摘した。そして、安定した政治体制を実現するには、合意型民主主義よりも、英国のような、多数派の意思実現に重きを置く多数決型民主主義のほうが優れているとした。

    A.レイプハルトは、多極共有型民主主義理論を提示し、「多元的な下位文化が存在」している社会でも、エリート間の協調、相互拒否権の保持、比例制原理、セクションの自律性の存在によって安定したデモクラシーが可能であると主張した。このように、多元的な社会では幅広い合意を追求する合意型民主主義が適するとしている。

  • 54

    池田勇人内閣は、「寛容と忍耐」をスローガンに、所得倍増計画を提示して国民生活水準の 顕著な向上と完全雇用の達成のために経済の安定的成長の極大化を目指した。また、外交面では、国際通貨基金(IMF)8条国へ移行して通商・金融面での自由化を果たすとともに、経済協力開発機構(OECD)への加盟を実現した。

    妥当である。

  • 55

    佐藤栄作内閣は、対米協調路線を基本とし、対米貿易黒字が恒常化するなど深刻となっていた日米経済摩擦問題を解決するため、繊維輸出の自主規制を実施した。また、沖縄返還を目指したが、昭和45(1970)年の日米安全保障条約改定に対する国民的規模の反対運動を受け、返還交渉の合意に至ることなく同年、退陣した。

    佐藤栄作内閣はアメリカとの沖縄返還交渉を行い、昭和46(1971)年に沖縄返還協定を調印して交渉は合意に至った。また、日米安全保障については、昭和35(1960)年に改定をめぐって国民的規模の反対運動(60年安保闘争)が生じたが、その後は大規模な反対運動は起こっていない。

  • 56

    田中角栄内閣は、過密過疎を解消し、全国土に効果を及ぼすネットワークを形成するために鉄道、高速道路、情報通網、港湾などの整備を図ることを主な内容とする「新全国総合開発計画(新全総)」を閣議決定した。また、昭和47(1972)年には田中首相が日中国交正常化を図るため中華人民共和国を訪問し、同年、日中平和友好条約が締結された。

    「新全国総合開発計画(新全総)」を閣議決定したのは佐藤栄作内閣である。田中角栄首相は「日本列島改造論』の中で、過疎・過密問題の解消を訴えた。また、田中角栄内閣は、昭和47(1972)年に中華人民共和国を訪問し、日中共同声明を発表して日中国交正常化を実現した。 日中平和友好条約は昭和53(1978)年に福田赳夫内閣の下で締結された。

  • 57

    福田赳夫内閣は、高まる政治不信に対して選挙制度改革で対応すべく小選挙区比例代表並立制を導入するための政治改革関連法案を提案した。

    小選挙区比例代表並立制の導入を柱とする政治改革関連法案を初めて提案したのは海部俊内閣である。しかし、同法案は閣議決定されたにもかかわらず、自民党内からも反発を受け廃案となった。平成6(1994)年に細川護煕内閣において、政治改革関連法案が成立し、衆議院議員選挙に小選挙区比例代表並立制が導入された。

  • 58

    池田勇人内閣が打ち出した所得倍増計画は、日本経済の高度成長をもたらしたが、この高度成長は第一次石油危機によって終焉を迎え、経済は停滞期に入った。こうした状況を受けて登場したのが、日本列島改造論を掲げた田中角栄内閣である。

    田中角栄内閣が登場したのは1972年(昭和47年)であり、第一次石油危機によって日本の高度経済成長が終焉したのは1973年(昭和48年)である。

  • 59

    大平正芳内閣における間接税導入の挫折は、その後の自由民主党政権に「増税なき財政再建」を課題として突き付けた。この課題に対して、中曽根康弘内閣は、経済的自由主義を背景として行財政改革を推進し、民間活力の導入等の政策によって対応する姿勢を打ち出した。

    妥当である。中曽根内閣の時に推進された行財政改革は、いわゆる「第二臨調」とよばれるものであり、日本国有鉄道・日本電信電話公社・日本専売公社の三公社民営化を実現した。

  • 60

    中曽根康弘内閣の経済的自由主義に基づいた政策は、その後、いわゆるバブル経済を引き起こすこととなった。このバブル経済の崩壊と景気の急激な停滞に直面した竹下登内閣は、景気対策の財源確保のため間接税の導入を試み、「消費税」の導入を実現した。

    竹下登内閣が「消費税」の導入を実現したのは1989年(平成元年)であり、バブル経済が崩壊したのは1991年(平成3年)である。

  • 61

    竹下登内閣がリクルート事件をきっかけに退陣したことを受け、我が国においては政治改革が喫緊の課題となった。こうした状況の中で、非自民の連立内閣である羽田内閣の下で選挙制度改革を含む政治改革関連4法案が成立した。

    前半の記述は正しい。竹下登内閣退陣後は、宇野宗佑・海部俊・宮沢喜一と自民党内閣が継続していくが、1993年(平成5年)の米議院議員総選挙で自民党が過半数割れをすると、非自民の連立内閣である細川護熙内閣が成立し、、同内閣の下で、小選挙区比例代表制の導入を柱とする政治改革関連4法案が、1994年(平成6年)に成立した。

  • 62

    1955年に、それまで左派と右派に分裂していた日本社会党が統一された。この動きに対抗して、同年に、保守政党の側でも日本民主党と自由党が合併し、自由民主党が結成された。 国会における自由民主党と日本社会党の議席数の割合から、当時の政党システムは「1か2分の1政党制」と称された。

    妥当である。自由民主党の結成により、1955年から1993年まで、同党による長期政権が維持されていたことを、「55年体制」とよぶ。本肢の通り、日本社会党が野党第一党であったが、 55年体制期間を通じて、自民党の議席の半分程度であったことから、升味準之輔らは「1か2分の1政党制」とよんだ。また、G.サルトーリは、「一党優位政党制」と分類している。

  • 63

    1960年代になると、自由民主党が国会における議席数を漸減させた一方、民主社会党(後に民社党と改称)や公明党といった中道政党が進出したことで、与党陣営の多党化が進んだ。 他方この時期、日本社会党に対する支持は高まる傾向にあり、1970年代には、国会における野党の議席数が、全体として与党の議席数と伯仲するようになった。

    「与党陣営の多党化」とする記述が誤り。1960年代になると、自民党も社会党も国会における議席数が漸減したが、こうした状況の中、共産党に加え、民社党や公明党が議席を増やすことで、野党の多党化が進んだ。

  • 64

    1960年代から1970年代にかけて、農村部の地方自治体を中心に、日本社会党や日本共産党に支援された革新系首長が次々に誕生した。こうした地方自治体は「革新自治体」とよばれる。 多くの革新自治体では、老人医療費への補助が減額されるなど福祉政策の見直しが進められ、自治体財政の再建が実現された。

    1970年代になると、自民党は長期低落傾向に入り、急速な都市化や産業化による都市部の人口増や公害問題、福祉問題が起き、都市部の地方自治体を中心に「革新自治体」が誕生した。 革新自治体の多くは老人医療費の無料化などの福祉政策を推進した。

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