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1
不作為についての審査請求が、不適法であるときは、決定で、当該審査請求を棄却する。
行政不服審査法49条1項は、「不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。」と規定する。したがって、不作為についての審査請求が不適法な場合、却下の裁決がされることとなるため、「決定で、当該審査請求を棄却する」の部分が誤りである。
2
審査請求をすることができる処分について、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示し、教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該審査請求を受けた行政庁は、処分庁に連絡し、処分庁は、審査請求人に対し、改めて適切な審査請求をすべき行政庁に審査請求をするよう通知しなければならない。
行政不服審査法22条1項は、「審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。」と規定する。したがって、「処分庁は、審査請求人に対し、改めて適切な審査請求をすべき行政庁に審査請求をするよう通知しなければならない」の部分が誤りである。
3
取消訴訟において、いわゆる事情判決により請求を棄却する場合には、裁判所は、判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならず、審査請求においても、いわゆる事情裁決により審査請求を棄却する場合には、審査庁は、裁決で、処分が違法又は不当であることを宜言しなければならない。
妥当である。行政事件訴訟法31条において本肢のように規定している。また、事情裁決については、行政不服審査法45条3項で本肢と同様の規定を置いている。
4
義務付けの訴えの提起があった場合において、緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、仮の義務付けをすることができるが、それが公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、処分又は裁決がされないことにより生ずる損害が償うことのできないほど重大なものでない限り、仮の義務付けをすることはできない。
仮の義務付けについて、行政事件訴訟法37条の5は、1項で「義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。」と規定し、3項で「仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。」と規定する。そのため、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある場合は、損害が償うことのできないほど重大なものであっても、仮の義務付けはできない。したがって、「処分又は裁決がされないことにより生ずる損害が償うことのできないほど重大なものでない限り」の部分が誤りである。
5
差止訴訟は、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害が生ずるおそれがある場合に限り提起することができるが、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、提起することができない。
妥当である。行政事件訴訟法37条の4第1項のとおりである。
6
申請型義務付け訴訟は、法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされない場合にのみ提起することができるが、当該処分又は裁決がされることにつき法律上の利益を有する者であれば、当該申請又は審査請求をした者でなくとも提起することができる。
申請型義務付け訴訟は、①当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされない場合(不作為型)および②当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合(拒否処分型)の2つのケースで提起できる。 また、法令に基づく申請又は審査請求をした者しか提起できない。したがって、本記述の「相当期間内に~場合にのみ提起することができる」の部分と「当該申請又は審査請求をした者でなくても提起することができる」の部分の2か所が誤りである。
7
行政事件訴訟法第37条の2に規定する義務付けの訴え(非申請型の義務付けの訴え)の要件等に関して非申請型の義務付けの訴えを提起することができるのは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限られる。
妥当である。非申請型の義務付けの訴えは、一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつその損害を避けるために他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
8
行政事件訴訟法第37条の2に規定する義務付けの訴え(非申請型の義務付けの訴え)の要件等に関して裁判所は、行政事件訴訟法第37条の2第1項に規定する「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度に加えて損害の性質及び程度を考慮するものとされ、処分の内容及び性質について勘案する必要はないとされている。
行政事件訴訟法37条の2第1項に規定する「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとしている。したがって、「処分の内容及び性質をも勘案する必要はない」の部分が誤りである。
9
行政事件訴訟法第37条の2に規定する義務付けの訴え(非申請型の義務付けの訴え)の要件等に関して非申請型の義務付けの訴えが行政事件訴訟法第37条の2第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるときに限り、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をすることができる。
非申請型の義務付けの訴えが行政事件訴訟法37条の2第1項及び第3項の要件に該当する場合において、①行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるとき、または②行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超えもしくはその濫用となると認められるときは、裁判所は行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をすることができる。したがって、「行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるときに限り」の部分が誤りである。
10
行政庁の裁量に任された行政処分の無効確認を求める訴訟においては、行政庁が当該行政処分をするに当たってした裁量権の行使がその範囲を超え又は濫用にわたり、したがって、当該行政処分が違法であり、かつ、その違法が重大かつ明白であることを、その無効確認を求める者が主張及び立証しなければならないとするのが判例である。
妥当である。行政庁の裁量に任された行政処分の無効確認を求める訴訟においては、無効確認を求める者において、行政庁がした裁量権の行使がその範囲を超え又は濫用にわたり、しかも、当該瑕疵が重大かつ明白であることを主張および立証することを要する。
11
法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であるときに、義務付けの訴えを提起するためには、当該処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えを提起する必要はない。
本肢のような申請満足型義務付け訴訟拒否処分型は、申請拒否処分や棄却・却下裁決の取消訴訟又は無効等確認訴訟と併合して提起しなければならず、単独で提起することはできない。したがって、「義務付けの訴えを提起するためには、当該処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えを提起する必要はない。」とする部分が誤りである。
12
差止めの訴えの訴訟要件として行政事件訴訟法が定める「重大な損害が生ずるおそれ」があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要するとするのが判例である。
妥当である。処分の差止めの訴えについて行政事件訴訟法37条の4第1項の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する。
13
抗告訴訟は、行政事件訴訟法に規定される法定抗告訴訟のみに限定されず、いわゆる無名抗告訴訟(法定外抗告訴訟)も許容されると解されていたが、平成16年に同法が改正されて、それまで無名抗告訴訟として想定されていた義務付け訴訟及び差止め訴訟が法定抗告訴訟とされたことに伴い、同法において、無名抗告訴訟が許容される余地はなくなったと一般に解されている。
確かに、それまで無名抗告訴訟であった義務付け訴訟と差止め訴訟が、平成16年の行政事件訴訟法改正に伴い法定抗告訴訟化されたが、理論上無名抗告訴訟が許容される余地は残されていると解される。したがって、「無名抗告訴訟が許容される余地はなくなった」の部分が誤りである。
14
無効等確認の訴えとは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟である。行政処分が無効である場合において、行政事件訴訟法は、行政処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによることを原則とし、無効確認訴訟を提起できる場合を限定している。
妥当である。無効確認訴訟は原告適格が限定されており、行政事件訴訟法36条は「無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる」と規定している。
15
行政事件訴訟法は、行政事件訴訟を抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟の4類型に分けており、これらのうち、民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律の定める者に限り、提起することができるとしている。
妥当である。民衆訴訟と機関訴訟は、客観訴訟に該当し、自己の法律上の利益と関わりなく提起するものであるから、法律の定める場合において、法律の定める者に限り、提起することができる。
16
当事者間で公法上の法律関係を争う訴えである当事者訴訟には、二つの類型がある。これらのうち、公法上の法律関係に関する訴訟は、対等事者間の訴訟である点で民事訴訟と共通するが、公法私法二元論を前提として、民事訴訟と区別して行政事件訴訟の一類型として位置付けたものであり、形式的事者訴訟と呼ばれる。
本肢が述べているような公法上の法律関係に関する訴訟は、実質的当事者訴訟である。形式的事者訴訟とは、処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものをいう。したがって、「形式的当事者訴訟と呼ばれる」の部分が誤りである。
17
抗告訴訟のうち、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えを併せて取消訴訟という。 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、原則として原処分を支持した裁決の取消しを求めて訴訟を提起することにより、当該裁決の取消しと併せて原処分の取消しを求めることとなる。
原処分の取消しの訴えと原処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起できる場合には、原処分の違法を理由として取消訴訟を提起するときは、原処分の取消しの訴えを提起しなければならず、裁決の取消しの訴えでは、原処分の違法を主張して裁決の取消しを求めることはできない。したがって、「原則として〜となる。」の部分が誤りである。
18
行政事件訴訟法は、不作為の違法確認訴訟の原告適格を「処分又は裁決についての申請をした者」と定めている。ここにいう「申請」とは、手続上適法な申請を指し、法令に基づく申請をした者であっても、その申請が手続上不適法であるときは、その者は不作為の違法確認訴訟を提起することができない。
申請に対し不作為が続けられている限り、当該申請が適法であるかどうかにかかわらず、不作為の違法確認訴訟を提起することができる。なぜなら、申請が不適法である場合、行政庁は当該申請の却下をしなければならないからである。したがって、本記述の「不適法であるときは~提起することができない」の部分が誤りである。
19
法令に基づく申請に対する不作為についての義務付け訴訟は、当該申請に対する処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるために他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
義務付け訴訟には直接型(非申請型)と申請満足型(申請型)があり、申請満足型はさらに不作為型と拒否処分型に分類される。本は、このうち不作為型に関する記述であるところ、不作為型の義務付け訴訟の訴訟要件は、当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないことである。したがって、本記述の「当該申請に対する処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、~他に適当な方法がないときに限り、提起することができる」の部分が誤りである。
20
不作為の違法確認は、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。また、その申請は法令に基づく申請であることが必要である。
妥当である。まず、不作為の違法確認訴訟は、「処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる」そして、不作為の違法確認訴訟とは、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟」をいう。したがって、その申請は、法令に基づく申請であることが必要である。
21
申請型(申請満足型)義務付け訴訟は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
本肢で述べられている訴訟要件は、申請満足型ではなく直接型(非申請満足型)のものである。したがって、「申請型(申請満足型)義務付け訴訟は」の部分が誤りである。
22
抗告訴訟は、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であり、行政事件訴訟法は、抗告訴訟を処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等確認の訴え及び不作為の違法確認の訴えの4つの類型に限定している。
抗告訴訟は、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である点は正しいが、その類型につき、本肢で挙げてあるものの他に、義務付け訴訟及び差し止め訴訟がある。また、行政事件訴訟法上規定されていない、法定外抗告訴訟(無名抗告訴訟)も許容されうる。したがって、「4つの類型に限定している」の部分が誤りである。
23
差止めの訴えは、行政庁に対し一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟であり、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合には、その損害を避けるため他に適当な方法があるときでも提起することができる。
差止めの訴えの提起をするための要件として、補充性要件が必要とされる。補充性要件とは、損害を避けるため他に適当な方法がないことをいう。 したがって、「その損害を避けるため他に適当な方法があるときでも提起することができる。」の部分が誤りである。
24
逮捕状は発付されたが、被疑者が逃亡中のため、逮捕状の執行ができず、逮捕状の更新が繰り返されている時点であっても、被疑者の近親者は、被疑者のアリバイの存在を理由に、逮捕状の請求、発付における捜査機関又は状発付裁判官の被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとする判断の違法性を主張して、国家賠償を請求することができる。
判例は本肢の事案について、被疑者のアリバイの存在を理由に、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとして逮捕状の更新を繰り返すことが違法であると主張して国家賠償請求をすることはできないとしている。その理由として、逮捕状の更新時ごとにその適否を捜査機関や裁判所が判断しなければならないとすることは、逮捕状発布の目的及び性質に照らし密行性が要求される捜査の遂行に重大な支障を来す結果となり、これは現行法制度の予定するところではないからとしている。したがって本肢が結論として、違法性を主張して国家賠償請求をすることができるとする部分が誤りである。
25
ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し、実務上の取扱いも分かれていて、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解してこれに立脚して公務を執行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといって、直ちに当該公務員に国家賠償法第1条第1項にいう過失があったものとすることは相当でない。
妥当である。判例は、ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し、実務上の取扱いも分かれていて、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行したときは、のちにその執行が違法と判断されたからといって、ただちに当該公務員に国家賠償法上の過失があったものとすることは相当でないとしている。
26
警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被った場合において、当該追跡行為が国家賠償法第1条第1項の適用上違法であるというためには、追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当であることを要する。
妥当である。判例は、当該事案において警察官の追跡行為が違法であるというためには、当該追跡が職務目的を遂行するうえで不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害の発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを必要としている。
27
保健所に対する国の嘱託に基づいて公共団体の職員である保健所勤務の医師が国家公務員の定期健康診断の一環としての検診を行った場合、当該医師の行った検診行為は国の公権力の行使に当たる公務員の職務上の行為と解すべきであり、当該医師の行った検診に過誤があったため受診者が損害を受けたときは、国は国家賠償法第1条第1項の規定による損害賠償責任を負う。
保健所に対する国の嘱託に基づいて地方公共団体の職員である保健所勤務の医師が国家公務員の定期健康診断の一環としての検診を行った事案において、判例 は、当該医師が行った検診行為は医師が専らその専門的技術及び知識経験を用いて行う行為であって、医師の一般的診断行為と異なるところはないから、特段の事由のない限り、それ自体としては公権力の行使たる性質を有するものではないとしている。したがって、「当該医師の行った検診行為は国の公権力の行使に当たる公務員の職務上の行為と解すべきであり〜損害賠償責任を負う」の部分が誤りである。
28
国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合において、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償責任を負うときであっても、同項は組織法上の公務員ではないが国家賠償法上の公務員に該当する者の使用者の不法行為責任まで排除する趣旨ではないから、使用者は民法第715条に基づく損害賠償責任を負う。
判例は、国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法 709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないとしている。したがって、「同項は組織法上の公務員ではないが〜使用者は民法第715条に基づく損害賠償責任を負う」の部分が誤りである。
29
国会議員は、立法に関し、国民全体に対する政治的責任のみならず、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務も負っていることから、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて該立法を行ったというような特別の事情がなくても、法律の内容が違憲である場合は当該立法が違法となるため、国会議員の立法行為は原則として国家賠償の対象となる。
判例(札幌在宅投票事件)は、国会議員の立法活動が国家賠償の対象となるかという点について、「国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではない」としたうえで、「国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない」と判示している。したがって、「国民全体に対する政治的責任のみならず~原則として国家賠償の対象となる」の部分が誤りである。
30
犯罪の被害者が公訴の提起によって受ける利益は、公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないから、被害者は、検察官の不起訴処分の違法を理由として、国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない。
妥当である。判例は、犯罪被害者が公訴提起によって受ける利益は、公益上の見地に立って行われる捜査または公訴提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないとする。
31
最高裁判所の判例では、検察官がした公訴の提起は、検察官が裁判所に対して犯罪の成否、刑罰権の存否につき審判を求める意思表示であり、検察官の心証は、判決時における心証と異なり、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるから、刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに違法となるものではないとした。
妥当である。最高裁は、本肢の通り判示した。
32
日本国憲法の基本的人権は外国人にも保障されるので、公務員の不法行為による被害者が外国人であるときは、いかなる場合であっても国家賠償法の規定は適用される。
国家賠償法は、「外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限りこれを適用する」とする(相互保証主義、6条)。したがって、「いかなる場合であっても~適用される」の部分が誤りである。
33
工事実施基本計画が策定され、当該計画に準拠して改修、整備がされた河川は、当時の防災技術の水準に照らして通常予測し、かつ、回避し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるだけでは不十分であり、水害が発生した場合において、当該河川の改修、整備がされた段階において想定された規模の洪水から当該水害の発生の危険を通常予測することができなかった場合にも、河川管理者は損害賠償責任を負うとした。
工事実施基本計画に準拠して水害防止工事が完了していたが、その計画に予想される規模を上回る集中豪雨のために水害が発生した事案について判例は「・・・計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性をいうものと解すべきである。・・・改修、整備がされた河川は、その改修、整備がされた段階において想定された洪水から、当時の防災技術の水準に照らして通常予測し、かつ回避し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるべきものであるというべきであり、・・・想定された規模の洪水から当該水害の発生の危険を通常予測することができなかった場合には、河川管理の瑕疵を問うことができない」と判示した(多摩川水害訴訟)。したがって、「河川管理者は損害賠償責任を負うとした」という部分が誤りである。
34
国家賠償法の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態であるが、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合も含み、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれも含むため、国際空港に離着陸する航空機の騒音等による周辺住民の被害の発生は、当該空港の設置、管理の瑕疵の概念に含まれ、当該空港の設置管理者は損害賠償責任を負うとした。
妥当である。本記述のとおり国家賠償法の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態であり、一般には当該営造物を利用する者にとっての安全性を指すと言えるが、判例は「営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきできる」と判示した( 大阪空港訴訟)。
35
国家賠償法にいう公の営造物の管理者は、必ずしも当該営造物について法律上の管理権ないしは所有権、賃借権等の権原を有している者に限られるものではなく、事実上の管理をしているにすぎない国又は公共団体も同法にいう公の営造物の管理者に含まれる。
妥当である。国家賠償法2条にいう「設置又は管理」に該するためには、法律上の管理権又は権原に基づく必要はなく、事実上管理しているといえるのであれば足りるとするのが判例である。
36
医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても、厚生大臣(当時)が当該医薬品の副作用による被害の発生を防止するためにその権限を行使しなかったことが直ちに国家賠償法第1条第1項の適用上達法と評価されるものではなく、副作用を含めた当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、薬事法(当時)の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、当該権限の不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使は、副作用による被害を受けた者との関係において同項の適用上違法となる。
安当である。判例(クロロキン事件)は、行政側の権限不行使があっても、それが直ちに違法となるのではなく、著しく合理性を欠くと認められる場合に初めて違法となるとした上で、本件事茶で厚生大臣が医薬品承認の取消等を行わなかったことは、著しく不合理とはいえないとした。
37
国家賠償法第3条第1項は、公の営造物の設置・管理の費用を負担する者も当該営造物の設置・管理者とともに損害賠償責任を負う旨を規定しているが、国が地方公共団体に財政的支援をする場合、地方財政法上、負担金と補助金は区別されているため、国が当該費用を補助金として交付しているときは、国は同項の費用負担者には該当し得ない。
判例は、国家賠償法3条1項所定の設置費用の負担者には、当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者のほか、この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的にはこの者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められる者であって、当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止しうる者も含まれるとしており、国が当該費用を補助金として交付していたとしても、これら条件を満たす場合は「費用負担者」に該当することになる。したがって、本記述の「該当し得ない」が誤りである。
38
国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、国民の生命身体に対する具体的危険の切迫性など一定の要件が充足される場合には、規制権限の発動が義務付けられ、それにもかかわらず規制権限を行使しなかったときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法第1条第1項の適用上違法となるとするのが判例である。
公務員による規制権限の不行使は、具体的事情の下において、当該権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。したがって、「規制権限の発動が義務付けられ、それにもかかわらず規制権限を行使しなかったときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となる」とする部分が誤りである。
39
国家賠償法第2条第1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含むものであり、営造物の設置・管理者において、このような危険性のある営造物を利用に供し、その結果周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じた場合には、原則として同項の規定に基づく責任を免れることができないとするのが判例である。
妥当である。判例は、一般国道等の道路の周辺住民がその使用に伴う自動車騒音等により受けた被害が、社会生活上受忍すべき限度を超え、道路の設置または管理に瑕疵があるとして原告の損害賠償請求を認めた(国道43号線訴訟)。
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連帯債務・保証債務、債権譲渡・債務引受、債権の消滅
契約法
事務管理・不当利得・不法行為
親族・相続
総論・組織・命令規則・行為
行政強制・行政罰・行政調査、行政計画、行政契約、行政指導、行政手続
行政不服申立て・行政審判、国家賠償法・損失補償
行政事件訴訟法
地方自治、情報公開・個人情報保護法、公物・公務員
国際政治
明治時代
日本経済
国際政治と日本経済
財政・厚生
労働・文部科学
環境・社会問題
平安時代・鎌倉時代
室町〜戦国時代、織豊時代
江戸
明治維新、政策、自由民権運動
明治期の議会、明治外交
大正〜終戦まで
現代日本
近代〜第一次世界大戦前
第一次世界大戦〜現代
地球環境、気候・植生
世界の土壌・農牧業・林業・水産業
鉱物とエネルギー資源・世界の工業
民族・言語・宗教、人口と都市・環境問題
アジアの国々
ヨーロッパ
アフリカ・アメリカ・カナダ、中南米の国々
オーストラリア等の国々、日本
成文法・不文法、法解釈、人権共有主体性、新しい人権、法の下の平等、表現の自由、自由権、社会権、罪刑法定主義
国会・内閣・裁判所
司法改革、刑法、民法、選挙の原則、選挙制度
国際政治
市場構造の区分と企業、市場機構
市場の失敗、GDP、経済成長率と景気循環、国民所得決定論、IS・LM分析
財政の機能、予算制度、財政投融資・租税、公債
地方財政、通貨制度・金融、中央銀行と金融政策、物価の変動
失業と雇用、金融と金融政策、近年の経済政策、国際収支
国際収支と貿易、外国為替のルール、為替相場決定要因と影響
日本の経済推移の指標、主な経済学説
憲法2
1
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1
2
憲法level1
憲法level1その2
憲法level1その3
憲法level1その4
民法level1
民法level1その2
民法level1その3
民法level1その4
民法level1その5
民法level1その6
行政法level1その1
行政法level1その2
行政法level1その3
その1
その2
その3
行政法level1その5
その4
その5
その6
その7
その8
その1
その2
マクロ経済学
マクロ経済学2
ミクロ経済学
その1
その2
その3
その1
憲法
その2
行政法
そのI
その3
文化史
政治学 一問一答
近代ヨーロッパの誕生
16〜18世紀のヨーロッパ
市民社会の成長
ウィーン体制と19世紀の欧米諸国
米ソ冷戦
第二次世界大戦後のアジア
第一次世界大戦からの中東
農作物
エネルギー資源
地形
東アジア
南アジアと西アジア
アフリカ
アングロアメリカ
ラテンアメリカ
オセアニア
財政理論の基礎
日本の財政制度・事情
政党
予算過程
立法過程、政策過程
官僚制
権力分立
財政投融資
租税
公債
古代政治思想・近代政治思想
戦後の日本財政
地方財政
財政事情の国際比較
社会契約論
保守主義・功利主義・自由民主主義
現代政治学・政治システム論・現代政治思想
アメリカ行政学形成から正統派政治学まで
正統派政治学の批判から能率まで
その一
科学的管理法と古典的組織論
人間関係論・現代組織論・
生体の構造
日本の行政組織
行政改革
生体内の代謝
日本の行政改革の流れ
官僚制論
公務員制度
刺激の受容と反応
国際会議
法律そのI
法律その2
経済財政・通商・環境、男女共同参画、白書
観光・防衛・厚生労働・防災、白書
高齢社会・消費者・警察・情報通信、白書
1
アメリカ大統領選・中国・パレスチナ・中東情勢
2
ウクライナ戦争・BRICS・NATO・台湾情勢
韓国情勢・IPEFの発行・ヨーロッパでの選挙
政治学
体内環境の恒常性と調節
政策決定