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マクロ経済学2
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  • 1

    ハロッド=ドーマーモデルでは、現実の成長率が保証成長率に一致する保証はないが、いったん両者が等しくなると、その後も等しい状態が継続する。これはナイフ・エッジ原理とよばれている。

    ナイフ・エッジ原理とは、一度均衡成長経路から乖離すると、その乖離が一層拡大してしまうことをいう。

  • 2

    新古典派成長理論では、労働と資本の代替性が仮定されており、価格調整がはたらくとされているので、保証成長率と現実の成長率は常に一致する。また、価格調整の結果、保証成長率は長期的には自然成長率と一致する。

    妥当である。

  • 3

    新古典派成長理論は、経済成長の源泉として、ハロッド=ドーマーモデルがあげている「貯蓄率の増加」と「人口増加率の増加」の2要素のほかに、「研究開発体制の整備」や「金融資本の充実」をあげている。

    ハロッド=ドーマーモデルが成長の源泉としているのは、「貯蓄率の増加」による資本ストックの増大のみである。また、「金融資本の充実」は新古典派成長理論の経済成長の源泉にはあげられていない。

  • 4

    ハロッド=ドーマーモデルと新古典派成長理論の違いは、生産関数のとらえ方の違いにある。具体的には、マーケットメカニズムがはたらくことで資本労働比率が自由に調整される過程をモデルに織り込んでいるかいないかの違いである。

    妥当である。

  • 5

    新古典派成長理論(ソロー=スワン・モデル)では、固定的な資本係数を前提としていることからマーケット・メカニズムははたらかないので、均衡成長経路は不安定になる。

    ハロッド=ドーマーによる成長理論に関する記述である。

  • 6

    ハロッド=ドーマーによる成長理論では、マーケット・メカニズムがはたらき資本と労働の投入比率が調整され、長期的には保証成長率と自然成長率とが一致する均斉成長が達成される。

    新古典派成長理論(ソロー=スワン・モデル)に関する記述である。

  • 7

    内生的成長理論では、外生的に与えられた技術進歩ではなく、教育や研究体制といったインフラストラクチュアを含む広義の資本ストックの成長が経済成長をもたらすとされる。

    妥当である。新古典派成長理論では経済成長は技術進歩などの外生的な変数に依存して決定し、労働者1人あたりの資本ストックがある水準に均衡するとされるが、このような結論が現実妥当性をもたないとして、内生的成長理論が発展した。

  • 8

    キチン循環は、産業構造の変化によってもたらされると考えられ、周期が短いことから、短期循環や小循環ともよばれており、J.A.シュンペーターによって注目された。

    キチン循環は在庫変動を要因とする景気循環である。

  • 9

    ジュグラー循環は、約3年周期の波とされ、企業の売行き測に基づく企業の在庫の変動がその原因として考えられることから、在庫循環ともよばれる。

    キチン循環の説明である。

  • 10

    クズネッツ循環は、約20年周期の波とされ、住宅や商工業建築の建て替えがその原因として考えられることから、建築循環ともよばれる。

    妥当である。クズネッツ循環とは建築や建設投資の変動を要因とする景気循環である。

  • 11

    コンドラチェフ循環は、約10年周期のとされ、ほぼ設備投資の更新時期と一致して起こることから、設備投資循環ともよばれる。

    ジュグラー循環の説明である。

  • 12

    ハロッド=ドーマー・モデルは、ケインズ体系を動学化したモデルであり、投資のもつ二面性を考慮したモデルである。すなわち、投資についてみると、需要面においては、投資の増加が乗数効果を通じて総需要を拡大させる効果をもち、供給面では投資による資本蓄積で総供給を拡大させる効果をもつ。

    妥当である。これを投資の二重性という。

  • 13

    ハロッド=ドーマー・モデルでは、資本係数は資本1単位が生み出す産出量の大きさを示しており、産出量を資本量で割った値で示される。したがって、資本係数の大きさは、資本量が大きくなるにつれて比例的に低下する。

    ハロッド=ドーマー・モデルでは、資本係数は産出量1単位あたりの資本量の大きさを示しており、資本量を産出量で割った値で示される。したがって、資本係数の大きさは、資本量が大きくなるにつれて比例的に上昇する。

  • 14

    ハロッド=ドーマー・モデルでは、資本の完全利用が維持される産出量の増加率は保証成長率と定義され、資本係数を貯蓄率で割った値で示される。一方、労働人口増加率から技術進歩率を差し引いた値は自然成長率と定義される。このモデルによると、保証成長率と自然成長率が等しくなることは偶然以外にはないとされる。

    ハロッド=ドーマー・モデルでは、保証成長率は貯蓄率を資本係数で割った値で示される。 一方、自然成長率は労働人口増加率に技術進歩率を加えた値で示される。

  • 15

    ハロッド=ドーマー・モデルでは、投資成長率が保証成長率を上回ると、総需要の拡大が総供給の拡大を上回って需要過剰が生じるが、需要過剰が生じると供給不足を解消するため投資が促進され、それが乗数効果を通じて更なる需要拡大をもたらす結果、需要過剰はより大きくなる。

    妥当である。これをナイフエッジ原理(不安定性定理)という。

  • 16

    ある経済において貯蓄率が0.1、必要資本係数が5であるとき、ハロッド=ドーマーの成長理論における均斉成長が維持されている場合の保証成長率は0.02である。

    妥当である。ハロッド=ドーマーの成長理論における均斉成長が維持されている場合の保証成長率は、貯蓄率を必要資本係数で割ることで求められる。貯蓄率が0.1、必要資本係数が5であることより、保証成長率は0.02である。

  • 17

    ハロッド゠ドーマーの成長理論によれば、投資は有効需要を拡大する効果だけでなく、資本ストックの増加を通じて生産能力を高める二重効果があり、投資が伸縮的調整機能をもっため、非自発的失業は発生しない。

    ハロッド=ドーマーは、投資は需要創出効果と、生産能力拡張効果という投資の二重性を考慮して、固定的な資本係数に基づく経済成長理論を展開した。この理論は、労働と資本が非代替的な生産関数を前提としており、両者が過不足なく用いられて経済が成長することは、企業の自由な投資行動に任せておく限りありえないとした。

  • 18

    ハロッド=ドーマーの成長理論において、保証成長率とは完全雇用下の成長率であり、自然成長率とは資本ストックが完全利用されているときの成長率である。

    ハロッド=ドーマーの成長理論において、保証成長率とは、資本ストックが完全利用されているときの成長率である。また、自然成長率とは、労働を完全雇用するときの成長率である。

  • 19

    ハロッド=ドーマーの成長理論によれば、現実の成長率が自然成長率を上回る場合には、労働市場において超過供給が生じる。

    ハロッド=ドーマーの成長理論によれば、現実の成長率が自然成長率を上回る場合とは、現実の成長率が労働を完全雇用する成長率を上回ることである。このとき、労働市場においては、超過需要が生じている。

  • 20

    ハロッド=ドーマーの成長理論は、資本と労働の代替関係を前提としており、現実の成長率は必ず保証成長率と一致するものと考えられている。

    ハロッド=ドーマーの成長理論は、レオンチェフ型生産関数を採用しており、資本と労働の非代替関係を前提としている。また、貯蓄率、資本係数、人口成長率、技術進歩率は外生変数であり、均斉成長の実現は偶然でしかなく、いったん均衡から乖離すると、乖離性が拡大するナイフ・エッジ原理(不安定性原理)を示した。

  • 21

    古典派経済学によれば、貨幣供給量の変化はすべて物価水準の変化によって吸収されるため、貨幣は実物経済に対してまったく影響を及ぼさないとされる。これは()とよばれる考え方であり、貨幣は実物経済を覆うヴェールにすぎない。

    貨幣の中立性

  • 22

    AD-AS分析では、フィリップス曲線を基礎として総需要曲線が導かれる。

    AD -AS分析では、IS-LM曲線を基礎として総需要曲線が導かれる。フィリップス曲線およびオーカンの法則を基礎として導かれるのはインフレ供給曲線である。

  • 23

    45度線分析では、「有効需要の原理」と「セイの法則」に基づいて、国民所得の決定がなされる。

    ケインズ経済学において、45度線分析では「有効需要の原理」に基づいて、国民所得の決定がなされる。「セイ(セー)の法則」は販路法則ともよばれ、生産されたものは市場価格の需給調節機能によって必ず需要され、供給はそれ自らの需要を生み出すという主張のことであり、古典派の経済理論を表わすものである。

  • 24

    失業率と実質賃金の変化率との間のトレードオフ関係を表わした右上がりの曲線をフィリップス曲線といい、イギリスの統計資料をもとにスタグフレーションを実証的に説明したものである。

    フィリップス曲線は失業率と名目賃金の変化率との間のトレードオフ関係を表わした右下がりの曲線である。また、スタグフレーションは失業率と物価上昇率との間の右上がりの関係が発生するケースであり、これは通常のフィリップス曲線では説明のつかないケースである。

  • 25

    フリードマンは、物価上昇率と失業率の間にトレードオフの関係があることを説明するフィリップス曲線の安定性をよりどころに、物価安定と雇用確保の間に一定の関係を見出すことができるとした。

    フリードマンは、フィリップス曲線が人々の期待によって変化する不安定なものであるとした。

  • 26

    フリードマンは、労働市場において、完全雇用の下での自然失業に対応する失業率を非自発的失業率とよび、産業構造の変化や雇用保険制度のあり方によって変化するとした。

    フリードマンは、労働市場において、完全雇用の下での失業に対応する失業率を自然失業率とよんだ。

  • 27

    インフレ率と生産水準との関係を示すインフレ供給曲線は、フィリップス曲線とオークンの法則から導出され、右下がりで示されるが、フィリップス曲線の傾きが大きいほど、その傾きが大きくなる。

    インフレ供給曲線は右上がりで示される。

  • 28

    自然失業率仮説によれば、長期フィリップス曲線は、自然失業率の水準で横軸の失業率に対して垂直であるから、政策当局が景気の拡大をはかっても、失業率は、長期的には自然失業率の水準で一定にとどまる。

    妥当である。

  • 29

    日本の労働統計において完全失業者とみなされるのは求職活動をしている(あるいはその結果を待っている)者のみである。したがって、就職をあきらめて求職活動を打ち切る人が多くなると、失業者数は減ることになる。

    妥当である。

  • 30

    フィリップスは、縦軸に名目賃金上昇率、横軸に失業率をとってイギリスの名目賃金上昇率と失業率のデータを並べ、点が機軸に垂直に並ぶことを発見した。このことから、失業率に影響を与えるのは実質賃金のみであることが明らかになった。

    点が横軸に垂直に並ぶのは、長期フィリップス曲線である。これは、縦軸にインフレ率、横軸に失業率をとって、自然失業率の水準で垂直な直線として描かれる。

  • 31

    フリードマンによる自然失業率仮説とは、貨幣錯覚による失業率の変化は一時的であって、いずれ失業率は自然失業率の水準に戻ってくるというものであり、これは裁量的金融政策が長期的には無効であるということを意味するものである。

    妥当である。短期的には、労働者は貨幣賃金の上昇を実質賃金の上昇と錯覚し、労働供給を増加させ、失業率が低下する。しかし、長期的にはその錯覚は解消し、労働供給を減少させるため、再び失業率は上昇する。

  • 32

    ベバリッジ曲線とは求職者数と求人数の間に負の相関があることを示す曲線であり、労働市場におけるミスマッチが大きくなるほどこの曲線が原点側に近づくことが知られている。

    ベバリッジ曲線とは、失業率と未充足求人率を比較して労働市場における摩擦的失業を推定するものであり、労働市場におけるミスマッチが大きくなるほどこの曲線は原点から離れる。

  • 33

    オークンの法則とは物価上昇率と失業率が自然失業率を上回る程度との間に安定的な負の相関があるというものであり、程度の差はあっても先進国で広くみられる関係である。

    オークンの法則とは、完全雇用国民所得と国民所得のギャップと、失業率と自然失業率のギャップの間に存在する負の相関関係である。この法則によれば、失業率が増大すると、国民所得が減少し、完全雇用国民所得と国民所得との差が増大する。

  • 34

    フィリップス曲線は、名目賃金率の上昇率と失業率との関係について、名目賃金率の上昇率が高いときには失業率が高く、名目賃金率の上昇率が低いときには失業率が低いという、正の相関にあることを示したものである。

    フィリップス曲線は、名目賃金率の上昇率と失業率との間に負の相関(トレード・オフ)があることを示している。

  • 35

    ケインズ派は、拡張的金融政策は、短期的には失業率を低下させるが、長期的には効果がなく、失業率を低下させないうえに、高いインフレ率だけを残すとした。

    総需要拡大政策が短期的には有効でも長期的には無効であることを主張したのは、ケインズ派ではなくマネタリストのフリードマンである。

  • 36

    合理的期待形成学派は、民間の各経済主体が利用可能な経済情報を活用して一般物価水準の上昇率を完全に予想できる場合、財政政策は何の効果も持たず、短期的にも失業率の変化はないとした。

    妥当である。

  • 37

    古典派雇用理論は、失業の主原因である総需要不足をマクロ需要拡大によって減少させ、労働力の質的ミスマッチに対してはミクロ的労働市場政策によって対処することで、インフレなき完全雇用の維持が可能であるとした。

    失業の主原因を総需要不足であるとしたのは、古典派雇用理論ではなくケインズ理論である。

  • 38

    自然失業率仮説によれば、人々は正確にインフレ率を知ることができるため、フイリップス曲線は自然失業率の水準で垂直となり、政府の需要拡大政策は短期的にも長期的にも無効であるとされる。

    自然失業率仮説とは、失業率を低下させるための政策を政府が講じたとしても、失業率は一時的にしか低下せず、最終的に自然失業率に戻るという主張である。

  • 39

    物価版フィリップス曲線は、インフレ率と失業率の間に成立する右下がりの関係で、失業率を低くするとインフレ率が高まり、インフレ率を抑制すると失業率が高まるというトレード・オフの関係がある。

    妥当である。

  • 40

    合理的期待形成仮説は、1970年代アメリカの経済学者ルーカスとサージェントが主張した仮説で、現代社会では、人々は貨幣を合理的に利用して将来を予想するとした。

    合理的期待形成仮説は、人々は収集可能な情報を集め、それを合理的に利用して将来を予想するとしている。この場合、現実のインフレ率は、攪乱要因が働かない限り、期待インフレ率と一致するので、フィリップス曲線は、自然失業率の水準で垂直な直線となる。

  • 41

    自然失業率仮説は、マネタリストのフリードマンが主張し、フィリップス曲線を短期と長期に分け、失業率は短期的には自然失業率と等しくなり、短期フィリップス曲線は垂直な直線になるとした。

    フリードマンの自然失業率仮説では、失業率は、短期的には期待インレ率と現実のインフレ率が乖離することで、自然失業率と乖離するとしても、長期的には、人々が期待インフレ率を修正するので、失業率は自然失業率と一致するとしている。そのため、短期フィリップス曲線は右下がりとなり、長期フィリップス曲線は、自然失業率の水準で垂直な直線となる。

  • 42

    自然失業率は、労働市場において雷要と供給が一致した状況での失業率で、自然失業率のもとでの失業とは、摩擦的失業や非自発的失業であり、自発的失業ではない。

    自然失業率は、完全雇用と両立する失業率であり、労働市場において需給が一致しているもとでの失業率である。したがって、自然失業率のもとでの失業には摩擦的失業や自発的失業が含まれるが、非自発的失業は含まれない。

  • 43

    オークンの法則は、経済成長率と失業率との関係を示す法則で、アメリカ経済において1%の雇用の増加は生産量を3%増加させることを実証し、生産量と失業率の間には正の関係があるとした。

    オークンの法則は、GDPギャップ(GDPと潜在的GDPとのギャップ)と失業率との関係を示す法則である。両者には負の相関関係があるとされる。

  • 44

    IS-LM分析においては、貨幣供給量を増加させる金融政策と財政支出を拡大する財政政策とでは、国民所得や利子率に与える効果は同一となるのが一般的である。

    貨幣供給量を増加させる金融政策を実施した場合、LM曲線は右方へシフトするため、国民所得は増加し、利子率は低下する。一方、財政支出を拡大する財政政策を実施した場合、IS曲線は右方へシフトするため、国民所得は増加し、利子率は上昇する。

  • 45

    ケインジアンは、マクロ経済の動向に対応して財政・金融政策を裁量的に行うのではなく、政策にルールを持ち込むことを重視する一方、新古典派は、裁量的な財政・金融政策の実施を重視している。

    ケインジアンは裁量的経済政策を重視する一方、新古典派はルールに基づく経済政策を重視している。

  • 46

    マンデル=フレミング・モデルにおいて、貨幣供給量を増加させる金融政策について、 ①閉鎖経済における効果と②変動相場制の下の開放経済における効果を比較すると、一般的に②は①の効果に加えて、自国の金利低下が自国の通貨安を引き起こし輸出増をもたらすことから、②は①と比較して需要を増やす効果が大きい

    妥当である。貨幣供給量を増加させる金融政策を実施した場合、LM 曲線の右方シフトによって利子率が低下し、これにより資本の流出が起こり、国際収支が赤字化する。これは自国通貨売り・外国通貨買いをまねき、為替レートが減価する。為替レートの減価は輸出を増加、輸入を減少させるため、経常収支を改善させる。経常収支は財市場における需要項目なので、このことはIS曲線を国内利子率が外国利子率と一致するまで右方シフトさせる。

  • 47

    M.フリードマンは、フィリップス曲線の形状について、縦軸を物価上昇率、横軸を失業率としたとき、短期においては予想インフレ率と現実のインフレ率が等しくなることから垂直となり、長期においては予想インフレ率と現実のインフレ率との間に乖離が生じることから右下がりとなるとし、長期フィリップス曲線に基づいて失業対策を行うべきとした。

    M. フリードマンの自然失業率仮説によれば、短期においては予想インフレ率と現実のインフレ率との間に乖離が生じることから右下がりとなり、長期においては予想インフレ率と現実のインフレ率が等しくなることから垂直となる。

  • 48

    トービンとボーモルは、在庫理論アプローチにより、取引動機に基づく貨幣需要は、所得のみならず利子率にも依存するとした。

    妥当である。貨幣書要の在庫理論アプローチとは、企業の在庫管理理論を貨幣需要に応用したものであり、ポーモルやトービンによって提唱された。企業は円滑な販売を行うために常に一定量の商品在庫を保有するが、それと同様に貨幣需要者(家計や企業)は円滑な取引を行うために常に一定量の貨幣を「在庫」として保有する。在庫として財布や金庫に保有する貨幣は少なすぎれば取引に支障を来たし、多すぎれば無駄になる。貨幣需要者は在庫としての貨幣量を最適化するように貨幣需要を行うことになる。貨幣の保有形態として、現金と預金の二つを考えると、取引のために預金を引き出すことは、そのまま預金し続ければ得られたはずの利子収入を放棄することになる。ここで利子率の上昇は放棄せざるを得ない利子収入の増加を意味するので、取引のための貨幣需要を抑制することになる。よって、取引貨幣需要は利子率の減少関数となる。なお、ケインズの流動性選好説(貨幣需要理論)によれば、取引貨幣需要は利子率に依存するものではないが、貨幣需要関数(流動性選好関数)自体が利子率の減少関数であるという点で、在庫理論アプローチは流動性選好説と矛盾するものではない。

  • 49

    フィッシャーは、現金残高方程式により、貨幣需要は、国民所得と人々が所得のうち貨幣の形態で保有したい割合により決定されるとした。

    現金残高方程式はケンブリッジ方程式ともよばれ、ケンブリッジ大学のマーシャルによって提唱された。現金残高方程式は次式で示され、 M=kPY (M:貨幣供給量、P:物価水準、Y:生産量、k>0:マーシャルの) 左辺は貨幣供給、右辺は貨幣需要を表わしており、貨幣需要は、国民所得PYと人々が所得のうち貨幣の形態で保有したい割合により決定されるとした

  • 50

    マーシャルは、資産を貨幣という安全資産と株式等の危険資産の2つに分類し、貨幣需要は資産の期待収益率と危険度とを勘案した結果生じるとした。

    トービンのポートフォリオ・セレクション理論に関する記述である。トービンは、資産を貸幣という安全資産と株式をはじめとする債券のように価格変動のある危険資産の2つに分類した。貨幣需要者は債券から得る収益の最大化をはかる一方、債券価格の変動にともなう危険を回避するために安全な資産である貨幣を保有しようとするため、この結果、貨幣需要が決定されるとした。

  • 51

    フリードマンは、資産の保有形態を貨幣と債券に限定し、貨幣の流通速度は、利子率に依存せず、貨幣需要に影響を与えないとした。

    フリードマンの新貨幣数量説に関する記述である。フリードマンは、資産の保有形態を貸幣と債券だけでなく、その他の種々の資産(株式、物的資本、人的資本)に広げ、貨幣の流通速度が利子率だけでなくその他の資産の収益率にも依存しているとした。

  • 52

    ケインズは、取引動機と予備的動機に基づく貨幣需要は主として利子率に依存し、投機的動機に基づく貨幣需要は所得水準に依存するとした。

    ケインズの流動性選好説によれば、利子率に依存するのは投機的動機に基づく貨幣需要であり、所得水準に依存するのが取引動機と予備的動機に基づく貨幣需要である。

  • 53

    政府が財政赤字をまかなうために、長期国債を発行し、これを民間の銀行に引き受けさせる形で市中消化する場合、国債発行額に見合う現金通貨が供給されることになり、LM 曲線は左方にシフトする。

    国債を市中消化する場合、現金通貨の供給は行われないため、LM曲線はシフトしない。国債を中央銀行引受けにした場合、中央銀行は貨幣の増発によって国債を引き受ける。このため、国債発行に見合う現金通貨が供給されることになりLM曲線は右方にシフトする。

  • 54

    市場利子率が低くなると、流動性のわなが生じる可能性がある。その場合、利子率の水準にかかわりなく貨幣保有が選好されるので、貨幣需要の利子弾力性はゼロになる。

    流動性のわなが生じた場合、貨幣需要の利子弾力性は無限大となる。

  • 55

    マーシャルのkは経済活動において国民所得を生み出す過程で、その経済に投入された貨幣ストックが何回回転したかを表わすものである。

    マーシャルのkは貨幣ストックが何回回転したかを表わす所得流通速度の逆数である。

  • 56

    金融政策により預金準備率が引き上げられると、金融機関は準備金を増やすことができるので、それに応じて貸出を増やすことができるために、預金通貨の増加を促す。

    預金準備率の引き上げは、金融機関の貸出可能資金の減少を通じて、預金通貨を減少させる。

  • 57

    人々が将来の予期せざる支出に備えるべく貨幣を保有することを、予備的動機にもとづく貨幣需要という。これは所得の増加関数と考えられる。

    妥当である。

  • 58

    中央銀行の買いオペレーションの売り手が市中銀行の場合、市中銀行の預金準備が増加するが、売り手が企業や家計の場合、現金保有が直接的に増加することはない。

    中央銀行による買いオペレーションの売り手が企業や家計の場合でも、債券購入代金が売り手に渡るため、現金保有が直接的に増加する。

  • 59

    中央銀行による法定準備率の引き上げは、民間に出回るマネーストックの量を増やす。

    中央銀行による法定準備率の引き上げは、民間に出回るマネーストックの量を減らす。法定準備率の引き上げは金融引き締め政策であり、他には売りオペレーションがあげられる。

  • 60

    中央銀行が買いオペレーションを実施した場合、貨幣需要の利子弾力性が小さいほど、貸幣供給量の増大による利子率の下落も小さくなる。

    貨幣需要の利子弾力性が小さいほど、LM 曲線の傾きは急になり、中央銀行の買いオペレーションによって貨幣供給量が増大する場合、利子率の下落は大きくなる。

  • 61

    積極的な金融緩和政策を行っても、流動性の罠に陥っている場合には、利子率の低下は起こらない。

    妥当である。流動性の罠に陥っている場合とは、貨幣需要の利子弾力性が無限大のときであり、金融政策は無効となる。したがって、金融緩和政策を行ったとしても、利子率の低下は起こらない。

  • 62

    いわゆる流動性のわなの状況にある経済においては、金融緩和政策の有効性が通常より大きくなるとされる。

    IS-LM分析に基づけば、いわゆる流動性のわなの状況にある経済においては、LM曲線は水平となる。よって、金融緩和政策は無効となる。

  • 63

    日本銀行によるゼロ金利政策とは、基準割引率及び基準貸付利率(かっての公定歩合)を限りなくゼロに近づける政策である。

    日本銀行によるゼロ金利政策とは、金融機関どうしで短期資金の取引を行うインターバンク市場における短期金利である無担保コール翌日物レートをほぼ0%で推移させる政策である。

  • 64

    アナウンスメント効果とは、政策が公表された時点で経済主体がそれを織り込んで行動する結果、実際の政策発動前に表われる効果のことである。

    妥当である。

  • 65

    テーラー・ルールとは、短期の利子率をインフレ率のみに依存して決定するルールであり、多くの国の金融政策がこのルールにしたがってきたとされている。

    テーラー・ルールとは、テーラーによって提唱された金利設定ルールであり、短期の利子率をインフレ率だけでなく、目標インフレ率や実際のGDP、潜在的GDPにも依存して決定するルールである。

  • 66

    インフレーションは、意図していない所得の再分配を発生させるが、その理由の一つは、実質負債残高が増加し、一般的に債務者の限界支出性向は債権者のそれを上回るため、実質資産を債務者から債権者へ再分配することになるからである。

    インフレーションが発生すると、実質負債残高が減少する。このことは、実質資産が債権者から債務者へ再分配されることを表わす。

  • 67

    インフレーションは、実質利子率の低下をもたらすため、貸し手が損失を回避するためには、名目利子率を上昇させる必要がある。

    妥当である。フィッシャー方程式によれば、名目利子率から期待インフレ率を差し引いたものが実質利子率であり、インフレーションによって、実質利子率は低下する。したがって貸し手が損失を回避するためには、名目利子率を上昇させることが必要である。

  • 68

    インフレーションは、貨幣をもつことで得られる便益を減少させ、貨幣保有量を減らす誘因となるが、その理由の一つは、インフレーションが貨幣価値を下落させるためである。

    妥当である。

  • 69

    インフレーションは、税制の歪みをもたらすが、その理由の一つは、設備投資に対する減価償却の控除額が過大評価されることになるからである。

    減価償却の控除額は、購入時の価格をもとに算出する。したがって、インフレーションが発生して売上高が大きくなったとしても、減価償却の控除額が過小評価されることになり、支払税額が大きくなる。

  • 70

    ケインズは、実質賃金率に下方硬直性があると仮定し、非自発的失業が生じると主張した。

    誤りである。ケインズは、実質賃金率ではなく、「名目」賃金率に下方硬直性があると仮定し、非自発的失業が生ずると主張した。

  • 71

    古典派では、労働の超過供給が発生した場合、実質賃金率が低下するので、完全雇用が実現すると主張した。

    妥当である。古典派では、市場の需給不均衡は常に価格によって調整されるとしている。 よって、労働市場で超過供給が発生しても実質賃金率が低下するので、常に完全雇用が実現し、非自発的失業は生じないと考えた。

  • 72

    購買力平価説によると、日本の利子率が5%で、アメリカの利子率が3%であるとき、円ドルレートは2%で円安に動いていく。

    購買力平価説では、利子率が為替レートに影響を与えるとは考えていない。

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