代執行とは、義務者の義務の不履行があった場合に直接に ) 義務者の身体または財産に実力を加え、義務の履行があった のと同一の状態を実現する作用をいう。

行政代執行とは、行政上の義務の賦課行為を介在させず、 直接に国民の身体または財産に実力を加え、行政上必要な状 態を作り出す作用をいう。

代執行の対象となる義務は、法令または行政処分に基づく 代替的作為義務および不作為義務である。

無許可営業をしている者の不作為義務については、営業停 止命令を出すことにより作為義務に変更すれば、行政代執行 法に基づき代執行をすることができる。

家屋を除去すべき義務のある者がその義務を履行しない場 合に、行政庁が自ら当該家屋を強制的に除去し、その除去に 要した費用を義務者から徴収するのは、行政上の即時強制の 事例である。

届出義務の不履行に対しては、代執行の手続の1つである 戒告により、履行の確保が図られている。

行政上の代執行については、行政代執行法がその一般法で あるので、他の法律に特別の定めがない限り、当然に行政代 執行法が適用される。

行政代執行法の定める手続的要件は、憲法上の要請と解さ れているので、個別の法律で簡易代執行を認めることはでき ない。

代執行の対象とされる義務は、法律(法律の委任に基づく 命令、規則及び条例を含む。)により直接命じられ、または 法律に基づき行政庁により命じられたものでなければならな い。

行政代執行法に基づく代執行の対象となる義務は、「法律」 により直接に命じられ、または「法律」に基づき行政庁によ り命じられる代替的作為義務に限られるが、ここにいう「法 律」に条例は含まれない旨があわせて規定されているため、 条例を根拠とする同種の義務の代執行については、別途、そ の根拠となる条例を定める必要がある。

行政代執行法によれば、代執行が行われるのは、代替的作 為義務の場合に限られるので、その他の義務の履行確保につ いては、別に法律で定めることを必要とする。例えば、代執 行以外の義務の履行確保手段の一つとして直接強制が挙げら れるが、これは、義務者の身体又は財産に直接実力を行使し て、義務の履行があった状態を実現するものである。

公物の占用許可を取り消された者は、当然に占用物件を除 去すべき義務を負うので、当該義務の不履行がある場合に は、代執行によって当該占用物件を除去することができる。

代執行が行われるのは、義務の履行がなく、他の手段によ ってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履 行を放置することが著しく公益に反すると認められるときに 限られる。

行政庁により命じられた行為について代執行の権限を有す るのは、義務者に対して行為を命じた当該行政庁である。

代執行は、行政庁が義務者に代わって自ら行わなければな らず、第三者にこれを行わせることはできない。

行政代執行法に基づいて代執行を行うには、原則として、 義務の履行期限を明示し、予め文書による戒告を行わなけれ ばならない。

代執行をするには、代執行を行うことを義務者に対し、予 め文書で戒告するか、または直接口頭で戒告しなければなら ない。

代執行をするには、常に、あらかじめ戒告および代執行令 書による通知を行わなければならない。

代執行を行うには、あらかじめ文書で戒告しなければなら ないが、非常の場合または危険切迫の場合においては、口頭 で戒告することもできる。

代執行のために現場に派遣される執行責任者は、執行責任 者たる本人であることを示す証票を携帯し、要求があるときは、いつでもこれを呈示しなければならない。

代執行のために現場に派遣される執行責任者は、その者が 執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯しなけ ればならず、代執行を行う際には、必ずこれを呈示しなけれ ばならない。

代執行に要した費用の徴収については、原則として文書を もってその納付を命じなければならないが、口頭で命じるこ とができる場合もある。

代執行に要した費用については、義務者に対して納付命令 を発出したのち、これが納付されないときは、国税滞納処分 の例によりこれを徴収することができる。

義務者が代執行に要した費用を納付しない場合は、国税滞 納処分の例により徴収し、徴収した費用は、すべて国庫の収 入となる。

公法上の金銭債権について法律で行政上の強制徴収の手段 が認められている場合でも、一般私法上の債権と同様に裁判 所に訴えを提訴して当該債権の実現を図ることができる。

行政上の義務の履行を確保するために行政代執行が行われ、 行政上の目的が達成された場合は、その義務違反に対し更に 行政罰を科することはできない。