行政罰は、行政上の過去の義務違反に対する制裁であり、 義務履行確保の手段としても役立ち得る。

行政罰とは、行政法上の義務違反に対し、一般統治権に基 づいて、制裁として科される罰をいう。

公務員の懲戒免職処分は、行政刑罰の一種である。

刑事罰の対象となる行為は、それ自体が反道義性、反社会 性を有するものであるのに対し、行政罰の対象となる行為は、 行政上の目的のためにする命令禁止に違反するために、反社 会性を有するものである。

行政罰と執行罰にはいくつかの相違点があるが、過去の行 政上の義務違反に対する制裁として科される点では共通して いる。

行政罰には、行政上の秩序を維持するための罰の一種とし ての過料がある。

行政上の義務の履行確保手段には、間接的強制手段とし て、行政罰がある。その中で秩序罰では、届出、通知、登記 等の義務を懈怠した場合などに科される闘である。

義務不履行者には刑事罰が科されることが原則であり、 罰則の間接強制により行政処分の実効性が確保される。

「法律なければ、刑罰なし」の原則 (罪刑法定主義)は、 刑事罰についてのみ適用され、行政罰には適用されない。

行政罰のうち秩序罰としての過料を科するためには、法律 の根拠を必要としない。

行政罰は、地方公共団体の自治立法である条例により科す ことはできない。

行政刑罰については、法令に特別の規定がある場合のほかは、原則として刑法総則が適用され、裁判所において刑事訴 訟法の定める手続により科される。

過料は、法律において規定されているほか、普通地方公共 団体の長の制定する規則においても定めることができる。

普通地方公共団体の過料は、普通地方公共団体の長が行政 行為の形式でこれを科し、地方税の滞納処分の例によって強 制徴収される。

地方自治法に定める過料は、非訟事件手続法の定めるとこ ろにより地方裁判所において科される。

行政上の秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与える危険が ある義務違反に対して料される罰であるが、刑法上の罰では なく、国の法律違反に対する秩序罰については、非訟事件手 続法の定めるところにより、所定の裁判所によって科され る。

行政上の秩序罰として行政庁が過料を科することがあるが、 これについては、刑法総則の適用はない。

過料は、刑法総則の適用はないが、これを科すには刑事訴 訟法に定める手続による必要がある。

行政刑罰には刑事罰とは異なって、違反行為者だけでなく、 その使用者や事業主にも科刑する規定が置かれる場合がある。

行政上の秩序罰としての過料と行政刑罰とは、併科するこ とができないとするのが最高裁判所の判例の立場である。

行政罰は、懲戒罰と併科することができる。