放火罪にいう「放火して」とは、広く目的物の焼損に原因力を与える行為 をいい、積極的に直接目的物又は媒体物に点火する行為のほか、既に発火し ている目的物に油を注ぐなどして、その燃焼を助長させる行為も含まれる。◯
「放火」とは、目的物の焼損を引き起こさせる行為をいうが、これは、 積極的な放火行為に限らず、不作為によって行われる場合でもよい。◯
放火罪の故意としては、客体の焼損を認識・予見し、これを実現し ようとする意思を要するが、判例は、公共の危険発生の認識までは要 しないとしている。◯
1個の放火行為により、所有者の異なる複数の現住建造物を焼損した場合であっても、1個の公共的法益を侵害したにすぎないときは、 現住建造物等放火罪の単純一罪が成立する。◯
放火予備罪は、実行行為に着手する前の予備行為を処罰するものである が、現住建造物等放火罪はもとより、非現住建造物等放火罪及び建造物等以外放火罪の予備行為も含むとされている。✕
放火予備罪が成立するには、現住建造物等放火罪又は他人所有非現住建造物等放火罪を犯す目的を必要とするところ、自己所有の非現住建造物等に放火する目的であっても、それが差押えを受けている場合には、放火予備罪が成立する。◯
放火の罪における予備とは、放火の着手前に準備行為をすることを いい、例えば放火するための材料を持って放火場所をうろつく行為が これに当たる。◯
放火予備罪の成立には、放火の実行の意思とこれを実行に移す準備としての外部的行為を要するので、例えば、数人で人の住居に放火する目的でガソリンを携帯して集合すれば、その時点で本罪が成立する。◯
放火予備罪は、放火に着手する前、すなわち火を放つ前の準備行為を処罰しようとするものであるが、現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪のみがその対象となっている。◯
放火罪は、目的物を焼損することによって既遂に達するが、この既遂時期について、判例は、一貫して独立燃焼説の立場に立っており、不燃性の建造物であっても、容易に取り外しができない窓枠や階段の手すり等その一部が木材等の可燃物で構成されており、その可燃物が独立して燃焼すれば既遂に達するとしている。◯
現住建造物放火の故意で、建造物の中にガソリンを散布した場合、具体的危険が生じたといえるときには、放火の実行の着手が認められる。◯
現住建造物等放火罪の実行の着手は、目的物に直接点火した場合のみならず、その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得べき状態において、媒介物である可燃性の導火材料に点火する場合でも認められるところ、ガソリンあるいは可燃ガスのように、引火性の高い物質を導火材料として、これを散布又 は放出し、既存の火源によりそれが引火して目的物の焼損に至る現実的危険性を生じさせたときは、行為者による点火行為の前であっても、実行の着手が認められる。◯
現住建造物等放火罪の客体である「建造物」について、外観上、複数の建物とみえる場合でも、それが近接し、あるいは廊下等で接続され、物理的・ 構造的に一体となっているため、その一部を焼損することによって、住居性を備えた部分への延焼可能性を肯定できる場合には、全体として現住建造物と認めることができる◯
現住建造物等放火罪の客体は、「現に人の住居に使用し」又は「現に人がいる」建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑でなければならない。 本罪は故意犯であり、現に人の住居に使用されているという事実の認 識のほかに、人が現在しているという事実を認識すること、及び客体に火を放って焼損するという事実を認識することが必要である。
✕
現住建造物等放火罪の客体は、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」 建造物等であり、犯人のみが単独で住居に使用し犯人のみが現在する建造物 も同罪の客体となる。✕
犯人のみが単独で住居に使用し、又は犯人のみが現在する建造物等は、現住建造物等放火罪の客体にはならず、ここにいう犯人には共犯者も含まれる。◯
現住建造物等放火罪の客体は、「現に人の住居に使用し」又は「現に人がいる」建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑でなければならない。 本罪は故意犯であり、現に人の住居に使用されているという事実の認識のほかに、人が現在しているという事実を認識すること、及び客体に火を放って焼損するという事実を認識することが必要である。
✕
現住建住物等放火罪の客体は、「現に人が住居に使用し」又は「現に人がいる」建造物等でなければならないところ、ここにいう「住居」とは、人の起臥寝食に日常使用する場所をいうから、住居としての使用が不断に継続していることが必要となる。✕
現住建造物等放火罪の故意は、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等であることの認識に加え、客体に放火して焼損させることの認識が必要であるところ、現に人が存在しているかどうかの確定的な認識は不要であ る。◯
現住建造物等放火罪の故意としては、現に人が住居として使用していること又は現に人が中にいることの認識が必要であるが、その認識は未必的なもので足りる。◯
現住建造物等放火罪は、放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等を焼損した場合に成立するところ、現住建造物について、唯一の住人である建物所有者の承諾を得て放火した場合には、現住建造物等放火罪ではなく自己所有非現住建造物等放火罪が成立する。◯
現住建造物が燃焼することを認識・認容して放火した以上、その行為の結果、公共の危険が発生することを認識していなくても、現住建 造物等放火罪の故意は認められる。◯
現住建造物等放火罪の故意について、判例は、建造物の一部が住居であり、住居以外の部分を焼損する意思で放火した場合であっても、建造物全体が1個の建造物であることを認識していれば、現住建造物等放火罪についての故意があるとしている。◯
現住建造物等放火罪の既遂時期について、それが鉄筋コンクリート 造りの不燃性建造物の場合、判例は、その内部の可燃性部分のみが、 独立して燃焼しただけでは既遂に至らないとしている。✕
現住建造物等放火罪は、公共危険罪であるから、建造物等の所有者の承諾が存在しても放火罪の構成要件該当性ないし違法性は否定されないが、被害者の同意が放火罪の解釈に全く影響しないわけではなく、例えば、他人が1人で住む現住建造物につき、その者の同意を得て放火した場合には、現住建造物等放火罪ではなく、自己所有非現住建造物等放火罪が成立する。◯
現住建造物等に放火するつもりで、同敷地内に隣接する倉庫に放火 した場合は、目的とした住宅に延焼することはなかったとしても、当該倉庫部分が焼損したときは、現住建造物等放火未遂罪が成立する。◯
現住建造物等を焼損する意思で、隣接する非現住建造物等に放火した場合、後者が独立してその燃焼を継続する段階に至れば、たとえ目的とした現住建造物等に火が燃え移らなかったとしても、現住建造物等放火未遂罪の一 罪が成立し、非現住建造物等放火罪はこれに吸収されて成立しない。◯
現に人が居住する家屋を焼損する目的で雨戸に放火したが、雨戸を焼損するにとどまった場合、雨戸は建造物の一部とはいえないので、現住建造物等放火罪の未遂となる。◯
放火罪は、客体により現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪及び建造物等以外放火罪に大別されるが、このうち非現住建造物等放火罪については、客体が自己所有の場合は具体的危険犯、他人所有の場合は抽象的危険犯とされている。◯
放火罪の行為である「放火」には、直接その目的物に点火し発火させる行為だけでなく、既に火がついているところに油を注ぐような、既発の火力の勢いを助長し増大させる行為も含まれる。◯
建造物等以外放火罪は、放火して、建造物・艦船・鉱坑及び現に人がいる汽車・電車以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせたときに成立す るところ、同罪の故意が認められるためには、上記の物に火を放ち、これを焼損することについての認識に加え、公共の危険が生ずることについての認識が必要となる。✕
建造物等以外放火罪の客体については、刑法110条が「前2条に規定する物以外の物」と定めており、自動車、航空機等がこれに該当するところ、 無人の電車に放火してこれを焼損し、よって具体的な公共の危険を発生させ た場合にも、同罪が成立する。◯
建造物等以外放火罪は具体的危険犯であり、焼損のほかに公共の危険が具体的に発生したことを必要とする。例えば、駐車場に駐車して いる自動車に放火して、同車両を焼損したが、具体的な公共の危険は発生しなかった場合には、建造物等以外放火未遂罪となる。✕
建造物等以外延焼罪は、自己所有の建造物等以外の物に放火しこれを焼損して公共の危険を発生させ、他人所有の建造物等以外の物に延焼させることで成立するところ、延焼についての故意がある場合にも同罪が成立する。✕
建造物等以外放火罪の既遂時期は、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達した時ではなく、人の生命、身体、財産に対する具体的な公共の危険が発生した時である。◯
建造物等以外放火罪については、公共の危険の発生を構成要件要素として いるため、未遂犯の処罰規定がなく、また、客体が自己所有であるか否かに より、法定刑に差異がある。◯
建造物等以外放火罪は具体的公共危険罪であるから、他人の所有物に放火しても、公共の危険が発生しなければ、同罪は成立しない。◯
建造物等以外放火罪が成立するためには、故意の要件として、公共の危険が発生することの認識を要しないとするのが、判例の立場である。◯
建造物等以外放火罪は、他人の物よりも自己の物の方がその法定刑は軽減されている。◯
自己所有非現住建造物等放火罪は抽象的危険犯なので、本罪が成立するためには客体を焼損するのみで足り、公共の危険を現実に発生させる必要はない。✕
自己所有非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪は、具体的公共危険罪とされている。これら具体的公共危険罪においては、公共の危険発生について、焼損の結果、公共の危険を発生させることまでを行為者が認識することは不要であるとするのが判例である。◯
自己所有非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪は、具体的公共危険罪とされている。これら具体的公共危険罪においては、公共の危険発生について、焼損の結果、公共の危険を発生させることまでを行為者が認識することは不要であるとするのが判例である。◯
自己所有非現住建造物等放火罪における、「自己の所有に係る」とは、建造物等が犯人の所有に属することをいう。自己所有の建造物等であっても、 これが差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は保険に付したものである場合においては、他人所有非現住建造物等放火罪の客体となる。◯
火災保険を掛けた自己所有の非現住建造物等を焼損した場合には、 「刑法109条1項」の非現住建造物等放火罪が適用され、この場合、公共の危険が現実に発生したかどうかの判断は不要となるが、目的物に火災保険が掛けられていることの認識が必要であるので、その認識がなか った場合には、刑法109条1項の非現住建造物等放火罪は成立しない。◯
他人所有の非現住建造物等放火罪は、具体的危険犯であるため、人の生命、身体、財産に具体的な危険があることが必要である。✕
非現住建造物等放火罪の客体のうち、自己の所有に属するものに放火した 場合であっても、それが保険に付したものであるときは、他人所有非現住建造物等放火罪の客体となる。◯
非現住建造物であると認識し、建造物に放火して燃焼させたところ、 実際には現住建造物であった場合には、現住建造物等放火罪を犯す故意が認められないので、非現住建造物等放火罪が成立するにとどまる。◯
失火罪の罪数について、1個の失火により、現住建造物等と他人所有の非現住建造物等を焼損した場合は、建造物等失火罪の包括一罪となり、自己所有の非現住建造物等と建造物等以外の物を焼損して公共の危険を生じさせた 場合は、自己所有非現住建造物等失火罪の包括一罪となる。◯
火災の際に、消火用の物を隠匿・損壊し、又はその他の方法により消火を妨害したときには、消火妨害罪を構成するところ、放火犯人が、更に自ら進んで消火妨害行為をした場合、当該行為は放火の罪を完全に遂行しようとするものであるから、消火妨害罪は放火の罪に吸収されて成立しない。◯
業務上失火罪における「業務」とは、職務上常に火気の安全に配慮すべき 社会生活上の地位をいうので、本罪の主体である業務者は、調理師やボイラーマンなど直接に火気を取り扱う者、ガソリン取扱業者など火気発生の可能性の高い物質・器具を取り扱う者に限られず、警備員やホテルの支配人など火災の発見・防止を任務とする者も含まれる。◯
建造物等失火罪にいう「失火により」とは、過失により火を放つという意味であるところ、例えば、たばこの吸殻を紙くず籠の中に投げ捨てるなどの作為による場合のほか、アイロンを使用した後に通電したまま外出するな ど、使用済みの火気の後始末を怠り、あるいは、火災を生じ得べき事態を発見したにもかかわらず、狼狽したため適切な消火措置をとらなかったなどの不作為による場合も含まれる。◯
業務上失火罪にいう業務とは、人が社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う行為であって、かつ他人の生命・身体等に危害を加え得るものであることを要する。◯
マンションの内部に設置された鋼鉄製エレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面の化粧で火を 一部を焼失させた場合、現住建造物等放火罪が成立する。◯
アパート所有者甲は、同アパート居住者Aが家賃を滞納し、再三の立退き要求にも応じないことに憤慨し、同アパートAの部屋に放火した。たとえ自己の所有に係る建造物であっても、甲は、現住建造物等 放火罪の刑責を負う。◯
一人暮らしの老人を殺害した後、犯跡を隠すために、死体が存在す るその老人所有の家屋に放火して当該家屋を焼損させた場合は、非現住建造物等放火罪が成立する。◯
単独で居住する自己所有の一戸建て家屋に放火した場合、当該家屋に保険や抵当権が付されているときには、現住建造物に対する放火とみなされ、現住建造物等放火罪が成立する。✕
建築基準法にいう耐火建築物とは、壁・柱・床・はり・屋根又は階段等の主要構造部を耐火構造とした建築物のことである。ここに耐火 構造とは、鉄筋コンクリート造りやれんが造りの構造で政令で定める耐火性能を有するものをいい、政令では各室の壁や床が、通常の火災時の加熱に一定時間耐えられるものに限るとされているが、このような難燃性建造物も、放火罪の客体となる◯
確認
★解説変更★建築基準法にいう耐火建築物とは、壁・柱・床・はり・屋根又は階 段等の主要構造部を耐火構造とした建築物のことである。ここに耐火 構造とは、鉄筋コンクリート造りやれんが造りの構造で政令で定める耐火性能を有するものをいい、政令では各室の壁や床が、通常の火災 時の加熱に一定時間耐えられるものに限るとされているが、このよう 建造物も、放火罪の客体となる。◯
甲は、離婚した元妻らが住むその父親A所有の木造住宅(以下、「A宅」 という。)を訪ねて金の無心をしたところ、けんもほろろに断られた。甲は、 その翌晩も再度、A宅を訪ねたが、不在と認められたことから、同宅に火を 放って困らせてやろうと考え、その窓の隙間から、乗ってきた原動機付自転 車のガソリンをしみ込ませた布に火を点けて投げ込み、同宅を全焼させたう え、火勢が増して隣接するB所有の材木店倉庫に燃え移り、同倉庫をも全焼 させた。なお、同倉庫に人が居住するスペースはなく、現に人もいなかった。 —現住建造物等放火罪及び他人所有非現住建造物等放火罪✕
甲は、夜間宿直室のある学校の玄関に放火したが、幸い玄関を焼損しただけで消し止められた。当時、宿直員はたまたま外出しており不在であった。—現住建造物等放火罪◯
甲は、自宅近くにある空き地の枯れ草をたき火で焼却しようと考え、同所が狭隘な敷地でA宅と隣接しており、周辺に枯れ草が多数残っている状態であるにもかかわらず、消火用の水を用意する等の対策をとることなく点火し、枯れ草を燃焼させている間も、燃焼状態を確認することなく漫然と焼却していたところ、予期せず火が枯れ草からA宅に燃え移り、A宅を全焼させた。————建造物等失火罪✕
甲は、会社を首にされた恨みから、同会社社長Aの住宅を焼損する目的で住宅に近接する物置に放火したが、たまたま通行中の者に発見され消し止められ、住宅には延焼しなかった。この場合、現住建造物等放火罪の実行の着手が認められることから、甲は、現住建造物等放火未遂罪の刑責を負う。◯
他人の住居に放火する目的で、当該家屋の取り外し可能な障子や雨戸に放火し、燃焼が継続している場合には、柱や壁などが燃焼していなくても、現住建造物等放火罪の既遂となる。✕
建造物等延焼罪は、自己所有の建造物等以外の物を燃損し、公共の危険を発生させたうえで、更に火が現住建造物等または、他人所有の非現住建造物等に延焼した場合に成立するところ、公共の危険を発生させないうちに、火が所定の物に延焼した場合は、成立しない。◯
消火妨害罪の実行行為は、火災の際に行われることが必要であるから、消火を妨害する目的であっても、あらかじめホースに穴を開けておく行為は本罪に当たらない。◯
同族会社であるX会社社長甲は、某日、その実弟である同会社役員Aと激論となり、興奮したあまり、「俺の会社だ。燃やそうと勝手だ。」と言って、住宅街にある無人の会社事務所兼倉庫に放火し、公共の危険を生じさせた。X会社は、株式会社として登記されているものの、実質は個人経営の店舗と変わらなかった場合、自己所有非現住建造物等放火罪が成立する。
解説✕
(2) 甲は、自宅近くにある空き地の枯れ草をたき火で焼却しようと考え、同所が狭隘な敷地で A 宅と隣接しており、周辺に枯れ草が多数残っている状態であるにもかかわらず、消火用の水を用意する等の対策をとることなく点火した。さらに、枯れ草を燃焼させている間も燃焼状態を確認することなく漫然と焼却していたところ、予期せず火が枯れ草から燃え伝い、A宅を全焼させた。――建造物等失火罪✕
(1) 無職の甲は、一軒家に独りで暮らす Aから「火災保険の保険金で家を建て替えたいが、自ら放火するとばれてしまうので、代わりに放火してほしい。報酬として保険金の2割を支払う。」 との依頼を受け、A宅への放火を決意し、風のない日を見計らって、誰もいないA宅へ放火し、 他の住宅等へ延焼させることなくA宅のみを全焼させた。――非現住建造物等放火罪◯
放火罪にいう「放火して」とは、広く目的物の焼損に原因力を与える行為 をいい、積極的に直接目的物又は媒体物に点火する行為のほか、既に発火し ている目的物に油を注ぐなどして、その燃焼を助長させる行為も含まれる。◯
「放火」とは、目的物の焼損を引き起こさせる行為をいうが、これは、 積極的な放火行為に限らず、不作為によって行われる場合でもよい。◯
放火罪の故意としては、客体の焼損を認識・予見し、これを実現し ようとする意思を要するが、判例は、公共の危険発生の認識までは要 しないとしている。◯
1個の放火行為により、所有者の異なる複数の現住建造物を焼損した場合であっても、1個の公共的法益を侵害したにすぎないときは、 現住建造物等放火罪の単純一罪が成立する。◯
放火予備罪は、実行行為に着手する前の予備行為を処罰するものである が、現住建造物等放火罪はもとより、非現住建造物等放火罪及び建造物等以外放火罪の予備行為も含むとされている。✕
放火予備罪が成立するには、現住建造物等放火罪又は他人所有非現住建造物等放火罪を犯す目的を必要とするところ、自己所有の非現住建造物等に放火する目的であっても、それが差押えを受けている場合には、放火予備罪が成立する。◯
放火の罪における予備とは、放火の着手前に準備行為をすることを いい、例えば放火するための材料を持って放火場所をうろつく行為が これに当たる。◯
放火予備罪の成立には、放火の実行の意思とこれを実行に移す準備としての外部的行為を要するので、例えば、数人で人の住居に放火する目的でガソリンを携帯して集合すれば、その時点で本罪が成立する。◯
放火予備罪は、放火に着手する前、すなわち火を放つ前の準備行為を処罰しようとするものであるが、現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪のみがその対象となっている。◯
放火罪は、目的物を焼損することによって既遂に達するが、この既遂時期について、判例は、一貫して独立燃焼説の立場に立っており、不燃性の建造物であっても、容易に取り外しができない窓枠や階段の手すり等その一部が木材等の可燃物で構成されており、その可燃物が独立して燃焼すれば既遂に達するとしている。◯
現住建造物放火の故意で、建造物の中にガソリンを散布した場合、具体的危険が生じたといえるときには、放火の実行の着手が認められる。◯
現住建造物等放火罪の実行の着手は、目的物に直接点火した場合のみならず、その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得べき状態において、媒介物である可燃性の導火材料に点火する場合でも認められるところ、ガソリンあるいは可燃ガスのように、引火性の高い物質を導火材料として、これを散布又 は放出し、既存の火源によりそれが引火して目的物の焼損に至る現実的危険性を生じさせたときは、行為者による点火行為の前であっても、実行の着手が認められる。◯
現住建造物等放火罪の客体である「建造物」について、外観上、複数の建物とみえる場合でも、それが近接し、あるいは廊下等で接続され、物理的・ 構造的に一体となっているため、その一部を焼損することによって、住居性を備えた部分への延焼可能性を肯定できる場合には、全体として現住建造物と認めることができる◯
現住建造物等放火罪の客体は、「現に人の住居に使用し」又は「現に人がいる」建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑でなければならない。 本罪は故意犯であり、現に人の住居に使用されているという事実の認 識のほかに、人が現在しているという事実を認識すること、及び客体に火を放って焼損するという事実を認識することが必要である。
✕
現住建造物等放火罪の客体は、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」 建造物等であり、犯人のみが単独で住居に使用し犯人のみが現在する建造物 も同罪の客体となる。✕
犯人のみが単独で住居に使用し、又は犯人のみが現在する建造物等は、現住建造物等放火罪の客体にはならず、ここにいう犯人には共犯者も含まれる。◯
現住建造物等放火罪の客体は、「現に人の住居に使用し」又は「現に人がいる」建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑でなければならない。 本罪は故意犯であり、現に人の住居に使用されているという事実の認識のほかに、人が現在しているという事実を認識すること、及び客体に火を放って焼損するという事実を認識することが必要である。
✕
現住建住物等放火罪の客体は、「現に人が住居に使用し」又は「現に人がいる」建造物等でなければならないところ、ここにいう「住居」とは、人の起臥寝食に日常使用する場所をいうから、住居としての使用が不断に継続していることが必要となる。✕
現住建造物等放火罪の故意は、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等であることの認識に加え、客体に放火して焼損させることの認識が必要であるところ、現に人が存在しているかどうかの確定的な認識は不要であ る。◯
現住建造物等放火罪の故意としては、現に人が住居として使用していること又は現に人が中にいることの認識が必要であるが、その認識は未必的なもので足りる。◯
現住建造物等放火罪は、放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等を焼損した場合に成立するところ、現住建造物について、唯一の住人である建物所有者の承諾を得て放火した場合には、現住建造物等放火罪ではなく自己所有非現住建造物等放火罪が成立する。◯
現住建造物が燃焼することを認識・認容して放火した以上、その行為の結果、公共の危険が発生することを認識していなくても、現住建 造物等放火罪の故意は認められる。◯
現住建造物等放火罪の故意について、判例は、建造物の一部が住居であり、住居以外の部分を焼損する意思で放火した場合であっても、建造物全体が1個の建造物であることを認識していれば、現住建造物等放火罪についての故意があるとしている。◯
現住建造物等放火罪の既遂時期について、それが鉄筋コンクリート 造りの不燃性建造物の場合、判例は、その内部の可燃性部分のみが、 独立して燃焼しただけでは既遂に至らないとしている。✕
現住建造物等放火罪は、公共危険罪であるから、建造物等の所有者の承諾が存在しても放火罪の構成要件該当性ないし違法性は否定されないが、被害者の同意が放火罪の解釈に全く影響しないわけではなく、例えば、他人が1人で住む現住建造物につき、その者の同意を得て放火した場合には、現住建造物等放火罪ではなく、自己所有非現住建造物等放火罪が成立する。◯
現住建造物等に放火するつもりで、同敷地内に隣接する倉庫に放火 した場合は、目的とした住宅に延焼することはなかったとしても、当該倉庫部分が焼損したときは、現住建造物等放火未遂罪が成立する。◯
現住建造物等を焼損する意思で、隣接する非現住建造物等に放火した場合、後者が独立してその燃焼を継続する段階に至れば、たとえ目的とした現住建造物等に火が燃え移らなかったとしても、現住建造物等放火未遂罪の一 罪が成立し、非現住建造物等放火罪はこれに吸収されて成立しない。◯
現に人が居住する家屋を焼損する目的で雨戸に放火したが、雨戸を焼損するにとどまった場合、雨戸は建造物の一部とはいえないので、現住建造物等放火罪の未遂となる。◯
放火罪は、客体により現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪及び建造物等以外放火罪に大別されるが、このうち非現住建造物等放火罪については、客体が自己所有の場合は具体的危険犯、他人所有の場合は抽象的危険犯とされている。◯
放火罪の行為である「放火」には、直接その目的物に点火し発火させる行為だけでなく、既に火がついているところに油を注ぐような、既発の火力の勢いを助長し増大させる行為も含まれる。◯
建造物等以外放火罪は、放火して、建造物・艦船・鉱坑及び現に人がいる汽車・電車以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせたときに成立す るところ、同罪の故意が認められるためには、上記の物に火を放ち、これを焼損することについての認識に加え、公共の危険が生ずることについての認識が必要となる。✕
建造物等以外放火罪の客体については、刑法110条が「前2条に規定する物以外の物」と定めており、自動車、航空機等がこれに該当するところ、 無人の電車に放火してこれを焼損し、よって具体的な公共の危険を発生させ た場合にも、同罪が成立する。◯
建造物等以外放火罪は具体的危険犯であり、焼損のほかに公共の危険が具体的に発生したことを必要とする。例えば、駐車場に駐車して いる自動車に放火して、同車両を焼損したが、具体的な公共の危険は発生しなかった場合には、建造物等以外放火未遂罪となる。✕
建造物等以外延焼罪は、自己所有の建造物等以外の物に放火しこれを焼損して公共の危険を発生させ、他人所有の建造物等以外の物に延焼させることで成立するところ、延焼についての故意がある場合にも同罪が成立する。✕
建造物等以外放火罪の既遂時期は、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達した時ではなく、人の生命、身体、財産に対する具体的な公共の危険が発生した時である。◯
建造物等以外放火罪については、公共の危険の発生を構成要件要素として いるため、未遂犯の処罰規定がなく、また、客体が自己所有であるか否かに より、法定刑に差異がある。◯
建造物等以外放火罪は具体的公共危険罪であるから、他人の所有物に放火しても、公共の危険が発生しなければ、同罪は成立しない。◯
建造物等以外放火罪が成立するためには、故意の要件として、公共の危険が発生することの認識を要しないとするのが、判例の立場である。◯
建造物等以外放火罪は、他人の物よりも自己の物の方がその法定刑は軽減されている。◯
自己所有非現住建造物等放火罪は抽象的危険犯なので、本罪が成立するためには客体を焼損するのみで足り、公共の危険を現実に発生させる必要はない。✕
自己所有非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪は、具体的公共危険罪とされている。これら具体的公共危険罪においては、公共の危険発生について、焼損の結果、公共の危険を発生させることまでを行為者が認識することは不要であるとするのが判例である。◯
自己所有非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪は、具体的公共危険罪とされている。これら具体的公共危険罪においては、公共の危険発生について、焼損の結果、公共の危険を発生させることまでを行為者が認識することは不要であるとするのが判例である。◯
自己所有非現住建造物等放火罪における、「自己の所有に係る」とは、建造物等が犯人の所有に属することをいう。自己所有の建造物等であっても、 これが差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は保険に付したものである場合においては、他人所有非現住建造物等放火罪の客体となる。◯
火災保険を掛けた自己所有の非現住建造物等を焼損した場合には、 「刑法109条1項」の非現住建造物等放火罪が適用され、この場合、公共の危険が現実に発生したかどうかの判断は不要となるが、目的物に火災保険が掛けられていることの認識が必要であるので、その認識がなか った場合には、刑法109条1項の非現住建造物等放火罪は成立しない。◯
他人所有の非現住建造物等放火罪は、具体的危険犯であるため、人の生命、身体、財産に具体的な危険があることが必要である。✕
非現住建造物等放火罪の客体のうち、自己の所有に属するものに放火した 場合であっても、それが保険に付したものであるときは、他人所有非現住建造物等放火罪の客体となる。◯
非現住建造物であると認識し、建造物に放火して燃焼させたところ、 実際には現住建造物であった場合には、現住建造物等放火罪を犯す故意が認められないので、非現住建造物等放火罪が成立するにとどまる。◯
失火罪の罪数について、1個の失火により、現住建造物等と他人所有の非現住建造物等を焼損した場合は、建造物等失火罪の包括一罪となり、自己所有の非現住建造物等と建造物等以外の物を焼損して公共の危険を生じさせた 場合は、自己所有非現住建造物等失火罪の包括一罪となる。◯
火災の際に、消火用の物を隠匿・損壊し、又はその他の方法により消火を妨害したときには、消火妨害罪を構成するところ、放火犯人が、更に自ら進んで消火妨害行為をした場合、当該行為は放火の罪を完全に遂行しようとするものであるから、消火妨害罪は放火の罪に吸収されて成立しない。◯
業務上失火罪における「業務」とは、職務上常に火気の安全に配慮すべき 社会生活上の地位をいうので、本罪の主体である業務者は、調理師やボイラーマンなど直接に火気を取り扱う者、ガソリン取扱業者など火気発生の可能性の高い物質・器具を取り扱う者に限られず、警備員やホテルの支配人など火災の発見・防止を任務とする者も含まれる。◯
建造物等失火罪にいう「失火により」とは、過失により火を放つという意味であるところ、例えば、たばこの吸殻を紙くず籠の中に投げ捨てるなどの作為による場合のほか、アイロンを使用した後に通電したまま外出するな ど、使用済みの火気の後始末を怠り、あるいは、火災を生じ得べき事態を発見したにもかかわらず、狼狽したため適切な消火措置をとらなかったなどの不作為による場合も含まれる。◯
業務上失火罪にいう業務とは、人が社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う行為であって、かつ他人の生命・身体等に危害を加え得るものであることを要する。◯
マンションの内部に設置された鋼鉄製エレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面の化粧で火を 一部を焼失させた場合、現住建造物等放火罪が成立する。◯
アパート所有者甲は、同アパート居住者Aが家賃を滞納し、再三の立退き要求にも応じないことに憤慨し、同アパートAの部屋に放火した。たとえ自己の所有に係る建造物であっても、甲は、現住建造物等 放火罪の刑責を負う。◯
一人暮らしの老人を殺害した後、犯跡を隠すために、死体が存在す るその老人所有の家屋に放火して当該家屋を焼損させた場合は、非現住建造物等放火罪が成立する。◯
単独で居住する自己所有の一戸建て家屋に放火した場合、当該家屋に保険や抵当権が付されているときには、現住建造物に対する放火とみなされ、現住建造物等放火罪が成立する。✕
建築基準法にいう耐火建築物とは、壁・柱・床・はり・屋根又は階段等の主要構造部を耐火構造とした建築物のことである。ここに耐火 構造とは、鉄筋コンクリート造りやれんが造りの構造で政令で定める耐火性能を有するものをいい、政令では各室の壁や床が、通常の火災時の加熱に一定時間耐えられるものに限るとされているが、このような難燃性建造物も、放火罪の客体となる◯
確認
★解説変更★建築基準法にいう耐火建築物とは、壁・柱・床・はり・屋根又は階 段等の主要構造部を耐火構造とした建築物のことである。ここに耐火 構造とは、鉄筋コンクリート造りやれんが造りの構造で政令で定める耐火性能を有するものをいい、政令では各室の壁や床が、通常の火災 時の加熱に一定時間耐えられるものに限るとされているが、このよう 建造物も、放火罪の客体となる。◯
甲は、離婚した元妻らが住むその父親A所有の木造住宅(以下、「A宅」 という。)を訪ねて金の無心をしたところ、けんもほろろに断られた。甲は、 その翌晩も再度、A宅を訪ねたが、不在と認められたことから、同宅に火を 放って困らせてやろうと考え、その窓の隙間から、乗ってきた原動機付自転 車のガソリンをしみ込ませた布に火を点けて投げ込み、同宅を全焼させたう え、火勢が増して隣接するB所有の材木店倉庫に燃え移り、同倉庫をも全焼 させた。なお、同倉庫に人が居住するスペースはなく、現に人もいなかった。 —現住建造物等放火罪及び他人所有非現住建造物等放火罪✕
甲は、夜間宿直室のある学校の玄関に放火したが、幸い玄関を焼損しただけで消し止められた。当時、宿直員はたまたま外出しており不在であった。—現住建造物等放火罪◯
甲は、自宅近くにある空き地の枯れ草をたき火で焼却しようと考え、同所が狭隘な敷地でA宅と隣接しており、周辺に枯れ草が多数残っている状態であるにもかかわらず、消火用の水を用意する等の対策をとることなく点火し、枯れ草を燃焼させている間も、燃焼状態を確認することなく漫然と焼却していたところ、予期せず火が枯れ草からA宅に燃え移り、A宅を全焼させた。————建造物等失火罪✕
甲は、会社を首にされた恨みから、同会社社長Aの住宅を焼損する目的で住宅に近接する物置に放火したが、たまたま通行中の者に発見され消し止められ、住宅には延焼しなかった。この場合、現住建造物等放火罪の実行の着手が認められることから、甲は、現住建造物等放火未遂罪の刑責を負う。◯
他人の住居に放火する目的で、当該家屋の取り外し可能な障子や雨戸に放火し、燃焼が継続している場合には、柱や壁などが燃焼していなくても、現住建造物等放火罪の既遂となる。✕
建造物等延焼罪は、自己所有の建造物等以外の物を燃損し、公共の危険を発生させたうえで、更に火が現住建造物等または、他人所有の非現住建造物等に延焼した場合に成立するところ、公共の危険を発生させないうちに、火が所定の物に延焼した場合は、成立しない。◯
消火妨害罪の実行行為は、火災の際に行われることが必要であるから、消火を妨害する目的であっても、あらかじめホースに穴を開けておく行為は本罪に当たらない。◯
同族会社であるX会社社長甲は、某日、その実弟である同会社役員Aと激論となり、興奮したあまり、「俺の会社だ。燃やそうと勝手だ。」と言って、住宅街にある無人の会社事務所兼倉庫に放火し、公共の危険を生じさせた。X会社は、株式会社として登記されているものの、実質は個人経営の店舗と変わらなかった場合、自己所有非現住建造物等放火罪が成立する。
解説✕
(2) 甲は、自宅近くにある空き地の枯れ草をたき火で焼却しようと考え、同所が狭隘な敷地で A 宅と隣接しており、周辺に枯れ草が多数残っている状態であるにもかかわらず、消火用の水を用意する等の対策をとることなく点火した。さらに、枯れ草を燃焼させている間も燃焼状態を確認することなく漫然と焼却していたところ、予期せず火が枯れ草から燃え伝い、A宅を全焼させた。――建造物等失火罪✕
(1) 無職の甲は、一軒家に独りで暮らす Aから「火災保険の保険金で家を建て替えたいが、自ら放火するとばれてしまうので、代わりに放火してほしい。報酬として保険金の2割を支払う。」 との依頼を受け、A宅への放火を決意し、風のない日を見計らって、誰もいないA宅へ放火し、 他の住宅等へ延焼させることなくA宅のみを全焼させた。――非現住建造物等放火罪◯