繰越制度は、財政法における会計年度独立の原則の例外である。

繰越は、財政法を根拠とした「明許繰越し」、「事故繰越し」及び「継続費の年割額の逓次繰越し」の３類型のほか、「特別会計に関する法律の特別規定による繰越し」がある。

明許繰越が可能なのは、予算成立後の事由に基づいて年度内に支出を終わらない見込みがあるものに限る。

事故繰越しの要件となる「年度内に支出負担行為をなし」とは、年度内に会計法の手続による支出負担行為の整理を行っている場合に限る。

事故繰越の要件である年度内の支出負担行為とは、当該年度内を意味しており、前年度における支出負担行為は含まれていない。

事故繰越の要件である避け難い事故は、前年以前の事故でもよい。

前年度に明許繰越となった要因による事故繰越は認められない。

事故繰越をする工事費等に関連する経費、いわゆる関連経費は、工事費と一体のものではあるものの、支出負担行為がなければ、次年度に繰越ことはできない。

明許繰越をした経費について、さらに事故繰越することは可能である。

特別会計法における繰越について、支出残額は、無条件に繰り越して使用することができ、事由や支出負担行為の有無等を問わないものの、財務大臣の承認を経る必要がある。

翌債とは、繰越明許費に係る経費について、翌年度にわたって支出する債務を負担することができる制度であり、２カ年度にわたった契約を行うことができる。

翌債の承認を経た経費を明許繰越しようとする場合、財務大臣の承認を経たところに従い、承認を経た事項及び事由によるものであること、承認要求書に記載した翌年度所属として支出すべき金額の範囲内であることの2つの要件を満たせば、各省各庁の長限りで繰越処理可能となる。

契約締結前に年度内契約締結が不可能となって翌年度に契約を行う場合、また、契約締結したが年度内完了が不可能となって翌年度に契約変更して支出する場合、翌債手続をとる必要がある。

国庫債務負担行為に基づく歳出化予算について、翌債の承認は不可能である。

国庫債務負担行為の予算について、翌債の承認は不可能であり、また、事前に国会の議決を経た経費であるから、明許繰越や事故繰越も不可能である。

繰越の事項間をまたがる予算執行や、繰り越した予算の残額を他の経費に充当することはできない。

繰越手続において、支出負担行為担当官からまず繰越計算書を提出し、承認があった後、繰越額確定計算書を提出するところ、これらの計算書に記載する繰越の金額は、必ず一致する。

繰越計算書及び翌年度にわたる債務負担の要求書の提出期限は、原則、当該年度の3月31日までである。

繰越計算書の送付について、事業は年度末までに完了したものの、その支出を当該年度の出納整理期間中に終えることができなくなった場合は、当該年度の出納整理期間満了の日までに送付する。

繰越済通知書は、当該年度の歳出として支出することができる期間満了の日から起算して15日を経過した日までに送付する。

翌債の承認後に金額の変更があった場合で、総額が増額した場合は、翌債の追加手続が必要となるが、総額が減額となった、または、不変の場合は、手続不要である。

繰越しの承認後に金額の変更があった場合、増額なら追加申請が必要になるが、減額なら手続は不要である。

財務省等において、繰越の承認があってから処理するまでは、原則10日以内にすることとなっている。

災害復旧・復興事業に係る経費の事故繰越の手続については、災害の規模に関わらず、簡易な様式、参考資料の提出廃止、ヒアリング廃止などの簡素化措置が適用されている。

事故繰越における災害復旧・復興事業の範囲は広く対象とするが、直接関係の無い老朽化対策や耐震化、防災減災事業は対象とならない。

繰越明許費の繰越事由について、6項目以外の事由は、極めて限定的である。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、感性拡大防止の観点から積極的に工事等の納期延期や開催の自粛等も含めて広く繰越事由として取り扱い、延期後の事業完了時期が不明であっても翌年度に実施できるとみなし、弾力的な対応を実施している。

年度当初の早い段階で年度内に終わらないと判明した場合、直ちに、予定金額をもって繰越手続を行うことが可能である。

補助事業に係る地方公共団体の負担する経費について、地方公共団体が繰越手続をとらない場合、国は補助金の繰越手続は行えない。

建設工事途中に請負業者が倒産した場合、その他のやむを得ない事由に該当するものとして明許繰越をすることができる。

繰越を行う場合、訴訟の長期化などで翌年度における執行が明らかに見込まれない場合、明許繰越の事由に該当する場合でも、繰越はできない。

入札不調で工期が遅れた場合、入札不調は繰越事由ではないから、繰越はできない。

明許繰越事由のうち、気象の関係とは、例年にない異常な気象の条件を意味しているから、積雪地域における積雪のための繰越などはできない。

明許繰越事由のうち、資材の入手難について、労働者不足も客観的事実に基づいて説明が可能であれば当該事由に含まれる。

事項の範囲は予決令で規定されている。

事項の範囲は、原則としてできるだけ狭義なものとすることが望ましいが、支出負担行為未済である場合は、大きく括ったもの又は予定的なものとならざるを得ない。

明許繰越と事故繰越のいずれもが可能である場合、まずは明許繰越によるのが一般的である。

事故繰越を行う場合に、翌年度にまたがる債務負担をすることも可能である。

該当事由があれば、事故繰越をした経費をさらに事故繰越することも可能である。

国庫債務負担行為の最終年度においては、国庫債務負担行為の年限延長の議決方式によることことから、明許繰越しはできない。

繰越経費は、同一目内の経費であれば融通することができる。

繰越経費は、一部の公共事業などの例外を除き、翌年度の他の経費に使用することや、異なる繰越事項間の流用はできない。

繰越明許費となっている経費について翌債の手続をする場合、支出負担行為後であれば、変更契約前に、支出負担行為前であれば、支出負担行為をしようとする前に承認を得なければならない。

明許繰越しとなっている庁舎の新築工事が、年度内完成予定であったものの、工期途中の暴風雨により工期が遅れ、年度内完了が不可能となった場合は、翌債の承認を得て契約変更すべきである。

翌債の承認を得たものの、年度内に契約できなかった場合、改めて明許繰越について財務大臣等の承認を経ることが必要である。

補正予算により新たに予算計上された経費は、予算成立後の事由に基づく明許繰越しとなる。

歳出予算の額に増減はないにもかかわらず繰越明許費として補正された例や、予備費の使用により予算措置された経費（繰越明許費として国会の議決は経ていない）に補正予算により予算額が補正追加され、これと同時に、予備費使用による予算に係る経費もあわせて繰越明許費とされた例がある。

事故繰越しの要件である「年度内に支出を終わらない場合」とは、年度末（３月３１日）までに支出を終わらなかった場合に限る。

翌債は契約期間についての制度であり、繰越しは歳出予算の使用についての制度である。

繰り越された歳出予算は、改めて内閣から予算の配賦が行われる。

繰越し（翌債）の申請に当たっては、必ず「審査表」によりチェックを行い、提出する必要がある。

明許繰越しに係る「その他のやむを得ない事由」とは、具体的例示以外の事由の全てをさす。