問題一覧
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⭐️ランクの低い各論を覚えるならランクの高い総論を復習せよ 2 学習内容 ・個人的法益に関する罪:法益の帰属主体が個人 ⇒ 財産犯⭐️(A+)、名誉棄損、遺棄、暴行等 ・社会的法益に関する罪:法益の帰属主体が社会・共同体 ⇒ 放火⭐️、文書偽造⭐️、賭博等 (放火と文書偽造が重要) 国家的法益に関する罪:法益の帰属主体が国家・統治機能 ⇒ 賄賂⭐️、犯人蔵匿、公務執行妨害等 賄賂は重要
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§ 殺人罪199 3 保護法益:人の生命 4 客体:人 ⇒ 胎児 → 堕胎罪 Q 胎児がいつから人になるのか (1) 結論:一部露出説 ∵ 独立して攻撃の対象としうる ⇒ 民法では全部露出説 5 構成要件的結果:人の死亡 Q 人の死亡時期(Bランク) (2) 結論:心拍停止・呼吸停止・瞳孔反射喪失のどれかの不可逆的機能停止=三徴候説 6 予備:罰する。但し情状により免除されうる201 7 未遂:罰する203 § 自殺関与罪・同意殺人罪202 自殺関与罪202前段:自殺教唆・自殺幇助 同意殺人罪202後段:嘱託殺人(被害者が依頼)・承諾殺人(被害者が承諾) 8 自殺関与罪 (Bランク) Q 自殺関与罪の処罰根拠 (3) 結論:自殺は違法ではない → 狭義の共犯ではなく、自殺関与行為が独自の違法性を有する正犯 Q 自殺関与罪の実行の着手時期:自殺関与行為 → 他人の自殺行為 → 他人の死亡 (4) 結論:未遂犯の処罰根拠 → 他人の自殺行為の開始があった時点 9 同意殺人罪 (5) 減軽の根拠:被害者の同意により違法性が減少 (6) 要件:被害者の同意による嘱託・承諾 10 普通殺人罪との区別 故意:行為者が被害者の嘱託・承諾を認識 → なければ抽錯 死の意味の理解:死の意味を理解できない、幼児・精神障害者 → 殺人罪 任意性:暴行・脅迫により自殺を強要 → 殺人罪 真意:追死すると誤信させ自殺させた=動機に錯誤がある → 殺人罪
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2 暴行・傷害の罪 § 暴行罪208:暴行を加えた者・傷害するに至らなかった ⭐️刑罰がどれくらいかは覚えなくて良い ①保護法益:人の身体の安全 ②行為⭐️(書けるように):(狭義の)暴行=人の身体に対する不法な有形力の行使 ③要件:(狭義の)暴行+傷害結果の不発生 ⑴有形力の行使 〇 殴る・蹴る・音や光等エネルギー作用(拡声器で大声・耳元で太鼓連打)・身体に接しない(投石) × 心理的作用(侮辱・催眠術・丑の刻参り) ⑵不法性:日常生活において認められるべき有形力の行使を除外 〇 肩に手をあて呼び止める ⑶対人性:人の身体に対するものに限定 × 無人の建物を破壊 ⑷傷害結果の不発生:傷害結果発生 → 傷害を検討 ④ 暴行概念 ⅰ最広義:不法な有形力の行使 例:騒乱 ⅱ広義:不法な有形力の行使+人に対する 例:恐喝、強要、公務執行妨害(パトカーを蹴る等) ⅲ狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する 例:暴行、脅迫 ⅳ最狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する+反抗抑圧程度 例:強盗、強制性交等
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§ 傷害罪204:身体を傷害した者 ①行為:人の身体を傷害した ⑴傷害:人の生理的機能に障害を加えること 〇 :出血・骨折・⭐️人の意識(長時間の失神)・病毒に感染・キスマーク(内出血)・外傷後ストレス障害 × :頭髪を切り取る行為 ⑵傷害の方法:限定なし204 ⇒ 無形的方法も可 (例) いやがらせにより鬱状態に陥れた ②故意 ⑴無形的方法による場合:故意を要する 傷害の故意あり ⇒ 傷害成立 =故意犯 傷害の故意なし ⇒ 傷害不成立=過失傷害 ⑵狭義の暴行による場合 傷害の故意あり ⇒ 傷害成立 傷害の故意なし⭐️ ⇒ 傷害成立 ∵ 208(暴行罪)の反対解釈 → 暴行罪の結果的加重犯の規定204 (例)怪我しないはずだ+殴る → 傷害結果発生 → 傷害成立 ③ 未遂 暴行による本罪の未遂 ⇒ 暴行罪 無形的方法による未遂 ⇒ 不可罰 § 傷害致死罪205:身体を傷害し、よって人を死亡させた者 ①内容:傷害罪の結果的加重犯 → 死亡についての故意があれば殺人罪 ⇒ 傷害罪は暴行罪の結果的加重犯 ∴ 暴行罪との二重の結果的加重犯ともなりうる § 同時傷害の特例207:2人以上で暴行し傷害・不明・共犯の例による ①意義:2人以上で暴行し傷害結果発生 → 誰の暴行によるか不明 (例)ABでXに暴行→X傷害 ⇒ 傷害罪の同時犯で行為者不明(暴行成立・傷害不成立) - 共同正犯・行為者が特定と区別(同時犯では共同実行の意思なし) ②趣旨:立証の困難回避 ③効果⭐️:共犯の例による = 因果関係を推定(=挙証責任を被告人に転換) (共犯になるわけではない) ⇒ 個々の暴行と傷害結果に因果関係あり ≠ 共同正犯(一部実行全部責任) ④法的性質:責任主義の例外 → 結論の妥当性・推定規定から合憲 Q 傷害致死罪の場合の適用の可否 (⑴問題の所在:207の文言 (⑵判例:傷害を原因として発生した死亡結果についても責任を負う=傷害致死に207適用 ⑶理由:趣旨が傷害致死の場合も妥当 Q 承継的共同正犯の場合の適用の可否 (⑴問題の所在:傷害結果を帰責される者がいる場合でも適用できるか (例)Aの単独暴行の途中で、共同実行の意志でBが加わり傷害結果発生 → 因果不明 ※ Aは画像の①②③いずれで傷害が発生しても犯罪成立 ※①の場合はBは承継的共同正犯では犯罪が成立しない ⑵反対説:207は責任を負う者がいない場合の例外規定 ⑶判例:責任を負う者がいない場合でも207は適用 ⑷理由:207は共同実行の意志がなくても適用される → 当然に適用 § 現場助勢罪206:傷害・傷害致死の現場において勢いを助けた者 ⑴助勢行為の例:野次・喧嘩を扇動する + 傷害・傷害致死の結果発生 § 凶器準備集合罪 208の3:2人以上の者が害を加える目的で集合 → 凶器準備又は準備を知って集合した者
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3 過失致死傷の罪 § 過失傷害罪・過失致死罪209・210:過失により人を傷害・死亡 ⑴傷害致死と区別。過失傷害は親告罪209Ⅱ・過失致死は非親告罪、法定刑が軽い(罰金) § 業務上過失致死傷罪211前段:業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷 ①主体:業務者 → ⭐️不真正身分犯 ② 加重根拠:法益侵害の結果を惹起しやすい立場 → 特に重い注意義務が課せられている ③業務⭐️(書く):社会生活上の地位に基づき反復継続して行い、生命・身体等に危害を加えるおそれのあるもの ⑴社会生活上の地位 ※万人共通のものは該当しない (例)×家庭の炊事・育児 〇 娯楽目的の狩猟・建設・医療 ⑵反復継続:反復継続の意志がある (例)〇反復する目的での1回目 ⑶危害を加えるおそれ (例)〇ホテルの店舗管理(発火防止外を怠った事例) ⇒ 自動車の運転は特別法 § 重過失致死傷罪211後段:重大な過失により死傷=業務上過失致死傷 4 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)(B+ 短答) § 過失運転致死傷罪(自動車死傷5):自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷 ①趣旨:業務上過失致死のうち、自動車の運転による場合を特に重く処罰(車の運転は211の業務) ② 免除 ・軽い傷害 → 免除されうる ・死亡・重い傷害 → 免除なし § 危険運転致死傷罪(自動車死傷2・3):各号の危険な状態で運転し人を死傷させた者 ①類型2 ⑴ 酩酊運転致死傷Ⅰ:酔っ払い運転・薬物中毒者による運転 ⑵制御困難運転致死傷Ⅱ:スピード違反による運転 ⑶未熟運転致死傷Ⅲ:≠無免許運転。免許取り立てやペーパードライバー? ⑷ 妨害運転致死傷Ⅳ:あおり運転 ⑸信号無視Ⅴ:殊更に無視 → 確定的な認識は不要 ⑹通行禁止道路運転致死傷Ⅵ ②類型3:酩酊・病気による危険運転のおそれ → 運転後に酩酊・病気による危険運転 ⑴趣旨:運転開始後の危険運転を(類型2に比べて)軽く処罰 ③法的性質⭐️:結果的加重犯 ⇒ 2条・3条は道路交通法の構成要件(基本犯)+ 致死傷結果 ④故意:基本犯の故意あり + 致死傷結果の故意なし ⑤無免許加重:未熟運転2Ⅲを除き、無免許の場合に刑が加重
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□ 遺棄罪総論 ①遺棄罪:単純遺棄217 ・ 保護責任者遺棄218 ・ 遺棄致死傷罪219 ②保護法益:生命・身体の安全(判例通説) ∵ 219で致傷の場合も規定 ③法的性質:危険犯 (法益の侵害が現実に発生していない段階であっても、法益侵害のおそれがあれば実現する犯罪) ∵ 遺棄という文言 → 遺棄により成立 Q 遺棄罪を具体的危険犯と解するべきか抽象的危険犯と解するべきか ⑴ 判例:抽象的危険犯 ∵ 遺棄という文言のみ ⑵実務:ある程度の具体的な危険の発生を必要(準抽象的危険犯説) (例)産院のベッドに放置、警察署の目の前に放置等は遺棄はしているが危険は生じていない→実務上処罰しない ④行為:遺棄217・218前段、 不保護218後段 不保護:場所的離隔なし ⇒ 不作為 (例)同居乳児に食事なし 遺棄:場所的離隔あり 移置:移動させることにより危険を創出 ⇒ 作為 (例)乳児を山に捨てに行く 置去り:放置して立ち去ることにより危険を創出 ⇒ 不作為(例)乳児を家に放置し旅行 ⇒ 不保護=真正不作為犯 ・ 遺棄=不真正不作為犯 ⑤行為と条文の対応 不保護:218後(保護責任者による) 遺棄 移置:217(保護責任者以外による) ・ 218前(保護責任者による) 置去り:⭐️217の対象外 (保護責任者でない者には法的な作為義務がないから。保護責任者でなければ成立しない。法的な作為義務が生じたら保護責任者になり218の問題になる) ・ 218前(保護責任者による) ⇒ ⭐️不作為による遺棄(=置去り)は218前段の保護責任者遺棄でのみ処罰可能 ∵ 不真正不作為犯における法的な作為義務 = 218の保護責任 → ⭐️217は移置のみ ・ 218前段は移置と置去り を意味 ⑥判例:不作為による単純遺棄を認めたものは存在しない § 単純遺棄罪217:老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄 ①客体:限定列挙 → × 道に迷った者・手足を拘束された者、 〇 高度の酩酊者(疾病のために扶助を必要とする者に該当) ②行為⭐️:遺棄 ⇒ 作為による遺棄=移置に限定 § 保護責任者遺棄218:保護する責任のある者が遺棄又は保護をしなかったとき ①客体:≒単純遺棄 ②行為:遺棄又は不保護 ③主体:保護責任者に限定(身分犯) 不真正身分犯:作為による遺棄(移置) 真正身分犯:不作為による遺棄(置去り) ・ 不保護 ④保護責任の発生原因:不真正不作為犯における法的な作為義務の発生原因と同様 ⇒ 法令、契約・事務管理、慣習・条理 Q ひき逃げ事案における保護責任の有無 ⑴問題の所在:被害者に車で衝突した場合、保護責任が発生するか ⑵判例-反対説:道路交通法の救護義務に基づき保護責任が発生 → 批判-ひき逃げは常に218・219が成立 ⑶ 有力説:排他的支配を獲得した場合のみ事務管理により保護責任が発生 (例)車に乗せた ⑷実務:単純なひき逃げではほぼ本罪による起訴なし。判例は排他的支配を獲得した事案 § 遺棄致死傷罪219:前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者 ①法的性質:結果的加重犯 → 217・218は危険犯 ②法定刑:傷害の罪と比較して重い刑 = 上限・下限ともに重い刑で処断 (例)217=1月以上1年以下懲役 ・ 傷害=50万以下罰金or 1月以上15年以下懲役 ⇒ 単純遺棄致死傷罪=1月以上15年以下懲役
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□ 堕胎総論 ①背景:堕胎(=中絶)は原則違法 → 母体保護法による条件を満たせば合法 ②保護法益:一時的には胎児の生命・身体の安全、二次的に母体の生命・身体の安全 ③客体:胎児及び妊婦 ④行為:胎児を母体内で殺すこと、又は、自然の分娩期に先立って胎児を母体から分離すること ⇒ 胎児が死亡しなくても成立しうる Q 胎児性傷害:妊婦に危害 → 胎児が母体内で傷害を負う → 出生後も傷害が残る ⑴問題の所在:胎児に傷害罪等が成立するか → 胎児を客体となる人と言えるか ⑵判例:胎児は母体の一部 → 母体を客体とした傷害罪等が成立する § 自己堕胎罪212:妊娠中の女子が堕胎したとき ⑴妊婦自身による堕胎を特に軽く処罰 § 同意堕胎罪・同意堕胎致死傷罪213:女子の嘱託・承諾を得て堕胎させた者 ⑴妊婦の同意を得て堕胎を行う場合及びその致死傷の結果的加重犯を処罰 § 業務上堕胎罪・業務上堕胎致死傷罪214:医師等が嘱託・承諾を得て堕胎させた ⑴医師等の業務者が213を行った場合=不真正身分犯 § 不同意堕胎罪・不同意堕胎致死傷罪215・216 ⑴妊婦の同意のない堕胎を重く処罰。未遂犯でも処罰
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□ 総論 ①逮捕及び監禁の罪:逮捕罪・監禁罪220、逮捕・監禁致死傷罪221 ⑴逮捕:人の身体を直接拘束して身体活動の自由を奪うこと (例)人を羽交い締めにする ⑵監禁:人の身体を間接的に拘束して身体活動の自由を奪うこと (例)部屋に鍵掛けて閉じ込める ②保護法益⭐️:身体活動(移動)の自由 ⇒ × 法人・生まれたばかりの乳児(1歳未満) Q 自由の意味 ⑴現実的自由説-反対説:現実に移動しようと思った時に移動できる自由∵ 意志の自由 ⑵ 可能的自由説-判例:もし移動しようと思えば移動できる自由∵ 可能性があることに意義 ⑶保護法益:身体活動の可能的自由 (論文では、保護法益は身体活動の可能的自由と書く) Q 被害者の認識の要否 (例)AがBを強制性交する計画のもとBを欺き車に乗せて発進 ⑴問題の所在:Bは監禁された旨を認識していない → 監禁が成立するか ⑵現実的自由:現実に移動しようと思った事が必要 ⇒ 被害者が気づいた時点で成立=認識必要 ⑶可能的自由:身体活動の可能性が侵害される事が必要 ⇒ 車を発進させた時点で成立 =認識不要 Q 被害者が一時的に意思能力を欠く場合 (例)Aが熟睡中のBの部屋に鍵を掛け閉じ込めた ⑴問題の所在:Bは一時的に意思能力を欠いている → 監禁が成立するか ⑵現実的自由:現実に移動しようと思うことができない ⇒ 起きた時点で成立(=不成立) ⑶可能的自由:可能性を侵害したとはいえる ⇒ 閉じ込めた時点で成立(=成立) § 逮捕罪・監禁罪220:不法に人を逮捕し又は監禁した者 ① 行為:逮捕・監禁 ⇒ 〇 自動車やオートバイに乗せて走行・ 脅迫等で心理的に脱出を困難にさせた ②逮捕に続く監禁:220の罪一罪=包括一罪 ③法的性質:継続犯 § 逮捕・監禁致死傷罪221:220によって人を死傷させた者 ①法的性質:結果的加重犯 57 法定刑:傷害の罪と比較して重い刑=上限・下限ともに重い刑
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§ 脅迫罪222:身体・財産等に対し害を与える旨を告知して人を脅迫した者。親族に対しても同様 ①保護法益:意思決定の自由 ② 法的性質:抽象的危険犯 → ⭐️意思決定の自由が現実に侵害されたことを要しない ③行為:加害を告知して脅迫 ⑴加害:将来加害者がその発生を支配しうる害悪である事が必要 (例)× 天災・天罰 ⑵対象:相手方及びその親族の身体・財産等(制限列挙)(例)× 恋人・友人・内縁関係 ⑶ 告知:方法に制限なし(例)〇 口頭・態度(凶器を示す)・文書・電子的方法(メール)等 ⑷脅迫:一般人を畏怖させることができる程度の害悪の告知 → ⭐️現実に畏怖したことは不要 ⇒ 程度は総合考慮 (例)〇 「出火お見舞い申し上げます」と火事がないのに敵対者に告知 Q 適法行為の告知が脅迫に該当するか (例)女性万引犯に猥褻に応じないと告訴すると告知 ⑴判例:該当する。但し、権利の行使として正当といえる場合には正当行為35として違法性が阻却 ⑵理由:適法行為の告知によっても人を畏怖させることが可能 Q 脅迫罪222の人に法人が含まれるか ⑴通説:含まれない ⑵理由:意思決定の自由を享受できるのは自然人のみ ⑶ 故意:告知内容の認識及び相手方の認識の予見 ⇒ 加害を実現する意志は問わない ④脅迫概念 ・広義の脅迫: 対象等を問わない脅迫 例)公務執行妨害罪・騒乱罪等 ・狭義の脅迫:相手方及びその親族の身体・財産等に対する加害の告知に限定する脅迫 例)脅迫罪・強要罪 ・最狭義の脅迫:相手方の反抗抑圧又は著しく困難にする程度の脅迫 例)強盗罪・強制性交等罪 § 強要罪223:脅迫又は暴行を加えて、義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害した者 ① 保護法益:意思決定の自由(脅迫罪と同じ) ② 法的性質⭐️:侵害犯 → 結果の発生が必要 ③ 行為:狭義の脅迫又は広義の暴行(暴行罪208の暴行は狭義の暴行) ④ 結果:義務のないことを行わせた・ 権利の行使を妨害した (例)〇 水入バケツを数時間頭上に置かせた ・理由なく謝罪文を書かせる ・告訴を中止させる ⑤ 因果関係:現実に畏怖しその結果として行う ⇒ 哀れみ等で行えば未遂となる ⑥ 未遂:223Ⅲで罰する ⇒ 脅迫の未遂はない
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§ 未成年者略取及び誘拐罪224:未成年者を略取し、又は誘拐した者 ①客体:未成年者 = ⭐️18歳未満の者(民4) × 20歳未満 ②保護法益:被略取者等の自由 + ⭐️親権者等の監護権(通説) ⑴未成年者の同意のもと親権者に無断で未成年者を旅行に連れていく⇒ 本罪成立 ∵ 親権者の監護権も保護法益だから ⑵共同親権者の1人が他の共同親権者の監護下にある未成年者を無断で連れていく(例:離婚している場合)⇒ ⭐️構成要件該当(判例)(よく出る) ③行為:拐取=誘拐及び略取 誘拐:欺罔又は誘惑によって他人を生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置く 略取:暴行又は脅迫によって他人を生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置く ④未遂:罰する(親告罪)228・229 ※親権者も該当し得るので親告罪にされている § 営利目的等略取・誘拐罪225:営利・猥褻・身体に対する加害の目的で人を略取し、又は誘拐した者 ① 客体:人(未成年者・成年者を含む) ②保護法益:被略取者等の自由 + 親権者等の監護権 又 は 被略取者等の自由 ③法的性質:目的犯-営利の目的=自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させる目的 ④未遂:罰する228 ⑤罪数:未成年者拐取は本罪に吸収(評価上一罪の特別関係) § 身代金目的略取・誘拐罪225の2:安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的で拐取した者 ⇒ 225の加重類型 ① 客体:人(未成年者・成年者を含む) ②保護法益:225と同様 + 財産 ③法的性質:目的犯-安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的 ※ 225の営利の目的とは異なる ④ 225の2の憂慮する者:安否を憂慮するのが社会通念上当然とみられる特殊な関係にある者(判例) (例)〇 銀行頭取を略取した場合の銀行幹部 ・ 〇 実際には憂慮しなかった場合でも成立 § 略取・誘拐罪及び人身売買等罪(出ない):条文一読225の2Ⅱ~229 ①概要:拐取後に身代金・事後従犯・国外移送目的・人身売買・未遂 ②解放減軽⭐️:救出前に安全な場所に開放 → 必要的減軽 ∵ 被拐取者の生命の安全
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⭐️出るのは不同意わいせつと不同意性交 § 強制猥褻罪176:13歳以上の者に暴行又は脅迫を用い猥褻な行為・13歳未満の者に猥褻な行為をした者 ①保護法益:性的自由 ② 主体・客体:性別を問わない ③行為 13歳以上の者を客体:暴行・脅迫 + わいせつな行為 13歳未満の者を客体:わいせつな行為(〇 暴行・脅迫なし、〇同意あり) ⑴ 暴行・脅迫:⭐️最狭義の暴行・脅迫=相手方の反抗を著しく困難にする程度( < 強盗-反抗抑圧 ) (例)〇 被害者の手足を押さえつける行為 ・ 〇 不意に女性の胸を触る ⑵わいせつな行為:普通人の性的羞恥心を害する行為(わいせつ176 > わいせつ174)→公然猥褻のほうが狭い (例)公然と むりやりキスした(〇176・×174) ・公然とキスした=×176・×174 Q ⭐️主観的構成要件要素として構成要件的故意に加えて性的意図(わいせつの心情)を必要とするか(短答向け) (例)いやがらせ目的で同性の服を脱がせた ・ 命令されて女子児童のわいせつな写真を撮影した ⑴ 旧判例:性的意図が必要 ⑵⭐️新判例:性的意図は成立要件でない ④未遂:罰する180 § 強制性交等罪177:13歳以上の者に対し暴行又は脅迫を用い性交等・13歳未満の者に性交等 をした者 ①保護法益:性的自由 ② 主体・客体:性別を問わない ③ 行為:強制猥褻と同様 13歳以上の者を客体:暴行・脅迫 + 性交等 13歳未満の者を客体:性交等(〇 暴行・脅迫なし、 〇 同意あり) ⑴暴行・脅迫:最狭義の暴行・脅迫=相手方の反抗を著しく困難にする程度 ⑵性交等:性交、肛門性交又は口腔性交 ④ 未遂:罰する180 ➢ 実行の着手時期:強制性交等に至る客観的危険性が認められた時点(判) (例)抵抗する女性を車に引きずり込む → 5km離れた場所で反抗抑圧程度の暴行を加え性交 ⇒ × 5km離れた場所での暴行開始時点 〇 抵抗する女性を車に引きずり込んだ時点 ⑤罪数:強制猥褻176は本罪に吸収(評価上一罪の特別関係) ⑥⭐️非親告罪:およそ性的自由に対する罪は非親告罪 § その他の性的自由に対する罪 Bランク ① 準強制猥褻・性交等罪178:心神喪失・抗拒不能 → 猥褻・強制性交等をした者 ②監護者猥褻・性交等罪179:18歳未満の者に監護する者の影響力に乗じて猥褻・性交等をした者 ③ 強制猥褻・性交等致死傷罪181:猥褻・強制性交等及びその未遂を犯し、よって人を死傷させた者
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§ 住居侵入罪130:正当な理由なく住居等に侵入した者 ①保護法益 ・平穏説-反対説 →住居の事実上の平穏 批判) 平穏 → 個人的法益と矛盾 ・住居権説-判例 →住居に誰を立ち入らせるのかの自由 ②客体 ⑴住居:人の起臥寝食に使用されている場所(⭐️書く) (例)〇 一時的使用(ホテル・旅館の一室) ・ 〇住居に付属する囲繞地(壁で囲まれた庭) ⑵人の看守する邸宅 人の看守する:管理・支配するための人的・物的施設を施す 〇守衛・管理人・施錠 × 立入禁止札 邸宅:居住用の建造物で住居以外のもの 〇 空き家・閉鎖中の別荘・共同住宅の共用部分 ⑶ 建造物:住居や邸宅にあたらない建造物 〇 学校・工場・物置・官公庁の庁舎 〇 警察署の塀⭐️ → 外部から見えない敷地に駐車された捜査車両確認目的で塀上部にあがった時点で成立 ③行為 正当な理由なく:違法性阻却事由があれば成立しない(通説)←当たり前のことが書いてあるだけ 侵入⭐️:住居権者の意思に反する立入り (住居の平穏を害する様な態様による立入-反対説) ⑴ 一般に立入りが許容されている場所への立入り ⇒ 原則侵入に該当しない Q 違法な目的で立ち入った場合 (例)営業時間中にデパートに万引き目的で立ち入った 平穏説:平穏を害する様な態様ではない ⇒ 侵入にあたらない 住居権説:管理権者の意思に反する立入り ⇒ 侵入にあたる ⑵住居権者の同意・承諾に基づいた立入り ⇒ 原則侵入に該当しない Q 錯誤による同意・承諾の場合 (例)強盗の意を秘して「今晩は」→家主が「お入り」→侵入 平穏説:平穏を害する様な態様ではない ⇒ 侵入にあたらない 住居権説:有効な同意・承諾なら〇=動機に錯誤がないことが必要 ⇒ 侵入にあたる ④ 未遂:罰する132 ⑤罪数:他の多くの犯罪と牽連犯となる § 不退去罪130:要求を受けてこれらの場所から退去しなかった者 ①行為:(退去に必要な合理的期間の経過しても)退去しなかった(真正不作犯)
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□ 総論 ①秘密を侵す罪:信書開封罪133・秘密漏示罪134 ②保護法益:個人の秘密 ③特徴:親告罪 ∵ 訴追により被害者が不利になりうる § 信書開封罪133:正当な理由なく封をしてある信書を開けた者 ①客体:封をしてある信書 ⑴封:信書の内容が認識できないように信書と一体になり施す装置 ⇒ 〇 封筒への糊付け × 引き出しに信書を入れて引き出しを施錠 ⑵信書:特定人から特定人に自己の意思を伝達する文書(判例) ⇒ 〇 手紙・法人相手 × 写真・図画・原稿 ②行為:封を開ける ⇒ 抽象的危険犯 (→現実に個人の秘密が侵害されたかどうかは問わない) § 秘密漏示罪134:医師、弁護士等又はこれらの職にあった者が秘密を漏らした時 ① 特徴:真正身分犯-医師・弁護士・薬剤師・宗教・医薬品販売業者等 ②客体:業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密
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2 名誉を侵す罪 § 名誉毀損罪230:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者 ①保護法益:名誉=人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値(判例) Q 保護法益である名誉の具体的な内容は? (名誉の分類) ・内部的名誉:自己や他人の評価から離れて客観的に存在するその人の真価≒個人の尊厳 ・外部的名誉:人に対して社会が与える肯定的な評価 ・名誉感情:本人が自己に対して有している価値意識≒感情 ⑴問題の所在:⭐️内部的名誉は傷つかない=保護法益ではない → 保護法益となるのは、外部的名誉or 外部的名誉+名誉感情 ⑵反対説:外部的名誉+名誉感情∵ 名誉感情も保護に値する 批判:単なる感情は保護に値しない+公然性の要求 ⑶ 判例・通説:外部的名誉のみ ∵ 公然性を要求 ②行為:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損 ⑴ 公然性=公然と:不特定または多数人が認識しうる状態(判例) 不特定または多数人:相手が限定されていないか相手が特定されているが多数のどちらか一方 認識しうる状態:知りうる状態=伝播する可能性がある(判例) (例)〇 不特定の人の前で・特定の多数の前で・特定かつ少数の前で名誉毀損(伝播しうるので◯) ⑵ 事実の摘示:社会的評価を低下させる程度の具体的なものを摘示 × 抽象的な事実(Aは馬鹿だ・Aはブスだ) ・ 社会的評価が低下しない(遅刻した・ミスした) 〇 具体的な事実(Aは風俗で働いた)・公知のもの・真実(死者の場合、虚偽の事実のみ) ⑶ 名誉を毀損:抽象的危険犯(判例)=×侵害犯 ∵ 社会的評価が現実に害されたことの認定が困難 ③親告罪232 ∵ 告訴による被害者の名誉の保護 § 公共の利害に関する場合の特例230の2: 公共の利害・公益目的・真実であれば罰しない ① 趣旨:表現の自由と名誉の保護との調和 ② 要件 ⑴ 公共の利害に関する事実:民主的政治を行う上で知る必要がある事実 × 病気・身体的障害・精神的傷害・血統・性生活・性的思考 〇 ⭐️政策評価・政治的に大きな影響力のある大規模宗教団体の会長の女性関係(判例) ⑵ 専ら公益を図る目的:⭐️主たる動機が公益目的(判例) ∵ 公益のみは困難(純粋に公益のためのみに行動する人はいない) 〇 営利目的の側面も持つ報道機関の報道 × 政治家が被差別部落出身者であることを理由とした人格否定報道 ⑶真実であることの証明:証明責任の転換 → 被告人が証明しないと真実ではない ③要件の擬制230の2Ⅱ・Ⅲ 擬制=あるものとして扱う ⑴原則Ⅰ 事実公共性:必要 目的の公共性:必要 真実の証明:必要 ⑵起訴前の犯罪行為Ⅱ 事実公共性:擬制 目的の公共性:必要 真実の証明:必要 ⑶公務員または公選による公務員の候補者Ⅲ 事実公共性:擬制 目的の公共性:擬制 真実の証明:必要 ④ 効果:不処罰 Q 不処罰の根拠 ⑴問題の所在:230の2の法的性格 → 真実性の錯誤の論点で重要 ⑵見解 処罰阻却事由説(反対説) ・不処罰の根拠:処罰阻却事由 ・根拠:文言(230「事実の有無にかかわらず」→事実がなくても犯罪は成立すると読める) ・批判:表現の自由 ※処罰阻却事由:例)親族相盗例 違法性阻却事由説(判例) ・不処罰の根拠:違法性阻却事由 ・根拠:表現の自由と名誉の保護の調和 Q ⭐️真実性の錯誤(重要論点) ①問題の所在:行為者が真実性を証明できない=230の2不適用 → 真実性を誤信していた場合の処理 ②違法性阻却事由説からの処理(判例) ⑴真実性の錯誤の意義:≒違法性阻却事由の錯誤 ⇒ 違法性を否定する事実を誤認識している限り、責任故意を阻却 ⑵誤認識の対象:違法性を否定する事実 ≒ 真実であることの証明があったということ(要件事実) ⇒ 上記裁判時の事由は行為時の事由に言い換える(裁判時の事由が行為時にあることはないため) = 訴訟法的表現を実体法的表現に引きなおす ⇒ ⭐️事実が証明可能な程度に真実であること(将来裁判になっても証明できると思っていたということ) ⑶軽信の場合(無責任に真実と勝手に考えていた場合):妥当しない ∴ 確実な資料・根拠に基づいていた場合のみ責任故意を阻却 ∵ 名誉の保護・政策的な観点 ② 処罰阻却事由説からの処理 ⑴ 原則:真実性の錯誤により故意は阻却されない ∵ 故意の対象ではない ⇒ 処罰しうる ⑵ 例外:確実な資料・根拠に基づいた言論の場合、35の正当行為に該当 ⇒ 違法性阻却される 違法性阻却事由説と処罰阻却事由説の違い 違法性阻却事由説:責任故意で阻却され得る 処罰阻却事由説:正当行為(違法性阻却)で阻却され得る § 侮辱罪231:B+ 事実を摘示しないで公然と人を侮辱した者は拘留又は科料 ①特徴:名誉毀損と類似、刑法で最も軽い法定刑 ②保護法益 Q 侮辱罪の保護法益は何か ⑴問題の所在:法人・幼児等、名誉感情を持たない者に対する成立の可否 ⑵見解 ・二元説-反対説 保護法益の内容: 名誉毀損=外部的名誉 ・ 侮辱罪=名誉感情 根拠:法定刑が極めて低い 外部的名誉説-判例 保護法益の内容:外部的名誉 根拠:公然性を要求 ⑶あてはめ:幼児・精神障害者・法人への侮辱罪も成立しうる(判例) ③行為 ⑴公然と:≒名誉毀損の公然性 ⑵ 侮辱:他人の人格を蔑視する価値判断を表示すること ⇒ 行為者の主観や評価 ⑶名誉毀損との違い:事実の摘示の有無 ⇒ 保護法益の毀損の程度が弱い ∴ 法定刑が軽い ⑷名誉毀損罪と侮辱罪の例 ・Aは頭が悪いというのは評価であり外部的名誉が侵害されるので侮辱罪成立 ・Aは知的障害で通院歴があるというのは事実の摘示で外部的名誉が侵害されるので名誉毀損罪成立 ・Aは平均より300g太っているというのは事実の摘示で名誉感情のみ侵害されるので成立する罪名は無し ④法的性質:親告罪、抽象的危険犯
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§ 信用毀損罪233前段:虚偽の風説を流布し又は偽計を用いて人の信用を毀損した者 ① 保護法益:経済的な側面における人の社会的評価(判例) ② 客体:人の信用 = 経済的信用全般 ⑴ 具体例:支払能力 ・ 支払意思 ・ 商品の品質に対する社会的な信頼 ⑵判例:コンビニで購入した飲料に異物が混入という嘘を流布 → 本罪成立 ③行為 ⑴虚偽の風説を流布:客観的真実に反する事実を不特定又は多数人に伝播する ⇒ 伝播する可能性で足りる=特定かつ少数でもよい(判例) + ⭐️虚偽に限定 ⑵偽計を用いる:人を欺罔・誘惑し又は錯誤・不知を利用すること ⑶信用を毀損:⭐️抽象的危険犯=現実に信用が毀損される必要はない ∵ 認定困難 § 業務妨害罪233後段・234:虚偽の風説を流布、偽計、威力を用いて業務を妨害した者 ①保護法益:業務活動そのもの(判例) ②客体:業務=社会生活上の地位に基づき継続して行う事務 ⑴具体例:業務妨害の業務<業過致死の業務 ・業務妨害罪の業務は一般的な仕事のことをさし、娯楽は含まない(例:狩猟) ⑵ 公務:公務員の職務 Q 本罪の業務に公務執行妨害罪の職務が含まれるか⭐️B+ ⑴問題の所在:Aが警察官による捜索を偽計により妨害 ⑵判例⭐️色々学説あるが判例だけ抑えればok ・強制力を行使する権力的公務:業務に含まれない ∵ 打たれ強さあり → 保護の必要なし ・上記以外の公務:業務に含まれる ∵ 打たれ強さなし → 保護の必要あり ⑶具体例 ・権力的公務:逮捕・勾留・捜索・差押え・強制執行・即時強制 ・上記以外の公務:県議会委員会の条例案採決・国立大の講義・行政代執行手続なく段ボール住居撤去 ③行為 偽計業務妨害:虚偽の風説の流布又は偽計を用いる ⇒ 信用毀損罪と同様 威力業務妨害:威力を用いる = 人の意思を制圧するに足りる勢力を示す ⑴ 具体例 偽計業務妨害:〇 虚偽の電話注文・障害物を沈めて秘かに漁網を破損・通信線を秘かに切断 威力業務妨害:〇 総会屋が株主総会で怒号・猫の死骸を引き出しに入れる・イルカ収容中の網を切断 ⑵ 偽計と威力の区別:被害者の目に見える形で行われたら威力、そうでない場合が偽計 ⑶業務を妨害した:抽象的危険犯 ∵ 認定困難 § 電子計算機損壊等業務妨害罪234の2:電子計算機を損壊等をさせて業務を妨害した者 ①特徴:電子計算機に対する加害行為による業務妨害を通常の業務妨害より重く処罰 ∵ 程度が深刻 ②保護法益:電子計算機による業務活動 ③ 電子計算機:情報を収集・処理・制御する機能 → 〇 パソコン ・ × マイクロコンピュータ ④行為:物理的・電子的に目的とした動作をできなくする ⑤法的性質:抽象的危険犯・未遂も罰する234の2
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1 財産犯総論 □ 財産犯の客体 •財物:=261・252の物 •財産上の利益:246等 1①財物 Q 財物の意義 ⑴問題の所在:電気は窃盗・強盗・詐欺・恐喝との関係で財物とみなす245・251 ⑵ 学説 管理可能性説: 物理的・事務的に管理可能な物 ∵侵害された場合保護すべき (批判)財産上の利益も財物に含まれてしまう 物理的管理可能性説: 物理的に管理可能な物 ∵財物と財産上の利益の区別 (批判)245 有体性説(⭐️通説):有体物(個体・液体・気体) ∵245の文言 ∴電気は例外 ⑶あてはめ 管理可能性説:有体物、電気、電気以外のエネルギー、債権・情報全て財物(電気は注意規定) 物理的管理可能性説:有体物、電気、電気以外のエネルギーは財物(電気は注意規定)、債権・情報は該当しない 有体説:有体物のみ財物。電気は245条、251条により例外。電気以外のエネルギー、債権・情報は該当しない。 Q 法禁物は財物に含まれるか ⑴法禁物:法令上私人による所持・占有が禁止された物(例)覚せい剤、拳銃 ⑵判例:財物に含まれる ⑶理由:法禁物の没収にも一定の手続きが必要 ⇒ 没収制度の存在は法禁物も財物を前提 Q 不動産は財物に含まれるか ⑴通説:⭐️各財産犯により異なる ・窃盗罪・強盗罪 ⇒ 含まれない ・上記以外の財産犯 ⇒ 含まれる ⑵ 理由:不動産侵奪罪 Q 財物に財産的価値を必要とするか ⑴問題の所在:財産的価値のないものに財産犯が成立するか ⑵通説:必要。但し、主観的な価値でよい(判例は不要?) ⑶ あてはめ:〇 無効な約束手形・価格2銭円程度の石塊 ②財産上の利益 ⑴定義:財物以外の財産的利益のすべて(⭐️書けるように) (例)債権 ・ 担保権等の権利の取得 ・ 役務(サービス)の取得 ・ 債務の免除 ・ 支払いの猶予 ⑵客体による財産犯の分類 ・財物罪=1項犯罪:財物を客体とする犯罪 ⇒ 背任罪以外の全て ・利得罪=2項犯罪:財産上の利益を客体とする犯罪 ⇒ 強盗・詐欺・恐喝・背任 ⇒ ⭐️利益窃盗・利益横領は不可罰 Q 法禁物の返還請求権について財産上の利益に含まれるか ⑴問題の所在:覚せい剤の返還を免れるために強盗 ⇒ 覚せい剤の返還請求権は財産上の利益? ⑵判例:含まれる ⑶理由:法禁物が財物に含まれる □ 財産犯の分類 ①財産犯:他人の財産を侵害する犯罪 毀棄(きき)・隠匿罪:不法領得の意思なし 領得罪:不法領得の意思あり 横領罪:占有移転なし 奪取罪:占有移転あり 盗取罪:相手方の意思に反する ⇒ 窃盗・不動産侵奪・強盗 交付罪:相手方の意思に基づく ⇒ 詐欺・恐喝 ②全体財産に対する罪と個別財産に対する罪 ・全体財産に対する罪:財産の総合的な減少で成立する財産犯 ⇒ 背任罪 ・個別財産に対する罪:財産の個別的な減少で成立する財産犯 ⇒ 背任罪以外の財産犯 (例)100万の絵の贋作を10万で購入 → 実際10万の価値 ⇒ 〇 個別財産(10万円は無くなっている) × 全体財産(10万円で10万円の価値のあるものを手に入れたので総合的には減少なし)
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§ 窃盗罪235:他人の財物を窃取した者 ①保護法益 ⇒ 窃盗罪以外の奪取罪においても妥当 Q 窃盗罪の保護法益 ⑴問題の所在:盗まれた自己物を窃取した場合 ⇒ 本権と解すると窃盗罪は不成立。占有と解すると成立 ⑵ 見解 ・本権説(反対説):保護法益は所有権その他の本権 (理由)自己物の取戻しは処罰に値しない ・占有説(判例通説):保護法益は占有 (理由)自力救済の禁止 ⑶ 結論:自力救済禁止の原則から占有が保護法益 → 自救行為による違法性阻却を検討 ②客体:他人の財物235 + 他人が占有している242(他人の占有等に係る自己の財物) ⑴ 242の解釈 ·本権説(反対説):他人が(本権に基づいて)占有している+ 他人の財物 ·占有説(判例通説):他人が(本権の有無を問わず)占有している+ 他人の財物 ⑵ 具体例:〇電気245 ×不動産235の2 ×⭐️情報(〇DVD・×自分のDVDにデータ) ③行為:他人の財物の窃取 ⑴窃取:他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転すること(判例)(⭐️論文で書く) ⇒ 他人の占有物 → 意志に反して占有移転 ⑵他人の占有:有無 ⇒ ⭐️窃盗罪と横領罪のメルクマール Q 占有の有無 ⑴判断基準:事実上の支配(客観的要件)と支配する意志(主観的要件)を社会通念から総合的に考慮 ⑵占有の肯定判例 → 窃盗成立 ⭐️判例の事例を押さえる ・自宅内の所在がわからない財物 ・自宅前の公道に放置された自転車(自宅前なので事実上の支配も支配する意思もあると評価) ・⭐️公園のベンチに置き忘れ、200メートル離れた時点で置き忘れに気づいた鞄 ∵ 時間的に近接 ・宿泊客が旅館内のトイレに忘れていった財布 ∵ ⭐️旅館の人が占有(旅館の人は手元に置いておき忘れた客に返すと考えるのが通常であり支配の意思ありと言える) ・ゴルフ場内の人工池の底のロストボールで回収・再利用が予定されていた場合 ⑶占有の否定判例 → 横領成立 ・村役場の事務室に置き忘れられた紙幣 ∵ 誰でも立ち入れる ・列車の網棚に置き忘れられた荷物 Q 占有の帰属 ①問題の所在:複数の人が占有に関与 → 誰の占有 ②判例 ⑴対等な関係:各保管者が占有 (例)対等な保管者の一人が物を領得 → ⭐️他者との関係で窃盗成立(横領ではない) ⑵上下・主従関係:上位者が占有・下位者は占有補助者 (例)商店内の商品(商店主が占有・⭐️店員は占有なし) → 店員が商品領得 → 窃盗成立 ※ 会社の雇われ店主の場合は横領になる ⑶寄託された封緘物:寄託者が容器に物を入れて容器に封を施す(=封緘物) → 受託者に預ける ※封緘(ふうかん):手紙や文書などの封をとじること ・封緘物「自体」の占有:受託者 (例)現金入った封筒を「封したまま」領得・開封⇒ 横領 ・封緘物の「内容物」への占有:寄託者 (例)「開封」後内容物を取出す⇒ 窃盗 ⭐️Q 死者の占有:死者が生前占有していた財物を領得 ① 問題の所在:殺人後に領得の意思を生じ財物を領得 → 他人の占有があるといえるか(殺人+窃盗?) ⇒ 最初から領得の意思で殺人後に財物を領得 → 強盗殺人成立 ②反対説:死者は物を占有できない=死者の占有は否定 → 占有離脱物横領罪成立 ③判例通説:⭐️死者の占有自体は否定。ただし、被害者が生前に有した占有は死亡させた犯人に対する関係では、死亡と時間的・場所的に近接した範囲内において保護に値する ∴ ⭐️上記要件をみたす場合、一連の行為を全体的に観察して占有を侵害したと解し、窃盗罪成立 ④無関係の第三者が死者から財物を領得:占有離脱物横領罪成立 ∵ 上記要件をみたさない ⑶意思に反する占有移転:特段の限定はない 〇 パチンコ店で体感器を用いて不正にメダルを獲得(因果関係も不問。体感器を使うことは占有者(店舗)の意思に反する) × パチンコ店で他の共犯者の不正行為を隠蔽する目的で通常の方法により遊戯してメダルを獲得 〇 振り込め詐欺により被害者が振り込んだ金員をATMから引き出す行為 ∵ 正当な権限なし ④ 未遂243 ⑴ ⭐️着手時期:構成要件的結果発生の現実的危険性を含む行為を開始した時点 ⑵判例:実行着手ありとした時点 ・住居侵入後、財物を物色した時点 ⇒ 住居侵入時ではない ・土蔵の外扉の錠を破壊して扉を開いた時点 ⇒ 無人で危険 ・深夜の店舗に侵入後、レジのある場所に行きかけた時点 ⇒ 深夜で危険 ・窃取の意思で他人のズボンのポケットの外側に触れた時点 ⇒ ⭐️財物の存否確認の意思なら否定 ⑤既遂 ⑴既遂時期:他人の占有を侵害して財物を自己又は第三者の占有に移した時(取得説 判例通説) ⇒ 占有を移した時:財物の大小、搬出の容易性、他の支配領域内等を総合的に考慮 ⑵判例 〇店舗内で靴下一足をポケットに入れた ⇒ 店舗内+小型物 (小型の物なので店舗の中でもポケットに入れれば自己の占有に移したと言え既遂) ×電気店内で窃盗目的でテレビを持ち上げた ⇒ 店舗内+大型物 (大型の物なので店舗の中で持ち上げても自己に占有が移ったとは言えない) ×壁に囲まれた敷地内の資材小屋から重量物を敷地内の壁近くに運んだ ⇒ 敷地外が必要 〇他人の家の風呂で発見した指輪を風呂場内の容易に発見できない場所に隠匿 ⇒(ポケットの中に指輪を入れるのと同じ→靴下をポケットに入れるのと同じ) 〇⭐️他人の車のエンジンを始動させ発進可能な状態にした ⇒ 自由に持出せる(エンジンがかかったらすぐ動かせるので危なくて取り返せなくなるため) ⑥⭐️ 主観的要件:故意は必要 Q 故意とは別の明文なき主観的構成要件要素として不法領得の意思を要するか、又、その内容は何か ⑴ 問題の所在:使用窃盗及び毀棄・隠匿罪との区別の必要性 ≒ 理由 ・使用窃盗:他人の財物の一時無断使用 ⇒ 不可罰 ∵ 損害が軽微 ・毀棄・隠匿罪:他人の財物の毀棄・隠匿 ⇒ 窃盗より軽い ∵ 窃盗は利欲犯的性格から毀棄隠匿よりも強い非難 ⑵判例・通説:振る舞う意思と利用・処分意思を内容とする不法領得の意思が必要 ・権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞う意思 ∵ 使用窃盗と区別 ・財物の経済的用法に従い利用・処分する意思 ∵ 毀棄・隠匿罪と区別 ⇒ 権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意志 ⑶あてはめ ・振る舞う意思:社会通念上、使用貸借又は賃貸借によらなければ使用できない様な形態の有無 × 自転車の一時使用+返却 〇自転車の一時使用+放置 〇自動車の4時間程度の一時使用(元の場所に返却)(判例) ※ ∵自動車は高価 ・利用・処分意思:もっぱら毀棄・隠匿目的である場合以外は肯定 〇 性的目的での女性用下着の窃取(判例) 〇 コピー目的での機密資料持ち出し(判例)
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窃盗罪が成立するには、故意の他にいかなる主観的要件が必要になるか。いわゆる不法領得の意思の要否ないし内容が問題となる。不可罰的な使用窃盗と区別するために権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として振る舞う意思が必要と解する。また、窃盗罪が利欲犯的性格を有することにより毀棄・隠匿罪よりも重く処罰されることから、毀棄・隠匿罪と区別するために財物の経済的用法に従い利用・処分する意思も必要と解する。従って、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意志を内容とする不法領得の意思が必要 ⭐️不可罰的な使用窃盗との区別と毀棄隠匿罪との区別のために不法領得の意思が必要と導くことがポイント
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不動産侵奪罪235の2:他人の不動産を侵奪した者 ⑴客体:他人の占有する不動産 ⇒ 不動産の窃盗を処罰 ⑵行為:侵奪 = 他人の不動産の占有を意思に反して排除し、自己又は第三者の占有を設定する≒窃取 ⇒ 新たな占有(=占有の態様が質的に変化)の有無で判断 ⑶肯定判例 他人の土地に勝手に建造物を建築、 他人の農地を無断で耕作、 空き室を勝手に住居にする 転貸禁止+屋台使用のみで貸与 → 転貸し風俗営業施設を建築(新たな占有)、 転削し土砂を投棄通常の土地の使い方ができなくなる) ⑷否定判例 借家人が賃貸借終了後に居座る、 借地上に事業用の事務所建築 → 無断で居住用に変更 ③主観的要件:故意 + 不法領得の意思(窃盗と同じ) ④未遂234:罰する
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§ 親族相盗例244:配偶者・親族の窃盗は刑を免除 ①意義:配偶者・直系血族・同居の親族の窃盗・不動産侵奪は刑を免除、それ以外の親族は親告罪 ⇒ 詐欺・恐喝・横領・背任及びそれらの未遂にも準用251・255 + ⭐️強盗は準用なし ②趣旨:法は家庭に入らず ③免除の法的性質:一身的処罰阻却事由(判例) ∵ 趣旨 ④要件:配偶者・直系血族・同居の親族(直系を除く6親等内の血族3親等内の姻族) ⇒ ⭐️配偶者には内縁関係の者は含まない + 準用も否定 Q 窃取の目的物の占有者と所有者が異なる場合、親族関係の必要な人的範囲 ⑴問題例:Aが父Bの時計を窃取 → Bは占有者、時計の所有者は親族でないC ⑵判例:所有者・占有者双方との間に親族関係が必要 ⑶理由:趣旨から、全ての関与者が家庭内に存在することが必要 Q 親族が未成年後見人でもある場合 ⑴問題例:未成年者Aの祖母Bが未成年後見人でもある → BがAの財物を窃取 ⑵問題の所在:未成年後見人は保護する立場 → 悪用すべきでない ⑶判例:244不適用 ⑷理由:未成年後見人は公的性格 → 法は家庭に入らずという趣旨が妥当しない Q 親族関係の錯誤がある場合 ⑴問題例:Aが父Bの時計を窃取 → Bは占有者、所有者は親族でないC → Aは父Bが所有者と誤信 ⑵ 結論:244不適用 ⑶理由:一身的処罰阻却事由 → 故意の対象ではない ※処罰阻却事由は故意の問題ではない ⑤共犯者:244不適用
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3 強盗の罪 § 強盗罪(1項強盗)236Ⅰ:暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者 ①客体:他人の占有する財物 ⇒ 財産上の利益なら2項強盗 ②保護法益:占有 + 生命・身体・意思の自由 ③行為:暴行又は脅迫を用い財物を強取 → 結合犯:暴行or 脅迫+盗取 ⇒ 因果経過:暴行又は脅迫 → 被害者の反抗抑圧 → 財物の強取 ※結合犯:それぞれ独立して犯罪となる数個の行為を結合して、法律上1つの犯罪としたもの ⑴暴行・脅迫:最狭義の暴行・脅迫=相手方の反抗を抑圧する程度 ⇒ 強盗(反抗抑圧) > 恐喝(畏怖する=反抗抑圧に至らない程度) > 窃盗(畏怖しない) ※暴行脅迫で反抗抑圧に至らなかったら恐喝 ※暴行概念 ⅰ最広義:不法な有形力の行使 例:騒乱 ⅱ広義:不法な有形力の行使+人に対する 例:恐喝、強要、公務執行妨害(パトカーを蹴る等) ⅲ狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する 例:暴行、脅迫 ⅳ最狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する+反抗抑圧程度 例:強盗、強制性交等 ➢ 問題例 客観的には反抗抑圧でないが主観的には反抗抑圧 ⇒ 不能犯 ※ 不能犯:犯罪行為に着手したが、結果の発生が客観的に不可能であった場合のことをいいます。たとえば、弾の装填がされていない銃で狙撃しようとした場合→具体的危険説:犯人が被害者の臆病な性格という特殊事情を知っていた場合又は知り得た場合 スリが窃取のために軽くぶつかった ⇒ 該当しない(窃盗) 財物奪取のため不意に通行人を後方から突き倒す ⇒ 該当する (⭐️頻出)ひったくり目的で車の窓からバッグの紐を引っ張る ⇒ ×引っ張る時点では強盗罪の暴行脅迫ではない 〇引っ張った後にバッグを離さず被害者と共に車進行(転倒して生命身体に重大な侵害が及ぼされる危険があるため) ⑵手段性:財物奪取に向けられたもの ⇒ 強盗罪の暴行・脅迫:⭐️財物奪取に向けられた、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫 こめq⭐️定義を書けるように ※被害者が気に食わないから暴行脅迫するのでは非該当 ⑶強取:強盗罪の暴行又は脅迫により、相手方の意思に反して財物を自己または第三者の占有に移す Q 反抗抑圧の要否 ⑴問題例:客観的には反抗抑圧程度の暴行・脅迫、被害者の反抗抑圧には至らない → 畏怖で強取 ⑵ 判例:強盗成立 ⇒ 現実の反抗抑圧は不要 Q ⭐️事後的奪取意思:暴行・脅迫の後にはじめて財物奪取の意思を生じた場合 ⑴問題例:強制性交等の目的で暴行 → 反抗抑圧 → 高価な時計を見つけ、奪取意思を生じ強取 ⑵判例・通説 原則:不成立 ∵ 財物奪取に向けられたものではない 但し:財物奪取に向けられた新たな暴行・脅迫 + 反抗抑圧状態を継続させるに足りるもの → 成立 (⑶あてはめ:簡単に認定 ∵ 反抗抑圧状態を継続 肯定:腕を持ち上げる(有形力を行使=暴行) ・ 時計をよこせと言った(要求・発言=脅迫) 否定:気絶していた ・ 死亡していた ⇒ 窃盗 ④未遂:罰する243⇒ 着手時期 = 暴行又は脅迫の開始時 ⑤ 既遂:罰する⇒ 既遂時期 = 財物の占有を取得時 ⑥主観的要件:故意 + 不法領得の意思 が必要
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AがBに強制性交等の目的で暴行を加え反抗を抑圧し、性交等をした後、高価な腕時計にはじめて気づきBの腕をつかみ時計を奪取 ーーーーーーーーーーーー Aには強制性交等罪が成立。ではその後に奪取意思を生じ、Bから時を奪った行為について強盗罪が成立するか、いわゆる事後的奪取意思が問題となる。そもそも、強盗罪は財物奪取に向けられた、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を手段として財物を奪取する犯罪類型である。従って、本罪の暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない。ところが、Aの当初の暴行は財物奪取に向けれらたものではない。よって当初の暴行を捉えて強盗は成立しない。ただし、財物奪取に向けられた新たな暴行・脅迫があれば成立する。そして、その新たな暴行・脅迫は反抗抑圧状態を継続させるに足りるものであればよいと解する。本件でみるに、
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§ 強盗利得罪(2項強盗)236Ⅱ:前項の方法により財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者 ①客体:財産上の利益 ⇒ 財物なら1項強盗 ⇒ 不法の=利益を得る方法の不法性(×利益自体の不法性) → 法禁物の返還請求権も該当する ②行為:暴行または脅迫を用いて財産上の利益を取得 ⇒ 因果経過:暴行または脅迫 → 反抗抑圧 → 財産上の利益を取得 ⑴ 暴行または脅迫:財産上の利益の取得に向けられた、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫 ※1項号等では「財物取得に向けられた」 ⑵財産上の利益の取得 (例)債務の支払請求 → 暴行により反抗抑圧 → 債務免除 Q 処分行為(=被害者の意思で財産上の利益を相手方に移転させる行為)の要否(⭐️論点を落としがち) ⑴問題の所在:処分行為が財産上の利益の取得に必要 ⑵問題例:債務免除のために債権者を殺害 ⑶判例:不要 ⑷理由:被害者の反抗を抑圧して取得する犯罪 → 任意の処分行為は予定されていない ※上記理由も書く ※反抗抑圧状態何もできない被害者に処分行為を求めるのは不適切 ※詐欺や恐喝などの交付罪では必要。強盗では不要 Q ⭐️利益移転の具体性・確実性の要否 ⑴問題の所在:債権者を殺害しても相続人がいる等で債務免除されない → 財産上の利益取得なし ⑵判例:⭐️利益移転の具体性及び確実性が必要 ⑶理由:2項強盗罪の処罰範囲を限定 ⑷あてはめ:事実上債務を免れたといえるか ・相続人なしの場合、利益移転の具体性・確実性あり ・相続人なしの場合、債権の物的証拠無しなら利益移転の具体性・確実性あり ・相続人なしの場合、債権の物的証拠ありなら利益移転の具体性・確実性無し ※債権の物的証拠無しなら、相続人は債権を主張できなくなる ・飲食店で食い逃げのために店員を殴り逃亡 → 〇 ・キャッシュカードを窃取し、反抗抑圧の暴行・脅迫を加え暗証番号を聞き出す → 〇 ⑸否定の効果:暴行・脅迫がない → 未遂すら成立しない ∵ 実行行為がない ③1項詐欺罪との関係 ➢ 無銭飲食の意図を秘して料理を取得 → 反抗抑圧程度の暴行・脅迫により代金請求を免れる ⑴検討:1項詐欺罪 → 2項強盗罪 ⇒ 両者の併合罪? ⑵判例:2項強盗罪の混合包括一罪 ⑶理由:両罪は時間的・場所的に近接 + 被害法益は実質的に同一(料理・料理の代金) § 事後強盗罪238:窃盗が財物の取返しを防ぐ、逮捕を免れる、罪跡隠滅等のために暴行又は脅迫をした ①意義:財物奪取に向けられた暴行・脅迫ではない(強盗ではない) ⇒ 強盗として扱う ② 背景:窃盗犯が現場離脱の際に暴行・脅迫を加えることが多い ⇒ 人身保護が必要(多) ③ 行為:暴行又は脅迫 ⑴程度:相手方の反抗を抑圧する程度 ⑵相手方:目的達成の障害となりうる者 (例)被害者・逮捕しようとする者等 ⑶⭐️窃盗の機会の継続中 ∵ ⭐️条文の位置から財産犯 (論文に書く) Q 「窃盗の機会の継続中」の当否 ⑴ 判断基準:容易に発見されて、財物を取り返されあるいは逮捕され得る状況(判例) ⇒ ⭐️時間的・場所的接着性、被害者側による追跡の有無 により判断 ⑵ 肯定事例 ・窃盗後、被害者に追跡される → 現場から離れて逃亡する途中で被害者に暴行 ・窃盗後、電車内で現行犯逮捕 → 5分後に連行中の到着駅で逮捕した車掌に暴行 ・⭐️窃取後、天井裏に潜伏 → 3時間後警官に発見 → 逮捕を免れるため宅内で警官に暴行 ※3時間も経っているが窃盗の機会の継続中といえるか:同じ場所で窃盗、暴行をおこなっており、場所的接着性あり ⑶ 否定事例 ・窃盗後、現場離脱 → たまたま近隣を巡回中の警官に職質され暴行 ※追跡無し→「窃盗の機械の継続中」否定 ・窃盗後、現場離脱 → 1km離れた後、再度窃盗目的で被害者宅に戻った → 発見され暴行 ④目的:財物が取返されることを防ぐ ・ 逮捕を免れる ・ 罪跡を隠滅する ⑴事後強盗罪は目的犯 ⇒ 成立に目的達成は不要(目的があればよい) ⑵居直り強盗:被害者に発見された窃盗犯が、新たな財物奪取目的で暴行・脅迫を行う場合 ⇒ 強盗(×事後強盗):⭐️窃盗後の暴行・脅迫でも目的により構成要件が異なる Q 窃盗既遂+居直り強盗既遂 の関係 ⑴判例:強盗罪の混合包括一罪 ⑵ 理由:時間的・場所的に近接 + 被害法益の実質的同一性(被害者の財物) ⑶共犯と事後強盗の性質 Q 事後強盗の暴行・脅迫から関与した者の罪責 ⑴問題例:AがXから財物窃取して逃亡 → 友人Bと遭遇 → Bに事情説明しBと共に追跡したXに暴行 ⑵問題の所在:Bは暴行のみ関与しており窃盗は無関係 ⑶学説:事後強盗の性質から結論が異なる ・結合犯説: 事後強盗=窃盗+暴行or 脅迫の結合犯(強盗と同様)⇒ 承継的共同正犯の問題 (批判)窃盗に着手した時点で事後強盗未遂とするのは着手時期が早すぎる ・身分犯説:窃盗犯であることを身分とする身分犯⇒ 共犯と身分の問題 → ⅰ 不真正身分犯説 暴行・脅迫が窃盗犯により行われた場合の加重類型 ⇒ 65Ⅱの問題 (批判)窃盗と暴行脅迫は罪質が異なる犯罪類型であるため加重類型にならない(窃盗は財産犯だが暴行脅迫はそうではない) ⅱ 真正身分犯説(自説) 窃盗犯という真正身分犯にのみ成立 ⇒ 65Ⅰの問題 ⑷真正身分犯説からの結論:真正身分犯 →65Ⅰで処理 →Bに事後強盗罪の共犯が成立 ⭐️論文で自説を書くときは多説も批判すると高得点 -------------- (身分犯の共犯) 第六十五条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。 2身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。 -------------- ⑤未遂:罰する243 ⇒ 未遂・既遂は先行する窃盗の未遂・既遂によって決する(判例通説) (例)窃盗既遂+本罪目的で暴行=事後強盗既遂 ・ 窃盗未遂+本罪目的で暴行=事後強盗未遂 Q 事後強盗の予備罪が成立するか ⑴事例:窃盗目的+見つかったら暴行するつもりで凶器を購入 → 窃盗の着手前に発覚 ⑵問題の所在:明文なし + 条文の位置 ⑶判例:事後強盗予備の成立を認める ⑷理由:238条は「強盗として論ずる」と規定 ∴ 237の強盗には事後強盗も含む § 昏睡強盗罪239:人を昏睡させてその財物を盗取した者は強盗として論ずる ① 行為:昏睡させて財物を盗取 (例)〇酒に酔わせて意識障害 ×既に昏睡状態(自分で酔い潰れている人から財物を盗取しても不成立) ②未遂:罰する243 ③予備:成立(≒事後強盗)
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債務者Aが債務逃れのために債権者Bを暴行により殺害した事案 ーーーーーーーーー Aの行為につき、強盗利得罪を基礎とした強盗殺人罪が成立するかが問題となる。まず、暴行は反抗を抑圧する程度のものであったと解する。もっとも、本件ではBによる処分行為がなされていない。そこで強盗利得罪において被害者による処分行為が必要かが問題となる。そもそも、強盗利得罪は被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪である。とすれば、被害者による任意の処分行為は予定されていないというべきである。従って、処分行為は不要。ただし、処罰範囲を限定するべく財産的利益の移転の具体性・確実性が必要である。本件でも、
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警官に追跡され逃走中の窃盗犯が、犯行現場から3km離れた場所で逮捕を免れるため警官を殴った事案 ーーーーーーーーーー Aに事後強盗罪が成立するか。反抗抑圧程度の暴行と逮捕を免れる目的は認められる。もっとも、暴行は現場から3km離れた場所で行われていることから、窃盗の機会の継続中といえるかが問題となる。そもそも、同罪は財産犯である以上、窃盗の機会の継続中に行われたことを要する。そして、窃盗の機会の継続中といえるか否かは、時間的・場所的接着性や被害者側による追跡の有無等により判断すべきと解する。本件は ⭐️設問では警察による追跡があるので、窃盗の機械の継続中であると肯定する
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財物を窃取して逃走中のAが偶然遭遇した友人Bに事情を話し、追跡したXに対しBと共同して暴行を加えた ーーーーーーーーー Aには事後強盗罪が成立する。では、Bにも事後強盗罪が成立するか、暴行・脅迫にのみ関与した者の罪責が問題となる。この点、事後強盗罪を窃盗と暴行・脅迫との結合犯と捉え、承継的共同正犯の問題とする見解がある。しかし、この見解では事後強盗の目的で窃盗に着手した時点で事後強盗罪が成立することになりかねず、妥当ではない。そこで、事後強盗罪は窃盗犯であることを身分とする身分犯であると解し、65条により処理するのが妥当である。そして、不真正身分犯と解する見解があるが、非財産犯である暴行・脅迫と財産犯である本罪との間に加重類型という性質を見出すことは困難である。そこで、事後強盗罪は真正身分犯であると解する。そして、本件では
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§ 強盗致死傷罪240:強盗が人を負傷させたとき ・ 死亡させたとき ①主体:強盗 ⇒ ⭐️未遂・既遂を問わない(判例) ※ 財物の占有を取得できなくても強盗致死傷罪は成立する (例)強盗未遂 + 暴行により被害者死亡 → 本罪が成立しうる ②故意:結果的加重犯の側面を有する Q 傷害・殺人の故意がある場合 (事例)被害者を殺して財物を奪おうと考えて実行した ①問題の所在:結果的加重犯は本罪の対象 → 犯人に傷害・殺人の故意がある場合は不明確 ②旧判例:240は純粋な結果的加重犯の規定 ∴ 犯人に故意がある場合は含まない ③現判・通説:240は故意がある場合を含む 【240には4つのパターンがある】 ⅰ強盗致傷:傷害結果発生 + 故意なし = 結果的加重犯 ⅱ強盗致死:死亡結果発生 + 故意なし = 結果的加重犯 ⅲ強盗傷害:傷害結果発生 + 故意あり = 故意犯 ⅳ強盗殺人:死亡結果発生 + 故意あり = 故意犯 ④ 理由 (2つとも書けるように) ⑴ 強盗の機会に死傷結果が多い事に着目 → 故意を有する場合は極めて多い → 排除は趣旨に反する ⑵ 結果的加重犯に通常用いられる文言「よって」がない ③行為:暴行・脅迫 Q⭐️ 死傷の原因が暴行・脅迫以外の場合 (例)Aに暴行して財物を奪取 → Aが逃亡し車に轢かれた ① 問題の所在:強盗の手段としての暴行・脅迫から結果発生 → 本罪成立 ⇒ それ以外の場合は? ②反対説:強盗の手段としての暴行・脅迫から生じた場合に限り本罪成立 ③ 判例通説 ⑴結論:強盗の手段としての暴行・脅迫から生じた場合に限定しない ⇒ ⭐️強盗の機会に生じれば足りる ⑵理由:強盗の機会に犯人が死傷結果を生じさせる場合が多いことに着目 ④あてはめ:⭐️強盗の機会≒強盗行為と密接な関連性を有する行為により結果が生じた場合 ⇒ 時間的・場所的近接性、犯行意図の継続性、 被害者の同一性 ⑶ 肯定判例⭐️ ・強盗の手段としての暴行・脅迫が原因の場合 ・財物奪取目的で母親を殺害後、そばで寝ていた幼児2人を殺害 ・強盗犯が追跡してきた家人を日本刀で刺して殺害 ・タクシー運転手に車内で銃で脅して金品を要求 → 6km走行させ逃走のため被害者の頭部を殴打 ・強盗被害者が強盗から逃れるため逃亡したところ、第三者が運転する自動車に轢かれ死亡 ⑷否定判例 ・強盗の過程で誤って乳児を踏みつけて殺害(犯行意図の継続性無し) ・強盗殺人後、犯人らの顔と犯行を知る者の殺害を共謀 → 犯行から約5時間後、誘い出して殺害(時間的場所的近接性無し、犯行意図の継続性無し) ・日頃の私怨をはらすために強盗の機会を利用して被害者を殺害(犯行意図の継続性無し) ・強盗の共犯者が強盗の際に仲間割れをして他の共犯者を殺害 Q 240条の既遂時期(例)Aに暴行したが財物を奪取 する前にAが逃亡し車に轢かれた ⑴問題の所在:財物奪取前にAが逃亡(財物の占有取得なし) ⇒ 強盗は未遂+本罪成立 ⑵判例通説:死傷結果が生じたときに既遂となる → 強盗自体が未遂でも本罪は既遂 ⑶ 理由:⭐️強盗致死傷罪の法定刑が極めて重いのは、生命・身体を第一次的な保護法益としているから Q 傷害の程度 ⑴従来の通説:傷害罪よりも重度 → 加療を要する程度 ∵ 下限7年 → 減軽でも執行猶予不可 ※ 加療とは:病気やケガの手当てをすること ⑵ 現有力説:傷害罪と同等 ∵ H16改正で下限6年 → 執行猶予可 Q 脅迫による死傷結果 ⑴反対説:本罪不成立 ∵ 極めてまれで想定しない ⑵判例通説:本罪成立 ∵ 脅迫による畏怖から危険な行為 → 死傷結果 ⇒ 経験上十分ありうる 未遂:罰する243 ⇒ 判例・通説を前提とすれば、強盗殺人未遂の場合のみ成立 ・強盗致傷 + 致傷結果の不発生 ⇒ 強盗 ∵ 結果的加重犯の未遂は観念できない ・強盗傷害 + 傷害結果の不発生 ⇒ 強盗 ∵ 傷害の未遂は暴行 → 観念できない ・強盗致死 + 致死結果の不発生 ⇒ 強盗 ∵ 結果的加重犯の未遂は観念できない § 強盗・強制性交等及び同致死罪241:強盗が強制性交等及び同致死罪を犯した者 ① 241Ⅰ:強盗罪と強制性交等罪の結合犯 + 前後関係・既遂・未遂は問わない ※結合犯:それぞれ独立して犯罪となる数個の行為を結合して、法律上一つの犯罪としたもの。暴行または脅迫と盗取とが結合した強盗罪など。 ② 241Ⅱ:両罪が共に未遂で死傷結果なし → 任意的減軽 + いづれか中止の場合、必要的減免 ③ 241Ⅲ:死亡させた場合を規定 + 故意がある場合も含む ∵ 「よって」ない
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Aが被害者を殺害して財物を奪おうと考え実行した場合 ーーーーーーーー Aに240条の罪が成立するか、240条が殺人の故意ある場合を含むかが問題となる。そもそも240条は、犯罪学的に見て強盗の機会に犯人が死傷の結果を生じさせる場合が多いことに着目して規定された犯罪類型である。そして、犯人が殺人の故意を有するという事態は、犯罪学的にみて、極めて多い事態であるといえこの場合を排除するのは妥当ではない。そこで、240は殺人の故意がある場合も含む規定であると解する。240条が「よって」という文言を用いていないのも、かかる趣旨と解する
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AがBに金品奪取目的で暴行を加えB宅内を物色していたところ、逃亡したBが自動車に轢かれて死亡した ------------ Aに強盗致死罪が成立するか。死傷の原因が暴行・脅迫以外の場合にも強盗致死罪が成立するかが問題となる。まず、Aの行為は強盗にあたる。そして、240条の罪は、犯罪学的にみて強盗の機会に犯人が死傷結果を生じさせる場合が多いことに着目して規定された犯罪類型である。とすれば、死傷の結果は強盗の機会に行われた行為によって生じたものであれば足りると解する。ただし、強盗の機会の死傷の結果といえるためには、それが強盗行為と密接な関連性を有する行為により生じたことが必要と解する
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AがBに金品奪取目的で暴行を加えB宅内を物色していたところ、逃亡したBが自動車に轢かれて死亡した ーーーーーーーーーーー 【死傷の原因を論証後】もっとも、Aは金品の奪取には至っていない。にもかかわらず、強盗致死罪は既遂となるか、強盗致死傷罪の既遂時期が問題となる。まず、強盗致死傷罪の法定刑が極めて重いのは、生命・身体を第一次的な保護法益としているからであると解される。とすれば、強盗致死傷罪は死傷結果が生じた時点で既遂になると解する
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§ 詐欺罪246:人を欺いて財物を交付させた者Ⅰ ・ 前項の方法により財産上不法の利益を得た者Ⅱ ①特徴:被害者の意思に基づく交付行為(=処分行為)によって財物・財産上の利益を取得 ②保護法益:財産 Q 国家・地方公共団体等に対する詐欺的行為がなされた場合に詐欺罪が成立しうるか ⑴事例:農業従事者でないと買えない国有地 → 営農意思があると偽りその国有地を買い受けた ⑵判例通説:成立しうる ⑶理由:国家や地方公共団体等も財産権の主体たりうる ③客体:財物Ⅰ・財産上の利益Ⅱ ⇒ 財物には不動産も含む(窃盗・強盗は含まない) □ 詐欺罪の行為及び構成要件 ①概要(例)オレオレ詐欺 ⑴〜⑸を満たして初めて詐欺成立 ⑴ 欺罔行為(=詐欺行為)(例)孫になりすまして嘘の債務の支払いを主張 ⑵錯誤(例)孫が金に困っていると錯誤 ⑶ 交付行為(=処分行為)(例)債務の支払いのためにお金を振り込む ⑷財産の移転(例)犯人が金銭を取得 ⑸ 財産的損害(例)金銭を失う ②欺罔行為(=詐欺行為): ⭐️錯誤を起こさせる行為かつ処分行為に向けられた行為 ⑴ 程度:相手方が真実を知っていれば処分行為を行わないような重要な事実を偽る (例)×取引での軽微な誇張・隠蔽は重要な事実を偽ることには当たらない→軽微な誇張隠蔽かどうかは社会通念で判断 ⑵手段:不問 - 口頭、文書、電子的方法等 ⑶不作為による欺罔行為:あたりうる(判例) → 法的な作為義務は信義則に基づきゆるやかに認める ➢ 誤振込を受けた者がその事実を告げずに、窓口で払戻しを受けた ⇒ 誤振込みを銀行に告知する信義則上の義務あり → 告知せずに払戻し=欺罔行為あり ⑷ 挙動による欺罔行為:信義則上、告知すべきといえるかで⑶と区別 →信義則に基づき告知すべきものは不作為による欺もう行為 ➢ 飲食店で代金支払い意思のない者が料理を注文した ⇒ 不告知の不作為ではなく、注文という支払意思があるという嘘を告知 → 作為による欺罔行為 ➢ 第三者に譲渡する意図を秘して預金口座を開設した ⇒ 不告知の不作為ではなく、自己が利用する意思があるという嘘を告知 → 作為による欺罔行為 ③錯誤:事実と観念が一致しないこと ⇒ ⭐️機械は錯誤に陥らない →×金属片を用いて自動販売機から商品を取出す行為 ×他人のキャッシュカードを用いてATMから現金を引き出す行為 → 機械を誤作動させる行為は欺罔行為ではない ∴ 欺罔行為なし=詐欺不成立 ⇒ 窃盗罪に問擬 ④⭐️処分行為(=交付行為) ⭐️詐欺罪で最も重要かつ頻出 ⑴定義(書けるように)⭐️:錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財物又は財産上の利益を終局的に相手方に移転させる行為 ※ 「意思」に基づいていることが重要 ⑵ 事例:〇 被害者が犯人に金銭を渡す・品物を渡す × 関係者を騙る(かたる) → 近づき隙を見て金品を持逃 ⇒ 欺罔行為は処分行為に向けられる必要がある (この例では処分行為がないので詐欺ではない) →処分行為がなければ窃盗罪に問擬(もんぎ:立件可能かどうかを検討すること) ⑶終局的な移転 ➢ (終局的な移転の肯定判例)自動車販売店の店員に単独での試乗の許可をさせた → 車を乗り逃げ ⇒ 〇 占有の終局的移転 ∵ 自動車の移動能力の高さ (自動車を試運転させてどこかに行ってしまったら通常取り戻せない) ➢ (終局的移転の否定判例)洋服店の店員に店内での洋服の試着を許可させた → 隙を見て試着したまま逃走 ⇒ × 占有の終局的移転 ∵ 店内の試着の許可 + その後の逃走は店員の意思ではない ⑷処分意思:被欺罔者による財産を移転させる意思 ※1項詐欺と2項詐欺でそれぞれ異なった論点 Q ⭐️1項詐欺の場合の被欺罔者の認識の要否(=処分意思の要否・処分意思の内容) ⑴事例:AがBの本に1万円札が挟まっていると気づく → Aが1万円を秘して本を100円で買受 ⑵問題の所在:(不作為 → 告知義務あり)Bが1万円を認識していなかった → 処分行為の該当性 ⑶学説 ・意識的処分行為説(反対説): ある特定の財物が移転する認識まで必要 財物の移転:認識必要 個々の財物の移転:認識必要 ・無意識的処分行為説(自説): 個々の財物が移転する認識は不要 財物の移転:認識必要 個々の財物の移転:認識不要 ⑷理由:移転する客体を認識させないことは詐欺の典型 Q⭐️ 2項詐欺の場合の被欺罔者の認識の要否 ⑴事例:Aが旅館に宿泊し、翌朝代金支払が惜しくなり、旅館主Bに所用で外出すると偽り許され逃亡 ※ 最初(宿に到着した時点)から代金支払いの意思がなかったら問題なく詐欺が成立 ⑵問題の所在:Bは債務免除の意思を有していない→被欺罔者に債務免除の認識を要するか ⑶学説 ・意識的処分行為説: 債務免除の認識=必要 結論=不可罰 ・無意識的処分行為説: 債務免除の認識:代金債権の準占有が終局的に移転することの認識が必要 (認識不要・準占有=事実上弁済を求め、促しうる状態) ※準占有が相手方に移る=すぐに請求できなくなる 結論:2項詐欺成立 ⑷判例:債務免除の意思表示をなさしめることが必要(意識的処分行為説) ※意識的処分行為説と無意識的処分行為説の違いは認識の厳格性の問題 ・知人を見送る(不成立) ・今晩戻ってくる(成立)←今晩戻ってこなかったならば宿泊代金は支払われない(=債務免除になる)ことはわかっていた ⑸学説の相違 ・意識的処分行為説: 準占有の終局的移転の認識:必要 債務免除の認識:必要 ・無意識的処分行為説 準占有の終局的移転の認識:必要 債務免除の認識:不要 Q キセル乗車に詐欺罪は成立するか ⑴キセル乗車:区間の連続しない2枚以上の乗車券を使用して、乗車券のない区間を乗車した場合 例:A駅で乗車 B駅までの切符購入 CD間は定期券あり→B C間は無賃乗車 ⑵問題の所在:有人改札が前提 + 乗車駅と下車駅で欺罔的行為 ⑶学説・判例 ・否定説:乗車駅は有効+下車駅で債権の認識なし(意識的処分行為説) ・乗車駅基準説(判例): 違法目的の乗車券は無効 → 呈示は欺罔行為 運搬が処分行為 → A駅出発で既遂 (批判)乗車券は正規 ・下車駅基準説 下車駅で呈示=CD駅間の乗車として運賃を欺く → 欺罔行為 処分行為=外に出て支払いを免れる(無意識的処分行為説) (批判)意識的処分行為 Q 無銭飲食に詐欺罪は成立するか (例)料理を注文→飲食→欺罔して支払いを逃れた ⑴問題の所在:あてはめの問題 ⑵結論 ・当初から支払意思がない場合 → 注文した時点で1項詐欺未遂(挙動による欺もう行為) + 飲食した時点で1項詐欺既遂 ・当初は支払意思があった場合 → 注文・飲食の時点で1項詐欺不成立 + 支払段階での欺罔的手段が問題 ⅰ 意識的処分行為説 → 支払されなくなると思った(債務免除の認識)があれば2項詐欺成立 ⅱ 無意識的処分行為説 → 外出することを認めた(準占有の移転)といえる場合、2項詐欺成立 ⇒ 欺罔的行為でなく単なる逃亡なら利益窃盗で不可罰 ⑤ 財産的損害:詐欺罪は財産犯 →詐欺罪の成立には財産的損害の発生が必要(判例) ⇒ 未遂=発生させる行為の時点 → 既遂=実際に発生した時点 Q 詐欺罪における財産的損害の内容 ⑴ 学説 ・形式的個別財産説-旧通説: 1項=財物の交付・喪失 2項=財産上の利益の交付・喪失 (理由)個別財産に対する罪=全体財産に対する罪でない ・実質的個別財産説-現通説: 実質的な財産的損害の発生 (形式的に財物、財産上の利益の交付喪失があっただけでは財産的損害に当たらない) (理由)旧通説の交付喪失は処分行為に当たるので「財産的損害」の要件が不要になる ⑵判例≒実質的個別財産説 ➢ 受領する権利を有する請負代金を詐欺的手法によって弁済期よりも早く受領権者が受領 ⇒ 不成立 ∵ 社会通念上別個の支払いにあたると言い得る程度の期間支払時期を早めることを要す ➢ 買主から売買目的物のリンゴの引渡を請求された → 貨車に積込んだ様に見せかけ買主を帰宅させた ⇒ 不成立 ∵ 既に履行遅滞状態の債務者が一時的に債権者の督促を免れても財産上の利益はなし Q 価格相当の商品の給付に詐欺罪は成立するか ⑴問題の所在:実質的個別財産説 → 金額的に損害はないが実質的な損害で問題 ⑵結論:獲得しようとしたものと給付したものとの間に、経済的に重要な齟齬があれば成立 ⑶判例 不成立=Aの欺罔によりAを医師と誤信し、Aから薬を相当価格で購入 → 薬は期待通りの効能 成立=市価2100円のマッサージ器を小児麻痺に効果がある高価な治療器として2200円で購入 →経済的に重要な齟齬あり Q 虚偽の申し立てによって各種の公的証明書を交付させた場合、詐欺罪は成立するか ⑴ 問題の所在:実質的個別財産説 → 実質的な財産的損害 + 国家的法益に対する詐欺罪の成否 ⑵結論:一定の給付をする現実的な危険性の負担の有無で判断 ⑶判例 印鑑証明書 ・ 旅券(パスポート) ⇒ 不成立 ∵ 所持人に給付をしない 国民健康保険証 ・ 簡易生命保険証書 ⇒ 成立 ∵ 所持人に保険金等を交付 Q 虚偽の申込みにより預金通帳が詐取された場合、詐欺罪が成立するか ⑴事例:口座開設(他人名義・他人使用は不可 ∵ 犯罪による収益の移転防止) ⑵問題の所在:銀行に対して、預金通帳に関して財産的損害は認められるか ⑶判例:預金通帳は財物に当たる ・他人名義:成立 ∵ 銀行が被害者から損害賠償請求等を受ける可能性あり=財産的損害あり ・譲渡目的で自己名義:成立 ∵ 挙動による欺罔行為+銀行が被害者から損害賠償請求等を受ける可能性あり Q 虚偽の申込みにより搭乗券を詐取した場合、詐欺罪が成立するか ⑴事例:外国行き飛行機の搭乗券交付(他人名義・他人使用は不可 ∵ 出入国管理) ⑵問題の所在:航空会社に対して、搭乗券に財産的損害が認められるか ⑶判例:成立 ∵ 自己名義・自己使用に限定することは経営上重要性あり → 虚偽の申し込みであると知れば交付には応じなかった(∴欺罔行為) ⇒ 運航の安全上重要 → 経済的運営にも重大な影響(∴財産的損害あり) Q 不法原因給付と詐欺 ⑴ 不法原因給付:不法の原因に基づいてなされた給付 (例)殺人依頼 → 殺人実行により報酬 ⇒ 民法90・708等により契約無効・返還請求不可(例)支払不要 ・ 支払後の返還不可 ⑵問題の所在:無効・返還請求権なし → 財産的損害が否定されるのでないかで問題 ⑶検討:⭐️1項詐欺と2項詐欺の場合に分けて検討する ① 1項詐欺の場合:不法の原因に基づいて財物を詐取 ⑴事例:AがBに「麻薬を売ってやる」と偽り、Bから代金を詐取 ⑵問題の所在:民法708不当利得返還請求権否定 → Bは代金の返還を請求できない→財産的損害が発生しない ⑶判例通説:⭐️成立(=財産的損害あり) (例)通貨偽造目的、売春目的 ⑷理由:財物に対する支配権を侵害(判例)、欺かれなければ財物を交付しなかった ⇒ ▪️被害者は不法な目的を有するが、財物を交付しただけであり、刑法的保護に値する ②2項詐欺の場合:不法の原因に基づいて財産上の利益を詐取 ⇒ ⭐️2段階に分けて検討 ⑴ 事例:AがBに「代金を支払う」と偽り売春行為等の犯罪行為を行わせ、対価の支払いを免れた ⑵問題の所在:⭐️民法90公序良俗違反で無効な契約 → 財産的損害が否定されるのではないかで問題 ⑶ 検討 ・(第一段階) 騙して売春等の犯罪行為をさせた:90 ∴ 財産上の利益にあたらない⇒ 不成立=財産的損害なし ・(第二段階) 騙して対価の支払いを免れた:90 ∴ 対価請求が認められない⇒ 不成立=財産的損害なし ⑷ 理由:公序良俗に反する契約 ⇒ ▪️被害者は自ら売春行為等の犯罪行為を行っている → 刑法的保護に値しない ⑥未遂:罰する250 ・未遂=欺罔行為の時点 ・既遂=財産移転(≒財産的損害)の時点 ⇒ 欺罔行為(錯誤・処分行為・財産的損害を起こさせる行為)が必要
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AがBの本に1万円札が挟まっていることに気づきながら、それを認識していないBからその本を100円で買い受けた Aに詐欺罪が成立するか、1万円札の移転について認識していないBの行為が処分行為といえるかが問題となる。確かに、詐欺罪は被欺罔者の意思に基づく占有移転という構造を有していることから、何らかの財物の占有移転を認識していることは必要と解する。しかし、移転する客体を被欺罔者に認識させないという詐欺における典型的な類型を詐欺罪から除外するのは妥当ではない。そこで、被欺罔者が個々の財物の移転についてまで認識している必要はないと解する。本件では
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旅館に宿泊したAが翌朝急に支払いが惜しくなり、旅館主Bに所用での外出を伝えて外出しそのまま逃亡した Aに2項詐欺が成立するか、Bに債務を免除するという認識を有していなかったことから問題となる。判例は被欺罔者に債務免除の認識が必要であるとしている、しかし、移転する客体を認識させないという最も典型的な類型を除外するのは妥当ではない。そこで、代金債権等の準占有が終局的に移転することの認識が被欺罔者にあれば処分行為といえると解する。本件では
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Aが市価1万円のマッサージ器を小児麻痺に効果がある高価な治療器であると偽り、誤信したBに1万円で購入させた ーーーーーーーーーー Aの行為につき詐欺罪が成立するか、財産的損害の有無に関して問題となる。詐欺罪も財産犯である以上、その成立のためには実質的な財産的損害の発生が必要と解される。そして、その有無は被欺罔者が獲得しようとしたものと欺罔者が給付したものとの間に経済的に重要な齟齬があるか否かで判断するべきである。本件では、確かにBは価格相当の商品の給付を受けている。しかし、Bが獲得しようとしたものは購入価格以上の価値を有する物であるところ、Aが給付したものは購入価格相当の物にすぎない。よって、経済的に重要な齟齬があるといえ、財産的損害の発生が認められる
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①罪数及び他罪との関係 (⑴ 1項詐欺と2項詐欺 ⇒ 同一財物等、保護法益同一で時間的場所的に接着なら詐欺の包括一罪 ※包括一罪:数個の行為が独立して構成要件を充足した様に見えるが、1個の構成要件に包括して評価しうる場合(例:短時間に同じ家で数回窃盗) ⑵1項詐欺と2項強盗 ⇒ 同一財物等、保護法益同一で時間的場所的に接着なら強盗の混合包括一罪 ⑶窃取・詐取した財物を欺罔行為に利用した場合 ⇒ 新たな法益侵害なら併合罪 ➢ 郵便貯金通帳を窃取した後、これを利用して窓口で払戻しを受けた ⇒ 窃盗と詐欺の併合罪 ∵ 「通帳の占有」と「現金の占有」で保護法益が異なる ➢ 郵便貯金通帳を詐取した後、これを利用して窓口で払戻しを受けた ⇒ 「詐欺罪2罪」の併合罪 ∵ ∵ 「通帳の占有」と「現金の占有」で保護法益が異なる ⑷文書偽造・同行使罪/有価証券偽造・同行使罪と詐欺罪 ⇒ 牽連犯 ⑸通貨偽造罪・偽造通貨行使罪と詐欺罪 ⇒ 詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収 ②三角詐欺 ⑴三角詐欺:被欺罔者と被害者とが異なる場合 ⑵事例:融資担当銀行員を騙して融資を受ける ⑶成立要件:被欺罔者と処分行為者が一致 ・ 被欺罔者に被害者の財産を処分する権限がある →融資担当銀行員=被欺罔者かつ処分行為者かつ処分権限あり Q 訴訟詐欺における詐欺罪の成否 ⑴訴訟詐欺:裁判所を欺いて勝訴判決を得て、敗訴者から財産を交付させる場合 ⑵事例:虚偽の債権を裁判所に主張 → 被告に放置させる(通知が届かないようにする等) → 欠席により敗訴 → 強制執行 ⑶問題の所在:交付は敗訴者の意思に反する → 処分行為ではない ⑷判例通説:裁判所=被欺罔者かつ処分行為者、 敗訴者=被害者 ⇒ 三角詐欺。として詐欺罪成立 Q クレジットカード詐欺における詐欺罪の成否 ⑴クレジットカード:カードでの支払いによって、後払いで商品購入などの決済ができるカード ⇒ 加盟店は確実に代金回収 ・ クレジットカード会社は未払リスクあり ⑴検討:自己名義の場合と他人名義の場合に分けて検討 ①自己名義のクレジットカードを不正使用した場合 ⑴事例:支払意思も能力もないが自己名義のクレジットカードを使用して商品を購入 ⑵)問題の所在:加盟店には錯誤や財産的損害なし? ⑶下級審判例:加盟店を被欺罔者・処分行為者・被害者とする1項詐欺罪が成立(←財産的損害ないが) ⑷ 理由:知っていれば信義則上取引を拒否したはず(∴錯誤あり) + 財産的損害について、代金の補充は事後であり、補充されない可能性もなくない(ほぼないが)(→財産的損害あり)(少数説) ②他人名義のクレジットカードを不正使用した場合 ⑴事例:窃取した他人名義のクレジットカードを不正使用した場合 ⑵問題の所在:加盟店には錯誤や財産的損害なし? ⑶結論:加盟店を被欺罔者・処分行為者・被害者とする1項詐欺罪が成立 ⑷理由:知っていれば取引拒否(∴錯誤あり) + 立替払いを受けられない可能性あり(財産的損害あり) ③承諾(AがBの承諾を得てBのクレジットカードを使用する場合):名義人の承諾がある場合も同様(判例) Q 登記官を騙して不動産の登記を取得した場合における詐欺罪の成否 ⑴問題の所在:三角詐欺・訴訟詐欺の一種? ⑵判例:不成立 ⑶ 理由:登記官には当該不動産を処分する権限がない(形式面の確認のみ) § 電子計算機使用詐欺罪246の2(ほぼ出ない):電子計算機に不正の指令・情報を与えて財物又は財産上の利益を得た者 ⑴意義:詐欺罪にも窃盗罪にも該当しない行為を処罰 ∵ 法定刑10年以下懲役=窃盗・詐欺 ⑵行為:銀行の電子計算機に虚偽の情報を入力、 内容虚偽のプリペイドカードを使用 ⑶未遂:罰する250 § 準詐欺罪248(試験では重要度低い):未成年者の知慮浅簿又は人の心神耗弱に乗じて財物を交付又は財産上の利益を得た者
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§ 恐喝罪249:人を恐喝して財物を交付させた者Ⅰ ・ 前項の方法により財産上不法の利益を得た者Ⅱ ①概要:反抗抑圧に至らない程度の暴行・脅迫 による瑕疵ある意思に基づく交付 ⑴ 因果経過:恐喝 → 畏怖 → 処分行為 → 喝取(かっしゅ:脅しとること。法律用語) ⑵法的性質:領得罪・奪取罪・交付罪 ②客体:財物(不動産を含む)Ⅰ ・ 財産上の利益Ⅱ ※財物から不動産が除外されるのは窃盗と強盗だけ ③行為:恐喝 =財物又は財産上の利益を交付させる手段として行われる暴行・脅迫であって、相手方の反抗を抑圧するにいたらない程度のもの ※論文で書く。「交付させる」「相手方の反抗を抑圧するに至らない」がポイント ⑴ 暴行:広義の暴行 + 相手方を畏怖させる性質を有すれば足りる ※広義の暴行=不法な有形力の行使+人に対する(脅迫、強要、公務執行妨害) ⑵脅迫:加害の対象が限定されない≠脅迫罪の脅迫(判例) + 相手方を畏怖させるに足る害悪の告知 ※恐喝罪の脅迫は脅迫罪の脅迫とは違う Q 適法行為の告知 ⇒ 脅迫罪と同様 ⑴判例:該当する。但し、権利の行使として正当といえる場合には正当行為35として違法性が阻却 ⑵理由:適法行為の告知によっても人を畏怖させることが可能 ④ 処分行為:必要 ⇒ 詐欺罪と同様 ⑤未遂:罰する250 ⇒ 恐喝した時点 → 畏怖・処分行為なし Q 権利行使と恐喝 ⑴事例:金銭消費貸借の貸主(=正当な債権を有する者)が暴行・脅迫を用いて貸金を取り立てた ⑵問題の所在:正当な権利の行使を恐喝手段によって行った ⇒ 構成要件・違法性? ⑶ 判例・通説 構成要件:保護法益 → 占有そのもの ⇒ 構成要件に該当 違法性: ⇒ 以下の3要件で正当行為として違法性阻却 権利の行使という正当な目的 + 権利の範囲内 + 手段が社会的相当性の範囲内 (例)不誠実な債務者に軽い脅迫的言動 ⑷詐欺罪でも同様 ⑥罪数及び他罪との関係 ⑴恐喝の手段としての暴行・脅迫 ⇒ 恐喝罪に吸収 ⑵恐喝により傷害結果発生→観念的競合(一つの行為で複数の構成要件に該当)→法定刑が重い犯罪のみ適用
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消費貸借の貸主Aが暴行・脅迫を用いて借主Bから貸金を取り立てた ーーーーーーーーーー Aに恐喝罪が成立するか、Aは債権者であることから正当な権利の行使ともいいうることから問題となる。まず、構成要件該当性が問題となるが、恐喝罪の保護法益は自力救済禁止の原則から占有それ自体であると解する。従って、構成要件該当性は認められる。次に、違法性が阻却されるのではないかが問題となる。違法性の実質。そこで、権利の行使という正当な目的があり、権利の範囲内であって、その手段が社会的相当性の範囲内にあると認められるときは、正当行為として違法性が阻却される。本件において
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§ 単純横領罪252:自己の占有する他人の物を横領した者Ⅰ・自己物でも公務所から保管を命ぜられ横領Ⅱ ①概要:自己の占有する他人の物を領得 (例)預かっている物を自己の物にした ⑴特徴:⭐️占有移転なし → 占有がある (=横領罪) ⑵保護法益:所有権その他の本権 (≠奪取罪) ⇒ 占有侵害を伴わない ⑶委託信任関係⭐️:自己が委託に基づいて占有する他人の物を横領 ②主体:他人の物の占有者 ⇒ 真正身分犯⭐️ ③客体:自己の占有する他人の物 ⑴ 物:財物 ⇒ 財産上の利益は含まない 電気 も含まない ∵ 245「この章の罪」=窃盗、強盗 (有体物説:電気は財物ではないが245で例外的に財物扱い→電気は横領の客体にはならない) ⑵占有 Q 本罪の占有の意義 ⑴ 問題の所在:銀行預金の預金名義人・不動産の登記名義人が横領 ⑵判例:⭐️事実上の支配のみならず、広く法律的支配を含む ⇒ 横領以外の占有は事実上の支配に限定 ⑶理由:処分可能性を要求 → 事実上の支配以外にも認められる ⇒ 銀行預金の預金名義人・不動産の登記名義人は預金・不動産の占有あり(判例) (3)委託信任関係:自己が委託に基づいて占有 ⇒ 委託に基づかないで占有 → 占有離脱物横領254 ⑷物の他人性:「他人の物」 Q 各種金銭の他人性 ⑴ 事例:AがBから預かったBの金銭を費消 ⑵判例・通説 【各種金銭】 ・封金: 他人性肯定。寄託者に所有があるため。封金の占有は受寄者にあるため、封自体を領得すれば横領。封開けて金銭を領得すれば窃盗 ・消費寄託契約: 他人性否定。受寄者に所有があるため。 ・使途を定めて占有委託(例:お願いされた買い物のために金を預かった場合): 他人性肯定。民法の動的安全(取引の安全)は妥当しない(民法では金銭はAが占有していればAの所有となるが、そうとはならない)。横領罪は所有権の保護が目的であるため。 Q 不法原因給付と横領 ⑴事例:事例1:AがBに殺人を依頼し着手金を交付 事例2:XがYに議員への贈賄を依頼し金銭を預けた ⑵問題の所在:民法708条により所有権は給付を受けた者に移る → 他人の物ではない? ※ ⭐️最初から領得するつもりなら詐欺 ⑶判例・学説(試験対策上、3説全て抑える。基本的には否定説で書く。) ・肯定説:他人物肯定(旧解釈下判例) (理由)返還請求権は否定しても所有権は失っていないため(現在は不法原因給付では反射的に所有権も移るとされているので、この考え方は妥当しないと考えられている) ・否定説:他人物否定 (理由)給付を受けた者に所有権→法秩序の統一 ・折衷説: ・給付=他人物否定 ・寄託=他人物肯定 (理由)民法708条の「給付」とは終局的な利益の移転。終局的な利益の移転とは言えない寄託では、他人物となる。 →事例の殺害の着手金の交付は給付にあたり、他人物否定 事例の賄賂の金を預けたことは寄託のあたり、他人物肯定 Q 盗品等の横領 ①事例:窃盗犯人Xが盗品の保管をAに依頼し、盗品をAに預け、Aが預かった盗品を横領した。 ②問題の所在 ⑴不法原因給付: ・否定説 ⇒ 横領不成立 ・折衷説-他人物肯定 ∵ 寄託 ⑵委託信任関係⭐️:成立には委託信任関係の破壊が必要 → 窃盗犯人との関係で保護に値するか ③判例?・学説 ・否定説:横領罪成立否定 (理由)保護法益=横領罪の保護法益は所有権だが窃盗犯は所有者ではない。よって委託信任関係は保護に値しない ・肯定説-判例?(書くなら肯定説): 窃盗犯人の占有も保護されるため委託信任関係は保護に値する ※参考:自力救済の禁止 Q 二重譲渡における横領罪及び詐欺罪の成否 ⑴問題の所在:売主Aが土地をB(第一譲受人)とC(第二譲受人)に売却。C登記。 以下が問題となる。 ・AのBに対する横領罪 ・第一売買を隠してCに売ったことによるA→C詐欺罪(善意)、 ・第一売買があったにも関わらず登記をしたことによるC(悪意)→B 横領罪の成否 ※Bが土地に住んでいて占有しているような場合も、Aは登記があれば占有があると言える(法律上の占有も含まれるから) ⑵判例・通説 ・Aが Cに売却したことに係るAのBに対する横領罪:成立 (理由)売買契約の時点で所有権が移転→他人の物 ※不完全物権変動説は民法の話で刑法とは別 ・第一売買を隠してCに売ったことによるA→C詐欺罪(善意):不成立 (理由)Cは所有権を取得するため財産的損害なし ・第一売買があったにも関わらず登記をしたことによるC(悪意)→B 横領罪: C悪意の場合 → 不成立 C背信的悪意者の場合→ 共同正犯成立 (理由)民法177の第三者との整合性 → 悪意者は第三者に含まれ、所有権を取得する。背信的悪意者は含まれず所有権を取得しない。 ⑶公務所から保管を命じられた自己物252Ⅱ (例)強制執行で差し押さえられた物 ④行為:横領 ⑴横領:⭐️不法領得の意思を実現する一切の行為 → 所有者でないとできない行為をする≒自己物 ⑵典型例:売却 ・質入れ ・費消(=使い果たす) ・抵当権の設定 Q 本罪における不法領得の意思の内容 ⑴事例:他人の物を毀棄又は隠匿した ⑵問題の所在:本罪における不法領得の意思の内容 → 窃盗等の奪取罪と同じと解するか ⑶奪取罪の不法領得の意思の内容: 振る舞う意思 + 利用・処分意思 ⑷ 判例:⭐️委託の任務に背いて、権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志 ※ 横領罪の不法領得の意思と奪取罪の不法領得の意思は異なる (⑸理由:専ら毀棄・隠匿目的でも委託信任関係を破壊するといえる →利用・処分意思は不要 Q 一時流用の場合に横領にあたるか ⑴事例:買物代金として金銭をあずかる → 欲しいものがあり後で返すつもりで費消 ⑵問題の所在:物の他人性(→肯定) + 一時流用の場合に横領にあたるか ※(再掲)使途を定めて占有委託(例:お願いされた買い物のために金を預かった場合):他人性肯定。民法の動的安全(取引の安全)は妥当しない。 ⑶結論:費消した時点において、確実な填補の意思と能力があった場合 → あたらない ⑷理由:不法領得の意思なし ∵ 損害なし ⑸あてはめ:自宅に現金あり ⇒ あたらない ・ギャンブルで儲けたら返す ⇒ あたる ⑤未遂・既遂 未遂:規定なし ∵ 横領における未遂は観念できない 既遂:⭐️不法領得の意思の発現行為があれば直ちに(判例) ⑴二重譲渡・他人物抵当権設定等 → 登記の完了時 =既遂(通説) (理由)契約成立時点では所有権を失わせる危険が具体化したとは言えない ⑵仮登記抹消のための解決金目的で不実の抵当権設定仮登記をした → 仮登記をした時=既遂(通説) ⑥罪数及び他罪との関係 Q 横領後の横領 ⑴ 事例:X所有不動産の登記名義人AがAの債権者Bのために抵当権を設定。その後、Cに売却 ⑵問題の所在:抵当権設定(=横領)の後の同一不動産の横領はどう解するか ⑶ 判例 ・旧判例:不可罰的事後行為 (不可罰的事後行為:犯罪完成。違法状態継続。その状態に含まれ評価し尽くされている行為) (理由)同一の物を2回横領することはできない ・現判例:新たな横領罪成立 所有権に対する侵害の程度が異なる→評価されていない Q 横領後の詐欺 ⑴事例:AがBから預かった物を売却(横領) → Bの返還請求を盗取されたと欺いて逃れた(詐欺) ⑵問題の所在:横領罪の客体である同一の物の返還を詐欺的手段によって免れた ⑶通説:同一被害者に対し横領物を確保するために行われた欺罔行為は横領罪の不可罰的事後行為 ⑷ 理由:重い詐欺罪成立は法の趣旨を没却 → 誘惑的要素に基づく非難可能性の減少 ∴ 法定刑が軽い
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不動産の登記名義のみを有するAが、これを奇貨としてBに当該不動産を売却して登記を移した ーーーーーーーーーーー Aに横領罪が成立するか、Aが本件不動産を占有したといえるかが問題となる。思うに、同罪における占有とは行為者に他人の物の処分可能性があるという意味である。そして、かかる処分可能性は他人の物を事実的に支配している者のみならず、法律的に支配している場合にも認められる。従って、同罪における占有とは事実上の支配のみならず法律的支配をも含むと解する。本権では
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§ 業務上横領罪253:業務上自己の占有する他人の物を横領した者 ① 特徴:単純横領の加重類型 ⇒ 自己の占有する他人の物を横領(単純横領) + 業務上 ⇒ 真正身分犯と不真正身分犯の両方の性質を有する複合的身分犯 ②業務:財物を委託を受けて保管することを内容とする職務 = 本罪の業務 ③ 事例:運送業者が配達物を横領・弁護士が預かった示談金を横領・会社員が保管する会社の金を横領 ④⭐️ 主体:他人の物の占有者(真正身分) + 業務者(不真正身分) Q 業務上横領罪と共犯 ⑴事例:村長と収入役が共同で村の公金を横領した ⑵問題の所在:村長は業務者でも占有者でもない。65条をどのように適用すべきか ⑶判例:65Ⅰにより業務上横領罪の共同正犯が成立する。科刑については65Ⅱにより単純横領罪の刑を課す ⇒ 成立と科刑を分離 学説)占有者∴65Ⅰ+業務者∴65Ⅱ ⇒ 真正身分のみ連帯で単純横領の共同正犯 § 占有離脱物横領罪254:遺失物等、占有を離れた他人の物を横領した者 ①客体:占有を離れた他人の物 = 占有離脱物 ⑴占有離脱物の定義 ・占有者の意思に基づかずにその占有を離脱 ⅰ 誰の占有にも属していない(例)遺失物 ⅱ 委託関係なく行為者の占有に帰属(例)誤って多く渡されたおつり ⑵純横領罪との区別:占有者の意思に基づき占有を離脱(委託信任関係) ⇒ 単純横領 ②行為:横領 ③他罪との関係:領得した財物の利用・処分行為・損壊行為は不可罰的事後行為 ∵ 法定刑が軽い
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7 背任の罪 § 背任罪247:他人のためにその事務を処理する者が図利・加害目的で背任行為をし財産上の損害を与えた ①概要:横領に類似 + 全体財産に対する罪 ⑴事例:銀行の融資担当が回収の見込みのない暴力団員に報酬目当てに無担保で融資(不良貸付) ⑵適用:横領不成立 → 背任を検討 ∵ ⑶特別背任罪:取締役等、重大な権限を有する者が行う背任罪 ⇒ 会社法等で規定 ・ 法定刑10年以下の懲役と重い ②主体:他人のためにその事務を処理する者(=他人のための事務処理者) ∴ 真正身分犯 ⑴ 事務:財産上の事務に限定 ∵ 財産犯 × 治療行為(例)医師が手術の際に懈怠した 〇 裁量の余地のない事務(例)登記の協力義務(判) 〇 事実行為(例)収入役を事実上代理した(判) ⑵他人のため Q 他人の登記等に協力する義務が「他人のため」の事務にあたるか ⑴ 問題の所在:二重抵当で契約の順番と登記の順番が異なる場合 → 登記は契約上の自己の義務 ⑵判例:他人のための事務にあたる ⑶理由:主として相手方の財産権保全のための事務 ③行為:任務に背く行為(=背任行為) ⑴意義 •権限濫用説:法的処分権限(=代理権)の濫用 (批判)処罰範囲が狭い ・背信的権限濫用説:事実上の事務処理権限の濫用 (批判)二重抵当の事案が適切に処理できない ・背信説(判例通説):信任関係に違背した財産侵害 ⑵具体例: •不良貸付 •権限濫用説以外→保管物毀損 ・ 秘密漏示 ※権限濫用説では代理権の範囲の行為なので該当しない •会社法関係(粉飾決算等) Q 横領罪との区別 ⑴ 事例:銀行支店長Aが明らかに回収不能であることを知りながら無担保でBに銀行名義で貸付 ⑵問題の所在:Aは他人の物の占有者であり、他人のための事務処理者でもある ⑶見解 ・背信的権限濫用説: 濫用:権限内の行為 → 背任 逸脱:権限外の行為 → 横領(二重抵当の場合、自己物なので「他人の物」ではなく横領罪は成立しない → 処罰不可?) ※権限外:例:稟議が必要だがしなかった ・背信説 領得行為以外の背信行為 → 背任(横領は背信の一部。横領行為も「信任関係に違背した財産侵害」という点で一致) ) 財物についての領得行為 → 横領 ・判例 本人(背任行為をされた者)の名義かつ計算 → 背任 自己の名義または計算 → 横領 ⑷判例:あてはめ ≒ 背信説 ・村長が自己の保管する公金を村の計算で第三者に貸付 → 背任成立 ・収入役が自己の保管する公金を自己の名義で第三者に貸付 → 業務上横領成立 ※自己の名義にしているので領得行為あり →背信説でも業務上横領 ④結果:財産上の損害が必要(=結果犯) ⑴意義:⭐️全体財産の減少 ⑵未遂・既遂:財産上の損害の有無で決する → 有=既遂 ・ 無=未遂 ⑶ 具体例:積極損害 + 消極損害 積極損害:既存の財産の減少 消極損害:将来取得しうる財産が無くなること ➢消極損害の例: 信用保証協会の支店長AがBの弁済不能を知りながら債務保証をした → 損害ありとし背任成立 Q 財産上の損害の判断基準 ⑴事例:銀行支店長Aが回収不能を知りながらBに無担保で1千万貸付(不良貸付) ⑵問題の所在:銀行は1千万の債権を取得 → 法的見地からは全体財産の変動なし ⑶ 判通:経済的見地から全体財産の減少の有無を判断 ⑷ あてはめ:1千万の現金 > 1千万の回収困難な債権 ∴ 損害あり ⑤目的:自己図利 ・ 第三者図利 ・ 本人加害のいずれかの目的が必要 → 図利・加害目的が必要=目的犯 Q 背任罪における利益の意義 ⑴事例:銀行の支店長が報酬を得ることなく、自己の地位の保全のために不良貸付を行った ⑵問題の所在:財産上の利益なし → 利益を財産上の利益に限定すれば図利・加害目的否定 ⑶判例:⭐️身分上の利益を含む → 自己の地位の保全・信用・プライド等の場合も含む ⑷理由:財産上の利益に限定する必要がない ∵ 単なる動機 ≠ 故意 Q 本人図利目的と図利・加害目的が併存する場合 ⑴事例:自己の不適切貸付の発覚防止(自己図利目的)と貸付金の回収不能を防止する目的(銀行(本人図利目的)で不良貸付 ⑵問題の所在:本人図利と図利・加害目的のどちらの目的となるか ⑶判例:主たる目的で判断 Q 図利・加害目的の認識の程度(図利・加害目的があると言えるためにはどの程度の認識が必要か) ⑴判例:未必的認識説:図利・加害についての「認識」が必要 ≒ 故意(ほぼ故意と同じ。故意があれば図利・加害目的も認められる) ⑵反対説: ・確定的認識が必要(=確定的認識説) ・図利加害の意欲まで必要(=意欲説) ⑥未遂:罰する250 ⇒ 財産上の損害の有無で判断 ⑦ 罪数及び他罪との関係 ⑴横領罪:横領不成立 → 背任を検討 ⑵詐欺罪:背任行為=欺罔行為+財産交付 → 詐欺罪のみが成立(判例)
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※試験に出るので手を抜かないように § 盗品等関与罪256:盗品等を無償譲受・運搬・保管・有償譲受・有償の処分の斡旋した者 ①概要:盗品について関与する行為(預かる・売買する等)を処罰する ⑴本罪の対象者:関与者 → 被害者・本犯者と区別 ⑵性質:事後従犯的性格 → 本犯者の実行行為は終了しており、従犯ではなく、事後的に援助 ②保護法益:追求権 =被害者が被害財物に関して有する私法上の回復請求権(判例通説) ③ 客体:盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物 = 盗品等 ⑴ 本犯(=領得罪:窃盗・強盗・詐欺・恐喝・横領)とセットで問題となる ∴ 盗品等 ⑵ 本犯には構成要件・違法性が必要で有責は不要(判例) ⑶ 盗品等に該当しない場合:≒追求権がない ・同一性を失った場合(例)金銭を窃取 → 金銭で購入した物 ・即時取得(但、盗品等の例外)の場合 (例)詐取された物を即時取得 → 悪意者が譲受 不法原因給付の場合: 不法原因給付物については給付者の物権的返還請求権が否定されることの反射的効果としてその所有権が受給者に移転すると解されるという理由から、被害者の追求権侵害が認められないため、追求権説からは「物」に当たらないとして盗品等関与罪の成立が否定 ④行為 ・譲受:無償・有償不問 = 盗品等無償譲受罪・盗品等有償譲受罪 ・運搬:無償・有償不問 = 盗品等運搬罪 ・保管:無償・有償不問 = 盗品等保管罪 ・斡旋:⭐️処分(有償のみ)を斡旋(無償・有償不問) = 盗品等有償処分斡旋罪 ※ 盗品を無料でもらってくれる人を紹介することは盗品等関与罪には該当しない Q 被害者のもとへの運搬 ⑴事例:返還により被害者から金銭を得る目的 → 盗品等を運搬 → 金銭を取得 ⑵問題の所在:被害者のもとへの運搬 → 追求権の侵害がない ∴ 不成立?(反対説) ⑶判例:被害者から金員を得る目的等がある場合には成立 ⑷理由:正常な回復を困難にした Q 盗品等有償処分斡旋罪の成立時期 ⑴時系列:あっせん行為 → 売買等の契約成立 → 本犯者からの盗品等の移転 ⑵問題の所在:どの時点で成立 → 追求権が侵害されるのはいつ? ∴ 盗品等の移転(反対説) ⑶判例:あっせん行為がなされた時点で成立 ⑷理由:事後従犯的性格→本犯者を支援した時点で成立 ⑤故意:故意が必要(=故意犯) ⑴内容:盗品等の認識が必要 ⑵判例:未必的故意で足りる + 本犯者・本犯の罪名・被害者の認識も不要 Q 保管と途中知情 ⑴事例:保管を委託された時点で盗品だと知らなかった → 途中で盗品と知ったが、保管を継続 ⑵問題の所在:追求権侵害=盗品等の移転 ⇒ 移転時に故意がないと不成立?(反対説・有力説) (⑶ 判例:事情を知った後の盗品等保管罪の成立を肯定 ⑷ 理由:事後従犯的性格 → 保管行為も発覚防止や本犯者の処分を容易にするといえる=追求権侵害 ⑥ 他罪との関係(判例) ⑴ 本犯:本犯者の盗品等関与罪は不可罰的事後行為 ⑵詐欺罪:斡旋者が盗品と知らない相手方から代金受領 → 詐欺否定 ∵ 斡旋の当然の結果 ⑶恐喝罪:盗品等を恐喝して譲受 →⭐️ 盗品等譲受罪と恐喝罪の観念的競合 ⑷共犯:⭐️本犯の教唆犯・幇助犯(狭義の共犯)と本罪とは併合罪 § 親族間の特例257:配偶者・直系血族・同居の親族・これらの配偶者との間の前条の罪は刑を免除 ① 意義:処罰阻却事由 →刑は成立するが、免除 ② 根拠:事後従犯的性格 → 親族関係にある者には期待可能性の減少(=責任の減少)が認められる ③親族関係の必要な人的範囲⭐️:本犯者と盗品等関与罪の犯人との間 → 被害者は無関係
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① 概要:刑法第四十章毀棄及び隠匿の罪で規定 258~263 ⑴ 特徴:財産犯 + 不法領得の意思を欠く ⇒ 利欲犯的性格を欠くことから法定刑が軽い ⑵行為:毀棄=⭐️物の効用を害する一切の行為(定義覚える) ⇒ 物理的損害に限定しない(食器に放尿も毀棄)・隠匿または損壊は客体の違い(有力説) § 公用文書等毀棄罪258:公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者 ① 客体:公用文書=公務所の用に供する文書 ⇒ 公務所が事務処理上管理している文書 公務所:公務員が職務を行うために設けられた場所(例)市役所・裁判所・警察署 公文書:公務所または公務員がその名義と権限を持って作成した文書 私文書:私人が作成した文書 = 公文書以外の文書 市役所が事務処理のために管理する私文書 ⇒ ≠公文書=⭐️公用文書 ※公用文書と公文書は異なることに注意 ② 行為:毀棄 → 隠匿も含む § 私用文書等毀棄罪259:権利または義務に関する他人の文書または電磁的記録を毀棄した者 ① 客体:私用文書=⭐️権利または義務に関する他人の文書 ⇒ 単なる事実証明に関する文書は含まない(履歴書、転居届等) ≠ 私文書偽造罪の私文書 ※使用文書と私文書は異なる ② 行為:毀棄 ③ 親告罪264 § 建造物等損壊罪・同致死傷罪260:他人の建造物を損壊した者、よって人を死傷させた者 ①客体:他人の建造物 ②行為:損壊(=毀棄) ➢ 〇 玄関ドアを損壊した ➢ 〇 建造物の壁等に3回に渡り500~2500枚のビラを貼付 ➢ 〇 公園の公衆便所の外壁にスプレーで反戦と大書した(建物の外観・美観に損害、原状回復が容易でない) ③ 同致死傷罪:結果的加重犯 § 器物損壊罪261:前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、または傷害した者 ① 客体:258・259・260の客体とならない他人の物の全て(公用文書、使用文書、建物以外のものすべて) ⇒ 毀棄・隠匿罪の原則的規定 ②行為:損壊または傷害(=毀棄) ⇒ 傷害は動物を客体とした場合(=動物傷害) ➢ 〇 食器に放尿 ➢ 〇 養殖用の池の水門を開け、他人が飼育中の鯉を池の外へ流出 ➢ 〇 物を使えなくするために隠匿 (→後で自分の物にするつもりなら窃盗) ③ 親告罪264 § 境界損壊罪262の2:境界標を損壊その他の方法により土地の境界を認識できないようにした者 ①客体:境界標等(境界標は例示) ②行為:土地の境界を不明にする一切の行為 ③保護法益:土地の権利関係の明確性 § 信書隠匿罪263:他人の信書を隠匿した者 ①客体:他人の信書=特定人から特定人にあてられた意思を伝達する文書 ②行為:隠匿=毀棄 ⇒ 261との区別:信書の隠匿を器物損壊より軽く処罰(有力説) 267 親告罪
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⭐️放火と文書偽造が重要 □ 放火罪総論 ① 保護法益:不特定または多数人の生命・身体・財産 ②特徴:危険犯 + 危険(=不特定または多数人の生命・身体・財産 ∴ 公共) → 公共危険罪 ③放火罪概要(具体的危険犯と抽象的危険犯) 写真 ⭐️非常に重要 ※建物かどうか ※現住または現在か ※自己所有か他人所有か ※現住または現在の建造物等(108)と非現住、非現在の他人所有の建物(109①)は抽象的危険犯 § 現住建造物等放火罪108:放火して現に人が住居に使用し、または現に人がいる建造物等を焼損した者 ①客体:現住建造物または現在建造物 = 現に人が住居に使用 または 現に人がいる ⑴ 現住建造物:人(=犯人以外の者)の起臥寝食の場所として日常使用される建造物(⭐️定義を書けるように) ➢ 肯定:人の住む住居 ・ 学校の宿直室 ・ 放火時にたまたま人がいないが日常使用される家 ➢ 否定:犯人のみが住む住居 ・ 居住者全員が殺害された住居 ⑵ 現在建造物:現住建造物にあたらなくとも、現に人がいる建造物(⭐️定義を書けるように) ➢ 肯定:離れにある物置 ➢ 否定:犯人のみが住む住居 ・ 居住者全員が殺害された住居 ・現住建造物 または 現在建造物 ⇒ 108の客体 ・上記以外の建造物 ⇒ 109の客体 ⑶⭐️客体の一個性:複合的建造物の現住性・現在性の判断 Q 現住・現在部分と非現住・非現在部分からなる複合的建造物の非現住・非現在部分に放火した場合 ⑴ 事例:無人の校舎の2階部分に放火 + 宿直室には放火していない ⑵問題の所在:非現住・非現在部分に放火 → 全体を一体とする(現住) or 分離(非現住非現在) ⑶ 結論-判例通説:⭐️物理的一体性からみて現住・現在部分への類型的な延焼可能性の有無で判断 → 108 ※類型的な延焼可能性=普通に考えて延焼するかどうか ⑷理由:108は特に重く処罰 ∵ 公共の危険 ⇒ 建造物内の人に対する危険の有無で判断すべき ➢ 神社の社務所及び守衛詰所と回廊で繋がった社殿への放火 → 108 ∵ 回廊 ∴ 物理的一体性あり → 類型的な延焼可能性あり Q 難燃性建造物の非現住・非現在部分に放火した場合 ⑴事例:鉄筋コンクリート造のマンションの空き部屋に放火 ⑵問題の所在:〇 物理的一体性 ・ ×延焼可能性 ⑶判例:108 ⑷理由:他の部屋に火勢が及ぶおそれが絶対にないとはいえない ∴ 可能性はある Q 物理的一体性が弱い部分に放火した場合 ⑴事例:マンションの共用部分であるエレベーターに放火 ⑵問題の所在:吊るされた物 → 現住部分との一体性が弱い = ×物理的一体性・延焼可能性は認められるのか? ⑶判例:108 ⑷理由:玄関の延長として機能的一体性が認められる ⇒ ⭐️物理的一体性からみた類型的な延焼可能性又は機能的一体性 で判断 ②行為:放火(=目的物への点火行為等) ⇒ 未遂 ⑴媒介物への点火行為:〇 (例)現住建造物への放火のため近くの古新聞に放火 ⑵不作為の放火:〇(例)消火する法的義務がある者がこれを放置 ⑶目的物への点火行為がない:〇(例)ガソリン散布し喫煙で発火 ③既遂時期:客体が焼損した時点 ⇒ 焼損しなければ未遂 Q焼損の意義 (1) 判例・学説 ・独立燃焼説(判例自説):火が媒介物を離れて目的物に移り、目的物が独立に燃焼を継続する状態 (⭐️同じように書けるように) 批判)既遂時期が早すぎる ・効用喪失説: 火力により目的物がその本来の効用を失う程度に毀損 批判)財産犯的側面を重視し過ぎている。 ・毀棄説: 火力により目的物が毀棄罪における損壊の程度に毀損 批判)財産犯的側面を重視しすぎている ⑵ 判例の理由:保護法益=不特定または多数人の生命・身体・財産 → 独立に燃焼している時点で抽象的には公共の危険が発生 ⑶あてはめ:目的物=現住・現在建造物の毀損しなければ取り外せない物 (例)柱・壁・天井 ・古新聞に点火 ⇒ 未遂 ・古新聞が独立に燃焼 ⇒ 未遂 ・古新聞から室内の畳・襖等が独立に燃焼⇒未遂 ・建物の柱・壁・天井が独立に燃焼→既遂 ※家具が燃えた段階では既遂にならない Q 難燃性建造物への放火の場合 ⑴問題の所在:建物自体は燃焼しないが効用喪失は生じる ⇒ 未遂は妥当でない ⑵ 学説 ・新効用喪失説: 原則、独立燃焼説 + 効用喪失なら焼損 批判)焼損という文理上の制約 ・否定説(自説) 独立燃焼がなければ未遂 ④未遂・予備:罰する112・113 ⑤罪数及び他罪との関係 ⑴成立する犯罪の個数:⭐️「生じた公共の危険の個数」によって決定 ・複数の現住建造物等を放火⇒ 生じた公共の危険が1個 = 包括して一罪(単純一罪・包括一罪) ・108・109・110物件を放火⇒ 生じた公共の危険が1個 = 包括して108一罪 ⑵ 109・110物件を媒介物とした場合 108物件が焼損 ⇒ 包括して本罪の既遂一罪 108物件が焼損に至らない ⇒ 包括して本罪の未遂一罪
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§ 非現住建造物等放火罪109:放火して非現住かつ非現在建造物を焼損した者Ⅰ・自己所有+公共の危険Ⅱ ①客体:非現住建造物かつ非現在建造物 = 現に人が住居に使用せずかつ現に人がいない建造物 他人所有 ⇒ Ⅰ適用 (例外)所有者の同意あり⇒ 自己所有扱い ※物置の所有者が古くなったので燃やしてくれと言った場合 自己所有 ⇒ Ⅱ適用 (例外)差押え・物権負担・賃貸・保険⇒ 他人所有扱い115 ②公共の危険(109②が成立するために必要) ⑴行為 Ⅰ:放火 + 焼損⇒ 抽象的危険犯 Ⅱ:放火 + 焼損 + 公共の危険の発生⇒ 具体的危険犯 ⭐️108、109①抽象的、109②具体的の区別は重要 ※具体的危険犯と抽象的危険犯のついて、前者は現実に危険が発生することを必要とするが、後者は構成要件所定の行為があれば当然に法益に対する脅威が生じたものとされる ⑵意義:公共の危険=不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険(通説) ⑶判断基準:一般人の印象からみて危険を感じるような状態(通説) ⇒ ⭐️一般人の印象からみて不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態 (書けるように) Q 109Ⅱにおける公共の危険の認識の要否⭐️論文で出る ⑴事例:一般人は延焼すると思うが、風向き等から実際は延焼しないと考え自己所有の空き家に放火 ⑵問題の所在:反対説の理由 ⑶学説 ・認識不要説:不要 (理由)・文言109②「罰しない」= 処罰条件=故意の対象ではない ・公共の危険発生の認識がある =現住建造物や他人所有の建造物に延焼することを認識→108・109Ⅰの故意を有しているということになるのでは? ・認識必要説(通説):必要 (理由)本来違法行為ではない(自分の建造物を燃やしただけ)→罰せられるのは公共の危険を引き起こしたから→公共の危険必要 + 延焼の危険と公共の危険は同じものではない ⑴結論:109Ⅱ成立 → 一般人の印象から見ても延焼しないなら不成立 ③ 未遂・予備:109Ⅰの未遂・予備は罰する112・113
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一般人は延焼すると思うが、風向き等から実際は延焼しないと考え自己所有の空き家に放火し焼損した ーーーーーーー (109Ⅱの客体を放火し焼損させ故意あり)しかし、他の家への延焼はありえないと考えいていた。そこで、「公共の危険」の認識に欠け同罪は成立しないのではないか、公共の危険の認識の要否が問題となる。この点、「罰しない」という文言から公共の危険を処罰条件であると解し、その認識は不要とする見解がある。しかし、109条2項が規定する行為自体は本来違法行為ではない。にもかかわらずそれが犯罪となるのは、公共の危険を発生させたからである。とすれば、公共の危険の認識は必要と解するべきである。そして、一般人の印象から見て、不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態が生じることの認識があれば、延焼可能性の認識がなくても、公共の危険の認識はあると解する。本件でこれを見るに
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§ 建造物等以外放火罪110:放火して前2条以外の物を焼損し、よって公共の危険Ⅰ ・ 自己所有Ⅱ ① 客体:108・109に規定されている物以外の物 = 建造物等以外 ・他人所有 ⇒ Ⅰ適用 (例外)所有者の同意あり⇒ 自己所有扱い ・自己所有 ⇒ Ⅱ適用 (例外)差押え・物権負担・賃貸・保険⇒ 他人所有扱い115 (具体例)バイク・畳(畳のみを目的なら110。 畳は媒介物で建物を燃やす目的なら108、109)・人のいない電車 ② 公共の危険 ⑴行為 Ⅰ:放火 + 焼損 + 公共の危険の発生⇒ 具体的危険犯(109Ⅰは抽象的危険犯) Ⅱ:放火 + 焼損 + 公共の危険の発生⇒ 具体的危険犯 ⑵ 意義:不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険(通説) ⑶判断基準:一般人の印象からみて危険を感じるような状態(通) ⇒ 一般人の印象からみて不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態 Q 110における公共の危険の認識の要否 ⑴事例:一般人は延焼すると思うが、風向き等から実際は延焼しないと考え他人のバイクに放火 ⑵問題の所在:判例 ・不要説(判例):認識不要 (理由)文言「よって」→ 器物損壊罪の結果的加重犯 (批判)個人的法益と公共危険罪 → 加重類型の関係なし ・必要説(通説):認識必要 Ⅰ:器物損壊よりも重い公共危険罪を構成 Ⅱ:本来違法行為ではない(∵自己所有) → 公共の危険による ⑶結論:110Ⅰ成立
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§ 延焼罪111: 109Ⅱ・110Ⅱの罪を犯し、よって108・109Ⅰに延焼Ⅰ ・ 110Ⅱによって110Ⅰに延焼Ⅱ ①概要:109Ⅱ・110Ⅱの結果的加重犯 = 108・109Ⅰ・110Ⅰは無関係 ⇒ 自己所有の非現住かつ非現在建造物または自己所有の建造物等以外を放火して延焼させた ②故意:109Ⅱ・110Ⅱの故意あり + 延焼した客体についての故意なし 適用条文 基本犯 結果(延焼した客体) 111Ⅰ 自己所有非現住・非現在建造物109Ⅱ or 自己所有建造物等以外110Ⅱ 現住・現在建造物108 他人所有非現住・非現在建造物109Ⅰ (109Ⅱ・110の延焼は対象外) 111Ⅱ 自己所有建造物等以外110Ⅱ 現住・現在建造物108(111Ⅰ) 他人所有非現住・非現在建造物109Ⅰ(111Ⅰ) 他人所有建造物等以外110Ⅰ (109Ⅱ・110Ⅱの延焼は対象外) § 失火罪116:失火により108・109Ⅰ物件を焼損Ⅰ ・ 109Ⅱ・110物件を焼損+公共の危険Ⅱ ①失火:過失により出火させること ②概要 116Ⅰ:失火 + 焼損 ⇒ 抽象的危険犯 116Ⅱ:失火 + 焼損 + 公共の危険 ⇒ 具体的危険犯 § 業務上失火罪117の2:116・117Ⅰの行為が業務上必要な注意を怠った又は重大な過失によるとき ① 業務:職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位(判) § 消火妨害罪114:火災の際に、消火用の物を隠匿・損壊、その他の方法により消火を妨害した者 § 激発物破裂罪117:火薬・ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて物を損壊した者は放火・失火の例 § ガス漏出等罪118:ガス等を漏出・遮断し、よって人の生命等に危険を生じさせた者・死傷させた者
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§ 騒乱罪106:多衆で集合して暴行または脅迫をした者 首謀者1号、指揮・助勢者2号、不和随行者3号 ① 概要 ⑴典型例:大規模反政府デモで警官隊に暴行・脅迫、 対立する政治団体がデモ中に暴行・脅迫 ⑵保護法益:公共の平穏(判例通説) ⑶性質:抽象的危険犯 + 必要的共犯 ②要件 ⑴主体:多衆(たしゅう)=一地方における公共の静謐を害するに足る暴行・脅迫をなすに適当な多数人(判例) ⑵行為:集団による暴行・脅迫 ・暴行:最広義=不法な有形力の行使(物含む) + 一地方の平穏を害するに足る程度(判例) ・脅迫:広義 =対象を問わない + 一地方の平穏を害するに足る程度(判例) ⑶集合:多人数が時と場所を同じくする + 組織されていなくてもよい ⑷主観的要件:故意 + 共同意思=多衆の合同力をして暴行・脅迫し自らこれに加わる(判例) 288 他罪との関係 暴行・脅迫 ⇒ 本罪に吸収 建造物侵入・建造物損壊・公務執行妨害 ⇒ 別罪で観念的競合 § 多衆不解散罪107:暴行または脅迫のため多衆が集合 → 権限ある公務員の解散命令3回以上でも不解散 ①概要:騒乱罪の予備段階を処罰する目的 + 真正不作為犯 § 往来妨害罪124Ⅰ:陸路・水路・橋を損壊または閉塞して往来の妨害を生じさせた者 ①保護法益:公共の交通の安全 ⇒ 公共危険罪の一種 + 124~129 ② 客体:陸路、水路または橋 ⇒ 道路、河川、橋(鉄道専用の橋は125対象のため含まない) ③ 行為:損壊または閉塞 ⇒ 物理的損壊限定 ∴ 器物損壊と区別 ④ 具体的危険犯:往来妨害を生じさせた状態が必要 ⇒ 現実に特定の人が往来妨害された事実は不要 § 往来妨害致死傷罪124Ⅱ:往来妨害罪を犯し、よって人を死傷させた者 ①概要:往来妨害罪の結果的加重犯 § 往来危険罪125:鉄道・標識の損壊等により電車の往来の危険を生じさせたⅠ ・ 艦船Ⅱ ①概要:汽車・電車及び艦船の往来の危険を生じさせた場合 ⇒ 往来妨害より加重 ②行為:鉄道・標識の損壊等Ⅰ ・ 灯台・浮標の損壊等Ⅱ(例)線路に障害物を置く ③具体的危険犯:往来の危険を生じさせた状態が必要 ⇒ 現実に電車・艦船が往来妨害された事実は不要 § 汽車転覆等罪126Ⅰ・Ⅱ:現に人がいる汽車・電車・艦船を転覆・破壊した者 ①客体:現に人(=犯人以外の人)がいる汽車・電車Ⅰ ・ 現に人がいる艦船Ⅱ ②行為:汽車・電車の転覆・破壊Ⅰ ・ 艦船の転覆・沈没・破壊Ⅱ ➢ 本罪の破壊=交通機関としての全部または一部を失わせる程度 → ×窓ガラスを割る程度では本罪の破壊には該当しない ③抽象的危険犯:行為があればただちに既遂 § 汽車転覆等致死罪126Ⅲ:126Ⅰ・Ⅱを罪を犯しよって人を死亡させた者 ①概要:126Ⅰ・Ⅱの結果的加重犯 + 致死に限定 Q 汽車等の内部にいた人以外が死亡 ⇒ 成立肯定(判例) ∵ 十分に予想できる § 往来危険による汽車転覆等罪127:125を犯し、よって汽車・電車・艦船を転覆・破壊等をした者 ①概要:往来危険罪の125の結果的加重犯 Q 人の現在性 ⇒ 不要(判例) ∵ 文言上特に要求されていない Q 死亡させた場合 ⇒ 127適用(判例)→汽車転覆等致死罪126Ⅲ ∵ 文言「前条の例による」 § 過失による往来危険等罪129:過失により往来危険罪・汽車転覆等罪を犯した者
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□ 文書偽造総論 ① 保護法益:文書に対する公共の信用(⭐️書けるように)(個人の利益ではない) ② 偽造 ⑴定義⭐️3つすべて書けるように A+ ・偽造:名義人と作成者の人格の同一性を偽ること ・名義人:当該文書から理解される意思や観念の表示主体 (例:免許証の名義人は公安委員会) ・作成者:文書に意思や観念を表示した者または表示させた者(意思説) Q 作成者の意義 ⑴ 問題の所在:反対説である行為説では物理的に文書を作成した者となるが、秘書が社長の同意により代筆した場合に問題 ⑵ 学説の帰結 ・行為説(反対説) (当てはめ)名義人(社長)≠作成者(作成した者=秘書) (結論)構成要件該当→違法性阻却→不成立 ・意思説(通説) (当てはめ)名義人(社長)=作成者(表示した者またはさせた者=社長) (結論)構成要件不該当→不成立 ⑶ 偽造の判断:⭐️名義人と作成者のみ ⇒ 文書の内容の真実性は無関係 (内容が虚偽でも名義人と作成者が同一であれば文書偽造の「偽造」には当たらない) ⭐️間違えやすいので重要⭐️ ⑷偽造の程度:一般人から見て真正に作成されたものであると誤信させるに足りる外観が必要 ⑤虚偽作成:作成権限を有する者が内容虚偽の文書を作成すること ⭐️「作成権限を有する者」がつくるのがポイント ⑴ 偽造との区別:人格の同一性を判断し、次に内容の真偽を判断(写真参照) ⑵ 定義 ・有形偽造:偽造 = 狭義の偽造 ・無形偽造:虚偽作成 → 広義の偽造 = 有形偽造 + 無形偽造 ④変造:権限なく既存の真正に成立した文書の非本質的部分に改竄を加えること ・肯定判例:運転免許証の住所変更欄を改竄 ・ 貯金通帳の貯金受入年月日を改竄 ・否定判例:運転免許証の写真と生年月日を張替 ⇒ 本質的部分を改竄 ≒ 新たな文書の作成 ∴ 偽造 ⑤処罰対象 ⑴処罰対象の考え方 形式主義:有形偽造を処罰の対象とする立場 = 文書の成立の真正を保護 実質主義:無形偽造を処罰の対象とする立場 = 文書の内容の真正を保護 ⑵適用文書 公文書:形式主義と実質主義を併用 → 偽造・虚偽作成・変造・を処罰 私文書:形式主義を原則 → 原則、偽造のみ処罰(虚偽作成・変造の処罰は例外) ③文書の該当性 ⑴ 文書:可視的・可読的符号により、一定期間永続する状態で物体の上に意または観念を表示したもの ※書ける必要はなし ⑵要件 a) 可視性・可読性(判例) ・肯定:書類(契約書・公的証明書等)・黒板のチョークによる記載(固定あり∴文書)(判例) ・否定:音声テープ・ビデオテープ・電磁的記録 b) 証拠性:意思または観念が社会生活における重要な事実についての証拠となる(判例)※定義を書ける必要はない ・肯定:経済取引の契約書・公的証明書 ・否定:学術論文・小説(∵ × 社会生活における重要な事実)、名刺・表札(∵ × 意思または観念) c) 名義人の記載:名義人の表示がありかつ特定できる⭐️ 肯定:・行政機関の記載 ・個人名+住所 ・直接的記載なし+その他の附属物等から特定できる 否定:「X町会議員代表」(Xは町名) Q 名義人の実在の要否 ⑴問題の所在:架空人名義の文書を偽造。名義人が実在しないが文書に該当すると言えるのか?名義人の実在は必要か、不要か? ⑵判例・学説 ・必要説(反対説):文書の要件として名義人の実在が必要 (理由)架空人名義には証拠性がない ・不要説(判例通説):公文書・私文書共に名義人の実在は不要⇒ 架空人名義の文書も「文書」に該当 (理由) 架空人名義の文書でも、文書に対する公共の信用を害することができる Q 写しの文書性 ⑴事例:真正な文書を改竄し、改竄文書のコピーXを作成した。そしてXを写しとして使用した。 ⑵問題の所在:原本・改竄文書は文書に該当 → 写しは公共の信用がない ∴ 文書に該当しない? ⑶判例:要件を満たせば文書にあたる ⑷ 要件⭐️ a) 原本と同一の意識内容を有し、 b) 証明文書として原本と同様の社会的機能と信頼性を有すると認められる ⑸あてはめ 手書き:あたらない ∵ a) なし ※普通に考えて手書きは同一とは言えない 写真コピー:あたる場合が多い ∵ a)あり + b)ある場合が多い ファックス:あたる場合もある ∵ a)あり + b)ある場合もある Q 写しの名義人 ⑴問題の所在:写しが文書にあたる → 偽造にあたるには名義人≠作成者 →写しの名義人は誰か? ⑵判例:原本の名義人 ⑶理由:写しが「文書」にあたるための要件 Q 写しが有印となるか ⑴問題の所在:公文書は有印か無印かで区別 → 原本有印 → 写しも有印となるか ⑵判例:原本が有印なら写しも有印 ⑶理由:写しが「文書」にあたるための要件
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原本の写しが必要な場合に、Aが他人の司法試験合格証書の氏名欄にAという紙を貼付け写真コピー機にかけて写しを作成した場合 ーーーーーーー Aの行為につき有印公文書偽造罪が成立するか、本件写しが「文書」といえるかが問題となる。まず、公文書偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用であるところ、原則としてかかる信用は原本についてのみ生じうる。従って、写しは文書にあたらないのが原則と解する。しかし、写しが原本と同一の意識内容をもち、証明文書として原本と同様の社会的機能と信頼性を有する場合には、写しも文書にあたると解する。本件では~。 次に、偽造したといえるか、偽造とは文書の名義人と作成者との人格の同一性を偽ることとなることから、文書の名義人は誰かが問題となる。そもそも名義人とは、当該文書から理解される意思や観念の表示主体をいう。そして、写しが前述の要件を満たしている以上、原本の名義人である。従って、~偽造したといえる。さらに、写しも有印となるかが問題となるが、前述の要件をみたしている以上、写しも有印であると解する。よって~ ⭐️重要⭐️「写しが原本と同一の意識内容をもち、証明文書として原本と同様の社会的機能と信頼性を有する場合には、写しも文書にあたると解する」
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公文書偽造等罪 § 有印公文書偽造等罪155Ⅰ・Ⅱ Ⅰ:行使の目的で公務所・公務員の印章または署名を使用している(=有印)公文書・図画を偽造 Ⅱ:有印公文書・図画を変造 ①客体:有印公文書・有印公図画 ⑴公文書:公務所または公務員がその名義をもって権限内において所定の形式に従って作成すべき文書 ※定義を書けなくてもok ⑵公図画(こうずが):公務所または公務員が名義人の図画(例)公図・旧土地台帳附属地図(判例) ⑶ 有印:公務所・公務員の印章または署名を使用している(例)〇 偽造・記名(=署名に含む) ②行為:偽造Ⅰ・変造Ⅱ ※変造:権限なく既存の真正に成立した文書の非本質的部分に改竄を加えること ③ 目的⭐️:行使の目的 ⇒ 目的犯 ⑴行使:偽造文書または変造文書を真正な文書として使用すること ⑵使用⭐️:文書の内容を他人に認識させ、または認識可能な状態におくこと ※おさえるように。特に「認識可能な状態」 Q 補助的公務員の作成権限 ⑴前提:名義人市長 → 権限を与えられた者(代決者)の市民課長に授権 → 補助的公務員が作成 ※名義人:当該文書から理解される意思や観念の表示主体=市長 ※作成者:文書に意思や観念を表示した者又は表示させた者=市長 ⑵事例:市民課係長は事後決裁により一定の手続きで印鑑証明書作成を許可されていた。しかし、 決裁・手続なく、手数料を払わずに、自己の印鑑証明書を作成した。印影等は真正。偽造にあたるか? ⑴ 問題の所在:作成権限なしなら偽造にあたる ・ 作成権限ありなら偽造にあたらない ⑵判例⭐️:授権を基礎づける一定の基本的な条件に従う限度において作成権限あり →本件市民課係長の行為は155Ⅰ不成立 ⑶理由:補助的公務員には権限のない者とある者がいる → あれば内容が正確である限り手続違反があっても偽造に当たらない § 無印公文書偽造等罪155Ⅲ:有印公文書・公図画以外の公文書・公図画の偽造・変造 ※試験には出ない(印や署名のない公文書は基本的にない) § 虚偽公文書作成等罪156:公務員が行使の目的で虚偽の公文書・公図画を作成・変造した → 前2条 ※権限ある公務員による無形偽造および変造を処罰する犯罪類型 ①趣旨:公文書の社会的信用を保護 → ⭐️有形偽造のみならず、無形偽造をも全面的に処罰 ②主体:作成権限を有する公務員に限定 = 真正身分犯 ・作成権限の有無で区別⭐️ ⇒ 作成権限なしなら偽造の問題(155) ③行為:虚偽の公文書・公図画の作成・変造(権限ある公務員による) ④目的:行使の目的 ⇒ 目的犯 ⑴行使:虚偽文書を内容の真実な文書として使用すること (⑵使用:文書の内容を他人に認識させ、又は認識可能な状態におくこと Q ⭐️権限のない者が権限のある者を利用した間接正犯の場合 ⑴前提:間接正犯の場合 ・権限者が権限のない者を利用した場合 ⇒ 156間接正犯成立 ・権限のない者が権限者を利用した場合 ⇒ ? ⑵ 事例:私人が市民課長に虚偽の申立てをして内容虚偽の印鑑証明書を取得した ⑶結論:間接正犯の156の成立を否定(判例通説 ⑷ 理由:157-重要な公文書の156の間接正犯を軽い刑 ⇒ 157以外の156の間接正犯を処罰しない § 公正証書原本等不実記載等罪157 Ⅰ:公務員に虚偽の申立をして登記簿、戸籍簿その他の権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載 Ⅱ:免状・鑑札・旅券に ①趣旨:156条の間接正犯の処罰を本条の場合に限定する ⇒ 一定の重要な公文書 + 行為 が限定 ②行為:公務員に虚偽の申立 → 本条所定の公文書に不実の記載をさせる(例)偽装結婚 ③客体 ・公正証書原本等不実記載罪Ⅰ:登記簿・戸籍簿・住民票・公正証書・外国人登録原票・土地台帳 ・免状等不実記載罪Ⅱ:運転免許証(免状)・古物営業許可証(鑑札)・パスポート(旅券) + Ⅰ電磁的記録:住民基本台帳ファイル、自動車登録ファイル ④他罪との関係 Q 公務員が共謀していた場合 ⑴事例:私人が公務員と共謀し虚偽の申立 → その公務員に内容虚偽の文書を作成させた ⑵問題の所在:公務員と共犯 ⑶判例:公務員=156 ・ 私人=156の共同正犯 ⑷理由:65Ⅰ Q 公務員が虚偽を見抜いた場合 ⑴ 事例:私人が虚偽の申立 → 登記官が虚偽を見抜いた(共謀はない) → そのまま公文書を作成 ⑵問題の所在:当該公務員に虚偽公文書作成罪156が成立するか ⑶結論-通説 ・実質的審査権限(内容が真正か否かを審査する権限)あり ⇒ 156成立 ・形式的審査権限(書類等の形式面の審査のみの権限)のみあり ⇒ 156不成立 + 私人は157の成立を認める ⑷あてはめ:156不成立 ∵ 登記官は形式的審査権限のみ Q 詐欺罪の成否 ⑴事例:虚偽の申立 → その結果、公正証書等を詐取 ⑵問題の所在:詐欺の構成要件に該当 → 詐欺成立 ⑶判例:⭐️詐欺不成立 ⑷理由:公正証書等の交付を受けることを当然に予定 → 157のみ成立(⭐️科刑上一罪ではない) § 偽造公文書行使等罪158:154~157までの客体を行使又は電磁的記録を原本としての用に供した者 ① 概要:155の偽造文書・156の虚偽文書の行使 + 157Ⅰの電磁的記録の供用 ⇒ 155と156の目的が158 ②行為 ⑴ 行使:偽造文書を真正な文書として、または虚偽文書を内容真実な文書として、使用すること ⑵ 使用:人に文書の内容を認識させ、または認識可能な状態におくこと ⑶供用:用に供した=公務所に供えて公証をなしうる状態におくこと ⑷あてはめ ・相手方の不知⭐️:必要⇒知っている相手への呈示は未遂 ・行使の方法:不問 ⇒ 〇 スキャナを通してモニタに表示(判例)∵ 認識させる ・認識可能性:認識可能かで判断 ⇒ 〇 偽造文書を郵送→到達 × 偽造した運転免許証を携帯 ⑸罪数:155・156・詐欺罪と本罪は牽連犯→課刑上一罪
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§ 有印私文書偽造等罪159:行使の目的で有印の権利義務及び事実証明に関する私文書等を偽造Ⅰ・変造Ⅱ ①客体:有印の私文書・私図画で権利・義務に関するもの及び事実証明に関するもの ⭐️「権利・義務に関するもの」及び「事実証明に関するもの」に限定 ⑴有印:他人の印章・署名があること ⇒ 他人の印章・署名を偽造するか否かは不問 ⑵権利・義務に関する:権利・義務の発生・変更・消滅を目的とする意思表示を内容 ➢ 私人を当事者とする借用証書 ⑶事実証明に関する:社会生活に交渉を有する事項を証明する内容 ➢ 私立大学の入学試験の答案・履歴書・郵便局への転居届 ②行為:偽造(=有形偽造)Ⅰ ・変造Ⅱ Q 名義人の承諾 ⑴問題の所在:名義人の承諾のもと作成 → 偽造には当たらない ⇒ 承諾があれば常に偽造でないのか? ⑵事例:替え玉受験のために、名義人Aの承諾に基づきBがA名義の答案用紙を作成 ⑶判例:有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:文書の性質上自署性が要求される → 名義人の承諾は無効 ∴ 作成者=表示した者 (⭐️文書の性質上自署性が要求されるもの(いずれも事前承諾を得て他人名義で作成) ➢ ・ 交通事件原票の供述調書欄 ・ 大学の入学試験の答案 ・ 一般旅券発給申請書 Q 肩書の冒用 ⑴事例:弁護士でないAが弁護士Aという名義で私文書(弁護士報酬請求書)を作成 ⑵問題の所在:肩書付名義人と解するか ⇒ 名義人A=作成者A →偽造ではない or 名義人弁護士A≠作成者A→偽造となる? ⑶判例:有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:文書の性質上弁護士という肩書・資格がなければ作成できない文書 Q 代理名義の冒用 ⑴事例:代理権のないAがB代理人Aという名義で契約書を作成 ⑵問題の所在:名義人の特定 ⇒ 作成者=(代理権のない)A + 名義人=本人B or Bの代理人A ⑶判例⭐️:名義人は本人B ⇒ 有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:代理形式の文書は効果が本人に帰属する形式の文書 Q 別名の使用 ⑴事例:密入国後在留資格を有するB名義で25年以上生活したAが再入国許可申請書をB名義で作成 ⑵問題の所在:別名(通称名・芸名)が社会一般に通用=本人特定 ∴ 同一性あり → 常に妥当するか? ※ 在日韓国人が日本人名を通称名として使っている場合 ⑶判例:有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:文書の性質から適法な在留資格を有するという書かれざる資格が名義人の表示の一部 ③ 行使の目的:偽造公文書等と同様 ⇒目的犯 ※目的:行使の目的 ⇒ 目的犯 ⑴行使:虚偽文書を内容の真実な文書として使用すること ⑵使用:文書の内容を他人に認識させ、又は認識可能な状態におくこと § 無印私文書偽造罪159Ⅲ:159Ⅰ・Ⅱの対象の文書のうち、印章・署名のない場合 ※試験には出ない § 虚偽診断書作成罪160:医師が公務所に提出すべき診断者等に虚偽の記載をした ⭐️短答でよく出る ①意義:⭐️私文書の形式主義の例外 ⇒ 私文書の無形偽造を例外的に処罰 ∵ 重要 ②主体:医師に限定 ⇒ 真正身分犯 ⭐️医師が公務員なら虚偽公文書作成等罪156 ③客体:公務所に提出すべき診断書・検案書・死亡証明書 〇:裁判所に提出する健康診断書 ・ 国立大学入学のために提出する健康診断書 ×:私企業に提出する健康診断書 ・ 私立大学入学のために提出する健康診断書 § 偽造私文書等行使罪161:159・160の文書を行使した者 ① 行為:偽造公文書等と同様 ② 罪数:私文書偽造罪+本罪=牽連犯・詐欺罪+本罪=牽連犯 § 電磁的記録不正作出罪・同供用罪161の2 ・私電磁的記録不正作出罪Ⅰ:事務処理を誤らせる目的で私電磁的記録を不正に作出した者 ・公電磁的記録不正作出罪Ⅱ:前項が公電磁的記録の場合 ・電磁的記録供用罪Ⅲ:供用した場合 ① 161の2Ⅰ ⑴客体:私電磁的記録=人の事務処理の用に供する権利・義務又は事実証明に関する電磁的記録 ・権利義務:銀行の預金元帳ファイル・乗車券等の裏の磁気情報部分 事実証明:顧客デーベースファイル ⑵目的:人の事務処理を誤らせる目的⇒ 目的犯 161の2Ⅱ:公電磁的記録=公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録 161の2Ⅲ:供用=他人のコンピューターで使用できる状態におく § 詔書偽造等罪154:詔書を偽造・変造した者 ※でない ①詔書:(機関としての)天皇の意思表示を示す公文書
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§ 通貨偽造等罪148Ⅰ:行使の目的で通用する貨幣・紙幣または銀行券を偽造または変造した者 ①保護法益:通貨の真正に対する公共の信用 ⇒ 通貨偽造の罪に共通 ②客体:貨幣・紙幣(政府発行)、銀行券(銀行発行) ⇒ 日本では貨幣と銀行券のみ ③ 行為:偽造または変造 ・偽造:権限なく似た外観の物を作成 ・変造:権限なく真正な通貨を加工して似た外観の物を作成 ⇒ 文書偽造の偽造・変造と異なる + 一般人をして真正の通貨と誤認させる程度が必要 ※変造の例:1枚の千円札を2枚の千円札に見せかけるために加工 ④目的:行使の目的が必要 ⇒ ⭐️目的犯 ⑴行使の目的⭐️:通貨を真正なものとして流通におく目的 ⇒ 有価証券偽造罪では流通は不要 ⑵判例 ×:見せ金に用いる目的・演劇用の小道具に用いる目的 〇:商品購入代金の目的・他人に渡して使用させる目的 § 偽造通貨行使等罪148Ⅱ:偽造通貨を行使し、または行使の目的で人に交付した者 ①客体:偽貨=偽造または変造された通貨 ⇒ 自己作成・行使目的での作成 は不要 ②行為:行使・行使目的での交付・輸入 ⑴行使:偽貨を真正なものとして流通におく ⇒ 文書偽造・有価証券偽造と区別 ⑵ 交付:偽貨であることを告げて又は知っている相手に渡す ⇒ ⭐️相手方の認識で行使と区別 ③ 罪数:通貨偽造等罪+本罪=牽連犯 ・ 偽造通貨収得罪+本罪=牽連犯 Q 詐欺罪と偽造通貨行使等罪の関係 ⑴事例:Aが自ら作成したものではない偽造通貨を行使し、商品を購入した ⑵問題の所在:本罪成立 → 商品についての詐欺罪が別途成立するか ⑶判例:⭐️詐欺罪は本罪に吸収される → 148Ⅱ一罪のみ ※158Ⅰ・161Ⅰと詐欺罪は牽連犯となるので区別すること ⑷理由:収得後知情行使等罪を軽く処罰しようとした法の趣旨 § 外国通貨偽造罪・偽造外国通貨行使等罪149:行使の目的で外国の通貨を偽造又は変造Ⅰ・行使Ⅱ § 偽造通貨収得罪150:行使の目的で偽貨を収得した者 ①概要:行使目的で偽貨であることを知りつつ取得した者 ⇒ 偽貨を 作った148Ⅰ ・ 使った148Ⅱ ・ 取得した150 § 収得後知情行使等罪152:収得後に偽貨と知って行使または交付した者 ① 概要:偽貨であることを知らずに取得 → 取得後に偽貨を知った → 知りながら行使・交付 ②特徴:法定刑が極めて軽い ⇒ 罰金又は科料 ∵ 期待可能性が低い ③ 罪数:詐欺罪+本罪=本罪一罪 ⇒ 詐欺罪は吸収 § 通貨偽造等準備罪153:通貨の偽造または変造の用に供する目的で、器械または原料を準備した者 ①特徴:通貨偽造等罪の予備罪 ⇒ ⭐️予備行為のうち器械または原料を準備する行為のみを処罰=準備罪 ②あてはめ 〇:印刷機・複写機を準備(器械の準備) ・ 専用の用紙や専用のインクを準備(原料の準備) ×:技術者を手配 ③目的:通貨の偽造又は変造の目的 ⇒ 目的犯・自己予備又は他人予備は不問
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§ 有価証券偽造等罪162:行使の目的で有価証券を偽造または変造した者Ⅰ・虚偽の記入をした者Ⅱ ①保護法益:有価証券の真正に対する公共の信用 ⇒ 有価証券偽造の罪に共通 ② 客体:有価証券 ⑴有価証券:財産権を表章した証券で権利の移転・行使のいずれにおいても証券の占有が必要なもの ⑵典型例:手形・小切手・株券 ⑶ 162の有価証券:財産権を表章した証券で権利の移転または行使にその証券の占有が必要なもの ※商法の有価証券の定義よりも広い (判例) ◯:手形・小切手・乗車券・定期券・宝くじ・馬券・商品券・タクシーチケット ✖️:預貯金の通帳・クレジットカード・プリペイドカード ③行為:偽造又は変造Ⅰ・虚偽の記入 ④目的:行使の目的 が必要 ⇒ 目的犯 ⑴行使の目的:真正なまたは内容真実の有価証券として使用する目的 ⑵ 他罪との関係:文書偽造の行使の目的・通貨偽造の行使の目的と各々異なる ➢ 見せ手形として使用 → 行使の目的あり ∵ 流通におく目的不要 ※通貨偽造だと見せ金では行使罪不成立 § 偽造有価証券行使等罪163:偽造・変造・虚偽の記入がある有価証券を行使または行使の目的で交付した者 ① 客体:偽造・変造・虚偽の記入がある有価証券 ②行為:行使又は交付 ⑴行使:真正なまたは内容真実の有価証券として使用すること ⇒ 流通におくことは不要 ⑵交付:偽造等有価証券であることを告げて又は知っている相手に渡す ⇒ 相手方の認識で区別 ③罪数:有価証券偽造等罪+本罪=牽連犯 ・ 詐欺罪+本罪=牽連犯 4 支払用カード電磁的記録に関する罪 C ①保護法益:支払用カードを用いて行う支払システムに対する公共の信用 ②条文:163の2・163の3・163の4 ⇒ 条文一読 5 印章偽造の罪 C 短答でも出ない ①保護法益:印章や署名の真正に対する公共の信用 ②条文;164・165・166・167・168 ⇒ 条文一読 6 不正指令電磁的記録に関する罪 ①保護法益:電子計算機のプログラムに対する公共の信用 ②条文:168の2・168の3 ⇒ 条文一読
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第三章 風俗に対する罪 1 猥褻及び重婚の罪 ①概要:当事者の合意が前提 ⇒ 個人的法益ではなく社会的法益に対する罪 ② 保護法益:健全な性的風俗・性道徳・性秩序(判例) § 公然猥褻罪174:公然と猥褻な行為をした者 ・公然:不特定又は多数が認識できる状態(判例) ・猥褻:徒に性欲を刺激しかつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの(判例) ⑴判断基準:時代・社会・文化等の社会通念に応じて判断 ⑵強制猥褻との区別:強制猥褻 > 公然猥褻(判例) ➢ 強引にキス → 〇 強制猥褻 ・公然とキス → ×公然猥褻 § 猥褻物頒布等罪175:猥褻な文書等を頒布または公然と陳列した者Ⅰ・有償頒布目的で所持・保管した者Ⅱ ①客体:猥褻な文書・図画・電磁的記録等 ⑴判例:小説・写真集・映画フィルム・ビデオテープ・ハードディスク(記録媒体) ⑵判断基準:その時代の社会通念に照らして ⇒ 表現の自由で問題(憲法) ② 行為:頒布・公然陳列Ⅰ・有償頒布目的での所持・保管Ⅱ ⑴ 頒布 一項前段の頒布:実物を対象 ⇒ 不特定または多数の者に現実に交付する 一項後段の頒布:記録を対象 ⇒ 不特定または多数の者の記録媒体上に電磁的記録を存在させる ➢ 海外のサーバーから国内の顧客に猥褻データをダウンロードさせる → 一項後段の頒布 + 国内犯 ➢ 原則として、頒布を受けた者に共犯は不成立 ∵ 刑法上頒布者のみ処罰規定 ⑵公然陳列:不特定または多数人が視聴できる状態にすること ➢ 猥褻データをダウンロード可能な状態にした → 能動的行為を要するが該当 ∵ 容易な行為 ⑶有償頒布目的で所持・保管 ⇒ 175Ⅰの予備罪 + 無償頒布目的は対象ではない ③罪数:反復継続した場合 ⇒ 包括一罪(営業犯) ∵ 想定されている(判) § 淫行勧誘罪182:営利目的で淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者 ⇒ 条文一読 § 重婚罪184:配偶者のある者が重ねて婚姻をしたとき ⇒ 条文一読
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2 賭博及び富くじの罪 ① 保護法益:勤労の美風(判) ② 概要:公序良俗違反(民法) → 法令・社会通念から違法性阻却されうる § 単純賭博罪185:賭博をした者、但し一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときはこの限りでない ③概要 ⑴ 原則:賭博をした場合⇒ 成立 ⑵ 例外:一時の娯楽に供する物を賭けた場合 ⇒ 不成立 不成立:飲料 ・ 食事 ・ 食事等のための金銭(判) 成立:金銭そのもの(判) § 常習賭博罪186Ⅰ:常習として賭博をした者 ① 概要:常習性という身分がある場合 ⇒ 不真正身分犯 + 包括一罪 § 賭博場開帳・博徒結合罪186Ⅱ:賭博場を開帳又は博徒を結合して利益を図った者 ⇒ 条文一読 § 富くじ罪187:富くじを発売等した者 ⇒ 条文一読 3 礼拝所及び墳墓に関する罪 ①概要:死体損壊等罪190以外、188~192は条文一読 § 死体損壊等罪190⭐️ Aランク:死体等を損壊・遺棄・領得した者 ①保護法益:国民の宗教的感情⭐️書けるように ②客体:死体・遺骨・遺髪・棺に納めてある物 ③ 行為:遺棄・損壊・領得 ⑴遺棄:埋葬と認められない方法で死体を放棄すること ⇒ 作為のほか、作為義務があれば不作為も含む(判) ⑵ 殺人犯による死体遺棄 ・殺人犯が死体を殺害現場に放置 = 不作為による遺棄 ⇒ × 190の遺棄 ∵ 作為義務ない ・殺人犯が死体を山中へ運び放置 = 作為による遺棄 ⇒ 〇 190の遺棄 ④ 他罪との関係:殺人罪・傷害致死罪+本罪 = 併合罪 ∵ 保護法益・牽連関係なし
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1 内乱に関する罪 Bランク ① 内乱:国家の統治機構を国の内部から暴力により破壊すること ② 特徴:内乱の成功 → 国家の壊滅 = 処罰できない ⇒ 本来的に危険犯 ③ 保護法益:国家の存立 ④ 騒乱罪との区別 ・騒乱:社会の平穏を侵害 → 暴動を処罰 ・内乱:国家の存立を侵害 → 革命を処罰 § 内乱罪77:統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者(首謀者・参与者等・不和随行者) ① 主体:多数人 ⇒ 必要的共犯 ② 行為:暴動 = 多数人による集団的暴行・脅迫 + 一地方の平穏を害する程度(通) 暴行:最広義の暴行 ⇒ 不法な有形力の行使(対物も含む) 脅迫:広義の脅迫 ⇒ 対象の限定なし+反抗抑圧程度も不要 ③目的:統治の基本秩序を壊乱する目的が必要(なければ騒乱) ⇒ 目的犯 ④ 未遂:罰する77Ⅱ ⇒ 不和随行者は罰しない § 内乱予備・陰謀罪78:内乱の予備又は陰謀をした者 ①特徴:陰謀(=2人以上で内乱の実行を計画し合意する)でも成立 + 暴動前の自首=必要的免除 § 内乱幇助罪79:77・78の罪を幇助した者 ⇒ 条文一読 2 外患に関する罪 ①外患:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させ、又はそれを援助すること 保護法益:国家の存立 ② 条文:外患誘致81・外患援助82・外患誘致等の予備・陰謀罪88 ⇒ 条文一読 3 国交に関する罪 ①保護法益:外国の利益(多) ②条文:外国国章損壊罪92・私戦予備93・中立命令違反94 ⇒ 条文一読
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§ 公務執行妨害罪95Ⅰ:⭐️ Aランク 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行または脅迫を加えた者 ①保護法益:公務の円滑な執行⭐️書けるように ⑴公務:国または地方公共団体の事務 ⑵趣旨:公務員を特別に保護するものではない(判例) ∴ ×公務員の身体の安全・公務員の精神の自由 ②行為:公務員が職務を執行するに当たり、暴行または脅迫を加える ⑴公務員:国または地方公共団体の職員等7Ⅰ + みなし公務員 ⑵ みなし公務員:公務員ではないが職務の公共性から公務員としての扱いを受ける者 ⇒ 刑法上の公務員扱い (例)公証人・準起訴手続きの指定弁護士・弁護士会会長等 ⑶暴行又は脅迫 暴行:広義の暴行 = 公務員に向けられた不法な有形力の行使(判) 脅迫:広義の脅迫 = (対象を問わずに)人を畏怖させるに足る害悪の告知 ➢ 〇 公務員が押収してトラックに積込んだタバコを路上に投げ捨てた ➢ 〇 公務員が差押えた密造酒入りの瓶を破砕した ➢ 〇 執行官による強制執行の際にその補助者に対して暴行を加えた(執行官に同行した鍵屋に暴行→ ⇒ × 公務員がいない時に行った場合(通説)→公務員に向けられたとは言えない ⑷ 職務を執行するに当たり⭐️ a) 職務:ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべて(判例) ≒ 公務 ∵ 保護法益 ⇒ 権力的公務以外の公務は業務妨害罪の業務にも該当 ・業務妨害233・234の業務:権力的公務以外の公務も対象 ・公務執行妨害95:およそ公務を対象(権力的公務も含む) b) 執行するに当たり:個別的・具体的な職務を 執行中 + 執行と一体的関係にある範囲内の行為 〇: 国鉄運転士が業務交替の後、終業点呼を受けるために駅助役の所へ移動中に暴行を受けた (点呼の時点で仕事は終わった)(微妙な判例だが試験対策として結論を覚えればok) × :駅助役が職員の点呼を終え、事務引継をするために助役室に移動中に暴行を受けた ∵ 一体でない 〇:県議会委員長が委員会の休憩を宣言後、退出しようとした際に暴行を受けた(休憩=まだ仕事は終わっていない) ③職務の適法性⭐️:公務員が執行する職務が適法であること Q 適法性の要否 Aランク ⑴ 問題の所在: 本罪の職務は適法な職務に限定されるのか、違法な職務をも含むのか? ⑵ 判例・学説 ・反対説:適法性不要 理由)条文上要求なし + 公務保護の必要性 ・判例・通説:必要 → 職務の適法性は構成要件要素⭐️ (職務の適法性を欠くと公務執行妨害は成立しない) 理由)違法な職務は刑法上保護の必要なし ⑶あてはめ:違法な職務を執行している公務員への暴行は本罪に該当しない Q 適法性の要件 Aランク ⑴問題の所在:職務の適法性が認められるためには何が必要か ⑵判例・通説 a) 職務の執行が当該公務員の抽象的職務権限に属している (※普通に考えて公務員の仕事と言えるということ) b) 当該公務員が当該職務を行う具体的職務権限を有する c) 当該職務の執行が公務としての有効要件である法律上の手続・方式の重要部分を履践している ※「法律上の手続、方式の重要部分を履践」がポイント ➢ 警察官による入場料金の支払示談斡旋行為(抽象的職務権限なし) ➢ 警察官による現行犯逮捕(抽象的職務権限あり)→ 刑訴212の要件を満たさずに現行犯逮捕(具体的職務権限なし) ➢ 令状による逮捕(抽象的・具体的職務権限あり)→ 令状を呈示せずに被疑者を逮捕(手続なし) ➢ 刑訴210で緊急逮捕(抽象的・具体的職務権限あり) → 被疑事実の要旨を告げずに緊急逮捕(法律上の手続、方式の重要部分を履践なし) Q 適法性の判断基準 Aランク ⑴問題の所在:誰がどの時点で要件の有無を判断するか? ⑵ 判断の主体 ・主観説:当該公務員 (批判)全ての職務が適法になる ・折衷説:一般人 (批判)全ての職務が適法になる(一般人は刑事訴訟法の緊急逮捕の要件など知らないし、公務員が行なっていることを見れば適法と考える) + 一般人が曖昧 ・客観説(判例通説):裁判所 (理由)全ての職務が適法となりかねない ⑶ 判断時点 (例)窃盗の逮捕状により逮捕しようとして暴行を受けた → 窃盗の無罪が判明 ・純客観説:裁判時を基準 ※例では公務執行妨害は不成立 (批判)行為時に逮捕が適法でも裁判時に無実なら逮捕は違法となる ・行為時基準説(判例通説):行為時を基準 (理由)職務執行時に適法であれば保護に値する Q 適法性の錯誤 Aランク ⑴事例:警察官Aが令状に基づきBの逮捕を執行 → Bは違法な逮捕と誤信してAに暴行 ⑵問題の所在:客観的には適法 → 主観的には違法と誤信 → 故意・違法性の意識有りと言えるか? ⑶学説 ・法律の錯誤説(反対説):原則、故意を阻却しない (理由)公務を保護 (批判)職務の適法性は客観的構成要件要素 ※ 法律の錯誤:行為が法的に許されないことを知らないこと、または許されていると誤信すること ・事実の錯誤説(通説・自説):事実の錯誤 ⇒ 規範的構成要件要素 ∴ 素人的認識で故意あり (理由)適法性は客観的構成要件要素 ・二分説(有力説) 適法性を基礎づける事実 → 事実の錯誤 適法性の評価 → 法律の錯誤 ⇒ ≒ 誤想防衛(夜道で知り合いが肩に手を置いた。暴漢に襲われると思った→事実の錯誤 肩に手を置くのは違法な暴行だと思った→法律の錯誤) (理由)適法性の錯誤は2つに分類すべき ※ 事実の錯誤: 犯罪を行った者が認識した事実と実際に生じた事実が食い違うこと ⑷ 結論: Bを名宛人とした逮捕状を認識 → 適法な逮捕の素人的認識あり ∴ 故意あり → 本罪成立 ④法的性質:抽象的危険犯 → 実際に妨害・妨害の具体的危険の発生は不要 ⑤ 罪数及び他罪との関係 ⑴本罪の手段たる暴行・脅迫 ⇒ 本罪に吸収(暴行・脅迫は不成立) ⑵傷害・恐喝・強盗・殺人等が成立 ⇒ 本罪と観念的競合 観念的競合:1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合(刑法54条1項前段)をいう。観念的競合の処罰については、その最も重い刑により処断するとされる(同項。吸収主義)。 § 職務強要罪・辞職強要罪95Ⅱ:Bランク 公務員に処分をさせる・させない等のために暴行または脅迫をした者 ①特徴:目的犯→ 処分(=職務上なしうる行為)をさせる・させない・辞職させる ② 法的性質:抽象的危険犯 ③ 保護法益:公務の公正かつ円滑な執行 ④ 罪数及び他罪との関係:暴行罪・脅迫罪・強要罪は本罪に吸収 § 封印等破棄罪96:Bランク 公務員が施した封印・差押の表示を損壊その他の方法により無効にした者 ①保護法益:強制執行の適正かつ円滑な実施 ② 客体:封印・差押の表示に係る命令または処分の効力 ③行為:損壊その他の方法により命令または処分を無効にすること ⇒ 封印・差押の表示が行為時に存在しなくても成立 + 適法・有効な表示であることは必要 ➢ 〇 差押物件自体を搬出・売却 ➢ 〇 執行官に占有が移り立入禁止の表示札がある土地内に入って耕作 ➢ 〇 執行官に占有が移った家屋に入居 □ その他の強制執行の妨害に関する罪 ・96の2 ~ 96の6Ⅰ ⇒ 条文一読 § 談合罪96の6Ⅱ: Bランク 公正な価格を害しまたは不正な利益を得る目的で談合した者 ① 行為:談合=特定の者に落札させるため、他の者は一定の価格以下または以上に入札する旨の協定(判例) ② 保護法益:国又は国に準ずる団体が実施する競売・入札の公正(判例) ③ 法的性質:必要的共犯 + 目的犯 + 抽象的危険犯
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何ら犯罪行為を行っていないものの被疑者とされていたAが逮捕状に基づき逮捕しようとした警官Bに対し暴行を加えた事案 ーーーーーー Aの行為につき公務執行妨害罪95Ⅰが成立するか、いわゆる職務の適法性に関して問題となる。まず、同罪における公務員の職務が適法であることを要するかが問題となる。同罪の保護法益は公務の円滑な執行であるところ、違法な職務を刑法で保護する必要はない。よって、書かれざる構成要件要素として必要と解する。そして、その要件として、当該職務行為が、抽象的職務権限・具体的職務権限・法律上の手続・方式の重要部分を履践が必要と解する。さらに、上記要件を満たしているかを誰が・いつの時点にたって判断するかの判断基準も問題となる。この点、当該公務員を基準とすると常に適法となりかねず、裁判所が判断すべきと解する。また、職務執行時に適法であれば保護に値するといえるため行為時を基準として判断すべきと解する。もっとも、Aは違法な逮捕行為であると思っていたものと考えられる。そこで、故意が認められるか。いわゆる職務の適法性の錯誤の処理が問題となる。職務の適法性を客観的構成要件要素であると解する以上、その認識がなければ事実の錯誤として構成要件的故意が阻却されると解するべきである。但し、職務の適法性はいわゆる規範的構成要件要素である。故意の本質から素人的認識。本件では
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□ 逃走罪総説 ① 保護法益:国家の拘禁作用 ② 類型 ⑴処罰対象 逃走者を処罰:単純逃走97・加重逃走98 ⇒ 処罰対象の範囲限定 逃走者を援助した者を処罰:被拘禁者奪取99・逃走援助100・看守者等による101 ⇒ 処罰対象の範囲広範 ⑵ 逃走者の範囲:奪取99・援助100 ・看守者等による101 > 単純97 ・ 加重98 ※「逃走者」の範囲の微妙な違いが試験で聞かれる § 単純逃走罪97:裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走した ① 主体:裁判の執行により拘禁された既決または未決の者 ⑴ 裁判の執行 〇 勾留状の執行により拘禁された被疑者・被告人(=未決)・労役場に留置されている者 × 逮捕状の執行により拘束された被疑者・現行犯逮捕された者⭐️ ⑵拘禁された既決の者 〇 受刑者・刑事施設移送のため護送中の者・刑事施設外で作業に従事している者 × 少年院に収容されている者(少年院は刑事施設ではない)・刑事施設に収容前の者 ⑶ 拘禁された未決の者:〇 鑑定留置に付された者 ②行為:逃走 ⇒ 看守等の実力的支配を脱した時に既遂 ➢ 刑事施設内の居室から脱出したが、刑事施設内にいる場合は未遂 ③未遂:罰する102 § 加重逃走罪98:前条の者または勾引状の執行を受けた者が器具等の損壊・暴行・脅迫・通謀等をして逃走 ① 主体:勾引状の執行を受けた者 + 前条の主体 ⑵意義:広く身体の自由を拘束する令状の執行を受けた者 ⑶対象 〇 勾引された証人・逮捕状によって逮捕された被疑者⭐️ × 現行犯逮捕・緊急逮捕により逮捕された者←令状の執行ではないから ②行為 ⑴拘禁場または拘束のための器具の損壊:拘束のための施設(刑務所等)・手錠等・物理的損壊 ⑵暴行・脅迫:看守者又はその協力者限定 ⑶2人以上通謀:∵ 多数人の同時逃走により成功可能性が高まる ③未遂:罰する102 Q 着手時期 ⑴ 器具等の損壊:損壊を開始した時 ⑵暴行・脅迫:暴行・脅迫を開始した時 ⑶2人以上通謀:2人以上の者が現実に逃走に着手した時 → ⭐️×通謀したときや通謀後1人だけ逃走したときではない ※罪数なども問題になるが学説が錯綜しており判例もないので試験には出ないのでスルーでok § 被拘禁者奪取罪99:法令により拘禁された者を奪取した者 ①主体:限定なし ※97・98は主体が限定。また、客体は観念できない ②客体:法令により拘禁された者 〇 97・98の主体となる者・現行犯逮捕された者・緊急逮捕された者・少年院に収容されている者 × 不法に拘束された者 ③ 行為:奪取=被拘禁者を自己または第三者の実力支配下に移すこと ⇒ 被拘禁者を解放させた場合(=実力支配下にない) → 逃走援助 § 逃走援助罪100:法令により拘禁された者を逃走させる目的で逃走を容易にすべき行為をした者 ①意義:逃走罪の教唆行為・幇助行為を独立に処罰 ②主体:限定なし ③客体:法令により拘禁された者 ⇒ 逃走罪(97、98)と逃走者の範囲が異なる → 逃走罪は成立しないが逃走援助は成立する場合もありうる(現行犯逮捕された者である場合) ④行為:逃走させる目的で、逃走を容易にする行為(第1項)または暴行・脅迫(第2項) ⇒ 被拘禁者の逃走の有無は不問 → 容易にする行為または暴行・脅迫の終了で既遂 § 看守者等による逃走援助罪101:法令により拘禁された者を看守者及び護送者が逃走させた ① 主体:看守者及び護送者 ⇒ 真正身分犯⭐️ ∵ 逃走させる行為は看守者等のみ構成要件化 ②客体:法令により拘禁された者 ③行為:逃走させる ⇒ 不作為も含む ・ 逃走することで既遂
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□ 総説 ①概要:犯人を蔵匿したり、証拠を隠滅して捜査を妨害する罪 ②保護法益:国の刑事司法作用 § 犯人蔵匿等罪103:罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿または隠避させた者 ① 客体:罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者 ⑴ 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者=侮辱罪(拘留または科料)以外の罪 Q 罪を犯した者 ⑴問題の所在:無実の者が捜査の対象になり、かくまった場合→罪を犯した者に該当しない? ⑵ 判例・学説 ・通説(反対説) (罪を犯した者の意義)=真犯人⇒ 無実の者の蔵匿は該当しない (理由)文言 (批判)被疑者が対象外 ∴ 立法趣旨未達 ・判例(自説) (罪を犯した者の意義)=捜査の対象となっている者を含む⇒ 無実の者の蔵匿も該当 (理由) 保護法益 ※ 無実か否かは裁判で決めるべき ⑵拘禁中に逃走した者:法令により拘禁されている間に逃走した者 ➢ 他者の奪取により拘禁状態を脱した者(他者の支配下にある)も含まれる ② 行為:蔵匿・隠避 ⑴蔵匿:官憲の発見・拘束を免れるような場所を提供すること (例)隠れ家の提供 ⭐️場所の提供 ⑵隠避:蔵匿以外の官憲の発見・拘束を免れさせる一切の行為(例)逃亡資金や情報の提供 ⭐️場所の提供以外 ③ 故意犯:本罪の客体であること + 客体を蔵匿・隠避させること の故意が必要 Q 罰金以上の刑に当たる罪の故意はいかなる場合に認められるか ⑴問題の所在:犯罪の認識はあったが罰金以上の刑に当たる罪の認識まではなかった ⑵学説・判例 ・学説(少数説、反対説):正確な罰金以上の刑に当たる罪の認識が必要 (批判)判断が困難 ・判例(自説):漠然と重大犯罪を犯したという認識で足りる (理由)判断が困難 ④主体:犯人以外の者 ⇒ 自己による蔵匿・隠避は不可罰 ∵ 期待可能性の欠如 + 条文 Q 犯人自身による教唆 ⑴ 事例:犯人が第三者に自己を蔵匿・隠避するように教唆 → 第三者が蔵匿・隠避 ⑵ 問題の所在:犯人に教唆犯としての本罪が成立するか ⑶学説・判例 ・否定説(反対説-有力説):不成立 (理由)正犯として期待可能性なし → 軽い教唆犯はなおさらなし ・肯定説(判例・自説):成立 (理由)防御権の濫用 + 他人を巻き込む点で期待可能性ないといえない § 証拠隠滅等罪104:他人の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造、または偽造・変造の証拠を使用した者 ① 客体:「他人」の「刑事事件」の証拠に限定 ∵ 期待可能性の欠如 ⇒ × 自己の刑事事件・民事事件・行政事件 ② 行為:証拠の隠滅・偽造・変造及び偽造・変造された証拠の使用 ⇒⭐️犯人の利益の有無は不問 + 他人を陥れる目的でも成立 Q 参考人の虚偽供述が偽造にあたるか? ⑴ 判例 原則:あたらない ∵ 刑法の建前として、虚偽供述は偽証罪169に限って処罰 例外:令状目的で捜査官と相談し虚偽の供述内容を創作し供述調書の形式にする行為はあたる ※供述調書という物理的な証拠を作っている点が異なる ③主体:犯人以外の者 に限定 ≒ 犯人蔵匿等罪 Q 教唆犯の場合の処理 ・犯人が第三者に教唆した場合:教唆犯成立(判) ∵ 他人を巻き込む点で期待可能性 ・第三者が犯人に教唆した場合:教唆犯不成立 ∵ 混合惹起説 → 正犯不成立 § 親族間の特例105:前二条の罪について、犯人等の親族が犯したときは刑を免除できる ①趣旨:親族間の情愛から期待可能性が低い → 任意的免除 ※犯人・逃走者自身は期待可能性がない→不可罰 ② 要件:犯人または逃走者の親族がこれらの者の利益のために103 または104を実行 ③ 効果:任意的免除 ④共犯の場合 ⅰ 親族が第三者を教唆した場合 103または104の教唆者:親族=教唆犯成立(∵期待可能性あり) 103または104の正犯者:第三者=105不適用 ⅱ第三者が親族を教唆 第三者=教唆犯成立(∵制限従属性説) 親族=105適用 ※親族に犯が罪成立している ⅲ犯人が親族を教唆 犯人=教唆犯成立(∵期待可能性あり) ⇒ 105準用⭐️(∵親族関係)(教唆犯は成立するが免除できる) 親族=105適用 ⅳ親族が犯人を教唆 親族=教唆犯不成立(∵混合惹起説) 犯人=犯罪不成立 § 証人等威迫罪105の2 Bランク:刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有する者に威迫等の行為をした者 ① 客体:自己若しくは他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族 (例)被害者・証人・参考人等 ※親族も対象 ②行為:面会を強請(きょうせい)・強談(ごうだん)・威迫 ➢ 文書の送付により不安の念を生じさせても威迫に該当(=直接相対する必要なし)
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□ 総説 ① 概要:法律により宣誓した者が虚偽の陳述・鑑定・通訳・翻訳をした ②保護法益:国の審判作用の適正 ③特徴:真正身分犯 ・ ⭐️刑事事件に限定されない(証拠隠滅等と区別) § 偽証罪169:法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき ①主体:法律により宣誓した証人 ⑴ 法律により宣誓:刑訴154等 ・ 民訴201等 → 法律により宣誓のない者は不成立 ⑵ 証人:証人適格のある者→ 当事者は不成立 ②行為:虚偽の陳述 Q 虚偽の意義 ⑴問題の所在:学説の対立 → 説によりあてはめ・結論が異なる ⑵ 判例・学説 ・客観説(反対説):客観的事実に反すること (理由)保護法益を害しない (批判)虚偽の証言が事実だった場合→構成要件不成立/ 見間違い→構成要件該当 ※客観的事実に反していても、客観的事実と認識していれば故意阻却(客観的構成要件には該当) ・主観説(判例):自己の記憶に反すること (理由)保護法益を害する → 記憶に合致しているかの判断は裁判所が行うので客観的事実に反していることも許容 ⑶あてはめ 写真 ③共犯関係 Q 被告人が自己の刑事事件について他人に偽証を教唆した場合 ⑴ 問題の所在:被告人は本罪の主体ではなく教唆犯 ⑵判例:成立肯定 ⑶理由:他人を巻き込む点で期待可能性があり § 自白による刑の減免170:偽証罪を犯した者が確定前等に自白したときは減軽または免除できる § 虚偽鑑定等罪171:法律により宣誓した鑑定人・通訳人・翻訳人が虚偽の鑑定・通訳・翻訳をしたとき
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§ 虚偽告訴等罪172:人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の告訴等をした者 = 誣告罪(ぶこくざい) ① 保護法益:(一次的)刑事司法作用及び懲戒作用 ・ (二次的)個人の私生活の平穏 ② 行為:虚偽の告訴・告発その他の申告 Q 虚偽の意義 ⑴ 判例:客観的真実に反すること⭐️ ⑵ 理由:保護法益 Q 同意申告の可罰性 ⑴事例:AがBから虚偽の告訴をされるということを同意 → Bが告訴 ⑵判例:本罪成立 ⑶理由:保護法益 ⑴告訴・告発:告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し犯人の処罰を求めること ⑵その他の申告:刑事・懲戒の処分に結びつきうる事実の申告 ③目的:刑事または懲戒の処分を受けさせる → 目的犯 ・ 〇 未必的(判例)(=犯罪的結果の発生の可能性を認識認容していること) § 自白による刑の減免173:確定前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは任意的減免
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§ 公務員職権濫用罪193:公務員が職権を濫用して、義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した ①主体:公務員 → 真正身分犯 ②行為:職権の濫用 ⑴職権: 当該公務員の有する一般的職務権限 ➢ 明文の根拠規定は不要 → 実質的に権限があればよい ➢ 法律上の強制力は不要 → 事実上受任を求め得る権限であればよい ⑴濫用:職権の行使に仮託して実質的・具体的に違法・不当な行為をすること ➢ 〇 裁判官が司法研究と偽って過去の受刑者に関する身分帳簿の交付を求めて応じさせた ➢ 〇 裁判官が被告人に対し交際を求める意図で電話をかけて喫茶店に呼び出し同席させた ➢ × 警察官が職務として共産党幹部の情報を得るため幹部宅の電話を盗聴 ∵ 警官でないと装う行動→「職権の行使に仮託」にあたらない ③結果:義務のないことを行わせ または権利の行使を妨害した が必要 → 結果犯 + 未遂犯規定なし § 特別公務員職権濫用罪194: Bランク(出ない) 裁判・検察・警察の職務を行う者等が職権を濫用して逮捕または監禁したとき ①主体:裁判官・検察官・司法警察職員 + 職務上の補助者 → 事実上の補助者を含まない(判例) ②行為:逮捕または監禁(≒逮捕監禁罪の逮捕・監禁) → 不真正不作為犯 § 特別公務員暴行陵虐罪195:194と101の主体が被疑者・被告人等に暴行・凌辱・加虐の行為をした ① 行為 ⑴暴行:≒暴行罪の暴行 → 不真正身分犯 ⑵凌辱・加虐:暴行以外の方法で精神的・肉体的苦痛を与える一切の行為 → 真正身分犯 (例)わいせつ行為、侮辱、食事をさせない、トイレに行かせない § 特別公務員職権濫用等致死傷罪196:前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者 ①概要:194・195の結果的加重犯
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□ 総説 ① 賄賂の罪:公務員がその職務に関し特定の者に便宜を図るため金品等(賄賂)を収受 → 汚職の一種 ② 保護法益 Q 賄賂の罪の保護法益 ⑴問題の所在:賄賂の罪の理解 → ⭐️論文では結論のみ ⑵判例・学説 ・不可買収説:公務の不可買収性 (批判)公務が賄賂により左右されたことは不問 ・純粋性説:職務の公正 (批判)正当な職務に関して賄賂を収受しても成立 (例:警察官が犯人から金を貰ったが普通に逮捕した。この場合でも収賄が成立する) ・信頼保護説(判例通説):職務の公正とこれに対する社会一般の信頼 ⭐️信頼保護説の結論を書けるように。 ③賄賂:公務員の職務に対する対価としての不正な報酬 ⇒ 人の需要・欲望を満たす利益であれば該当しうる 〇 動産・不動産・債務の肩代わり・饗応接待・みなし公務員が賄賂を収受 〇 異性間の情交・未公開株(値上がり確実)を公開価格で取得・売却困難な土地を時価で売却(時価であれば問題ないとも思えるが売却困難であることがポイント) × 公務員でない者が職務の対価に報酬を収受 ・ 公務員が職務に対する対価としてでなく収受 Q 社交儀礼と賄賂 ⑴ 事例:公務員に対し、中元・歳暮・手土産・お祝い等の社交儀礼として贈与がなされた ⑵問題の所在:賄賂に該当するかの判断基準 ⑶ 判例:職務との対価関係の有無 ⑷あてはめ:慣習上社交儀礼として是認される範囲内 → 賄賂否定 ∵ 保護法益を害さない ➢ 生徒の父母が担任の公立学校教師に5000円小切手を贈与 賄賂否定 ∵ 対価関係なし Q 政治献金と賄賂 ⑴ 問題の所在:政治献金と賄賂は類似 ⑵判例:趣旨による 献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待 ⇒ 賄賂否定 職務の行使に関して献金者の具体的な利益を期待 ⇒ 賄賂肯定 ④職務関連性:「その職務に関し」賄賂が収受・要求・約束されたこと ⇒ 収賄罪の成立要件 ・「その職務」の例(例であって要件ではない) ∵ 保護法益 (例1) 具体的職務権限に属する行為 ➢ 税務署職員が自己の担当区域内の者から、税務調査に配慮することの見返りとして賄賂を収受 ➢ 総理大臣が、依頼を受けて内閣の明示の意思に反しない指示を大臣に行い、賄賂を収受 (例2) 一般的職務権限に属する行為 ➢ 税務署職員が自己の担当区域外の者から、税務調査に配慮することの見返りとして賄賂を収受 (例3) 職務と密接な関連を有する行為 ➢ 国立芸術大学教授が学生に特定のバイオリン購入を勧告・斡旋する行為 ➢ 北海道開発庁長官が下部組織の北海道開発局港湾部長に対し、入札で特定業者の便宜を図る様に指示 ⑤ 類型 ⑴ 基本類型-単純収賄罪197Ⅰ:公務員がその職務に関し、賄賂を収受・要求・約束 ⑵ 加重類型 ・受託収賄罪197Ⅱ:請託を受けた ・加重収賄罪197の3Ⅰ・Ⅱ:不正な行為 ⑶修正類型 ・事後収賄罪197の3Ⅲ :現在公務員 → 過去公務員=公務員であった者 + 受託・不正 ・事前収賄罪197Ⅱ:現在公務員 → 将来公務員=公務員になろうとする者 + 受託 ・斡旋収賄罪197の4:その職務に関し → 斡旋に関し + 受託・不正 (例)交通事故の加害者が国会議員に揉み消しを依頼し、国会議員が警察署長に揉み消しを依頼 ・第三者供賄罪197の2:公務員が賄賂を収受等 → 第三者に賄賂を供与させる + 受託 Q 転職前の職務 ⑴ 事例:税務署長Aが国立大学教授に転職 → 税務署長時代の職務に関する賄賂を収受 ⇒ 一般的職務権限を異にする地位に転職 → 前職に関し賄賂を収受(転職前後で共に公務員) ⑵問題の所在:「その職務」の意義 ・現在の職務 ⇒ 事後収賄罪 ・(過去現在全ての)自己の職務⇒通常の収賄罪 ⑶ 判例・通説:自己の職務 ∴ 通常の収賄罪 ⑷理由:事後収賄罪の主体は「公務員であった者」であるが「現在公務員」を「公務員であった者」と考えることはできない + 過去の職務に関しても保護法益は害される Q 将来の職務 ⑴ 事例:現在公務員である者が将来担当するかもしれない職務に関して賄賂を収受 ⑵ 問題の所在:将来の職務が「その職務」に該当するか ⑶判例:一般的職務権限に属する事項であれば該当する → 通常の収賄罪 ⑷理由:保護法益を害する ➢ 〇 土木事業の契約権限を有する公務員が、土木業者から将来の発注の請託を受け賄賂を収受 ➢ 〇 現職市長が再選後の職務について請託を受け賄賂を収受 ⑥ 特徴:真正身分犯・必要的共犯(対向犯) § 単純収賄罪197Ⅰ前:公務員が、その職務に関し、賄賂を収受または要求若しくは約束した ①主体:公務員 ⇒ 真正身分犯 ②行為:収受または要求もしくは約束 ⇒ 左記のうち一つの行為で成立 ➢ 2つ以上の行為が行われた → 包括一罪∵保護法益1つを侵害 ③特徴 ⑴故意犯:公務員の職務に対する対価であることの認識が必要 ⑵必要的共犯(対向犯)⇒ 実際には一方のみ成立が多い(例:賄賂の申し込みをしたが相手の公務員が拒否した場合) ・収賄罪:賄賂を収受・要求・約束 ・贈賄罪:賄賂を供与・申込・約束 ④他罪との関係 Q 公務員が恐喝的手段を用いて相手方に賄賂を要求・収受した場合(例:警察官が容疑者に捕まりたくなかったら100万円よこせ) ⑴問題の所在 当該公務員:本罪(単純収賄罪)の成否 + 恐喝罪との関係 相手方 :贈賄罪の成否 ⑵ 判例 ・本罪の成否:職務執行の意思があれば成立なければ不成立 ∵ 職務に対する対価があるため ・恐喝罪との関係:恐喝罪成立・本罪と観念的競合 ∵ 保護法益が異なる ※ 観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすこと。2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となる § 受託収賄罪197Ⅰ後:197Ⅰ前の場合において、請託を受けたとき ①概要:197Ⅰ前 → 請託を受けた(=受託)場合 ② 行為:請託を受けた ⑴請託:公務員に対して一定の職務行為を行うことを依頼 ⇒ 正当な行為も該当 ⑵受けた:公務員の承諾が必要⇒ 黙示でも該当 ③趣旨:対価関係が明白 → 社会一般の信頼がより強く侵害 → 強く罰する § 事前収賄罪197Ⅱ:公務員になろうとする者が請託を受けて賄賂を収受・要求・約束し公務員となる ①要件:公務員になろうとする者 → 受託+収受等 → その後、公務員となる ※公務員になろうとしたがならなかった場合は不成立 ②事例:選挙の候補者 § 第三者供賄罪197の2:公務員が請託を受けて、第三者に賄賂を供与させまたはその要求・約束をしたとき ①概要:公務員以外の第三者に賄賂を供与させる場合(公務員自体は賄賂を受け取っていない) ②要件:公務員が職務に関し請託を受ける → 賄賂を第三者に供与させる又はその要求・約束 ➢ 〇 県会議員が謝礼として受ける金品を自分の後援会に寄付する様に指示し寄付させた ➢ 〇 町長がコネ採用の謝礼として得る金品を善意の町長の友人に供与させた ※ 公務員が奥さんの口座に振り込んだが奥さんが事情を何も知らなかった場合は実質的に公務員は受け取ったといえ、単純収賄の場合も。また、逆に奥さんの関与大きい場合は共犯になりうる。これらは学説が錯綜しており、試験にも出ないのでひとまず無視してよい § 加重収賄罪197の3Ⅰ・Ⅱ:前2条の罪を犯しよって不正な行為Ⅰ・不正な行為をし賄賂を収受等Ⅱ ①概要:不正な職務行為が行われた場合 ・Ⅰ :収受・要求・約束 → 不正な職務行為 ・Ⅱ:不正な職務行為 → 収受・要求・約束 ② 不正な職務行為:不正な行為をし、または相当な行為をしなかった ➢ 〇 警察官が押収すべき証拠品を押収しない様に請託された → 賄賂を収受 § 事後収賄罪197の3Ⅲ:公務員であった者が、その在職中に請託を受けて不正な職務行為 ① 概要:在職中に不正な職務行為 → 公務員でなくなった後に賄賂を収受・要求・約束した場合 ② 要件:受託 + 在職中の不正な職務行為 + 退職後に収受等 ⇒ 成立範囲が狭い ∵ 公務員でない § 斡旋収賄罪197の4:請託を受け他の公務員に不正な行為をさせるように斡旋 ① 概要:職務行為以外の行為(=斡旋行為)の場合 ②要件:請託 + 不正な職務行為の斡旋 ⑴ 斡旋は公務員としての立場でなされることが必要(判例)⭐️ ⑵ 不正な職務行為の斡旋が必要 → 実際の不正な職務行為は不要 ➢ 国会議員が建設会社からの依頼で公正取引委員会に告発を見送るように口利きをして報酬を得た § 贈賄罪198:賄賂を供与し,またはその申込若しくは約束をした者 ①概要:賄賂の供与・申込・約束をした場合 ②要件:賄賂の供与・申込・約束 ③主体:制限なし(公務員に限定しない) ④行為:公務員が賄賂を拒否した場合でも本罪成立(判例) Q 公務員が恐喝的手段を用いて相手方に賄賂を要求・収受した場合 ①問題の所在:相手方に贈賄罪が成立するか ②判例:本罪成立 ③理由:瑕疵はあるものの、自己の意思により贈賄(恐喝→犯行抑圧程度のレベルではない) § 没収及び追徴197の5:犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は没収 ・ できないときは追徴 ①概要:賄賂についての必要用的没収・追徴 ②趣旨:収賄者に不正な利益を保持させない ⇒ 原則:任意的没収・追徴19・19の2 → 本条は19・19の2の特則
刑事訴訟法 捜査 9/7
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7問 • 1年前公判前手続 3/28
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訴因
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8問 • 1年前問題一覧
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⭐️ランクの低い各論を覚えるならランクの高い総論を復習せよ 2 学習内容 ・個人的法益に関する罪:法益の帰属主体が個人 ⇒ 財産犯⭐️(A+)、名誉棄損、遺棄、暴行等 ・社会的法益に関する罪:法益の帰属主体が社会・共同体 ⇒ 放火⭐️、文書偽造⭐️、賭博等 (放火と文書偽造が重要) 国家的法益に関する罪:法益の帰属主体が国家・統治機能 ⇒ 賄賂⭐️、犯人蔵匿、公務執行妨害等 賄賂は重要
2
§ 殺人罪199 3 保護法益:人の生命 4 客体:人 ⇒ 胎児 → 堕胎罪 Q 胎児がいつから人になるのか (1) 結論:一部露出説 ∵ 独立して攻撃の対象としうる ⇒ 民法では全部露出説 5 構成要件的結果:人の死亡 Q 人の死亡時期(Bランク) (2) 結論:心拍停止・呼吸停止・瞳孔反射喪失のどれかの不可逆的機能停止=三徴候説 6 予備:罰する。但し情状により免除されうる201 7 未遂:罰する203 § 自殺関与罪・同意殺人罪202 自殺関与罪202前段:自殺教唆・自殺幇助 同意殺人罪202後段:嘱託殺人(被害者が依頼)・承諾殺人(被害者が承諾) 8 自殺関与罪 (Bランク) Q 自殺関与罪の処罰根拠 (3) 結論:自殺は違法ではない → 狭義の共犯ではなく、自殺関与行為が独自の違法性を有する正犯 Q 自殺関与罪の実行の着手時期:自殺関与行為 → 他人の自殺行為 → 他人の死亡 (4) 結論:未遂犯の処罰根拠 → 他人の自殺行為の開始があった時点 9 同意殺人罪 (5) 減軽の根拠:被害者の同意により違法性が減少 (6) 要件:被害者の同意による嘱託・承諾 10 普通殺人罪との区別 故意:行為者が被害者の嘱託・承諾を認識 → なければ抽錯 死の意味の理解:死の意味を理解できない、幼児・精神障害者 → 殺人罪 任意性:暴行・脅迫により自殺を強要 → 殺人罪 真意:追死すると誤信させ自殺させた=動機に錯誤がある → 殺人罪
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2 暴行・傷害の罪 § 暴行罪208:暴行を加えた者・傷害するに至らなかった ⭐️刑罰がどれくらいかは覚えなくて良い ①保護法益:人の身体の安全 ②行為⭐️(書けるように):(狭義の)暴行=人の身体に対する不法な有形力の行使 ③要件:(狭義の)暴行+傷害結果の不発生 ⑴有形力の行使 〇 殴る・蹴る・音や光等エネルギー作用(拡声器で大声・耳元で太鼓連打)・身体に接しない(投石) × 心理的作用(侮辱・催眠術・丑の刻参り) ⑵不法性:日常生活において認められるべき有形力の行使を除外 〇 肩に手をあて呼び止める ⑶対人性:人の身体に対するものに限定 × 無人の建物を破壊 ⑷傷害結果の不発生:傷害結果発生 → 傷害を検討 ④ 暴行概念 ⅰ最広義:不法な有形力の行使 例:騒乱 ⅱ広義:不法な有形力の行使+人に対する 例:恐喝、強要、公務執行妨害(パトカーを蹴る等) ⅲ狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する 例:暴行、脅迫 ⅳ最狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する+反抗抑圧程度 例:強盗、強制性交等
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§ 傷害罪204:身体を傷害した者 ①行為:人の身体を傷害した ⑴傷害:人の生理的機能に障害を加えること 〇 :出血・骨折・⭐️人の意識(長時間の失神)・病毒に感染・キスマーク(内出血)・外傷後ストレス障害 × :頭髪を切り取る行為 ⑵傷害の方法:限定なし204 ⇒ 無形的方法も可 (例) いやがらせにより鬱状態に陥れた ②故意 ⑴無形的方法による場合:故意を要する 傷害の故意あり ⇒ 傷害成立 =故意犯 傷害の故意なし ⇒ 傷害不成立=過失傷害 ⑵狭義の暴行による場合 傷害の故意あり ⇒ 傷害成立 傷害の故意なし⭐️ ⇒ 傷害成立 ∵ 208(暴行罪)の反対解釈 → 暴行罪の結果的加重犯の規定204 (例)怪我しないはずだ+殴る → 傷害結果発生 → 傷害成立 ③ 未遂 暴行による本罪の未遂 ⇒ 暴行罪 無形的方法による未遂 ⇒ 不可罰 § 傷害致死罪205:身体を傷害し、よって人を死亡させた者 ①内容:傷害罪の結果的加重犯 → 死亡についての故意があれば殺人罪 ⇒ 傷害罪は暴行罪の結果的加重犯 ∴ 暴行罪との二重の結果的加重犯ともなりうる § 同時傷害の特例207:2人以上で暴行し傷害・不明・共犯の例による ①意義:2人以上で暴行し傷害結果発生 → 誰の暴行によるか不明 (例)ABでXに暴行→X傷害 ⇒ 傷害罪の同時犯で行為者不明(暴行成立・傷害不成立) - 共同正犯・行為者が特定と区別(同時犯では共同実行の意思なし) ②趣旨:立証の困難回避 ③効果⭐️:共犯の例による = 因果関係を推定(=挙証責任を被告人に転換) (共犯になるわけではない) ⇒ 個々の暴行と傷害結果に因果関係あり ≠ 共同正犯(一部実行全部責任) ④法的性質:責任主義の例外 → 結論の妥当性・推定規定から合憲 Q 傷害致死罪の場合の適用の可否 (⑴問題の所在:207の文言 (⑵判例:傷害を原因として発生した死亡結果についても責任を負う=傷害致死に207適用 ⑶理由:趣旨が傷害致死の場合も妥当 Q 承継的共同正犯の場合の適用の可否 (⑴問題の所在:傷害結果を帰責される者がいる場合でも適用できるか (例)Aの単独暴行の途中で、共同実行の意志でBが加わり傷害結果発生 → 因果不明 ※ Aは画像の①②③いずれで傷害が発生しても犯罪成立 ※①の場合はBは承継的共同正犯では犯罪が成立しない ⑵反対説:207は責任を負う者がいない場合の例外規定 ⑶判例:責任を負う者がいない場合でも207は適用 ⑷理由:207は共同実行の意志がなくても適用される → 当然に適用 § 現場助勢罪206:傷害・傷害致死の現場において勢いを助けた者 ⑴助勢行為の例:野次・喧嘩を扇動する + 傷害・傷害致死の結果発生 § 凶器準備集合罪 208の3:2人以上の者が害を加える目的で集合 → 凶器準備又は準備を知って集合した者
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3 過失致死傷の罪 § 過失傷害罪・過失致死罪209・210:過失により人を傷害・死亡 ⑴傷害致死と区別。過失傷害は親告罪209Ⅱ・過失致死は非親告罪、法定刑が軽い(罰金) § 業務上過失致死傷罪211前段:業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷 ①主体:業務者 → ⭐️不真正身分犯 ② 加重根拠:法益侵害の結果を惹起しやすい立場 → 特に重い注意義務が課せられている ③業務⭐️(書く):社会生活上の地位に基づき反復継続して行い、生命・身体等に危害を加えるおそれのあるもの ⑴社会生活上の地位 ※万人共通のものは該当しない (例)×家庭の炊事・育児 〇 娯楽目的の狩猟・建設・医療 ⑵反復継続:反復継続の意志がある (例)〇反復する目的での1回目 ⑶危害を加えるおそれ (例)〇ホテルの店舗管理(発火防止外を怠った事例) ⇒ 自動車の運転は特別法 § 重過失致死傷罪211後段:重大な過失により死傷=業務上過失致死傷 4 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)(B+ 短答) § 過失運転致死傷罪(自動車死傷5):自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷 ①趣旨:業務上過失致死のうち、自動車の運転による場合を特に重く処罰(車の運転は211の業務) ② 免除 ・軽い傷害 → 免除されうる ・死亡・重い傷害 → 免除なし § 危険運転致死傷罪(自動車死傷2・3):各号の危険な状態で運転し人を死傷させた者 ①類型2 ⑴ 酩酊運転致死傷Ⅰ:酔っ払い運転・薬物中毒者による運転 ⑵制御困難運転致死傷Ⅱ:スピード違反による運転 ⑶未熟運転致死傷Ⅲ:≠無免許運転。免許取り立てやペーパードライバー? ⑷ 妨害運転致死傷Ⅳ:あおり運転 ⑸信号無視Ⅴ:殊更に無視 → 確定的な認識は不要 ⑹通行禁止道路運転致死傷Ⅵ ②類型3:酩酊・病気による危険運転のおそれ → 運転後に酩酊・病気による危険運転 ⑴趣旨:運転開始後の危険運転を(類型2に比べて)軽く処罰 ③法的性質⭐️:結果的加重犯 ⇒ 2条・3条は道路交通法の構成要件(基本犯)+ 致死傷結果 ④故意:基本犯の故意あり + 致死傷結果の故意なし ⑤無免許加重:未熟運転2Ⅲを除き、無免許の場合に刑が加重
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□ 遺棄罪総論 ①遺棄罪:単純遺棄217 ・ 保護責任者遺棄218 ・ 遺棄致死傷罪219 ②保護法益:生命・身体の安全(判例通説) ∵ 219で致傷の場合も規定 ③法的性質:危険犯 (法益の侵害が現実に発生していない段階であっても、法益侵害のおそれがあれば実現する犯罪) ∵ 遺棄という文言 → 遺棄により成立 Q 遺棄罪を具体的危険犯と解するべきか抽象的危険犯と解するべきか ⑴ 判例:抽象的危険犯 ∵ 遺棄という文言のみ ⑵実務:ある程度の具体的な危険の発生を必要(準抽象的危険犯説) (例)産院のベッドに放置、警察署の目の前に放置等は遺棄はしているが危険は生じていない→実務上処罰しない ④行為:遺棄217・218前段、 不保護218後段 不保護:場所的離隔なし ⇒ 不作為 (例)同居乳児に食事なし 遺棄:場所的離隔あり 移置:移動させることにより危険を創出 ⇒ 作為 (例)乳児を山に捨てに行く 置去り:放置して立ち去ることにより危険を創出 ⇒ 不作為(例)乳児を家に放置し旅行 ⇒ 不保護=真正不作為犯 ・ 遺棄=不真正不作為犯 ⑤行為と条文の対応 不保護:218後(保護責任者による) 遺棄 移置:217(保護責任者以外による) ・ 218前(保護責任者による) 置去り:⭐️217の対象外 (保護責任者でない者には法的な作為義務がないから。保護責任者でなければ成立しない。法的な作為義務が生じたら保護責任者になり218の問題になる) ・ 218前(保護責任者による) ⇒ ⭐️不作為による遺棄(=置去り)は218前段の保護責任者遺棄でのみ処罰可能 ∵ 不真正不作為犯における法的な作為義務 = 218の保護責任 → ⭐️217は移置のみ ・ 218前段は移置と置去り を意味 ⑥判例:不作為による単純遺棄を認めたものは存在しない § 単純遺棄罪217:老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄 ①客体:限定列挙 → × 道に迷った者・手足を拘束された者、 〇 高度の酩酊者(疾病のために扶助を必要とする者に該当) ②行為⭐️:遺棄 ⇒ 作為による遺棄=移置に限定 § 保護責任者遺棄218:保護する責任のある者が遺棄又は保護をしなかったとき ①客体:≒単純遺棄 ②行為:遺棄又は不保護 ③主体:保護責任者に限定(身分犯) 不真正身分犯:作為による遺棄(移置) 真正身分犯:不作為による遺棄(置去り) ・ 不保護 ④保護責任の発生原因:不真正不作為犯における法的な作為義務の発生原因と同様 ⇒ 法令、契約・事務管理、慣習・条理 Q ひき逃げ事案における保護責任の有無 ⑴問題の所在:被害者に車で衝突した場合、保護責任が発生するか ⑵判例-反対説:道路交通法の救護義務に基づき保護責任が発生 → 批判-ひき逃げは常に218・219が成立 ⑶ 有力説:排他的支配を獲得した場合のみ事務管理により保護責任が発生 (例)車に乗せた ⑷実務:単純なひき逃げではほぼ本罪による起訴なし。判例は排他的支配を獲得した事案 § 遺棄致死傷罪219:前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者 ①法的性質:結果的加重犯 → 217・218は危険犯 ②法定刑:傷害の罪と比較して重い刑 = 上限・下限ともに重い刑で処断 (例)217=1月以上1年以下懲役 ・ 傷害=50万以下罰金or 1月以上15年以下懲役 ⇒ 単純遺棄致死傷罪=1月以上15年以下懲役
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□ 堕胎総論 ①背景:堕胎(=中絶)は原則違法 → 母体保護法による条件を満たせば合法 ②保護法益:一時的には胎児の生命・身体の安全、二次的に母体の生命・身体の安全 ③客体:胎児及び妊婦 ④行為:胎児を母体内で殺すこと、又は、自然の分娩期に先立って胎児を母体から分離すること ⇒ 胎児が死亡しなくても成立しうる Q 胎児性傷害:妊婦に危害 → 胎児が母体内で傷害を負う → 出生後も傷害が残る ⑴問題の所在:胎児に傷害罪等が成立するか → 胎児を客体となる人と言えるか ⑵判例:胎児は母体の一部 → 母体を客体とした傷害罪等が成立する § 自己堕胎罪212:妊娠中の女子が堕胎したとき ⑴妊婦自身による堕胎を特に軽く処罰 § 同意堕胎罪・同意堕胎致死傷罪213:女子の嘱託・承諾を得て堕胎させた者 ⑴妊婦の同意を得て堕胎を行う場合及びその致死傷の結果的加重犯を処罰 § 業務上堕胎罪・業務上堕胎致死傷罪214:医師等が嘱託・承諾を得て堕胎させた ⑴医師等の業務者が213を行った場合=不真正身分犯 § 不同意堕胎罪・不同意堕胎致死傷罪215・216 ⑴妊婦の同意のない堕胎を重く処罰。未遂犯でも処罰
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□ 総論 ①逮捕及び監禁の罪:逮捕罪・監禁罪220、逮捕・監禁致死傷罪221 ⑴逮捕:人の身体を直接拘束して身体活動の自由を奪うこと (例)人を羽交い締めにする ⑵監禁:人の身体を間接的に拘束して身体活動の自由を奪うこと (例)部屋に鍵掛けて閉じ込める ②保護法益⭐️:身体活動(移動)の自由 ⇒ × 法人・生まれたばかりの乳児(1歳未満) Q 自由の意味 ⑴現実的自由説-反対説:現実に移動しようと思った時に移動できる自由∵ 意志の自由 ⑵ 可能的自由説-判例:もし移動しようと思えば移動できる自由∵ 可能性があることに意義 ⑶保護法益:身体活動の可能的自由 (論文では、保護法益は身体活動の可能的自由と書く) Q 被害者の認識の要否 (例)AがBを強制性交する計画のもとBを欺き車に乗せて発進 ⑴問題の所在:Bは監禁された旨を認識していない → 監禁が成立するか ⑵現実的自由:現実に移動しようと思った事が必要 ⇒ 被害者が気づいた時点で成立=認識必要 ⑶可能的自由:身体活動の可能性が侵害される事が必要 ⇒ 車を発進させた時点で成立 =認識不要 Q 被害者が一時的に意思能力を欠く場合 (例)Aが熟睡中のBの部屋に鍵を掛け閉じ込めた ⑴問題の所在:Bは一時的に意思能力を欠いている → 監禁が成立するか ⑵現実的自由:現実に移動しようと思うことができない ⇒ 起きた時点で成立(=不成立) ⑶可能的自由:可能性を侵害したとはいえる ⇒ 閉じ込めた時点で成立(=成立) § 逮捕罪・監禁罪220:不法に人を逮捕し又は監禁した者 ① 行為:逮捕・監禁 ⇒ 〇 自動車やオートバイに乗せて走行・ 脅迫等で心理的に脱出を困難にさせた ②逮捕に続く監禁:220の罪一罪=包括一罪 ③法的性質:継続犯 § 逮捕・監禁致死傷罪221:220によって人を死傷させた者 ①法的性質:結果的加重犯 57 法定刑:傷害の罪と比較して重い刑=上限・下限ともに重い刑
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§ 脅迫罪222:身体・財産等に対し害を与える旨を告知して人を脅迫した者。親族に対しても同様 ①保護法益:意思決定の自由 ② 法的性質:抽象的危険犯 → ⭐️意思決定の自由が現実に侵害されたことを要しない ③行為:加害を告知して脅迫 ⑴加害:将来加害者がその発生を支配しうる害悪である事が必要 (例)× 天災・天罰 ⑵対象:相手方及びその親族の身体・財産等(制限列挙)(例)× 恋人・友人・内縁関係 ⑶ 告知:方法に制限なし(例)〇 口頭・態度(凶器を示す)・文書・電子的方法(メール)等 ⑷脅迫:一般人を畏怖させることができる程度の害悪の告知 → ⭐️現実に畏怖したことは不要 ⇒ 程度は総合考慮 (例)〇 「出火お見舞い申し上げます」と火事がないのに敵対者に告知 Q 適法行為の告知が脅迫に該当するか (例)女性万引犯に猥褻に応じないと告訴すると告知 ⑴判例:該当する。但し、権利の行使として正当といえる場合には正当行為35として違法性が阻却 ⑵理由:適法行為の告知によっても人を畏怖させることが可能 Q 脅迫罪222の人に法人が含まれるか ⑴通説:含まれない ⑵理由:意思決定の自由を享受できるのは自然人のみ ⑶ 故意:告知内容の認識及び相手方の認識の予見 ⇒ 加害を実現する意志は問わない ④脅迫概念 ・広義の脅迫: 対象等を問わない脅迫 例)公務執行妨害罪・騒乱罪等 ・狭義の脅迫:相手方及びその親族の身体・財産等に対する加害の告知に限定する脅迫 例)脅迫罪・強要罪 ・最狭義の脅迫:相手方の反抗抑圧又は著しく困難にする程度の脅迫 例)強盗罪・強制性交等罪 § 強要罪223:脅迫又は暴行を加えて、義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害した者 ① 保護法益:意思決定の自由(脅迫罪と同じ) ② 法的性質⭐️:侵害犯 → 結果の発生が必要 ③ 行為:狭義の脅迫又は広義の暴行(暴行罪208の暴行は狭義の暴行) ④ 結果:義務のないことを行わせた・ 権利の行使を妨害した (例)〇 水入バケツを数時間頭上に置かせた ・理由なく謝罪文を書かせる ・告訴を中止させる ⑤ 因果関係:現実に畏怖しその結果として行う ⇒ 哀れみ等で行えば未遂となる ⑥ 未遂:223Ⅲで罰する ⇒ 脅迫の未遂はない
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§ 未成年者略取及び誘拐罪224:未成年者を略取し、又は誘拐した者 ①客体:未成年者 = ⭐️18歳未満の者(民4) × 20歳未満 ②保護法益:被略取者等の自由 + ⭐️親権者等の監護権(通説) ⑴未成年者の同意のもと親権者に無断で未成年者を旅行に連れていく⇒ 本罪成立 ∵ 親権者の監護権も保護法益だから ⑵共同親権者の1人が他の共同親権者の監護下にある未成年者を無断で連れていく(例:離婚している場合)⇒ ⭐️構成要件該当(判例)(よく出る) ③行為:拐取=誘拐及び略取 誘拐:欺罔又は誘惑によって他人を生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置く 略取:暴行又は脅迫によって他人を生活環境から離脱させ、自己又は第三者の支配下に置く ④未遂:罰する(親告罪)228・229 ※親権者も該当し得るので親告罪にされている § 営利目的等略取・誘拐罪225:営利・猥褻・身体に対する加害の目的で人を略取し、又は誘拐した者 ① 客体:人(未成年者・成年者を含む) ②保護法益:被略取者等の自由 + 親権者等の監護権 又 は 被略取者等の自由 ③法的性質:目的犯-営利の目的=自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させる目的 ④未遂:罰する228 ⑤罪数:未成年者拐取は本罪に吸収(評価上一罪の特別関係) § 身代金目的略取・誘拐罪225の2:安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的で拐取した者 ⇒ 225の加重類型 ① 客体:人(未成年者・成年者を含む) ②保護法益:225と同様 + 財産 ③法的性質:目的犯-安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的 ※ 225の営利の目的とは異なる ④ 225の2の憂慮する者:安否を憂慮するのが社会通念上当然とみられる特殊な関係にある者(判例) (例)〇 銀行頭取を略取した場合の銀行幹部 ・ 〇 実際には憂慮しなかった場合でも成立 § 略取・誘拐罪及び人身売買等罪(出ない):条文一読225の2Ⅱ~229 ①概要:拐取後に身代金・事後従犯・国外移送目的・人身売買・未遂 ②解放減軽⭐️:救出前に安全な場所に開放 → 必要的減軽 ∵ 被拐取者の生命の安全
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⭐️出るのは不同意わいせつと不同意性交 § 強制猥褻罪176:13歳以上の者に暴行又は脅迫を用い猥褻な行為・13歳未満の者に猥褻な行為をした者 ①保護法益:性的自由 ② 主体・客体:性別を問わない ③行為 13歳以上の者を客体:暴行・脅迫 + わいせつな行為 13歳未満の者を客体:わいせつな行為(〇 暴行・脅迫なし、〇同意あり) ⑴ 暴行・脅迫:⭐️最狭義の暴行・脅迫=相手方の反抗を著しく困難にする程度( < 強盗-反抗抑圧 ) (例)〇 被害者の手足を押さえつける行為 ・ 〇 不意に女性の胸を触る ⑵わいせつな行為:普通人の性的羞恥心を害する行為(わいせつ176 > わいせつ174)→公然猥褻のほうが狭い (例)公然と むりやりキスした(〇176・×174) ・公然とキスした=×176・×174 Q ⭐️主観的構成要件要素として構成要件的故意に加えて性的意図(わいせつの心情)を必要とするか(短答向け) (例)いやがらせ目的で同性の服を脱がせた ・ 命令されて女子児童のわいせつな写真を撮影した ⑴ 旧判例:性的意図が必要 ⑵⭐️新判例:性的意図は成立要件でない ④未遂:罰する180 § 強制性交等罪177:13歳以上の者に対し暴行又は脅迫を用い性交等・13歳未満の者に性交等 をした者 ①保護法益:性的自由 ② 主体・客体:性別を問わない ③ 行為:強制猥褻と同様 13歳以上の者を客体:暴行・脅迫 + 性交等 13歳未満の者を客体:性交等(〇 暴行・脅迫なし、 〇 同意あり) ⑴暴行・脅迫:最狭義の暴行・脅迫=相手方の反抗を著しく困難にする程度 ⑵性交等:性交、肛門性交又は口腔性交 ④ 未遂:罰する180 ➢ 実行の着手時期:強制性交等に至る客観的危険性が認められた時点(判) (例)抵抗する女性を車に引きずり込む → 5km離れた場所で反抗抑圧程度の暴行を加え性交 ⇒ × 5km離れた場所での暴行開始時点 〇 抵抗する女性を車に引きずり込んだ時点 ⑤罪数:強制猥褻176は本罪に吸収(評価上一罪の特別関係) ⑥⭐️非親告罪:およそ性的自由に対する罪は非親告罪 § その他の性的自由に対する罪 Bランク ① 準強制猥褻・性交等罪178:心神喪失・抗拒不能 → 猥褻・強制性交等をした者 ②監護者猥褻・性交等罪179:18歳未満の者に監護する者の影響力に乗じて猥褻・性交等をした者 ③ 強制猥褻・性交等致死傷罪181:猥褻・強制性交等及びその未遂を犯し、よって人を死傷させた者
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§ 住居侵入罪130:正当な理由なく住居等に侵入した者 ①保護法益 ・平穏説-反対説 →住居の事実上の平穏 批判) 平穏 → 個人的法益と矛盾 ・住居権説-判例 →住居に誰を立ち入らせるのかの自由 ②客体 ⑴住居:人の起臥寝食に使用されている場所(⭐️書く) (例)〇 一時的使用(ホテル・旅館の一室) ・ 〇住居に付属する囲繞地(壁で囲まれた庭) ⑵人の看守する邸宅 人の看守する:管理・支配するための人的・物的施設を施す 〇守衛・管理人・施錠 × 立入禁止札 邸宅:居住用の建造物で住居以外のもの 〇 空き家・閉鎖中の別荘・共同住宅の共用部分 ⑶ 建造物:住居や邸宅にあたらない建造物 〇 学校・工場・物置・官公庁の庁舎 〇 警察署の塀⭐️ → 外部から見えない敷地に駐車された捜査車両確認目的で塀上部にあがった時点で成立 ③行為 正当な理由なく:違法性阻却事由があれば成立しない(通説)←当たり前のことが書いてあるだけ 侵入⭐️:住居権者の意思に反する立入り (住居の平穏を害する様な態様による立入-反対説) ⑴ 一般に立入りが許容されている場所への立入り ⇒ 原則侵入に該当しない Q 違法な目的で立ち入った場合 (例)営業時間中にデパートに万引き目的で立ち入った 平穏説:平穏を害する様な態様ではない ⇒ 侵入にあたらない 住居権説:管理権者の意思に反する立入り ⇒ 侵入にあたる ⑵住居権者の同意・承諾に基づいた立入り ⇒ 原則侵入に該当しない Q 錯誤による同意・承諾の場合 (例)強盗の意を秘して「今晩は」→家主が「お入り」→侵入 平穏説:平穏を害する様な態様ではない ⇒ 侵入にあたらない 住居権説:有効な同意・承諾なら〇=動機に錯誤がないことが必要 ⇒ 侵入にあたる ④ 未遂:罰する132 ⑤罪数:他の多くの犯罪と牽連犯となる § 不退去罪130:要求を受けてこれらの場所から退去しなかった者 ①行為:(退去に必要な合理的期間の経過しても)退去しなかった(真正不作犯)
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□ 総論 ①秘密を侵す罪:信書開封罪133・秘密漏示罪134 ②保護法益:個人の秘密 ③特徴:親告罪 ∵ 訴追により被害者が不利になりうる § 信書開封罪133:正当な理由なく封をしてある信書を開けた者 ①客体:封をしてある信書 ⑴封:信書の内容が認識できないように信書と一体になり施す装置 ⇒ 〇 封筒への糊付け × 引き出しに信書を入れて引き出しを施錠 ⑵信書:特定人から特定人に自己の意思を伝達する文書(判例) ⇒ 〇 手紙・法人相手 × 写真・図画・原稿 ②行為:封を開ける ⇒ 抽象的危険犯 (→現実に個人の秘密が侵害されたかどうかは問わない) § 秘密漏示罪134:医師、弁護士等又はこれらの職にあった者が秘密を漏らした時 ① 特徴:真正身分犯-医師・弁護士・薬剤師・宗教・医薬品販売業者等 ②客体:業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密
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2 名誉を侵す罪 § 名誉毀損罪230:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者 ①保護法益:名誉=人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値(判例) Q 保護法益である名誉の具体的な内容は? (名誉の分類) ・内部的名誉:自己や他人の評価から離れて客観的に存在するその人の真価≒個人の尊厳 ・外部的名誉:人に対して社会が与える肯定的な評価 ・名誉感情:本人が自己に対して有している価値意識≒感情 ⑴問題の所在:⭐️内部的名誉は傷つかない=保護法益ではない → 保護法益となるのは、外部的名誉or 外部的名誉+名誉感情 ⑵反対説:外部的名誉+名誉感情∵ 名誉感情も保護に値する 批判:単なる感情は保護に値しない+公然性の要求 ⑶ 判例・通説:外部的名誉のみ ∵ 公然性を要求 ②行為:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損 ⑴ 公然性=公然と:不特定または多数人が認識しうる状態(判例) 不特定または多数人:相手が限定されていないか相手が特定されているが多数のどちらか一方 認識しうる状態:知りうる状態=伝播する可能性がある(判例) (例)〇 不特定の人の前で・特定の多数の前で・特定かつ少数の前で名誉毀損(伝播しうるので◯) ⑵ 事実の摘示:社会的評価を低下させる程度の具体的なものを摘示 × 抽象的な事実(Aは馬鹿だ・Aはブスだ) ・ 社会的評価が低下しない(遅刻した・ミスした) 〇 具体的な事実(Aは風俗で働いた)・公知のもの・真実(死者の場合、虚偽の事実のみ) ⑶ 名誉を毀損:抽象的危険犯(判例)=×侵害犯 ∵ 社会的評価が現実に害されたことの認定が困難 ③親告罪232 ∵ 告訴による被害者の名誉の保護 § 公共の利害に関する場合の特例230の2: 公共の利害・公益目的・真実であれば罰しない ① 趣旨:表現の自由と名誉の保護との調和 ② 要件 ⑴ 公共の利害に関する事実:民主的政治を行う上で知る必要がある事実 × 病気・身体的障害・精神的傷害・血統・性生活・性的思考 〇 ⭐️政策評価・政治的に大きな影響力のある大規模宗教団体の会長の女性関係(判例) ⑵ 専ら公益を図る目的:⭐️主たる動機が公益目的(判例) ∵ 公益のみは困難(純粋に公益のためのみに行動する人はいない) 〇 営利目的の側面も持つ報道機関の報道 × 政治家が被差別部落出身者であることを理由とした人格否定報道 ⑶真実であることの証明:証明責任の転換 → 被告人が証明しないと真実ではない ③要件の擬制230の2Ⅱ・Ⅲ 擬制=あるものとして扱う ⑴原則Ⅰ 事実公共性:必要 目的の公共性:必要 真実の証明:必要 ⑵起訴前の犯罪行為Ⅱ 事実公共性:擬制 目的の公共性:必要 真実の証明:必要 ⑶公務員または公選による公務員の候補者Ⅲ 事実公共性:擬制 目的の公共性:擬制 真実の証明:必要 ④ 効果:不処罰 Q 不処罰の根拠 ⑴問題の所在:230の2の法的性格 → 真実性の錯誤の論点で重要 ⑵見解 処罰阻却事由説(反対説) ・不処罰の根拠:処罰阻却事由 ・根拠:文言(230「事実の有無にかかわらず」→事実がなくても犯罪は成立すると読める) ・批判:表現の自由 ※処罰阻却事由:例)親族相盗例 違法性阻却事由説(判例) ・不処罰の根拠:違法性阻却事由 ・根拠:表現の自由と名誉の保護の調和 Q ⭐️真実性の錯誤(重要論点) ①問題の所在:行為者が真実性を証明できない=230の2不適用 → 真実性を誤信していた場合の処理 ②違法性阻却事由説からの処理(判例) ⑴真実性の錯誤の意義:≒違法性阻却事由の錯誤 ⇒ 違法性を否定する事実を誤認識している限り、責任故意を阻却 ⑵誤認識の対象:違法性を否定する事実 ≒ 真実であることの証明があったということ(要件事実) ⇒ 上記裁判時の事由は行為時の事由に言い換える(裁判時の事由が行為時にあることはないため) = 訴訟法的表現を実体法的表現に引きなおす ⇒ ⭐️事実が証明可能な程度に真実であること(将来裁判になっても証明できると思っていたということ) ⑶軽信の場合(無責任に真実と勝手に考えていた場合):妥当しない ∴ 確実な資料・根拠に基づいていた場合のみ責任故意を阻却 ∵ 名誉の保護・政策的な観点 ② 処罰阻却事由説からの処理 ⑴ 原則:真実性の錯誤により故意は阻却されない ∵ 故意の対象ではない ⇒ 処罰しうる ⑵ 例外:確実な資料・根拠に基づいた言論の場合、35の正当行為に該当 ⇒ 違法性阻却される 違法性阻却事由説と処罰阻却事由説の違い 違法性阻却事由説:責任故意で阻却され得る 処罰阻却事由説:正当行為(違法性阻却)で阻却され得る § 侮辱罪231:B+ 事実を摘示しないで公然と人を侮辱した者は拘留又は科料 ①特徴:名誉毀損と類似、刑法で最も軽い法定刑 ②保護法益 Q 侮辱罪の保護法益は何か ⑴問題の所在:法人・幼児等、名誉感情を持たない者に対する成立の可否 ⑵見解 ・二元説-反対説 保護法益の内容: 名誉毀損=外部的名誉 ・ 侮辱罪=名誉感情 根拠:法定刑が極めて低い 外部的名誉説-判例 保護法益の内容:外部的名誉 根拠:公然性を要求 ⑶あてはめ:幼児・精神障害者・法人への侮辱罪も成立しうる(判例) ③行為 ⑴公然と:≒名誉毀損の公然性 ⑵ 侮辱:他人の人格を蔑視する価値判断を表示すること ⇒ 行為者の主観や評価 ⑶名誉毀損との違い:事実の摘示の有無 ⇒ 保護法益の毀損の程度が弱い ∴ 法定刑が軽い ⑷名誉毀損罪と侮辱罪の例 ・Aは頭が悪いというのは評価であり外部的名誉が侵害されるので侮辱罪成立 ・Aは知的障害で通院歴があるというのは事実の摘示で外部的名誉が侵害されるので名誉毀損罪成立 ・Aは平均より300g太っているというのは事実の摘示で名誉感情のみ侵害されるので成立する罪名は無し ④法的性質:親告罪、抽象的危険犯
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§ 信用毀損罪233前段:虚偽の風説を流布し又は偽計を用いて人の信用を毀損した者 ① 保護法益:経済的な側面における人の社会的評価(判例) ② 客体:人の信用 = 経済的信用全般 ⑴ 具体例:支払能力 ・ 支払意思 ・ 商品の品質に対する社会的な信頼 ⑵判例:コンビニで購入した飲料に異物が混入という嘘を流布 → 本罪成立 ③行為 ⑴虚偽の風説を流布:客観的真実に反する事実を不特定又は多数人に伝播する ⇒ 伝播する可能性で足りる=特定かつ少数でもよい(判例) + ⭐️虚偽に限定 ⑵偽計を用いる:人を欺罔・誘惑し又は錯誤・不知を利用すること ⑶信用を毀損:⭐️抽象的危険犯=現実に信用が毀損される必要はない ∵ 認定困難 § 業務妨害罪233後段・234:虚偽の風説を流布、偽計、威力を用いて業務を妨害した者 ①保護法益:業務活動そのもの(判例) ②客体:業務=社会生活上の地位に基づき継続して行う事務 ⑴具体例:業務妨害の業務<業過致死の業務 ・業務妨害罪の業務は一般的な仕事のことをさし、娯楽は含まない(例:狩猟) ⑵ 公務:公務員の職務 Q 本罪の業務に公務執行妨害罪の職務が含まれるか⭐️B+ ⑴問題の所在:Aが警察官による捜索を偽計により妨害 ⑵判例⭐️色々学説あるが判例だけ抑えればok ・強制力を行使する権力的公務:業務に含まれない ∵ 打たれ強さあり → 保護の必要なし ・上記以外の公務:業務に含まれる ∵ 打たれ強さなし → 保護の必要あり ⑶具体例 ・権力的公務:逮捕・勾留・捜索・差押え・強制執行・即時強制 ・上記以外の公務:県議会委員会の条例案採決・国立大の講義・行政代執行手続なく段ボール住居撤去 ③行為 偽計業務妨害:虚偽の風説の流布又は偽計を用いる ⇒ 信用毀損罪と同様 威力業務妨害:威力を用いる = 人の意思を制圧するに足りる勢力を示す ⑴ 具体例 偽計業務妨害:〇 虚偽の電話注文・障害物を沈めて秘かに漁網を破損・通信線を秘かに切断 威力業務妨害:〇 総会屋が株主総会で怒号・猫の死骸を引き出しに入れる・イルカ収容中の網を切断 ⑵ 偽計と威力の区別:被害者の目に見える形で行われたら威力、そうでない場合が偽計 ⑶業務を妨害した:抽象的危険犯 ∵ 認定困難 § 電子計算機損壊等業務妨害罪234の2:電子計算機を損壊等をさせて業務を妨害した者 ①特徴:電子計算機に対する加害行為による業務妨害を通常の業務妨害より重く処罰 ∵ 程度が深刻 ②保護法益:電子計算機による業務活動 ③ 電子計算機:情報を収集・処理・制御する機能 → 〇 パソコン ・ × マイクロコンピュータ ④行為:物理的・電子的に目的とした動作をできなくする ⑤法的性質:抽象的危険犯・未遂も罰する234の2
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1 財産犯総論 □ 財産犯の客体 •財物:=261・252の物 •財産上の利益:246等 1①財物 Q 財物の意義 ⑴問題の所在:電気は窃盗・強盗・詐欺・恐喝との関係で財物とみなす245・251 ⑵ 学説 管理可能性説: 物理的・事務的に管理可能な物 ∵侵害された場合保護すべき (批判)財産上の利益も財物に含まれてしまう 物理的管理可能性説: 物理的に管理可能な物 ∵財物と財産上の利益の区別 (批判)245 有体性説(⭐️通説):有体物(個体・液体・気体) ∵245の文言 ∴電気は例外 ⑶あてはめ 管理可能性説:有体物、電気、電気以外のエネルギー、債権・情報全て財物(電気は注意規定) 物理的管理可能性説:有体物、電気、電気以外のエネルギーは財物(電気は注意規定)、債権・情報は該当しない 有体説:有体物のみ財物。電気は245条、251条により例外。電気以外のエネルギー、債権・情報は該当しない。 Q 法禁物は財物に含まれるか ⑴法禁物:法令上私人による所持・占有が禁止された物(例)覚せい剤、拳銃 ⑵判例:財物に含まれる ⑶理由:法禁物の没収にも一定の手続きが必要 ⇒ 没収制度の存在は法禁物も財物を前提 Q 不動産は財物に含まれるか ⑴通説:⭐️各財産犯により異なる ・窃盗罪・強盗罪 ⇒ 含まれない ・上記以外の財産犯 ⇒ 含まれる ⑵ 理由:不動産侵奪罪 Q 財物に財産的価値を必要とするか ⑴問題の所在:財産的価値のないものに財産犯が成立するか ⑵通説:必要。但し、主観的な価値でよい(判例は不要?) ⑶ あてはめ:〇 無効な約束手形・価格2銭円程度の石塊 ②財産上の利益 ⑴定義:財物以外の財産的利益のすべて(⭐️書けるように) (例)債権 ・ 担保権等の権利の取得 ・ 役務(サービス)の取得 ・ 債務の免除 ・ 支払いの猶予 ⑵客体による財産犯の分類 ・財物罪=1項犯罪:財物を客体とする犯罪 ⇒ 背任罪以外の全て ・利得罪=2項犯罪:財産上の利益を客体とする犯罪 ⇒ 強盗・詐欺・恐喝・背任 ⇒ ⭐️利益窃盗・利益横領は不可罰 Q 法禁物の返還請求権について財産上の利益に含まれるか ⑴問題の所在:覚せい剤の返還を免れるために強盗 ⇒ 覚せい剤の返還請求権は財産上の利益? ⑵判例:含まれる ⑶理由:法禁物が財物に含まれる □ 財産犯の分類 ①財産犯:他人の財産を侵害する犯罪 毀棄(きき)・隠匿罪:不法領得の意思なし 領得罪:不法領得の意思あり 横領罪:占有移転なし 奪取罪:占有移転あり 盗取罪:相手方の意思に反する ⇒ 窃盗・不動産侵奪・強盗 交付罪:相手方の意思に基づく ⇒ 詐欺・恐喝 ②全体財産に対する罪と個別財産に対する罪 ・全体財産に対する罪:財産の総合的な減少で成立する財産犯 ⇒ 背任罪 ・個別財産に対する罪:財産の個別的な減少で成立する財産犯 ⇒ 背任罪以外の財産犯 (例)100万の絵の贋作を10万で購入 → 実際10万の価値 ⇒ 〇 個別財産(10万円は無くなっている) × 全体財産(10万円で10万円の価値のあるものを手に入れたので総合的には減少なし)
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§ 窃盗罪235:他人の財物を窃取した者 ①保護法益 ⇒ 窃盗罪以外の奪取罪においても妥当 Q 窃盗罪の保護法益 ⑴問題の所在:盗まれた自己物を窃取した場合 ⇒ 本権と解すると窃盗罪は不成立。占有と解すると成立 ⑵ 見解 ・本権説(反対説):保護法益は所有権その他の本権 (理由)自己物の取戻しは処罰に値しない ・占有説(判例通説):保護法益は占有 (理由)自力救済の禁止 ⑶ 結論:自力救済禁止の原則から占有が保護法益 → 自救行為による違法性阻却を検討 ②客体:他人の財物235 + 他人が占有している242(他人の占有等に係る自己の財物) ⑴ 242の解釈 ·本権説(反対説):他人が(本権に基づいて)占有している+ 他人の財物 ·占有説(判例通説):他人が(本権の有無を問わず)占有している+ 他人の財物 ⑵ 具体例:〇電気245 ×不動産235の2 ×⭐️情報(〇DVD・×自分のDVDにデータ) ③行為:他人の財物の窃取 ⑴窃取:他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転すること(判例)(⭐️論文で書く) ⇒ 他人の占有物 → 意志に反して占有移転 ⑵他人の占有:有無 ⇒ ⭐️窃盗罪と横領罪のメルクマール Q 占有の有無 ⑴判断基準:事実上の支配(客観的要件)と支配する意志(主観的要件)を社会通念から総合的に考慮 ⑵占有の肯定判例 → 窃盗成立 ⭐️判例の事例を押さえる ・自宅内の所在がわからない財物 ・自宅前の公道に放置された自転車(自宅前なので事実上の支配も支配する意思もあると評価) ・⭐️公園のベンチに置き忘れ、200メートル離れた時点で置き忘れに気づいた鞄 ∵ 時間的に近接 ・宿泊客が旅館内のトイレに忘れていった財布 ∵ ⭐️旅館の人が占有(旅館の人は手元に置いておき忘れた客に返すと考えるのが通常であり支配の意思ありと言える) ・ゴルフ場内の人工池の底のロストボールで回収・再利用が予定されていた場合 ⑶占有の否定判例 → 横領成立 ・村役場の事務室に置き忘れられた紙幣 ∵ 誰でも立ち入れる ・列車の網棚に置き忘れられた荷物 Q 占有の帰属 ①問題の所在:複数の人が占有に関与 → 誰の占有 ②判例 ⑴対等な関係:各保管者が占有 (例)対等な保管者の一人が物を領得 → ⭐️他者との関係で窃盗成立(横領ではない) ⑵上下・主従関係:上位者が占有・下位者は占有補助者 (例)商店内の商品(商店主が占有・⭐️店員は占有なし) → 店員が商品領得 → 窃盗成立 ※ 会社の雇われ店主の場合は横領になる ⑶寄託された封緘物:寄託者が容器に物を入れて容器に封を施す(=封緘物) → 受託者に預ける ※封緘(ふうかん):手紙や文書などの封をとじること ・封緘物「自体」の占有:受託者 (例)現金入った封筒を「封したまま」領得・開封⇒ 横領 ・封緘物の「内容物」への占有:寄託者 (例)「開封」後内容物を取出す⇒ 窃盗 ⭐️Q 死者の占有:死者が生前占有していた財物を領得 ① 問題の所在:殺人後に領得の意思を生じ財物を領得 → 他人の占有があるといえるか(殺人+窃盗?) ⇒ 最初から領得の意思で殺人後に財物を領得 → 強盗殺人成立 ②反対説:死者は物を占有できない=死者の占有は否定 → 占有離脱物横領罪成立 ③判例通説:⭐️死者の占有自体は否定。ただし、被害者が生前に有した占有は死亡させた犯人に対する関係では、死亡と時間的・場所的に近接した範囲内において保護に値する ∴ ⭐️上記要件をみたす場合、一連の行為を全体的に観察して占有を侵害したと解し、窃盗罪成立 ④無関係の第三者が死者から財物を領得:占有離脱物横領罪成立 ∵ 上記要件をみたさない ⑶意思に反する占有移転:特段の限定はない 〇 パチンコ店で体感器を用いて不正にメダルを獲得(因果関係も不問。体感器を使うことは占有者(店舗)の意思に反する) × パチンコ店で他の共犯者の不正行為を隠蔽する目的で通常の方法により遊戯してメダルを獲得 〇 振り込め詐欺により被害者が振り込んだ金員をATMから引き出す行為 ∵ 正当な権限なし ④ 未遂243 ⑴ ⭐️着手時期:構成要件的結果発生の現実的危険性を含む行為を開始した時点 ⑵判例:実行着手ありとした時点 ・住居侵入後、財物を物色した時点 ⇒ 住居侵入時ではない ・土蔵の外扉の錠を破壊して扉を開いた時点 ⇒ 無人で危険 ・深夜の店舗に侵入後、レジのある場所に行きかけた時点 ⇒ 深夜で危険 ・窃取の意思で他人のズボンのポケットの外側に触れた時点 ⇒ ⭐️財物の存否確認の意思なら否定 ⑤既遂 ⑴既遂時期:他人の占有を侵害して財物を自己又は第三者の占有に移した時(取得説 判例通説) ⇒ 占有を移した時:財物の大小、搬出の容易性、他の支配領域内等を総合的に考慮 ⑵判例 〇店舗内で靴下一足をポケットに入れた ⇒ 店舗内+小型物 (小型の物なので店舗の中でもポケットに入れれば自己の占有に移したと言え既遂) ×電気店内で窃盗目的でテレビを持ち上げた ⇒ 店舗内+大型物 (大型の物なので店舗の中で持ち上げても自己に占有が移ったとは言えない) ×壁に囲まれた敷地内の資材小屋から重量物を敷地内の壁近くに運んだ ⇒ 敷地外が必要 〇他人の家の風呂で発見した指輪を風呂場内の容易に発見できない場所に隠匿 ⇒(ポケットの中に指輪を入れるのと同じ→靴下をポケットに入れるのと同じ) 〇⭐️他人の車のエンジンを始動させ発進可能な状態にした ⇒ 自由に持出せる(エンジンがかかったらすぐ動かせるので危なくて取り返せなくなるため) ⑥⭐️ 主観的要件:故意は必要 Q 故意とは別の明文なき主観的構成要件要素として不法領得の意思を要するか、又、その内容は何か ⑴ 問題の所在:使用窃盗及び毀棄・隠匿罪との区別の必要性 ≒ 理由 ・使用窃盗:他人の財物の一時無断使用 ⇒ 不可罰 ∵ 損害が軽微 ・毀棄・隠匿罪:他人の財物の毀棄・隠匿 ⇒ 窃盗より軽い ∵ 窃盗は利欲犯的性格から毀棄隠匿よりも強い非難 ⑵判例・通説:振る舞う意思と利用・処分意思を内容とする不法領得の意思が必要 ・権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞う意思 ∵ 使用窃盗と区別 ・財物の経済的用法に従い利用・処分する意思 ∵ 毀棄・隠匿罪と区別 ⇒ 権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意志 ⑶あてはめ ・振る舞う意思:社会通念上、使用貸借又は賃貸借によらなければ使用できない様な形態の有無 × 自転車の一時使用+返却 〇自転車の一時使用+放置 〇自動車の4時間程度の一時使用(元の場所に返却)(判例) ※ ∵自動車は高価 ・利用・処分意思:もっぱら毀棄・隠匿目的である場合以外は肯定 〇 性的目的での女性用下着の窃取(判例) 〇 コピー目的での機密資料持ち出し(判例)
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窃盗罪が成立するには、故意の他にいかなる主観的要件が必要になるか。いわゆる不法領得の意思の要否ないし内容が問題となる。不可罰的な使用窃盗と区別するために権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として振る舞う意思が必要と解する。また、窃盗罪が利欲犯的性格を有することにより毀棄・隠匿罪よりも重く処罰されることから、毀棄・隠匿罪と区別するために財物の経済的用法に従い利用・処分する意思も必要と解する。従って、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意志を内容とする不法領得の意思が必要 ⭐️不可罰的な使用窃盗との区別と毀棄隠匿罪との区別のために不法領得の意思が必要と導くことがポイント
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不動産侵奪罪235の2:他人の不動産を侵奪した者 ⑴客体:他人の占有する不動産 ⇒ 不動産の窃盗を処罰 ⑵行為:侵奪 = 他人の不動産の占有を意思に反して排除し、自己又は第三者の占有を設定する≒窃取 ⇒ 新たな占有(=占有の態様が質的に変化)の有無で判断 ⑶肯定判例 他人の土地に勝手に建造物を建築、 他人の農地を無断で耕作、 空き室を勝手に住居にする 転貸禁止+屋台使用のみで貸与 → 転貸し風俗営業施設を建築(新たな占有)、 転削し土砂を投棄通常の土地の使い方ができなくなる) ⑷否定判例 借家人が賃貸借終了後に居座る、 借地上に事業用の事務所建築 → 無断で居住用に変更 ③主観的要件:故意 + 不法領得の意思(窃盗と同じ) ④未遂234:罰する
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§ 親族相盗例244:配偶者・親族の窃盗は刑を免除 ①意義:配偶者・直系血族・同居の親族の窃盗・不動産侵奪は刑を免除、それ以外の親族は親告罪 ⇒ 詐欺・恐喝・横領・背任及びそれらの未遂にも準用251・255 + ⭐️強盗は準用なし ②趣旨:法は家庭に入らず ③免除の法的性質:一身的処罰阻却事由(判例) ∵ 趣旨 ④要件:配偶者・直系血族・同居の親族(直系を除く6親等内の血族3親等内の姻族) ⇒ ⭐️配偶者には内縁関係の者は含まない + 準用も否定 Q 窃取の目的物の占有者と所有者が異なる場合、親族関係の必要な人的範囲 ⑴問題例:Aが父Bの時計を窃取 → Bは占有者、時計の所有者は親族でないC ⑵判例:所有者・占有者双方との間に親族関係が必要 ⑶理由:趣旨から、全ての関与者が家庭内に存在することが必要 Q 親族が未成年後見人でもある場合 ⑴問題例:未成年者Aの祖母Bが未成年後見人でもある → BがAの財物を窃取 ⑵問題の所在:未成年後見人は保護する立場 → 悪用すべきでない ⑶判例:244不適用 ⑷理由:未成年後見人は公的性格 → 法は家庭に入らずという趣旨が妥当しない Q 親族関係の錯誤がある場合 ⑴問題例:Aが父Bの時計を窃取 → Bは占有者、所有者は親族でないC → Aは父Bが所有者と誤信 ⑵ 結論:244不適用 ⑶理由:一身的処罰阻却事由 → 故意の対象ではない ※処罰阻却事由は故意の問題ではない ⑤共犯者:244不適用
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3 強盗の罪 § 強盗罪(1項強盗)236Ⅰ:暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者 ①客体:他人の占有する財物 ⇒ 財産上の利益なら2項強盗 ②保護法益:占有 + 生命・身体・意思の自由 ③行為:暴行又は脅迫を用い財物を強取 → 結合犯:暴行or 脅迫+盗取 ⇒ 因果経過:暴行又は脅迫 → 被害者の反抗抑圧 → 財物の強取 ※結合犯:それぞれ独立して犯罪となる数個の行為を結合して、法律上1つの犯罪としたもの ⑴暴行・脅迫:最狭義の暴行・脅迫=相手方の反抗を抑圧する程度 ⇒ 強盗(反抗抑圧) > 恐喝(畏怖する=反抗抑圧に至らない程度) > 窃盗(畏怖しない) ※暴行脅迫で反抗抑圧に至らなかったら恐喝 ※暴行概念 ⅰ最広義:不法な有形力の行使 例:騒乱 ⅱ広義:不法な有形力の行使+人に対する 例:恐喝、強要、公務執行妨害(パトカーを蹴る等) ⅲ狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する 例:暴行、脅迫 ⅳ最狭義:不法な有形力の行使+人に対する+身体に対する+反抗抑圧程度 例:強盗、強制性交等 ➢ 問題例 客観的には反抗抑圧でないが主観的には反抗抑圧 ⇒ 不能犯 ※ 不能犯:犯罪行為に着手したが、結果の発生が客観的に不可能であった場合のことをいいます。たとえば、弾の装填がされていない銃で狙撃しようとした場合→具体的危険説:犯人が被害者の臆病な性格という特殊事情を知っていた場合又は知り得た場合 スリが窃取のために軽くぶつかった ⇒ 該当しない(窃盗) 財物奪取のため不意に通行人を後方から突き倒す ⇒ 該当する (⭐️頻出)ひったくり目的で車の窓からバッグの紐を引っ張る ⇒ ×引っ張る時点では強盗罪の暴行脅迫ではない 〇引っ張った後にバッグを離さず被害者と共に車進行(転倒して生命身体に重大な侵害が及ぼされる危険があるため) ⑵手段性:財物奪取に向けられたもの ⇒ 強盗罪の暴行・脅迫:⭐️財物奪取に向けられた、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫 こめq⭐️定義を書けるように ※被害者が気に食わないから暴行脅迫するのでは非該当 ⑶強取:強盗罪の暴行又は脅迫により、相手方の意思に反して財物を自己または第三者の占有に移す Q 反抗抑圧の要否 ⑴問題例:客観的には反抗抑圧程度の暴行・脅迫、被害者の反抗抑圧には至らない → 畏怖で強取 ⑵ 判例:強盗成立 ⇒ 現実の反抗抑圧は不要 Q ⭐️事後的奪取意思:暴行・脅迫の後にはじめて財物奪取の意思を生じた場合 ⑴問題例:強制性交等の目的で暴行 → 反抗抑圧 → 高価な時計を見つけ、奪取意思を生じ強取 ⑵判例・通説 原則:不成立 ∵ 財物奪取に向けられたものではない 但し:財物奪取に向けられた新たな暴行・脅迫 + 反抗抑圧状態を継続させるに足りるもの → 成立 (⑶あてはめ:簡単に認定 ∵ 反抗抑圧状態を継続 肯定:腕を持ち上げる(有形力を行使=暴行) ・ 時計をよこせと言った(要求・発言=脅迫) 否定:気絶していた ・ 死亡していた ⇒ 窃盗 ④未遂:罰する243⇒ 着手時期 = 暴行又は脅迫の開始時 ⑤ 既遂:罰する⇒ 既遂時期 = 財物の占有を取得時 ⑥主観的要件:故意 + 不法領得の意思 が必要
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AがBに強制性交等の目的で暴行を加え反抗を抑圧し、性交等をした後、高価な腕時計にはじめて気づきBの腕をつかみ時計を奪取 ーーーーーーーーーーーー Aには強制性交等罪が成立。ではその後に奪取意思を生じ、Bから時を奪った行為について強盗罪が成立するか、いわゆる事後的奪取意思が問題となる。そもそも、強盗罪は財物奪取に向けられた、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を手段として財物を奪取する犯罪類型である。従って、本罪の暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない。ところが、Aの当初の暴行は財物奪取に向けれらたものではない。よって当初の暴行を捉えて強盗は成立しない。ただし、財物奪取に向けられた新たな暴行・脅迫があれば成立する。そして、その新たな暴行・脅迫は反抗抑圧状態を継続させるに足りるものであればよいと解する。本件でみるに、
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§ 強盗利得罪(2項強盗)236Ⅱ:前項の方法により財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者 ①客体:財産上の利益 ⇒ 財物なら1項強盗 ⇒ 不法の=利益を得る方法の不法性(×利益自体の不法性) → 法禁物の返還請求権も該当する ②行為:暴行または脅迫を用いて財産上の利益を取得 ⇒ 因果経過:暴行または脅迫 → 反抗抑圧 → 財産上の利益を取得 ⑴ 暴行または脅迫:財産上の利益の取得に向けられた、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫 ※1項号等では「財物取得に向けられた」 ⑵財産上の利益の取得 (例)債務の支払請求 → 暴行により反抗抑圧 → 債務免除 Q 処分行為(=被害者の意思で財産上の利益を相手方に移転させる行為)の要否(⭐️論点を落としがち) ⑴問題の所在:処分行為が財産上の利益の取得に必要 ⑵問題例:債務免除のために債権者を殺害 ⑶判例:不要 ⑷理由:被害者の反抗を抑圧して取得する犯罪 → 任意の処分行為は予定されていない ※上記理由も書く ※反抗抑圧状態何もできない被害者に処分行為を求めるのは不適切 ※詐欺や恐喝などの交付罪では必要。強盗では不要 Q ⭐️利益移転の具体性・確実性の要否 ⑴問題の所在:債権者を殺害しても相続人がいる等で債務免除されない → 財産上の利益取得なし ⑵判例:⭐️利益移転の具体性及び確実性が必要 ⑶理由:2項強盗罪の処罰範囲を限定 ⑷あてはめ:事実上債務を免れたといえるか ・相続人なしの場合、利益移転の具体性・確実性あり ・相続人なしの場合、債権の物的証拠無しなら利益移転の具体性・確実性あり ・相続人なしの場合、債権の物的証拠ありなら利益移転の具体性・確実性無し ※債権の物的証拠無しなら、相続人は債権を主張できなくなる ・飲食店で食い逃げのために店員を殴り逃亡 → 〇 ・キャッシュカードを窃取し、反抗抑圧の暴行・脅迫を加え暗証番号を聞き出す → 〇 ⑸否定の効果:暴行・脅迫がない → 未遂すら成立しない ∵ 実行行為がない ③1項詐欺罪との関係 ➢ 無銭飲食の意図を秘して料理を取得 → 反抗抑圧程度の暴行・脅迫により代金請求を免れる ⑴検討:1項詐欺罪 → 2項強盗罪 ⇒ 両者の併合罪? ⑵判例:2項強盗罪の混合包括一罪 ⑶理由:両罪は時間的・場所的に近接 + 被害法益は実質的に同一(料理・料理の代金) § 事後強盗罪238:窃盗が財物の取返しを防ぐ、逮捕を免れる、罪跡隠滅等のために暴行又は脅迫をした ①意義:財物奪取に向けられた暴行・脅迫ではない(強盗ではない) ⇒ 強盗として扱う ② 背景:窃盗犯が現場離脱の際に暴行・脅迫を加えることが多い ⇒ 人身保護が必要(多) ③ 行為:暴行又は脅迫 ⑴程度:相手方の反抗を抑圧する程度 ⑵相手方:目的達成の障害となりうる者 (例)被害者・逮捕しようとする者等 ⑶⭐️窃盗の機会の継続中 ∵ ⭐️条文の位置から財産犯 (論文に書く) Q 「窃盗の機会の継続中」の当否 ⑴ 判断基準:容易に発見されて、財物を取り返されあるいは逮捕され得る状況(判例) ⇒ ⭐️時間的・場所的接着性、被害者側による追跡の有無 により判断 ⑵ 肯定事例 ・窃盗後、被害者に追跡される → 現場から離れて逃亡する途中で被害者に暴行 ・窃盗後、電車内で現行犯逮捕 → 5分後に連行中の到着駅で逮捕した車掌に暴行 ・⭐️窃取後、天井裏に潜伏 → 3時間後警官に発見 → 逮捕を免れるため宅内で警官に暴行 ※3時間も経っているが窃盗の機会の継続中といえるか:同じ場所で窃盗、暴行をおこなっており、場所的接着性あり ⑶ 否定事例 ・窃盗後、現場離脱 → たまたま近隣を巡回中の警官に職質され暴行 ※追跡無し→「窃盗の機械の継続中」否定 ・窃盗後、現場離脱 → 1km離れた後、再度窃盗目的で被害者宅に戻った → 発見され暴行 ④目的:財物が取返されることを防ぐ ・ 逮捕を免れる ・ 罪跡を隠滅する ⑴事後強盗罪は目的犯 ⇒ 成立に目的達成は不要(目的があればよい) ⑵居直り強盗:被害者に発見された窃盗犯が、新たな財物奪取目的で暴行・脅迫を行う場合 ⇒ 強盗(×事後強盗):⭐️窃盗後の暴行・脅迫でも目的により構成要件が異なる Q 窃盗既遂+居直り強盗既遂 の関係 ⑴判例:強盗罪の混合包括一罪 ⑵ 理由:時間的・場所的に近接 + 被害法益の実質的同一性(被害者の財物) ⑶共犯と事後強盗の性質 Q 事後強盗の暴行・脅迫から関与した者の罪責 ⑴問題例:AがXから財物窃取して逃亡 → 友人Bと遭遇 → Bに事情説明しBと共に追跡したXに暴行 ⑵問題の所在:Bは暴行のみ関与しており窃盗は無関係 ⑶学説:事後強盗の性質から結論が異なる ・結合犯説: 事後強盗=窃盗+暴行or 脅迫の結合犯(強盗と同様)⇒ 承継的共同正犯の問題 (批判)窃盗に着手した時点で事後強盗未遂とするのは着手時期が早すぎる ・身分犯説:窃盗犯であることを身分とする身分犯⇒ 共犯と身分の問題 → ⅰ 不真正身分犯説 暴行・脅迫が窃盗犯により行われた場合の加重類型 ⇒ 65Ⅱの問題 (批判)窃盗と暴行脅迫は罪質が異なる犯罪類型であるため加重類型にならない(窃盗は財産犯だが暴行脅迫はそうではない) ⅱ 真正身分犯説(自説) 窃盗犯という真正身分犯にのみ成立 ⇒ 65Ⅰの問題 ⑷真正身分犯説からの結論:真正身分犯 →65Ⅰで処理 →Bに事後強盗罪の共犯が成立 ⭐️論文で自説を書くときは多説も批判すると高得点 -------------- (身分犯の共犯) 第六十五条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。 2身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。 -------------- ⑤未遂:罰する243 ⇒ 未遂・既遂は先行する窃盗の未遂・既遂によって決する(判例通説) (例)窃盗既遂+本罪目的で暴行=事後強盗既遂 ・ 窃盗未遂+本罪目的で暴行=事後強盗未遂 Q 事後強盗の予備罪が成立するか ⑴事例:窃盗目的+見つかったら暴行するつもりで凶器を購入 → 窃盗の着手前に発覚 ⑵問題の所在:明文なし + 条文の位置 ⑶判例:事後強盗予備の成立を認める ⑷理由:238条は「強盗として論ずる」と規定 ∴ 237の強盗には事後強盗も含む § 昏睡強盗罪239:人を昏睡させてその財物を盗取した者は強盗として論ずる ① 行為:昏睡させて財物を盗取 (例)〇酒に酔わせて意識障害 ×既に昏睡状態(自分で酔い潰れている人から財物を盗取しても不成立) ②未遂:罰する243 ③予備:成立(≒事後強盗)
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債務者Aが債務逃れのために債権者Bを暴行により殺害した事案 ーーーーーーーーー Aの行為につき、強盗利得罪を基礎とした強盗殺人罪が成立するかが問題となる。まず、暴行は反抗を抑圧する程度のものであったと解する。もっとも、本件ではBによる処分行為がなされていない。そこで強盗利得罪において被害者による処分行為が必要かが問題となる。そもそも、強盗利得罪は被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪である。とすれば、被害者による任意の処分行為は予定されていないというべきである。従って、処分行為は不要。ただし、処罰範囲を限定するべく財産的利益の移転の具体性・確実性が必要である。本件でも、
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警官に追跡され逃走中の窃盗犯が、犯行現場から3km離れた場所で逮捕を免れるため警官を殴った事案 ーーーーーーーーーー Aに事後強盗罪が成立するか。反抗抑圧程度の暴行と逮捕を免れる目的は認められる。もっとも、暴行は現場から3km離れた場所で行われていることから、窃盗の機会の継続中といえるかが問題となる。そもそも、同罪は財産犯である以上、窃盗の機会の継続中に行われたことを要する。そして、窃盗の機会の継続中といえるか否かは、時間的・場所的接着性や被害者側による追跡の有無等により判断すべきと解する。本件は ⭐️設問では警察による追跡があるので、窃盗の機械の継続中であると肯定する
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財物を窃取して逃走中のAが偶然遭遇した友人Bに事情を話し、追跡したXに対しBと共同して暴行を加えた ーーーーーーーーー Aには事後強盗罪が成立する。では、Bにも事後強盗罪が成立するか、暴行・脅迫にのみ関与した者の罪責が問題となる。この点、事後強盗罪を窃盗と暴行・脅迫との結合犯と捉え、承継的共同正犯の問題とする見解がある。しかし、この見解では事後強盗の目的で窃盗に着手した時点で事後強盗罪が成立することになりかねず、妥当ではない。そこで、事後強盗罪は窃盗犯であることを身分とする身分犯であると解し、65条により処理するのが妥当である。そして、不真正身分犯と解する見解があるが、非財産犯である暴行・脅迫と財産犯である本罪との間に加重類型という性質を見出すことは困難である。そこで、事後強盗罪は真正身分犯であると解する。そして、本件では
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§ 強盗致死傷罪240:強盗が人を負傷させたとき ・ 死亡させたとき ①主体:強盗 ⇒ ⭐️未遂・既遂を問わない(判例) ※ 財物の占有を取得できなくても強盗致死傷罪は成立する (例)強盗未遂 + 暴行により被害者死亡 → 本罪が成立しうる ②故意:結果的加重犯の側面を有する Q 傷害・殺人の故意がある場合 (事例)被害者を殺して財物を奪おうと考えて実行した ①問題の所在:結果的加重犯は本罪の対象 → 犯人に傷害・殺人の故意がある場合は不明確 ②旧判例:240は純粋な結果的加重犯の規定 ∴ 犯人に故意がある場合は含まない ③現判・通説:240は故意がある場合を含む 【240には4つのパターンがある】 ⅰ強盗致傷:傷害結果発生 + 故意なし = 結果的加重犯 ⅱ強盗致死:死亡結果発生 + 故意なし = 結果的加重犯 ⅲ強盗傷害:傷害結果発生 + 故意あり = 故意犯 ⅳ強盗殺人:死亡結果発生 + 故意あり = 故意犯 ④ 理由 (2つとも書けるように) ⑴ 強盗の機会に死傷結果が多い事に着目 → 故意を有する場合は極めて多い → 排除は趣旨に反する ⑵ 結果的加重犯に通常用いられる文言「よって」がない ③行為:暴行・脅迫 Q⭐️ 死傷の原因が暴行・脅迫以外の場合 (例)Aに暴行して財物を奪取 → Aが逃亡し車に轢かれた ① 問題の所在:強盗の手段としての暴行・脅迫から結果発生 → 本罪成立 ⇒ それ以外の場合は? ②反対説:強盗の手段としての暴行・脅迫から生じた場合に限り本罪成立 ③ 判例通説 ⑴結論:強盗の手段としての暴行・脅迫から生じた場合に限定しない ⇒ ⭐️強盗の機会に生じれば足りる ⑵理由:強盗の機会に犯人が死傷結果を生じさせる場合が多いことに着目 ④あてはめ:⭐️強盗の機会≒強盗行為と密接な関連性を有する行為により結果が生じた場合 ⇒ 時間的・場所的近接性、犯行意図の継続性、 被害者の同一性 ⑶ 肯定判例⭐️ ・強盗の手段としての暴行・脅迫が原因の場合 ・財物奪取目的で母親を殺害後、そばで寝ていた幼児2人を殺害 ・強盗犯が追跡してきた家人を日本刀で刺して殺害 ・タクシー運転手に車内で銃で脅して金品を要求 → 6km走行させ逃走のため被害者の頭部を殴打 ・強盗被害者が強盗から逃れるため逃亡したところ、第三者が運転する自動車に轢かれ死亡 ⑷否定判例 ・強盗の過程で誤って乳児を踏みつけて殺害(犯行意図の継続性無し) ・強盗殺人後、犯人らの顔と犯行を知る者の殺害を共謀 → 犯行から約5時間後、誘い出して殺害(時間的場所的近接性無し、犯行意図の継続性無し) ・日頃の私怨をはらすために強盗の機会を利用して被害者を殺害(犯行意図の継続性無し) ・強盗の共犯者が強盗の際に仲間割れをして他の共犯者を殺害 Q 240条の既遂時期(例)Aに暴行したが財物を奪取 する前にAが逃亡し車に轢かれた ⑴問題の所在:財物奪取前にAが逃亡(財物の占有取得なし) ⇒ 強盗は未遂+本罪成立 ⑵判例通説:死傷結果が生じたときに既遂となる → 強盗自体が未遂でも本罪は既遂 ⑶ 理由:⭐️強盗致死傷罪の法定刑が極めて重いのは、生命・身体を第一次的な保護法益としているから Q 傷害の程度 ⑴従来の通説:傷害罪よりも重度 → 加療を要する程度 ∵ 下限7年 → 減軽でも執行猶予不可 ※ 加療とは:病気やケガの手当てをすること ⑵ 現有力説:傷害罪と同等 ∵ H16改正で下限6年 → 執行猶予可 Q 脅迫による死傷結果 ⑴反対説:本罪不成立 ∵ 極めてまれで想定しない ⑵判例通説:本罪成立 ∵ 脅迫による畏怖から危険な行為 → 死傷結果 ⇒ 経験上十分ありうる 未遂:罰する243 ⇒ 判例・通説を前提とすれば、強盗殺人未遂の場合のみ成立 ・強盗致傷 + 致傷結果の不発生 ⇒ 強盗 ∵ 結果的加重犯の未遂は観念できない ・強盗傷害 + 傷害結果の不発生 ⇒ 強盗 ∵ 傷害の未遂は暴行 → 観念できない ・強盗致死 + 致死結果の不発生 ⇒ 強盗 ∵ 結果的加重犯の未遂は観念できない § 強盗・強制性交等及び同致死罪241:強盗が強制性交等及び同致死罪を犯した者 ① 241Ⅰ:強盗罪と強制性交等罪の結合犯 + 前後関係・既遂・未遂は問わない ※結合犯:それぞれ独立して犯罪となる数個の行為を結合して、法律上一つの犯罪としたもの。暴行または脅迫と盗取とが結合した強盗罪など。 ② 241Ⅱ:両罪が共に未遂で死傷結果なし → 任意的減軽 + いづれか中止の場合、必要的減免 ③ 241Ⅲ:死亡させた場合を規定 + 故意がある場合も含む ∵ 「よって」ない
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Aが被害者を殺害して財物を奪おうと考え実行した場合 ーーーーーーーー Aに240条の罪が成立するか、240条が殺人の故意ある場合を含むかが問題となる。そもそも240条は、犯罪学的に見て強盗の機会に犯人が死傷の結果を生じさせる場合が多いことに着目して規定された犯罪類型である。そして、犯人が殺人の故意を有するという事態は、犯罪学的にみて、極めて多い事態であるといえこの場合を排除するのは妥当ではない。そこで、240は殺人の故意がある場合も含む規定であると解する。240条が「よって」という文言を用いていないのも、かかる趣旨と解する
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AがBに金品奪取目的で暴行を加えB宅内を物色していたところ、逃亡したBが自動車に轢かれて死亡した ------------ Aに強盗致死罪が成立するか。死傷の原因が暴行・脅迫以外の場合にも強盗致死罪が成立するかが問題となる。まず、Aの行為は強盗にあたる。そして、240条の罪は、犯罪学的にみて強盗の機会に犯人が死傷結果を生じさせる場合が多いことに着目して規定された犯罪類型である。とすれば、死傷の結果は強盗の機会に行われた行為によって生じたものであれば足りると解する。ただし、強盗の機会の死傷の結果といえるためには、それが強盗行為と密接な関連性を有する行為により生じたことが必要と解する
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AがBに金品奪取目的で暴行を加えB宅内を物色していたところ、逃亡したBが自動車に轢かれて死亡した ーーーーーーーーーーー 【死傷の原因を論証後】もっとも、Aは金品の奪取には至っていない。にもかかわらず、強盗致死罪は既遂となるか、強盗致死傷罪の既遂時期が問題となる。まず、強盗致死傷罪の法定刑が極めて重いのは、生命・身体を第一次的な保護法益としているからであると解される。とすれば、強盗致死傷罪は死傷結果が生じた時点で既遂になると解する
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§ 詐欺罪246:人を欺いて財物を交付させた者Ⅰ ・ 前項の方法により財産上不法の利益を得た者Ⅱ ①特徴:被害者の意思に基づく交付行為(=処分行為)によって財物・財産上の利益を取得 ②保護法益:財産 Q 国家・地方公共団体等に対する詐欺的行為がなされた場合に詐欺罪が成立しうるか ⑴事例:農業従事者でないと買えない国有地 → 営農意思があると偽りその国有地を買い受けた ⑵判例通説:成立しうる ⑶理由:国家や地方公共団体等も財産権の主体たりうる ③客体:財物Ⅰ・財産上の利益Ⅱ ⇒ 財物には不動産も含む(窃盗・強盗は含まない) □ 詐欺罪の行為及び構成要件 ①概要(例)オレオレ詐欺 ⑴〜⑸を満たして初めて詐欺成立 ⑴ 欺罔行為(=詐欺行為)(例)孫になりすまして嘘の債務の支払いを主張 ⑵錯誤(例)孫が金に困っていると錯誤 ⑶ 交付行為(=処分行為)(例)債務の支払いのためにお金を振り込む ⑷財産の移転(例)犯人が金銭を取得 ⑸ 財産的損害(例)金銭を失う ②欺罔行為(=詐欺行為): ⭐️錯誤を起こさせる行為かつ処分行為に向けられた行為 ⑴ 程度:相手方が真実を知っていれば処分行為を行わないような重要な事実を偽る (例)×取引での軽微な誇張・隠蔽は重要な事実を偽ることには当たらない→軽微な誇張隠蔽かどうかは社会通念で判断 ⑵手段:不問 - 口頭、文書、電子的方法等 ⑶不作為による欺罔行為:あたりうる(判例) → 法的な作為義務は信義則に基づきゆるやかに認める ➢ 誤振込を受けた者がその事実を告げずに、窓口で払戻しを受けた ⇒ 誤振込みを銀行に告知する信義則上の義務あり → 告知せずに払戻し=欺罔行為あり ⑷ 挙動による欺罔行為:信義則上、告知すべきといえるかで⑶と区別 →信義則に基づき告知すべきものは不作為による欺もう行為 ➢ 飲食店で代金支払い意思のない者が料理を注文した ⇒ 不告知の不作為ではなく、注文という支払意思があるという嘘を告知 → 作為による欺罔行為 ➢ 第三者に譲渡する意図を秘して預金口座を開設した ⇒ 不告知の不作為ではなく、自己が利用する意思があるという嘘を告知 → 作為による欺罔行為 ③錯誤:事実と観念が一致しないこと ⇒ ⭐️機械は錯誤に陥らない →×金属片を用いて自動販売機から商品を取出す行為 ×他人のキャッシュカードを用いてATMから現金を引き出す行為 → 機械を誤作動させる行為は欺罔行為ではない ∴ 欺罔行為なし=詐欺不成立 ⇒ 窃盗罪に問擬 ④⭐️処分行為(=交付行為) ⭐️詐欺罪で最も重要かつ頻出 ⑴定義(書けるように)⭐️:錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財物又は財産上の利益を終局的に相手方に移転させる行為 ※ 「意思」に基づいていることが重要 ⑵ 事例:〇 被害者が犯人に金銭を渡す・品物を渡す × 関係者を騙る(かたる) → 近づき隙を見て金品を持逃 ⇒ 欺罔行為は処分行為に向けられる必要がある (この例では処分行為がないので詐欺ではない) →処分行為がなければ窃盗罪に問擬(もんぎ:立件可能かどうかを検討すること) ⑶終局的な移転 ➢ (終局的な移転の肯定判例)自動車販売店の店員に単独での試乗の許可をさせた → 車を乗り逃げ ⇒ 〇 占有の終局的移転 ∵ 自動車の移動能力の高さ (自動車を試運転させてどこかに行ってしまったら通常取り戻せない) ➢ (終局的移転の否定判例)洋服店の店員に店内での洋服の試着を許可させた → 隙を見て試着したまま逃走 ⇒ × 占有の終局的移転 ∵ 店内の試着の許可 + その後の逃走は店員の意思ではない ⑷処分意思:被欺罔者による財産を移転させる意思 ※1項詐欺と2項詐欺でそれぞれ異なった論点 Q ⭐️1項詐欺の場合の被欺罔者の認識の要否(=処分意思の要否・処分意思の内容) ⑴事例:AがBの本に1万円札が挟まっていると気づく → Aが1万円を秘して本を100円で買受 ⑵問題の所在:(不作為 → 告知義務あり)Bが1万円を認識していなかった → 処分行為の該当性 ⑶学説 ・意識的処分行為説(反対説): ある特定の財物が移転する認識まで必要 財物の移転:認識必要 個々の財物の移転:認識必要 ・無意識的処分行為説(自説): 個々の財物が移転する認識は不要 財物の移転:認識必要 個々の財物の移転:認識不要 ⑷理由:移転する客体を認識させないことは詐欺の典型 Q⭐️ 2項詐欺の場合の被欺罔者の認識の要否 ⑴事例:Aが旅館に宿泊し、翌朝代金支払が惜しくなり、旅館主Bに所用で外出すると偽り許され逃亡 ※ 最初(宿に到着した時点)から代金支払いの意思がなかったら問題なく詐欺が成立 ⑵問題の所在:Bは債務免除の意思を有していない→被欺罔者に債務免除の認識を要するか ⑶学説 ・意識的処分行為説: 債務免除の認識=必要 結論=不可罰 ・無意識的処分行為説: 債務免除の認識:代金債権の準占有が終局的に移転することの認識が必要 (認識不要・準占有=事実上弁済を求め、促しうる状態) ※準占有が相手方に移る=すぐに請求できなくなる 結論:2項詐欺成立 ⑷判例:債務免除の意思表示をなさしめることが必要(意識的処分行為説) ※意識的処分行為説と無意識的処分行為説の違いは認識の厳格性の問題 ・知人を見送る(不成立) ・今晩戻ってくる(成立)←今晩戻ってこなかったならば宿泊代金は支払われない(=債務免除になる)ことはわかっていた ⑸学説の相違 ・意識的処分行為説: 準占有の終局的移転の認識:必要 債務免除の認識:必要 ・無意識的処分行為説 準占有の終局的移転の認識:必要 債務免除の認識:不要 Q キセル乗車に詐欺罪は成立するか ⑴キセル乗車:区間の連続しない2枚以上の乗車券を使用して、乗車券のない区間を乗車した場合 例:A駅で乗車 B駅までの切符購入 CD間は定期券あり→B C間は無賃乗車 ⑵問題の所在:有人改札が前提 + 乗車駅と下車駅で欺罔的行為 ⑶学説・判例 ・否定説:乗車駅は有効+下車駅で債権の認識なし(意識的処分行為説) ・乗車駅基準説(判例): 違法目的の乗車券は無効 → 呈示は欺罔行為 運搬が処分行為 → A駅出発で既遂 (批判)乗車券は正規 ・下車駅基準説 下車駅で呈示=CD駅間の乗車として運賃を欺く → 欺罔行為 処分行為=外に出て支払いを免れる(無意識的処分行為説) (批判)意識的処分行為 Q 無銭飲食に詐欺罪は成立するか (例)料理を注文→飲食→欺罔して支払いを逃れた ⑴問題の所在:あてはめの問題 ⑵結論 ・当初から支払意思がない場合 → 注文した時点で1項詐欺未遂(挙動による欺もう行為) + 飲食した時点で1項詐欺既遂 ・当初は支払意思があった場合 → 注文・飲食の時点で1項詐欺不成立 + 支払段階での欺罔的手段が問題 ⅰ 意識的処分行為説 → 支払されなくなると思った(債務免除の認識)があれば2項詐欺成立 ⅱ 無意識的処分行為説 → 外出することを認めた(準占有の移転)といえる場合、2項詐欺成立 ⇒ 欺罔的行為でなく単なる逃亡なら利益窃盗で不可罰 ⑤ 財産的損害:詐欺罪は財産犯 →詐欺罪の成立には財産的損害の発生が必要(判例) ⇒ 未遂=発生させる行為の時点 → 既遂=実際に発生した時点 Q 詐欺罪における財産的損害の内容 ⑴ 学説 ・形式的個別財産説-旧通説: 1項=財物の交付・喪失 2項=財産上の利益の交付・喪失 (理由)個別財産に対する罪=全体財産に対する罪でない ・実質的個別財産説-現通説: 実質的な財産的損害の発生 (形式的に財物、財産上の利益の交付喪失があっただけでは財産的損害に当たらない) (理由)旧通説の交付喪失は処分行為に当たるので「財産的損害」の要件が不要になる ⑵判例≒実質的個別財産説 ➢ 受領する権利を有する請負代金を詐欺的手法によって弁済期よりも早く受領権者が受領 ⇒ 不成立 ∵ 社会通念上別個の支払いにあたると言い得る程度の期間支払時期を早めることを要す ➢ 買主から売買目的物のリンゴの引渡を請求された → 貨車に積込んだ様に見せかけ買主を帰宅させた ⇒ 不成立 ∵ 既に履行遅滞状態の債務者が一時的に債権者の督促を免れても財産上の利益はなし Q 価格相当の商品の給付に詐欺罪は成立するか ⑴問題の所在:実質的個別財産説 → 金額的に損害はないが実質的な損害で問題 ⑵結論:獲得しようとしたものと給付したものとの間に、経済的に重要な齟齬があれば成立 ⑶判例 不成立=Aの欺罔によりAを医師と誤信し、Aから薬を相当価格で購入 → 薬は期待通りの効能 成立=市価2100円のマッサージ器を小児麻痺に効果がある高価な治療器として2200円で購入 →経済的に重要な齟齬あり Q 虚偽の申し立てによって各種の公的証明書を交付させた場合、詐欺罪は成立するか ⑴ 問題の所在:実質的個別財産説 → 実質的な財産的損害 + 国家的法益に対する詐欺罪の成否 ⑵結論:一定の給付をする現実的な危険性の負担の有無で判断 ⑶判例 印鑑証明書 ・ 旅券(パスポート) ⇒ 不成立 ∵ 所持人に給付をしない 国民健康保険証 ・ 簡易生命保険証書 ⇒ 成立 ∵ 所持人に保険金等を交付 Q 虚偽の申込みにより預金通帳が詐取された場合、詐欺罪が成立するか ⑴事例:口座開設(他人名義・他人使用は不可 ∵ 犯罪による収益の移転防止) ⑵問題の所在:銀行に対して、預金通帳に関して財産的損害は認められるか ⑶判例:預金通帳は財物に当たる ・他人名義:成立 ∵ 銀行が被害者から損害賠償請求等を受ける可能性あり=財産的損害あり ・譲渡目的で自己名義:成立 ∵ 挙動による欺罔行為+銀行が被害者から損害賠償請求等を受ける可能性あり Q 虚偽の申込みにより搭乗券を詐取した場合、詐欺罪が成立するか ⑴事例:外国行き飛行機の搭乗券交付(他人名義・他人使用は不可 ∵ 出入国管理) ⑵問題の所在:航空会社に対して、搭乗券に財産的損害が認められるか ⑶判例:成立 ∵ 自己名義・自己使用に限定することは経営上重要性あり → 虚偽の申し込みであると知れば交付には応じなかった(∴欺罔行為) ⇒ 運航の安全上重要 → 経済的運営にも重大な影響(∴財産的損害あり) Q 不法原因給付と詐欺 ⑴ 不法原因給付:不法の原因に基づいてなされた給付 (例)殺人依頼 → 殺人実行により報酬 ⇒ 民法90・708等により契約無効・返還請求不可(例)支払不要 ・ 支払後の返還不可 ⑵問題の所在:無効・返還請求権なし → 財産的損害が否定されるのでないかで問題 ⑶検討:⭐️1項詐欺と2項詐欺の場合に分けて検討する ① 1項詐欺の場合:不法の原因に基づいて財物を詐取 ⑴事例:AがBに「麻薬を売ってやる」と偽り、Bから代金を詐取 ⑵問題の所在:民法708不当利得返還請求権否定 → Bは代金の返還を請求できない→財産的損害が発生しない ⑶判例通説:⭐️成立(=財産的損害あり) (例)通貨偽造目的、売春目的 ⑷理由:財物に対する支配権を侵害(判例)、欺かれなければ財物を交付しなかった ⇒ ▪️被害者は不法な目的を有するが、財物を交付しただけであり、刑法的保護に値する ②2項詐欺の場合:不法の原因に基づいて財産上の利益を詐取 ⇒ ⭐️2段階に分けて検討 ⑴ 事例:AがBに「代金を支払う」と偽り売春行為等の犯罪行為を行わせ、対価の支払いを免れた ⑵問題の所在:⭐️民法90公序良俗違反で無効な契約 → 財産的損害が否定されるのではないかで問題 ⑶ 検討 ・(第一段階) 騙して売春等の犯罪行為をさせた:90 ∴ 財産上の利益にあたらない⇒ 不成立=財産的損害なし ・(第二段階) 騙して対価の支払いを免れた:90 ∴ 対価請求が認められない⇒ 不成立=財産的損害なし ⑷ 理由:公序良俗に反する契約 ⇒ ▪️被害者は自ら売春行為等の犯罪行為を行っている → 刑法的保護に値しない ⑥未遂:罰する250 ・未遂=欺罔行為の時点 ・既遂=財産移転(≒財産的損害)の時点 ⇒ 欺罔行為(錯誤・処分行為・財産的損害を起こさせる行為)が必要
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AがBの本に1万円札が挟まっていることに気づきながら、それを認識していないBからその本を100円で買い受けた Aに詐欺罪が成立するか、1万円札の移転について認識していないBの行為が処分行為といえるかが問題となる。確かに、詐欺罪は被欺罔者の意思に基づく占有移転という構造を有していることから、何らかの財物の占有移転を認識していることは必要と解する。しかし、移転する客体を被欺罔者に認識させないという詐欺における典型的な類型を詐欺罪から除外するのは妥当ではない。そこで、被欺罔者が個々の財物の移転についてまで認識している必要はないと解する。本件では
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旅館に宿泊したAが翌朝急に支払いが惜しくなり、旅館主Bに所用での外出を伝えて外出しそのまま逃亡した Aに2項詐欺が成立するか、Bに債務を免除するという認識を有していなかったことから問題となる。判例は被欺罔者に債務免除の認識が必要であるとしている、しかし、移転する客体を認識させないという最も典型的な類型を除外するのは妥当ではない。そこで、代金債権等の準占有が終局的に移転することの認識が被欺罔者にあれば処分行為といえると解する。本件では
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Aが市価1万円のマッサージ器を小児麻痺に効果がある高価な治療器であると偽り、誤信したBに1万円で購入させた ーーーーーーーーーー Aの行為につき詐欺罪が成立するか、財産的損害の有無に関して問題となる。詐欺罪も財産犯である以上、その成立のためには実質的な財産的損害の発生が必要と解される。そして、その有無は被欺罔者が獲得しようとしたものと欺罔者が給付したものとの間に経済的に重要な齟齬があるか否かで判断するべきである。本件では、確かにBは価格相当の商品の給付を受けている。しかし、Bが獲得しようとしたものは購入価格以上の価値を有する物であるところ、Aが給付したものは購入価格相当の物にすぎない。よって、経済的に重要な齟齬があるといえ、財産的損害の発生が認められる
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①罪数及び他罪との関係 (⑴ 1項詐欺と2項詐欺 ⇒ 同一財物等、保護法益同一で時間的場所的に接着なら詐欺の包括一罪 ※包括一罪:数個の行為が独立して構成要件を充足した様に見えるが、1個の構成要件に包括して評価しうる場合(例:短時間に同じ家で数回窃盗) ⑵1項詐欺と2項強盗 ⇒ 同一財物等、保護法益同一で時間的場所的に接着なら強盗の混合包括一罪 ⑶窃取・詐取した財物を欺罔行為に利用した場合 ⇒ 新たな法益侵害なら併合罪 ➢ 郵便貯金通帳を窃取した後、これを利用して窓口で払戻しを受けた ⇒ 窃盗と詐欺の併合罪 ∵ 「通帳の占有」と「現金の占有」で保護法益が異なる ➢ 郵便貯金通帳を詐取した後、これを利用して窓口で払戻しを受けた ⇒ 「詐欺罪2罪」の併合罪 ∵ ∵ 「通帳の占有」と「現金の占有」で保護法益が異なる ⑷文書偽造・同行使罪/有価証券偽造・同行使罪と詐欺罪 ⇒ 牽連犯 ⑸通貨偽造罪・偽造通貨行使罪と詐欺罪 ⇒ 詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収 ②三角詐欺 ⑴三角詐欺:被欺罔者と被害者とが異なる場合 ⑵事例:融資担当銀行員を騙して融資を受ける ⑶成立要件:被欺罔者と処分行為者が一致 ・ 被欺罔者に被害者の財産を処分する権限がある →融資担当銀行員=被欺罔者かつ処分行為者かつ処分権限あり Q 訴訟詐欺における詐欺罪の成否 ⑴訴訟詐欺:裁判所を欺いて勝訴判決を得て、敗訴者から財産を交付させる場合 ⑵事例:虚偽の債権を裁判所に主張 → 被告に放置させる(通知が届かないようにする等) → 欠席により敗訴 → 強制執行 ⑶問題の所在:交付は敗訴者の意思に反する → 処分行為ではない ⑷判例通説:裁判所=被欺罔者かつ処分行為者、 敗訴者=被害者 ⇒ 三角詐欺。として詐欺罪成立 Q クレジットカード詐欺における詐欺罪の成否 ⑴クレジットカード:カードでの支払いによって、後払いで商品購入などの決済ができるカード ⇒ 加盟店は確実に代金回収 ・ クレジットカード会社は未払リスクあり ⑴検討:自己名義の場合と他人名義の場合に分けて検討 ①自己名義のクレジットカードを不正使用した場合 ⑴事例:支払意思も能力もないが自己名義のクレジットカードを使用して商品を購入 ⑵)問題の所在:加盟店には錯誤や財産的損害なし? ⑶下級審判例:加盟店を被欺罔者・処分行為者・被害者とする1項詐欺罪が成立(←財産的損害ないが) ⑷ 理由:知っていれば信義則上取引を拒否したはず(∴錯誤あり) + 財産的損害について、代金の補充は事後であり、補充されない可能性もなくない(ほぼないが)(→財産的損害あり)(少数説) ②他人名義のクレジットカードを不正使用した場合 ⑴事例:窃取した他人名義のクレジットカードを不正使用した場合 ⑵問題の所在:加盟店には錯誤や財産的損害なし? ⑶結論:加盟店を被欺罔者・処分行為者・被害者とする1項詐欺罪が成立 ⑷理由:知っていれば取引拒否(∴錯誤あり) + 立替払いを受けられない可能性あり(財産的損害あり) ③承諾(AがBの承諾を得てBのクレジットカードを使用する場合):名義人の承諾がある場合も同様(判例) Q 登記官を騙して不動産の登記を取得した場合における詐欺罪の成否 ⑴問題の所在:三角詐欺・訴訟詐欺の一種? ⑵判例:不成立 ⑶ 理由:登記官には当該不動産を処分する権限がない(形式面の確認のみ) § 電子計算機使用詐欺罪246の2(ほぼ出ない):電子計算機に不正の指令・情報を与えて財物又は財産上の利益を得た者 ⑴意義:詐欺罪にも窃盗罪にも該当しない行為を処罰 ∵ 法定刑10年以下懲役=窃盗・詐欺 ⑵行為:銀行の電子計算機に虚偽の情報を入力、 内容虚偽のプリペイドカードを使用 ⑶未遂:罰する250 § 準詐欺罪248(試験では重要度低い):未成年者の知慮浅簿又は人の心神耗弱に乗じて財物を交付又は財産上の利益を得た者
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§ 恐喝罪249:人を恐喝して財物を交付させた者Ⅰ ・ 前項の方法により財産上不法の利益を得た者Ⅱ ①概要:反抗抑圧に至らない程度の暴行・脅迫 による瑕疵ある意思に基づく交付 ⑴ 因果経過:恐喝 → 畏怖 → 処分行為 → 喝取(かっしゅ:脅しとること。法律用語) ⑵法的性質:領得罪・奪取罪・交付罪 ②客体:財物(不動産を含む)Ⅰ ・ 財産上の利益Ⅱ ※財物から不動産が除外されるのは窃盗と強盗だけ ③行為:恐喝 =財物又は財産上の利益を交付させる手段として行われる暴行・脅迫であって、相手方の反抗を抑圧するにいたらない程度のもの ※論文で書く。「交付させる」「相手方の反抗を抑圧するに至らない」がポイント ⑴ 暴行:広義の暴行 + 相手方を畏怖させる性質を有すれば足りる ※広義の暴行=不法な有形力の行使+人に対する(脅迫、強要、公務執行妨害) ⑵脅迫:加害の対象が限定されない≠脅迫罪の脅迫(判例) + 相手方を畏怖させるに足る害悪の告知 ※恐喝罪の脅迫は脅迫罪の脅迫とは違う Q 適法行為の告知 ⇒ 脅迫罪と同様 ⑴判例:該当する。但し、権利の行使として正当といえる場合には正当行為35として違法性が阻却 ⑵理由:適法行為の告知によっても人を畏怖させることが可能 ④ 処分行為:必要 ⇒ 詐欺罪と同様 ⑤未遂:罰する250 ⇒ 恐喝した時点 → 畏怖・処分行為なし Q 権利行使と恐喝 ⑴事例:金銭消費貸借の貸主(=正当な債権を有する者)が暴行・脅迫を用いて貸金を取り立てた ⑵問題の所在:正当な権利の行使を恐喝手段によって行った ⇒ 構成要件・違法性? ⑶ 判例・通説 構成要件:保護法益 → 占有そのもの ⇒ 構成要件に該当 違法性: ⇒ 以下の3要件で正当行為として違法性阻却 権利の行使という正当な目的 + 権利の範囲内 + 手段が社会的相当性の範囲内 (例)不誠実な債務者に軽い脅迫的言動 ⑷詐欺罪でも同様 ⑥罪数及び他罪との関係 ⑴恐喝の手段としての暴行・脅迫 ⇒ 恐喝罪に吸収 ⑵恐喝により傷害結果発生→観念的競合(一つの行為で複数の構成要件に該当)→法定刑が重い犯罪のみ適用
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消費貸借の貸主Aが暴行・脅迫を用いて借主Bから貸金を取り立てた ーーーーーーーーーー Aに恐喝罪が成立するか、Aは債権者であることから正当な権利の行使ともいいうることから問題となる。まず、構成要件該当性が問題となるが、恐喝罪の保護法益は自力救済禁止の原則から占有それ自体であると解する。従って、構成要件該当性は認められる。次に、違法性が阻却されるのではないかが問題となる。違法性の実質。そこで、権利の行使という正当な目的があり、権利の範囲内であって、その手段が社会的相当性の範囲内にあると認められるときは、正当行為として違法性が阻却される。本件において
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§ 単純横領罪252:自己の占有する他人の物を横領した者Ⅰ・自己物でも公務所から保管を命ぜられ横領Ⅱ ①概要:自己の占有する他人の物を領得 (例)預かっている物を自己の物にした ⑴特徴:⭐️占有移転なし → 占有がある (=横領罪) ⑵保護法益:所有権その他の本権 (≠奪取罪) ⇒ 占有侵害を伴わない ⑶委託信任関係⭐️:自己が委託に基づいて占有する他人の物を横領 ②主体:他人の物の占有者 ⇒ 真正身分犯⭐️ ③客体:自己の占有する他人の物 ⑴ 物:財物 ⇒ 財産上の利益は含まない 電気 も含まない ∵ 245「この章の罪」=窃盗、強盗 (有体物説:電気は財物ではないが245で例外的に財物扱い→電気は横領の客体にはならない) ⑵占有 Q 本罪の占有の意義 ⑴ 問題の所在:銀行預金の預金名義人・不動産の登記名義人が横領 ⑵判例:⭐️事実上の支配のみならず、広く法律的支配を含む ⇒ 横領以外の占有は事実上の支配に限定 ⑶理由:処分可能性を要求 → 事実上の支配以外にも認められる ⇒ 銀行預金の預金名義人・不動産の登記名義人は預金・不動産の占有あり(判例) (3)委託信任関係:自己が委託に基づいて占有 ⇒ 委託に基づかないで占有 → 占有離脱物横領254 ⑷物の他人性:「他人の物」 Q 各種金銭の他人性 ⑴ 事例:AがBから預かったBの金銭を費消 ⑵判例・通説 【各種金銭】 ・封金: 他人性肯定。寄託者に所有があるため。封金の占有は受寄者にあるため、封自体を領得すれば横領。封開けて金銭を領得すれば窃盗 ・消費寄託契約: 他人性否定。受寄者に所有があるため。 ・使途を定めて占有委託(例:お願いされた買い物のために金を預かった場合): 他人性肯定。民法の動的安全(取引の安全)は妥当しない(民法では金銭はAが占有していればAの所有となるが、そうとはならない)。横領罪は所有権の保護が目的であるため。 Q 不法原因給付と横領 ⑴事例:事例1:AがBに殺人を依頼し着手金を交付 事例2:XがYに議員への贈賄を依頼し金銭を預けた ⑵問題の所在:民法708条により所有権は給付を受けた者に移る → 他人の物ではない? ※ ⭐️最初から領得するつもりなら詐欺 ⑶判例・学説(試験対策上、3説全て抑える。基本的には否定説で書く。) ・肯定説:他人物肯定(旧解釈下判例) (理由)返還請求権は否定しても所有権は失っていないため(現在は不法原因給付では反射的に所有権も移るとされているので、この考え方は妥当しないと考えられている) ・否定説:他人物否定 (理由)給付を受けた者に所有権→法秩序の統一 ・折衷説: ・給付=他人物否定 ・寄託=他人物肯定 (理由)民法708条の「給付」とは終局的な利益の移転。終局的な利益の移転とは言えない寄託では、他人物となる。 →事例の殺害の着手金の交付は給付にあたり、他人物否定 事例の賄賂の金を預けたことは寄託のあたり、他人物肯定 Q 盗品等の横領 ①事例:窃盗犯人Xが盗品の保管をAに依頼し、盗品をAに預け、Aが預かった盗品を横領した。 ②問題の所在 ⑴不法原因給付: ・否定説 ⇒ 横領不成立 ・折衷説-他人物肯定 ∵ 寄託 ⑵委託信任関係⭐️:成立には委託信任関係の破壊が必要 → 窃盗犯人との関係で保護に値するか ③判例?・学説 ・否定説:横領罪成立否定 (理由)保護法益=横領罪の保護法益は所有権だが窃盗犯は所有者ではない。よって委託信任関係は保護に値しない ・肯定説-判例?(書くなら肯定説): 窃盗犯人の占有も保護されるため委託信任関係は保護に値する ※参考:自力救済の禁止 Q 二重譲渡における横領罪及び詐欺罪の成否 ⑴問題の所在:売主Aが土地をB(第一譲受人)とC(第二譲受人)に売却。C登記。 以下が問題となる。 ・AのBに対する横領罪 ・第一売買を隠してCに売ったことによるA→C詐欺罪(善意)、 ・第一売買があったにも関わらず登記をしたことによるC(悪意)→B 横領罪の成否 ※Bが土地に住んでいて占有しているような場合も、Aは登記があれば占有があると言える(法律上の占有も含まれるから) ⑵判例・通説 ・Aが Cに売却したことに係るAのBに対する横領罪:成立 (理由)売買契約の時点で所有権が移転→他人の物 ※不完全物権変動説は民法の話で刑法とは別 ・第一売買を隠してCに売ったことによるA→C詐欺罪(善意):不成立 (理由)Cは所有権を取得するため財産的損害なし ・第一売買があったにも関わらず登記をしたことによるC(悪意)→B 横領罪: C悪意の場合 → 不成立 C背信的悪意者の場合→ 共同正犯成立 (理由)民法177の第三者との整合性 → 悪意者は第三者に含まれ、所有権を取得する。背信的悪意者は含まれず所有権を取得しない。 ⑶公務所から保管を命じられた自己物252Ⅱ (例)強制執行で差し押さえられた物 ④行為:横領 ⑴横領:⭐️不法領得の意思を実現する一切の行為 → 所有者でないとできない行為をする≒自己物 ⑵典型例:売却 ・質入れ ・費消(=使い果たす) ・抵当権の設定 Q 本罪における不法領得の意思の内容 ⑴事例:他人の物を毀棄又は隠匿した ⑵問題の所在:本罪における不法領得の意思の内容 → 窃盗等の奪取罪と同じと解するか ⑶奪取罪の不法領得の意思の内容: 振る舞う意思 + 利用・処分意思 ⑷ 判例:⭐️委託の任務に背いて、権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志 ※ 横領罪の不法領得の意思と奪取罪の不法領得の意思は異なる (⑸理由:専ら毀棄・隠匿目的でも委託信任関係を破壊するといえる →利用・処分意思は不要 Q 一時流用の場合に横領にあたるか ⑴事例:買物代金として金銭をあずかる → 欲しいものがあり後で返すつもりで費消 ⑵問題の所在:物の他人性(→肯定) + 一時流用の場合に横領にあたるか ※(再掲)使途を定めて占有委託(例:お願いされた買い物のために金を預かった場合):他人性肯定。民法の動的安全(取引の安全)は妥当しない。 ⑶結論:費消した時点において、確実な填補の意思と能力があった場合 → あたらない ⑷理由:不法領得の意思なし ∵ 損害なし ⑸あてはめ:自宅に現金あり ⇒ あたらない ・ギャンブルで儲けたら返す ⇒ あたる ⑤未遂・既遂 未遂:規定なし ∵ 横領における未遂は観念できない 既遂:⭐️不法領得の意思の発現行為があれば直ちに(判例) ⑴二重譲渡・他人物抵当権設定等 → 登記の完了時 =既遂(通説) (理由)契約成立時点では所有権を失わせる危険が具体化したとは言えない ⑵仮登記抹消のための解決金目的で不実の抵当権設定仮登記をした → 仮登記をした時=既遂(通説) ⑥罪数及び他罪との関係 Q 横領後の横領 ⑴ 事例:X所有不動産の登記名義人AがAの債権者Bのために抵当権を設定。その後、Cに売却 ⑵問題の所在:抵当権設定(=横領)の後の同一不動産の横領はどう解するか ⑶ 判例 ・旧判例:不可罰的事後行為 (不可罰的事後行為:犯罪完成。違法状態継続。その状態に含まれ評価し尽くされている行為) (理由)同一の物を2回横領することはできない ・現判例:新たな横領罪成立 所有権に対する侵害の程度が異なる→評価されていない Q 横領後の詐欺 ⑴事例:AがBから預かった物を売却(横領) → Bの返還請求を盗取されたと欺いて逃れた(詐欺) ⑵問題の所在:横領罪の客体である同一の物の返還を詐欺的手段によって免れた ⑶通説:同一被害者に対し横領物を確保するために行われた欺罔行為は横領罪の不可罰的事後行為 ⑷ 理由:重い詐欺罪成立は法の趣旨を没却 → 誘惑的要素に基づく非難可能性の減少 ∴ 法定刑が軽い
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不動産の登記名義のみを有するAが、これを奇貨としてBに当該不動産を売却して登記を移した ーーーーーーーーーーー Aに横領罪が成立するか、Aが本件不動産を占有したといえるかが問題となる。思うに、同罪における占有とは行為者に他人の物の処分可能性があるという意味である。そして、かかる処分可能性は他人の物を事実的に支配している者のみならず、法律的に支配している場合にも認められる。従って、同罪における占有とは事実上の支配のみならず法律的支配をも含むと解する。本権では
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§ 業務上横領罪253:業務上自己の占有する他人の物を横領した者 ① 特徴:単純横領の加重類型 ⇒ 自己の占有する他人の物を横領(単純横領) + 業務上 ⇒ 真正身分犯と不真正身分犯の両方の性質を有する複合的身分犯 ②業務:財物を委託を受けて保管することを内容とする職務 = 本罪の業務 ③ 事例:運送業者が配達物を横領・弁護士が預かった示談金を横領・会社員が保管する会社の金を横領 ④⭐️ 主体:他人の物の占有者(真正身分) + 業務者(不真正身分) Q 業務上横領罪と共犯 ⑴事例:村長と収入役が共同で村の公金を横領した ⑵問題の所在:村長は業務者でも占有者でもない。65条をどのように適用すべきか ⑶判例:65Ⅰにより業務上横領罪の共同正犯が成立する。科刑については65Ⅱにより単純横領罪の刑を課す ⇒ 成立と科刑を分離 学説)占有者∴65Ⅰ+業務者∴65Ⅱ ⇒ 真正身分のみ連帯で単純横領の共同正犯 § 占有離脱物横領罪254:遺失物等、占有を離れた他人の物を横領した者 ①客体:占有を離れた他人の物 = 占有離脱物 ⑴占有離脱物の定義 ・占有者の意思に基づかずにその占有を離脱 ⅰ 誰の占有にも属していない(例)遺失物 ⅱ 委託関係なく行為者の占有に帰属(例)誤って多く渡されたおつり ⑵純横領罪との区別:占有者の意思に基づき占有を離脱(委託信任関係) ⇒ 単純横領 ②行為:横領 ③他罪との関係:領得した財物の利用・処分行為・損壊行為は不可罰的事後行為 ∵ 法定刑が軽い
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7 背任の罪 § 背任罪247:他人のためにその事務を処理する者が図利・加害目的で背任行為をし財産上の損害を与えた ①概要:横領に類似 + 全体財産に対する罪 ⑴事例:銀行の融資担当が回収の見込みのない暴力団員に報酬目当てに無担保で融資(不良貸付) ⑵適用:横領不成立 → 背任を検討 ∵ ⑶特別背任罪:取締役等、重大な権限を有する者が行う背任罪 ⇒ 会社法等で規定 ・ 法定刑10年以下の懲役と重い ②主体:他人のためにその事務を処理する者(=他人のための事務処理者) ∴ 真正身分犯 ⑴ 事務:財産上の事務に限定 ∵ 財産犯 × 治療行為(例)医師が手術の際に懈怠した 〇 裁量の余地のない事務(例)登記の協力義務(判) 〇 事実行為(例)収入役を事実上代理した(判) ⑵他人のため Q 他人の登記等に協力する義務が「他人のため」の事務にあたるか ⑴ 問題の所在:二重抵当で契約の順番と登記の順番が異なる場合 → 登記は契約上の自己の義務 ⑵判例:他人のための事務にあたる ⑶理由:主として相手方の財産権保全のための事務 ③行為:任務に背く行為(=背任行為) ⑴意義 •権限濫用説:法的処分権限(=代理権)の濫用 (批判)処罰範囲が狭い ・背信的権限濫用説:事実上の事務処理権限の濫用 (批判)二重抵当の事案が適切に処理できない ・背信説(判例通説):信任関係に違背した財産侵害 ⑵具体例: •不良貸付 •権限濫用説以外→保管物毀損 ・ 秘密漏示 ※権限濫用説では代理権の範囲の行為なので該当しない •会社法関係(粉飾決算等) Q 横領罪との区別 ⑴ 事例:銀行支店長Aが明らかに回収不能であることを知りながら無担保でBに銀行名義で貸付 ⑵問題の所在:Aは他人の物の占有者であり、他人のための事務処理者でもある ⑶見解 ・背信的権限濫用説: 濫用:権限内の行為 → 背任 逸脱:権限外の行為 → 横領(二重抵当の場合、自己物なので「他人の物」ではなく横領罪は成立しない → 処罰不可?) ※権限外:例:稟議が必要だがしなかった ・背信説 領得行為以外の背信行為 → 背任(横領は背信の一部。横領行為も「信任関係に違背した財産侵害」という点で一致) ) 財物についての領得行為 → 横領 ・判例 本人(背任行為をされた者)の名義かつ計算 → 背任 自己の名義または計算 → 横領 ⑷判例:あてはめ ≒ 背信説 ・村長が自己の保管する公金を村の計算で第三者に貸付 → 背任成立 ・収入役が自己の保管する公金を自己の名義で第三者に貸付 → 業務上横領成立 ※自己の名義にしているので領得行為あり →背信説でも業務上横領 ④結果:財産上の損害が必要(=結果犯) ⑴意義:⭐️全体財産の減少 ⑵未遂・既遂:財産上の損害の有無で決する → 有=既遂 ・ 無=未遂 ⑶ 具体例:積極損害 + 消極損害 積極損害:既存の財産の減少 消極損害:将来取得しうる財産が無くなること ➢消極損害の例: 信用保証協会の支店長AがBの弁済不能を知りながら債務保証をした → 損害ありとし背任成立 Q 財産上の損害の判断基準 ⑴事例:銀行支店長Aが回収不能を知りながらBに無担保で1千万貸付(不良貸付) ⑵問題の所在:銀行は1千万の債権を取得 → 法的見地からは全体財産の変動なし ⑶ 判通:経済的見地から全体財産の減少の有無を判断 ⑷ あてはめ:1千万の現金 > 1千万の回収困難な債権 ∴ 損害あり ⑤目的:自己図利 ・ 第三者図利 ・ 本人加害のいずれかの目的が必要 → 図利・加害目的が必要=目的犯 Q 背任罪における利益の意義 ⑴事例:銀行の支店長が報酬を得ることなく、自己の地位の保全のために不良貸付を行った ⑵問題の所在:財産上の利益なし → 利益を財産上の利益に限定すれば図利・加害目的否定 ⑶判例:⭐️身分上の利益を含む → 自己の地位の保全・信用・プライド等の場合も含む ⑷理由:財産上の利益に限定する必要がない ∵ 単なる動機 ≠ 故意 Q 本人図利目的と図利・加害目的が併存する場合 ⑴事例:自己の不適切貸付の発覚防止(自己図利目的)と貸付金の回収不能を防止する目的(銀行(本人図利目的)で不良貸付 ⑵問題の所在:本人図利と図利・加害目的のどちらの目的となるか ⑶判例:主たる目的で判断 Q 図利・加害目的の認識の程度(図利・加害目的があると言えるためにはどの程度の認識が必要か) ⑴判例:未必的認識説:図利・加害についての「認識」が必要 ≒ 故意(ほぼ故意と同じ。故意があれば図利・加害目的も認められる) ⑵反対説: ・確定的認識が必要(=確定的認識説) ・図利加害の意欲まで必要(=意欲説) ⑥未遂:罰する250 ⇒ 財産上の損害の有無で判断 ⑦ 罪数及び他罪との関係 ⑴横領罪:横領不成立 → 背任を検討 ⑵詐欺罪:背任行為=欺罔行為+財産交付 → 詐欺罪のみが成立(判例)
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※試験に出るので手を抜かないように § 盗品等関与罪256:盗品等を無償譲受・運搬・保管・有償譲受・有償の処分の斡旋した者 ①概要:盗品について関与する行為(預かる・売買する等)を処罰する ⑴本罪の対象者:関与者 → 被害者・本犯者と区別 ⑵性質:事後従犯的性格 → 本犯者の実行行為は終了しており、従犯ではなく、事後的に援助 ②保護法益:追求権 =被害者が被害財物に関して有する私法上の回復請求権(判例通説) ③ 客体:盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物 = 盗品等 ⑴ 本犯(=領得罪:窃盗・強盗・詐欺・恐喝・横領)とセットで問題となる ∴ 盗品等 ⑵ 本犯には構成要件・違法性が必要で有責は不要(判例) ⑶ 盗品等に該当しない場合:≒追求権がない ・同一性を失った場合(例)金銭を窃取 → 金銭で購入した物 ・即時取得(但、盗品等の例外)の場合 (例)詐取された物を即時取得 → 悪意者が譲受 不法原因給付の場合: 不法原因給付物については給付者の物権的返還請求権が否定されることの反射的効果としてその所有権が受給者に移転すると解されるという理由から、被害者の追求権侵害が認められないため、追求権説からは「物」に当たらないとして盗品等関与罪の成立が否定 ④行為 ・譲受:無償・有償不問 = 盗品等無償譲受罪・盗品等有償譲受罪 ・運搬:無償・有償不問 = 盗品等運搬罪 ・保管:無償・有償不問 = 盗品等保管罪 ・斡旋:⭐️処分(有償のみ)を斡旋(無償・有償不問) = 盗品等有償処分斡旋罪 ※ 盗品を無料でもらってくれる人を紹介することは盗品等関与罪には該当しない Q 被害者のもとへの運搬 ⑴事例:返還により被害者から金銭を得る目的 → 盗品等を運搬 → 金銭を取得 ⑵問題の所在:被害者のもとへの運搬 → 追求権の侵害がない ∴ 不成立?(反対説) ⑶判例:被害者から金員を得る目的等がある場合には成立 ⑷理由:正常な回復を困難にした Q 盗品等有償処分斡旋罪の成立時期 ⑴時系列:あっせん行為 → 売買等の契約成立 → 本犯者からの盗品等の移転 ⑵問題の所在:どの時点で成立 → 追求権が侵害されるのはいつ? ∴ 盗品等の移転(反対説) ⑶判例:あっせん行為がなされた時点で成立 ⑷理由:事後従犯的性格→本犯者を支援した時点で成立 ⑤故意:故意が必要(=故意犯) ⑴内容:盗品等の認識が必要 ⑵判例:未必的故意で足りる + 本犯者・本犯の罪名・被害者の認識も不要 Q 保管と途中知情 ⑴事例:保管を委託された時点で盗品だと知らなかった → 途中で盗品と知ったが、保管を継続 ⑵問題の所在:追求権侵害=盗品等の移転 ⇒ 移転時に故意がないと不成立?(反対説・有力説) (⑶ 判例:事情を知った後の盗品等保管罪の成立を肯定 ⑷ 理由:事後従犯的性格 → 保管行為も発覚防止や本犯者の処分を容易にするといえる=追求権侵害 ⑥ 他罪との関係(判例) ⑴ 本犯:本犯者の盗品等関与罪は不可罰的事後行為 ⑵詐欺罪:斡旋者が盗品と知らない相手方から代金受領 → 詐欺否定 ∵ 斡旋の当然の結果 ⑶恐喝罪:盗品等を恐喝して譲受 →⭐️ 盗品等譲受罪と恐喝罪の観念的競合 ⑷共犯:⭐️本犯の教唆犯・幇助犯(狭義の共犯)と本罪とは併合罪 § 親族間の特例257:配偶者・直系血族・同居の親族・これらの配偶者との間の前条の罪は刑を免除 ① 意義:処罰阻却事由 →刑は成立するが、免除 ② 根拠:事後従犯的性格 → 親族関係にある者には期待可能性の減少(=責任の減少)が認められる ③親族関係の必要な人的範囲⭐️:本犯者と盗品等関与罪の犯人との間 → 被害者は無関係
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① 概要:刑法第四十章毀棄及び隠匿の罪で規定 258~263 ⑴ 特徴:財産犯 + 不法領得の意思を欠く ⇒ 利欲犯的性格を欠くことから法定刑が軽い ⑵行為:毀棄=⭐️物の効用を害する一切の行為(定義覚える) ⇒ 物理的損害に限定しない(食器に放尿も毀棄)・隠匿または損壊は客体の違い(有力説) § 公用文書等毀棄罪258:公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者 ① 客体:公用文書=公務所の用に供する文書 ⇒ 公務所が事務処理上管理している文書 公務所:公務員が職務を行うために設けられた場所(例)市役所・裁判所・警察署 公文書:公務所または公務員がその名義と権限を持って作成した文書 私文書:私人が作成した文書 = 公文書以外の文書 市役所が事務処理のために管理する私文書 ⇒ ≠公文書=⭐️公用文書 ※公用文書と公文書は異なることに注意 ② 行為:毀棄 → 隠匿も含む § 私用文書等毀棄罪259:権利または義務に関する他人の文書または電磁的記録を毀棄した者 ① 客体:私用文書=⭐️権利または義務に関する他人の文書 ⇒ 単なる事実証明に関する文書は含まない(履歴書、転居届等) ≠ 私文書偽造罪の私文書 ※使用文書と私文書は異なる ② 行為:毀棄 ③ 親告罪264 § 建造物等損壊罪・同致死傷罪260:他人の建造物を損壊した者、よって人を死傷させた者 ①客体:他人の建造物 ②行為:損壊(=毀棄) ➢ 〇 玄関ドアを損壊した ➢ 〇 建造物の壁等に3回に渡り500~2500枚のビラを貼付 ➢ 〇 公園の公衆便所の外壁にスプレーで反戦と大書した(建物の外観・美観に損害、原状回復が容易でない) ③ 同致死傷罪:結果的加重犯 § 器物損壊罪261:前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、または傷害した者 ① 客体:258・259・260の客体とならない他人の物の全て(公用文書、使用文書、建物以外のものすべて) ⇒ 毀棄・隠匿罪の原則的規定 ②行為:損壊または傷害(=毀棄) ⇒ 傷害は動物を客体とした場合(=動物傷害) ➢ 〇 食器に放尿 ➢ 〇 養殖用の池の水門を開け、他人が飼育中の鯉を池の外へ流出 ➢ 〇 物を使えなくするために隠匿 (→後で自分の物にするつもりなら窃盗) ③ 親告罪264 § 境界損壊罪262の2:境界標を損壊その他の方法により土地の境界を認識できないようにした者 ①客体:境界標等(境界標は例示) ②行為:土地の境界を不明にする一切の行為 ③保護法益:土地の権利関係の明確性 § 信書隠匿罪263:他人の信書を隠匿した者 ①客体:他人の信書=特定人から特定人にあてられた意思を伝達する文書 ②行為:隠匿=毀棄 ⇒ 261との区別:信書の隠匿を器物損壊より軽く処罰(有力説) 267 親告罪
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⭐️放火と文書偽造が重要 □ 放火罪総論 ① 保護法益:不特定または多数人の生命・身体・財産 ②特徴:危険犯 + 危険(=不特定または多数人の生命・身体・財産 ∴ 公共) → 公共危険罪 ③放火罪概要(具体的危険犯と抽象的危険犯) 写真 ⭐️非常に重要 ※建物かどうか ※現住または現在か ※自己所有か他人所有か ※現住または現在の建造物等(108)と非現住、非現在の他人所有の建物(109①)は抽象的危険犯 § 現住建造物等放火罪108:放火して現に人が住居に使用し、または現に人がいる建造物等を焼損した者 ①客体:現住建造物または現在建造物 = 現に人が住居に使用 または 現に人がいる ⑴ 現住建造物:人(=犯人以外の者)の起臥寝食の場所として日常使用される建造物(⭐️定義を書けるように) ➢ 肯定:人の住む住居 ・ 学校の宿直室 ・ 放火時にたまたま人がいないが日常使用される家 ➢ 否定:犯人のみが住む住居 ・ 居住者全員が殺害された住居 ⑵ 現在建造物:現住建造物にあたらなくとも、現に人がいる建造物(⭐️定義を書けるように) ➢ 肯定:離れにある物置 ➢ 否定:犯人のみが住む住居 ・ 居住者全員が殺害された住居 ・現住建造物 または 現在建造物 ⇒ 108の客体 ・上記以外の建造物 ⇒ 109の客体 ⑶⭐️客体の一個性:複合的建造物の現住性・現在性の判断 Q 現住・現在部分と非現住・非現在部分からなる複合的建造物の非現住・非現在部分に放火した場合 ⑴ 事例:無人の校舎の2階部分に放火 + 宿直室には放火していない ⑵問題の所在:非現住・非現在部分に放火 → 全体を一体とする(現住) or 分離(非現住非現在) ⑶ 結論-判例通説:⭐️物理的一体性からみて現住・現在部分への類型的な延焼可能性の有無で判断 → 108 ※類型的な延焼可能性=普通に考えて延焼するかどうか ⑷理由:108は特に重く処罰 ∵ 公共の危険 ⇒ 建造物内の人に対する危険の有無で判断すべき ➢ 神社の社務所及び守衛詰所と回廊で繋がった社殿への放火 → 108 ∵ 回廊 ∴ 物理的一体性あり → 類型的な延焼可能性あり Q 難燃性建造物の非現住・非現在部分に放火した場合 ⑴事例:鉄筋コンクリート造のマンションの空き部屋に放火 ⑵問題の所在:〇 物理的一体性 ・ ×延焼可能性 ⑶判例:108 ⑷理由:他の部屋に火勢が及ぶおそれが絶対にないとはいえない ∴ 可能性はある Q 物理的一体性が弱い部分に放火した場合 ⑴事例:マンションの共用部分であるエレベーターに放火 ⑵問題の所在:吊るされた物 → 現住部分との一体性が弱い = ×物理的一体性・延焼可能性は認められるのか? ⑶判例:108 ⑷理由:玄関の延長として機能的一体性が認められる ⇒ ⭐️物理的一体性からみた類型的な延焼可能性又は機能的一体性 で判断 ②行為:放火(=目的物への点火行為等) ⇒ 未遂 ⑴媒介物への点火行為:〇 (例)現住建造物への放火のため近くの古新聞に放火 ⑵不作為の放火:〇(例)消火する法的義務がある者がこれを放置 ⑶目的物への点火行為がない:〇(例)ガソリン散布し喫煙で発火 ③既遂時期:客体が焼損した時点 ⇒ 焼損しなければ未遂 Q焼損の意義 (1) 判例・学説 ・独立燃焼説(判例自説):火が媒介物を離れて目的物に移り、目的物が独立に燃焼を継続する状態 (⭐️同じように書けるように) 批判)既遂時期が早すぎる ・効用喪失説: 火力により目的物がその本来の効用を失う程度に毀損 批判)財産犯的側面を重視し過ぎている。 ・毀棄説: 火力により目的物が毀棄罪における損壊の程度に毀損 批判)財産犯的側面を重視しすぎている ⑵ 判例の理由:保護法益=不特定または多数人の生命・身体・財産 → 独立に燃焼している時点で抽象的には公共の危険が発生 ⑶あてはめ:目的物=現住・現在建造物の毀損しなければ取り外せない物 (例)柱・壁・天井 ・古新聞に点火 ⇒ 未遂 ・古新聞が独立に燃焼 ⇒ 未遂 ・古新聞から室内の畳・襖等が独立に燃焼⇒未遂 ・建物の柱・壁・天井が独立に燃焼→既遂 ※家具が燃えた段階では既遂にならない Q 難燃性建造物への放火の場合 ⑴問題の所在:建物自体は燃焼しないが効用喪失は生じる ⇒ 未遂は妥当でない ⑵ 学説 ・新効用喪失説: 原則、独立燃焼説 + 効用喪失なら焼損 批判)焼損という文理上の制約 ・否定説(自説) 独立燃焼がなければ未遂 ④未遂・予備:罰する112・113 ⑤罪数及び他罪との関係 ⑴成立する犯罪の個数:⭐️「生じた公共の危険の個数」によって決定 ・複数の現住建造物等を放火⇒ 生じた公共の危険が1個 = 包括して一罪(単純一罪・包括一罪) ・108・109・110物件を放火⇒ 生じた公共の危険が1個 = 包括して108一罪 ⑵ 109・110物件を媒介物とした場合 108物件が焼損 ⇒ 包括して本罪の既遂一罪 108物件が焼損に至らない ⇒ 包括して本罪の未遂一罪
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§ 非現住建造物等放火罪109:放火して非現住かつ非現在建造物を焼損した者Ⅰ・自己所有+公共の危険Ⅱ ①客体:非現住建造物かつ非現在建造物 = 現に人が住居に使用せずかつ現に人がいない建造物 他人所有 ⇒ Ⅰ適用 (例外)所有者の同意あり⇒ 自己所有扱い ※物置の所有者が古くなったので燃やしてくれと言った場合 自己所有 ⇒ Ⅱ適用 (例外)差押え・物権負担・賃貸・保険⇒ 他人所有扱い115 ②公共の危険(109②が成立するために必要) ⑴行為 Ⅰ:放火 + 焼損⇒ 抽象的危険犯 Ⅱ:放火 + 焼損 + 公共の危険の発生⇒ 具体的危険犯 ⭐️108、109①抽象的、109②具体的の区別は重要 ※具体的危険犯と抽象的危険犯のついて、前者は現実に危険が発生することを必要とするが、後者は構成要件所定の行為があれば当然に法益に対する脅威が生じたものとされる ⑵意義:公共の危険=不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険(通説) ⑶判断基準:一般人の印象からみて危険を感じるような状態(通説) ⇒ ⭐️一般人の印象からみて不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態 (書けるように) Q 109Ⅱにおける公共の危険の認識の要否⭐️論文で出る ⑴事例:一般人は延焼すると思うが、風向き等から実際は延焼しないと考え自己所有の空き家に放火 ⑵問題の所在:反対説の理由 ⑶学説 ・認識不要説:不要 (理由)・文言109②「罰しない」= 処罰条件=故意の対象ではない ・公共の危険発生の認識がある =現住建造物や他人所有の建造物に延焼することを認識→108・109Ⅰの故意を有しているということになるのでは? ・認識必要説(通説):必要 (理由)本来違法行為ではない(自分の建造物を燃やしただけ)→罰せられるのは公共の危険を引き起こしたから→公共の危険必要 + 延焼の危険と公共の危険は同じものではない ⑴結論:109Ⅱ成立 → 一般人の印象から見ても延焼しないなら不成立 ③ 未遂・予備:109Ⅰの未遂・予備は罰する112・113
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一般人は延焼すると思うが、風向き等から実際は延焼しないと考え自己所有の空き家に放火し焼損した ーーーーーーー (109Ⅱの客体を放火し焼損させ故意あり)しかし、他の家への延焼はありえないと考えいていた。そこで、「公共の危険」の認識に欠け同罪は成立しないのではないか、公共の危険の認識の要否が問題となる。この点、「罰しない」という文言から公共の危険を処罰条件であると解し、その認識は不要とする見解がある。しかし、109条2項が規定する行為自体は本来違法行為ではない。にもかかわらずそれが犯罪となるのは、公共の危険を発生させたからである。とすれば、公共の危険の認識は必要と解するべきである。そして、一般人の印象から見て、不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態が生じることの認識があれば、延焼可能性の認識がなくても、公共の危険の認識はあると解する。本件でこれを見るに
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§ 建造物等以外放火罪110:放火して前2条以外の物を焼損し、よって公共の危険Ⅰ ・ 自己所有Ⅱ ① 客体:108・109に規定されている物以外の物 = 建造物等以外 ・他人所有 ⇒ Ⅰ適用 (例外)所有者の同意あり⇒ 自己所有扱い ・自己所有 ⇒ Ⅱ適用 (例外)差押え・物権負担・賃貸・保険⇒ 他人所有扱い115 (具体例)バイク・畳(畳のみを目的なら110。 畳は媒介物で建物を燃やす目的なら108、109)・人のいない電車 ② 公共の危険 ⑴行為 Ⅰ:放火 + 焼損 + 公共の危険の発生⇒ 具体的危険犯(109Ⅰは抽象的危険犯) Ⅱ:放火 + 焼損 + 公共の危険の発生⇒ 具体的危険犯 ⑵ 意義:不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険(通説) ⑶判断基準:一般人の印象からみて危険を感じるような状態(通) ⇒ 一般人の印象からみて不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態 Q 110における公共の危険の認識の要否 ⑴事例:一般人は延焼すると思うが、風向き等から実際は延焼しないと考え他人のバイクに放火 ⑵問題の所在:判例 ・不要説(判例):認識不要 (理由)文言「よって」→ 器物損壊罪の結果的加重犯 (批判)個人的法益と公共危険罪 → 加重類型の関係なし ・必要説(通説):認識必要 Ⅰ:器物損壊よりも重い公共危険罪を構成 Ⅱ:本来違法行為ではない(∵自己所有) → 公共の危険による ⑶結論:110Ⅰ成立
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§ 延焼罪111: 109Ⅱ・110Ⅱの罪を犯し、よって108・109Ⅰに延焼Ⅰ ・ 110Ⅱによって110Ⅰに延焼Ⅱ ①概要:109Ⅱ・110Ⅱの結果的加重犯 = 108・109Ⅰ・110Ⅰは無関係 ⇒ 自己所有の非現住かつ非現在建造物または自己所有の建造物等以外を放火して延焼させた ②故意:109Ⅱ・110Ⅱの故意あり + 延焼した客体についての故意なし 適用条文 基本犯 結果(延焼した客体) 111Ⅰ 自己所有非現住・非現在建造物109Ⅱ or 自己所有建造物等以外110Ⅱ 現住・現在建造物108 他人所有非現住・非現在建造物109Ⅰ (109Ⅱ・110の延焼は対象外) 111Ⅱ 自己所有建造物等以外110Ⅱ 現住・現在建造物108(111Ⅰ) 他人所有非現住・非現在建造物109Ⅰ(111Ⅰ) 他人所有建造物等以外110Ⅰ (109Ⅱ・110Ⅱの延焼は対象外) § 失火罪116:失火により108・109Ⅰ物件を焼損Ⅰ ・ 109Ⅱ・110物件を焼損+公共の危険Ⅱ ①失火:過失により出火させること ②概要 116Ⅰ:失火 + 焼損 ⇒ 抽象的危険犯 116Ⅱ:失火 + 焼損 + 公共の危険 ⇒ 具体的危険犯 § 業務上失火罪117の2:116・117Ⅰの行為が業務上必要な注意を怠った又は重大な過失によるとき ① 業務:職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位(判) § 消火妨害罪114:火災の際に、消火用の物を隠匿・損壊、その他の方法により消火を妨害した者 § 激発物破裂罪117:火薬・ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて物を損壊した者は放火・失火の例 § ガス漏出等罪118:ガス等を漏出・遮断し、よって人の生命等に危険を生じさせた者・死傷させた者
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§ 騒乱罪106:多衆で集合して暴行または脅迫をした者 首謀者1号、指揮・助勢者2号、不和随行者3号 ① 概要 ⑴典型例:大規模反政府デモで警官隊に暴行・脅迫、 対立する政治団体がデモ中に暴行・脅迫 ⑵保護法益:公共の平穏(判例通説) ⑶性質:抽象的危険犯 + 必要的共犯 ②要件 ⑴主体:多衆(たしゅう)=一地方における公共の静謐を害するに足る暴行・脅迫をなすに適当な多数人(判例) ⑵行為:集団による暴行・脅迫 ・暴行:最広義=不法な有形力の行使(物含む) + 一地方の平穏を害するに足る程度(判例) ・脅迫:広義 =対象を問わない + 一地方の平穏を害するに足る程度(判例) ⑶集合:多人数が時と場所を同じくする + 組織されていなくてもよい ⑷主観的要件:故意 + 共同意思=多衆の合同力をして暴行・脅迫し自らこれに加わる(判例) 288 他罪との関係 暴行・脅迫 ⇒ 本罪に吸収 建造物侵入・建造物損壊・公務執行妨害 ⇒ 別罪で観念的競合 § 多衆不解散罪107:暴行または脅迫のため多衆が集合 → 権限ある公務員の解散命令3回以上でも不解散 ①概要:騒乱罪の予備段階を処罰する目的 + 真正不作為犯 § 往来妨害罪124Ⅰ:陸路・水路・橋を損壊または閉塞して往来の妨害を生じさせた者 ①保護法益:公共の交通の安全 ⇒ 公共危険罪の一種 + 124~129 ② 客体:陸路、水路または橋 ⇒ 道路、河川、橋(鉄道専用の橋は125対象のため含まない) ③ 行為:損壊または閉塞 ⇒ 物理的損壊限定 ∴ 器物損壊と区別 ④ 具体的危険犯:往来妨害を生じさせた状態が必要 ⇒ 現実に特定の人が往来妨害された事実は不要 § 往来妨害致死傷罪124Ⅱ:往来妨害罪を犯し、よって人を死傷させた者 ①概要:往来妨害罪の結果的加重犯 § 往来危険罪125:鉄道・標識の損壊等により電車の往来の危険を生じさせたⅠ ・ 艦船Ⅱ ①概要:汽車・電車及び艦船の往来の危険を生じさせた場合 ⇒ 往来妨害より加重 ②行為:鉄道・標識の損壊等Ⅰ ・ 灯台・浮標の損壊等Ⅱ(例)線路に障害物を置く ③具体的危険犯:往来の危険を生じさせた状態が必要 ⇒ 現実に電車・艦船が往来妨害された事実は不要 § 汽車転覆等罪126Ⅰ・Ⅱ:現に人がいる汽車・電車・艦船を転覆・破壊した者 ①客体:現に人(=犯人以外の人)がいる汽車・電車Ⅰ ・ 現に人がいる艦船Ⅱ ②行為:汽車・電車の転覆・破壊Ⅰ ・ 艦船の転覆・沈没・破壊Ⅱ ➢ 本罪の破壊=交通機関としての全部または一部を失わせる程度 → ×窓ガラスを割る程度では本罪の破壊には該当しない ③抽象的危険犯:行為があればただちに既遂 § 汽車転覆等致死罪126Ⅲ:126Ⅰ・Ⅱを罪を犯しよって人を死亡させた者 ①概要:126Ⅰ・Ⅱの結果的加重犯 + 致死に限定 Q 汽車等の内部にいた人以外が死亡 ⇒ 成立肯定(判例) ∵ 十分に予想できる § 往来危険による汽車転覆等罪127:125を犯し、よって汽車・電車・艦船を転覆・破壊等をした者 ①概要:往来危険罪の125の結果的加重犯 Q 人の現在性 ⇒ 不要(判例) ∵ 文言上特に要求されていない Q 死亡させた場合 ⇒ 127適用(判例)→汽車転覆等致死罪126Ⅲ ∵ 文言「前条の例による」 § 過失による往来危険等罪129:過失により往来危険罪・汽車転覆等罪を犯した者
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□ 文書偽造総論 ① 保護法益:文書に対する公共の信用(⭐️書けるように)(個人の利益ではない) ② 偽造 ⑴定義⭐️3つすべて書けるように A+ ・偽造:名義人と作成者の人格の同一性を偽ること ・名義人:当該文書から理解される意思や観念の表示主体 (例:免許証の名義人は公安委員会) ・作成者:文書に意思や観念を表示した者または表示させた者(意思説) Q 作成者の意義 ⑴ 問題の所在:反対説である行為説では物理的に文書を作成した者となるが、秘書が社長の同意により代筆した場合に問題 ⑵ 学説の帰結 ・行為説(反対説) (当てはめ)名義人(社長)≠作成者(作成した者=秘書) (結論)構成要件該当→違法性阻却→不成立 ・意思説(通説) (当てはめ)名義人(社長)=作成者(表示した者またはさせた者=社長) (結論)構成要件不該当→不成立 ⑶ 偽造の判断:⭐️名義人と作成者のみ ⇒ 文書の内容の真実性は無関係 (内容が虚偽でも名義人と作成者が同一であれば文書偽造の「偽造」には当たらない) ⭐️間違えやすいので重要⭐️ ⑷偽造の程度:一般人から見て真正に作成されたものであると誤信させるに足りる外観が必要 ⑤虚偽作成:作成権限を有する者が内容虚偽の文書を作成すること ⭐️「作成権限を有する者」がつくるのがポイント ⑴ 偽造との区別:人格の同一性を判断し、次に内容の真偽を判断(写真参照) ⑵ 定義 ・有形偽造:偽造 = 狭義の偽造 ・無形偽造:虚偽作成 → 広義の偽造 = 有形偽造 + 無形偽造 ④変造:権限なく既存の真正に成立した文書の非本質的部分に改竄を加えること ・肯定判例:運転免許証の住所変更欄を改竄 ・ 貯金通帳の貯金受入年月日を改竄 ・否定判例:運転免許証の写真と生年月日を張替 ⇒ 本質的部分を改竄 ≒ 新たな文書の作成 ∴ 偽造 ⑤処罰対象 ⑴処罰対象の考え方 形式主義:有形偽造を処罰の対象とする立場 = 文書の成立の真正を保護 実質主義:無形偽造を処罰の対象とする立場 = 文書の内容の真正を保護 ⑵適用文書 公文書:形式主義と実質主義を併用 → 偽造・虚偽作成・変造・を処罰 私文書:形式主義を原則 → 原則、偽造のみ処罰(虚偽作成・変造の処罰は例外) ③文書の該当性 ⑴ 文書:可視的・可読的符号により、一定期間永続する状態で物体の上に意または観念を表示したもの ※書ける必要はなし ⑵要件 a) 可視性・可読性(判例) ・肯定:書類(契約書・公的証明書等)・黒板のチョークによる記載(固定あり∴文書)(判例) ・否定:音声テープ・ビデオテープ・電磁的記録 b) 証拠性:意思または観念が社会生活における重要な事実についての証拠となる(判例)※定義を書ける必要はない ・肯定:経済取引の契約書・公的証明書 ・否定:学術論文・小説(∵ × 社会生活における重要な事実)、名刺・表札(∵ × 意思または観念) c) 名義人の記載:名義人の表示がありかつ特定できる⭐️ 肯定:・行政機関の記載 ・個人名+住所 ・直接的記載なし+その他の附属物等から特定できる 否定:「X町会議員代表」(Xは町名) Q 名義人の実在の要否 ⑴問題の所在:架空人名義の文書を偽造。名義人が実在しないが文書に該当すると言えるのか?名義人の実在は必要か、不要か? ⑵判例・学説 ・必要説(反対説):文書の要件として名義人の実在が必要 (理由)架空人名義には証拠性がない ・不要説(判例通説):公文書・私文書共に名義人の実在は不要⇒ 架空人名義の文書も「文書」に該当 (理由) 架空人名義の文書でも、文書に対する公共の信用を害することができる Q 写しの文書性 ⑴事例:真正な文書を改竄し、改竄文書のコピーXを作成した。そしてXを写しとして使用した。 ⑵問題の所在:原本・改竄文書は文書に該当 → 写しは公共の信用がない ∴ 文書に該当しない? ⑶判例:要件を満たせば文書にあたる ⑷ 要件⭐️ a) 原本と同一の意識内容を有し、 b) 証明文書として原本と同様の社会的機能と信頼性を有すると認められる ⑸あてはめ 手書き:あたらない ∵ a) なし ※普通に考えて手書きは同一とは言えない 写真コピー:あたる場合が多い ∵ a)あり + b)ある場合が多い ファックス:あたる場合もある ∵ a)あり + b)ある場合もある Q 写しの名義人 ⑴問題の所在:写しが文書にあたる → 偽造にあたるには名義人≠作成者 →写しの名義人は誰か? ⑵判例:原本の名義人 ⑶理由:写しが「文書」にあたるための要件 Q 写しが有印となるか ⑴問題の所在:公文書は有印か無印かで区別 → 原本有印 → 写しも有印となるか ⑵判例:原本が有印なら写しも有印 ⑶理由:写しが「文書」にあたるための要件
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原本の写しが必要な場合に、Aが他人の司法試験合格証書の氏名欄にAという紙を貼付け写真コピー機にかけて写しを作成した場合 ーーーーーーー Aの行為につき有印公文書偽造罪が成立するか、本件写しが「文書」といえるかが問題となる。まず、公文書偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用であるところ、原則としてかかる信用は原本についてのみ生じうる。従って、写しは文書にあたらないのが原則と解する。しかし、写しが原本と同一の意識内容をもち、証明文書として原本と同様の社会的機能と信頼性を有する場合には、写しも文書にあたると解する。本件では~。 次に、偽造したといえるか、偽造とは文書の名義人と作成者との人格の同一性を偽ることとなることから、文書の名義人は誰かが問題となる。そもそも名義人とは、当該文書から理解される意思や観念の表示主体をいう。そして、写しが前述の要件を満たしている以上、原本の名義人である。従って、~偽造したといえる。さらに、写しも有印となるかが問題となるが、前述の要件をみたしている以上、写しも有印であると解する。よって~ ⭐️重要⭐️「写しが原本と同一の意識内容をもち、証明文書として原本と同様の社会的機能と信頼性を有する場合には、写しも文書にあたると解する」
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公文書偽造等罪 § 有印公文書偽造等罪155Ⅰ・Ⅱ Ⅰ:行使の目的で公務所・公務員の印章または署名を使用している(=有印)公文書・図画を偽造 Ⅱ:有印公文書・図画を変造 ①客体:有印公文書・有印公図画 ⑴公文書:公務所または公務員がその名義をもって権限内において所定の形式に従って作成すべき文書 ※定義を書けなくてもok ⑵公図画(こうずが):公務所または公務員が名義人の図画(例)公図・旧土地台帳附属地図(判例) ⑶ 有印:公務所・公務員の印章または署名を使用している(例)〇 偽造・記名(=署名に含む) ②行為:偽造Ⅰ・変造Ⅱ ※変造:権限なく既存の真正に成立した文書の非本質的部分に改竄を加えること ③ 目的⭐️:行使の目的 ⇒ 目的犯 ⑴行使:偽造文書または変造文書を真正な文書として使用すること ⑵使用⭐️:文書の内容を他人に認識させ、または認識可能な状態におくこと ※おさえるように。特に「認識可能な状態」 Q 補助的公務員の作成権限 ⑴前提:名義人市長 → 権限を与えられた者(代決者)の市民課長に授権 → 補助的公務員が作成 ※名義人:当該文書から理解される意思や観念の表示主体=市長 ※作成者:文書に意思や観念を表示した者又は表示させた者=市長 ⑵事例:市民課係長は事後決裁により一定の手続きで印鑑証明書作成を許可されていた。しかし、 決裁・手続なく、手数料を払わずに、自己の印鑑証明書を作成した。印影等は真正。偽造にあたるか? ⑴ 問題の所在:作成権限なしなら偽造にあたる ・ 作成権限ありなら偽造にあたらない ⑵判例⭐️:授権を基礎づける一定の基本的な条件に従う限度において作成権限あり →本件市民課係長の行為は155Ⅰ不成立 ⑶理由:補助的公務員には権限のない者とある者がいる → あれば内容が正確である限り手続違反があっても偽造に当たらない § 無印公文書偽造等罪155Ⅲ:有印公文書・公図画以外の公文書・公図画の偽造・変造 ※試験には出ない(印や署名のない公文書は基本的にない) § 虚偽公文書作成等罪156:公務員が行使の目的で虚偽の公文書・公図画を作成・変造した → 前2条 ※権限ある公務員による無形偽造および変造を処罰する犯罪類型 ①趣旨:公文書の社会的信用を保護 → ⭐️有形偽造のみならず、無形偽造をも全面的に処罰 ②主体:作成権限を有する公務員に限定 = 真正身分犯 ・作成権限の有無で区別⭐️ ⇒ 作成権限なしなら偽造の問題(155) ③行為:虚偽の公文書・公図画の作成・変造(権限ある公務員による) ④目的:行使の目的 ⇒ 目的犯 ⑴行使:虚偽文書を内容の真実な文書として使用すること (⑵使用:文書の内容を他人に認識させ、又は認識可能な状態におくこと Q ⭐️権限のない者が権限のある者を利用した間接正犯の場合 ⑴前提:間接正犯の場合 ・権限者が権限のない者を利用した場合 ⇒ 156間接正犯成立 ・権限のない者が権限者を利用した場合 ⇒ ? ⑵ 事例:私人が市民課長に虚偽の申立てをして内容虚偽の印鑑証明書を取得した ⑶結論:間接正犯の156の成立を否定(判例通説 ⑷ 理由:157-重要な公文書の156の間接正犯を軽い刑 ⇒ 157以外の156の間接正犯を処罰しない § 公正証書原本等不実記載等罪157 Ⅰ:公務員に虚偽の申立をして登記簿、戸籍簿その他の権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載 Ⅱ:免状・鑑札・旅券に ①趣旨:156条の間接正犯の処罰を本条の場合に限定する ⇒ 一定の重要な公文書 + 行為 が限定 ②行為:公務員に虚偽の申立 → 本条所定の公文書に不実の記載をさせる(例)偽装結婚 ③客体 ・公正証書原本等不実記載罪Ⅰ:登記簿・戸籍簿・住民票・公正証書・外国人登録原票・土地台帳 ・免状等不実記載罪Ⅱ:運転免許証(免状)・古物営業許可証(鑑札)・パスポート(旅券) + Ⅰ電磁的記録:住民基本台帳ファイル、自動車登録ファイル ④他罪との関係 Q 公務員が共謀していた場合 ⑴事例:私人が公務員と共謀し虚偽の申立 → その公務員に内容虚偽の文書を作成させた ⑵問題の所在:公務員と共犯 ⑶判例:公務員=156 ・ 私人=156の共同正犯 ⑷理由:65Ⅰ Q 公務員が虚偽を見抜いた場合 ⑴ 事例:私人が虚偽の申立 → 登記官が虚偽を見抜いた(共謀はない) → そのまま公文書を作成 ⑵問題の所在:当該公務員に虚偽公文書作成罪156が成立するか ⑶結論-通説 ・実質的審査権限(内容が真正か否かを審査する権限)あり ⇒ 156成立 ・形式的審査権限(書類等の形式面の審査のみの権限)のみあり ⇒ 156不成立 + 私人は157の成立を認める ⑷あてはめ:156不成立 ∵ 登記官は形式的審査権限のみ Q 詐欺罪の成否 ⑴事例:虚偽の申立 → その結果、公正証書等を詐取 ⑵問題の所在:詐欺の構成要件に該当 → 詐欺成立 ⑶判例:⭐️詐欺不成立 ⑷理由:公正証書等の交付を受けることを当然に予定 → 157のみ成立(⭐️科刑上一罪ではない) § 偽造公文書行使等罪158:154~157までの客体を行使又は電磁的記録を原本としての用に供した者 ① 概要:155の偽造文書・156の虚偽文書の行使 + 157Ⅰの電磁的記録の供用 ⇒ 155と156の目的が158 ②行為 ⑴ 行使:偽造文書を真正な文書として、または虚偽文書を内容真実な文書として、使用すること ⑵ 使用:人に文書の内容を認識させ、または認識可能な状態におくこと ⑶供用:用に供した=公務所に供えて公証をなしうる状態におくこと ⑷あてはめ ・相手方の不知⭐️:必要⇒知っている相手への呈示は未遂 ・行使の方法:不問 ⇒ 〇 スキャナを通してモニタに表示(判例)∵ 認識させる ・認識可能性:認識可能かで判断 ⇒ 〇 偽造文書を郵送→到達 × 偽造した運転免許証を携帯 ⑸罪数:155・156・詐欺罪と本罪は牽連犯→課刑上一罪
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§ 有印私文書偽造等罪159:行使の目的で有印の権利義務及び事実証明に関する私文書等を偽造Ⅰ・変造Ⅱ ①客体:有印の私文書・私図画で権利・義務に関するもの及び事実証明に関するもの ⭐️「権利・義務に関するもの」及び「事実証明に関するもの」に限定 ⑴有印:他人の印章・署名があること ⇒ 他人の印章・署名を偽造するか否かは不問 ⑵権利・義務に関する:権利・義務の発生・変更・消滅を目的とする意思表示を内容 ➢ 私人を当事者とする借用証書 ⑶事実証明に関する:社会生活に交渉を有する事項を証明する内容 ➢ 私立大学の入学試験の答案・履歴書・郵便局への転居届 ②行為:偽造(=有形偽造)Ⅰ ・変造Ⅱ Q 名義人の承諾 ⑴問題の所在:名義人の承諾のもと作成 → 偽造には当たらない ⇒ 承諾があれば常に偽造でないのか? ⑵事例:替え玉受験のために、名義人Aの承諾に基づきBがA名義の答案用紙を作成 ⑶判例:有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:文書の性質上自署性が要求される → 名義人の承諾は無効 ∴ 作成者=表示した者 (⭐️文書の性質上自署性が要求されるもの(いずれも事前承諾を得て他人名義で作成) ➢ ・ 交通事件原票の供述調書欄 ・ 大学の入学試験の答案 ・ 一般旅券発給申請書 Q 肩書の冒用 ⑴事例:弁護士でないAが弁護士Aという名義で私文書(弁護士報酬請求書)を作成 ⑵問題の所在:肩書付名義人と解するか ⇒ 名義人A=作成者A →偽造ではない or 名義人弁護士A≠作成者A→偽造となる? ⑶判例:有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:文書の性質上弁護士という肩書・資格がなければ作成できない文書 Q 代理名義の冒用 ⑴事例:代理権のないAがB代理人Aという名義で契約書を作成 ⑵問題の所在:名義人の特定 ⇒ 作成者=(代理権のない)A + 名義人=本人B or Bの代理人A ⑶判例⭐️:名義人は本人B ⇒ 有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:代理形式の文書は効果が本人に帰属する形式の文書 Q 別名の使用 ⑴事例:密入国後在留資格を有するB名義で25年以上生活したAが再入国許可申請書をB名義で作成 ⑵問題の所在:別名(通称名・芸名)が社会一般に通用=本人特定 ∴ 同一性あり → 常に妥当するか? ※ 在日韓国人が日本人名を通称名として使っている場合 ⑶判例:有印私文書偽造等罪成立 ⑷理由:文書の性質から適法な在留資格を有するという書かれざる資格が名義人の表示の一部 ③ 行使の目的:偽造公文書等と同様 ⇒目的犯 ※目的:行使の目的 ⇒ 目的犯 ⑴行使:虚偽文書を内容の真実な文書として使用すること ⑵使用:文書の内容を他人に認識させ、又は認識可能な状態におくこと § 無印私文書偽造罪159Ⅲ:159Ⅰ・Ⅱの対象の文書のうち、印章・署名のない場合 ※試験には出ない § 虚偽診断書作成罪160:医師が公務所に提出すべき診断者等に虚偽の記載をした ⭐️短答でよく出る ①意義:⭐️私文書の形式主義の例外 ⇒ 私文書の無形偽造を例外的に処罰 ∵ 重要 ②主体:医師に限定 ⇒ 真正身分犯 ⭐️医師が公務員なら虚偽公文書作成等罪156 ③客体:公務所に提出すべき診断書・検案書・死亡証明書 〇:裁判所に提出する健康診断書 ・ 国立大学入学のために提出する健康診断書 ×:私企業に提出する健康診断書 ・ 私立大学入学のために提出する健康診断書 § 偽造私文書等行使罪161:159・160の文書を行使した者 ① 行為:偽造公文書等と同様 ② 罪数:私文書偽造罪+本罪=牽連犯・詐欺罪+本罪=牽連犯 § 電磁的記録不正作出罪・同供用罪161の2 ・私電磁的記録不正作出罪Ⅰ:事務処理を誤らせる目的で私電磁的記録を不正に作出した者 ・公電磁的記録不正作出罪Ⅱ:前項が公電磁的記録の場合 ・電磁的記録供用罪Ⅲ:供用した場合 ① 161の2Ⅰ ⑴客体:私電磁的記録=人の事務処理の用に供する権利・義務又は事実証明に関する電磁的記録 ・権利義務:銀行の預金元帳ファイル・乗車券等の裏の磁気情報部分 事実証明:顧客デーベースファイル ⑵目的:人の事務処理を誤らせる目的⇒ 目的犯 161の2Ⅱ:公電磁的記録=公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録 161の2Ⅲ:供用=他人のコンピューターで使用できる状態におく § 詔書偽造等罪154:詔書を偽造・変造した者 ※でない ①詔書:(機関としての)天皇の意思表示を示す公文書
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§ 通貨偽造等罪148Ⅰ:行使の目的で通用する貨幣・紙幣または銀行券を偽造または変造した者 ①保護法益:通貨の真正に対する公共の信用 ⇒ 通貨偽造の罪に共通 ②客体:貨幣・紙幣(政府発行)、銀行券(銀行発行) ⇒ 日本では貨幣と銀行券のみ ③ 行為:偽造または変造 ・偽造:権限なく似た外観の物を作成 ・変造:権限なく真正な通貨を加工して似た外観の物を作成 ⇒ 文書偽造の偽造・変造と異なる + 一般人をして真正の通貨と誤認させる程度が必要 ※変造の例:1枚の千円札を2枚の千円札に見せかけるために加工 ④目的:行使の目的が必要 ⇒ ⭐️目的犯 ⑴行使の目的⭐️:通貨を真正なものとして流通におく目的 ⇒ 有価証券偽造罪では流通は不要 ⑵判例 ×:見せ金に用いる目的・演劇用の小道具に用いる目的 〇:商品購入代金の目的・他人に渡して使用させる目的 § 偽造通貨行使等罪148Ⅱ:偽造通貨を行使し、または行使の目的で人に交付した者 ①客体:偽貨=偽造または変造された通貨 ⇒ 自己作成・行使目的での作成 は不要 ②行為:行使・行使目的での交付・輸入 ⑴行使:偽貨を真正なものとして流通におく ⇒ 文書偽造・有価証券偽造と区別 ⑵ 交付:偽貨であることを告げて又は知っている相手に渡す ⇒ ⭐️相手方の認識で行使と区別 ③ 罪数:通貨偽造等罪+本罪=牽連犯 ・ 偽造通貨収得罪+本罪=牽連犯 Q 詐欺罪と偽造通貨行使等罪の関係 ⑴事例:Aが自ら作成したものではない偽造通貨を行使し、商品を購入した ⑵問題の所在:本罪成立 → 商品についての詐欺罪が別途成立するか ⑶判例:⭐️詐欺罪は本罪に吸収される → 148Ⅱ一罪のみ ※158Ⅰ・161Ⅰと詐欺罪は牽連犯となるので区別すること ⑷理由:収得後知情行使等罪を軽く処罰しようとした法の趣旨 § 外国通貨偽造罪・偽造外国通貨行使等罪149:行使の目的で外国の通貨を偽造又は変造Ⅰ・行使Ⅱ § 偽造通貨収得罪150:行使の目的で偽貨を収得した者 ①概要:行使目的で偽貨であることを知りつつ取得した者 ⇒ 偽貨を 作った148Ⅰ ・ 使った148Ⅱ ・ 取得した150 § 収得後知情行使等罪152:収得後に偽貨と知って行使または交付した者 ① 概要:偽貨であることを知らずに取得 → 取得後に偽貨を知った → 知りながら行使・交付 ②特徴:法定刑が極めて軽い ⇒ 罰金又は科料 ∵ 期待可能性が低い ③ 罪数:詐欺罪+本罪=本罪一罪 ⇒ 詐欺罪は吸収 § 通貨偽造等準備罪153:通貨の偽造または変造の用に供する目的で、器械または原料を準備した者 ①特徴:通貨偽造等罪の予備罪 ⇒ ⭐️予備行為のうち器械または原料を準備する行為のみを処罰=準備罪 ②あてはめ 〇:印刷機・複写機を準備(器械の準備) ・ 専用の用紙や専用のインクを準備(原料の準備) ×:技術者を手配 ③目的:通貨の偽造又は変造の目的 ⇒ 目的犯・自己予備又は他人予備は不問
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§ 有価証券偽造等罪162:行使の目的で有価証券を偽造または変造した者Ⅰ・虚偽の記入をした者Ⅱ ①保護法益:有価証券の真正に対する公共の信用 ⇒ 有価証券偽造の罪に共通 ② 客体:有価証券 ⑴有価証券:財産権を表章した証券で権利の移転・行使のいずれにおいても証券の占有が必要なもの ⑵典型例:手形・小切手・株券 ⑶ 162の有価証券:財産権を表章した証券で権利の移転または行使にその証券の占有が必要なもの ※商法の有価証券の定義よりも広い (判例) ◯:手形・小切手・乗車券・定期券・宝くじ・馬券・商品券・タクシーチケット ✖️:預貯金の通帳・クレジットカード・プリペイドカード ③行為:偽造又は変造Ⅰ・虚偽の記入 ④目的:行使の目的 が必要 ⇒ 目的犯 ⑴行使の目的:真正なまたは内容真実の有価証券として使用する目的 ⑵ 他罪との関係:文書偽造の行使の目的・通貨偽造の行使の目的と各々異なる ➢ 見せ手形として使用 → 行使の目的あり ∵ 流通におく目的不要 ※通貨偽造だと見せ金では行使罪不成立 § 偽造有価証券行使等罪163:偽造・変造・虚偽の記入がある有価証券を行使または行使の目的で交付した者 ① 客体:偽造・変造・虚偽の記入がある有価証券 ②行為:行使又は交付 ⑴行使:真正なまたは内容真実の有価証券として使用すること ⇒ 流通におくことは不要 ⑵交付:偽造等有価証券であることを告げて又は知っている相手に渡す ⇒ 相手方の認識で区別 ③罪数:有価証券偽造等罪+本罪=牽連犯 ・ 詐欺罪+本罪=牽連犯 4 支払用カード電磁的記録に関する罪 C ①保護法益:支払用カードを用いて行う支払システムに対する公共の信用 ②条文:163の2・163の3・163の4 ⇒ 条文一読 5 印章偽造の罪 C 短答でも出ない ①保護法益:印章や署名の真正に対する公共の信用 ②条文;164・165・166・167・168 ⇒ 条文一読 6 不正指令電磁的記録に関する罪 ①保護法益:電子計算機のプログラムに対する公共の信用 ②条文:168の2・168の3 ⇒ 条文一読
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第三章 風俗に対する罪 1 猥褻及び重婚の罪 ①概要:当事者の合意が前提 ⇒ 個人的法益ではなく社会的法益に対する罪 ② 保護法益:健全な性的風俗・性道徳・性秩序(判例) § 公然猥褻罪174:公然と猥褻な行為をした者 ・公然:不特定又は多数が認識できる状態(判例) ・猥褻:徒に性欲を刺激しかつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの(判例) ⑴判断基準:時代・社会・文化等の社会通念に応じて判断 ⑵強制猥褻との区別:強制猥褻 > 公然猥褻(判例) ➢ 強引にキス → 〇 強制猥褻 ・公然とキス → ×公然猥褻 § 猥褻物頒布等罪175:猥褻な文書等を頒布または公然と陳列した者Ⅰ・有償頒布目的で所持・保管した者Ⅱ ①客体:猥褻な文書・図画・電磁的記録等 ⑴判例:小説・写真集・映画フィルム・ビデオテープ・ハードディスク(記録媒体) ⑵判断基準:その時代の社会通念に照らして ⇒ 表現の自由で問題(憲法) ② 行為:頒布・公然陳列Ⅰ・有償頒布目的での所持・保管Ⅱ ⑴ 頒布 一項前段の頒布:実物を対象 ⇒ 不特定または多数の者に現実に交付する 一項後段の頒布:記録を対象 ⇒ 不特定または多数の者の記録媒体上に電磁的記録を存在させる ➢ 海外のサーバーから国内の顧客に猥褻データをダウンロードさせる → 一項後段の頒布 + 国内犯 ➢ 原則として、頒布を受けた者に共犯は不成立 ∵ 刑法上頒布者のみ処罰規定 ⑵公然陳列:不特定または多数人が視聴できる状態にすること ➢ 猥褻データをダウンロード可能な状態にした → 能動的行為を要するが該当 ∵ 容易な行為 ⑶有償頒布目的で所持・保管 ⇒ 175Ⅰの予備罪 + 無償頒布目的は対象ではない ③罪数:反復継続した場合 ⇒ 包括一罪(営業犯) ∵ 想定されている(判) § 淫行勧誘罪182:営利目的で淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者 ⇒ 条文一読 § 重婚罪184:配偶者のある者が重ねて婚姻をしたとき ⇒ 条文一読
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2 賭博及び富くじの罪 ① 保護法益:勤労の美風(判) ② 概要:公序良俗違反(民法) → 法令・社会通念から違法性阻却されうる § 単純賭博罪185:賭博をした者、但し一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときはこの限りでない ③概要 ⑴ 原則:賭博をした場合⇒ 成立 ⑵ 例外:一時の娯楽に供する物を賭けた場合 ⇒ 不成立 不成立:飲料 ・ 食事 ・ 食事等のための金銭(判) 成立:金銭そのもの(判) § 常習賭博罪186Ⅰ:常習として賭博をした者 ① 概要:常習性という身分がある場合 ⇒ 不真正身分犯 + 包括一罪 § 賭博場開帳・博徒結合罪186Ⅱ:賭博場を開帳又は博徒を結合して利益を図った者 ⇒ 条文一読 § 富くじ罪187:富くじを発売等した者 ⇒ 条文一読 3 礼拝所及び墳墓に関する罪 ①概要:死体損壊等罪190以外、188~192は条文一読 § 死体損壊等罪190⭐️ Aランク:死体等を損壊・遺棄・領得した者 ①保護法益:国民の宗教的感情⭐️書けるように ②客体:死体・遺骨・遺髪・棺に納めてある物 ③ 行為:遺棄・損壊・領得 ⑴遺棄:埋葬と認められない方法で死体を放棄すること ⇒ 作為のほか、作為義務があれば不作為も含む(判) ⑵ 殺人犯による死体遺棄 ・殺人犯が死体を殺害現場に放置 = 不作為による遺棄 ⇒ × 190の遺棄 ∵ 作為義務ない ・殺人犯が死体を山中へ運び放置 = 作為による遺棄 ⇒ 〇 190の遺棄 ④ 他罪との関係:殺人罪・傷害致死罪+本罪 = 併合罪 ∵ 保護法益・牽連関係なし
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1 内乱に関する罪 Bランク ① 内乱:国家の統治機構を国の内部から暴力により破壊すること ② 特徴:内乱の成功 → 国家の壊滅 = 処罰できない ⇒ 本来的に危険犯 ③ 保護法益:国家の存立 ④ 騒乱罪との区別 ・騒乱:社会の平穏を侵害 → 暴動を処罰 ・内乱:国家の存立を侵害 → 革命を処罰 § 内乱罪77:統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者(首謀者・参与者等・不和随行者) ① 主体:多数人 ⇒ 必要的共犯 ② 行為:暴動 = 多数人による集団的暴行・脅迫 + 一地方の平穏を害する程度(通) 暴行:最広義の暴行 ⇒ 不法な有形力の行使(対物も含む) 脅迫:広義の脅迫 ⇒ 対象の限定なし+反抗抑圧程度も不要 ③目的:統治の基本秩序を壊乱する目的が必要(なければ騒乱) ⇒ 目的犯 ④ 未遂:罰する77Ⅱ ⇒ 不和随行者は罰しない § 内乱予備・陰謀罪78:内乱の予備又は陰謀をした者 ①特徴:陰謀(=2人以上で内乱の実行を計画し合意する)でも成立 + 暴動前の自首=必要的免除 § 内乱幇助罪79:77・78の罪を幇助した者 ⇒ 条文一読 2 外患に関する罪 ①外患:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させ、又はそれを援助すること 保護法益:国家の存立 ② 条文:外患誘致81・外患援助82・外患誘致等の予備・陰謀罪88 ⇒ 条文一読 3 国交に関する罪 ①保護法益:外国の利益(多) ②条文:外国国章損壊罪92・私戦予備93・中立命令違反94 ⇒ 条文一読
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§ 公務執行妨害罪95Ⅰ:⭐️ Aランク 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行または脅迫を加えた者 ①保護法益:公務の円滑な執行⭐️書けるように ⑴公務:国または地方公共団体の事務 ⑵趣旨:公務員を特別に保護するものではない(判例) ∴ ×公務員の身体の安全・公務員の精神の自由 ②行為:公務員が職務を執行するに当たり、暴行または脅迫を加える ⑴公務員:国または地方公共団体の職員等7Ⅰ + みなし公務員 ⑵ みなし公務員:公務員ではないが職務の公共性から公務員としての扱いを受ける者 ⇒ 刑法上の公務員扱い (例)公証人・準起訴手続きの指定弁護士・弁護士会会長等 ⑶暴行又は脅迫 暴行:広義の暴行 = 公務員に向けられた不法な有形力の行使(判) 脅迫:広義の脅迫 = (対象を問わずに)人を畏怖させるに足る害悪の告知 ➢ 〇 公務員が押収してトラックに積込んだタバコを路上に投げ捨てた ➢ 〇 公務員が差押えた密造酒入りの瓶を破砕した ➢ 〇 執行官による強制執行の際にその補助者に対して暴行を加えた(執行官に同行した鍵屋に暴行→ ⇒ × 公務員がいない時に行った場合(通説)→公務員に向けられたとは言えない ⑷ 職務を執行するに当たり⭐️ a) 職務:ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべて(判例) ≒ 公務 ∵ 保護法益 ⇒ 権力的公務以外の公務は業務妨害罪の業務にも該当 ・業務妨害233・234の業務:権力的公務以外の公務も対象 ・公務執行妨害95:およそ公務を対象(権力的公務も含む) b) 執行するに当たり:個別的・具体的な職務を 執行中 + 執行と一体的関係にある範囲内の行為 〇: 国鉄運転士が業務交替の後、終業点呼を受けるために駅助役の所へ移動中に暴行を受けた (点呼の時点で仕事は終わった)(微妙な判例だが試験対策として結論を覚えればok) × :駅助役が職員の点呼を終え、事務引継をするために助役室に移動中に暴行を受けた ∵ 一体でない 〇:県議会委員長が委員会の休憩を宣言後、退出しようとした際に暴行を受けた(休憩=まだ仕事は終わっていない) ③職務の適法性⭐️:公務員が執行する職務が適法であること Q 適法性の要否 Aランク ⑴ 問題の所在: 本罪の職務は適法な職務に限定されるのか、違法な職務をも含むのか? ⑵ 判例・学説 ・反対説:適法性不要 理由)条文上要求なし + 公務保護の必要性 ・判例・通説:必要 → 職務の適法性は構成要件要素⭐️ (職務の適法性を欠くと公務執行妨害は成立しない) 理由)違法な職務は刑法上保護の必要なし ⑶あてはめ:違法な職務を執行している公務員への暴行は本罪に該当しない Q 適法性の要件 Aランク ⑴問題の所在:職務の適法性が認められるためには何が必要か ⑵判例・通説 a) 職務の執行が当該公務員の抽象的職務権限に属している (※普通に考えて公務員の仕事と言えるということ) b) 当該公務員が当該職務を行う具体的職務権限を有する c) 当該職務の執行が公務としての有効要件である法律上の手続・方式の重要部分を履践している ※「法律上の手続、方式の重要部分を履践」がポイント ➢ 警察官による入場料金の支払示談斡旋行為(抽象的職務権限なし) ➢ 警察官による現行犯逮捕(抽象的職務権限あり)→ 刑訴212の要件を満たさずに現行犯逮捕(具体的職務権限なし) ➢ 令状による逮捕(抽象的・具体的職務権限あり)→ 令状を呈示せずに被疑者を逮捕(手続なし) ➢ 刑訴210で緊急逮捕(抽象的・具体的職務権限あり) → 被疑事実の要旨を告げずに緊急逮捕(法律上の手続、方式の重要部分を履践なし) Q 適法性の判断基準 Aランク ⑴問題の所在:誰がどの時点で要件の有無を判断するか? ⑵ 判断の主体 ・主観説:当該公務員 (批判)全ての職務が適法になる ・折衷説:一般人 (批判)全ての職務が適法になる(一般人は刑事訴訟法の緊急逮捕の要件など知らないし、公務員が行なっていることを見れば適法と考える) + 一般人が曖昧 ・客観説(判例通説):裁判所 (理由)全ての職務が適法となりかねない ⑶ 判断時点 (例)窃盗の逮捕状により逮捕しようとして暴行を受けた → 窃盗の無罪が判明 ・純客観説:裁判時を基準 ※例では公務執行妨害は不成立 (批判)行為時に逮捕が適法でも裁判時に無実なら逮捕は違法となる ・行為時基準説(判例通説):行為時を基準 (理由)職務執行時に適法であれば保護に値する Q 適法性の錯誤 Aランク ⑴事例:警察官Aが令状に基づきBの逮捕を執行 → Bは違法な逮捕と誤信してAに暴行 ⑵問題の所在:客観的には適法 → 主観的には違法と誤信 → 故意・違法性の意識有りと言えるか? ⑶学説 ・法律の錯誤説(反対説):原則、故意を阻却しない (理由)公務を保護 (批判)職務の適法性は客観的構成要件要素 ※ 法律の錯誤:行為が法的に許されないことを知らないこと、または許されていると誤信すること ・事実の錯誤説(通説・自説):事実の錯誤 ⇒ 規範的構成要件要素 ∴ 素人的認識で故意あり (理由)適法性は客観的構成要件要素 ・二分説(有力説) 適法性を基礎づける事実 → 事実の錯誤 適法性の評価 → 法律の錯誤 ⇒ ≒ 誤想防衛(夜道で知り合いが肩に手を置いた。暴漢に襲われると思った→事実の錯誤 肩に手を置くのは違法な暴行だと思った→法律の錯誤) (理由)適法性の錯誤は2つに分類すべき ※ 事実の錯誤: 犯罪を行った者が認識した事実と実際に生じた事実が食い違うこと ⑷ 結論: Bを名宛人とした逮捕状を認識 → 適法な逮捕の素人的認識あり ∴ 故意あり → 本罪成立 ④法的性質:抽象的危険犯 → 実際に妨害・妨害の具体的危険の発生は不要 ⑤ 罪数及び他罪との関係 ⑴本罪の手段たる暴行・脅迫 ⇒ 本罪に吸収(暴行・脅迫は不成立) ⑵傷害・恐喝・強盗・殺人等が成立 ⇒ 本罪と観念的競合 観念的競合:1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合(刑法54条1項前段)をいう。観念的競合の処罰については、その最も重い刑により処断するとされる(同項。吸収主義)。 § 職務強要罪・辞職強要罪95Ⅱ:Bランク 公務員に処分をさせる・させない等のために暴行または脅迫をした者 ①特徴:目的犯→ 処分(=職務上なしうる行為)をさせる・させない・辞職させる ② 法的性質:抽象的危険犯 ③ 保護法益:公務の公正かつ円滑な執行 ④ 罪数及び他罪との関係:暴行罪・脅迫罪・強要罪は本罪に吸収 § 封印等破棄罪96:Bランク 公務員が施した封印・差押の表示を損壊その他の方法により無効にした者 ①保護法益:強制執行の適正かつ円滑な実施 ② 客体:封印・差押の表示に係る命令または処分の効力 ③行為:損壊その他の方法により命令または処分を無効にすること ⇒ 封印・差押の表示が行為時に存在しなくても成立 + 適法・有効な表示であることは必要 ➢ 〇 差押物件自体を搬出・売却 ➢ 〇 執行官に占有が移り立入禁止の表示札がある土地内に入って耕作 ➢ 〇 執行官に占有が移った家屋に入居 □ その他の強制執行の妨害に関する罪 ・96の2 ~ 96の6Ⅰ ⇒ 条文一読 § 談合罪96の6Ⅱ: Bランク 公正な価格を害しまたは不正な利益を得る目的で談合した者 ① 行為:談合=特定の者に落札させるため、他の者は一定の価格以下または以上に入札する旨の協定(判例) ② 保護法益:国又は国に準ずる団体が実施する競売・入札の公正(判例) ③ 法的性質:必要的共犯 + 目的犯 + 抽象的危険犯
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何ら犯罪行為を行っていないものの被疑者とされていたAが逮捕状に基づき逮捕しようとした警官Bに対し暴行を加えた事案 ーーーーーー Aの行為につき公務執行妨害罪95Ⅰが成立するか、いわゆる職務の適法性に関して問題となる。まず、同罪における公務員の職務が適法であることを要するかが問題となる。同罪の保護法益は公務の円滑な執行であるところ、違法な職務を刑法で保護する必要はない。よって、書かれざる構成要件要素として必要と解する。そして、その要件として、当該職務行為が、抽象的職務権限・具体的職務権限・法律上の手続・方式の重要部分を履践が必要と解する。さらに、上記要件を満たしているかを誰が・いつの時点にたって判断するかの判断基準も問題となる。この点、当該公務員を基準とすると常に適法となりかねず、裁判所が判断すべきと解する。また、職務執行時に適法であれば保護に値するといえるため行為時を基準として判断すべきと解する。もっとも、Aは違法な逮捕行為であると思っていたものと考えられる。そこで、故意が認められるか。いわゆる職務の適法性の錯誤の処理が問題となる。職務の適法性を客観的構成要件要素であると解する以上、その認識がなければ事実の錯誤として構成要件的故意が阻却されると解するべきである。但し、職務の適法性はいわゆる規範的構成要件要素である。故意の本質から素人的認識。本件では
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□ 逃走罪総説 ① 保護法益:国家の拘禁作用 ② 類型 ⑴処罰対象 逃走者を処罰:単純逃走97・加重逃走98 ⇒ 処罰対象の範囲限定 逃走者を援助した者を処罰:被拘禁者奪取99・逃走援助100・看守者等による101 ⇒ 処罰対象の範囲広範 ⑵ 逃走者の範囲:奪取99・援助100 ・看守者等による101 > 単純97 ・ 加重98 ※「逃走者」の範囲の微妙な違いが試験で聞かれる § 単純逃走罪97:裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走した ① 主体:裁判の執行により拘禁された既決または未決の者 ⑴ 裁判の執行 〇 勾留状の執行により拘禁された被疑者・被告人(=未決)・労役場に留置されている者 × 逮捕状の執行により拘束された被疑者・現行犯逮捕された者⭐️ ⑵拘禁された既決の者 〇 受刑者・刑事施設移送のため護送中の者・刑事施設外で作業に従事している者 × 少年院に収容されている者(少年院は刑事施設ではない)・刑事施設に収容前の者 ⑶ 拘禁された未決の者:〇 鑑定留置に付された者 ②行為:逃走 ⇒ 看守等の実力的支配を脱した時に既遂 ➢ 刑事施設内の居室から脱出したが、刑事施設内にいる場合は未遂 ③未遂:罰する102 § 加重逃走罪98:前条の者または勾引状の執行を受けた者が器具等の損壊・暴行・脅迫・通謀等をして逃走 ① 主体:勾引状の執行を受けた者 + 前条の主体 ⑵意義:広く身体の自由を拘束する令状の執行を受けた者 ⑶対象 〇 勾引された証人・逮捕状によって逮捕された被疑者⭐️ × 現行犯逮捕・緊急逮捕により逮捕された者←令状の執行ではないから ②行為 ⑴拘禁場または拘束のための器具の損壊:拘束のための施設(刑務所等)・手錠等・物理的損壊 ⑵暴行・脅迫:看守者又はその協力者限定 ⑶2人以上通謀:∵ 多数人の同時逃走により成功可能性が高まる ③未遂:罰する102 Q 着手時期 ⑴ 器具等の損壊:損壊を開始した時 ⑵暴行・脅迫:暴行・脅迫を開始した時 ⑶2人以上通謀:2人以上の者が現実に逃走に着手した時 → ⭐️×通謀したときや通謀後1人だけ逃走したときではない ※罪数なども問題になるが学説が錯綜しており判例もないので試験には出ないのでスルーでok § 被拘禁者奪取罪99:法令により拘禁された者を奪取した者 ①主体:限定なし ※97・98は主体が限定。また、客体は観念できない ②客体:法令により拘禁された者 〇 97・98の主体となる者・現行犯逮捕された者・緊急逮捕された者・少年院に収容されている者 × 不法に拘束された者 ③ 行為:奪取=被拘禁者を自己または第三者の実力支配下に移すこと ⇒ 被拘禁者を解放させた場合(=実力支配下にない) → 逃走援助 § 逃走援助罪100:法令により拘禁された者を逃走させる目的で逃走を容易にすべき行為をした者 ①意義:逃走罪の教唆行為・幇助行為を独立に処罰 ②主体:限定なし ③客体:法令により拘禁された者 ⇒ 逃走罪(97、98)と逃走者の範囲が異なる → 逃走罪は成立しないが逃走援助は成立する場合もありうる(現行犯逮捕された者である場合) ④行為:逃走させる目的で、逃走を容易にする行為(第1項)または暴行・脅迫(第2項) ⇒ 被拘禁者の逃走の有無は不問 → 容易にする行為または暴行・脅迫の終了で既遂 § 看守者等による逃走援助罪101:法令により拘禁された者を看守者及び護送者が逃走させた ① 主体:看守者及び護送者 ⇒ 真正身分犯⭐️ ∵ 逃走させる行為は看守者等のみ構成要件化 ②客体:法令により拘禁された者 ③行為:逃走させる ⇒ 不作為も含む ・ 逃走することで既遂
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□ 総説 ①概要:犯人を蔵匿したり、証拠を隠滅して捜査を妨害する罪 ②保護法益:国の刑事司法作用 § 犯人蔵匿等罪103:罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿または隠避させた者 ① 客体:罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者 ⑴ 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者=侮辱罪(拘留または科料)以外の罪 Q 罪を犯した者 ⑴問題の所在:無実の者が捜査の対象になり、かくまった場合→罪を犯した者に該当しない? ⑵ 判例・学説 ・通説(反対説) (罪を犯した者の意義)=真犯人⇒ 無実の者の蔵匿は該当しない (理由)文言 (批判)被疑者が対象外 ∴ 立法趣旨未達 ・判例(自説) (罪を犯した者の意義)=捜査の対象となっている者を含む⇒ 無実の者の蔵匿も該当 (理由) 保護法益 ※ 無実か否かは裁判で決めるべき ⑵拘禁中に逃走した者:法令により拘禁されている間に逃走した者 ➢ 他者の奪取により拘禁状態を脱した者(他者の支配下にある)も含まれる ② 行為:蔵匿・隠避 ⑴蔵匿:官憲の発見・拘束を免れるような場所を提供すること (例)隠れ家の提供 ⭐️場所の提供 ⑵隠避:蔵匿以外の官憲の発見・拘束を免れさせる一切の行為(例)逃亡資金や情報の提供 ⭐️場所の提供以外 ③ 故意犯:本罪の客体であること + 客体を蔵匿・隠避させること の故意が必要 Q 罰金以上の刑に当たる罪の故意はいかなる場合に認められるか ⑴問題の所在:犯罪の認識はあったが罰金以上の刑に当たる罪の認識まではなかった ⑵学説・判例 ・学説(少数説、反対説):正確な罰金以上の刑に当たる罪の認識が必要 (批判)判断が困難 ・判例(自説):漠然と重大犯罪を犯したという認識で足りる (理由)判断が困難 ④主体:犯人以外の者 ⇒ 自己による蔵匿・隠避は不可罰 ∵ 期待可能性の欠如 + 条文 Q 犯人自身による教唆 ⑴ 事例:犯人が第三者に自己を蔵匿・隠避するように教唆 → 第三者が蔵匿・隠避 ⑵ 問題の所在:犯人に教唆犯としての本罪が成立するか ⑶学説・判例 ・否定説(反対説-有力説):不成立 (理由)正犯として期待可能性なし → 軽い教唆犯はなおさらなし ・肯定説(判例・自説):成立 (理由)防御権の濫用 + 他人を巻き込む点で期待可能性ないといえない § 証拠隠滅等罪104:他人の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造、または偽造・変造の証拠を使用した者 ① 客体:「他人」の「刑事事件」の証拠に限定 ∵ 期待可能性の欠如 ⇒ × 自己の刑事事件・民事事件・行政事件 ② 行為:証拠の隠滅・偽造・変造及び偽造・変造された証拠の使用 ⇒⭐️犯人の利益の有無は不問 + 他人を陥れる目的でも成立 Q 参考人の虚偽供述が偽造にあたるか? ⑴ 判例 原則:あたらない ∵ 刑法の建前として、虚偽供述は偽証罪169に限って処罰 例外:令状目的で捜査官と相談し虚偽の供述内容を創作し供述調書の形式にする行為はあたる ※供述調書という物理的な証拠を作っている点が異なる ③主体:犯人以外の者 に限定 ≒ 犯人蔵匿等罪 Q 教唆犯の場合の処理 ・犯人が第三者に教唆した場合:教唆犯成立(判) ∵ 他人を巻き込む点で期待可能性 ・第三者が犯人に教唆した場合:教唆犯不成立 ∵ 混合惹起説 → 正犯不成立 § 親族間の特例105:前二条の罪について、犯人等の親族が犯したときは刑を免除できる ①趣旨:親族間の情愛から期待可能性が低い → 任意的免除 ※犯人・逃走者自身は期待可能性がない→不可罰 ② 要件:犯人または逃走者の親族がこれらの者の利益のために103 または104を実行 ③ 効果:任意的免除 ④共犯の場合 ⅰ 親族が第三者を教唆した場合 103または104の教唆者:親族=教唆犯成立(∵期待可能性あり) 103または104の正犯者:第三者=105不適用 ⅱ第三者が親族を教唆 第三者=教唆犯成立(∵制限従属性説) 親族=105適用 ※親族に犯が罪成立している ⅲ犯人が親族を教唆 犯人=教唆犯成立(∵期待可能性あり) ⇒ 105準用⭐️(∵親族関係)(教唆犯は成立するが免除できる) 親族=105適用 ⅳ親族が犯人を教唆 親族=教唆犯不成立(∵混合惹起説) 犯人=犯罪不成立 § 証人等威迫罪105の2 Bランク:刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有する者に威迫等の行為をした者 ① 客体:自己若しくは他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族 (例)被害者・証人・参考人等 ※親族も対象 ②行為:面会を強請(きょうせい)・強談(ごうだん)・威迫 ➢ 文書の送付により不安の念を生じさせても威迫に該当(=直接相対する必要なし)
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□ 総説 ① 概要:法律により宣誓した者が虚偽の陳述・鑑定・通訳・翻訳をした ②保護法益:国の審判作用の適正 ③特徴:真正身分犯 ・ ⭐️刑事事件に限定されない(証拠隠滅等と区別) § 偽証罪169:法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき ①主体:法律により宣誓した証人 ⑴ 法律により宣誓:刑訴154等 ・ 民訴201等 → 法律により宣誓のない者は不成立 ⑵ 証人:証人適格のある者→ 当事者は不成立 ②行為:虚偽の陳述 Q 虚偽の意義 ⑴問題の所在:学説の対立 → 説によりあてはめ・結論が異なる ⑵ 判例・学説 ・客観説(反対説):客観的事実に反すること (理由)保護法益を害しない (批判)虚偽の証言が事実だった場合→構成要件不成立/ 見間違い→構成要件該当 ※客観的事実に反していても、客観的事実と認識していれば故意阻却(客観的構成要件には該当) ・主観説(判例):自己の記憶に反すること (理由)保護法益を害する → 記憶に合致しているかの判断は裁判所が行うので客観的事実に反していることも許容 ⑶あてはめ 写真 ③共犯関係 Q 被告人が自己の刑事事件について他人に偽証を教唆した場合 ⑴ 問題の所在:被告人は本罪の主体ではなく教唆犯 ⑵判例:成立肯定 ⑶理由:他人を巻き込む点で期待可能性があり § 自白による刑の減免170:偽証罪を犯した者が確定前等に自白したときは減軽または免除できる § 虚偽鑑定等罪171:法律により宣誓した鑑定人・通訳人・翻訳人が虚偽の鑑定・通訳・翻訳をしたとき
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§ 虚偽告訴等罪172:人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の告訴等をした者 = 誣告罪(ぶこくざい) ① 保護法益:(一次的)刑事司法作用及び懲戒作用 ・ (二次的)個人の私生活の平穏 ② 行為:虚偽の告訴・告発その他の申告 Q 虚偽の意義 ⑴ 判例:客観的真実に反すること⭐️ ⑵ 理由:保護法益 Q 同意申告の可罰性 ⑴事例:AがBから虚偽の告訴をされるということを同意 → Bが告訴 ⑵判例:本罪成立 ⑶理由:保護法益 ⑴告訴・告発:告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し犯人の処罰を求めること ⑵その他の申告:刑事・懲戒の処分に結びつきうる事実の申告 ③目的:刑事または懲戒の処分を受けさせる → 目的犯 ・ 〇 未必的(判例)(=犯罪的結果の発生の可能性を認識認容していること) § 自白による刑の減免173:確定前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは任意的減免
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§ 公務員職権濫用罪193:公務員が職権を濫用して、義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した ①主体:公務員 → 真正身分犯 ②行為:職権の濫用 ⑴職権: 当該公務員の有する一般的職務権限 ➢ 明文の根拠規定は不要 → 実質的に権限があればよい ➢ 法律上の強制力は不要 → 事実上受任を求め得る権限であればよい ⑴濫用:職権の行使に仮託して実質的・具体的に違法・不当な行為をすること ➢ 〇 裁判官が司法研究と偽って過去の受刑者に関する身分帳簿の交付を求めて応じさせた ➢ 〇 裁判官が被告人に対し交際を求める意図で電話をかけて喫茶店に呼び出し同席させた ➢ × 警察官が職務として共産党幹部の情報を得るため幹部宅の電話を盗聴 ∵ 警官でないと装う行動→「職権の行使に仮託」にあたらない ③結果:義務のないことを行わせ または権利の行使を妨害した が必要 → 結果犯 + 未遂犯規定なし § 特別公務員職権濫用罪194: Bランク(出ない) 裁判・検察・警察の職務を行う者等が職権を濫用して逮捕または監禁したとき ①主体:裁判官・検察官・司法警察職員 + 職務上の補助者 → 事実上の補助者を含まない(判例) ②行為:逮捕または監禁(≒逮捕監禁罪の逮捕・監禁) → 不真正不作為犯 § 特別公務員暴行陵虐罪195:194と101の主体が被疑者・被告人等に暴行・凌辱・加虐の行為をした ① 行為 ⑴暴行:≒暴行罪の暴行 → 不真正身分犯 ⑵凌辱・加虐:暴行以外の方法で精神的・肉体的苦痛を与える一切の行為 → 真正身分犯 (例)わいせつ行為、侮辱、食事をさせない、トイレに行かせない § 特別公務員職権濫用等致死傷罪196:前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者 ①概要:194・195の結果的加重犯
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□ 総説 ① 賄賂の罪:公務員がその職務に関し特定の者に便宜を図るため金品等(賄賂)を収受 → 汚職の一種 ② 保護法益 Q 賄賂の罪の保護法益 ⑴問題の所在:賄賂の罪の理解 → ⭐️論文では結論のみ ⑵判例・学説 ・不可買収説:公務の不可買収性 (批判)公務が賄賂により左右されたことは不問 ・純粋性説:職務の公正 (批判)正当な職務に関して賄賂を収受しても成立 (例:警察官が犯人から金を貰ったが普通に逮捕した。この場合でも収賄が成立する) ・信頼保護説(判例通説):職務の公正とこれに対する社会一般の信頼 ⭐️信頼保護説の結論を書けるように。 ③賄賂:公務員の職務に対する対価としての不正な報酬 ⇒ 人の需要・欲望を満たす利益であれば該当しうる 〇 動産・不動産・債務の肩代わり・饗応接待・みなし公務員が賄賂を収受 〇 異性間の情交・未公開株(値上がり確実)を公開価格で取得・売却困難な土地を時価で売却(時価であれば問題ないとも思えるが売却困難であることがポイント) × 公務員でない者が職務の対価に報酬を収受 ・ 公務員が職務に対する対価としてでなく収受 Q 社交儀礼と賄賂 ⑴ 事例:公務員に対し、中元・歳暮・手土産・お祝い等の社交儀礼として贈与がなされた ⑵問題の所在:賄賂に該当するかの判断基準 ⑶ 判例:職務との対価関係の有無 ⑷あてはめ:慣習上社交儀礼として是認される範囲内 → 賄賂否定 ∵ 保護法益を害さない ➢ 生徒の父母が担任の公立学校教師に5000円小切手を贈与 賄賂否定 ∵ 対価関係なし Q 政治献金と賄賂 ⑴ 問題の所在:政治献金と賄賂は類似 ⑵判例:趣旨による 献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待 ⇒ 賄賂否定 職務の行使に関して献金者の具体的な利益を期待 ⇒ 賄賂肯定 ④職務関連性:「その職務に関し」賄賂が収受・要求・約束されたこと ⇒ 収賄罪の成立要件 ・「その職務」の例(例であって要件ではない) ∵ 保護法益 (例1) 具体的職務権限に属する行為 ➢ 税務署職員が自己の担当区域内の者から、税務調査に配慮することの見返りとして賄賂を収受 ➢ 総理大臣が、依頼を受けて内閣の明示の意思に反しない指示を大臣に行い、賄賂を収受 (例2) 一般的職務権限に属する行為 ➢ 税務署職員が自己の担当区域外の者から、税務調査に配慮することの見返りとして賄賂を収受 (例3) 職務と密接な関連を有する行為 ➢ 国立芸術大学教授が学生に特定のバイオリン購入を勧告・斡旋する行為 ➢ 北海道開発庁長官が下部組織の北海道開発局港湾部長に対し、入札で特定業者の便宜を図る様に指示 ⑤ 類型 ⑴ 基本類型-単純収賄罪197Ⅰ:公務員がその職務に関し、賄賂を収受・要求・約束 ⑵ 加重類型 ・受託収賄罪197Ⅱ:請託を受けた ・加重収賄罪197の3Ⅰ・Ⅱ:不正な行為 ⑶修正類型 ・事後収賄罪197の3Ⅲ :現在公務員 → 過去公務員=公務員であった者 + 受託・不正 ・事前収賄罪197Ⅱ:現在公務員 → 将来公務員=公務員になろうとする者 + 受託 ・斡旋収賄罪197の4:その職務に関し → 斡旋に関し + 受託・不正 (例)交通事故の加害者が国会議員に揉み消しを依頼し、国会議員が警察署長に揉み消しを依頼 ・第三者供賄罪197の2:公務員が賄賂を収受等 → 第三者に賄賂を供与させる + 受託 Q 転職前の職務 ⑴ 事例:税務署長Aが国立大学教授に転職 → 税務署長時代の職務に関する賄賂を収受 ⇒ 一般的職務権限を異にする地位に転職 → 前職に関し賄賂を収受(転職前後で共に公務員) ⑵問題の所在:「その職務」の意義 ・現在の職務 ⇒ 事後収賄罪 ・(過去現在全ての)自己の職務⇒通常の収賄罪 ⑶ 判例・通説:自己の職務 ∴ 通常の収賄罪 ⑷理由:事後収賄罪の主体は「公務員であった者」であるが「現在公務員」を「公務員であった者」と考えることはできない + 過去の職務に関しても保護法益は害される Q 将来の職務 ⑴ 事例:現在公務員である者が将来担当するかもしれない職務に関して賄賂を収受 ⑵ 問題の所在:将来の職務が「その職務」に該当するか ⑶判例:一般的職務権限に属する事項であれば該当する → 通常の収賄罪 ⑷理由:保護法益を害する ➢ 〇 土木事業の契約権限を有する公務員が、土木業者から将来の発注の請託を受け賄賂を収受 ➢ 〇 現職市長が再選後の職務について請託を受け賄賂を収受 ⑥ 特徴:真正身分犯・必要的共犯(対向犯) § 単純収賄罪197Ⅰ前:公務員が、その職務に関し、賄賂を収受または要求若しくは約束した ①主体:公務員 ⇒ 真正身分犯 ②行為:収受または要求もしくは約束 ⇒ 左記のうち一つの行為で成立 ➢ 2つ以上の行為が行われた → 包括一罪∵保護法益1つを侵害 ③特徴 ⑴故意犯:公務員の職務に対する対価であることの認識が必要 ⑵必要的共犯(対向犯)⇒ 実際には一方のみ成立が多い(例:賄賂の申し込みをしたが相手の公務員が拒否した場合) ・収賄罪:賄賂を収受・要求・約束 ・贈賄罪:賄賂を供与・申込・約束 ④他罪との関係 Q 公務員が恐喝的手段を用いて相手方に賄賂を要求・収受した場合(例:警察官が容疑者に捕まりたくなかったら100万円よこせ) ⑴問題の所在 当該公務員:本罪(単純収賄罪)の成否 + 恐喝罪との関係 相手方 :贈賄罪の成否 ⑵ 判例 ・本罪の成否:職務執行の意思があれば成立なければ不成立 ∵ 職務に対する対価があるため ・恐喝罪との関係:恐喝罪成立・本罪と観念的競合 ∵ 保護法益が異なる ※ 観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすこと。2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となる § 受託収賄罪197Ⅰ後:197Ⅰ前の場合において、請託を受けたとき ①概要:197Ⅰ前 → 請託を受けた(=受託)場合 ② 行為:請託を受けた ⑴請託:公務員に対して一定の職務行為を行うことを依頼 ⇒ 正当な行為も該当 ⑵受けた:公務員の承諾が必要⇒ 黙示でも該当 ③趣旨:対価関係が明白 → 社会一般の信頼がより強く侵害 → 強く罰する § 事前収賄罪197Ⅱ:公務員になろうとする者が請託を受けて賄賂を収受・要求・約束し公務員となる ①要件:公務員になろうとする者 → 受託+収受等 → その後、公務員となる ※公務員になろうとしたがならなかった場合は不成立 ②事例:選挙の候補者 § 第三者供賄罪197の2:公務員が請託を受けて、第三者に賄賂を供与させまたはその要求・約束をしたとき ①概要:公務員以外の第三者に賄賂を供与させる場合(公務員自体は賄賂を受け取っていない) ②要件:公務員が職務に関し請託を受ける → 賄賂を第三者に供与させる又はその要求・約束 ➢ 〇 県会議員が謝礼として受ける金品を自分の後援会に寄付する様に指示し寄付させた ➢ 〇 町長がコネ採用の謝礼として得る金品を善意の町長の友人に供与させた ※ 公務員が奥さんの口座に振り込んだが奥さんが事情を何も知らなかった場合は実質的に公務員は受け取ったといえ、単純収賄の場合も。また、逆に奥さんの関与大きい場合は共犯になりうる。これらは学説が錯綜しており、試験にも出ないのでひとまず無視してよい § 加重収賄罪197の3Ⅰ・Ⅱ:前2条の罪を犯しよって不正な行為Ⅰ・不正な行為をし賄賂を収受等Ⅱ ①概要:不正な職務行為が行われた場合 ・Ⅰ :収受・要求・約束 → 不正な職務行為 ・Ⅱ:不正な職務行為 → 収受・要求・約束 ② 不正な職務行為:不正な行為をし、または相当な行為をしなかった ➢ 〇 警察官が押収すべき証拠品を押収しない様に請託された → 賄賂を収受 § 事後収賄罪197の3Ⅲ:公務員であった者が、その在職中に請託を受けて不正な職務行為 ① 概要:在職中に不正な職務行為 → 公務員でなくなった後に賄賂を収受・要求・約束した場合 ② 要件:受託 + 在職中の不正な職務行為 + 退職後に収受等 ⇒ 成立範囲が狭い ∵ 公務員でない § 斡旋収賄罪197の4:請託を受け他の公務員に不正な行為をさせるように斡旋 ① 概要:職務行為以外の行為(=斡旋行為)の場合 ②要件:請託 + 不正な職務行為の斡旋 ⑴ 斡旋は公務員としての立場でなされることが必要(判例)⭐️ ⑵ 不正な職務行為の斡旋が必要 → 実際の不正な職務行為は不要 ➢ 国会議員が建設会社からの依頼で公正取引委員会に告発を見送るように口利きをして報酬を得た § 贈賄罪198:賄賂を供与し,またはその申込若しくは約束をした者 ①概要:賄賂の供与・申込・約束をした場合 ②要件:賄賂の供与・申込・約束 ③主体:制限なし(公務員に限定しない) ④行為:公務員が賄賂を拒否した場合でも本罪成立(判例) Q 公務員が恐喝的手段を用いて相手方に賄賂を要求・収受した場合 ①問題の所在:相手方に贈賄罪が成立するか ②判例:本罪成立 ③理由:瑕疵はあるものの、自己の意思により贈賄(恐喝→犯行抑圧程度のレベルではない) § 没収及び追徴197の5:犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は没収 ・ できないときは追徴 ①概要:賄賂についての必要用的没収・追徴 ②趣旨:収賄者に不正な利益を保持させない ⇒ 原則:任意的没収・追徴19・19の2 → 本条は19・19の2の特則