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第二編 犯罪
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    犯罪の成立要件概説 A +

    1 犯罪の成立要件 ① 犯罪: A+ 構成要件に該当する違法・有責な行為 犯罪の成立 : 全て記述 【1 構成要件該当性 ⇒ 該当する= 2.へ】 ・構成要件: 社会通念に基づく違法有責行為類型  ⇒ 刑法各論の条文  客観的構成要件要素:   (1)実行行為(2)構成要件的結果 (3) 因果関係  主観的構成要件要素:   構成要件的故意・構成要件的過失・目的犯の目的・傾向犯の傾向 【2違法性阻却事由 ⇒ ない=3へ  ∵ 構成要件該当性有り→違法性あるのが前提】 ・違法性:社会的相当性を逸脱した法益侵害またはその危険性の惹起 ⇒ 傷害罪における外科手術 (正当行為)・正当防衛 【3.責任ある=犯罪成立】 ・責任行為者に対する非難可能性 →心神喪失・刑事未成年 【4.処罰阻却事由 処罰条件】 ⇒窃盗罪における親族相盗例・事前収賄罪における公務員 論文では1〜4まで全て記述する

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    第二章 構成要件総論: 1 構成要件の機能/構成要件要素概説

    1 構成要件の機能 B ① 自由保障機能: 罪刑法定主義的機能   ∵該当しなければ不可罰 ②違法性・有責性推定機能 2 構成要件要素概説 ① 構成要件: 違法有責行為類型 ・客観的構成要件要素: (1)実行行為 ⇨ (2)構成要件的結果⇨(3)因果関係 ・主観的構成要件要素:  構成要件的故意 構成要件的過失 目的犯の目的 傾向犯の傾向 客観的構成要件要素A+: 外見的に認識されうる。⭐️論文は (1)~(3)の順で記載 (1) 実行行為: 特定の構成要件に該当する法益侵害の現実的危険性を有する行為 (例) 殺人罪-人を殺す (抽象的)/銃で撃つ等(具体的) (2) 構成要件的結果: 構成要件要素となっている結果 (例) 殺人罪 -人の死亡 (3) 因果関係: 実行行為と構成要件的結果における原因と結果の関係 (例) 殺人罪 - 銃で撃つ (原因)心臓に命中して死亡 (結果) ③主観的構成要件要素A+: 外見的に認識できない行為者の内面。⭐️ 論文では必要なものを記載 (1) 構成要件的故意: 客観的構成要件要素の「認識・認容」 (例) 殺人罪-銃で撃つ⇨心臓に命中して死亡を理解しそれでいいと思っている (2) 構成要件的過失: 予見可能性を前提とした結果回避義務違反の「行為」 (通説) (例) スピード違反走行中誤って人をひき殺した   スピード違反走行=過失 ・主観的超過要素: 構成要件的故意を超える主観的要素。 構成要件的に加えてプラスで必要となるもの(例:公文書偽造罪の「行使の目的」) (3) 目的犯における目的: 目的犯成立に必要な一定の行為の目的 目的犯: 一定の行為の目的が構成要件要素とされている犯罪 (例) 公文書偽造罪構成要件的故意+行使の目的が主観的 Tb (=構成要件) 成立に必要 (4) 傾向犯における傾向: 傾向犯成立に必要な行為者の特定の内心の傾向 (≒心情) 傾向犯行為者の特定の内心の傾向を構成要件要素とする犯罪 (例) 強制猥褻罪(※不同意わいせつ罪)-構成要件的故意+猥褻の心情が主観的 Tb成立に必要

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    第二章 構成要件総論: 3犯罪の分類 4構成要件の確定

    3 犯罪の分類 ① Tb 的結果による分類: Tb 的結果の要否 結果犯=要 :一定の結果の発生をTb 要素とする犯罪 (例)殺人 挙動犯=不要:一定の身体的動静のみを Tb 要素とする犯罪 (例)住居侵入・不退去 ・結果的加重犯: 故意に基づく犯罪(基本犯)を行い、その故意を超過する重い結果が生じた。 ⇨基本犯より重い刑。「よって」が多い。 (例)傷害致死-殺人と故意の有無で区別 ②法益侵害による分類 : 法益侵害の要否 侵害犯=要 :保護法益を現実に侵害したことが Tb 要素となる犯罪 (例) 殺人 危険犯=不要 :保護法益侵害の危険を生じさせたことが Tb 要素となる犯罪 (例)内乱 ⇒ 通常、侵害犯=結果犯。   例外も。 108-Tb 的結果 = 焼損/保護法益=多数の生命等の安全 ③危険犯の分類: 現実の危険の発生の要否 ・具体的危険犯=要: 危険が現実に発生したことを Tb 要素とする犯罪 (例110 建造物等以外放火) ・抽象的危険犯=不要 危険が現実に発生したことを Tb 要素としない犯罪例( 108現住建造物等放火) ④法益侵害の継続の態様による分類 ・即成犯: 結果発生により成立 既遂・ 終了 + 行為者の関与なくして侵害状態が継続 (例) 殺人 ・状態犯 :結果発生により成立 既遂・ 終了 + 行為者の行為によって侵害状態が継続 (例) 窃盗 ・継続犯 結果発生により成立・既遂+犯罪行為継続期間中は侵害状態が継続 (例)監禁 ※即成犯:と状態犯 の区別:新たな行為が予定されているか  ⇨即成犯:なし=別罪 /状態犯:あり=別罪不可 ※継継続犯: 既遂後共犯可・終了から時効 ⑤ 主観的要件による分類 ・故意犯 故意を Tb 要素とする犯罪 (例) 殺人 ・過失犯: 過失 Tb 要素とする犯罪(例)過失致死 ⇒原則故意犯。 一定の重大犯罪のみ過失犯 4 構成要件の確定 ・構成要件: 基本的構成要件 (主観的 Tb 要素客観的 Tb 要素 ) + 修正された構成要件 ①基本的構成要件: 刑法各本条において個別的に規定されている構成要件 ⇨文言を基本。 明示されない場合に他の条文や解釈を加え確定  (例)背任 247:その行為によって=因果関係(解釈)、 の事実の認識・認容 = Tb 的故意(381) ②修正された構成要件: 基本的 Tbに修正を加えることによって確定される Tb :∵単独・既遂が通常 ⇒共犯 60以下・未遂犯 43 を基本的Tbに修正を加えて確定 - 条文を明示 199+60=殺人共犯

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    第三章 実行行為 1 不真性不作為犯

    実行行為: 特定の構成要件に該当する、法益侵害の現実的危険性を有する行為 A 例) 殺人罪:人を殺す (抽象的)銃で撃つ等 (具体的) ⭐️実行行為で問題になるのは不真正不作為犯・間接正犯 1 不真正不作為犯 ① 作為による分類 ・作為犯 : 積極的動作によって犯罪を実現する場合 (例)殺人罪 ・不作為犯: 積極的動作をしないことによって犯罪を実現する場合 (例) 不退去罪  ・真正不作為犯 : Tbが不作為の形式で規定          +不作為で実現                              (例) 不退去罪  ・不真正不作為犯 :Tb が作為の形式          + 不作為で実現           (例)溺れた子を親が見殺し Q罪刑法定主義違反?B  反対説:類推解釈にあたる ※罪刑法定主義→類推解釈は許されない   通説: 日常用語例として不作為も含むと解する     ことができる ⇨可 ⭐️Q不真正不作為犯の実行行為性 A ・結論: 実行行為:肯定。    但し、 自由保障から作為との構成要件的同価値性が必要 ・構成要件的同価値性の要件 A:     法的な作為義務 +作為の可能性・容易性 ① 法的な作為義務( 道徳的な作為義務ではない) (1)法令 夫婦間の扶助(民 752)、親権者の子に対する監護義務 (民 820) (2)契約・事務管理 : ベビーシッター、 負傷者を病院に運ぶ (3) 慣習条理: 誤振込(誰かが自分の口座に誤って振り込み)⇒不告知は詐欺の実行行為(判例)、 (4)先行行為 :自己の行為によって結果発生の危険が発生 (例)過失によって燃焼⇨自分で消せ(判例) ⇨複合的か/ 行為者に排他的に依存しているか否か 等総合的に判断 (例:親が溺れやすい海に子を連れて行き見殺し ⇨先行行為ありのため作為義務がより強く認められる) ②作為の可能性・容易性:  (例) 親が泳げない ⇒ 実行行為性否定 ⇒ ⭐️①と②は相関的に判断 ※択一:不作為による放火⇨既発の火力を利用する意思(延焼させようとする意思)は必ずしも必要でない(判例) ※択一:不真正不作為犯の因果関係が認められるには期待されていた作為があれば結果が生じなかったことが「合理的な疑いを超える程度に確実」である必要あり(判例)

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    第三章 実行行為 2 間接正犯

    2 間接正犯 ①間接正犯: 他人を道具として利用し実行行為を行う場合 (例)看護師に薬と偽り毒の注射を指示 (1) 実行行為に該当  ∵ 道具を利用し犯罪=単なる実行行為。   他人を道具とした場合も妥当=道具理論 (2) 利用者=実行させた人が間接正犯=行為者   被利用者は故意なし ⇨ 犯罪不成立 ②間接正犯の成立要件:  実行行為から考える 。  以下の場合、定義に該当 (1) 客観面: 行為者が他人を道具の様に一方的に支配・利用 ⇨被利用者は道具にすぎない (2) 主観面: 特定の犯罪を自己の犯罪として実現する意思  ⇒教唆犯・幇助犯でない □間接正犯の類型 ①被利用者が意思能力を欠く   (例)幼児に薬と偽り毒の混入を指示=殺人 ②被利用者が意思を抑圧 : (例)義父が虐待した少女 12歳に窃盗を命令=窃盗(判例) ③被利用者が Tb的故意を欠く :  (例) 郵便配達人に毒入の酒の配達を指示=殺人 Q 被利用者が別罪の Tb 的故意あり/ 当該犯罪の Tb 的故意なし ⇨道具性あり=成立   (例) 屏風を撃て (器物損壊の故意あり、殺人の故意無し) Q 被利用者に過失犯が成立/当該犯罪の Tb 的故意なし ⇨道具性あり=成立  (例)看護師に薬と偽り毒の注射を指示 ④ 被利用者が目的犯の目的を欠く   (例) 印刷業者に教育目的と偽り偽札の印刷を指示=通貨偽造 ⑤ 被利用者の行為が違法性を欠く:  警察官を欺いてAを留置させた= 監禁 (判例) ⑥ ⭐️被利用者の行為を利用: 追死すると偽って被害者を自殺させた=殺人 (判)

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    第四章 因果関係

    1 因果關係 ①(刑法の) 因果関係: 実行行為と構成要件的結果との間の原因・結果の関係 ②欠缺の効果: 未遂 (≒実行行為+構成要件的結果不発生) 内容: 条件関係 + 相当因果関係 (=行為の危険性の結果への現実化) ⇨ 因果関係肯定 2 条件関係⭐️論文で必ず書くが一言書くだけ ① 条件関係: 実行行為と Tb的結果の間の 「あれなければこれなし」 という関係 (1) あれ=実行行為: 欠缺=犯罪不成立 (例)×殺害目的で毒薬を準備。 被害者が勘違いして飲んだ (2) これ=現に発生した具体的な結果 例)AがBを誤射⇨B瀕死⇨苦痛∴Aが射殺 : ⇨条件関係肯定 ∵ B の死亡した時点での結果はAの最後の射殺 (3) 付加の禁止: × 存在しない事実を仮定的に付加 道路で寝たAをBが轢殺Bがいなくても轢殺 ⇨条件関係肯定 ∵B以外の轢殺は存在しない Q ⭐️不作為犯の条件関係: あれあればこれなし + 立証の困難性 ⇒ あれあれば十中八九これなし(判例) 3 相当因果関係⭐️ ①問題の所在: 条件関係だけでの因果関係肯定は不当 (例) 銃撃⇨かすり傷⇨病院で毒殺 ⇒なんらかの法的な限定が必要= どんな絞りをどんな理由にもとづいて課すべきか ②相当因果関係: 当該行為から当該結果が生じることが社会通念上相当といえる場合のみ肯定 (従通) ⭐️社会通念上相当がポイント ∵因果関係の有無=構成要件該当性の問題⇨構成要件=違法有責行為を「社会通念に基づき」類型化 ③相当性の判断:ありうる = 曖昧(従前) ⇨⭐️行為の危険性が結果として現実化したといえるか否か ⭐️Q 相当性判断の基礎事情: 判断の基礎となる事情に何を取り込めるか ※因果関係の論点ではこれが出る (例) 驚かしたら死亡 ∵ 心臓病  ⇨条件関係は肯定⇨相当因果関係があるか  ⇨心臓病を相当性判断の基礎事情に取り込むか  ⇨取り込んだら相当因果関係は肯定される (1)学説(3つ覚える): 事例から考える。   「していた」は「しえた」の部分集合 ①主観説 ( 少数説) 行為時の事情:  行為者が認識していた事情及び認識しえた事情 行為後の事情:  行為者が予見していた事情及び予見しえた事情 批判:  処罰範囲が狭すぎ ②客観説(反対説) 行為時の事情:  すべての客観的事情 行為後の事情:  一般人が予見しえた事情  批判:  処罰範囲が広すぎ  ③折衷説(通説) 行為時の事情:  一般人が認識しえた事情及び行為者が現に認識していた事情 行為後の事情: 一般人が予見しえた事情及び行為者が現に予見していた事情 (2) 折衷説: ∵構成要件⇨一般人を基礎∵社会通念   有責⇨行為者を基礎 4 因果関係に関する判例 ① 判例評価: 個別的判断のみ ⇨行為が結果発生に一定程度寄与=行為の危険性が結果として現実化 (1)学説との違い : 基礎事情を限定しない。   学説: 基礎事情を一定の事情に限定 (2) 論文対策: 判例ベース=あてはめを充実させやすい。ただし、行為時の特殊事情のみが問題の場合は学説で書く。 (3) あてはめ : 介在事情を経由して結果発生に寄与  (例)実行行為(銃撃)後の放火で死亡⇨介在事情があるが実行行為が結果に大きく寄与⇨因果関係肯定 ⭐️米兵ひき逃げ事件(因果関係否定) 概要: 運転者A(米兵)がひき逃げ→被害者が屋根に跳ね上げ→運転続行→同乗者B が路上に転落させる(死因の頭部打撲がAとBどちらの行為か不明) 判例:Bの転落させる行為は経験則上予想できない      死因が形成されたわけではない(無罪推定) 結論: 因果関係否定 (唯一の因果関係否定判例)← ⭐️大阪南港事件 概要: 暴行を加え被害者が脳出血 + 意識不明⇨港に放置→誰かがさらに殴打→死期が早まり脳出血で死亡 判例:暴行により死因が形成された。 死期が早まっても因果関係肯定 ⭐️トランク事件 概要: 被害者を自動車のトランクに押し込む→運転中、後方の車の脇見運転で衝突→死亡 判例: 直接の死因は第三者の過失。 追突はありうる+ トランクは危険。 結論: 後部から他の自動車に衝突される介在事情を経由して結果を発生させる行為 因果関係肯定→逮捕監禁致死罪成立

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    第五章 構成要件的故意

    1 故意概説 ① 故意: 罪を犯す意思 38① ⇒故意犯の原則 + 例外的に過失犯  罪の重さ: 故意犯> 過失犯 ② 分類: 認識内容の違いによる 「構成要件的故意 : 構成要件の段階で要求される故意=客観的構成要件要素の認識・認容 責任故意: 責任の段階で要求される故意  注)故意責任 :およそ故意を有する場合の強い道義的非難可能性 ③⭐️故意の本質=故意責任の本質(論文で書く): 規範に直面し反対動機の形成が可能であったにもかかわらずあえて行為に及んだ事に対する強い道義的非難 2 構成要件的故意 ① 構成要件的故意の要素:  客観的構成要件要素の認識+認容 (多数説) (1) 識別基準:  認容の有無が故意と過失のメルクマール。 意欲は不要 (2) 結果的加重犯 : 重い結果についての認識・認容を要しない Q 因果関係の認識・認容の要否 (反対説) 不要 (通説) 必要 ∵因果関係は客観的 Tb 要素。   ただし、 詳細の認識認容は不可能。大筋の認識で可 Q 規範的構成要件要素の認識(猥褻物が典型) (1)規範的構成要件要素: 裁判官が当時の社会常識による規範的価値判断を行って決定する部分を含む構成要件要素 (例) フランス語のエロ小説頒布⇨猥褻物頒布罪 175⇨猥褻は時代や社会によって意味が異なる (2) 問題の所在: 物体を認識 = 意味の認識ではない ⇨意味の認識が必要 + 程度が問題 (3)故意の本質: 素人的認識で足りる∵反対動機を形成することが可能 (例) 猥褻写真集出版→一般的に見て猥褻→⭐️素人的認識あり⇨構成要件的故意あり (4) 猥褻に該当しないと判断していた場合:  = 規範的構成要件要素の錯誤。 素人的認識ありなら肯定(一般的に見て猥褻なら肯定) ※175①の猥褻文書に該当しないと信じていても、客観的に猥褻なら法律の錯誤で犯意を阻却しない(判例)

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    構成要件的故意②

    Q 不真正不作為犯における作為義務の錯誤 B (例) 子を見殺しにした父が作為義務なしと思った (1)作為義務の体系: (反対説)作為義務は違法要素。⇨知らない人を見殺しにしても構成要件に該当してしまう (通説) 構成要件の違法性推定機能を維持すべく、作為義務は 構成要件要素 (2) 結論: 作為義務 =構成要件的故意の対象 認識・認容必要 + 規範的構成要件要素: 素人的認識で可 (溺れている子供を親は助けなければならない)

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    構成要件的故意③:構成要件的故意の種類 :認識 ・認容の内容

    ② 構成要件的故意の種類 :認識 ・認容の内容  ⇨ 全て Tb的故意あり ・確定的故意 :犯罪の実現を確定的に認識・認容    (例) 群衆に爆弾 ・不確定的故意犯罪の実現を不確定的に認識認容  ⇨発生自体は未必的故意以外は確定   ・概括的故意:客体の個数や客体が不確定     例: 群衆に爆弾   ・択一的故意: どの客体に発生するか不確定     例:料理に毒を混入   ・未必の故意: 結果の発生自体が不確定        =犯罪実現の可能性の認識 認容     (例) 死ぬかも+それでもよい   ⇒認識があっても認容がなければ過失    /認容があれば故意あり  (例) 死ぬかも、 それでよい=認識+認容あり   死ぬかも、それはダメだ=認識あり・認容なし 過失 Q ⭐️ヘルマンの概括的故意 A (例) ⭐️海外で白い粉 (覚せい剤)の国内への運搬を依頼された (1) 問題の所在: 白い粉 =違法薬物と認識+ 覚せい剤の認識なし⇨故意なしだと法益保護が図れない (2) 結論: 種の認識=覚せい剤 なくても、 類の認識=身体に有害で違法な薬物類であるとの認識で肯定 故意の本質+類の認識は種の認識を含む。 覚せい剤を排除する積極的な認識があれば否定 ※人「種」の集まりが人「類」

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    事実の錯誤 A+: 概説

    □ 事実の錯誤概説 ① 事実の錯誤: 認識していた犯罪事実と現実に発生した犯罪事実が一致しない場合 ②分類 具体的事実の錯誤: 認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実が「同一構成要件内で」一致しない場合 抽象的事実の錯誤: 認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実が「異なる構成要件にまたがって」一致しない場合 (例) 具錯-Aを撃ったら実はBだった   抽錯-Aを撃ったら実は人形だった ーーーーー 客体の錯誤: 行為の客体を誤り、 本来意図していた客体と別の客体を攻撃した場合≒具 方法の錯誤: 行為の客体は正しいが、 本来意図していた客体と別の客体に結果が発生 ≒具 (例)客錯-B をAだと思って撃った 方錯-AをAだと思って撃ったら弾がBに当たった

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    事実の錯誤:具体的事実の錯誤

    具体的事実の錯誤 Q具体的事実の錯誤の場合に構成要件的故意が認められるのか ①具体的符合説(反対説): 認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実が具体的に一致すればTb的故意が認められる ・⭐️方法の錯誤⇨故意無し (Aを殺すつもりがあってもBを殺す気は無し) ・客体の錯誤⇨故意あり (目の前のその人を殺すという点で具体的に一致) ②法定的符合説(判例通説): ⑴犯罪事実を構成要件に書き直して判断 ⑵根拠: 故意の本質⇨規範は構成要件のかたちで与えられている ・方法の錯誤⇨故意あり (Aを殺すもBを殺すもどちらも「人を殺す」) ・客体の錯誤⇨故意あり(Aを殺すもBを殺すもどちらも「人を殺す」)  Q 成立する故意犯の個数​ (例)Aを殺そうと銃撃→AとBに命中し、A死亡・B負傷 ①問題の所在:一人の人への一つの故意 → 2人の人への故意=複数の故意犯が成立するといえるか ②一故意犯説(反対説:短答で出る):最も重い結果に対し1個の故意犯成立。それ以外の結果は故意なし≒過失は可 ⑴根拠​:処罰範囲の不当な拡大防止 ⑵事例の結論​:A-殺人・B-過失傷害 ③数故意犯説(判例通説):発生した犯罪事実の数だけ故意犯が成立 ⑴根拠​:法定的符合説 → 故意の内容をTbの範囲で抽象化 ⇨故意の個数は観念できない ⑵②⑴への批判​:観念的競合として科刑上一罪になるため数故意犯説でも処罰範囲は不当に拡大しない ⑶事例の結論:A-殺人・B-殺人未遂 ​

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    事実の錯誤:具体的事実の錯誤②/因果関係の錯誤

    ・具体的事実の錯誤まとめ ​(例)XがA殺害の故意のもと銃撃+通行人Bも巻き込まれた ⑴殺人既遂・殺人未遂は故意犯。実行行為に着手後、結果発生は既遂・結果不発生は未遂 ⑵傷害結果は殺人との関係では結果不発生+殺人の故意あれば殺人未遂 ⑶故意なければ、過失犯の成否を検討。過失犯でもなければ不可罰 ⑷過失犯の未遂は不可罰 Q 因果関係の錯誤​ (例)認識-崖から海に落とし溺死→結果-崖途中の岩と衝突 ①故意の対象​:因果関係もTb的故意の対象  ∵ 因果関係も客観的構成要件要素 ②因果関係の錯誤​:具体的錯誤の一種 ∴ 法定的符合説 → ⭐️刑法上の(=相当)因果関係があるなら肯定 ③あてはめ 崖から海に落とす⇨溺れて死ぬ気とも岩に衝突して死ぬことも社会通念上相当⇨故意が認められる

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    事実の錯誤:抽象的事実の錯誤

    □ 抽象的事実の錯誤 ①問題の所在:38② 主観=認識<客観=発生 → ×客観 ⇒ 主観が成立?主観が客観 よりも重い場合は? 事例: 人を撃つ、 壺にあたる ②抽象的符合説(反対説):  38②の範囲内で故意犯が成立 (1) 根拠: およそ犯罪の意思で結果が生じた + 主観主義刑法理論 (2) 事例の結論 : 殺人未遂 + 器物損壊 ③法定的符合說: 異なる構成要件の場合、 原則として構成要件的故意は認められない。 (1)根拠: 故意の本質→主観と客観が一致する場合のみ規範に直面=一致がなければ規範に直面なし (2) 事例の結論: 殺人未遂のみ ④ 実質的符合説(判例通説): ③+ 例外的に主観と客観の 構成要件が重なり合う場合、重なり合いの限度で 構成要件的故意肯定 (1) 根拠: 故意の本質→重なり合いの限度で規範に直面 (2) 判断 : 構成要件 は違法有責行為類型であることから保護法益や行為態様の共通性等を基礎に、実質的な重なり合いがあるか否かで判断 ⇒ 大小関係がある≒重なり合い肯定 (3) 判例 ・殺人罪>同意殺人罪 ・強盗罪 > 窃盗罪 ・窃盗罪>占有離脱物横領罪 ・⭐️覚せい剤所持>麻薬所持罪 ・強盗罪> 恐喝罪 ・⭐️虚偽公文書作成罪> 公文書偽造罪 ・⭐️死体遺棄罪と保護責任者遺棄罪⭐️-否定 死体⇔人間。 宗教的感情⇔被遺棄者の生命身体 ⑤抽象的事実の錯誤の類型:実質的符号説の処理 ・類型:主観>客観   結論:×主観  ∵構成要件該当性無し+客観の重なり合う限度  具体例:主観=窃盗+客観=占離横領⇨占離横領 ・類型:主観<客観  結論:∵38②+主観の重なり合う限度  具体例:客観=窃盗+主観=占離横領⇨占離横領 ・類型:主観=客観(法定刑が同じ)  結論:◯客観  具体例:主観=覚せい剤輸入+客観=麻薬輸入⇨麻薬輸入(客観の方が成立する)       

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    事実の錯誤:ウェーバーの概括的故意

    Q ウェーバーの概括的故意 ⭐️ウェーバー→ウェイブ→波→浜で殴打→気絶したが死んだと思われ埋められて窒息 (例)浜で殺そうと強打→気絶で死亡と誤信→埋める→窒息で死亡 ①問題の所在: 第1行為-○認識・×結果→殺人未遂? + 第2行為- ×認識・◯結果→過失致死? ②⭐️行為の個数: (反対説)時間的場所的接着∴ 1個 (通説)故意の内容が大きく異なる 2個 ⇨原則どおり、2個の行為の客観的・主観的構成要件該当性を検討 ③⭐️因果関係の有無: 判例(条件関係+行為の危険性が結果として現実化したか) →⭐️殺害行為に及んだものが発覚をおそれて遺棄することは十分にありうる ⇒第1行為と窒息死との因果関係はある →実行行為=強打と構成要件的結果=死亡との因果関係はある ④⭐️故意の有無= 因果関係の錯誤。 刑法上の因果関係の有無で判断 主観=強打により死亡→◯刑法上の因果関係 + 客観 =埋めて窒息死→ ◯刑法上の因果関係 →肯定 ※現実に生じた第1行為と第2行為による死との間の因果経過が刑法上の因果関係(相当因果関係とするのが通説)と評価されれば、殺人罪の(客観的)構成要件に該当していることになる。そして、行為者の誤想した、第1行為とそれによる死との間の因果経過もまた刑法上の因果関係と認められれば、殺人罪の故意が認められる ⑤ 第2行為: 抽象的事実の錯誤→実質的符合説→殺人及び死体遺棄不成立

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    事実の錯誤:早すぎた構成要件の実現

    Q 早すぎた構成要件の実現 (例)行為者の認識:スタンガンで失神+人目のない海で溺死→スタンガンで感電死 ① 問題の所在:  第1行為- ×認識 結果→過失致死? + 第2行為 認識・ ×結果→殺人不成立? ⇒ 第2行為には殺人は成立しない。  第一行為は1ただの前振り?  構成要件的故意⇨認識ない ②実行行為: 実行の着手はいつ⇨ 第1行為が第2行為と密接な行為と言える場合、 第1行為の時点 (1) 第1行為が第2行為を行う上で、 必要不可欠か否か (2)第1行為の成功後、第2行為の遂行上障害となる特殊事情があるか否か (3) 第1行為と第2行為の間に、時間的場所的近接性があるか否か ©③構成要件的故意: 第1行為と第2行為が密接な行為 .. 第1行為の時点で肯定 ④ 因果関係の錯誤: 認識と結果の因果経過不一致 → 刑法上の因果関係の一致が必要 (判例)クロロホルムで失神後、 海に転落→失神時に死亡: 同上。 2kmの時点でも時間的場所的近接性あり

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    第六章 構成要件的過失

    1 過失 ①過失の位置: 原則、故意が必要。 例外的に故意は不要で過失が必要。 ②過失:注意義務違反 ③注意義務:予見可能性を前提とした、予見義務及び結果回避義務 ④構成と内容: ・旧過失論(反対説) 構成:心理状態(心理状態への非難=過失) 内容:責任要素(構成要件要素ではない)+予見可能性を前提とした予見義務 ・新過失論(自説) 構成:行為 內容: 構成要件要素かつ責任要素 + 予見可能性を前提とした結果回避義務 (1) 根拠: 社会的に有用な行為についての過失犯の成立を否定すべき  (例) 危険な手術⇨旧過失論では、手術でも死亡してしまったら構成要件に該当する ⇒予見できることを前提に、回避するためのに必要かつ適切な行為を行ったか否かで判断 (2) ⭐️結論: 過失 =注意義務違反の行為=予見可能性を前提とした結果回避義務違反の行為 (新過失論)

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    過失の成立に関する諸問題

    2 過失の成立に関する諸問題 ①注意義務の内容: ≒過失。 予見可能性を前提とした結果回避義務違反の行為 (新過失論) Q 予見可能性の基準者 ・構成要件的過失 : 構成要件   ⇒一般人を基準=客觀的注意義務 |・責任過失: 責任  ⇒ 行為者個人を基準=主觀的注意義務 ②過失犯の成立要件 (1) 構成要件 ・構成要件的過失=客觀的注意義務  ⇨⭐️実行行為と同じ扱い ・構成要件的結果 ・因果関係 (2) 違法性 (3) 責任 ・責任能力  ・責任過失=主観的注意義務  ⇨故意犯では、責任故意が問題 ・期待可能性 通常、主観的構成要件要素は問題にならない 過失犯 + 構成要件的過失を充足 ③予見可能性の対象: 構成要件的結果及び因果関係 ④予見可能性の程度 Q構成要件的結果の予見可能性の程度 B+ ①問題の所在: 危険運転→電柱に衝突→後部荷台に忍び込んだAが死亡 ×予見=×過失となるか ②結論: 単なる不安感ではなく、 構成要件的結果についての予見可能性が必要 (1)根拠: 予見可能性は結果回避義務を導くもの 結果回避へと動機づける程度の予見可能性が必要 (2) あてはめ : ・後部座席に忍び込んだ人が死ぬ⇨予見可能性なし ・人が死ぬ⇨予見可能性あり⇨過失あり   ∵スピードを出せば人が死ぬ (判) Q 因果関係の予見可能性の程度 ①問題の所在 (判例):  指導を無視し園児に井戸水→新型大腸菌で死亡⇒ ×予見=×過失となるか ②結論: 因果経過の基本的部分についての予見可能性が必要 (1)根拠: 同上 (2) あてはめ: ✖️「新型」大腸菌で死ぬ ○大腸菌で死ぬ ⇒過失あり

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    結果回避義務と予見可能性の関係 B+

    結果回避義務と予見可能性の関係 (1) 許された危険: 予見可能性が認められても、 結果回避義務が否定される場合 ⇨社会的有用性・必要性・予想される危険の可能性等を総合考慮 (例) 危険な手術 (2) 信頼の原則: 適切な行動にでると信頼するのが相当な場合に結果回避義務を否定 ⇒ 信頼の存在・信頼の相当性が必要 (例)赤信号 (3) 監督過失: 直接行為者が過失を犯さないように監督する注意義務に違反する過失 監督者の過失が間接的: 監督過失直接行為者の過失 ⇨結果 判例: 二重の予見可能性が必要 + 十分な指示があれば信頼の原則可 (例) 現場監督 (4) 管理過失 : 監督者による物的・人的管理の不備それ自体を過失とする場合 監督者の過失は直接的 + 監督過失も問題 (例) ホテル火災

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    第7章 違法性A+

    1 違法性 ①形式的違法性: 法令に違反すること ≒基本 + その実質(=実質的違法性)が問題 ②学説 (反対説)結果無価値 刑法の機能:法益保護のみ 無価値性 :結果 違法性の実質:法益侵害又はその危険 違法性阻却の一般的根拠:  法益権衡=大法益のため小法益を犠牲にするのは可 主観的違法要素:否定的 (通説)行為無価値 刑法の機能:法益保護+社会倫理秩序維持 無価値性 :行為+結果 違法性の実質:社会的相当性を逸脱した法益侵害又はその危険 違法性阻却の一般的根拠:  社会的相当性 主観的違法要素:肯定的 ③ 違法性阻却事由: 違法性の推定を覆し、 行為を適法なものとすべき特別の事由 (1) 構成要件の違法性推定機能: 構成要件に該当すると、 違法性があると推定:違法有責行為類型 ⇒ 違法性阻却事由があると、最初から犯罪成立しない (2)違法性阻却事由の種類: 正当行為・正当防衛・緊急避難 (3)違法性阻却事由の意義と一般的根拠

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    正当行為 B

    2 正当行為 ①正当行為 35: 形式上犯罪となるが、 社会生活上実質的な違法性を欠き罪とならない行為 ・直接適用 :法令行為・正当業務行為 ・準用 (通説) :被害者の承諾・推定的承諾・治療行為・義務の衝突その他 ②法令行為 :法令が直接に許容する行為 (例)警察による逮捕・ 私人による現行犯逮捕 ③正当業務行為: 社会生活上正当な業務として行われる行為 (1) (正当業務行為の) 業務: 社会生活上反復継続して行われる性格の事務 (例) ボクシング ④ 被害者の承諾: 被害者が自己の法益を放棄し、 法益侵害に承諾を与える (1) 効果 ・構成要件該当性を阻却⇨犯罪不成立 例)住居侵入 130、 窃盗 235、13歳以上への⭐️強姦 改正前 177 ・構成要件を変更 ⇨法定刑が軽減 例)殺人⇨同意殺人 ・成否影響なし⇨情状で考慮される。 例) 13歳未満への強姦⭐️改正前 ・違法性阻却→ 犯罪不成立 例) 傷害 204 (2) 違法性阻却の根拠 結果無価値: 被害者が法益を放棄・侵害を承諾       ∵行為の無価値性が否定 行為無価値: 社会的相当性をもちうる      ⇨動機 手段 程度等を考慮       =承諾は判断の一資料 (3) 被害者の承諾がある場合の違法性阻却の要件 ・個人的法益(共通):×国家的法益・社会的法益          ∵無意味 ・承諾が有効(共通) : 承諾能力+真意が必要。 動機に錯誤があると承諾無効 (判例) ・承諾が行為前に存在 (共通) : 行為後に承諾しても遡及はしない ・行為者が承諾を認識 (自説):行為者の主観を考慮承諾の認識なければ社会的相当性なし ・承諾が外部的に表示 (自説) : 表示なくして認識なし 行為態様の相当性(自説): 動機 手段等を考慮。保険金騙取目的で傷害→違法性阻却不可 (判例) (4) 保護法益による犯罪の分類    (例) 殺人、傷害、 窃盗、 名誉棄損 ・個人的法益に対する罪: 個人に帰属する法益 ・社会的法益に対する罪 : 社会に帰属する法益           (例) 放火、文書偽造 ・国家的法益に対する罪: 国家に帰属する法益     (例)公務執行妨害、 贈収賄、 内乱 ⑤推定的承諾: 承諾はないが、事情を知れば当然承諾したと推定される場合     (例) 火災で家具搬出  (1) 効果: 違法性を阻却 ⇒ 構成要件には該当(違法性阻却をチェックしている時点で構成要件には該当) + 事後の不承諾でも違法性阻却 ∵行為時の判断 (通説) (2) 要件: 客観的かつ合理的に推定 + 個人的法益 + 行為態様が社会的に相当 ⑥ 治療行為: 構成要件に該当⇒ 以下の要件充足で違法性を阻却 (1) 要件 治療目的 + 医学上一般に承認された手段・方法 + 被害者の承諾又は推定的承諾 ⑦義務の衝突 : ある義務を履行するには他の義務を怠る以外に方法がない場合 (1) 要件 効果 履行した義務と怠った義務が同等 違法性を阻却 その他 (1) 労働争議行為: 脅迫等の Tbに該当違法性を阻却 (例) 子2人が溺れる (2) 安楽死 : 極度の苦痛、回復の見込なし、 代替手段なし、 同意等の要件で違法性を阻却されうる ( ) 積極的安楽死 : 死なせる∴ Q 消極的安楽死: 延命しない 尊厳死 尊厳を保つため延命しない

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    正当防衛 A

    3 正当防衛 ① 緊急行為: 侵害に対する予防・回復を国家機関が行う暇がない場合に私人が行う行為 (1) 効果: 違法性を阻却 (2) 例 :正当防衛、緊急避難、自救行為 ②正当防衛 36①: 急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するためやむを得ずにした行為 ⭐️試験ではある行為が正当防衛にあたるか否かが問われる。 (1) 趣旨: 法の自己保全として社会的相当性が認められる ※「法に自己保全」がキーワード □成立要件 ①急迫: 現に存在または間近に迫っている     ⇒ × 過去・将来の侵害 (1)侵害の終了時期: 総合考慮 ⇨凶器を奪う=終了が主。 さらに攻撃の姿勢ありで急迫成立 (判例) (2) 防衛設備を事前準備: 塀の上に高圧電流   ⇨○∵(一見将来の侵害だが)効果をもつのが侵害が急迫した時点 (3)事前予測: ◯(例:襲撃に備えて木刀準備)(事前に予測しただけでは急迫性は失われない(判例)⇨積極的加害意思があれば× (判例) ②不正: 違法 ⇨正対不正の関係 (緊急避難=正対正) Q 対物防衛: (例) 動物による攻撃に対する防衛 (1)問題の所在: 動物による攻撃は不正たりうるか →正当防衛が緊急避難か (2) 前提:飼われている動物∵ 器物損壊 + 飼い主に故意過失なし (故意過失あれば飼い主の不正⇨対物防衛は問題にならない) (3)結論: 否定=緊急避難∵不正とは違法のことであり、 法規範は人間にのみ適応(自説) ③侵害: 法益侵害またはその危険を生じさせる行為 ④ 自己又は他人の権利: 〇他人・社会的法益・国家的法益 ∵権利 = 法益 ⑤ 防衛するため⭐️ Q ⭐️防衛の意思の要否: (例) AがBを銃撃→偶然 BはCを銃撃しようとしていた→AはCを防衛? (1)問題の所在:Aは防衛の意思がないが、 結果的に防衛。正当防衛に防衛の意思が必要? (2)論証 :行為無価値→行為者の主観は社会的相当性の有無に影響 + 文言 361①「ため」 必要 Q ⭐️防衛の意思の内容 (1) 結論: 急迫不正の侵害を意識しつつこれを避けようとする単純な心理状態⇨明確な防衛の意思なし可 (2) 根拠: 防衛行為は反射的本能的に行われることが多く、 この場合に否定すべきでない (3) 判例: ×もっぱら攻撃の意思・ 積極的加害意思 ※防衛の意思と攻撃の意思が併存している場合は正当防衛と評価することができる(判例) ⑥ やむを得ずにした: 防衛行為の相当性 (1) 内容: ⭐️法益権衡不適用⇨行為の相当性を意味し、 結果の相当性を意味しない (判例) Aが指をねじる→Bが突き飛ばした=行為相当→Aが物に当たり重症 (≠結果相当) →正当防衛肯定 (2) 判断基準: 態様 ・武器の対等性等を総合考慮⇨ 防衛行為の相当性のみ×=過剰防衛 (判例) 若者Aが殴打の動作+脅迫し接近→Bが包丁で脅迫→正当防衛肯定 ∵若いので有利 ⑦行為: 侵害者に向けた反撃行為 緊急避難 or 正当防衛 Q行為が第三者にむけられた場合: 緊急避難(正対正) Q 侵害者に対する反撃行為の結果が第三者に生じた場合: 緊急避難∵ 第三者は何ら不正の侵害をなしていない Q第三者の物を利用して反撃→第三者の物が破壊 ⇨緊急避難 ∵同上 Q⭐️侵害者が第三者の物を利用して侵害→第三者の物が破壊:⇨正当防衛∵ 不正な侵害行為の一部 □自招侵害B+  自招侵害: 防衛者自らが招いた不正の侵害 Q 自招侵害への反撃に対し正当防衛が成立するか  (例) 侮辱した相手が攻撃する (1) 結論: 原則、社会的相当性に欠ける⇨否定。     例外、予想以上に重大な法益を侵害する行為肯定 (2) 判例: AがBを殴打→A逃走→Bが追跡後Aを殴打→Aが警棒で反撃⇨36①否定 ∵⭐️社会的相当性 □⭐️過剰防衛 36 ② A ① 過剰防衛:急迫不正の侵害に対し、 防衛の意思で、防衛の程度を超える反撃行為を行った場合 (1) 正当防衛の要件のうち、 防衛行為の相当性以外の要件を全て満たした場合に成立 (2)犯罪成立後の問題(違法性の阻却はされない) ≒⭐️処罰条件等と同レベル(論文で書くなら責任の後) ② 効果 任意的減免=情状により減軽又は免除 36  ※減軽≒刑を半分にする  ※減軽、免除いずれもされない場合もある Q 根拠: 責任減少説=恐怖・興奮等により多少行き過ぎても行為者を強く非難できない (通説) ※「強く」がポイント ③類型 (1) 質的過剰: 必要以上に強い反撃行為      (例) 素手の侵害→銃撃 (2) 量的過剰: 当初は相当、侵害終了後にも同様の反撃を継続      (例)行動不能後にも殴打継続 Q 量的過剰の処理 ・「全体として1個の行為 ⇒ 過剰防衛 ・侵害終了後に行為を分断⇒ 第1行為=正当防衛、 第2行為=犯罪成立∵ 急迫不正の侵害なし 判例:防衛の意思が継続、×専ら攻撃の意思・被害者の侵害終了を認識⇨ 態様・程度を総合 備考) 国家的法益を防衛するための正当防衛は成立し得る(判例)

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    緊急避難

    4 緊急避難 ① 緊急避難 37①: 現在の危難を避けるためやむを得ずにした法益権衡を満たす行為 ⇨正対正の関係にある (正当防衛は正対不正)   (例) 通行人を押し倒して逃げた 法益権衡: 避難の意思にもとづく行為によって生じた害が、避けようとした害の程度よりも小さいことまたは避けようとした害と同程度であること ②成立要件 (1) 現在=急迫=現に存在または間近に迫っている (2) 危難:法益侵害またはその侵害の危険のある「状態」 (不正は不要) ⇒ 現在の危難⊃急迫不正の侵害  ○動物の行為・◯自然現象 (3)避けるため:= 避難の意思。 現在の危難を意識しつつこれを避けようとする単純な心理状態 (4)避難行為の相当性 ・やむを得ずにした=補充の原則。 他に方法がない ・生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった=法益権衡の原則。 結果の相当性必要。 同価値は可 参考)正当防衛:防衛行為の相当性(結果の相当性は不要) Q 法的性質 (効果) : 緊急避難がなにを阻却? (1)反対説:責任阻却 ∵期待可能性に欠ける (2)通説:違法性阻却 ∵他人の法益を守るための緊急回避等 → 期待可能性に欠けるとはいえない ③業務上特別の義務のある者 37②:37①は適用しない (例)警察官、消防士、自衛官 ⇨警官が犯人に殴られそうになり通行人を突き飛ばすのは× ④ 緊急避難の関連論点 自招危難: 避難行為者が自ら招いた危難の場合 ・結論: 原則、社会的相当性に欠ける⇨否定 ・例外、予想以上に重大な危難の場合⇨肯定しうる Q 過剰避難: 避難行為の相当性の要件がその程度を超え、他の要件は満たしている場合 ・程度を超えた場合 : 補充の原則または法益権衡の原則に反した場合。 犯罪成立後の問題(処罰条件と同レベル) ・効果: 任意的減免 37①但書: 恐怖・興奮等により多少行き過ぎても行為者を強く非難できない

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    超法規的違法性阻却事由 B

    5 超法規的違法性阻却事由 ① 自救行為: 権利を侵害された者が自力でその権利を回復すること  ⇒× 急迫不正の侵害・現在の危難 (例) 時計が盗まれた⇨偶然、その時計を盗んだ人を見かけた⇨取り返した Q 自救行為は許されるか:  実力行使の横行⇨原則否定  例外: 侵害+緊急性+自救の意思+自救行為の相当性 (補充の原則・法益権衡の原則) 充足で阻却 ② 可罰的違法性の理論 Tb に該当しても処罰に値しない軽微な行為は違法性を阻却 (例) 落ちてた1円拾った 占有離脱物横領罪だが違法性軽微∴∴違法性阻却

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    第八章 責任:総説/責任能力

    1 責任総論 ①責任主義: 行為者に責任が存在する場合にのみ犯罪が成立 ⇒ 責任なければ刑罰なし ・主観的責任: 行為者に責任能力及び故意または過失 ⇔客観的責任 :客観的結果を惹起 ・客観的責任: 行為者自身が犯罪を犯した場合   ⇔ 団体責任 :所属する団体の一員の場合 ②責任: =⭐️行為者に対する非難可能性 ③責任の内容  ・責任能力  ・責任故意または責任過失  ・期待可能性 ④責任の判断 :  行為者を基準⇨非類型的 (↔︎ 構成要件=類型的)         主観的(↔︎違法性=客観的) 2 責任能力 ①責任能力: 行為の違法性を弁識し、「かつ」、それに従って自己の行為を制御する能力 (例) 重度の酩酊 ・(事理)弁識能力: 行為が違法かどうかを判断できる能力 ・(行動) 制御能力: 上記弁識に従い、自己の行動をコントロールする能力 (1)程度による分類  責任無能力:完全に欠如している場合   ⇒ 心神喪失者 39 ① 刑事未成年者41  限定責任能力 : 程度が著しく低い場合  ⇒ 心神耗弱者39 ② (2) 同時存在の原則: 責任能力は実行行為の時に存在しなければならない ②心神喪失と心神耗弱 心神喪失 : 弁識能力または制御能力が完全に欠如している状態⇨不可罰 心神耗弱: 弁識能力または制御能力が「著しく」減退している状態⇨「必要的」減軽 心神喪失または心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所の判断に委ねられている ③刑事未成年者:14歳未満⇨一律に責任無能力者∴不可罰 ∵年少者の可塑性による政策的判断 ※ 14歳未満かどうかは犯罪時を基準に判断 ⭐️いよいよ責任

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    責任能力:原因において自由な行為 A

    Q 原因において自由な行為 ① 問題の所在: 重度の酩酊状態で殺害→犯人が自分で自分を重度の酩酊状態にした。 ⇨39 適用は国民感情・法益保護で疑問 ②原因において自由な行為の法理: 責任能力欠如⇨責任能力ある状態における行為によって自ら招いた場合は有責 (1)原因行為: 責任無能力等の状態を招く原因となった行為 (例) 飲酒 (2) 結果行為: 責任無能力等の状態でなされた違法行為(例) 刀で切る ③理論的根拠 ▪️間接正犯類似説(反対説・旧通説) ・原自行為:責任無能力状態の自分自身を道具 ・実行行為:原因行為 ・限定責任能力:適用 ・同時存在の原則:実行行為と責任能力の同時存在 ・批判:飲酒で未遂(実行行為が早すぎる)、結果行為の状態が心神耗弱にとどまる場合、「道具」とはいえないため、原因において自由な行為の法理を適用できず、39条2項により刑が必要的に減軽される。心神喪失になれば完全な責任を問えるのに、心神耗弱では刑の必要的に減軽されるというのでは不均衡 ▪️同時存在修正説(通説) ・原自行為:責任は行為者の最終的な意思決定にある→結果行為が責任能力ある状態での意思決定の実現過程 ・実行行為:⭐️結果行為 ・限定責任能力:意思決定の実現過程といえれば適用肯定(減刑にはならない) ・同時存在の原則:実行行為またはそれと一定の関係にある原因行為と責任能力の同時存在 ④意思決定の実現過程の要件 (故意犯) (1)原因行為と結果行為及び Tb 的結果との間の因果関係 (2)原因行為と結果行為にかけての故意の連続 故意の連続のまとめ 写真⇨事実の錯誤とパラレル Q二重の故意の要否 : 構成要件的 + 責任能力欠如に陥る事についての故意 間接正犯類似説⇨ 原因行為が実行行為⇨実行行為は Tb 的故意の対象⇨必要 同時存在修正説: 結果行為が自由な意思決定に基づき→ 完全な責任非難が可能⇨不要 ⑤過失犯の場合: 原因行為 ≒結果回避義務違反⇨過失犯成立≒原自行為は無関係 例)酒を飲んで車を運転して人を轢いた

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    責任故意 A

    3責任故意 ① 責任故意: 積極的に法規範に違反した人格態度 = 責任段階で必要となる故意 a違法性の意識:当該行為が違法であることを知っていること b違法性に関する事実の認識 : 違法性を基礎づける事実が備わっていると認識すること 例)誤想防衛責任⇨否定 □ 違法性の意識の要否 Q違法性の意識が責任故意の要件となるか a不要説  内容:法の不知は許さず、 成否に無関係  根拠:国民主権    批判) 責任主義(責任あるときだけ犯罪成立) b厳格故意説  内容:違法性の意識は責任故意の要件  根拠:責任主義    批判) 確信犯を故意犯で処罰できない      常習犯⇨違法性の意識薄い。にも関わらず重い罰になっているのは矛盾 c制限故意説 (自説)  内容:違法性の意識は責任故意の要件ではないが、「違法性の意識の可能性」は責任故意の要件  根拠:故意の本質→規範に無関心な人格態度と いう点で同様の非難が可能+ 違法性の意識の可能性すらない場合には非難できない Q 法律の錯誤の処理 法律の錯誤=違法性の錯誤: 違法性の意識を欠いた場合⇨(自) では違法性の意識の可能性 ① 法律の不知 ⇒ 肯定(=違法性の意識の可能性あり) ② あてはめの錯誤  責任故意肯定:   公務員の個人的意見 (警察官が認容(判例) 、     法学者や弁護士の意見  責任故意否定:   確立していると考えられる判例、   所管官庁の公式の見解 Q 法律の錯誤と構成要件該当事実の認識の錯誤の区別 ・違法性の意識に欠ける場合 = 法律の錯誤  ⇨犯罪成立 ∵責任故意が阻却されない ・客観的構成要件該当事実の認識に欠ける場合 →犯罪不成立 ∵構成要件的故意が阻却 ⭐️区別の基準: 故意の本質⇨ 一般人ならば違法性を意識しうる程度の事実認識があれば法律の錯誤 むささび・もま事件とたぬき・むじな事件 ・むささび :捕獲禁止のむささび=もま     ⇨同一と知らずに捕獲⇨故意あり ・たぬき : 捕獲禁止のたぬき = むじな     ⇨同一と知らずに捕獲⇨故意なし ∵一般人はたぬきの他にむじながいると思っていた ⇨上記認識なし □ 違法性に関する事実の認識 ① 違法性阻却事由の錯誤 : 違法性阻却事由が存在しないのにあると誤信して行為を行った場合 •誤想防衛:正当防衛の客観的要件欠如 → あると誤信して反撃行為⇒防衛の意思,防衛行為の相当性はあり •誤想避難 :緊急避難の客観的要件欠如 → あると誤信して避難行為⇨避難の意思避難行為の相当性 はあり ② 違法性の意識との区別 (例)夜道で急に肩に触れた→暴漢と勘違いして殴った ・違法性阻却事由の錯誤 : 事実に誤り 「肩に触れた=攻撃してきた」 ・法律の錯誤: 事実に誤信はない・法律解釈に誤り 「肩に触れた=急迫不正の侵害」 Q違法性阻却事由の錯誤が責任故意を阻却するか? ① 結論: 故意の本質→ 違法性を否定する事実を誤認→ 規範に直面していない ⇨責任故意を阻却 ②事実の錯誤: 構成要件的事実の錯誤 (抽象的事実の錯誤等)、違法性阻却事由の錯誤 (誤想防衛等) Q 誤想過剰防衛・誤想過剰避難の処理 (例) 夜道で急に肩に触れた→暴漢と勘違いして短刀で攻撃 ・誤想過剰防衛 : 誤想防衛かつ過剰防衛の場合⇒○防衛の意思×防衛行為の相当性 ・誤想過剰避難: 誤想避難かつ過剰避難の場合⇒○避難の意思×避難行為の相当性 ① 結論: 過剰性の基礎となる事実についての認識により区別⇒ 過剰防衛・過剰避難 ・認識あり: 誤想→阻却+故意の本質⇨過剰な反撃行為と知りながらあえて→ 規範に直面 = 責任故意あり ・認識なし: 誤想→阻却+故意の本質⇨過剰な反撃行為と知らない→規範に直面しない = 責任故意阻却 ②⭐️36条2項等の準用の可否 (忘れるな) : 任意的減免の根拠は責任減少⇨妥当する→準用を肯定 (判例) 4 責任過失 B ①責任過失 : 消極的に法規範に違反した人格態度      =責任段階で必要になる過失 ②要件≒ 責任故意 (1)違法性の意識 (2) 違法性に関する事実の認識 5 期待可能性 B ① 期待可能性: 行為者に対し適法行為に出ることを期待できる (例)自己の犯罪の証拠隠滅 ⇒第三の責任要素 (通説)。 不存在は超法規的責任阻却事由 = 条文なし ② 判断基準: 行為者自身

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    第九章 未遂犯

    1.未遂犯 ①未遂犯 43: 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった (1) 修正された構成要件: 刑法各本条-単独犯かつ既遂犯。 未遂犯の条文を加える。 43は一般的に規定 (2) 未遂犯処罰規定: 未遂でも高度の危険性  ⇨多くの犯罪に未遂犯処罰規定   =なければ罰しない 44 ②未遂犯の処罰根拠:  ⭐️構成要件的結果発生の現実的危険性の惹起 (∵客観主義) 未遂前の段階での処罰: 予備罪・準備罪・陰謀罪 (1) 予備: 犯罪の実行を目的とする犯罪の準備行為 ⇨一定の重大犯罪のみ (例) 殺人目的で銃を購入 ・具体例 支払用カード電磁的記録不正作出準備罪 163 の4③、殺人予備罪 201、通貨偽造等準備罪153 、外患誘致及び外患援助予備罪 88 内乱予備罪 78 私戦予備罪 93放火予備罪 113・強盗予備罪 237 身代金目的略取等予備罪 228の3 ⇒支払用の殺・ 通・外・内・ 私・放・強・ 代 = 支払用のさ・つ・が・な・し・ほ・ご・しろ (2) 準備罪: 予備罪のうち、 器械又は原料の準備行為のみが処罰 (例)支払通貨=163の4③・153 (3) 陰謀罪:2人以上で特定の犯罪の実行について謀議する⇨ 極めて重大な犯罪のみ

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    未遂犯の成立要件

    2 未遂犯の成立要件 □ 実行の着手 Q 実行の着手時期の判断基準 ①主観説(反対説):主観主義⇨犯意が外部的に明らかになった時点 ②客観説(通説): 客観主義⇨処罰根拠∴ 構成要件的結果発生の現実的危険性が生じた時点 (実質的客観説) ③判例 (あてはめ) : 実行の着手あり (1) 窃盗罪 ・住居に侵入後、財物を物色した時点  ∵物色から財物取の現実的危険性 ・土蔵侵入のため外扉の錠を破壊して開いた時点  ∵物色していないが、 土蔵は中に人いない ・深夜、 店舗に侵入しレジの方へ行きかけた時点∵物色 レジ到達ないが、深夜・店舗内で人いない (2)強姦罪 抵抗する女性をダンプカーの運転席に引きずり込んだ → 車を発進 →5km離れた場所で強姦 ⇒ 車の運転席に引きずり込もうとした時点⇨ 危険性が認められる (3) 放火罪 自殺目的で自宅にガソリン撒布⇨最後に喫煙しようとタバコに火 ⇨ 蒸気に引火して爆発⇨ガソリン撒布の時点 ∵ 強い引火性から焼損を惹起する現実的危険性 Q 行為者の主観と着手時期: 主観を考慮 (判例) ∵未遂犯の処罰根拠 ・窃盗目的で他人のポケットの外側に触れる行為 ⇨◯窃盗の実行の着手 ・あたり行為で他人のポケットの外側に触れる行為⇨×窃盗の実行の着手 Q間接正犯における実行の着手時期 ① 被利用者標準説(判例) : 被利用者が実行行為を開始した時 ②個別化説(通説):個々の事案ごとに判断し、構成要件的結果発生の現実的危険の発生時を実行に着手時期とする ∵間接正犯の態様はさまざま Q 不作為犯における実行の着手時期 ・「不作為により構成要件的結果発生の現実的危険が生じる場合⇒ 不作為により危険を惹起させた時点 (例) 放置死 ・不作為より前に構成要件的結果発生の現実的危険が生じている場合 ⇒ 不作為がなされた時点 (例)溺死 □ 構成要件的結果の不発生 ・構成要件的結果不発生 ・構成要件的結果発生で因果関係なし ⇨挙動犯 : 構成要件的行為が完全に行われなかった (例) ピッキング→失敗

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    3 未遂犯の効果と中止未遂

    3 未遂犯の効果と中止未遂 □未遂犯の効果 43 障害未遂: 通常の未遂の場合⇒ 任意的減軽 中止未遂: 自己の意思により犯罪を中止した場合 = 必要的減免 □ 中止未遂 ① 必要的減免の根拠=中止未遂の法的性格 a刑事政策說  内容:後戻りのための黄金の橋=寛大 犯罪防止  批判 :必要的減免(黄金の橋というなら不可罰にすべき) b違法性減少説  内容:中止により危険性が減少 ⇨違法性減少  批判:違法性が減少するなら他の共犯者も中止未遂になってしまう c責任減少說(自説)  内容:中止により非難可能性が減少⇨責任減少  批判:- ②中止未遂の成立要件 (1) 実行の着手 ∵未遂 (2)自己の意思により = 中止の任意性 (3) 犯罪を中止した = 中止行為 (4) 構成要件的結果の不発生 ∵未遂 (5) 中止行為と構成要件的結果の不発生との因果関係 ③中止の任意性 Q「自己の意思により」の判断基準 (1)学説 a主観説  内容:外部的事情が動機に影響を与えたか  批判:範囲が狭すぎる b限定主観説-反  内容:責任減少説⇒広義の後悔に基づく場合のみ  批判:文言=意思 c客観説  内容:外部的事情が一般人にとって通常障害となるべき性質のものか  批判:文言=「一般人」≠「自己」 d折衷説-自  内容:外部的事情が行為者に対しある程度必然的に中止を決意させたか  批判:- (2) フランクの公式 : 折衷説 しようと思えばできたが、しなかった=中止未遂 したかったが、 できなかった⇒障害未遂 (3) あてはめ≒判例 同情・悔悟・ 憐憫等、 倫理的動機 ⇒ 肯定  (判) 被害者が号泣 助けを求めた 恐怖・驚愕⇒ 否定が多い (判) 被害者の流血を見て 生理的不快感⇨否定 (判) 強姦犯人が月経帯を見て ④中止行為 ○ 「中止した」 の判断基準 (1)通説-反 ・着手未遂: 実行行為を終了しなかった ⇒ 実行を放棄するという不作為で肯定 ・実行未遂: 実行行為を終了し結果不発生 ⇨結果発生防止のための真摯な努力(=作為)で肯定 ⇒区別: 客観的に実行行為を継続する必要性・可能性がありそれを認識=着手未遂・≠実行未遂 写真 (2) 有力説一自: 結果発生に向けて因果の経過が進行を開始しているか(=放置すると結果発生するか) × ⇒ 実行を放棄するという不作為で肯定 ◯⇨結果発生防止のための真摯な努力 (=作為)で肯定 (3) 真摯な努力の有無の判断: 他人の力を借りてもよいが、自らできるだけ精一杯の努力 (判例) ×⇨刺した後で他の者に医者を呼ぶことを依頼/ 放火した後で「よろしく頼む」 と依頼して逃亡 ○⇨重症を負わせた後で自ら救急車を依頼し、 被害者を消防署員と共に救急車に運んだ ⑤結果不発生との因果関係 Q 中止行為と構成要件的結果の不発生との間の因果関係 (例)毒を飲ませる→治療→致死量でない (1)違法性減少説一反 : 中止 : 結果発生の具体的危険性が減少⇒ 必要 (2) 責任減少説 自 : 中止 責任が減少=真摯な努力が認められる限り、 責任は減少 不要 ※責任=行為者に対する非難可能性

  • 30

    予備罪の中止

    □予備罪の中止 ① 予備罪の中止: 予備行為の後に実行行為の開始を中止すること⇒ ◯予備行為 + × 実行の着手 ②結論: 予備罪の成立 + ×中止未遂の直接適用 (中止未遂は実行行為着手が前提だから) 注)予備罪を中止⇨不可罰 Q 中止未遂の準用 (例) 強盗予備の後、実行の着手前に中止 (1) 判例一反: 中止は予備そのもの = 準用否定⇨現状、 強盗予備以外は刑の免除あり (2) 通説一自: 実行の着手ありで適用、実行の着手なしで不適用は不合理 + 責任の減少 = 準用肯定 Q(準用肯定の場合) 減免の基準: 既遂減免 or 予備罪減免 法律上の減軽(半分にする)は1度のみ 68 原則、 既遂を減軽。 但し、減刑しても予備より重い場合は予備の刑(強盗の場合は結果として予備の刑) ※予備罪は既遂犯の法定刑に法定減刑したもので、法律上の減刑は1回だけ(68)だから ------- 法律上の減軽の方法) 第68条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。 死刑を減軽するときは、無期又は10年以上の拘禁刑とする。 無期拘禁刑を減軽するときは、7年以上の有期拘禁刑とする。 有期拘禁刑を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。 拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる。 科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる。 ーーーーーーー

  • 31

    不能犯 A

    ①不能犯:現実的危険性が極めて希薄なため、実行の着手が認められない場合 客体の不能:客体が存在しない(死んだ人を攻撃) 方法の不能:結果発生は不可能(丑の刻参り) ②効果: 未遂は成立せず不可罰  注)予備罪、陰謀罪はあり得る 31不能犯と未遂犯の区別:危険性の有無 画像 通説:具体的危険説:行為者が特に認識していた事情(🟰客観的に合致する事情)及び一般人が認識し得た事情(行為時を基準に一般人の基準で) 通説の根拠:実行行為は構成要件該当性の問題であるところ、構成要件は違法有責行為類型であり、一般人に対する行為規範 ⑤判例 窃盗目的で物置を物色→目的物がなかった→窃盗未遂 毒物を飲ませた→致死量ではなかったので死ななかった→殺人未遂

  • 32

    共犯 A +

    1 共犯総論 ① 共犯の意義 ⑴最広義:2人以上で犯罪を行う場合  必要的共犯:  構成要件の性質上、はじめから2人以上の行為者を予定  任意的共犯:   単独の行為者を予定している構成要件を2人以上の行為者で実現する犯罪 ⑵広義:任意的共犯(共同正犯、教唆犯、幇助犯) ⑶狭義:教唆犯、幇助犯 ②必要的共犯の分類 集団犯:同一目的に向けられた多数人の集団的行為を構成要件とする犯罪(例  内乱、騒乱) 対向犯:行為者の互いに対向した行為を構成要件とする犯罪(贈賄、収賄) ③任意的共犯の分類 共同正犯:2人以上共同して犯罪を実行した者 60 教唆犯:他人を教唆して犯罪を実行させた者61① 幇助犯:正犯を幇助した者62① Q Bランク 処罰規定のない対向犯への任意的共犯の規定の適用 例 猥褻物頒布175は送り手のみ処罰 結論:立法者は受け手がいることは分かっていてあえて処罰していない。 →原則として適用は否定(判例)

  • 33

    任意的共犯総論 A➕ 共犯の処罰根拠

    共犯の処罰根拠 ⭐️必ず書くと思って理解せよ ①問題の所在:自ら正犯の実行行為をなしていない→主に狭義の共犯において問題 ②学説 ⑴責任共犯説:正犯に関して堕落させ(教唆)または堕落した心情に同調した(幇助)こと ⑵惹起説:正犯と共に法益を侵害し違法な犯罪結果を惹起させたこと (学説:短答) -純粋惹起説:共犯行為自体の違法性に基づき違法     (共犯行為も正犯行為も同じくらい違法)   批判)正犯がいない場合 -修正惹起説:共犯行為は違法ではないが、正犯行為の違法性に基づき違法   批判)共犯行為に違法性がないと考えるのは不適切 -混合惹起説:通説)共犯行為の違法性と正犯行為の違法性の双方に基づき違法 ③通説の根拠  共犯は正犯の実行行為を介して間接的に法益を侵害している →結果に関し、物理的因果性(幇助犯)または心理的因果性(教唆犯)がある Q正犯なき共犯 (択一向け) 例:第三者に自傷行為を教唆した ①行為の性質:正犯行為=違法性なし+共犯行為=独自の違法性あり ②各学説からの当てはめ/正犯行為から考える <共犯行為の違法性> 純粋惹起説 肯定 修正惹起説 否定 混合惹起説 否定 Q共犯なき正犯 例 被害者に殴るように頼まれて重大な傷害を負わせた ①行為の性質:正犯行為=違法性あり+共犯行為=独自の違法性なし ※ 被害者の承諾はあるが、重大な傷害を言わせているので行為態様が相当でない→違法性は阻却されない(行為無価値) ②各学説からの当てはめ/正犯行為から考える <共犯行為の違法性> 純粋惹起説 否定 修正惹起説 肯定 混合惹起説 否定(共犯が最初から白なら正犯が黒でも共犯はグレーとなり違法性は否定)

  • 34

    共犯の従属性 実行従属性

    ①問題の所在 共犯は正犯を前提としている →正犯には何が必要か? →主に狭義の共犯を対象 ・実行従属性の問題:共犯の成立に正犯が実行に着手することを要するか否か ・要素従属性の問題:実行の着手を前提に正犯がいかなる要素まで備える必要があるか(構成要件該当性、違法性、責任、どこまでか) Q 教唆・幇助行為の後、正犯が実行行為に出なかった場合、共犯は成立するか(実行従属性の要否) ①共犯独立説 (反対説):実行従属性を否定  ∵主観主義→教唆、幇助の時点で危険 ②共犯従属説(通説):実行従属性を肯定  ∵ ⅰ共犯の処罰根拠=混合惹起説=正犯の実行行為を介して間接的に法益を侵害するため   ⅱ文言:「教唆して犯罪を実行させた61①」     「 正犯を幇助した62①」(正犯=みずから各犯罪の基本的構成要件に該当する行為を行う者) Q 実行従属性を肯定した場合、正犯が犯罪成立要件及び処罰条件のうちどの要素まで満たす必要があるか ①学説:構成要件→違法性→責任→処罰条件 4段階それぞれ必要だとする説がある ②⭐️制限従属性説(通説):構成要件に該当し、正犯行為が違法であることを要する ③通説の根拠 ⑴共犯の処罰根拠:混合惹起説→法益を侵害→違法性が必要 ⑵責任:行為者に対する非難可能性→行為者ごとに判断 ⑶文言:実行させた61①→成立ではない ④結論:違法は連帯的、責任は個別的 例:刑事未成年者に窃盗を教唆 (参考:間接正犯となるのは刑事未成年者を支配している場合)  正犯の違法性阻却→正犯、共犯ともに不成立  正犯の責任阻却→正犯不成立・共犯成立

  • 35

    共同正犯における要素従属性

    Q 違法の連帯性の有無 例: 急迫不正の侵害に対し、Aは防御の意思、Bは攻撃の意思で共に攻撃 ①問題の所在:共同正犯は共犯かつ正犯  共犯である点を強調:制限従属説が妥当     →違法性阻却あり  正犯である点を強調:制限従属説は妥当しない→違法性阻却なし ②有力説:客観的要件は連帯を認めるが、主観的要件は個別に判断 ※司法試験対策ではこの有力説を覚えておけばok ③結論:A=正当防衛成立、B=正当防衛不成立 ∵防衛の意思の存否は個別に判断 Q責任の連帯性の有無 ・通説:行為者ごとに個別に判断 ∵責任の意義=行為者に対する非難可能性 ▪️フィリピンパブ事件(判例) 事案:共同正犯のうち、Aが過剰防衛成立、Bが専ら攻撃の意思で過剰防衛不成立 論点:Aに成立する過剰防衛の効果がBに及ぶか 判例:過剰防衛の効果は他の共同正犯者に及ばず、各々について判断→責任は個別に判断

  • 36

    共犯の本質(罪名従属性の問題)

    Q共同正犯が成立するためには何を共同する必要があるのか ①対象:共犯の本質(罪名従属性の問題)は、通常は共同正犯を対象とした問題 ②問題の所在:共同して犯罪を実行60=共同正犯  →異なる構成要件を実現した場合60に該当するか 例)A殺人の故意、Bが傷害の故意で、共同して被疑者を刺し傷害を負わせた ③行為共同説(反対説) 構成要件を離れた事実的行為を共同→構成要件を異にする犯罪の共同正犯が成立しうる <結果> A:殺人未遂の共同正犯 B:傷害の共同正犯 →罪名従属性の否定 ④通説 ⑴犯罪共同説:特定の構成要件を共同 →構成要件を同じくする犯罪の共同正犯のみ成立 ⑵⭐️部分的犯罪共同説(通説):  完全一致不要→実質的に重なりあいがあればその重なり合いの限度で成立 ⑶根拠:罪刑法定主義→構成要件論を重視すべき <結果> A:殺人未遂 B:傷害 AB:傷害の共同正犯→罪名従属性の肯定

  • 37

    共同正犯  実行共同正犯

    1 共同正犯総論 ⭐️非常に重要

  • 38

    共謀共同正犯 Aランク

    ①共謀共同正犯  =謀議+一部のものがこれを実行 ⇨実行していないものも含めて共同正犯 Q共謀共同正犯も共同正犯にあたるのか ①判例通説:肯定(判例は一貫して肯定)  ∵刑事政策的な不都合を回避する必要 (2つのタイプ) ・支配型における不都合性:背後の黒幕にとって他人の犯罪ではない ・対等型における不都合性:強い関係にある者は他人の犯罪ではない(例:半分貰える見張り) ②理論的根拠: 共同正犯の処罰根拠⇨相互利用補充関係は実行行為以外の行為によっても認められうる ⭐️間接正犯との違い 間接正犯:一方的に支配、利用されている ▫︎共謀共同正犯の成立要件 ・相互利用補充関係のもと、物理的心理的因果性 ⇨①共謀の事実②一部の者による共謀に基づく実行行為③共謀者の正犯意思 ⭐️これら 3要件を満たすか判断できるようにする ①共謀の事実 ⑴時期: ◯:事前共謀 ◯:現場共謀(犯行現場で瞬間的に) ⑵方法:◯:明示的方法 ◯:黙示的方法(頷くだけなども含む)    ◯:順次共謀(AB共謀の後にBC共⇨ABC全員での共謀になる) ⑶内容:×:重要でない部分    ◯:犯行計画の重要部分(手段等、微細な部分の特定は不要)  ▶︎議員への賄賂を共謀→誰に交付したかは知らない→共謀共同正犯成立  ▶︎法定の指定価格を超過して販売を共謀→日時、価格は知らない→共謀共同正犯成立 ②共謀者のうちの一部の者による共謀に基づく実行行為 Q共謀の内容と実際になされた実行行為との間にズレが生じた場合 ⑴基本的部分が共通→◯:共謀共同正犯 ▶︎ABで脅迫文の文言まで含めて強盗を共謀→共謀と異なる脅迫文言を使用→◯:共謀共同正犯 ⑵基本的部分と異なる→×:共謀共同正犯 ▶︎ABで甲の監禁を共謀→Bが甲を殺害→×:殺人の共謀共同正犯 ③正犯意思→欠けていれば教唆犯、幇助犯が成立しうる ⭐️論文で必ず書く いかなる場合に正犯意思を認定しうるか ・諸事情を重視して判断 [利害関係(被害者が死ねば利益がある等)、 影響力(指導的立場だった、対等だった等)、 利益分配の有無割合、 実行担当者となりうる可能性、 実行行為に必要かつ密接な行為=行った実行行為でない行為の重要性]

  • 39

    片面的共同正犯 Bランク

    ①片面的共同正犯:実行共同正犯   共同実行の事実あり+共同実行の意思が一方のみにある 例)A殺人を実行 BがAの殺人実行のためAに気づかれることなく協力した Q片面的共同正犯は60の共同正犯に当たるか ①判例通説:共同正犯の処罰根拠→成立要件(共同実行の事実と共同実行の意思)が必要だが、共同実行の意思がない →共同正犯に当たらない ②片面的教唆犯、幇助犯は成立しうる

  • 40

    承継的共同正犯 Aランク

    ①意義:先行者の実行行為の途中で、後行者が先行者と意思を通じ、単独または共同で実行行為を行った場合 例 Aが強盗にために暴行し反抗抑圧→偶然現れたBと協力し、AB共に、またはB単独で財物を窃取 Q 承継的共同正犯は60の共同正犯にあたるか ①問題の所在:後行者は先行者の行為等を帰責されるのか(=承継するか) ②原則:共同意思形成前の行為は共同正犯に当たらない  (→写真の例では暴行は共同正犯には当たらない。財物の窃取はあたる。) ∵共同正犯の処罰根拠=相互利用補充関係→後行者関与前の先行者の行為は共同実行の意思なし ③通説(限定的承継説): 先行者の行為等を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思のもと、現にこれを利用した場合→共同正犯にあたる  ×認識、認容では足りない。積極的に利用する意思が必要 Q 後行者の関与後、先行者と後行者とが共同して実行行為を行ったことを要するか ①判例通説:関与後の実行行為の共同は不要 ​⇒ 後行者のみが財物窃取した場合でも承継的共同正犯成立 □ 限定的肯定説からの共同正犯の成否 ①詐欺罪等(構成要件上、複数の行為が想定)​⇒ 交付させる行為​→ 利用した ∴ 通常成立 ② 強盗罪等(結合犯)​⇒ 盗取​→ 利用した ∴ 通常成立 ③強盗殺人・強盗傷害等(結合犯)​⇒ 盗取​→ 利用したのは反抗抑圧状態のみ∴ 通常否定(強盗罪のみの範囲で共同正犯) ④強盗致死傷・強姦致死傷等(結果的加重犯)​⇒ 盗取・強姦​→ 上同 ⑤ 傷害(結果的加重犯)​⇒ 暴行​→ 利用したとはいえない ∴ 通常否定(判) ∵暴行は何かの手段ではなく、強盗等とは性質が違う ⑥監禁罪等(継続犯)​⇒ 途中から監禁​→ 当然に成立

  • 41

    過失犯の共同正犯

    ①過失犯の共同正犯: 予見可能性を前提とした結果回避義務違反の行為を共同して行った場合 例 ABが共同して溶接作業→ABが発火防止措置を怠る→失火 →業務上失火罪117の2 ②問題の所在:個々の過失と結果との因果関係が不明な場合の処理(因果関係不明なため単独犯としては成立しない因果関係が明確なら共同正犯は問題にならない。) ・過失犯の共同正犯を肯定→AB業務上失火罪の共同正犯 ・過失犯の共同正犯を否定→AB不可罰 Q過失犯の共同正犯は成立するか ①論点の前提問題:成否の問題(過失犯の本質)→成立要件の問題(相互利用補充関係) ②成否 ・否定説(反対説)旧過失論 →過失犯の本質は無意識的部分(うっかりしていた=無意識的)→無意識部分の共同はあり得ない→否定 ・肯定説(⭐️自説) 新過失論 →過失犯の本質は行為(予見可能性を前提とした結果回避義務違反)→共同して行うことは十分に可能→肯定 ③成立要件:物理的心理的因果性を認めうる場合 ⑴共同の注意義務:⭐️関与者相互の監視義務 ⑵共同違反 Q共同の注意義務が認められるためには何が必要か ①結論:⭐️同一の法的地位 ∵相互の監視義務 例 × 上下関係(上司と部下、医師と看護師等)

  • 42

    結果的加重犯の共同正犯 A+

    ①意義:特定の犯罪を共同して実行したところ、その故意を超過する重い結果を発生させた場合  例 ABが強盗を共謀 →実行したところ、被害者が抵抗したので共同で暴行→被害者死亡→死因不明 ②問題の所在:基本犯の共同正犯→結果的加重犯の共同正犯を肯定するか ・肯定→ABは強盗致死罪の共同正正犯→一部実行全部責任 ・否定→ABは強盗罪の共同正犯→因果関係が不明 (⭐️注意:共同正犯は多くのパターンがある。初学者のうちは混同する。それぞれのパターンの違いをおさえること。) Q 結果的加重犯の共同正犯は成立するか ①問題の所在:結果的加重犯の本質→重い結果について行為者の過失を要件として要求するか? ②判例と学説 ・判例:過失不要    本質=条件関係あれば成立    批判:責任主義(行為に対する非難可能性→個人ごとに判断されるべき) ・通説:過失必要    本質=責任主義・故意犯+過失犯の構造から過失があれば成立  ※通説では論文が難解になる ・有力説(自説):過失不要    本質=刑法上の相当因果関係の範囲内の結果であれば成立 ③有力説(自説)根拠:結果的加重犯の基本行為は、その性質上重い結果を発生させる高度の危険性を内包 →その範囲で故意あり→行為の危険性の射程内の結果は責任あり ④結論:過失犯の共同正犯の成否を論ずるまでもなく、刑法上の相当因果関係認められる限り成立

  • 43

    共犯関係の解消

    ①意義:犯罪を共謀→既遂前に共犯関係から離脱→他の共犯者が実行→責任を負わない 例 ABが殺人を共謀→Aが途中で翻意して犯行中止を決断→Bが実行 ②問題の所在:共犯関係の解消を認めるか否かで結論が異なる→認める要件が問題 ・肯定→B=殺人罪、 A=不可罰 ・否定→B=殺人罪、AB=殺人罪の共同正犯        ∵共同正犯→一部実行全部責任 Qいかなる場合に共犯関係の解消を認めるか ①要件の根拠:処罰根拠=物理的心理的因果性が遮断 ⭐️要件は着手の前後で場合分け ②<着手前の解消> ⑴離脱の意思を表明 ⑵他の共謀者の了承  判例:表明及び了承は黙示的でもよい ⑶首謀者や物理的影響を及ぼした者等(例:凶器を渡す)→それ以降の犯行を防止する措置  ⭐️判例:住居侵入・強盗を共謀→住居侵入後、強盗着手前に離脱を表明→反抗防止措置なし→解消否定 ③<着手後の解消> ⑴離脱の意思を表明 ⑵他の共謀者の了承 ⑶それ以後の犯行を防止する措置 ④判例  着手前→表明と了承で肯定。上記判例に注意  着手後→理論上は肯定。実際に肯定した判例は存在しない ⑤肯定した場合の処理  着手前の肯定:予備罪ないし予備罪の未遂犯  →(成立なら)予備の中止 を検討  着手後の肯定:未遂犯の共同正犯→共同正犯の中止未遂 を検討

  • 44

    共謀の射程 A+

    ①意義:共謀内容と異なる実行行為が行われた場合、共謀のみに関与した者が帰責されるのか 例 急迫不正の侵害に対しABが共同して防衛行為→侵害終了→Aが恐怖心から単独で暴行 →BはAの侵害終了後の過剰防衛について帰責されるのか ②問題の所在:帰責しうるか及び「共謀内容と異なる」と言えるかの判断基準 →共犯関係の解消、罪名従属性等と区別 ⭐️共謀の射程は共謀内容とは異なる行為の問題 Q共謀内容と異なる実行行為が行われた場合に共同正犯として処罰されるか ①帰責し得るか ⑴理由:処罰根拠(相互利用補充関係-心理的物理的因果性)→共同正犯の成立要件=共謀・共謀に基づく全部又は一部の者による実行行為 ⭐️これまで学んだ実行共同正犯と共謀共同正犯の成立要件と矛盾しない。試験対策上、このように書いた方が良い。 ⑵ 結論:共謀内容と実行行為が規範的に全く異なる → 新たな共謀が認められない限り帰責されない ② 判断基準:総合的に判断 ​⇒ 共謀と実行行為との共通性、共謀と過剰結果との関連性、目的の共通性等を検討 ③ 判例:侵害現在時と侵害終了後に分けて考察 → 離脱したかでなく新たな共謀が成立したか検討 ​⇒ 防衛行為の共謀と違法行為の共謀は規範的異なる → Aの暴行は当初の共謀の射程外

  • 45

    共同正犯の中止未遂

    ①意義:共同正犯が自己の意思により犯罪を中止した場合 ※中止未遂=自己の意思により中止した場合→必要的減免 ​(例)ABが強盗を共謀し、被害者に金銭を要求 → Aが被害者に同情し中止 ②成立要件:≒中止未遂の成立要件 ​⇒ 真摯な努力=他の共犯者の実行行為を阻止する又は結果の発生を防止 ③必要的減免の範囲:個別に判断(判) ∵ 責任の減少 ④判例(S24) ⑴事案:ABが強盗のため侵入 → 被害者貧乏 → Aが同情、Bに帰ろう+去る → Bが奪取 → ABで費消 ⑵判決:AはBの強盗を放任→中止未遂不成立 ⑤共犯関係の解消との区別  ・共同正犯の中止未遂:犯罪成立後の刑の問題(減免という寛大な扱いをするかの問題。実行に着手しているので犯罪は成立している)&実行に着手後からの問題  ・共犯関係の解消:構成要件該当性の問題(犯罪が成立するかどうかの問題)&実行に着手前からの問題

  • 46

    身分犯の共同正犯 65条 A+

    ①身分犯=行為者に一定の身分のあることが構成要件要素となっている犯罪 ​・真正身分犯​:身分を有することによってはじめて成立する犯罪 ⇒ 身分がなければ成立しない ​・不真正身分犯​:身分がなくとも成立するが、身分を有することによって刑が加重又は減軽される犯罪 ②身分犯の例 ・真正身分犯​:=構成的身分犯  ⇒〇収賄罪、〇強姦罪(廃止)、×強制性交等罪 ​・不真正身分犯​:=加減的身分犯  ⇒常習賭博罪>単純賭博罪、   保護責任者遺棄罪>単純遺棄罪 ③身分:一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態のすべて(判) Q 目的犯における目的が身分に含まれるか ① 判例:目的は特殊の状態といえる  ∴ 身分に含まれる (例)麻薬輸入罪の営利の目的=身分 ▫︎身分犯の共同正犯 Q 身分者と非身分者とが共同して身分犯を犯した場合の処理 ①問題の所在 ⑴ 真正身分犯と不真正身分犯の処理 ・真正身分犯⇒ 事案:A男とB女が強姦(旧)を共謀 → B女が押さえつけて、A男が姦淫​→ B女? (今後出題されるなら収賄と思われる) ​・不真正身分犯​⇒ 事案:保護責任者Aと保護責任者でないBで共同してAの親を遺棄​→ B? ⑵65条の趣旨:1項と2項の関係 1項:非身分者も共犯 ​⇒ 身分の連帯的作用 ​2項:非身分者は通常の刑 ​⇒ 身分の個別的作用 ②学説及び判例 <団藤大塚説-反対説> 1項の趣旨:真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立 2項の趣旨:不真正身分犯の科刑 批判 → 成立と科刑の分離は不当な解釈 あてはめ) 真正身分犯:B女-強姦の共同正犯 不真正身分犯:B-保護責任者遺棄の共同正犯が成立∵Ⅰ ⇒ 単純遺棄の刑∵Ⅱ <判通-自説> 1項の趣旨:真正身分犯の共犯の成立と科刑 2項の趣旨:不真正身分犯の共犯の成立と科刑 ∵ 文言上自然 あてはめ) 真正身分犯:B女-強姦の共同正犯 不真正身分犯:A-保護責任者遺棄、B-単純遺棄、各々共同正犯 Q 65条Ⅰの共犯に共同正犯がふくまれるか ①否定説-反対説:真正身分犯において、非身分者による実行行為を認めることは不可能 ⇒ 狭義の共犯のみ ②肯定説-判例:身分のある者の行為を利用することによって真正身分犯の保護法益を侵害することは可能

  • 47

    予備罪の共同正犯 A

    □ 予備罪総論 ①予備罪:特定の犯罪を実行する目的でその準備行為をすることが犯罪とされる場合(重大犯罪のみ) ②予備行為の類型 ・​自己予備:自ら犯罪を実現する目的で準備​(例)殺人のために自分で銃購入 ​・他人予備:他人に犯罪を実現させる目的で準備​(例)Bに殺人をさせるためAが銃を購入し渡す Q ⭐️単独犯での他人予備の場合にも予備罪が成立するか ①通説:普通、成立しない  ∵ 文理(~条の罪を犯す目的で201等) □ 予備罪の共同正犯 ①予備罪の共同正犯:複数人が共謀のもと、予備行為を共同して行った場合 ・行為者の全員に単独犯としての予備罪が成立する場合 ・​行為者の一部に単独犯としての予備罪が成立する場合 Q AB各自が殺人を犯す目的の下、共に銃を購入。ABに共同正犯が成立するか ① 問題の所在:予備行為が60の実行といえるか ② 否定説-反対説:予備=修正された構成要件 → 基本的構成要件ではない ​∴ 予備行為​≠実行行為 ③肯定説-有力説(自説):実行行為の定義 → 刑法各本条において独立に構成要件化 ​∴ 実現する行為=実行行為 ④結論​:予備罪の共同正犯も成立する ※実行行為: 特定の構成要件に該当する、法益侵害の現実的危険性を有する行為 Q 自ら殺人を犯す目的を有しないXが自ら殺人を犯す目的を有するYと共謀し、Yに銃を提供 ① 問題の所在:単独犯としてXは予備不成立(他人予備であるため) ⇒ではXに共同正犯が成立するか? ②予備罪の共同正犯の成否 ⑴およそ予備罪の共同正犯が成立しうるか ⇒ 予備の実行行為性を肯定 ∴ 肯定 ⑵Xに(自ら罪をおかす)目的なし ​⇒ 目的は身分に含まれる→Yには目的があり、身分あり ⇨身分犯の共同正犯65の問題 ※身分:一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態のすべて(判) ⑶65の趣旨 ​⇒ 予備罪は目的を有する者にのみ成立 ∴ 予備罪=真正身分犯 ③結論:65Ⅰの共犯には共同正犯が含まれる ⇒ Xに65Ⅰにより予備罪の共同正犯が成立 (再掲)Q 65条Ⅰの共犯に共同正犯がふくまれるか 例:女性が男性と共に女性を強姦 ①否定説-反対説:真正身分犯において、非身分者による実行行為を認めることは不可能 ⇒ 狭義の共犯のみ ②肯定説-判例:身分のある者の行為を利用することによって真正身分犯の保護法益を侵害することは可能

  • 48

    不作為の共同正犯 B(出ない)

    不作為犯の共同正犯:作為義務を負う者が共同して不作為により犯罪を実行した場合 ・​共同者全員が作為義務を負う場合 ​  ⇒ 共同正犯成立 ​・共同者の一部が作為義務を負う場合  ​(例)母親と第三者が共同して乳児を放置して餓死 Q 作為義務を有する者と作為義務を有しない者が共同して不作為犯を実現 ・有力説:不作為犯は作為義務を有する者のみ成立 → 真正身分犯 → 65Ⅰ

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    狭義の共犯 Aランク 1 教唆犯総論

    1 教唆犯総論 ①教唆犯​:他人を教唆して犯罪を実行させた者61Ⅰ ②教唆​⭐️Aランク:他人を唆して犯罪実行の決意を生じさせること ③教唆犯の処分​:正犯の刑61Ⅰ ​⇒ 正犯の法定刑の範囲内で処罰 ⑴処分の可否​: 〇正犯者が現実に処罰されなかった→この場合でも教唆犯を処罰してok 〇正犯者より重い宣告刑を教唆犯に課してもok ⑵64​:拘留・科料のみの罪は特別の規定がなければ罰しない ⑶間接教唆​:教唆犯を更に教唆 ​⇒ 教唆犯として処罰61Ⅱ ⑷再間接教唆​:間接教唆者を更に教唆 ​⇒ 教唆犯として処罰(判例) □ 成立要件 ​・教唆行為 → 教唆に基づく正犯の実行行為 → 正犯結果の発生(既遂の場合) + 教唆犯の故意 ①教唆行為:〇黙示的         〇日時、場所等具体的な特定なしで一定の犯罪を教唆        ×犯罪一般を唆す ②教唆に基づく正犯の実行行為 ⑴共犯従属性説・制限従属性説 ⑵教唆行為と正犯の実行行為との間の因果関係も必要(判例) ③正犯結果の発生: 1)正犯の実行行為 → その時点で未遂罪の教唆犯成立・ 2)正犯結果の発生 → その時点で既遂罪の教唆犯成立 ④教唆犯の故意 Q 教唆犯の故意の内容 ⭐️実行認識説と結果認識説両方抑える ①問題の所在:教唆行為の認識・認容に加えて、いかなる認識・認容が必要か? ②実行認識説:正犯の実行行為を行う事までの認識・認容 ​∵ 教唆の定義(他人を唆して犯罪実行を決意させること) ③結果認識説:正犯結果の発生までの認識・認容 ​∵ 惹起説=共犯の処罰根拠は法益侵害 Q 未遂の教唆の可罰性 ・ 未遂の教唆:当初から未遂に終わらせることを意図して教唆​(例)空の鞄への窃盗教唆 ・結論 実行認識説:窃盗未遂の教唆犯成立 ​∵ 実行行為に至る事の認識あり ​結果認識説:不可罰 ​∵ 結果発生に至る事の認識なし Q 未遂の教唆で正犯結果が発生した場合の処理 ・結論 実行認識説:共犯の錯誤の問題として処理 ​結果認識説:不可罰 ーーーーーーーーーーー

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    幇助犯総論

    ①幇助犯=従犯​:正犯を幇助した者62Ⅰ ②幇助​:⭐️実行行為以外の方法によって正犯の実行行為を容易にすること ③教唆犯との区別​:幇助犯=犯罪の決意を有する者を援助 → ⭐️正犯者に決意を生じさせたか否かで区別 ④幇助犯の処分​:正犯の刑を減軽する=必要的減軽63​⇒ 正犯の法定刑を減軽した刑で処罰  ⑴処分の可否​:〇正犯者が現実に処罰されなかった(未成年等)          〇正犯者より重い宣告刑  ⑵64​:拘留・科料のみの罪は特別の規定がなければ罰しない  ⑶間接幇助​:幇助犯を更に幇助 ​⇒ 幇助犯として処罰(判)  ⑷再間接幇助​:間接幇助者を更に幇助 ​⇒ 幇助犯として処罰(通)  ⑸幇助犯の教唆​:従犯の刑を科する62Ⅱ □ 幇助犯の成立要件 ​・幇助行為 → 正犯の実行行為 → 正犯結果の発生 + 幇助犯の故意 ① 幇助行為 ・物質的幇助=有形的幇助:金銭の貸与・凶器の提供・犯行現場への案内等 ​・精神的幇助=無形的幇助:助言・奨励・励ます等 ⑴ 事後従犯:実行行為が終了した後に正犯を援助する場合 ⇒ 幇助にあたらない ②正犯の実行行為 ⑴共犯従属性説・制限従属性説:被幇助者による実行の着手+構成要件+違法性 ⑵因果関係 Q 正犯結果との間の因果関係の要否(2つとも抑える) ​・不要説:実行行為との因果関係が必要    ∵ 幇助の定義 ​・必要説:正犯結果との因果関係が必要    ∵ 共犯の処罰根拠=惹起説 Q 因果関係の程度 ⑴条件関係説-反対説:条件関係で足りる  ​ 批判:範囲が狭い ​(例)銃を提供 → 刀で実行行為 ⑵促進的因果関係説-自​説: 物理的・心理的に容易にし促進すれば足りる   ∵ 上記批判・幇助の定義 ③正犯結果の発生: ・正犯の実行行為 → 未遂罪の幇助犯成立  ・正犯結果の発生 → 既遂罪の幇助犯成立 ④幇助犯の故意:故意の内容・未遂の幇助の可罰性等は教唆犯と同様

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    第13章 狭義の共犯の諸問題

    1 片面的教唆・幇助 ① 片面的教唆:教唆行為 → 被教唆者が教唆行為を知らずに犯罪を決意​→教唆者に教唆犯が成立するか (例)窃盗させるため金庫の鍵を放置 ​⇒ 肯定-通説 ∵ 定義に該当 ②片面的幇助:幇助行為 → 被幇助者が幇助行為を知らずに犯罪を実行​(例)勝手に見張り ​物質的幇助:肯定 ∵ 定義に該当 ​精神的幇助:否定 ∵ 認識によって初めて実行行為が容易になる=定義に該当しない 2 過失による教唆・幇助 ①過失による教唆:教唆行為 → 故意はない+過失はある ​(例)短気な者に悪口を言う人を伝えた ​⇒ 過失犯の成立には特別の規定が必要38Ⅰ+規定なし ∴ 否定 ② 過失による幇助:幇助行為 → 故意はない+過失はある​ (例)殺人の決意ある者に毒物を販売 →過失犯の成立には特別な規定が必要38①+規定なし ∴ 否定 3 過失犯に対する教唆・幇助 Bランク ①過失犯に対する教唆:教唆行為 → 正犯が過失犯(例)医師に毒を渡されて看護師が確認せずに投与 ​⇒ 定義+日常用語例として故意を生じさせるを意味 ​∴ 否定 ②過失犯に対する幇助:幇助行為 → 正犯が過失犯(例)Cを獣と誤り撃つAを知って幇助するB ​⇒ 定義+日常用語例としてズレがない ​∴ 肯定

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    結果的加重犯に対する教唆・幇助

    ① 結果的加重犯に対する教唆:基本的犯罪を教唆 → 被教唆者が重い結果を発生 ⑴ 事例:傷害を教唆 → 被教唆者が致死結果を生じさせた(教唆者、被教唆者共に重い結果についての認識・認容なし)(被教唆者が認識人用ありの場合は共犯の錯誤の話となる) ⑵結論:結果的加重犯の本質 ⇒ 重い結果についての過失は不要 ∴ 重い結果についての教唆犯成立 <再掲> 有力説(自説):過失不要 本質=刑法上の相当因果関係の範囲内の結果であれば成立 )根拠:結果的加重犯の基本行為は、その性質上重い結果を発生させる高度の危険性を内包 →その範囲で故意あり→行為の危険性の射程内の結果は責任あり ②結果的加重犯に対する幇助:基本的犯罪を幇助 → 被幇助者が重い結果を発生 ⑴事例:傷害を決意している者に凶器を提供 → 被幇助者が致死結果を発生(上同) ⑵結論:結果的加重犯の本質 ⇒ 重い結果についての過失は不要 ∴ 幇助犯成立

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    不作為による教唆・幇助 B 短答

    ①不作為による教唆:なにもしない(=教唆行為) → なにもしないのをみて犯罪を決意(=被教唆者) ⑴結論:否定 ∵ 教唆の定義(そもそも唆していない) + 教唆の性質=該当する行為(犯罪実行を決意させる行為)は限定的→不作為でできるものではない ②不作為による幇助:なにもしない(=幇助行為) → なにもしないことで犯罪を幇助 ⑴結論:構成要件的同価値性(不真正不作為犯と同じ=法的作為義務、作為の容易性、可能性)があれば肯定  ∵ 幇助が可能 + 幇助の性質=該当する行為が広範 ⑵判例:選挙長が違法投票を制止しなかった → 不作為による幇助犯成立

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    不作為犯に対する教唆・幇助

    ①不作為犯に対する教唆:教唆行為 → 被教唆者が不作為による犯罪を決意 ⑴事例:溺れている子を救出しない様に母親に決意させる ⑵ 結論:不作為犯=真正身分犯 → 65Ⅰにより教唆犯が成立 ② 不作為犯に対する幇助:幇助行為 → 被幇助者が不作為により犯罪を幇助 ⑴ 事例:溺れている子を救出しない母親を幇助 ⑵結論:不作為犯=真正身分犯 → 65Ⅰにより幇助犯が成立 ③まとめ ・不作為による教唆:否定 ・不作為による幇助:構成要件的同価値性があれば肯定(判例:選挙管理委員長の不正投票黙認) ・不作為犯に対する教唆:肯定 ・不作為犯に対する幇助:肯定

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    身分犯と教唆・幇助

    ①非身分者が不真正身分者を教唆・幇助した場合 ⑴事例:賭博の非常習者Aが賭博の常習者Bに対し賭博行為を教唆・幇助した場合 ⑵結論:B=常習賭博罪 ・ A=65Ⅱ ∴ 単純賭博罪の教唆犯・幇助犯 ​⇒ 事案を見てどの類型の場合なのかを区別 → ⭐️正犯から考える ② 不真正身分者が非身分者を教唆・幇助した場合 ⑴事例:賭博の常習者Xが賭博の非常習者Yに対し賭博行為を教唆・幇助した場合 ⑵結論:Y=単純賭博罪 ・ X=65Ⅱ ∴ 常習賭博罪の教唆犯・幇助犯(身分=非常習者) ③非身分者が真正身分者を教唆・幇助した場合 ⑴事例:非公務員Aが公務員Bに対し収賄を教唆・幇助した場合 ⑵結論:B=収賄罪 ・ A=65Ⅰ ∴ 収賄罪の教唆犯・幇助犯 ④真正身分者が非身分者を教唆・幇助した場合 ⑴事例:公務員Xが非公務員であるYに対し収賄を教唆・幇助した場合 ⑵ 結論: Y=不成立 ・ X=教唆犯・幇助犯不成立 ∵ 共犯の従属性 ⇒ ⭐️間接正犯や共同正犯を検討

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    予備罪の教唆・幇助

    ①予備罪の教唆:基本的構成要件の犯罪を教唆 → 被教唆者が予備行為を行い、実行しなかった ⑴事例:AがBに殺人を教唆 → Bが殺人のため包丁を購入したが実行しなかった ⑵結論:61の実行に予備が該当するか → 予備罪も刑法各本条において独立に構成要件化 → 成立 ​⇒ B=殺人予備罪 ・ A=殺人予備罪の教唆犯 ②予備罪の幇助:基本的構成要件の犯罪を幇助 → 被幇助者が予備行為を行い、実行しなかった ⑴事例:AがBの殺人を幇助 → Bが殺人のため包丁を購入したが実行しなかった ⑵を結論:62の正犯に予備が該当するか → 予備罪も刑法各本条において独立に構成要件化 → 成立 ​⇒ B=殺人予備罪 ・ A=殺人予備罪の幇助犯

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    正犯と狭義の共犯の区別 Aランク

    ①正犯と狭義の共犯の区別:間接正犯や共同正犯を含めた正犯と狭義の共犯は境界が不明確 ②問題の所在:犯行現場での見張り役⭐️出題の典型 ⇒ 共謀共同正犯or幇助犯 ③ 結論: 自己の犯罪として行った場合=正犯  他人の犯罪に加担した場合=狭義の共犯 ​⇒ 役割の重要性、正犯意思の有無、犯罪による利益の大小等 で判断

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    第14章 共犯の錯誤 Aランク

    □ 共犯の錯誤総論 ①共犯の錯誤:共犯者が認識した犯罪事実と正犯者が実行した犯罪事実との間に不一致がある場合 ​(例)窃盗を教唆 → 正犯者が強盗を決意して実行 ② 共犯の錯誤の処理:主として法定的符合説によって処理 ③共犯の錯誤の類型 ⑴同一共犯形式内の錯誤 ⑵異なる共犯形式相互間の錯誤  例:既に犯行の決意をしている者に教唆に後押し ⑶間接正犯と共犯の錯誤  例:看護師を一方的に支配していると思っていて毒薬を渡したが看護師は人を殺したいと思っていて毒薬を使って殺した □ 同一共犯形式内の錯誤 ① 共同正犯の錯誤 ⑴具錯 (同一構成要件内):法定的符合説で処理​ (例)ABでX殺害を共謀 → Yを殺害 → AB殺人の共同正犯 ⑵抽錯:⭐️共犯の本質及び結果的加重犯の成否 の問題として処理 Q ABでXの傷害を共謀 → 実行担当のAが殺意を持ってXを殺害 ⑴共犯の本質​:部分的犯罪共同説 ​⇒    AB=傷害の共同正犯が成立 ⑵結果的加重犯の本質​:過失は不要 ​⇒   AB=傷害致死の共同正犯 が成立 ⑶結論​:A=殺人罪 ・ B=傷害致死 ・ AB=傷害致死の限度で共同正犯 ② 教唆犯の錯誤 ⑴ 具錯:法定的符合説で処理​(例)AがBにX殺害を教唆 → BがYを殺害 → A=殺人の教唆犯 ⑵抽錯:法定的符合説で処理​(例)AがBに窃盗を教唆   → Bが強盗実行 → A=窃盗の教唆犯 ​⇒ 結果的加重犯の場合:結果的加重犯に対する教唆犯の成否が問題になる ​(例)AがBに傷害を教唆 → Bが傷害を実行したが、死亡結果が発生 → A=傷害致死の教唆犯 ③幇助犯の錯誤:≒教唆犯の錯誤 □ 異なる共犯形式相互間の錯誤 ①異なる共犯形式相互間の錯誤:主観と客観が異なる共犯形式にまたがって一致していない場合 Q 殺人を決意するBに、決意がないと誤信するAが殺人を教唆した場合 ⑴ 処理:抽錯 ⇒ 法定的符合説 + 共同正犯>教唆犯>幇助犯 の順で重なり合う ⑵結論:B=殺人 ・ A=殺人罪の幇助犯が成立 □ 間接正犯と共犯の錯誤 ①間接正犯と教唆との錯誤 ・​主観=間接正犯・客観=教唆犯​:  抽錯 → 法定的符合説 +⭐️ 他人を利用する点で重なり合う ⇒ 教唆犯 ・​主観=教唆犯 ・客観=間接正犯​:  抽錯 → 法定的符合説 +⭐️ 他人を利用する点で重なり合う ⇒ 教唆犯 ②途中知情:間接正犯の被利用者が途中で間接正犯の事情を知り、かつ犯罪を実行した場合 Q 医師Aが看護師Bに薬と偽り毒の注射を指示 → 途中で看護師が事情を知る → 殺意のもとに実行 ⑴ 問題の所在:事情を知る前=間接正犯 + 事情を知った後=教唆犯 ⑵有力説​:間接正犯は因果関係なし※ + 全体的にみれば客観的に教唆行為があったといえる※※ ∴ 教唆犯 ※普通は毒だと気づいたらやめる→相当因果関係を逸脱している ※※全体的に見れば客観的に教唆行為があった、というのがポイント ③間接正犯と幇助との錯誤:  ≒間接正犯と教唆との錯誤

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    第15章 罪数  総論 一罪 評価上一罪

    1. 罪数総論 ①罪数:成立する犯罪の個数 大きく分けて一罪と数罪に分かれる ​一罪:ある行為者に一つの犯罪が成立する場合 ​数罪:ある行為者に複数の犯罪が成立する場合 ②問題の所在 ⑴ある行為が一罪か?数罪か? ⑵一罪・数罪の場合にどう処断するか ③罪数処理の基本 ⑴一罪:単純一罪 → 法条競合 → 包括一罪 → 科刑上一罪(観念的競合・牽連犯) ⑵数罪:併合罪 2. 一罪 ①罪数決定の基準:構成要件充足の回数によって判断(判通) ② 一罪の分類  ​・単純一罪​:構成要件を1回だけ充足していることが単純・明確に認められる場合 ・評価上一罪​:構成要件を複数回充足している様に見えるが1回だけ充足していると評価される場合 ​  -法条競合:構成要件相互の関係で1個の構成要件しか充足しないと評価される場合 ​  -包括一罪:数個の行為が独立して構成要件を充足した様に見えるが、1個の構成要件に包括して評価しうる場合(例:短時間に同じ家で数回窃盗) 3 評価上一罪 □ 法条競合 ①特別関係:一般法と特別法の関係にある場合 → 特別法は一般法を排斥する ∴ 特別法の構成要件のみ充足 ​・一般法:適用対象がより広い法​  (例)民法(賃貸借)、​単純横領罪252 ・​特別法:適用対象がより狭い法​ (例)借地借家、​業務上横領罪253 ②補充関係:基本法と補充法の関係にある場合 → 基本法は補充法を排斥する ∴ 基本法の構成要件のみ充足 ・​基本法:基本的に適用する法​  (例)殺人罪 ・​補充法:基本法が適用できない場合に補充的に適用する法​  (例)殺人未遂、殺人予備 ​⇒ 択一関係ともいう ▫︎包括一罪 ①同種の罪の包括一罪 ⇒ 複数の行為は全体として包括一罪 ⑴常習犯・営業犯​:同種類の行為の反復を予想した構成要件の場合 ​(例)常習賭博罪(常習犯)    ・わいせつ文書頒布等罪(営業犯) ⑵接続犯​:時間的・場所的に近接した数個の同種類の行為で密接な関連がある場合 ​(例)夜間の2時間内に3回にわたって同一倉庫から米9俵を盗取した(判) ⑶狭義の包括一罪​:構成要件が同一法益に向けられた数種の行為を規定する場合 ​(例)人を直接拘束してから建物に閉じ込めて間接的に拘束 → 逮捕監禁罪220 ②⭐️ 異種の罪の包括一罪(=混合包括一罪) ⑴意義:複数の行為が異なる構成要件に該当する様に見えるが包括一罪となるもの ⑵ ⭐️要件:被害法益の実質的同一性 + 時間的・場所的近接性 ⑶事例:無銭飲食の意図で料理取得 → 強度の暴行で支払い逃れ ⇒ ×詐欺と強盗利得 ・ 〇強盗利得 ⑷判例:窃盗罪と強盗殺人罪 → 強盗殺人の包括一罪 ・ 詐欺罪と強盗殺人罪 → 強盗殺人罪の包括一罪 ⑸処理:最も重い罪一罪が成立 ⑹不可罰的事前行為:基本的犯罪に対する準備的行為に該当する ​⇒ 基本的犯罪が成立するとそれに吸収される​(例)殺人罪成立の場合の殺人予備罪 ⑺⭐️不可罰的事後行為:状態犯の違法状態の中に通常含まれている行為のため評価し尽くされている行為 ​(例)窃取した財物の毀棄行為(器物損壊)・売却行為(横領) ⇒ 窃盗罪の不可罰的事後行為 ​(例)窃取した預金通帳で払い戻しを受ける ⇒ 窃盗罪と詐欺罪(判)∵ 評価されていない

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    4 数罪

    ①数罪の分類 ​・併合罪​:数罪のうち科刑上一罪でない場合(原則) ・​科刑上一罪54Ⅰ​:⭐️複数の犯罪が成立しているが、刑を科するうえで一罪とする場合 ​⇒ 観念的競合54Ⅰ前段 ・ 牽連犯54Ⅰ後段 がある □ 科刑上一罪 ①観念的競合:1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合 ​(例)1個の爆弾を投げ複数を殺害 → 複数の殺人  ・ 職務中の警官に傷害 → 傷害+公務執行妨害 ⑴処理:数個の罪のうち最も重い刑で処断 ⑵趣旨:行為が1個であるので一罪に近い ⑶行為の一個性:構成要件から離れた自然的観察のもとで評価する(判例) ​・1個:無免許運転と酒酔い運転、​     業務上過失傷害と信号無視 ​・複数:業務上過失致死罪と酒酔い運転、     ​2地点におけるスピード違反 ​⇒ 同時性及び点(瞬間的)又は線(継続的)の行為 ②牽連犯:成立する数個の犯罪それぞれが手段・目的又は原因・結果の関係にあるもの ⭐️例が重要 ​(例)住居侵入して窃盗を行う   ・ 公文書偽造を行いこの文書で詐欺をした ⑴ 処理:数個の罪のうち最も重い刑で処断 ⑵趣旨:手段・原因たる犯罪に随伴して目的・結果たる犯罪が行われることが経験則上通常 ⑶手段・原因の判断:犯罪の性質上、類型的に評価 (具体的な事情は考えず罪名だけで判断するもの) 牽連犯(判例) 住居侵入+殺人or傷害or強姦 住居侵入+窃盗or強盗 文書の偽造とその行使 文書の偽造とこれに基づく詐欺 併合罪(判例) 保険金詐欺目的の放火と保険金詐欺 窃盗教唆と盗品等の有償譲受け 殺人と死体遺棄 強盗殺人とその犯跡を隠すための放火

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    併合罪

    ▫︎併合罪 ①数罪の処断の方法 ・​併科主義​:各犯罪ごとに刑を定めて、その全てを科して処断する ​・単一刑主義​:各犯罪をグループにまとめて、そのグループに応じて処断する ​⇒⭐️日本は単一刑主義を基本。数罪のグループを併合罪 → グループの分け方・刑罰が問題 ②併合罪の範囲45 ⑴同時的併合罪:確定判決を経ていない数罪の場合 ​⇒ 全て1つの併合罪 ⑵事後的併合罪:数罪のうち禁固以上の刑に処する確定判決があった場合 ​⇒ 判決前後に分断 ②併合罪の刑罰 ⑴ 懲役・禁固の加重47​:2個以上の有期の懲役・有期の禁固がある ⇒ ⭐️長期が1.5倍になる ​(例⭐️)殺人2罪の併合罪でともに有期懲役 → 殺人の長期20年 → 長期30年になる ⑵加重の制限​:長期は30年を超えない14Ⅱ・各罪の長期を合算したものを超えない ​(例⭐️)殺人(長期20年)と単純横領(長期5年)で併合罪 → ×殺人1.5倍で30年・〇20+5で25年 ⑶併科の制限​:死刑(×没収)・無期懲役及び無期禁固(×罰金・科料・没収)は()以外の刑なし ⑷短期​:変動なし Q 狭義の共犯の罪数 B+ 問題の所在​:教唆・幇助 → 正犯が数罪を犯した(併合罪or科刑上一罪) ⑴判例​: ・成立する「共犯の個数」は正犯を基準  ・「行為の個数」は共犯行為を基準 (​例1:AがBに同一機会にXYの殺人を教唆​→ B実行 ​⇒ B=殺人2罪 ・ A=殺人教唆2罪の観念的競合 ​(例2:AがBに順次にX → Yの殺人を教唆​→ B実行 ​⇒ B=殺人2罪 ・ A=殺人教唆2罪の併合罪 Q かすがい現象の肯否とその処理 ⑴かすがい現象​:併合罪で各々の罪がある罪と科刑上一罪の関係にある → その数罪全部が科刑上一罪 ⑵問題の所在​​:Aが順次にX → Yを殺害 → AがXとYの2人が住む家に侵入し殺害していた ⑶判例​:肯定 ⇒ 1個の牽連犯となる。批判は多い

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    Q 狭義の共犯の罪数 B+

    問題の所在​:教唆・幇助 → 正犯が数罪を犯した(併合罪or科刑上一罪) ⑴判例​: ・成立する「共犯の個数」は正犯を基準  ・「行為の個数」は共犯行為を基準 (​例1:AがBに同一機会にXYの殺人を教唆​→ B実行 ​⇒ B=殺人2罪 ・ A=殺人教唆2罪の観念的競合

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    Q かすがい現象の肯否とその処理

    ⑴かすがい現象​:併合罪で各々の罪がある罪と科刑上一罪の関係にある → その数罪全部が科刑上一罪 ⑵問題の所在​​:Aが順次にX → Yを殺害 → AがXとYの2人が住む家に侵入し殺害していた ⭐️住居侵入が出たら牽連犯 ⑶判例​:肯定 ⇒ 1個の牽連犯となる。    批判は多い(科刑上1罪は軽い。屋外で2人殺した場合は併合罪で不均衡) →殺人も場合、死刑、無期刑があるので量刑で問題なくなるという見解もある ※かすがい: かすがい〔かすがひ〕【×鎹】 の解説 1 材木と材木とをつなぎとめるために打ち込む、両端の曲がった大釘。 2 人と人とをつなぎとめるもの

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    第三編 刑罰 B 短答 執行猶予だけB+

    1 刑罰の種類 ①刑罰の分類 ​主刑​:独立して科すことのできる刑-死刑>懲役>禁錮>罰金>拘留>科料 ​付加刑​:主刑に付加してのみ科する刑-没収 ②死刑:生命を剝奪する刑 ⇒ 殺人・強盗殺人・現住建造物放火等の重大犯罪のみ。絞首して執行 ③ 懲役・禁錮・拘留:自由を剥奪する刑 ⇒ 刑事施設に拘置して執行 拘留:1日以上30日未満拘置 ⭐️拘禁刑も1月以上20年以下 ​(例)殺人199:5年以上の懲役=5年以上20年以下 ・ 詐欺246-10年以下の懲役=1月以上10年以下 ⑴ 14Ⅱ:有期を加重 → 30年まで可    ・ 有期を減刑 → 1月以下も可 ⑵ 14Ⅰ:死刑・無期を減刑 → 長期30年 ④ 罰金・科料:一定額の財産を剥奪する刑 ・罰金:1万円以上 ・科料・千円以上1万円未満(過料と区別) ※罰金と科料の違いは金額 ⑤没収:犯罪に関係のある物の所有権を剥奪し国庫に帰属させる刑罰 ​⇒ 主刑との併科のみ ⑴種類:任意的没収-裁判官の任意    ・ 必要的没収-必ず没収 ​⇒ ⭐️賄賂罪の賄賂は必要的没収(B+)→賄賂で受け取ったものは必ず国に返す ⭐️没収は付加刑→没収だけでは課されない ⑵没収の対象19 (試験には出ない) ・組成物件1号: 構成要件要素となっている物 例)偽造私文書行使罪における偽造私文書 ・併用物件2号: 現に犯罪に利用又は利用しようと準備した物 例)詐欺のために作成した偽造文書 ・生成物件3号: 犯罪によって新たにできた物 例)私文書偽造罪における偽造私文書 ・取得物件3号: 犯罪当時に既に存在し犯罪によって獲得した物 例)窃盗によって得た財物 ・報酬物件3号: 犯罪の対価として取得した物 例)窃盗幇助の謝礼として得た財物 ・対価物件4号: 3号に該当する物件の対価として得た物 例)窃盗で得た財物の売却代金 ⑶要件19Ⅱ ・​裁判の時に現存:〇賄賂で収受した生地で作ったシャツ・両替した金銭 ×左記生地でコートの裏地 ​・犯人以外の者に属していない:×窃盗した財物 〇左記の売却代金・共犯者の物・情を知って19Ⅱ但  ⑷追徴:19Ⅰの3号又は4号の全部又は一部を没収できない場合 → 価額を徴収 ​⇒ ⭐️賄賂罪は追徴も必要的 2 刑罰の適用 ①刑罰適用の過程:法定刑 → 処断刑 → 宣告刑 の順で刑が確定 □ 法定刑:刑罰法規の各本条に規定されている刑罰 ①懲役・禁錮・拘留 ​⇒ 長期=期間の上限 ・ 短期=期間の下限 ②罰金・科料 ​⇒ 多額=金額の上限 ・ 寡額=金額の下限 ​(例)窃盗罪成立 ⇒ 法定刑=1月以上10年以下の懲役又は1万円以上50万円以下の罰金 □ 処断刑:法定刑に加重・減軽を適用して得られた刑罰 ①科刑上一罪の処理:最も重い刑で処断54Ⅰ、 Q 最も重い刑の判断基準:10、判例 ⑴死刑>懲役>禁錮>罰金>拘留>科料 の順に重い刑 ⑵無期の禁錮と有期の懲役 → 禁錮が重い ​無期禁固 > 有期懲役 ⑶「有期の禁錮の長期」が「有期の懲役の長期の2倍」を超える → 禁錮が重い​禁錮11年 > 懲役5年 ​(例)A罪=禁錮10年 ・ B罪=懲役5年 ⇒ 懲役5年 > 禁錮10年 ⑷下限も最も重い刑を適用(判例) ​(例)窃盗=10年以下or 50万以下罰金・公用文書毀棄=3月以上7年以下 ⇒ 3月以上10年以下懲役 ⑸同じ刑種の場合、上限の重さを比較 → 上限が同じなら下限を比較10Ⅱ ②刑種の選択:死刑or懲役or禁錮or罰金等 ③累犯加重=再犯加重:累犯又は再犯に該当する場合、刑が加重される ⑴要件56:懲役 → 刑の執行後、5年以内に有期懲役の後犯 ⑵効果57:懲役の長期2倍 ⇒ 30年は超えない・短期に変動なし ④法律上の減軽:各本条で定められた刑の減軽 ⑴法律上の減軽事由 ​必要的減軽事由:心神耗弱39Ⅱ・中止未遂43・幇助犯63 ​任意的減軽事由:障害未遂43 ・過剰防衛36・過剰避難37Ⅰ・法律の錯誤38・自首42 ⑵減軽の方法68、14Ⅰ (⭐️試験には出ない) ・死刑:無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮 ・無期の懲役又は禁錮:7年以上の有期の懲役又は禁錮 ・有期の懲役又は禁錮:長期及び短期の2分の1を減ずる ・罰金:多額及び寡額の2分の1を減ずる ・拘留:長期の2分の1を減ずる ・科料:多額の2分の1を減ずる ⑶減軽の回数:複数の減軽事由がある場合でも1回のみ68 ⑤ 併合罪の加重:有期1.5倍 ⑥ 酌量減軽66:情状に酌量すべきものがあるとき、裁判所の裁量により刑を減軽 □ 宣告刑 ①宣告刑:処断刑の範囲内で具体的に被告人に言い渡す刑罰 ②量定:宣告刑を定めること=量刑 ​⇒ 裁判所の自由裁量で決める。合理性は必要 3 刑罰の執行 ①⭐️ 執行猶予:言渡し+執行猶予 → 猶予期間、全部又は一部の執行猶予 → 期間中事件なし → 言渡し消滅 ​ ・刑の全部の執行猶予:言渡し → 期間中事件なし → 言渡しが消滅  ・​刑の一部の執行猶予:言渡し=実刑+執行猶予 → 実刑の執行 → 期間中事件なし → 言渡し消滅 □ 全部の執行猶予 ①要件 ⑴初度の執行猶予の要件25Ⅰ ​ⅰ⭐️前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 ​ⅱ⭐️上記以外で執行後5年以内に禁錮以上の刑なし +(ⅰorⅱ +) 今回、3年以下の懲役・禁錮or 50万以下罰金+情状 ⑵再度の執行猶予の要件25Ⅱ:前に禁固以上の刑 かつ 刑の全部の執行猶予中の者 ・今回、1年以下の懲役・禁錮 + 情状が特に酌量すべきもの + 保護観察期間内でないこと ②保護観察:社会の中で保護司等の指導監督の下、更生を図る処分 ​⇒ 初度の執行猶予=裁量による 再度の執行猶予=必要的 ③執行猶予期間:1年以上5年以下 ④取消し ​必要的取消し26​:禁固以上の刑で執行猶予なし等 ​裁量的取消し26の2​:猶予期間内に罰金・保護観察中の違反等 ⑤⭐️効果27:猶予期間経過で、刑の言渡しは法的に効力を失う ⑴ 前に禁固以上の刑に処せられたことがない者に該当 ⑵累犯加重なし・法令による職業資格等の制限も消滅 ⑶過去に執行猶予付きの有罪判決を受けた事実を不利に斟酌はできる(⭐️判例) □ 一部の執行猶予 (ほとんど出ない) ①要件:禁錮以上なしor 全部執行猶予or 5年以内 + 今回3年以下の懲役・禁錮かつ情状27の2 ② 保護観察​:裁量による ③執行猶予期間​:1年以上5年以下 ⇒ 起算日は執行が終わった日 ④取消し​:必要的又は裁量的27の4・5 ⑤効果​:猶予期間経過で減刑