商標 審判2
問題一覧
1
商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿である。 そのため、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考えられ、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなる。 そこで、法は、不使用取消審判を設けることとした(50条)
2
不使用取消審判制度は、公益的な観点から職権又は審査官の審判請求により不使用商標の取消がなされていたこともあり、公益的な重要性は元々高いと言えるうえに、近年、不使用の登録商標の累積により、他人の商標選択の幅の狭小化、特許庁における審査負担増・審査遅延等の事態が生じており、これを抑制する手段として当該審判の公益的重要性が一層高くなってきていること、 「利害関係」の有無について争われることにより審理の結論が出るのが遅れるというケースも存在すること、 利害関係を作ろうと思えば、同一又は類似の商標を「出願」又は「使用」をするという形で簡単に作ることが可能であること、 更新時の使用状況の審査を廃止したため、特許庁が直接的に不使用商標の取消に関与することができなくなったこと、 諸外国でも「何人」にも請求を認めている例が少なくないこと、 を背景にして、不使用商標の整理についての一層の促進を図るべく、請求人適格を「何人」にも認めることとした(50条1項)。
3
以前は、取消審判の請求に係る指定商品等についての登録商標の不使用の事実は、審判の請求人が証明しなければならないとされていた。 しかし、請求人が不使用の事実を証明することはきわめて困難であり、不使用取消審判制度はほとんど実効をあげることができなかった。 ところが商標権は、もともと出願人が「自己の業務に係る商品等について使用をする」ということで与えられるものであり(3条1項柱書)、商標権者は、その商標の使用をしているかどうかを最もよく知っているだけでなく、使用をしていることの証明も容易にできるはずである。 そこで、登録商標の使用に関する挙証責任は、審判の被請求人たる商標権者に負わせることとした(50条2項)。
4
被請求人が使用の事実を証明する場合に、取消請求に係る指定商品等の全てについて使用の事実を証明しなければならないこととすれば、その証明に要する手数が大変になるだけでなく、審判の迅速な処理も困難となる。 また審判の請求人は自分で必要とする指定商品等だけについて取消請求をするべきであると考えられる。 そこで、被請求人は、取消請求に係る指定商品等のいずれかについての使用の事実を証明すれば足りることを明らかにした(50条2項)。
5
駆け込み使用を認めないこととしたのは、商標権者が取消審判の請求がされ得ることを譲渡交渉、ライセンス交渉等での相手方の動きから察知した場合に、登録商標について審判請求の登録前に駆け込み使用をすることにより取消を免れうるという問題があったこと、 したがって、譲渡交渉等を申し出る者はやむを得ず先ず不使用取消審判を請求し、その登録がされるのを待ってから譲渡交渉等を開始することとなる結果、審判請求の増加及びその取り下げ等による事務処理負担の増加という弊害をもたらしていたこと、 駆け込み使用を認めないこととすれば、審判請求を実際に行うことなく譲渡交渉等が円滑にまとまるという効果も期待できること、 欧州諸国も同様の制度を採用していること、等の理由に基づくものである。
6
取消しの効果が審決確定日から発生することとすると、仮に当該審判を請求した者が他人の不使用の登録商標を使用していた場合には、審判により他人の当該商標登録を取り消すことができても、審決確定までの間については不使用登録商標に係る商標権に基づく損害賠償等の請求を免れることができなかった。 しかし、取り消された商標登録に係る商標は、結局は、法により保護すべき信用が発生していないか、又は一度発生した信用も消滅しているものであり、このような実体のない商標の登録に基づいて損害賠償の請求等が行われるのを認めることは適当でない。 そこで、登録主義の建前を維持しつつも、実質的には使用主義の考え方を最大限採り入れ、商標を不使用の状況に置くことに対して大きなリスクを与えるべく、取消しの効果を審判請求の登録の日まで遡及させることとした(54条2項)。 なお、取消効果の遡及日を審判の請求の登録の日としたのは、①取消しの要件である不使用期間の満了日であって取消しの要件を充足した日であること、②EU諸国の多くも不使用期間満了日まで遡及させる法制を採用していること、③取消審判を請求する旨が登録原簿に掲載された日であるので、公示の原則も担保されること等を考慮したものである。
7
不使用取消審判の請求は、全体として一の事件を構成するものであり、被請求人はその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明すればその商標登録の取消を免れるものとされている(50条2項)から、不使用取消審判の請求人がその請求に係る指定商品又は指定役務の範囲を自由に減縮することは請求の要旨を変更するものであり許されない。 そこで、このような趣旨を明確にするため不使用取消審判についての特許法155条3項の準用をやめることとした。
8
商標権者は指定商品等について登録商標の使用をする権利(25条)を有するが、禁止権の範囲(37条1号)での商標の使用は、他の権利と抵触しない限り事実上の使用ができるだけで法律上の権利としては認められていない。 そこで、このような商標の使用であって商品の品質等の誤認又は商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものの使用を故意にしたときは、商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、商標権者に制裁を課すべく、請求により、その商標登録を取り消すこととした(51条)。
9
51条の取消審判は一種の制裁規定であるが、いつまでも取消審判を請求できることとするのはあまりに酷である。すなわち、不当な使用をやめて5年以上経過すれば、その間の使用によって信用が当該商標に蓄積され、それを取り消すのは、たとえ過去に商標の不当な使用があったとしても、その後の正当な商標の使用による信用を破壊することとなるので妥当ではないからである(52条)。
10
分離移転及び分割移転を認めたことに対応する公益的な観点からの事後的な誤認混同防止のための担保措置の一つとして設けられた取消審判についての規定である。 自己の登録商標の使用であっても、不正競争の目的で他の類似関係にある登録商標の商標権者等の業務に係る商品等と混同を生ずる使用をしたときは、その制裁として、そのような使用をした登録商標に係る商標登録全体を審判により取り消すこととした(52条の2)。
11
「不正競争の目的」を取消しの要件としたのは、需要者間に混同が生じるような事態に至っている場合には、類似商標を有する両当事者の少なくとも一方が、混同状態を放置することにより何らかの利益を得ようとしていることが想定され、「不正競争の目的」が認定されるものと考えられること、及びこれを要件としない場合には、利益を害されている側の商標まで「混同」を理由に取り消されかねず、妥当性を欠く結論となるおそれがあるからである。
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1
商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿である。 そのため、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考えられ、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなる。 そこで、法は、不使用取消審判を設けることとした(50条)
2
不使用取消審判制度は、公益的な観点から職権又は審査官の審判請求により不使用商標の取消がなされていたこともあり、公益的な重要性は元々高いと言えるうえに、近年、不使用の登録商標の累積により、他人の商標選択の幅の狭小化、特許庁における審査負担増・審査遅延等の事態が生じており、これを抑制する手段として当該審判の公益的重要性が一層高くなってきていること、 「利害関係」の有無について争われることにより審理の結論が出るのが遅れるというケースも存在すること、 利害関係を作ろうと思えば、同一又は類似の商標を「出願」又は「使用」をするという形で簡単に作ることが可能であること、 更新時の使用状況の審査を廃止したため、特許庁が直接的に不使用商標の取消に関与することができなくなったこと、 諸外国でも「何人」にも請求を認めている例が少なくないこと、 を背景にして、不使用商標の整理についての一層の促進を図るべく、請求人適格を「何人」にも認めることとした(50条1項)。
3
以前は、取消審判の請求に係る指定商品等についての登録商標の不使用の事実は、審判の請求人が証明しなければならないとされていた。 しかし、請求人が不使用の事実を証明することはきわめて困難であり、不使用取消審判制度はほとんど実効をあげることができなかった。 ところが商標権は、もともと出願人が「自己の業務に係る商品等について使用をする」ということで与えられるものであり(3条1項柱書)、商標権者は、その商標の使用をしているかどうかを最もよく知っているだけでなく、使用をしていることの証明も容易にできるはずである。 そこで、登録商標の使用に関する挙証責任は、審判の被請求人たる商標権者に負わせることとした(50条2項)。
4
被請求人が使用の事実を証明する場合に、取消請求に係る指定商品等の全てについて使用の事実を証明しなければならないこととすれば、その証明に要する手数が大変になるだけでなく、審判の迅速な処理も困難となる。 また審判の請求人は自分で必要とする指定商品等だけについて取消請求をするべきであると考えられる。 そこで、被請求人は、取消請求に係る指定商品等のいずれかについての使用の事実を証明すれば足りることを明らかにした(50条2項)。
5
駆け込み使用を認めないこととしたのは、商標権者が取消審判の請求がされ得ることを譲渡交渉、ライセンス交渉等での相手方の動きから察知した場合に、登録商標について審判請求の登録前に駆け込み使用をすることにより取消を免れうるという問題があったこと、 したがって、譲渡交渉等を申し出る者はやむを得ず先ず不使用取消審判を請求し、その登録がされるのを待ってから譲渡交渉等を開始することとなる結果、審判請求の増加及びその取り下げ等による事務処理負担の増加という弊害をもたらしていたこと、 駆け込み使用を認めないこととすれば、審判請求を実際に行うことなく譲渡交渉等が円滑にまとまるという効果も期待できること、 欧州諸国も同様の制度を採用していること、等の理由に基づくものである。
6
取消しの効果が審決確定日から発生することとすると、仮に当該審判を請求した者が他人の不使用の登録商標を使用していた場合には、審判により他人の当該商標登録を取り消すことができても、審決確定までの間については不使用登録商標に係る商標権に基づく損害賠償等の請求を免れることができなかった。 しかし、取り消された商標登録に係る商標は、結局は、法により保護すべき信用が発生していないか、又は一度発生した信用も消滅しているものであり、このような実体のない商標の登録に基づいて損害賠償の請求等が行われるのを認めることは適当でない。 そこで、登録主義の建前を維持しつつも、実質的には使用主義の考え方を最大限採り入れ、商標を不使用の状況に置くことに対して大きなリスクを与えるべく、取消しの効果を審判請求の登録の日まで遡及させることとした(54条2項)。 なお、取消効果の遡及日を審判の請求の登録の日としたのは、①取消しの要件である不使用期間の満了日であって取消しの要件を充足した日であること、②EU諸国の多くも不使用期間満了日まで遡及させる法制を採用していること、③取消審判を請求する旨が登録原簿に掲載された日であるので、公示の原則も担保されること等を考慮したものである。
7
不使用取消審判の請求は、全体として一の事件を構成するものであり、被請求人はその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明すればその商標登録の取消を免れるものとされている(50条2項)から、不使用取消審判の請求人がその請求に係る指定商品又は指定役務の範囲を自由に減縮することは請求の要旨を変更するものであり許されない。 そこで、このような趣旨を明確にするため不使用取消審判についての特許法155条3項の準用をやめることとした。
8
商標権者は指定商品等について登録商標の使用をする権利(25条)を有するが、禁止権の範囲(37条1号)での商標の使用は、他の権利と抵触しない限り事実上の使用ができるだけで法律上の権利としては認められていない。 そこで、このような商標の使用であって商品の品質等の誤認又は商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものの使用を故意にしたときは、商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、商標権者に制裁を課すべく、請求により、その商標登録を取り消すこととした(51条)。
9
51条の取消審判は一種の制裁規定であるが、いつまでも取消審判を請求できることとするのはあまりに酷である。すなわち、不当な使用をやめて5年以上経過すれば、その間の使用によって信用が当該商標に蓄積され、それを取り消すのは、たとえ過去に商標の不当な使用があったとしても、その後の正当な商標の使用による信用を破壊することとなるので妥当ではないからである(52条)。
10
分離移転及び分割移転を認めたことに対応する公益的な観点からの事後的な誤認混同防止のための担保措置の一つとして設けられた取消審判についての規定である。 自己の登録商標の使用であっても、不正競争の目的で他の類似関係にある登録商標の商標権者等の業務に係る商品等と混同を生ずる使用をしたときは、その制裁として、そのような使用をした登録商標に係る商標登録全体を審判により取り消すこととした(52条の2)。
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「不正競争の目的」を取消しの要件としたのは、需要者間に混同が生じるような事態に至っている場合には、類似商標を有する両当事者の少なくとも一方が、混同状態を放置することにより何らかの利益を得ようとしていることが想定され、「不正競争の目的」が認定されるものと考えられること、及びこれを要件としない場合には、利益を害されている側の商標まで「混同」を理由に取り消されかねず、妥当性を欠く結論となるおそれがあるからである。