ログイン

財務分析_日本証券アナリスト協会テキスト

財務分析_日本証券アナリスト協会テキスト
56問 • 1年前
  • ユーザ名非公開
  • 通報

    問題一覧

  • 1

    ③利益の算定過程において作成者がデータを集計する必要性  利益は定量的な情報であるのに加えて、 [1] という特徴も有する。 この特徴を際立たせるため、企業が行った日々の取引をありのままに記録した [2] と呼ばれる帳簿を、利益に代えて開示する場合を想定する。いわば利益情報の元 となる [3] を提供し、その加工・集計は、[4] に委ねるのである。  [2] の段階で詳細に区分されていたデータは、現行制度のもとでは、財務諸表を 作成する際に、報告企業によって [5] され、一部の要素が失われていく。 そうしたプロセスを経る前のデータを開示する訳であるから、ここで想定している仕 組みのもとでは、例えば、得意先別、営業拠点別(支店別)、あるいは個別製品ごとの 売上高に関する詳細な情報を得ることができる14。 これと同様に、現行会計基準では「機械設備」「建物」などのカテゴリーで一括されている [6] を、形態や機能に基づき より細かく分類したデータなども得ることができるであろう。  上記のとおり、[7] には長所も見られる。他方でこれも上記のとおり、この仕組みのもとでは、財務諸表を 作成する企業が行ってきた集計作業の負担を、情報の利用者である [4] が肩代わりする必要がある。企業の価値を評価するため、将来にわたって安定的に生み出される [8] することが達成目標であれば、[9] を統合・集計して算定することは不可欠といってよい。ところが、企業の外部にいて限定的な情報しか得 られない[4] がデータの集計を担うのは、実際には不可能といってよい。[7] が実際には受け入れられず、財務諸表を作成する企業自身がデー タの集計を担っているのは、そういう事情による。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 14 現行会計基準でも、事業部門別、あるいは地域別という単位での [10] の開示は求められているが、先に例示した次元の極めて細かな区分に基づく情報は開示されていない。

    集計・要約された情報, 「仕訳帳」, 「生のデータ」, 投資家, 適宜集計・統合, 資本設備, 「代替的な情報開示の仕組み(仕訳帳に相当するデータの開示)」, 利益を予測, 「実績値としての成果」, 詳細情報(セグメント情報)

  • 2

    「財務分析」は、証券アナリストが日々の業務として行う[1]の基礎であり、CMA にとって必須となる知識やスキルを学習します。 第1次レベルでは、[2]を学ぶこと から始めます。[2]に何が記載されているのかを知り、次に記載のルール[(3)]と[4]の基礎を学びます。 第1次レベルの最後には、「財務分析の基礎」として、それまでに学んだ[2]に関する基礎知識をベースに、基本的な分析手法を学びます。 講座テキストは、受講者の学習しやすさに従来以上に配慮しており、CMA資格者が習得すべき知識・スキルを明示した「学習ポイント」で習得できる内容を新たに書き下ろしたものです。講座テキストを学習するだけで、第1次試験に合格できる知識・能力を習得できるように作成しています。講座テキストの構成は、各分野で共通しており、各章の冒頭で学習ポイントを示したうえで、本文による説明とともに、要所に図解による例示や例題を含めた具体的な数値例を配して、説明を加えています。また、各章末にはその章で学習した内容をまとめたサマリーを掲載しており、理解が必須となる事項を再確認できます。さらに、各章末に設けた練習問題を繰り返し学習することによって、理解を深められる構成としています。第1次試験では、「学習ポイント」の習得度を確認する問題が出題されますので、講座テキストを着実に学習し、試験に合格できる知識・能力の習得を目指してください。なお、「財務分析」の講座テキストでは、できるだけ平易に解説していますが、「分析」手法を学ぶうえで数式を使用して説明しているところもあります。理解が十分でないと感じる場合には、「数量分析と確率・統計」のテキストを参照して、もう一度、同じ個所を読んで見てください。最初に読んだときには理解ができなかった数式が理解できるかもしれません。テキストを1回読んだだけでは十分に理解できなくても、多くの例題や章末の練習問題を繰り返し解いて、テキストの説明箇所を繰り返し読み込むことで、テキストの記載内容を身に付けられるように学習を進めてください。

    企業分析, 財務諸表, 会計基準, 会計学

  • 3

    この章では、証券アナリストを志す諸氏が、なぜ財務会計や財務諸表分析を学ばな ければならないのか、その学習目的を明らかにする。 すなわち証券アナリストが日々 業務として行う企業分析において、財務会計や財務諸表分析の知識がどのような局面 で、どう役立つのかを具体的に説明する。   企業の業績を事後的にとらえた利益の情報は、「過去の情報であり、企業の将来を予 測しようとする証券アナリストにとって価値の乏しい情報ではないか」という疑問が 寄せられることも少なくない。実際、将来に予想されるキャッシュフローを反映した 株価を、単年度の利益だけで説明するのは極めて難しい。例えば、会計上の利益は赤 字が続いているにもかかわらず、株価が堅実に上昇している企業を見かけるのは稀で はない。  ただし、このことは、[1]の価値が乏しいことを意味しない。[1]は継続 的に開示されており、過去から現在に至るまでの利益の変化を知ることができる。ま た、[2]においては、最終的な投資の成果を反映した当期純利益の他、経常利 益や営業利益などの情報も提供されている。さらに、利益の情報に加え、[3] においては、企業の財産に関する情報も提供されている。詳しくは後述するが、関連 し合うデータを適切に結びつけ、個々のデータの過去数年にわたる変化に着目すれば、 過去の事実に基づく[1]は、[4]と[5]という証券アナリストの業務に 有益な情報源となり得る。利益は過去の情報でありながら、将来の動向に関する要素 を潜在的に含んでおり、適切な加工を行えば、証券アナリストが必要とする情報を利 益から引き出すことができるのである。  もちろん、このような加工を行うためには、加工のための具体的な手法を知っておくとともに、そもそも会計上の利益はなぜ将来予測に役立つ要素を含んでいるのか、 会計上の利益は具体的にどう計算・開示されているのかについても知識を得ておかな ければならない。これらの諸点は、一連のテキストを通じて少しずつ学んでいくこと となる。

    利益情報, 損益計算書, 貸借対照表, 業績予測, 企業評価

  • 4

    1. 企業分析における財務分析の意義 (1) 証券アナリストとは  最初に、日本証券アナリスト協会のウェブサイトより、証券アナリストについての 記述を引用してみたい(https://www.saa.or.jp/cma_program/step/about/index.html)。  証券アナリストとは、証券投資の分野において、高度の[1]と[2]を応 用し、各種情報の分析と[3]を行い、[4]や[5]を提 供するプロフェッショナルです。  近年、資本市場の発達と高度化に伴って、証券アナリストの所属する業務が大き く広がるとともに、一層専門化が進んでいます。例えば、証券会社や資産運用会社 などで[6]を基に、個別証券の分析・評価を行うのが、[7]です。  一方、資産運用会社や銀行・保険会社などの[8]には、様々な投資目的に 適合した証券を組み合わせて、総合的な資産運用に携わる[9]という専門職がいます。この他、[10]、[11]、[12]などと呼ばれる職種の方がいます。 証券アナリストは、こうした一連の投資の[13]に参画するプロフェッショ ナルを総称するものとなっています。(後略)  上記の記述にあるように、どのような部署に属するにせよ、将来における[14]を通じて個々の企業の[15]するのが、証券アナリストの主たる業務であ る。通常は証券会社に属し、投資家に対し証券投資に必要な情報を仲介し提供する[16]のアナリストであっても、通常は銀行・生命保険会社・投資顧問会社などの 機関投資家に属し、自ら資金運用のためのリサーチ業務を行う[17]のアナリス トであっても、その点に違いはない。

    専門知識, 分析技術, 投資価値の評価, 投資助言, 投資管理サービス, 産業・企業調査, リサーチ・アナ リスト(狭義の証券アナリスト), 機関投資家, ポートフォリオ・マネ ジャー(ファンド・マネジャー), 投資ストラテジ スト, 投資アドバイザー, マーケット・アナリスト, 意思決定過程, 業績の予 測, 投資価値を評価, セ ルサイド, バイサイド

  • 5

    (2) ファンダメンタル分析において証券アナリストに期待される役割  では証券アナリスト達は、具体的にどのような形で、企業の投資価値を評価してい るのであろうか。また、投資価値を評価する過程で、いかなる企業分析が、なぜ求め られるのであろうか(次頁の図表 1 - 1 参照)。  証券投資には多様なスタイルがあり得る。その中には、経験や勘に大きく依存して いるものも見られる。また、客観的なデータに基づく証券投資であっても、そのデー タがなぜ将来の企業業績を反映しているのか、なぜ投資価値の評価に役立つのか、理 論的な裏付けに乏しいと考えられるものも見られる1。投資家が自己の判断により、こ れらのスタイルを選択するのは自由だが、このような投資スタイルで証券投資に臨む と、より多くの有用な情報から企業の将来業績を「科学的に正しく予測した投資家」 と比べて、不利な立場を強いられる。より具体的には、「正しい」業績予測を行った投 資家と比べて、より多くのリスクを負担しなければ、彼らと同じだけのリターンを期 待できないこととなる。  高度な知識を有する専門家としての証券アナリストが提供するのは、このようなス タイルの投資に関連する情報ではない。証券アナリストが提供するのは、個々の証券 のファンダメンタル価値を見出すのに役立つ情報であり、ファンダメンタル価値を見出すために証券アナリストが行う分析は、ファンダメンタル分析と呼ばれる。ここで 証券のファンダメンタル価値(本源的な価値)とは、公表された情報を投資家が正し く分析し、将来の業績予測に役立つ内容を引き出したときに形成されるはずの価格を いう。言い換えれば、証券の価格形成メカニズムに関する理論に照らして、「本来形成 されるはずの価格」をいう。  このような分析が意味を持つのは、長期的にはともかく、少なくとも短期的には、 実際の証券価格とファンダメンタル価値との間に食い違いが生じ得るからである2。何 らかの事情によりファンダメンタル価値と比べて今割安な証券があれば購入し、割高 な証券を売却するのが、ファンダメンタル分析に基づく正しい意思決定となる。つま り、証券市場には常に誤って価格付けされている(ミスプライスされている)銘柄が 存在しているという現状認識のもとでは、より正確に、より適時にファンダメンタル 価値を知ることを通じて、より多くのリターンが期待されることとなる。  このファンダメンタル価値を、公表された情報から容易に導出可能であれば、一般 の投資家は情報の仲介者であるアナリストの助けを借りずに、自分自身で投資に関す る意思決定を行うかもしれない。しかし、実際には専門知識を持たない一般の投資家 にとって、ファンダメンタル価値を推定するのは困難である。ここに、専門家として の証券アナリストが一般の投資家に代わってファンダメンタル分析を行うことの意義 がある。  一般の投資家は、ファンダメンタル分析のために証券アナリストに支払うコストを、 証券アナリストが仲介し提供してくれる情報の便益に見合うものと考えている。つま り、コストを負担してでも、専門家としての証券アナリストが行ったより正確なファ ンダメンタル分析の結果を活用すれば、割安銘柄と割高銘柄をより正確に見極めるこ とができる。その便益が大きいため、証券アナリストが業務として行うファンダメン タル分析に期待が寄せられるのである。 ------------------------------------------------------------------ 1 過去における株価の変動が将来も繰り返されるという仮定のもとで、将来における株価の動きを予測し、 「買い時」と「売り時」を見極める方法がその典型例である。企業を取り巻く経済環境や企業自身が変化しているにもかかわらず、株価が過去の経験に基づく変化のパターンを繰り返すというのは科学的根拠に乏しい推論といえる。 2 仮に全ての情報が公表と同時に正しく分析され、新たな情報をもとに割高・割安と判断された証券につ いて瞬時に無コストで裁定取引が行われるのであれば、ファンダメンタル分析は意味を失うこととなる。 いわゆるインデックス・ファンドなどしか投資対象とせず、市場に勝とうとする意欲を見せない消極的 な投資家は、証券市場に関する上記の見方を暗黙のうちに採っていることとなる(より正確には、ファンダメンタル分析はコストに見合う便益を生み出さないというスタンスをとっていることとなる)。

    ***, ***

  • 6

    (3) ファンダメンタル分析で財務データが果たす役割  では、ファンダメンタル分析は、具体的にどのようなプロセスで行われるのであろ うか。また、企業の業績予測は、ファンダメンタル分析のプロセスで、どのような意 味を持つのであろうか。詳しくは一連の講座で将来詳しく学習することとし、ここで は「財務会計や財務諸表分析の知識が証券アナリストにとってなぜ必要か」という疑 問に答えるポイントに絞って説明したい。  S.H. ペンマン『アナリストのための財務諸表分析とバリュエーション』(邦訳、有 斐閣 2018 年 3 月)によれば、ファンダメンタル分析は、[1]、[2]、[3]、[4]、および[5]という、5 つのプロセスからなるとされている(図表 1 - 2 参照)。  このうちの[1]と[2]は、その後に予定されている[6]に先立ち、([7]な ものも含む)基礎データを収集し、分析するプロセスを指す。[8]などのデータが 持つ意味は、分析対象の企業が置かれている[9] に応じて変わってくる。財務データを正しく解釈するためには、[10] と[11]が不可欠となる。  続く[3]は、一連のプロセスにおける中核をなす。そこでは与えられた諸データを基に、企業の[12]の基礎をなす企業の[13]を予測することとなる。企業活動から生み出されるはずの[14]は、直接 的なものから間接的なものまで、多様な手法で予測される。具体的に何を見積もるの か(営業キャッシュ・フローなのか、配当収入なのか、あるいは会計上の利益なのか) は、次のプロセスで採用するモデルに依存している。なかでも会計上の利益が予測対 象としたモデルは望ましい属性を有しており、有力な選択肢と考えられている。財務 データを読み解くスキルを一連の講座で学ぶことになっているのもそのためである。  さらに[4]では、特定の企業評価モデルに基づき、直前のステップで予測した[15] が[16]へと変換される。先に説明したとおり、ファンダメンタル分析では、 [17]に照らして株価が割高となっている銘柄や割安となっている銘 柄の特定化が目指されている。そのファンダメンタル価値を求めるため、ここでは直 前のプロセスで予測した[15]を、特定の評価モデルに基づき[18]に変換す る作業が求められる3。  最後の[5]では、上記のステップから導き出された結論に基づき、[19]が実 際に行われる。具体的には、保有している銘柄について[20] [21] [22]などの意思決定が行われるのである。  ここで説明したとおり、ファンダメンタル分析では、企業が将来に生み出す[23]に主眼が置かれている。[13]は将来の[24]に依 存していることから、どのような評価モデルを[4]のステップで選択するにせよ、ファ ンダメンタル分析を行う証券アナリストは企業を分析し、財務データを用いてその業 績を予測しなければならないのである。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 3 詳しくは後に学ぶが、[25]や[26]がよく知られている。いずれのモデルも、企業 の価値は将来に予想されるキャッシュフローで決定されるとしたうえで、多様な形で予想した将来キャッ シュフローを現在の価値に割り引いて企業価値を推定する。

    事業内容の理解, 情報 の分析, 予測の展開, 予測の価値評価への変換, 価値評価に基づいた取 引, 定量的な分析, 定性的, 利益率, 環境(同業他社との関係や経営戦略など), 周辺的な情報の収集, 分析, 価値(投資対象としての価値), 将来キャッシュフロー, キャッシュフロー, 回収額, 企業の投資価値, ファンダメンタル価値, 割引現在価値, 投資意思決定, 「保持(現状維持)」, 「買増し」, 「売却」, キャッ シュフローの予測, 業績, 配当割引モデル, 残余利益モデル

  • 7

    (4) 求められる財務諸表分析への精通  証券アナリストは、業績予測のために多様な情報を利用する。利用される情報には [1]なものも含まれるが、中心的な分析対象は[2]である。会計上の 利益は[3]を事後的にとらえたものであり、直接的には企業が将来に生み 出すキャッシュフローを予測したものではない。ただし、一連の講座で今後学ぶよう に、一定の条件([4]と呼ばれる)を満たした利益は、過去 の実績値でありながら、将来の利益あるいは将来のキャッシュフローを予想するのに 役立つ情報が含まれている4。財務諸表分析は、そうした「将来予測に資する情報」を抽出するためのツールである5  ただし、ここでいう財務諸表の分析には、かなり高度な専門知識が求められる。デ ータの分析に係る一般的な知識だけでは、[5]の適切な分析を期待できない。こ うした事情のため、証券アナリストは、「財務諸表分析」と総称される一連の分析手法、 すなわち与えられた 1 次データを業績予測に役立つように加工する手法を習得しなけ ればならない。一連の講座に「財務分析」というプログラムが設けられ、財務諸表分 析の手法の説明に多くの紙面が割かれているのはそのためである。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 4 クリーンサープラスの制約とは、簡単にいうと、「[6]と[7]が連動していること」を 意味する。より具体的には、[8]、[9]、[10]、[11]などが行われない状況で、[12]が損益計算書上の[13]と一致する関係が保たれていることをいう。 5 利益情報ではなく、実績値としてのキャッシュフローを用いて将来キャッシュフローを予測する方法も 想定できる。利益情報を「迂回」せず、現在までのキャッシュフローから将来のキャッシュフローを直 接予測する方法のほうが自然に思える。にもかかわらず、敢えて利益情報を用いて将来キャッシュフローが 予測されるのは、そのような予測にとって、キャッシュフローよりも[14]のほうが有用であることが 多くの実証研究において指摘されており、かつそうした事実に[15]を与えるモデルが存在しているからである。

    定性的, 定量的な会計情報, 企業活動の成果, 「クリーンサープラスの制約」, 利益情報, 貸借対照表, 損益計算書, 増資, 配当金の支払い, 自社株買い, 減資, 株主資本の増減, 利益(または損失), 利益情報, 合理的な解釈

  • 8

    設例 1 財務諸表分析の手法を知ることの重要性  今、投資対象として A 社と B 社を想定する。A 社は利益 1,000、B 社は利益 500 であっ たとする。また、使用総資本は A 社が 10,000、B 社が 2,000 であったとする。  このとき、損益計算書や貸借対照表のデータを組み合わせて利用する手法を知らなけ れば、利益と使用総資本のそれぞれについて、絶対額だけに基づく投資判断が行われて しまうかもしれない。  しかし、投資家にとっては資金運用の効率性を表している資本利益率(利益÷資本) も重要である。これを計算すると、A 社が [1]なのに対し、B 社は [2]ということが わかる。資金運用の効率性も投資家の関心を引くと考えられるから、絶対額の利益に加 えて資本利益率も重視しなければならない。このことからも明らかなように、損益計算 書や貸借対照表に記載されている 1 次データに加え、これらを分析目的に合わせて加工 した 2 次データを求める手法(財務諸表分析)は、証券アナリストを志す諸氏にとって 必須の知識となる。

    10%, 25%

  • 9

    (5) 財務諸表分析の基礎となる会計基準への精通  さらにいうと、与えられた利益のデータを[1]という目的に照らして適切に用 いるためには、 ①そもそも会計上の利益はどのような過程を経て計算・開示されるの か、 ②会計上の利益はどのような特徴を有しているのかなどの知識も必要となる。 つ まり、会計上の利益がどのような[1]に基づいて計算・開示されてい るのか、その仕組みを知っておく必要がある。というのも、与えられた利益データは 財務諸表分析のインプットとして常にそのまま利用できるとは限らず、上記の財務諸 表分析に先立って、利益のデータに[2]が求められることもあるからである。  このとき、会計上の利益がどのような意味で[1]に有用であり得るのか、逆に どのような[4]を有しているのかを知らなければ、適切な加工・修正はできない。一 連の講座で会計ルールの基本的な仕組みの理解も求められているのは、そのためである。

    業績予測, ルール(会計基準), 加工・修正, 限界

  • 10

    設例 2 会計数値の計算過程を知ることの重要性①  今、投資対象として A 社と B 社を想定する。A 社は利益 1,200、B 社は利益 1,000 で あったとする。両社はともに大量の商品を仕入れ・販売しているため、商品の流れを正 確に把握するのが困難な状況にある。そのため A 社は、先に仕入れた商品から先に販売 されたという仮定([1])のもとで、毎期の利益を計算している。他方の B 社は、 払い出された商品は全て期中の平均単価に見合う価値を有しているという仮定([2])のもとで、毎期の利益を計算している。  詳しくは次回以降のテキストで学ぶが、毎期末に保有している商品の数量がほぼ一定 で、商品の価格が一貫して上昇している場合は、[1]のもとで計算した利益の方 が、[2]のもとで計算した利益より大きくなることが知られている。  会計上の利益が上記のような仮定のもとで計算されていることを知らなければ、A 社 と B 社の利益の絶対額だけを比較して、投資判断を行ってしまう恐れがある。しかし、 [3]の計算過程を知っていれば、A 社と B 社が異なる仮定を採用していることの[4]を分析してから、両社を比較することができる。  例えば、A 社が[1]を採用しているため、もし同社が[2]を採用していた ら算定されていたはずの利益 800 と比べて、利益が 400 だけ相対的に多く計上されて いたことが明らかになったとする。このような情報は、A 社と B 社の優劣に関する判断 に影響を及ぼし得るものといえるであろう。

    先入先出法, 総平均 法, 会計数値, 影 響額

  • 11

    設例 3 会計数値の計算過程を知ることの重要性②  投資対象として、 [1] (貸借対照表の総資産)が同規模のC社とD社を想定する。 C 社は [2] (損益計算書末尾の数値)が 500、D 社は当期純損失が 100 であった とする。上記の情報しか入手できない状況では、 [3] の大小によって投資判断を行う しかない。  ただし、C 社の [4] (毎期継続的・反復的に行われる企業活動の成果で、事業投 資の成果と金融投資の成果を合わせたもの)が過去数期も一貫して 500 前後の黒字だっ たのに対し、D 社の[4]は過去数期一貫して 1,000 前後の黒字だったが、今期だけ [5] (一過性の損失)が 1,100 だったため、最終的な利益は赤字になってしまった ことが、損益計算書における利益の [6] から明らかになれば、先ほどの投資判断 は変わってくるかもしれない。  というのも、仮に D 社が過去数期にわたって [4] を 1,000 前後計上してきたと すれば、D 社の [7] は C 社より優れているともいえるからである。会計利益の [8 ] を知ることは、損益計算書や貸借対照表で採用されている表示形式の意味 を知ることにもなる。この点に関する知識があれば、上記のようなケースで比較対照さ れている企業の投資価値を正しく見極めることが可能となる。

    使用総資本, 当期純利益, 純利益, 経常利益, 特別損失, 多段階表示, 潜在的な収益力, 計算過程

  • 12

    (6) 要約  本節では、まず証券アナリストが企業分析を行う目的を説明した。証券アナリスト には、業績予測を通じた投資価値の評価が期待されている。専門的な知識を有した証 券アナリストによる業績予測は経験や勘を頼りにしたものではなく、 [1] に基づく [2] なものであることが求められる。この [1] に おいては、企業が生み出す [3] を正しく予測するため、 [4] な ものから [5] なものまで、対象企業に係る幅広い情報を活用しなければならない。  続いて説明したのは、上記のような役割が期待されている証券アナリストが、財務 分析( [6] )に関する知識を習得する必要である。 [3] の予測においては、利益の情報が助けとなる。ただし、事実に裏付けられ た [7] としての性格を有する企業会計上の利益は、そのままでは必ずしも将来予 測に役立たない。利益情報から業績予測に役立つ情報を引き出すためには、特別な分 析( [8] )を行わなければならない。それゆえ、証券アナリストは、 [8] に関する知識を習得しなければならない。  また、 [8] を行う際には、それに先立ち、会計上の利益を [9 ] する 必要が生じることもある。会計上の利益には [10] 以外の役割も 期待されているため、開示される利益が証券アナリストによる [8] にとって最善 の内容である保証はない。そのような状況では、公表された利益データを証券アナリ ストが自らの分析目的に役立つように適宜 [9] しなければならない。その際、 利益計算の基本的な仕組みの理解が必要なため、財務会計に関する知識の修得も不可 欠となるのである。

    ファンダメンタ ル分析, 科学的, 将来のキャッシュフロー, 定性的, 定量的, 財務会計および財務諸表分析, 実績情報, 財務諸表分析, 加工・修正, 「投資価値評価への活用」

  • 13

    2. 企業会計の役割 (1) 投資家の意思決定に有用な情報の提供  企業会計の歴史は古く、現代の大企業が出現する前から利益の [1 ] は行われ てきたことが知られている。例えば、企業の資金需要が主として銀行などからの借入 によって充足されていた時代は、銀行を意識した利益情報の [1] が行われてい た。さらに時代を遡り、より原初的な形態の企業が支配的な時代は、出資者の資金を 受託した主体が出資者の利害に沿って誠実な [2] を行ったかどうか、その [3] を果たすための手段として、利益の [1] が行われてきたといわれている。経済社会の中心を占める企業の形態が変化するのに応じて、企業会計に期待される役割も変化してきたのである。  現代の経済社会を牽引しているのは大企業といえるが、その大企業に見られる特徴 の 1 つは、 [4] が進んでいる点に求められる。現代の企業は、機関 投資家などからの出資だけでは賄い切れないほど大規模な [5] を実行す る。そのためには、一般の投資家からも出資を募る必要が生じる。  一般の投資家は、企業との直接的な面識を欠く。つまり、投資家と企業経営者との 間には、企業に固有の強みなどに関する [6] が見られる。現行の [7] のもとでは、 [8] は投資家の自己責任において行われることとされて いる。そうなると投資家としては、責任を負えるような [9] が整っていない限り、 つまり、投資対象となる企業の [10] を把握するのに必要な情報が提供されてい ない限り、出資の要請に応じることはできない。こうした事情を背景として、公開企 業は広く様々な投資家に対し、将来に多くのキャッシュフローを生み出す資質を有す る企業であることや、投資家の利害を犠牲にして経営者が私利に走るような企業では ないことを示すための情報を提供している。  投資家と企業経営者との間に存在する情報の格差 [11] を緩和・解消 するためには、言うまでもなく、投資家が必要としている情報、とりわけ事実に裏付 けられた客観的な情報の開示が求められる。投資家が最も重視するのは、投資対象の 企業がどれだけのキャッシュフローを将来にわたり安定的に生み出すのかであろう。 証券アナリストに期待される役割に関連づけて前節で説明したように、過去の実績値 としての利益は、将来キャッシュフローの予測に役立つ要素を含んでおり、適切な分析を行えば、その要素を抽出することができる。こうしたことから、伝統的に利益情報は、経営者が投資家に提供する最も重要な情報と考えられている。言い換えれば、 利益情報には、投資家の [12] に有用な情報の提供という役割が期待されている。  とはいえ、企業が提供する情報に虚偽の内容が含まれる可能性が残る場合、そのよ うな情報は投資家の [13] に役立たない。事実、企業経営者には、投資家を犠牲に して自己の富を増やそうとする潜在的な誘因がある。この点、 [14] に記載された 利益情報は、一定水準以上の信頼性が保証されている。詳しくは後に改めて説明する が、利益情報の [1] は [7] のもとで定められており、 企業にはその遵守が求められている。加えて、ルールに則った [1] が行われて いるかどうかは、投資家の利害に沿って [15] がチェックすることになっている。 このため、投資家は利益情報を [12] に安心して役立てることができる。  以上を要約すると、利益情報には、投資家の [12] に有用な情報の提供という役 割が期待されている。企業経営者と投資家との間に存在する [6] を解消するこ とによって、資本市場における円滑な [16] を促す役割を、企業会計上の利益が 果たしているのである。利益情報に期待され、企業会計が果たしているこの役割は、企業会計の [17] あるいは [18] と呼ばれることが多い。

    計算と開示, 資金運用, 説明責任, 「所有と経営の分離」, 投資プロジェクト, 情報の格差, ディスクロー ジャー制度, 証券投資, 環境条件, 強みや弱み, (情報の非対称性), 意思決定, 信頼獲得, 財務諸表, 公認会計士, 資金の循環, 「情報提供機能」, 「意思決定支援機能」

  • 14

    (2) 当事者間の利害調整に役立つ情報の提供  多くの証券アナリストが分析対象とする [1] に関する限り、利益情報が果たし ている主要な機能は、上記の [2] ないし [3] といえる。ただし、 それらの機能を果たすために開示される利益情報は、その他の機能も果たし得る。つ まり、利益情報については、いくつかの [4] を想定できる。 ①会計情報に基づく財務上の特約 副次的な用途の 1 つは、企業に関わる当事者間の私的な契約による [5] である。その典型例として、企業と [6] との間で取り交わされる財務上の特約に、 利益情報を利用する場合が挙げられる。  [6] は、[7] に経営者が行う意思決定次第で、自らの利害が損なわれる可能性 がある。ここで、「8」の高い企業を想定する。自分より劣位の請求権しか持 たない株主が多いことから、この企業に対する融資は安全性が高いと判断した [6] が、この企業に対して低金利で新たな融資を行ったとする。ところがその直後、この 企業の経営者は、新たに借り入れた資金を配当に回し、その結果として不足した事業 に必要な資金をさらなる借入(先に行った借入よりも返済条件が良いもの)で賄った とする。この結果、当該企業の安全性に関する [9] は悪化するとともに、既存の 債権者の利害が損なわれることとなる。にもかかわらず、経営者の [10] などを 通じて企業の経営をコントロールする権利を持たない [6] は、特段の定めがない限 り、[6] の利害を犠牲にする経営者の行動を防ぐことができない。  このような事態を防ぐため、[6](集団)はしばしば、企業経営者との間に私的 な契約を取り交わして自らの利害を守ろうとする。そこでの契約は、[6] の利害に 反するような行動を禁じるために取り交わされるが、経営者の「[6] の犠牲のもと で株主や経営者自身を利する行動」の 1 つ 1 つを契約に盛り込んで禁じるのは難しい。 こうしたことから、上記の目的で取り交わされる契約では、利益に関連した [11] の うち、債権者の利害と結びつくものがしばしば用いられる。例えば、[8] や [12] が一定の水準に達した場合には、債務の即時返済を義務付けるような契約 [13] が取り交わされるのである6。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 6 このような契約を取り交わす誘因は、経営者の側にも存在する。というのも、[6] の利害を犠牲にし て株主の富の増大を図るつもりのない経営者は、このような契約の締結に応じないと、[6] の利害を 犠牲にする可能性のある経営者とみなされ、より高い [14] の負担を求められる恐れが生じるからである。

    公開企業, 情報提供機能, 意思決定支援機能, 副次的な用途, 利害調整の支援, 債権者, 融資後, 自己資本比率, 財務指標, 選任・解任, 諸数値, 負債比率, (財 務上の特約), 借入資本コスト

  • 15

    ②会計情報に基づく経営者報酬契約  利益情報が企業に関わる当事者間の私的な契約による利害調整に用いられるもう 1つの具体例は、株主と経営者との間に取り交わされる [1] の報酬契約である。  経営者には株主の利害に沿った行動が期待されるが、両者の間には企業についての 情報に [2] が見られる。それゆえ、両者の利害は必ずしも一致していない。そこでは、 特段の定めがない限り、経営者が常に株主の利害に沿って最大の努力を行う保証はな い。例えば、経営者の報酬を完全な [3] の形で支払う場合を想定する。このとき、 [4] の最大化を図ろうとする経営者であれば、会社についての情報を十分に持 たない株主に [5] の実態が伝わらない限り、企業経営のための十分な努力 を行わないであろう。  このような事態を避けるため、株主には何らかの対抗策が必要となる。よく知られ ているのは、株主の富の最大化を図ることが「自動的に」経営者自身の利得の最大化 となるような [6] である。そのような [7] の 1 つに、[8] の報酬契約がある。[9] の増大は、原則として株主にとって望ましいこ とといえる。その [9] の [10] を経営者にボーナスとして支払う旨の契約を事前に取り交わしておけば、ボーナスの増加を望む経営者の努力は、「自動的に」株主の 望む行動に向けられることとなる。  ここで説明した [11] と [8] の報酬契約は、各企業が利益情報を 用いて個別に契約を結び、当事者間の [12] を図るための手段であった。利益情報 の副次的な用途という場合は、この他、不特定多数の企業を適用対象とする公的な規制に、利益情報が用いられるケースも含まれる。今度は、このようなケースに議論を進めたい。

    会計利益連動型, 格差, 固定給, 私的な利得, 「怠惰な経営」, 報酬契約上の工夫, 経営者報酬契約, 会計利 益連動型, 会計利益, 一定比率, 財務上の特約, 利害調整

  • 16

    ③会計情報を用いた配当規制  関連諸法規において利益情報が利用されている典型例は、[1] であろう。[1] とは、会社財産に対して [2] しか持たない株主による会社財産の [3] を、一定の範囲に収める会社法上の規制7 である。会社法は、企業に関わる当事者間の利害調整(中でも [4] )を [5] とすることから、 株主と [6] との利害調整を図るために、このような規制を定めており、この [7] が [8] 上の [9] を指標として決められている8。[9] は主として過去から現在に至るまでの [10] によって増加することから、現行の [1] には利益情報が利用されているということができる。  仮に株主に対して [11] を無制限に認めた場合、会社財産に対して本来、 債権者が優位な請求権を有し、株主の請求権は劣位に留まるという基本的な関係が損 なわれることになる。のみならず、[12] に用いられる会社財産が減少するため、[13] は高まることになる。このとき、自分の利害が [14] に損なわれ得るこ とを予測する債権者は、自らが負うリスクを補償するような、より [15] を要求するはずである。この結果、企業が負担する [16] は全体として上昇すること になる。多くの企業経営者にとって、そのような [16] の上昇は望ましいこととはいえない。  もし、株主に対して会社財産の無制限な引出しを認めるつもりがないのであれば、 企業経営者は債権者との [17] において、 [7] を初めから一定の範囲 に抑える旨の契約を取り交わしておけばよい。そのような [18] が広範に求められ ているのであれば、交渉に伴うコスト( [19] )を経済社会全体として削減するため、不特定多数の企業を対象とした 公的な規制に、予め [20] を組み込んでおくのがよい。会社法における [1] の存在は、このように [21] という観点から意義付けられる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 7 会社法はこの他、当事者が必要としている [22] によっても [5] の達成を図っている。[1] に対し、これを [23] という。 8 剰余金の定義については、[24] を参照。

    配当規制, 劣位の請求権, 引出限度額(配当可能限度額), 債権者の保護, 立法趣旨, 債権者, 配当可能限度額, 貸借対照表, 剰余金, 期間利益, 会社財産の引出し, 償還, 債権の償還リスク, 潜在的, 高い金利, 資金調達コスト, 私的な契約, 私的契約, 多くの企業が類似した契約を取り交わすため に被るコスト, 標準的な契約, 交渉コストの削減, 情報の開示, 開示規制, 会社法第 446 条

  • 17

    ④会計情報に基づく税務申告  関連諸法規や政府などによる規制の一環で、利益情報は [1] や金融機関における [2] 9 などでも用いられている。このうちの [1] は、[3] が会計上の利益を基に [4] を決定する仕組みである。現行の [5] では、企業が どれだけの [6] を有しているのかという観点から、[4] が決められている。 [7] は様々な [8] で測られるが、企業会計上の利益は [7] を反映した [8] の典型例と考えられている。  この場合、企業会計上の利益とは別の [8] を設定し、[7] を新たに計算し直すの は効率的なことといえず、むしろ企業会計上の利益を基に [4] を決定することによ り、[9] の削減を図ることができる。こうしたことから、[1] においても伝統的に、利益情報が用いられてきた10。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 9 [10] (BIS: Bank for International Settlements) の中に事務局を設けているバーゼル銀行監督委員会による [11] が知られている。 10 [4] の決定においては、[12] や [13]などがとりわけ強く求められるのに対し、投資家の意思決定 に有用な情報の提供という観点に立つ場合、[13] などは情報に求められる特性の 1 つに過ぎない。こうしたことから、企業会計上の利益がそのまま [4] を決めることはなく、利益にいくつかの調整を行って [4] を決定することとなる。

    税務申告制度, 自己資本比率規制, 税法, 納税額, 法人税法, 税金負担能力, 担税力, 指標, 徴税に伴うコスト, 国際決済銀行, 自己資本比率規制, 公平性, 客観性

  • 18

    (3) 1 つの利益で 2 つの役割を同時には達成できない場合  証券アナリストの主要な分析対象である公開企業では、利益は主として [1] に有用な情報を提供する役割を果たしているといってよい。とはいえ、利益情報が副次的に利用されているのも、また事実である。このとき、果たすべき機能の違 いにかかわらず、 [2] が常に一義的に決まるのであれば、話は簡単である。 しかし、実際には期待される役割の違いに応じて、[2] も違ってくる。情報提供機能を果たすのに最適な利益情報が、 [3] を果たす のに最適な利益情報とはいい切れないのである。  このような食い違いは典型的に、有価証券の [4] について見られる。まず、投資の意思決定に有用な情報を提供する観点からすれば、企業が保有する有価証券の [5] は必要な情報といえる。というのも、有価証券の [5] は、企業が事業投資 に回し得る [6] の大きさを反映しているからである。[7] を生み出す事業投資は [8] といい得るものであり、有価証券の [5] やその増減は、 企業が新たな事業投資にどれだけ速やかに着手できるのかを測るうえで、有用な情報 となる11。  これに対して、利益情報によって [9] を図る場合には、有価証券を [10] で評価し、[11] を期間損益に反映させるのが望ましいとはいい切れない。 今、過去から現在に至るまでの期間利益に基づく [12] を指標として、[13] が 行われている場合を想定し、指標として用いられる利益に有価証券の [11] (値上がり益)が含まれているケースを考える。このとき、有価証券の値上がり益を原資 として株主に配当を行うためには、追加借入による現金の調達が必要となる。この追加借入は、[14] の悪化などを通じて、既存の債権者への資金返済が契約どおりに 行われなくなる可能性( [15] )を高め得る。  そうであれば、有価証券の [16] を含んだ利益に基づく [13] が、それを含 まない利益に基づく [13] よりも、債権者の [17] に役立つとはいえない。つまり、 情報提供機能が問われているケースとは異なり、この文脈では、有価証券の [16] やその計算基礎となる [4] の有用性を、積極的には主張できない。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 11 市場が十分に効率的であれば、[6] による金融投資では [17] しか得られないこととなる。その場合、有価証券の [18] としての時価総額と異なり、金融投資の成果を反映している [11] の情報は、[18] の推定に有用な情報を提供しない。しかし、[19] がファンダメンタル価値に 収束するまで時間を要するような場合は、ファンダメンタル価値からの乖離を他者より速やかに、かつ正 確に把握することにより、[7] を得られる可能性がある。そのような能力を測るうえで、過去の実績値としての [11] が意味を持つこともあり得る。

    投資家の意思決定, 「望ましい利益」, 利害調整機能(契約支援機能), 時価情報, 時価総額, 余剰資金, 超過リターン, 企業価値の源泉, 当事者間の利害調整, 時価, 時価評価差額, 留保利益, 配当規制, 財務指標, 返済のリスク, 時価評価益, 保護, 平均的なリターン, ストック, 企業価値, 証券価格

  • 19

    (4) トレード・オフの関係が見られる場合に求められる対応  ここで例示した有価証券の時価情報のように、利益情報に期待される機能の違いに 応じて望ましい [1] が異なる場合、どのような利益が市場関係者全体にとっ て最善なのかを判断することは難しい。公開企業を前提とすれば、基本的には [2] の観点から利益のあり方を決めることになるが、利益情報が副次的に利用され ている事実を受け止め、それを制約とみなす必要が生じることもあり得る。  ここで [2] の観点から、結果的に [3] が増加するような会計基準を新 たに導入した場合を想定する。このとき、利益に基づいて [4] を決定する仕組みのもとでは(税務当局が何らかの経過措置をとらない限り)、企業の負担する [5] は大きくなる。[5] の増加は経済全体に多様な影響を及ぼし得る。そういう場合は、 投資家の意思決定にとって、より有用な情報が提供されることの影響のみならず、[6] の変化が及ぼす影響も総合的に勘案して、新たな会計基準を導入すべきかどうかを決めることになる。  より具体的には、増税が経済に及ぼす負の効果が深刻で、かつ、もっぱら会計基準の変更に起因する [7] にも課税するという決定を税務当局が下す(見 込みの)場合には、増益の効果を伴う基準改訂の提案は取り下げられることになるかもしれない。  視点を少し変えると、以上の記述は、[2] の観点から最善の利益情報が常に開示されている訳ではないということを意味している。利益情報を用いて企業の投資価値を分析する際は、副次的な用途に配慮した結果、利益情報にどのような影響が及んでいるのかを適宜把握するとともに、必要に応じてその影響を打ち消すような形で [8] を修正しなければならない。

    計算・開示方法, 情報提供機能, 報告利益, 課税所得, 納税額, 課税関係, 「名目的な」増益額, 公表情報

  • 20

    【例題1-1】 (1) 企業会計には、投資家の意思決定に有用な情報の提供という役割が期待されている。自己責任による意思決定が求められる中で、投資家は、なぜ利益情報を必要と しているのか。また、経営者は、投資家の求めに応じて利益情報を提供することに より、どのような便益を期待できるのか。利益情報が開示されず、投資家と企業経営者の間に存在する情報の非対称性が十分に緩和されない場合に予想される問題と 併せて、説明しなさい。 (2) 主として投資家の意思決定に有用な情報の提供という役割を果たすために、計 算・開示される利益は、副次的な用途にも活用される。 ①財務上の特約の一環で利 用される場合、 ②経営者報酬制度の一環で利用される場合、 ③配当規制の一環で利 用される場合、および ④税務申告制度の一環で利用される場合の用途を説明しなさ い。 併せて、①および②の場合と、③および④の場合の違いを説明しなさい。 (3) 投資家の意思決定に有用な利益情報は、一般に副次的な用途(当事者間の利害 調整または企業活動の成果分配という局面)においても有用と考えられる。しかし、 場合によっては、投資家の意思決定に有用な利益情報が、副次的な用途にとって最善の情報とはいえないこともある。その場合、主目的とされる「投資家の意思決定 に有用な情報の提供」を常に優先すればよい、といえるかどうかを説明しなさい。 (4) 会計基準は「投資家の意思決定に有用な情報の提供」だけを達成目標として掲 げているのではなく、「当事者間の利害調整または企業活動の成果分配に資する情 報の提供」も目指している。この事実は、証券アナリストによる財務諸表の分析に、どのような影響を及ぼすかを説明しなさい。

    (1)説明では以下のポイントに触れること。 ・企業の業績等に関する情報の非対称性の存在   ・非対称性を解消しないままでは困難な資金調達(要求される資本コストの高さ) ・情報要求に応えることで資本コストが低下するのは経営者にとっての便益であること, (2) 説明では以下のポイントに触れること。 ・利害調整に資する情報の提供(⇔投資家の意思決定に有用な情報の提供) ・特定企業に関わる当事者間の利害調整が想定されているケース(①および②)   ・不特定多数の当事者間の利害調整が想定されているケース(③および④), (3) 説明では以下のポイントに触れること。   ・当事者の利害に大きな影響を及ぼすケースの存在(配当規制や税務申告制度に影響が及ぶケースなど) ・「副次的な用途」への影響を重視する場合も存在

  • 21

    3. 会計情報の限界など財務分析上での留意点  前節では、① [1] は [2] だけのために [3] されている のではないこと、②それゆえ、[1] を[2] に用いる場合は、与えられた情報を [3] に応じて適宜修正する必要があり得ることを説明したが、[1] を用いる場合の留意事項は他にもいくつか見られる。本節では、[5] は企業が記録に残した全てのデータを反映したものにはなっていないこと、および利益の 大きさが経営者の [6] によって左右されることに焦点を当てて、「会計情報の限界」あ るいは「財務分析において会計情報を用いる際の留意点」を説明する。

    利益情報, ファンダメンタル分析, 計算・開示, 分析目的, 会計情報, 判断

  • 22

    (1) 会計情報の限界:企業が記録した取引データの一部だけを反映 ①定量的な記述に馴染まない情報の欠落  利益情報の中核をなすのは、定量的な要素である。投資家が自己責任において意思 決定を行う場合、企業経営者による将来見通しの[1] などに加え、これまで 実際に上げてきた [2] など、客観的な事実に裏付けられた [3] が必要 となる。[1] と [3] は相互補完関係にあり、[1] について は、証券アナリスト向けの [4] などの提供メディアが数多く準備されているた め、利益情報にはおのずから [3] であることが求められる。

    定性的な情報, 投資の成果, 定量的な情報, 企業説明会

  • 23

     定量的な情報を作成する際には、一定のルールに従って、観察された事実を [1] へ変換する必要が生じる。このとき、観察された事実の大部分は [2] に変換できるとしても、全てが変換可能という保証はない。つまり、定量的な情報への変換過程で、観察された事実の一部が脱落してしまう。これは利益情報に限らず、定量的な 情報が一般に有する限界といえる。  例えば、現在開示されている利益は取引記録に基づき算定されていることから、会社がいつ行ったどういう活動によって、どれだけの利益が生じたのかは [3] といえる12。 他方で、企業はどういう意図で(あるいは企業の経営方針や経営戦略をどのように理解したうえで)利益を生み出す活動を行ったのか、つまり「利益を生み出す活動をどのような文脈で、なぜ行ったのか」という [4] を、財務諸表に記されている諸数値から直接読み取ることは難しい。また、算定された利益に経営者が満足しているのか、それともなお改善の余地が残されている のか、という類いの [5] を、財務諸表に反映することもできない。 ファンダメンタル分析において利益情報を利用する場合、利用者は、脱落した情報を [6] などによって適宜補う必要がある。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 12 実際には、次に述べる [7] で脱落してしまう情報も多い。

    数字の データ, 数字, 「原理的に把握可能な情報」, 「文脈に関わる 情報」, 「評価に関する情報」, 定性的な情報, 「データの集計・統合プロセス」

  • 24

    ②測定上の客観性を保証できない情報の欠落  一般にいう [1] の中には、その存在自体が [2] に反映されない場合もある。その典型例は、企業が培ってきた [3] や、購買意欲の 旺盛な [4] 、[5] などである。これらは企業の [6] に貢献し得るものであり、 [7] では資産とみなされている。  しかし、上記の資産はいずれも価値の見積りが困難であり、定量化の過程で主観的な要素がどうしても多く介在してしまう。先に説明したとおり、利益情報は客観的な 事実に裏付けられたものであることが求められるため、たとえ上記の資産が「技術的 には」定量化が可能だとしても、主観性を排除し切れないままに見積もった、それら の価値(および価値の変動)を利益に反映すると、利益全体の信頼性が損なわれ、そ の有用性が低下する恐れがある。それゆえ現行の会計基準においては、上記の資産(お よびその変動)が利益情報に直接反映されることはない13。  もちろん、客観的に価値を見積もる手法が発達すれば、現在はオフバランスされて いる資産項目の一部はオンバランスされるであろう。それでもなお、全ての資産をオンバランスするのは困難と考えられる。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 13 ここでは、定量化の困難な項目は財務諸表に反映されていないことを指摘した。とすれば、価値の客観的な見積りが可能な限り、できるだけ多くの項目を [8] に反映させた方がよい、と考えられるかもしれない。しかし、話はそれほど単純ではない。ある項目の [8] への記載は、最終的には、その項目を 記載することにより利益にどのような意味が与えられるのかという観点(あるいは、その項目を記載する ことにより、会計情報の有用性が高められるのかという観点)から判断される。詳細は省略するが、客観的な定量化が可能であることは、財務諸表に計上されるための必要条件に過ぎない。

    「資産」, 「会計上の資産」, 良質のブランドイメージ, 顧客のリスト, 優秀な従業員, 超過リターン, 「会計の外の世界」, 財務諸表

  • 25

    ③利益の算定過程において作成者がデータを集計する必要性  利益は定量的な情報であるのに加えて、[1] という特徴も有する。 この特徴を際立たせるため、企業が行った日々の取引をありのままに記録した [2] と呼ばれる帳簿を、利益に代えて開示する場合を想定する。いわば利益情報の元となる [3] を提供し、その加工・集計は、[4] に委ねるのである。  [2] の段階で詳細に区分されていたデータは、現行制度のもとでは、[5] を作成する際に、報告企業によって適宜集計・統合され、一部の要素が失われていく。 そうしたプロセスを経る前のデータを開示する訳であるから、ここで想定している仕組みのもとでは、例えば、得意先別、営業拠点別(支店別)、あるいは個別製品ごとの 売上高に関する詳細な情報を得ることができる14。 これと同様に、現行会計基準では「機械設備」「建物」などのカテゴリーで一括されている [6] を、形態や機能に基づき より細かく分類したデータなども得ることができるであろう。  上記のとおり、[7] に は長所も見られる。他方でこれも上記のとおり、この仕組みのもとでは、[5] を 作成する企業が行ってきた集計作業の負担を、情報の利用者である [4] が肩代わり する必要がある。企業の価値を評価するため、将来にわたって安定的に生み出される [8] することが達成目標であれば、[9] を統合・集計して算定することは不可欠といってよい。ところが、企業の外部にいて限定的な情報しか得 られない [4]がデータの集計を担うのは、実際には不可能といってよい。[6] が実際には受け入れられず、財務諸表を作成する企業自身がデー タの集計を担っているのは、そういう事情による。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 14 現行会計基準でも、事業部門別、あるいは地域別という単位での [10] の開示は求められているが、先に例示した次元の極めて細かな区分に基づく情報は開示されていない。

    集計・要約された情報, 「仕訳 帳」, 「生のデータ」, 投資家, 財務諸表, 資本設備, 「代替的な情報開示の仕組み(仕訳帳に相当するデータの開示)」, 利益を予測, 「実績値としての成果」, 詳細情報(セグメント情報)

  • 26

    ④集計過程におけるデータの欠落  統合・集計済みの数値が報告される枠組みのもとでは、いうまでもなく、上記の [1] では開示できた「より詳細なデータ」を、投資家が入手す ることはできない。そうした情報は、 [2] の過程で失われてしまうからである。  ここまで述べてきたように、財務諸表の作成者である企業が取引記録を集計し、統合したデータを開示することで、投資家は [3] を享受する。他方で、統合・集計過程を企業に委ねることで、投資家にとって有用であったかもしれない一部のデータが失 われてしまう。経営者にどのような水準での統合と集計を求めるのか、統合と集計の [3] とその陰で生じる [4] とのバランスを図ることが求められる。

    「代 替的な情報開示の仕組み」, 統合・集計, 便益, 犠牲

  • 27

    (2) 会計情報を分析する際の留意事項:経営者の判断に左右される利益の大きさ ①複数の [1] が併存する理由  ある会計年度中に、まったく同じ活動を行った企業 2 社を想定する。このとき、両社の利益は一致するように思えるが、実際には [2] は保証されない。むしろ、 両社の利益は食い違うのが常態である。これは、いずれか一方だけが正しい利益計算を行い、他方は誤った計算を行ったために生じた事態ではない。むしろ、いずれの利益も正しいものとみなされる。つまり、[3] は 1 つだけではなく、複数 の [3] が併存するというのが、現行ルールを支える基本的な考え方 である15。  では、なぜ複数の「正しい」利益が存在し得るのであろうか。その理由は、主とし て将来見通しの [4] と、選択し得る会計方針の [4] に求められる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 15 事実を忠実に描写した利益は 1 つしかないと見る立場は、利益の絶対的な真実性を支持する立場とい われる。これに対し [3] が複数存在し得ると見る立場は、利益の真実性は相対的なものに過 ぎないと見る立場といわれる。

    「正しい利益」, 利益の一致, 事実に忠実な利益, 多様性

  • 28

    ②将来見通しの多様性  利益は投資活動の成果に関する [1] としての性質を有しているが、[1] を求めるためにも、[2] は必要である。会計年度中に全ての投資活動が完了し、決算時点において継続中の投資活動が存在しない場合はともかく、複数の会計年度にわたる [3] が存在する場合、過去の事実を確定するために将来の見積りが必要となる。  例えば、当期首に新たな投資プロジェクトに着手し、そこへ 10 億円で購入した機械設備を投入したとする。このとき、この機械設備に係る当期の [4] を計上し ようとすれば、機械設備の [5]を見積もらなければならない。つまり、 問題の投資プロジェクトに関する [6] を立てなければ、当期に生じた費用を確定できないのである。企業経営者はそこで必要な将来事象を見通すこととなるが、そ うした見通しは不確実なものに留まる。それゆえ、将来事象に関する判断は分かれる。  例えば、一部の経営者は、問題の機械設備を丁寧に修繕し、陳腐化を避けながら耐用年数にわたり、できるだけ等質的に利用しようと考えるであろう。他方で、早期の 経済的な陳腐化を不可避と予想し、「陳腐が生じる前に投下資金を回収し尽くそう」と いう思いから、問題の機械設備をフル稼働させる経営者もいるであろう。将来に対す る予想のこうした違いは、 [7] の違いに現れる。それらが 異なれば、そこから導かれる利益も異なってくる16。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 16 正確にいうと、「どの償却基準を選択すべきか」が直接関わっているのは、次の③で説明する「会計方針の多様性」である。

    過去の実績値, 将来事象の見積り, 長期の投資, 減価償却費, 耐用年数 や残存価額, 将来見通し, 耐用年数や「適切な償却基準」

  • 29

    将来見通しの相違に起因する利益の相違は、この他、[1] に関する判断の違いにも現れる。例えば、製造物責任法に基づく訴訟中の企業を想定する。現在、敗訴により賠償金を支払う可能性は無視できない水準にあるとする。このとき、将来 に予想される [2] は、当期までの営業活動に起因する「事実上確定した損失」だという考え方から、その [2] を(最終的な判決を待たず)当期に計上する経営者を想定できる。そこでは計上した損失に見合う形で、[3] と呼ばれる会計上の負債 も計上されることとなる。  これに対して、比較的強気に将来を見通す経営者も想定し得る。このような経営者 は、勝訴の可能性も残されている以上、現時点での損失計上は必要ないと判断するで あろう。その場合、当期の損失はゼロとなり、[3] の設定も不要となる。  勝訴・敗訴の見通しは経営者の判断に依存しており、少なくとも事前の段階ではいずれか一方が正しく、他方が誤っているということはできない。強気な経営者の企業とより慎重な経営者の企業では、[2] を前倒して計上するか否かに関する判断が分かれることから利益は相違するが、いずれの利益も「会計基準に照らして正しいも の」とみなされる。つまり複数の [4] が併存することとなる。

    引当金の設定額, 賠償損失, 引当金, 「正しい利益」

  • 30

    ③選択可能な会計方針の多様性  続いて、[1] いかんで、利益の数値が変わってくる場合を例示する。利 益を計算するためには、本来、企業が直面した事実をありのままに把握する必要がある。ただし、様々な事情により [2] を断念し、何らかの仮定に基づいて利益を計算しなければならない場合がある。その典型例は、多数の商品を扱っているケ ースにおける期末商品原価の算定である。  どの時点にいくらで仕入れた商品が期末に売れ残っているのか、商品の流れが個別 に把握可能であれば、その事実に照らして期末商品の原価を算定することができる。 しかし、商品の流れを個別に把握するのは困難なケースが多いといわれている。その 場合、商品の流れに関する何らかの仮定を設け、その仮定に基づいて期末商品の原価 を計算する方法が伝統的に許容されてきた。  そうした仮定でよく知られているのは、[3] や [4] である。[3] は、文字どおり、先に仕入れた商品から順次販売されたとみなして、期末商品の原価 を算定する方法である。これに対して、[4] は、毎回異なる仕入単価の [5] をとり、販売された商品も売れ残った商品もその平均単価に見合う価値を有している とみなす方法である。いずれを採用するかは経営者の裁量に委ねられており、個々 の企業にとって最も適切な方法の選択が期待されている。その際、どの仮定が最善 なのかに関する経営者の判断は分かれる。採択された方法の違いによって、毎期の利益も相違する17。つまり、ここでも「複数の正しい利益」が併存することとなる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 17 会計基準の国際的な調和あるいは収斂を求める動きの中で、かつて認められていた後入先出法の採用は、2010 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度から禁じられることとなった。

    会計方針の選択, 事実の直接的な把握, 先入先出法, 総原価法, 加重平均

  • 31

    ④経営者による裁量の余地が残されている理由  ここまで具体例を用いながら説明してきたとおり、①経営者は [1] をどう見通して いるのか、②自分の企業にとってどの [2] が適切と考えているのかなどの違いに 応じて、最終的な利益の大きさは違ってくる。利益はその意味で、経営者の [3] に左右される性格を有している。それゆえ、利益の単純な [4] は、誤った意思決定 に結びつく恐れがある。どのような計算過程から導かれてきた利益なのかを、適宜 チェックしなければならず、財務諸表の [4] を行う際には、[5] を揃える ための調整などを行わなければならない。これは、利益情報をファンダメンタル分析 に用いる場合の大切な留意事項である。  ところで、経営者の [3] によって利益の大きさが左右されるのは、先に説明したと おり、多様な方法による将来見通しや多様な [5] の選択が許容されているからで ある。逆にいえば、将来事象の見積り方法や企業が採用し得る [5] をできるだけ 統一すれば、ここで説明してきた留意事項は不要になるかもしれない。少なくとも技術的には、将来事象の見積り方法や採用可能な [5] の幅を狭めることは可能であ る。それにも関わらず、なぜそのような統一が進まないのであろうか。  将来事象の見積り方法や選択可能な [5] を [6] 統一すれば、経営者による「過度な」裁量の余地が失われ、財務諸表の [4] が容易になるのは事 実である。しかし、その一方で「過度の画一化」は、「選択可能な見積もり方法や会計方針が経営実態に適う企業」と、「実態に合わない見積り方法や会計方針の選択が強い られる企業」を生み出す。画一化が [7] に留められているのは、こうした事情に よるのであろう。

    将来, 会計方針, 裁量, 企業間比較, 会計方針, 「適切な水準で」, 一定水準

  • 32

    【例題1-2】 (1) 「どのような手法であれ、ある資産や負債の評価額を見積もることができるのであれば、できるだけ多くの資産や負債をそのような評価額で貸借対照表に計上すること を通じて、会計情報の有用性を高めることができる。」という主張にコメントしなさい。

    (1)説明では以下のポイントに触れること。  ⚫最終的に重要なのは、「ある資産や負債を特定金額でオンバランスすることから導 かれてくる利益の情報が投資家の意思決定に資すること」  ⚫どのようなモデルのいかなるインプットとして会計情報を利用しているのかを論じ ることなく、有用性を議論するのは困難

  • 33

    【例題1-2】 (2) 「会社が残している取引記録のデータを統合・集計してしまうと、その過程で投資 家の意思決定にとって重要な情報が漏れてしまう。それゆえに企業は財務諸表に代え て、未加工の取引データ(仕訳帳など)を開示した方が良い。」という主張にコメン トしなさい。

    (2)説明では以下のポイントに触れること。 ⚫データの集計過程で情報が失われてしまう事態を回避できる点で優れている手法   ⚫ただし内部情報を持たない企業外部の投資家にとって「生のデータ」を自ら適切に集計・加工するのは困難

  • 34

    【例題1-2】 (3) たとえ複数の企業がまったく同じ活動を行ったとしても、現行ルールのもとでは、 それらの企業が報告する利益は通常一致しない。利益の食い違いを生み出す原因を列 挙しなさい。

    (3)説明では以下のポイントに触れること。   ⚫採用する会計方針等の違い(複数の方法が許容されている場合)   ⚫将来事象の見積もりをめぐる見解の相違

  • 35

    【例題1-2】 (4) 「例えば償却基準として定額法・定率法・級数法などの適用を容認することに代え、 全ての企業に定額法の適用を強制すれば利益情報の比較可能性が高まり、その有用性 も向上する。」という主張にコメントしなさい。

    (4)説明では以下のポイントに触れること。   ⚫「画一性」あるいは「統一性」は向上   ⚫ただし、画一性の向上と比較可能性の向上とは別の問題 ⚫直面している事実が異なるにもかかわらず画一的な処理を求めると、かえって比較 可能性が損なわれてしまうケースも存在

  • 36

    4. 日本の財務報告制度の特徴と企業会計を規制する法体系 (1) 金融商品取引法の会計規制  利益情報は第 1 に、[1] の規制を受ける。同法の第 1 条には「この法律は、[2] の制度を整備するとともに、[3] を行う者に関し必要な事項を定め、[4] の適切な運営を確保すること等により、[5] の発行及び金融商品等の [6] を公正にし、[5] の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な [7] を図り、もって国民経済の健全な発展及び [8] の保護に資することを目的とする。」とあり、 [1] は [5] の売買を行う [9] を立法趣旨としている。  先に説明したとおり、投資家が [10] において意思決定を行うためには、[11] に関する情報の開示が不可欠となる。こうしたことから [1] は、 上場会社および有価証券の募集と売出しを行った会社(以下「上場会社等」)に対し、 内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況、その他事業の内容に関する重要な事項、その 他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書( [12] )の提出を求めている(第 24 条)。利益情報を記載し た財務諸表は、この [12] に収められている。

    金融商品取引法, 企業内容等の開示, 金融商品取引業, 金融商品取引所, 有価証券, 取引等, 価格形成等, 投資者, 投資家の保護, 自己責任, 投資対象の企業, 有価証券報告書

  • 37

     このように、金融商品取引法はその立法趣旨を達成するために、[1] を求めているが、具体的な内容を直接には指示していない。財務諸表の用語、様式およ び作成方法などの形式面については、「 [2] (財務諸表等の用語、様式及び 作成方法に関する規則)」という [3] が定めているものの、そこにも概括的な規定 しか設けられていない。「 [2] 」の第 1 条第 1 項に「金融商品取引法の規 定により提出される財務計算に関する書類のうち、[4] 、[5] 、 [6] 及び [7] 、並びに [8] の用語、様式及び 作成方法は、第1条の三を除き、この章から第八章までの定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に [9] と認められる企業会計 の基準に従うものとする。」とあるように、規定の詳細は「一般に [9] と認められ る企業会計の基準」に委ねられているのである18。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 18 本文で取り上げた「財務諸表等規則」は、個別の企業を報告単位として行う利益計算のあり方を定めて いるが、現在ではむしろ企業集団を報告単位とする [10] が有価証券報告書において主たる地位 を占めている。[10] の記載事項は「 [11] 」という内閣府令が定めているが、その第 1 条にも一般に [9] と認められる企業会計の基準に従う旨の規定がある。

    利益情報の開示, 財務諸表等規則, 内閣府令, 貸借対照表, 損益計算書, 株主資本等変動計算書, キャッシュ・フロー計算書, 附属明細表, 公正妥当, 連結財務諸表, 連結財務諸表規則

  • 38

    (2) 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準  では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは何であろうか。[1] と [2] それぞれの第 1 条第 2 項では、[3] により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとされている。会計基準は現在、[3] に代わり [4] が公表している。民間団体である [4] が公表した基準については、 2009 年(平成 21 年)12 月 11 日に公表された「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(平成 21 年 12 月金融庁公告第 69 号)」および「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関 する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(平成 21 年 12 月金融庁公告第 70 号)」に基づき、金融庁長官の告示により、「一般に公正妥当と認 められる企業会計の基準」と認められている。  すなわち、[4] が新たに公表した会計基準は、上記の [5] 第 69 号および第 70 号の一部改正という形で、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第 1 条第 3 項及び財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第 1 条第 3 項に 規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に追加指定されている19。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 19 金融庁のウェブサイト「企業内容等の開示に関する情報」を参照。

    「財務諸 表等規則」, 「連結財務諸表規則」, 企業会計審議会, 企業会計基準委員会(ASBJ), 金融庁公告

  • 39

    (3) 会計基準の諸類型  ところで、 [1] や [2] が公表した基準は、様々な種類に分かれている。 このうち [2] の公表物は、正式な議決を経たものについて、[3] と [4] とに分かれている。この他にも個別問題に関する「論点整理」などが公表されている20。  一方、[1] の時代には、会計基準の根幹をなすと考えられてきた[5] [6] に加えて、個別問題に関する会計基準が別途公表され てきた。当時の [1] は現在の [2] と異なり、適用指針や実務対応報告に 相当する文書を公表せず、その役割は日本公認会計士協会の [7] などが公表する報告書などに委ねられてきた。[1] はこの他、関連諸法令との関係 を明らかにする目的で特別な意見書なども公表してきた。  これらの会計諸基準のうちのいくつかは、今でも「一般に公正妥当な企業会計の基 準」を構成する点で広く合意が得られている。他方で「一般に公正妥当な企業会計の 基準」に含まれるかどうかについて、見解が分かれるものもある。さしあたっては、 ①会計基準が [8] に分かれていることと、②公正妥当な会計基準とそうはいい切れないものの境界線が暖昧であることのみ指摘しておきたい。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 20 現実に生じた個別問題に対応する形で会計基準を新設すると、「場当たり的な」対応が促され、会計基準の体系性が損なわれてしまう恐れがある。こうしたことから、会計基準を支える基礎概念を予め整理・ 要約しておき、具体的な会計基準の開発に際しそれらを活用しようとする動きが見られる。米国に始まり、 日本でも 2004 年に ASBJ からの委託を受けたワーキング・グループによって討議資料という形でとりまとめられた基礎概念に関する資料は一般に「概念フレームワーク」と呼ばれている。この討議資料は、部分的な修正を行ったうえで、2006 年 12 月に ASBJ におけるデュー・プロセスを経て、正式の討議資料と して公表されることとなった。

    企業会計審議会, ASBJ, 企業会計基準, 適用指針・ 実務対応報告, 「企業会計原則」, 「企業会計原則注解」, 会計制度委員会, 多様な種類

  • 40

    (4) 会社法の会計規制  利益情報は第 2 に、[1] の規制も受ける。[2] の適用対象は上場会社等(株式を公開している株式会社のほか、一定額以上の [3] を発行し、募集する大規模な株式会社なども含む)だが、[1] は全ての会社を適用対象としている。両法の違いは立法趣旨にも見られ、[2] が投資家の保護を立法趣旨としているのに対し、[1] の立法趣旨は企業に関わる当事者間の円滑な利害調整、中でも [4] の保護にあるといわれている。  この立法趣旨を達成するための手段として、[5] と [6] が知られている。 このうち[5] は、本来は劣位の請求権しか持たない株主による [7] の引出し を一定の範囲に制限することにより、[4] の保護などを図るものである21。日本では [8] が貸借対照表上の [9] に基づいて算定されているため、[9] の増加をもたらす期間利益の計算方法は [1] の規制を受けることとなる。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 21 [5] が存在すれば、[4] が自分の負うリスクについて過度に保守的なスタンスをとるような事態 を避けられる。そのことにより負債の [10] が下がれば、[5] が存在することの便益は経営者も享受することとなる。

    会社法, 金融商品取引法, 有価証券, 債権者, 配当規制, 開示規制, 会社財産, 配当可能限度額, 剰余金, 調達コスト

  • 41

     もう 1 つの開示規制は、企業の利害関係者、中でも株主や [1] が資金提供や資金引上げの意思決定を行うために必要な情報の提供、あるいは経営者の [2] に関 する意思決定を行うために必要な情報の提供を義務付けることによって、それらの [3] の保護を図るものである。資金の追加提供や引上げに関する意思決定は、企業が将来生み出す [4] に依存する。それゆえ、その予測に役立つと考え られている [5] は、大規模な企業のみならず中小企業についても求められ る。このとおり、期間利益の計算方法は、開示規制の観点からも [6] の規制を受け ることになっている。  もっとも、[6] は [7] と同様に、利益の具体的な計算方法について詳細かつ包括的な規定を持っていない。本文に記されているのは、[8] などに関する規定(第 2 編第 5 章第 3 節)と、[9] に関する規定(第 2 編第 5 章第 4 節)だけである。具体的な計算規定については、[10] という法務省令に委 ねることとされている。これは [7] における「 [11] 」や「 [12] 」に相当するものであり、そこには、用語、様式、作成方法などについ ての比較的詳細な規定が設けられている。ただし、[10] で全てのケースを網羅できる訳ではない。そこでカバーしきれない部分については、[7] のケー スと同様に、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとされている(第 431 条)。  この「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」、すなわち、かつて「公正なる 会計慣行」と呼ばれていたものが何を指すのかについての見解も、「一般に公正妥当 な企業会計の基準」に関する見解と同様、未だ完全には一致を見ていないようである。 ただし、法務省と大蔵省(現金融庁)が、商法学者・会計学者・実務家らを招聴して とりまとめた「商法と企業会計の調整に関する研究会報告書」(1998 年 6 月 16 日 ) に 見られるように、企業会計審議会や後に ASBJ(2001 年設立)が設定した会計基準を、 全て「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」として受け入れる見解が広く知 られている。

    債権者, 選任・解任, 利害関係者, キャッシュフロー, 利益情報の提供, 会社法, 金融商品取引法, 資本金の額, 剰余金の配当, 「会社計算規則」, 財務諸表等規則, 連結財務諸表規則

  • 42

    (5) 会計規制一元化の試み  ここまで説明したように、 [1] と [2] は、それぞれの立法趣旨を達成する観点から [3] のあり方を規制している。厳密にいえば両法の立法趣旨は異な るが、例えば意思決定に必要な情報の提供を通じた [4] という点で、規制目的が類似しているのもまた事実である。こうしたことから、[1] が求 める利益情報と [2] が求める利益情報の一元化が図られてきた。今ではごく少数の 相違が見られるだけで、一元化の作業は基本的に完結したといってよい。とはいえ、 残された相違も無視できるものではない。  例えば、金融商品取引法では、財務諸表等規則第 1 条において [5] 並びに [6] の提出が [7] として要求されている。これに対して、会社法のもとで要求 される [8] は、 [9] とされている(第 435 条第 2 項)。「株式会社の財産及び損益の状況を示すために 必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」としては、[10] がある23(図表 1 - 3 参照)。  一元化が進んだ中でもなお残る相違点には、留意が必要である。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 23 株主資本等変動計算書には、連結ベースの連結株主資本等変動計算書もある。詳しくは、ASBJ が2005 年 12 月に公表した「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(2013 年 9 月最終改正)を参照。

    金融商品取引法, 会社法, 利益情報, 利害関係者の保護, 財務諸表(貸借対照 表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書), 附属明細表, 財務書類, 計算書類, 貸借対照表、損益計算書、「その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」、事業報告及び附属明細書, 株主資本等変動計算書 や注記表

  • 43

    企業会計との関係を規制する法体系の、金融商品取引法について答えよ。 ①立法趣旨 ②立法趣旨の達成手段(規制) ③適用対象 ④作成が求められる書類(5種類) ⑤企業会計との関係

    投資家の保護, 開示規制のみ, 上場会社等, 4-1 貸借対照表(連結貸借対象表), 4-2 損益計算書(連結損益計算書), 4-3 キャッシュ・フロー計算書(連結キャッシュ・フロー計算書), 4-4 株主資本等変動計算書(連結株主資本等変動計算書), 4-5 付属明細書(連結付属明細書), 「財務諸表等規則」第1条第1項「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」

  • 44

    企業会計との関係を規制する法体系の、会社法について答えよ ①立法趣旨 ②立法趣旨の達成手段(規制) ③適用対象 ④作成が求められる書類(5種類) ⑤企業会計との関係

    当事者間の利害関係(主に株主と債権者), 開示規制及び配当規制(剰余金の分配に関する規制), すべての会社, 4-1 貸借対照表, 4-2 損益計算書, 4-3 その他会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの(株主資本等変動計算書や注記表), 4-4 事業報告, 4-5 付属明細書, 第431条「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」

  • 45

    (6) 税法の会計規制  利益の計算・開示方法は、この他、[1] の規制も受けている。法人税は、企業の [2] に応じて課される。利益は [3] の優れた指標になり得ると考えられるこ とから、法人税法第 22 条第 4 項では、益金の基礎をなす [4] と損金の基礎をなす [5] は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされている。つまり、[6] は原則として、企業会計上の [7] に準拠して算定される。こ こに、[8] と企業会計との接点が認められる。また[8] 第 74 条には、確定した [9] に基づいて申告書を作成し提出しなければならないという規定がある。こ のように、企業会計の利益を基に [6] を計算することを [10] という24。  上記のとおり、[6] は原則として一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される。それゆえ、利益計算に係る [1] の規定は、 (a) 会計基準が基本的な理念しか定めておらず、多義的な解釈が許容されてしまう状況において、解釈の 画一化や統一化を図ることや、 (b) 利益の計算目的に関する税と会計との違いが顕在化するケースにおいて、企業会計上の利益を [6] の計算目的に合わせて修正する ことに主眼が置かれている25。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 24 [10] の考え方は、例えば、[6] の計算上、損金の額に算入するためには、法人がその確定 した決算において [5] または [11] として経理するのを要件としているものがあることに現れている。こ れを [12] という。 25 こうした修正の結果、[6] と企業会上の [7] との間には、最終的に無視できない違いが生じることを背景に、後に学習する [13] が求められている。

    税法, 税金負担能力, 担税力, 収益, 費用, 課税所得, 利益, 法人税法, 決算, 確定決算主義, 損失, 損金経理要件, 損金経理要件

  • 46

    (7) 統一と分離のはざまで  他の法域にまで目を向けると、例えば米国のように、課税所得の計算と企業会上の利益計算を、原則として独立に行っているケースも見られる( [1] )。会計規制を設けているそれぞれの法が、独自のルールに基づいて利益や所得を算定すれば、 それぞれの立法趣旨はより良く達成される。ただし、その場合は、企業に対して所得 や利益に係る類似した計算の繰り返しを求めることとなる。そこでは、無視できない コストを企業が負担することとなる。逆に、一元化された計算規程を関連諸法令が共有すれば、そうしたコストは節約し得るが、「妥協の産物」としての性質を有する会計基準で、それぞれの立法趣旨を完全に達成するのは困難となる。  従来、日本の会計制度は企業会計と会社法、税法とが協力し合って、[2] を図ってきたことが知られている。一元化が達成されている状況は、 [3] などと呼ばれることもあった。現在でも大枠では、こうした一元化が保た れているといってよい。  ただし、これはコスト削減の要請が優先された結果であって、今後もこうした体制 が保たれる保証はない。後に学ぶように、今日の企業会計は、[4] との共通化や一元化の要請を強く受 けている。この [4] は、伝統的な [5] と比べて、会社法や税法の立法趣旨に馴染みにくい手続( [6] )を多く要求している といわれることがある。企業会計と関係諸法令との関係は、漸次変化していくことが 予想される。

    「税会分離」, 会計規定の統 一化, 「トライアン グル体制」, 国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards), 日本基準, 資産やストックに係る公正価値の見積りなど

  • 47

    【例題1-3】 (1) 日本の会計制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれですか。  A 金融商品取引法は、財務諸表の作成に当たって採用されるべき会計処理の内容を「財務諸表等規則」で網羅的に定めている。  B 日本において会計基準を作成する役割は、現在、主に日本公認会計士協会が担っている。  C 利益計算に関する税法の規定によって、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の内容が定められている。  D 会社法は、「会社計算規則」で規定していない部分について、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うことを求めている。

    D

  • 48

    【例題1-3】 (2)会社法の規制に関する次の記述のうち、正しいものはどれですか。  A 会社法は配当規制を通じて、企業に関わる当事者間の円滑な利害調整、特に債権者の保護を達成しようとしている。  B 会社法は、上場会社に限って適用される法律である。  C 会社法の計算書類は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表からなる。  D 計算書類および事業報告は、会社法に基づく計算書類等の開示書類に関する電子開示システム(EDINET)を通じて開示しなければならない。

    A

  • 49

    【例題1-3】 (3)日本の会計制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれですか。 A 民間団体である企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した会計基準は、金融商品取引法で遵守が求められている    「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」には 該当しない。  B 会社法で遵守が求められている「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」 の内容は、「会社計算規則」の中で明示されているものに    限られる。  C 証券取引所の自主規制による適時開示である決算短信は、株主総会等で最終的に 確定する前の決算情報である。  D ASBJが公表した「修正国際基準」は、わが国の企業による純粋なIFRSの任意適 用を防止することを目的としている。

    C

  • 50

    5. 強制開示と自発的開示の違い (1) 適時開示情報としての決算短信  前節で取り上げたのは、法定開示の対象としての利益情報と、それを規制する諸法令であった。そこでいう法定開示書類の典型例は、有価証券報告書(金融商品取引法) と計算書類(会社法)である。後に説明する公認会計士などのチェックを受けた法定開示書類は信頼性が高く、詳細な情報が収容されている。ただし、法定開示書類の作成には多大なコストを要するため、その開示回数は限られている。  ところで、投資家の意思決定に有用な情報には、信頼性などに加えて適時性も求められる。例えば、ファンダメンタル分析に基づく証券投資の場合、証券価格のファン ダメンタルからの乖離を他者よりも速やかに知ることができれば、価格がファンダメ ンタルに回帰する過程でより多くの利得を上げることができる。投資家のニーズに応 えるのであれば、厳密さや正確さを多少犠牲にしても、投資家が重視する事実を速やか(かつ公平)に提供する必要がある。こうした要請から、現在では、法定開示に加 えて、法の定めによらない適時開示も行われている。  日本取引所グループはそのウェブサイトにおいて、適時開示制度を以下のように説 明している(https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/index.html )。

    あああああ, あああああ, あああああ, あああああ, あああああ

  • 51

    店の売り物となる商品を買ってくることを(①)といい、仕入れたときの金額を(②)(または(③))という。 商品を顧客に販売することを(④)といい、販売したときの金額を(⑤)という。 また、商品を仕入れた相手先のことを(⑥)、商品を売り上げた相手先を(⑦)という。

    仕入れ, 原価, 仕入原価, 売上, 売価, 仕入先, 得意先

  • 52

    商品を仕入れたり、売り上げたりしたときの処理方法には(①)と(②)の2つの方法がある。

    三分法, 分記法

  • 53

    ■三分法による処理 三分法とは、商品の売買について(①)[費用]、(②)[収益]、(③)[資産]の3つの勘定で処理する方法をいう。

    仕入, 売上, 繰越商品

  • 54

    ■商品を仕入れたとき 商品を仕入れたときは、原価(仕入れたときの金額)で(①)[費用]を計上する。  ▶費用の増⇒(②)(左)

    仕入, 借方

  • 55

    商品を仕入れたとき(三分法) A商店はB商店から商品100円を仕入れ、代金は現金で支払った。 (①)   100  (②)   100* *(②)[資産]が減少したので、貸方(②)で処理する。

    仕入, 現金

  • 56

    ■商品を売り上げたとき  商品を売り上げたときは、(①)(販売したときの金額)で(②)[収益]を計上する。  ☞(③)の増加⇒貸方(右)

    売価, 売上, 収益

  • 2001 企業分析における財務分析の意義を理解する。

    2001 企業分析における財務分析の意義を理解する。

    ユーザ名非公開 · 10問 · 1年前

    2001 企業分析における財務分析の意義を理解する。

    2001 企業分析における財務分析の意義を理解する。

    10問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    2002 企業会計の役割を理解する。

    2002 企業会計の役割を理解する。

    ユーザ名非公開 · 11問 · 1年前

    2002 企業会計の役割を理解する。

    2002 企業会計の役割を理解する。

    11問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    2003 会計情報の限界など財務分析上での留意点を理解する。

    2003 会計情報の限界など財務分析上での留意点を理解する。

    ユーザ名非公開 · 13問 · 1年前

    2003 会計情報の限界など財務分析上での留意点を理解する。

    2003 会計情報の限界など財務分析上での留意点を理解する。

    13問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    2004 日本の財務報告制度の特徴、企業会計を規制する法体系を理解する。

    2004 日本の財務報告制度の特徴、企業会計を規制する法体系を理解する。

    ユーザ名非公開 · 11問 · 1年前

    2004 日本の財務報告制度の特徴、企業会計を規制する法体系を理解する。

    2004 日本の財務報告制度の特徴、企業会計を規制する法体系を理解する。

    11問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    2005 強制開示と自主開示の違いを理解する。

    2005 強制開示と自主開示の違いを理解する。

    ユーザ名非公開 · 12問 · 1年前

    2005 強制開示と自主開示の違いを理解する。

    2005 強制開示と自主開示の違いを理解する。

    12問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    2006 財務情報と非財務情報の違い、分析に利用するときの留意点を理解する。

    2006 財務情報と非財務情報の違い、分析に利用するときの留意点を理解する。

    ユーザ名非公開 · 5問 · 1年前

    2006 財務情報と非財務情報の違い、分析に利用するときの留意点を理解する。

    2006 財務情報と非財務情報の違い、分析に利用するときの留意点を理解する。

    5問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    CMA e-Learning

    CMA e-Learning

    ユーザ名非公開 · 35問 · 1年前

    CMA e-Learning

    CMA e-Learning

    35問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    簿記3級 テキスト

    簿記3級 テキスト

    ユーザ名非公開 · 44問 · 1年前

    簿記3級 テキスト

    簿記3級 テキスト

    44問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    2007 日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の特徴と相違点を理解する。

    2007 日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の特徴と相違点を理解する。

    ユーザ名非公開 · 10問 · 1年前

    2007 日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の特徴と相違点を理解する。

    2007 日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の特徴と相違点を理解する。

    10問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    用語・定義

    用語・定義

    ユーザ名非公開 · 99問 · 1年前

    用語・定義

    用語・定義

    99問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    登録・認可等

    登録・認可等

    ユーザ名非公開 · 24問 · 1年前

    登録・認可等

    登録・認可等

    24問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    業務通則

    業務通則

    ユーザ名非公開 · 277問 · 1年前

    業務通則

    業務通則

    277問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    有価証券等管理業務・弊害防止

    有価証券等管理業務・弊害防止

    ユーザ名非公開 · 52問 · 1年前

    有価証券等管理業務・弊害防止

    有価証券等管理業務・弊害防止

    52問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    金融商品取引業協会・その他関係諸機関

    金融商品取引業協会・その他関係諸機関

    ユーザ名非公開 · 22問 · 1年前

    金融商品取引業協会・その他関係諸機関

    金融商品取引業協会・その他関係諸機関

    22問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    監督

    監督

    ユーザ名非公開 · 77問 · 1年前

    監督

    監督

    77問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    経理

    経理

    ユーザ名非公開 · 22問 · 1年前

    経理

    経理

    22問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    協会規則

    協会規則

    ユーザ名非公開 · 14問 · 1年前

    協会規則

    協会規則

    14問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    外務員

    外務員

    ユーザ名非公開 · 43問 · 1年前

    外務員

    外務員

    43問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    取引規制・課徴金・罰則・調査

    取引規制・課徴金・罰則・調査

    ユーザ名非公開 · 23問 · 1年前

    取引規制・課徴金・罰則・調査

    取引規制・課徴金・罰則・調査

    23問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    バイナリーオプション取引関連

    バイナリーオプション取引関連

    ユーザ名非公開 · 10問 · 1年前

    バイナリーオプション取引関連

    バイナリーオプション取引関連

    10問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    犯罪収益移転防止法関連

    犯罪収益移転防止法関連

    ユーザ名非公開 · 15問 · 1年前

    犯罪収益移転防止法関連

    犯罪収益移転防止法関連

    15問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    金融商品販売法関連

    金融商品販売法関連

    ユーザ名非公開 · 6問 · 1年前

    金融商品販売法関連

    金融商品販売法関連

    6問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    個人情報保護法関連

    個人情報保護法関連

    ユーザ名非公開 · 31問 · 1年前

    個人情報保護法関連

    個人情報保護法関連

    31問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    企業経営理論

    企業経営理論

    ユーザ名非公開 · 118問 · 1年前

    企業経営理論

    企業経営理論

    118問 • 1年前
    ユーザ名非公開

    財務・会計

    財務・会計

    ユーザ名非公開 · 85問 · 10ヶ月前

    財務・会計

    財務・会計

    85問 • 10ヶ月前
    ユーザ名非公開

    運営管理

    運営管理

    ユーザ名非公開 · 32問 · 9ヶ月前

    運営管理

    運営管理

    32問 • 9ヶ月前
    ユーザ名非公開

    企業経営理論

    企業経営理論

    ユーザ名非公開 · 60問 · 8ヶ月前

    企業経営理論

    企業経営理論

    60問 • 8ヶ月前
    ユーザ名非公開

    財務・会計

    財務・会計

    ユーザ名非公開 · 24問 · 7ヶ月前

    財務・会計

    財務・会計

    24問 • 7ヶ月前
    ユーザ名非公開

    問題一覧

  • 1

    ③利益の算定過程において作成者がデータを集計する必要性  利益は定量的な情報であるのに加えて、 [1] という特徴も有する。 この特徴を際立たせるため、企業が行った日々の取引をありのままに記録した [2] と呼ばれる帳簿を、利益に代えて開示する場合を想定する。いわば利益情報の元 となる [3] を提供し、その加工・集計は、[4] に委ねるのである。  [2] の段階で詳細に区分されていたデータは、現行制度のもとでは、財務諸表を 作成する際に、報告企業によって [5] され、一部の要素が失われていく。 そうしたプロセスを経る前のデータを開示する訳であるから、ここで想定している仕 組みのもとでは、例えば、得意先別、営業拠点別(支店別)、あるいは個別製品ごとの 売上高に関する詳細な情報を得ることができる14。 これと同様に、現行会計基準では「機械設備」「建物」などのカテゴリーで一括されている [6] を、形態や機能に基づき より細かく分類したデータなども得ることができるであろう。  上記のとおり、[7] には長所も見られる。他方でこれも上記のとおり、この仕組みのもとでは、財務諸表を 作成する企業が行ってきた集計作業の負担を、情報の利用者である [4] が肩代わりする必要がある。企業の価値を評価するため、将来にわたって安定的に生み出される [8] することが達成目標であれば、[9] を統合・集計して算定することは不可欠といってよい。ところが、企業の外部にいて限定的な情報しか得 られない[4] がデータの集計を担うのは、実際には不可能といってよい。[7] が実際には受け入れられず、財務諸表を作成する企業自身がデー タの集計を担っているのは、そういう事情による。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 14 現行会計基準でも、事業部門別、あるいは地域別という単位での [10] の開示は求められているが、先に例示した次元の極めて細かな区分に基づく情報は開示されていない。

    集計・要約された情報, 「仕訳帳」, 「生のデータ」, 投資家, 適宜集計・統合, 資本設備, 「代替的な情報開示の仕組み(仕訳帳に相当するデータの開示)」, 利益を予測, 「実績値としての成果」, 詳細情報(セグメント情報)

  • 2

    「財務分析」は、証券アナリストが日々の業務として行う[1]の基礎であり、CMA にとって必須となる知識やスキルを学習します。 第1次レベルでは、[2]を学ぶこと から始めます。[2]に何が記載されているのかを知り、次に記載のルール[(3)]と[4]の基礎を学びます。 第1次レベルの最後には、「財務分析の基礎」として、それまでに学んだ[2]に関する基礎知識をベースに、基本的な分析手法を学びます。 講座テキストは、受講者の学習しやすさに従来以上に配慮しており、CMA資格者が習得すべき知識・スキルを明示した「学習ポイント」で習得できる内容を新たに書き下ろしたものです。講座テキストを学習するだけで、第1次試験に合格できる知識・能力を習得できるように作成しています。講座テキストの構成は、各分野で共通しており、各章の冒頭で学習ポイントを示したうえで、本文による説明とともに、要所に図解による例示や例題を含めた具体的な数値例を配して、説明を加えています。また、各章末にはその章で学習した内容をまとめたサマリーを掲載しており、理解が必須となる事項を再確認できます。さらに、各章末に設けた練習問題を繰り返し学習することによって、理解を深められる構成としています。第1次試験では、「学習ポイント」の習得度を確認する問題が出題されますので、講座テキストを着実に学習し、試験に合格できる知識・能力の習得を目指してください。なお、「財務分析」の講座テキストでは、できるだけ平易に解説していますが、「分析」手法を学ぶうえで数式を使用して説明しているところもあります。理解が十分でないと感じる場合には、「数量分析と確率・統計」のテキストを参照して、もう一度、同じ個所を読んで見てください。最初に読んだときには理解ができなかった数式が理解できるかもしれません。テキストを1回読んだだけでは十分に理解できなくても、多くの例題や章末の練習問題を繰り返し解いて、テキストの説明箇所を繰り返し読み込むことで、テキストの記載内容を身に付けられるように学習を進めてください。

    企業分析, 財務諸表, 会計基準, 会計学

  • 3

    この章では、証券アナリストを志す諸氏が、なぜ財務会計や財務諸表分析を学ばな ければならないのか、その学習目的を明らかにする。 すなわち証券アナリストが日々 業務として行う企業分析において、財務会計や財務諸表分析の知識がどのような局面 で、どう役立つのかを具体的に説明する。   企業の業績を事後的にとらえた利益の情報は、「過去の情報であり、企業の将来を予 測しようとする証券アナリストにとって価値の乏しい情報ではないか」という疑問が 寄せられることも少なくない。実際、将来に予想されるキャッシュフローを反映した 株価を、単年度の利益だけで説明するのは極めて難しい。例えば、会計上の利益は赤 字が続いているにもかかわらず、株価が堅実に上昇している企業を見かけるのは稀で はない。  ただし、このことは、[1]の価値が乏しいことを意味しない。[1]は継続 的に開示されており、過去から現在に至るまでの利益の変化を知ることができる。ま た、[2]においては、最終的な投資の成果を反映した当期純利益の他、経常利 益や営業利益などの情報も提供されている。さらに、利益の情報に加え、[3] においては、企業の財産に関する情報も提供されている。詳しくは後述するが、関連 し合うデータを適切に結びつけ、個々のデータの過去数年にわたる変化に着目すれば、 過去の事実に基づく[1]は、[4]と[5]という証券アナリストの業務に 有益な情報源となり得る。利益は過去の情報でありながら、将来の動向に関する要素 を潜在的に含んでおり、適切な加工を行えば、証券アナリストが必要とする情報を利 益から引き出すことができるのである。  もちろん、このような加工を行うためには、加工のための具体的な手法を知っておくとともに、そもそも会計上の利益はなぜ将来予測に役立つ要素を含んでいるのか、 会計上の利益は具体的にどう計算・開示されているのかについても知識を得ておかな ければならない。これらの諸点は、一連のテキストを通じて少しずつ学んでいくこと となる。

    利益情報, 損益計算書, 貸借対照表, 業績予測, 企業評価

  • 4

    1. 企業分析における財務分析の意義 (1) 証券アナリストとは  最初に、日本証券アナリスト協会のウェブサイトより、証券アナリストについての 記述を引用してみたい(https://www.saa.or.jp/cma_program/step/about/index.html)。  証券アナリストとは、証券投資の分野において、高度の[1]と[2]を応 用し、各種情報の分析と[3]を行い、[4]や[5]を提 供するプロフェッショナルです。  近年、資本市場の発達と高度化に伴って、証券アナリストの所属する業務が大き く広がるとともに、一層専門化が進んでいます。例えば、証券会社や資産運用会社 などで[6]を基に、個別証券の分析・評価を行うのが、[7]です。  一方、資産運用会社や銀行・保険会社などの[8]には、様々な投資目的に 適合した証券を組み合わせて、総合的な資産運用に携わる[9]という専門職がいます。この他、[10]、[11]、[12]などと呼ばれる職種の方がいます。 証券アナリストは、こうした一連の投資の[13]に参画するプロフェッショ ナルを総称するものとなっています。(後略)  上記の記述にあるように、どのような部署に属するにせよ、将来における[14]を通じて個々の企業の[15]するのが、証券アナリストの主たる業務であ る。通常は証券会社に属し、投資家に対し証券投資に必要な情報を仲介し提供する[16]のアナリストであっても、通常は銀行・生命保険会社・投資顧問会社などの 機関投資家に属し、自ら資金運用のためのリサーチ業務を行う[17]のアナリス トであっても、その点に違いはない。

    専門知識, 分析技術, 投資価値の評価, 投資助言, 投資管理サービス, 産業・企業調査, リサーチ・アナ リスト(狭義の証券アナリスト), 機関投資家, ポートフォリオ・マネ ジャー(ファンド・マネジャー), 投資ストラテジ スト, 投資アドバイザー, マーケット・アナリスト, 意思決定過程, 業績の予 測, 投資価値を評価, セ ルサイド, バイサイド

  • 5

    (2) ファンダメンタル分析において証券アナリストに期待される役割  では証券アナリスト達は、具体的にどのような形で、企業の投資価値を評価してい るのであろうか。また、投資価値を評価する過程で、いかなる企業分析が、なぜ求め られるのであろうか(次頁の図表 1 - 1 参照)。  証券投資には多様なスタイルがあり得る。その中には、経験や勘に大きく依存して いるものも見られる。また、客観的なデータに基づく証券投資であっても、そのデー タがなぜ将来の企業業績を反映しているのか、なぜ投資価値の評価に役立つのか、理 論的な裏付けに乏しいと考えられるものも見られる1。投資家が自己の判断により、こ れらのスタイルを選択するのは自由だが、このような投資スタイルで証券投資に臨む と、より多くの有用な情報から企業の将来業績を「科学的に正しく予測した投資家」 と比べて、不利な立場を強いられる。より具体的には、「正しい」業績予測を行った投 資家と比べて、より多くのリスクを負担しなければ、彼らと同じだけのリターンを期 待できないこととなる。  高度な知識を有する専門家としての証券アナリストが提供するのは、このようなス タイルの投資に関連する情報ではない。証券アナリストが提供するのは、個々の証券 のファンダメンタル価値を見出すのに役立つ情報であり、ファンダメンタル価値を見出すために証券アナリストが行う分析は、ファンダメンタル分析と呼ばれる。ここで 証券のファンダメンタル価値(本源的な価値)とは、公表された情報を投資家が正し く分析し、将来の業績予測に役立つ内容を引き出したときに形成されるはずの価格を いう。言い換えれば、証券の価格形成メカニズムに関する理論に照らして、「本来形成 されるはずの価格」をいう。  このような分析が意味を持つのは、長期的にはともかく、少なくとも短期的には、 実際の証券価格とファンダメンタル価値との間に食い違いが生じ得るからである2。何 らかの事情によりファンダメンタル価値と比べて今割安な証券があれば購入し、割高 な証券を売却するのが、ファンダメンタル分析に基づく正しい意思決定となる。つま り、証券市場には常に誤って価格付けされている(ミスプライスされている)銘柄が 存在しているという現状認識のもとでは、より正確に、より適時にファンダメンタル 価値を知ることを通じて、より多くのリターンが期待されることとなる。  このファンダメンタル価値を、公表された情報から容易に導出可能であれば、一般 の投資家は情報の仲介者であるアナリストの助けを借りずに、自分自身で投資に関す る意思決定を行うかもしれない。しかし、実際には専門知識を持たない一般の投資家 にとって、ファンダメンタル価値を推定するのは困難である。ここに、専門家として の証券アナリストが一般の投資家に代わってファンダメンタル分析を行うことの意義 がある。  一般の投資家は、ファンダメンタル分析のために証券アナリストに支払うコストを、 証券アナリストが仲介し提供してくれる情報の便益に見合うものと考えている。つま り、コストを負担してでも、専門家としての証券アナリストが行ったより正確なファ ンダメンタル分析の結果を活用すれば、割安銘柄と割高銘柄をより正確に見極めるこ とができる。その便益が大きいため、証券アナリストが業務として行うファンダメン タル分析に期待が寄せられるのである。 ------------------------------------------------------------------ 1 過去における株価の変動が将来も繰り返されるという仮定のもとで、将来における株価の動きを予測し、 「買い時」と「売り時」を見極める方法がその典型例である。企業を取り巻く経済環境や企業自身が変化しているにもかかわらず、株価が過去の経験に基づく変化のパターンを繰り返すというのは科学的根拠に乏しい推論といえる。 2 仮に全ての情報が公表と同時に正しく分析され、新たな情報をもとに割高・割安と判断された証券につ いて瞬時に無コストで裁定取引が行われるのであれば、ファンダメンタル分析は意味を失うこととなる。 いわゆるインデックス・ファンドなどしか投資対象とせず、市場に勝とうとする意欲を見せない消極的 な投資家は、証券市場に関する上記の見方を暗黙のうちに採っていることとなる(より正確には、ファンダメンタル分析はコストに見合う便益を生み出さないというスタンスをとっていることとなる)。

    ***, ***

  • 6

    (3) ファンダメンタル分析で財務データが果たす役割  では、ファンダメンタル分析は、具体的にどのようなプロセスで行われるのであろ うか。また、企業の業績予測は、ファンダメンタル分析のプロセスで、どのような意 味を持つのであろうか。詳しくは一連の講座で将来詳しく学習することとし、ここで は「財務会計や財務諸表分析の知識が証券アナリストにとってなぜ必要か」という疑 問に答えるポイントに絞って説明したい。  S.H. ペンマン『アナリストのための財務諸表分析とバリュエーション』(邦訳、有 斐閣 2018 年 3 月)によれば、ファンダメンタル分析は、[1]、[2]、[3]、[4]、および[5]という、5 つのプロセスからなるとされている(図表 1 - 2 参照)。  このうちの[1]と[2]は、その後に予定されている[6]に先立ち、([7]な ものも含む)基礎データを収集し、分析するプロセスを指す。[8]などのデータが 持つ意味は、分析対象の企業が置かれている[9] に応じて変わってくる。財務データを正しく解釈するためには、[10] と[11]が不可欠となる。  続く[3]は、一連のプロセスにおける中核をなす。そこでは与えられた諸データを基に、企業の[12]の基礎をなす企業の[13]を予測することとなる。企業活動から生み出されるはずの[14]は、直接 的なものから間接的なものまで、多様な手法で予測される。具体的に何を見積もるの か(営業キャッシュ・フローなのか、配当収入なのか、あるいは会計上の利益なのか) は、次のプロセスで採用するモデルに依存している。なかでも会計上の利益が予測対 象としたモデルは望ましい属性を有しており、有力な選択肢と考えられている。財務 データを読み解くスキルを一連の講座で学ぶことになっているのもそのためである。  さらに[4]では、特定の企業評価モデルに基づき、直前のステップで予測した[15] が[16]へと変換される。先に説明したとおり、ファンダメンタル分析では、 [17]に照らして株価が割高となっている銘柄や割安となっている銘 柄の特定化が目指されている。そのファンダメンタル価値を求めるため、ここでは直 前のプロセスで予測した[15]を、特定の評価モデルに基づき[18]に変換す る作業が求められる3。  最後の[5]では、上記のステップから導き出された結論に基づき、[19]が実 際に行われる。具体的には、保有している銘柄について[20] [21] [22]などの意思決定が行われるのである。  ここで説明したとおり、ファンダメンタル分析では、企業が将来に生み出す[23]に主眼が置かれている。[13]は将来の[24]に依 存していることから、どのような評価モデルを[4]のステップで選択するにせよ、ファ ンダメンタル分析を行う証券アナリストは企業を分析し、財務データを用いてその業 績を予測しなければならないのである。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 3 詳しくは後に学ぶが、[25]や[26]がよく知られている。いずれのモデルも、企業 の価値は将来に予想されるキャッシュフローで決定されるとしたうえで、多様な形で予想した将来キャッ シュフローを現在の価値に割り引いて企業価値を推定する。

    事業内容の理解, 情報 の分析, 予測の展開, 予測の価値評価への変換, 価値評価に基づいた取 引, 定量的な分析, 定性的, 利益率, 環境(同業他社との関係や経営戦略など), 周辺的な情報の収集, 分析, 価値(投資対象としての価値), 将来キャッシュフロー, キャッシュフロー, 回収額, 企業の投資価値, ファンダメンタル価値, 割引現在価値, 投資意思決定, 「保持(現状維持)」, 「買増し」, 「売却」, キャッ シュフローの予測, 業績, 配当割引モデル, 残余利益モデル

  • 7

    (4) 求められる財務諸表分析への精通  証券アナリストは、業績予測のために多様な情報を利用する。利用される情報には [1]なものも含まれるが、中心的な分析対象は[2]である。会計上の 利益は[3]を事後的にとらえたものであり、直接的には企業が将来に生み 出すキャッシュフローを予測したものではない。ただし、一連の講座で今後学ぶよう に、一定の条件([4]と呼ばれる)を満たした利益は、過去 の実績値でありながら、将来の利益あるいは将来のキャッシュフローを予想するのに 役立つ情報が含まれている4。財務諸表分析は、そうした「将来予測に資する情報」を抽出するためのツールである5  ただし、ここでいう財務諸表の分析には、かなり高度な専門知識が求められる。デ ータの分析に係る一般的な知識だけでは、[5]の適切な分析を期待できない。こ うした事情のため、証券アナリストは、「財務諸表分析」と総称される一連の分析手法、 すなわち与えられた 1 次データを業績予測に役立つように加工する手法を習得しなけ ればならない。一連の講座に「財務分析」というプログラムが設けられ、財務諸表分 析の手法の説明に多くの紙面が割かれているのはそのためである。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 4 クリーンサープラスの制約とは、簡単にいうと、「[6]と[7]が連動していること」を 意味する。より具体的には、[8]、[9]、[10]、[11]などが行われない状況で、[12]が損益計算書上の[13]と一致する関係が保たれていることをいう。 5 利益情報ではなく、実績値としてのキャッシュフローを用いて将来キャッシュフローを予測する方法も 想定できる。利益情報を「迂回」せず、現在までのキャッシュフローから将来のキャッシュフローを直 接予測する方法のほうが自然に思える。にもかかわらず、敢えて利益情報を用いて将来キャッシュフローが 予測されるのは、そのような予測にとって、キャッシュフローよりも[14]のほうが有用であることが 多くの実証研究において指摘されており、かつそうした事実に[15]を与えるモデルが存在しているからである。

    定性的, 定量的な会計情報, 企業活動の成果, 「クリーンサープラスの制約」, 利益情報, 貸借対照表, 損益計算書, 増資, 配当金の支払い, 自社株買い, 減資, 株主資本の増減, 利益(または損失), 利益情報, 合理的な解釈

  • 8

    設例 1 財務諸表分析の手法を知ることの重要性  今、投資対象として A 社と B 社を想定する。A 社は利益 1,000、B 社は利益 500 であっ たとする。また、使用総資本は A 社が 10,000、B 社が 2,000 であったとする。  このとき、損益計算書や貸借対照表のデータを組み合わせて利用する手法を知らなけ れば、利益と使用総資本のそれぞれについて、絶対額だけに基づく投資判断が行われて しまうかもしれない。  しかし、投資家にとっては資金運用の効率性を表している資本利益率(利益÷資本) も重要である。これを計算すると、A 社が [1]なのに対し、B 社は [2]ということが わかる。資金運用の効率性も投資家の関心を引くと考えられるから、絶対額の利益に加 えて資本利益率も重視しなければならない。このことからも明らかなように、損益計算 書や貸借対照表に記載されている 1 次データに加え、これらを分析目的に合わせて加工 した 2 次データを求める手法(財務諸表分析)は、証券アナリストを志す諸氏にとって 必須の知識となる。

    10%, 25%

  • 9

    (5) 財務諸表分析の基礎となる会計基準への精通  さらにいうと、与えられた利益のデータを[1]という目的に照らして適切に用 いるためには、 ①そもそも会計上の利益はどのような過程を経て計算・開示されるの か、 ②会計上の利益はどのような特徴を有しているのかなどの知識も必要となる。 つ まり、会計上の利益がどのような[1]に基づいて計算・開示されてい るのか、その仕組みを知っておく必要がある。というのも、与えられた利益データは 財務諸表分析のインプットとして常にそのまま利用できるとは限らず、上記の財務諸 表分析に先立って、利益のデータに[2]が求められることもあるからである。  このとき、会計上の利益がどのような意味で[1]に有用であり得るのか、逆に どのような[4]を有しているのかを知らなければ、適切な加工・修正はできない。一 連の講座で会計ルールの基本的な仕組みの理解も求められているのは、そのためである。

    業績予測, ルール(会計基準), 加工・修正, 限界

  • 10

    設例 2 会計数値の計算過程を知ることの重要性①  今、投資対象として A 社と B 社を想定する。A 社は利益 1,200、B 社は利益 1,000 で あったとする。両社はともに大量の商品を仕入れ・販売しているため、商品の流れを正 確に把握するのが困難な状況にある。そのため A 社は、先に仕入れた商品から先に販売 されたという仮定([1])のもとで、毎期の利益を計算している。他方の B 社は、 払い出された商品は全て期中の平均単価に見合う価値を有しているという仮定([2])のもとで、毎期の利益を計算している。  詳しくは次回以降のテキストで学ぶが、毎期末に保有している商品の数量がほぼ一定 で、商品の価格が一貫して上昇している場合は、[1]のもとで計算した利益の方 が、[2]のもとで計算した利益より大きくなることが知られている。  会計上の利益が上記のような仮定のもとで計算されていることを知らなければ、A 社 と B 社の利益の絶対額だけを比較して、投資判断を行ってしまう恐れがある。しかし、 [3]の計算過程を知っていれば、A 社と B 社が異なる仮定を採用していることの[4]を分析してから、両社を比較することができる。  例えば、A 社が[1]を採用しているため、もし同社が[2]を採用していた ら算定されていたはずの利益 800 と比べて、利益が 400 だけ相対的に多く計上されて いたことが明らかになったとする。このような情報は、A 社と B 社の優劣に関する判断 に影響を及ぼし得るものといえるであろう。

    先入先出法, 総平均 法, 会計数値, 影 響額

  • 11

    設例 3 会計数値の計算過程を知ることの重要性②  投資対象として、 [1] (貸借対照表の総資産)が同規模のC社とD社を想定する。 C 社は [2] (損益計算書末尾の数値)が 500、D 社は当期純損失が 100 であった とする。上記の情報しか入手できない状況では、 [3] の大小によって投資判断を行う しかない。  ただし、C 社の [4] (毎期継続的・反復的に行われる企業活動の成果で、事業投 資の成果と金融投資の成果を合わせたもの)が過去数期も一貫して 500 前後の黒字だっ たのに対し、D 社の[4]は過去数期一貫して 1,000 前後の黒字だったが、今期だけ [5] (一過性の損失)が 1,100 だったため、最終的な利益は赤字になってしまった ことが、損益計算書における利益の [6] から明らかになれば、先ほどの投資判断 は変わってくるかもしれない。  というのも、仮に D 社が過去数期にわたって [4] を 1,000 前後計上してきたと すれば、D 社の [7] は C 社より優れているともいえるからである。会計利益の [8 ] を知ることは、損益計算書や貸借対照表で採用されている表示形式の意味 を知ることにもなる。この点に関する知識があれば、上記のようなケースで比較対照さ れている企業の投資価値を正しく見極めることが可能となる。

    使用総資本, 当期純利益, 純利益, 経常利益, 特別損失, 多段階表示, 潜在的な収益力, 計算過程

  • 12

    (6) 要約  本節では、まず証券アナリストが企業分析を行う目的を説明した。証券アナリスト には、業績予測を通じた投資価値の評価が期待されている。専門的な知識を有した証 券アナリストによる業績予測は経験や勘を頼りにしたものではなく、 [1] に基づく [2] なものであることが求められる。この [1] に おいては、企業が生み出す [3] を正しく予測するため、 [4] な ものから [5] なものまで、対象企業に係る幅広い情報を活用しなければならない。  続いて説明したのは、上記のような役割が期待されている証券アナリストが、財務 分析( [6] )に関する知識を習得する必要である。 [3] の予測においては、利益の情報が助けとなる。ただし、事実に裏付けられ た [7] としての性格を有する企業会計上の利益は、そのままでは必ずしも将来予 測に役立たない。利益情報から業績予測に役立つ情報を引き出すためには、特別な分 析( [8] )を行わなければならない。それゆえ、証券アナリストは、 [8] に関する知識を習得しなければならない。  また、 [8] を行う際には、それに先立ち、会計上の利益を [9 ] する 必要が生じることもある。会計上の利益には [10] 以外の役割も 期待されているため、開示される利益が証券アナリストによる [8] にとって最善 の内容である保証はない。そのような状況では、公表された利益データを証券アナリ ストが自らの分析目的に役立つように適宜 [9] しなければならない。その際、 利益計算の基本的な仕組みの理解が必要なため、財務会計に関する知識の修得も不可 欠となるのである。

    ファンダメンタ ル分析, 科学的, 将来のキャッシュフロー, 定性的, 定量的, 財務会計および財務諸表分析, 実績情報, 財務諸表分析, 加工・修正, 「投資価値評価への活用」

  • 13

    2. 企業会計の役割 (1) 投資家の意思決定に有用な情報の提供  企業会計の歴史は古く、現代の大企業が出現する前から利益の [1 ] は行われ てきたことが知られている。例えば、企業の資金需要が主として銀行などからの借入 によって充足されていた時代は、銀行を意識した利益情報の [1] が行われてい た。さらに時代を遡り、より原初的な形態の企業が支配的な時代は、出資者の資金を 受託した主体が出資者の利害に沿って誠実な [2] を行ったかどうか、その [3] を果たすための手段として、利益の [1] が行われてきたといわれている。経済社会の中心を占める企業の形態が変化するのに応じて、企業会計に期待される役割も変化してきたのである。  現代の経済社会を牽引しているのは大企業といえるが、その大企業に見られる特徴 の 1 つは、 [4] が進んでいる点に求められる。現代の企業は、機関 投資家などからの出資だけでは賄い切れないほど大規模な [5] を実行す る。そのためには、一般の投資家からも出資を募る必要が生じる。  一般の投資家は、企業との直接的な面識を欠く。つまり、投資家と企業経営者との 間には、企業に固有の強みなどに関する [6] が見られる。現行の [7] のもとでは、 [8] は投資家の自己責任において行われることとされて いる。そうなると投資家としては、責任を負えるような [9] が整っていない限り、 つまり、投資対象となる企業の [10] を把握するのに必要な情報が提供されてい ない限り、出資の要請に応じることはできない。こうした事情を背景として、公開企 業は広く様々な投資家に対し、将来に多くのキャッシュフローを生み出す資質を有す る企業であることや、投資家の利害を犠牲にして経営者が私利に走るような企業では ないことを示すための情報を提供している。  投資家と企業経営者との間に存在する情報の格差 [11] を緩和・解消 するためには、言うまでもなく、投資家が必要としている情報、とりわけ事実に裏付 けられた客観的な情報の開示が求められる。投資家が最も重視するのは、投資対象の 企業がどれだけのキャッシュフローを将来にわたり安定的に生み出すのかであろう。 証券アナリストに期待される役割に関連づけて前節で説明したように、過去の実績値 としての利益は、将来キャッシュフローの予測に役立つ要素を含んでおり、適切な分析を行えば、その要素を抽出することができる。こうしたことから、伝統的に利益情報は、経営者が投資家に提供する最も重要な情報と考えられている。言い換えれば、 利益情報には、投資家の [12] に有用な情報の提供という役割が期待されている。  とはいえ、企業が提供する情報に虚偽の内容が含まれる可能性が残る場合、そのよ うな情報は投資家の [13] に役立たない。事実、企業経営者には、投資家を犠牲に して自己の富を増やそうとする潜在的な誘因がある。この点、 [14] に記載された 利益情報は、一定水準以上の信頼性が保証されている。詳しくは後に改めて説明する が、利益情報の [1] は [7] のもとで定められており、 企業にはその遵守が求められている。加えて、ルールに則った [1] が行われて いるかどうかは、投資家の利害に沿って [15] がチェックすることになっている。 このため、投資家は利益情報を [12] に安心して役立てることができる。  以上を要約すると、利益情報には、投資家の [12] に有用な情報の提供という役 割が期待されている。企業経営者と投資家との間に存在する [6] を解消するこ とによって、資本市場における円滑な [16] を促す役割を、企業会計上の利益が 果たしているのである。利益情報に期待され、企業会計が果たしているこの役割は、企業会計の [17] あるいは [18] と呼ばれることが多い。

    計算と開示, 資金運用, 説明責任, 「所有と経営の分離」, 投資プロジェクト, 情報の格差, ディスクロー ジャー制度, 証券投資, 環境条件, 強みや弱み, (情報の非対称性), 意思決定, 信頼獲得, 財務諸表, 公認会計士, 資金の循環, 「情報提供機能」, 「意思決定支援機能」

  • 14

    (2) 当事者間の利害調整に役立つ情報の提供  多くの証券アナリストが分析対象とする [1] に関する限り、利益情報が果たし ている主要な機能は、上記の [2] ないし [3] といえる。ただし、 それらの機能を果たすために開示される利益情報は、その他の機能も果たし得る。つ まり、利益情報については、いくつかの [4] を想定できる。 ①会計情報に基づく財務上の特約 副次的な用途の 1 つは、企業に関わる当事者間の私的な契約による [5] である。その典型例として、企業と [6] との間で取り交わされる財務上の特約に、 利益情報を利用する場合が挙げられる。  [6] は、[7] に経営者が行う意思決定次第で、自らの利害が損なわれる可能性 がある。ここで、「8」の高い企業を想定する。自分より劣位の請求権しか持 たない株主が多いことから、この企業に対する融資は安全性が高いと判断した [6] が、この企業に対して低金利で新たな融資を行ったとする。ところがその直後、この 企業の経営者は、新たに借り入れた資金を配当に回し、その結果として不足した事業 に必要な資金をさらなる借入(先に行った借入よりも返済条件が良いもの)で賄った とする。この結果、当該企業の安全性に関する [9] は悪化するとともに、既存の 債権者の利害が損なわれることとなる。にもかかわらず、経営者の [10] などを 通じて企業の経営をコントロールする権利を持たない [6] は、特段の定めがない限 り、[6] の利害を犠牲にする経営者の行動を防ぐことができない。  このような事態を防ぐため、[6](集団)はしばしば、企業経営者との間に私的 な契約を取り交わして自らの利害を守ろうとする。そこでの契約は、[6] の利害に 反するような行動を禁じるために取り交わされるが、経営者の「[6] の犠牲のもと で株主や経営者自身を利する行動」の 1 つ 1 つを契約に盛り込んで禁じるのは難しい。 こうしたことから、上記の目的で取り交わされる契約では、利益に関連した [11] の うち、債権者の利害と結びつくものがしばしば用いられる。例えば、[8] や [12] が一定の水準に達した場合には、債務の即時返済を義務付けるような契約 [13] が取り交わされるのである6。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 6 このような契約を取り交わす誘因は、経営者の側にも存在する。というのも、[6] の利害を犠牲にし て株主の富の増大を図るつもりのない経営者は、このような契約の締結に応じないと、[6] の利害を 犠牲にする可能性のある経営者とみなされ、より高い [14] の負担を求められる恐れが生じるからである。

    公開企業, 情報提供機能, 意思決定支援機能, 副次的な用途, 利害調整の支援, 債権者, 融資後, 自己資本比率, 財務指標, 選任・解任, 諸数値, 負債比率, (財 務上の特約), 借入資本コスト

  • 15

    ②会計情報に基づく経営者報酬契約  利益情報が企業に関わる当事者間の私的な契約による利害調整に用いられるもう 1つの具体例は、株主と経営者との間に取り交わされる [1] の報酬契約である。  経営者には株主の利害に沿った行動が期待されるが、両者の間には企業についての 情報に [2] が見られる。それゆえ、両者の利害は必ずしも一致していない。そこでは、 特段の定めがない限り、経営者が常に株主の利害に沿って最大の努力を行う保証はな い。例えば、経営者の報酬を完全な [3] の形で支払う場合を想定する。このとき、 [4] の最大化を図ろうとする経営者であれば、会社についての情報を十分に持 たない株主に [5] の実態が伝わらない限り、企業経営のための十分な努力 を行わないであろう。  このような事態を避けるため、株主には何らかの対抗策が必要となる。よく知られ ているのは、株主の富の最大化を図ることが「自動的に」経営者自身の利得の最大化 となるような [6] である。そのような [7] の 1 つに、[8] の報酬契約がある。[9] の増大は、原則として株主にとって望ましいこ とといえる。その [9] の [10] を経営者にボーナスとして支払う旨の契約を事前に取り交わしておけば、ボーナスの増加を望む経営者の努力は、「自動的に」株主の 望む行動に向けられることとなる。  ここで説明した [11] と [8] の報酬契約は、各企業が利益情報を 用いて個別に契約を結び、当事者間の [12] を図るための手段であった。利益情報 の副次的な用途という場合は、この他、不特定多数の企業を適用対象とする公的な規制に、利益情報が用いられるケースも含まれる。今度は、このようなケースに議論を進めたい。

    会計利益連動型, 格差, 固定給, 私的な利得, 「怠惰な経営」, 報酬契約上の工夫, 経営者報酬契約, 会計利 益連動型, 会計利益, 一定比率, 財務上の特約, 利害調整

  • 16

    ③会計情報を用いた配当規制  関連諸法規において利益情報が利用されている典型例は、[1] であろう。[1] とは、会社財産に対して [2] しか持たない株主による会社財産の [3] を、一定の範囲に収める会社法上の規制7 である。会社法は、企業に関わる当事者間の利害調整(中でも [4] )を [5] とすることから、 株主と [6] との利害調整を図るために、このような規制を定めており、この [7] が [8] 上の [9] を指標として決められている8。[9] は主として過去から現在に至るまでの [10] によって増加することから、現行の [1] には利益情報が利用されているということができる。  仮に株主に対して [11] を無制限に認めた場合、会社財産に対して本来、 債権者が優位な請求権を有し、株主の請求権は劣位に留まるという基本的な関係が損 なわれることになる。のみならず、[12] に用いられる会社財産が減少するため、[13] は高まることになる。このとき、自分の利害が [14] に損なわれ得るこ とを予測する債権者は、自らが負うリスクを補償するような、より [15] を要求するはずである。この結果、企業が負担する [16] は全体として上昇すること になる。多くの企業経営者にとって、そのような [16] の上昇は望ましいこととはいえない。  もし、株主に対して会社財産の無制限な引出しを認めるつもりがないのであれば、 企業経営者は債権者との [17] において、 [7] を初めから一定の範囲 に抑える旨の契約を取り交わしておけばよい。そのような [18] が広範に求められ ているのであれば、交渉に伴うコスト( [19] )を経済社会全体として削減するため、不特定多数の企業を対象とした 公的な規制に、予め [20] を組み込んでおくのがよい。会社法における [1] の存在は、このように [21] という観点から意義付けられる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 7 会社法はこの他、当事者が必要としている [22] によっても [5] の達成を図っている。[1] に対し、これを [23] という。 8 剰余金の定義については、[24] を参照。

    配当規制, 劣位の請求権, 引出限度額(配当可能限度額), 債権者の保護, 立法趣旨, 債権者, 配当可能限度額, 貸借対照表, 剰余金, 期間利益, 会社財産の引出し, 償還, 債権の償還リスク, 潜在的, 高い金利, 資金調達コスト, 私的な契約, 私的契約, 多くの企業が類似した契約を取り交わすため に被るコスト, 標準的な契約, 交渉コストの削減, 情報の開示, 開示規制, 会社法第 446 条

  • 17

    ④会計情報に基づく税務申告  関連諸法規や政府などによる規制の一環で、利益情報は [1] や金融機関における [2] 9 などでも用いられている。このうちの [1] は、[3] が会計上の利益を基に [4] を決定する仕組みである。現行の [5] では、企業が どれだけの [6] を有しているのかという観点から、[4] が決められている。 [7] は様々な [8] で測られるが、企業会計上の利益は [7] を反映した [8] の典型例と考えられている。  この場合、企業会計上の利益とは別の [8] を設定し、[7] を新たに計算し直すの は効率的なことといえず、むしろ企業会計上の利益を基に [4] を決定することによ り、[9] の削減を図ることができる。こうしたことから、[1] においても伝統的に、利益情報が用いられてきた10。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 9 [10] (BIS: Bank for International Settlements) の中に事務局を設けているバーゼル銀行監督委員会による [11] が知られている。 10 [4] の決定においては、[12] や [13]などがとりわけ強く求められるのに対し、投資家の意思決定 に有用な情報の提供という観点に立つ場合、[13] などは情報に求められる特性の 1 つに過ぎない。こうしたことから、企業会計上の利益がそのまま [4] を決めることはなく、利益にいくつかの調整を行って [4] を決定することとなる。

    税務申告制度, 自己資本比率規制, 税法, 納税額, 法人税法, 税金負担能力, 担税力, 指標, 徴税に伴うコスト, 国際決済銀行, 自己資本比率規制, 公平性, 客観性

  • 18

    (3) 1 つの利益で 2 つの役割を同時には達成できない場合  証券アナリストの主要な分析対象である公開企業では、利益は主として [1] に有用な情報を提供する役割を果たしているといってよい。とはいえ、利益情報が副次的に利用されているのも、また事実である。このとき、果たすべき機能の違 いにかかわらず、 [2] が常に一義的に決まるのであれば、話は簡単である。 しかし、実際には期待される役割の違いに応じて、[2] も違ってくる。情報提供機能を果たすのに最適な利益情報が、 [3] を果たす のに最適な利益情報とはいい切れないのである。  このような食い違いは典型的に、有価証券の [4] について見られる。まず、投資の意思決定に有用な情報を提供する観点からすれば、企業が保有する有価証券の [5] は必要な情報といえる。というのも、有価証券の [5] は、企業が事業投資 に回し得る [6] の大きさを反映しているからである。[7] を生み出す事業投資は [8] といい得るものであり、有価証券の [5] やその増減は、 企業が新たな事業投資にどれだけ速やかに着手できるのかを測るうえで、有用な情報 となる11。  これに対して、利益情報によって [9] を図る場合には、有価証券を [10] で評価し、[11] を期間損益に反映させるのが望ましいとはいい切れない。 今、過去から現在に至るまでの期間利益に基づく [12] を指標として、[13] が 行われている場合を想定し、指標として用いられる利益に有価証券の [11] (値上がり益)が含まれているケースを考える。このとき、有価証券の値上がり益を原資 として株主に配当を行うためには、追加借入による現金の調達が必要となる。この追加借入は、[14] の悪化などを通じて、既存の債権者への資金返済が契約どおりに 行われなくなる可能性( [15] )を高め得る。  そうであれば、有価証券の [16] を含んだ利益に基づく [13] が、それを含 まない利益に基づく [13] よりも、債権者の [17] に役立つとはいえない。つまり、 情報提供機能が問われているケースとは異なり、この文脈では、有価証券の [16] やその計算基礎となる [4] の有用性を、積極的には主張できない。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 11 市場が十分に効率的であれば、[6] による金融投資では [17] しか得られないこととなる。その場合、有価証券の [18] としての時価総額と異なり、金融投資の成果を反映している [11] の情報は、[18] の推定に有用な情報を提供しない。しかし、[19] がファンダメンタル価値に 収束するまで時間を要するような場合は、ファンダメンタル価値からの乖離を他者より速やかに、かつ正 確に把握することにより、[7] を得られる可能性がある。そのような能力を測るうえで、過去の実績値としての [11] が意味を持つこともあり得る。

    投資家の意思決定, 「望ましい利益」, 利害調整機能(契約支援機能), 時価情報, 時価総額, 余剰資金, 超過リターン, 企業価値の源泉, 当事者間の利害調整, 時価, 時価評価差額, 留保利益, 配当規制, 財務指標, 返済のリスク, 時価評価益, 保護, 平均的なリターン, ストック, 企業価値, 証券価格

  • 19

    (4) トレード・オフの関係が見られる場合に求められる対応  ここで例示した有価証券の時価情報のように、利益情報に期待される機能の違いに 応じて望ましい [1] が異なる場合、どのような利益が市場関係者全体にとっ て最善なのかを判断することは難しい。公開企業を前提とすれば、基本的には [2] の観点から利益のあり方を決めることになるが、利益情報が副次的に利用され ている事実を受け止め、それを制約とみなす必要が生じることもあり得る。  ここで [2] の観点から、結果的に [3] が増加するような会計基準を新 たに導入した場合を想定する。このとき、利益に基づいて [4] を決定する仕組みのもとでは(税務当局が何らかの経過措置をとらない限り)、企業の負担する [5] は大きくなる。[5] の増加は経済全体に多様な影響を及ぼし得る。そういう場合は、 投資家の意思決定にとって、より有用な情報が提供されることの影響のみならず、[6] の変化が及ぼす影響も総合的に勘案して、新たな会計基準を導入すべきかどうかを決めることになる。  より具体的には、増税が経済に及ぼす負の効果が深刻で、かつ、もっぱら会計基準の変更に起因する [7] にも課税するという決定を税務当局が下す(見 込みの)場合には、増益の効果を伴う基準改訂の提案は取り下げられることになるかもしれない。  視点を少し変えると、以上の記述は、[2] の観点から最善の利益情報が常に開示されている訳ではないということを意味している。利益情報を用いて企業の投資価値を分析する際は、副次的な用途に配慮した結果、利益情報にどのような影響が及んでいるのかを適宜把握するとともに、必要に応じてその影響を打ち消すような形で [8] を修正しなければならない。

    計算・開示方法, 情報提供機能, 報告利益, 課税所得, 納税額, 課税関係, 「名目的な」増益額, 公表情報

  • 20

    【例題1-1】 (1) 企業会計には、投資家の意思決定に有用な情報の提供という役割が期待されている。自己責任による意思決定が求められる中で、投資家は、なぜ利益情報を必要と しているのか。また、経営者は、投資家の求めに応じて利益情報を提供することに より、どのような便益を期待できるのか。利益情報が開示されず、投資家と企業経営者の間に存在する情報の非対称性が十分に緩和されない場合に予想される問題と 併せて、説明しなさい。 (2) 主として投資家の意思決定に有用な情報の提供という役割を果たすために、計 算・開示される利益は、副次的な用途にも活用される。 ①財務上の特約の一環で利 用される場合、 ②経営者報酬制度の一環で利用される場合、 ③配当規制の一環で利 用される場合、および ④税務申告制度の一環で利用される場合の用途を説明しなさ い。 併せて、①および②の場合と、③および④の場合の違いを説明しなさい。 (3) 投資家の意思決定に有用な利益情報は、一般に副次的な用途(当事者間の利害 調整または企業活動の成果分配という局面)においても有用と考えられる。しかし、 場合によっては、投資家の意思決定に有用な利益情報が、副次的な用途にとって最善の情報とはいえないこともある。その場合、主目的とされる「投資家の意思決定 に有用な情報の提供」を常に優先すればよい、といえるかどうかを説明しなさい。 (4) 会計基準は「投資家の意思決定に有用な情報の提供」だけを達成目標として掲 げているのではなく、「当事者間の利害調整または企業活動の成果分配に資する情 報の提供」も目指している。この事実は、証券アナリストによる財務諸表の分析に、どのような影響を及ぼすかを説明しなさい。

    (1)説明では以下のポイントに触れること。 ・企業の業績等に関する情報の非対称性の存在   ・非対称性を解消しないままでは困難な資金調達(要求される資本コストの高さ) ・情報要求に応えることで資本コストが低下するのは経営者にとっての便益であること, (2) 説明では以下のポイントに触れること。 ・利害調整に資する情報の提供(⇔投資家の意思決定に有用な情報の提供) ・特定企業に関わる当事者間の利害調整が想定されているケース(①および②)   ・不特定多数の当事者間の利害調整が想定されているケース(③および④), (3) 説明では以下のポイントに触れること。   ・当事者の利害に大きな影響を及ぼすケースの存在(配当規制や税務申告制度に影響が及ぶケースなど) ・「副次的な用途」への影響を重視する場合も存在

  • 21

    3. 会計情報の限界など財務分析上での留意点  前節では、① [1] は [2] だけのために [3] されている のではないこと、②それゆえ、[1] を[2] に用いる場合は、与えられた情報を [3] に応じて適宜修正する必要があり得ることを説明したが、[1] を用いる場合の留意事項は他にもいくつか見られる。本節では、[5] は企業が記録に残した全てのデータを反映したものにはなっていないこと、および利益の 大きさが経営者の [6] によって左右されることに焦点を当てて、「会計情報の限界」あ るいは「財務分析において会計情報を用いる際の留意点」を説明する。

    利益情報, ファンダメンタル分析, 計算・開示, 分析目的, 会計情報, 判断

  • 22

    (1) 会計情報の限界:企業が記録した取引データの一部だけを反映 ①定量的な記述に馴染まない情報の欠落  利益情報の中核をなすのは、定量的な要素である。投資家が自己責任において意思 決定を行う場合、企業経営者による将来見通しの[1] などに加え、これまで 実際に上げてきた [2] など、客観的な事実に裏付けられた [3] が必要 となる。[1] と [3] は相互補完関係にあり、[1] について は、証券アナリスト向けの [4] などの提供メディアが数多く準備されているた め、利益情報にはおのずから [3] であることが求められる。

    定性的な情報, 投資の成果, 定量的な情報, 企業説明会

  • 23

     定量的な情報を作成する際には、一定のルールに従って、観察された事実を [1] へ変換する必要が生じる。このとき、観察された事実の大部分は [2] に変換できるとしても、全てが変換可能という保証はない。つまり、定量的な情報への変換過程で、観察された事実の一部が脱落してしまう。これは利益情報に限らず、定量的な 情報が一般に有する限界といえる。  例えば、現在開示されている利益は取引記録に基づき算定されていることから、会社がいつ行ったどういう活動によって、どれだけの利益が生じたのかは [3] といえる12。 他方で、企業はどういう意図で(あるいは企業の経営方針や経営戦略をどのように理解したうえで)利益を生み出す活動を行ったのか、つまり「利益を生み出す活動をどのような文脈で、なぜ行ったのか」という [4] を、財務諸表に記されている諸数値から直接読み取ることは難しい。また、算定された利益に経営者が満足しているのか、それともなお改善の余地が残されている のか、という類いの [5] を、財務諸表に反映することもできない。 ファンダメンタル分析において利益情報を利用する場合、利用者は、脱落した情報を [6] などによって適宜補う必要がある。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 12 実際には、次に述べる [7] で脱落してしまう情報も多い。

    数字の データ, 数字, 「原理的に把握可能な情報」, 「文脈に関わる 情報」, 「評価に関する情報」, 定性的な情報, 「データの集計・統合プロセス」

  • 24

    ②測定上の客観性を保証できない情報の欠落  一般にいう [1] の中には、その存在自体が [2] に反映されない場合もある。その典型例は、企業が培ってきた [3] や、購買意欲の 旺盛な [4] 、[5] などである。これらは企業の [6] に貢献し得るものであり、 [7] では資産とみなされている。  しかし、上記の資産はいずれも価値の見積りが困難であり、定量化の過程で主観的な要素がどうしても多く介在してしまう。先に説明したとおり、利益情報は客観的な 事実に裏付けられたものであることが求められるため、たとえ上記の資産が「技術的 には」定量化が可能だとしても、主観性を排除し切れないままに見積もった、それら の価値(および価値の変動)を利益に反映すると、利益全体の信頼性が損なわれ、そ の有用性が低下する恐れがある。それゆえ現行の会計基準においては、上記の資産(お よびその変動)が利益情報に直接反映されることはない13。  もちろん、客観的に価値を見積もる手法が発達すれば、現在はオフバランスされて いる資産項目の一部はオンバランスされるであろう。それでもなお、全ての資産をオンバランスするのは困難と考えられる。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 13 ここでは、定量化の困難な項目は財務諸表に反映されていないことを指摘した。とすれば、価値の客観的な見積りが可能な限り、できるだけ多くの項目を [8] に反映させた方がよい、と考えられるかもしれない。しかし、話はそれほど単純ではない。ある項目の [8] への記載は、最終的には、その項目を 記載することにより利益にどのような意味が与えられるのかという観点(あるいは、その項目を記載する ことにより、会計情報の有用性が高められるのかという観点)から判断される。詳細は省略するが、客観的な定量化が可能であることは、財務諸表に計上されるための必要条件に過ぎない。

    「資産」, 「会計上の資産」, 良質のブランドイメージ, 顧客のリスト, 優秀な従業員, 超過リターン, 「会計の外の世界」, 財務諸表

  • 25

    ③利益の算定過程において作成者がデータを集計する必要性  利益は定量的な情報であるのに加えて、[1] という特徴も有する。 この特徴を際立たせるため、企業が行った日々の取引をありのままに記録した [2] と呼ばれる帳簿を、利益に代えて開示する場合を想定する。いわば利益情報の元となる [3] を提供し、その加工・集計は、[4] に委ねるのである。  [2] の段階で詳細に区分されていたデータは、現行制度のもとでは、[5] を作成する際に、報告企業によって適宜集計・統合され、一部の要素が失われていく。 そうしたプロセスを経る前のデータを開示する訳であるから、ここで想定している仕組みのもとでは、例えば、得意先別、営業拠点別(支店別)、あるいは個別製品ごとの 売上高に関する詳細な情報を得ることができる14。 これと同様に、現行会計基準では「機械設備」「建物」などのカテゴリーで一括されている [6] を、形態や機能に基づき より細かく分類したデータなども得ることができるであろう。  上記のとおり、[7] に は長所も見られる。他方でこれも上記のとおり、この仕組みのもとでは、[5] を 作成する企業が行ってきた集計作業の負担を、情報の利用者である [4] が肩代わり する必要がある。企業の価値を評価するため、将来にわたって安定的に生み出される [8] することが達成目標であれば、[9] を統合・集計して算定することは不可欠といってよい。ところが、企業の外部にいて限定的な情報しか得 られない [4]がデータの集計を担うのは、実際には不可能といってよい。[6] が実際には受け入れられず、財務諸表を作成する企業自身がデー タの集計を担っているのは、そういう事情による。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 14 現行会計基準でも、事業部門別、あるいは地域別という単位での [10] の開示は求められているが、先に例示した次元の極めて細かな区分に基づく情報は開示されていない。

    集計・要約された情報, 「仕訳 帳」, 「生のデータ」, 投資家, 財務諸表, 資本設備, 「代替的な情報開示の仕組み(仕訳帳に相当するデータの開示)」, 利益を予測, 「実績値としての成果」, 詳細情報(セグメント情報)

  • 26

    ④集計過程におけるデータの欠落  統合・集計済みの数値が報告される枠組みのもとでは、いうまでもなく、上記の [1] では開示できた「より詳細なデータ」を、投資家が入手す ることはできない。そうした情報は、 [2] の過程で失われてしまうからである。  ここまで述べてきたように、財務諸表の作成者である企業が取引記録を集計し、統合したデータを開示することで、投資家は [3] を享受する。他方で、統合・集計過程を企業に委ねることで、投資家にとって有用であったかもしれない一部のデータが失 われてしまう。経営者にどのような水準での統合と集計を求めるのか、統合と集計の [3] とその陰で生じる [4] とのバランスを図ることが求められる。

    「代 替的な情報開示の仕組み」, 統合・集計, 便益, 犠牲

  • 27

    (2) 会計情報を分析する際の留意事項:経営者の判断に左右される利益の大きさ ①複数の [1] が併存する理由  ある会計年度中に、まったく同じ活動を行った企業 2 社を想定する。このとき、両社の利益は一致するように思えるが、実際には [2] は保証されない。むしろ、 両社の利益は食い違うのが常態である。これは、いずれか一方だけが正しい利益計算を行い、他方は誤った計算を行ったために生じた事態ではない。むしろ、いずれの利益も正しいものとみなされる。つまり、[3] は 1 つだけではなく、複数 の [3] が併存するというのが、現行ルールを支える基本的な考え方 である15。  では、なぜ複数の「正しい」利益が存在し得るのであろうか。その理由は、主とし て将来見通しの [4] と、選択し得る会計方針の [4] に求められる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 15 事実を忠実に描写した利益は 1 つしかないと見る立場は、利益の絶対的な真実性を支持する立場とい われる。これに対し [3] が複数存在し得ると見る立場は、利益の真実性は相対的なものに過 ぎないと見る立場といわれる。

    「正しい利益」, 利益の一致, 事実に忠実な利益, 多様性

  • 28

    ②将来見通しの多様性  利益は投資活動の成果に関する [1] としての性質を有しているが、[1] を求めるためにも、[2] は必要である。会計年度中に全ての投資活動が完了し、決算時点において継続中の投資活動が存在しない場合はともかく、複数の会計年度にわたる [3] が存在する場合、過去の事実を確定するために将来の見積りが必要となる。  例えば、当期首に新たな投資プロジェクトに着手し、そこへ 10 億円で購入した機械設備を投入したとする。このとき、この機械設備に係る当期の [4] を計上し ようとすれば、機械設備の [5]を見積もらなければならない。つまり、 問題の投資プロジェクトに関する [6] を立てなければ、当期に生じた費用を確定できないのである。企業経営者はそこで必要な将来事象を見通すこととなるが、そ うした見通しは不確実なものに留まる。それゆえ、将来事象に関する判断は分かれる。  例えば、一部の経営者は、問題の機械設備を丁寧に修繕し、陳腐化を避けながら耐用年数にわたり、できるだけ等質的に利用しようと考えるであろう。他方で、早期の 経済的な陳腐化を不可避と予想し、「陳腐が生じる前に投下資金を回収し尽くそう」と いう思いから、問題の機械設備をフル稼働させる経営者もいるであろう。将来に対す る予想のこうした違いは、 [7] の違いに現れる。それらが 異なれば、そこから導かれる利益も異なってくる16。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 16 正確にいうと、「どの償却基準を選択すべきか」が直接関わっているのは、次の③で説明する「会計方針の多様性」である。

    過去の実績値, 将来事象の見積り, 長期の投資, 減価償却費, 耐用年数 や残存価額, 将来見通し, 耐用年数や「適切な償却基準」

  • 29

    将来見通しの相違に起因する利益の相違は、この他、[1] に関する判断の違いにも現れる。例えば、製造物責任法に基づく訴訟中の企業を想定する。現在、敗訴により賠償金を支払う可能性は無視できない水準にあるとする。このとき、将来 に予想される [2] は、当期までの営業活動に起因する「事実上確定した損失」だという考え方から、その [2] を(最終的な判決を待たず)当期に計上する経営者を想定できる。そこでは計上した損失に見合う形で、[3] と呼ばれる会計上の負債 も計上されることとなる。  これに対して、比較的強気に将来を見通す経営者も想定し得る。このような経営者 は、勝訴の可能性も残されている以上、現時点での損失計上は必要ないと判断するで あろう。その場合、当期の損失はゼロとなり、[3] の設定も不要となる。  勝訴・敗訴の見通しは経営者の判断に依存しており、少なくとも事前の段階ではいずれか一方が正しく、他方が誤っているということはできない。強気な経営者の企業とより慎重な経営者の企業では、[2] を前倒して計上するか否かに関する判断が分かれることから利益は相違するが、いずれの利益も「会計基準に照らして正しいも の」とみなされる。つまり複数の [4] が併存することとなる。

    引当金の設定額, 賠償損失, 引当金, 「正しい利益」

  • 30

    ③選択可能な会計方針の多様性  続いて、[1] いかんで、利益の数値が変わってくる場合を例示する。利 益を計算するためには、本来、企業が直面した事実をありのままに把握する必要がある。ただし、様々な事情により [2] を断念し、何らかの仮定に基づいて利益を計算しなければならない場合がある。その典型例は、多数の商品を扱っているケ ースにおける期末商品原価の算定である。  どの時点にいくらで仕入れた商品が期末に売れ残っているのか、商品の流れが個別 に把握可能であれば、その事実に照らして期末商品の原価を算定することができる。 しかし、商品の流れを個別に把握するのは困難なケースが多いといわれている。その 場合、商品の流れに関する何らかの仮定を設け、その仮定に基づいて期末商品の原価 を計算する方法が伝統的に許容されてきた。  そうした仮定でよく知られているのは、[3] や [4] である。[3] は、文字どおり、先に仕入れた商品から順次販売されたとみなして、期末商品の原価 を算定する方法である。これに対して、[4] は、毎回異なる仕入単価の [5] をとり、販売された商品も売れ残った商品もその平均単価に見合う価値を有している とみなす方法である。いずれを採用するかは経営者の裁量に委ねられており、個々 の企業にとって最も適切な方法の選択が期待されている。その際、どの仮定が最善 なのかに関する経営者の判断は分かれる。採択された方法の違いによって、毎期の利益も相違する17。つまり、ここでも「複数の正しい利益」が併存することとなる。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 17 会計基準の国際的な調和あるいは収斂を求める動きの中で、かつて認められていた後入先出法の採用は、2010 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度から禁じられることとなった。

    会計方針の選択, 事実の直接的な把握, 先入先出法, 総原価法, 加重平均

  • 31

    ④経営者による裁量の余地が残されている理由  ここまで具体例を用いながら説明してきたとおり、①経営者は [1] をどう見通して いるのか、②自分の企業にとってどの [2] が適切と考えているのかなどの違いに 応じて、最終的な利益の大きさは違ってくる。利益はその意味で、経営者の [3] に左右される性格を有している。それゆえ、利益の単純な [4] は、誤った意思決定 に結びつく恐れがある。どのような計算過程から導かれてきた利益なのかを、適宜 チェックしなければならず、財務諸表の [4] を行う際には、[5] を揃える ための調整などを行わなければならない。これは、利益情報をファンダメンタル分析 に用いる場合の大切な留意事項である。  ところで、経営者の [3] によって利益の大きさが左右されるのは、先に説明したと おり、多様な方法による将来見通しや多様な [5] の選択が許容されているからで ある。逆にいえば、将来事象の見積り方法や企業が採用し得る [5] をできるだけ 統一すれば、ここで説明してきた留意事項は不要になるかもしれない。少なくとも技術的には、将来事象の見積り方法や採用可能な [5] の幅を狭めることは可能であ る。それにも関わらず、なぜそのような統一が進まないのであろうか。  将来事象の見積り方法や選択可能な [5] を [6] 統一すれば、経営者による「過度な」裁量の余地が失われ、財務諸表の [4] が容易になるのは事 実である。しかし、その一方で「過度の画一化」は、「選択可能な見積もり方法や会計方針が経営実態に適う企業」と、「実態に合わない見積り方法や会計方針の選択が強い られる企業」を生み出す。画一化が [7] に留められているのは、こうした事情に よるのであろう。

    将来, 会計方針, 裁量, 企業間比較, 会計方針, 「適切な水準で」, 一定水準

  • 32

    【例題1-2】 (1) 「どのような手法であれ、ある資産や負債の評価額を見積もることができるのであれば、できるだけ多くの資産や負債をそのような評価額で貸借対照表に計上すること を通じて、会計情報の有用性を高めることができる。」という主張にコメントしなさい。

    (1)説明では以下のポイントに触れること。  ⚫最終的に重要なのは、「ある資産や負債を特定金額でオンバランスすることから導 かれてくる利益の情報が投資家の意思決定に資すること」  ⚫どのようなモデルのいかなるインプットとして会計情報を利用しているのかを論じ ることなく、有用性を議論するのは困難

  • 33

    【例題1-2】 (2) 「会社が残している取引記録のデータを統合・集計してしまうと、その過程で投資 家の意思決定にとって重要な情報が漏れてしまう。それゆえに企業は財務諸表に代え て、未加工の取引データ(仕訳帳など)を開示した方が良い。」という主張にコメン トしなさい。

    (2)説明では以下のポイントに触れること。 ⚫データの集計過程で情報が失われてしまう事態を回避できる点で優れている手法   ⚫ただし内部情報を持たない企業外部の投資家にとって「生のデータ」を自ら適切に集計・加工するのは困難

  • 34

    【例題1-2】 (3) たとえ複数の企業がまったく同じ活動を行ったとしても、現行ルールのもとでは、 それらの企業が報告する利益は通常一致しない。利益の食い違いを生み出す原因を列 挙しなさい。

    (3)説明では以下のポイントに触れること。   ⚫採用する会計方針等の違い(複数の方法が許容されている場合)   ⚫将来事象の見積もりをめぐる見解の相違

  • 35

    【例題1-2】 (4) 「例えば償却基準として定額法・定率法・級数法などの適用を容認することに代え、 全ての企業に定額法の適用を強制すれば利益情報の比較可能性が高まり、その有用性 も向上する。」という主張にコメントしなさい。

    (4)説明では以下のポイントに触れること。   ⚫「画一性」あるいは「統一性」は向上   ⚫ただし、画一性の向上と比較可能性の向上とは別の問題 ⚫直面している事実が異なるにもかかわらず画一的な処理を求めると、かえって比較 可能性が損なわれてしまうケースも存在

  • 36

    4. 日本の財務報告制度の特徴と企業会計を規制する法体系 (1) 金融商品取引法の会計規制  利益情報は第 1 に、[1] の規制を受ける。同法の第 1 条には「この法律は、[2] の制度を整備するとともに、[3] を行う者に関し必要な事項を定め、[4] の適切な運営を確保すること等により、[5] の発行及び金融商品等の [6] を公正にし、[5] の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な [7] を図り、もって国民経済の健全な発展及び [8] の保護に資することを目的とする。」とあり、 [1] は [5] の売買を行う [9] を立法趣旨としている。  先に説明したとおり、投資家が [10] において意思決定を行うためには、[11] に関する情報の開示が不可欠となる。こうしたことから [1] は、 上場会社および有価証券の募集と売出しを行った会社(以下「上場会社等」)に対し、 内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況、その他事業の内容に関する重要な事項、その 他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書( [12] )の提出を求めている(第 24 条)。利益情報を記載し た財務諸表は、この [12] に収められている。

    金融商品取引法, 企業内容等の開示, 金融商品取引業, 金融商品取引所, 有価証券, 取引等, 価格形成等, 投資者, 投資家の保護, 自己責任, 投資対象の企業, 有価証券報告書

  • 37

     このように、金融商品取引法はその立法趣旨を達成するために、[1] を求めているが、具体的な内容を直接には指示していない。財務諸表の用語、様式およ び作成方法などの形式面については、「 [2] (財務諸表等の用語、様式及び 作成方法に関する規則)」という [3] が定めているものの、そこにも概括的な規定 しか設けられていない。「 [2] 」の第 1 条第 1 項に「金融商品取引法の規 定により提出される財務計算に関する書類のうち、[4] 、[5] 、 [6] 及び [7] 、並びに [8] の用語、様式及び 作成方法は、第1条の三を除き、この章から第八章までの定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に [9] と認められる企業会計 の基準に従うものとする。」とあるように、規定の詳細は「一般に [9] と認められ る企業会計の基準」に委ねられているのである18。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 18 本文で取り上げた「財務諸表等規則」は、個別の企業を報告単位として行う利益計算のあり方を定めて いるが、現在ではむしろ企業集団を報告単位とする [10] が有価証券報告書において主たる地位 を占めている。[10] の記載事項は「 [11] 」という内閣府令が定めているが、その第 1 条にも一般に [9] と認められる企業会計の基準に従う旨の規定がある。

    利益情報の開示, 財務諸表等規則, 内閣府令, 貸借対照表, 損益計算書, 株主資本等変動計算書, キャッシュ・フロー計算書, 附属明細表, 公正妥当, 連結財務諸表, 連結財務諸表規則

  • 38

    (2) 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準  では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは何であろうか。[1] と [2] それぞれの第 1 条第 2 項では、[3] により公表された企業会計の基準は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとされている。会計基準は現在、[3] に代わり [4] が公表している。民間団体である [4] が公表した基準については、 2009 年(平成 21 年)12 月 11 日に公表された「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(平成 21 年 12 月金融庁公告第 69 号)」および「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関 する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(平成 21 年 12 月金融庁公告第 70 号)」に基づき、金融庁長官の告示により、「一般に公正妥当と認 められる企業会計の基準」と認められている。  すなわち、[4] が新たに公表した会計基準は、上記の [5] 第 69 号および第 70 号の一部改正という形で、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第 1 条第 3 項及び財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第 1 条第 3 項に 規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に追加指定されている19。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 19 金融庁のウェブサイト「企業内容等の開示に関する情報」を参照。

    「財務諸 表等規則」, 「連結財務諸表規則」, 企業会計審議会, 企業会計基準委員会(ASBJ), 金融庁公告

  • 39

    (3) 会計基準の諸類型  ところで、 [1] や [2] が公表した基準は、様々な種類に分かれている。 このうち [2] の公表物は、正式な議決を経たものについて、[3] と [4] とに分かれている。この他にも個別問題に関する「論点整理」などが公表されている20。  一方、[1] の時代には、会計基準の根幹をなすと考えられてきた[5] [6] に加えて、個別問題に関する会計基準が別途公表され てきた。当時の [1] は現在の [2] と異なり、適用指針や実務対応報告に 相当する文書を公表せず、その役割は日本公認会計士協会の [7] などが公表する報告書などに委ねられてきた。[1] はこの他、関連諸法令との関係 を明らかにする目的で特別な意見書なども公表してきた。  これらの会計諸基準のうちのいくつかは、今でも「一般に公正妥当な企業会計の基 準」を構成する点で広く合意が得られている。他方で「一般に公正妥当な企業会計の 基準」に含まれるかどうかについて、見解が分かれるものもある。さしあたっては、 ①会計基準が [8] に分かれていることと、②公正妥当な会計基準とそうはいい切れないものの境界線が暖昧であることのみ指摘しておきたい。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 20 現実に生じた個別問題に対応する形で会計基準を新設すると、「場当たり的な」対応が促され、会計基準の体系性が損なわれてしまう恐れがある。こうしたことから、会計基準を支える基礎概念を予め整理・ 要約しておき、具体的な会計基準の開発に際しそれらを活用しようとする動きが見られる。米国に始まり、 日本でも 2004 年に ASBJ からの委託を受けたワーキング・グループによって討議資料という形でとりまとめられた基礎概念に関する資料は一般に「概念フレームワーク」と呼ばれている。この討議資料は、部分的な修正を行ったうえで、2006 年 12 月に ASBJ におけるデュー・プロセスを経て、正式の討議資料と して公表されることとなった。

    企業会計審議会, ASBJ, 企業会計基準, 適用指針・ 実務対応報告, 「企業会計原則」, 「企業会計原則注解」, 会計制度委員会, 多様な種類

  • 40

    (4) 会社法の会計規制  利益情報は第 2 に、[1] の規制も受ける。[2] の適用対象は上場会社等(株式を公開している株式会社のほか、一定額以上の [3] を発行し、募集する大規模な株式会社なども含む)だが、[1] は全ての会社を適用対象としている。両法の違いは立法趣旨にも見られ、[2] が投資家の保護を立法趣旨としているのに対し、[1] の立法趣旨は企業に関わる当事者間の円滑な利害調整、中でも [4] の保護にあるといわれている。  この立法趣旨を達成するための手段として、[5] と [6] が知られている。 このうち[5] は、本来は劣位の請求権しか持たない株主による [7] の引出し を一定の範囲に制限することにより、[4] の保護などを図るものである21。日本では [8] が貸借対照表上の [9] に基づいて算定されているため、[9] の増加をもたらす期間利益の計算方法は [1] の規制を受けることとなる。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 21 [5] が存在すれば、[4] が自分の負うリスクについて過度に保守的なスタンスをとるような事態 を避けられる。そのことにより負債の [10] が下がれば、[5] が存在することの便益は経営者も享受することとなる。

    会社法, 金融商品取引法, 有価証券, 債権者, 配当規制, 開示規制, 会社財産, 配当可能限度額, 剰余金, 調達コスト

  • 41

     もう 1 つの開示規制は、企業の利害関係者、中でも株主や [1] が資金提供や資金引上げの意思決定を行うために必要な情報の提供、あるいは経営者の [2] に関 する意思決定を行うために必要な情報の提供を義務付けることによって、それらの [3] の保護を図るものである。資金の追加提供や引上げに関する意思決定は、企業が将来生み出す [4] に依存する。それゆえ、その予測に役立つと考え られている [5] は、大規模な企業のみならず中小企業についても求められ る。このとおり、期間利益の計算方法は、開示規制の観点からも [6] の規制を受け ることになっている。  もっとも、[6] は [7] と同様に、利益の具体的な計算方法について詳細かつ包括的な規定を持っていない。本文に記されているのは、[8] などに関する規定(第 2 編第 5 章第 3 節)と、[9] に関する規定(第 2 編第 5 章第 4 節)だけである。具体的な計算規定については、[10] という法務省令に委 ねることとされている。これは [7] における「 [11] 」や「 [12] 」に相当するものであり、そこには、用語、様式、作成方法などについ ての比較的詳細な規定が設けられている。ただし、[10] で全てのケースを網羅できる訳ではない。そこでカバーしきれない部分については、[7] のケー スと同様に、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとされている(第 431 条)。  この「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」、すなわち、かつて「公正なる 会計慣行」と呼ばれていたものが何を指すのかについての見解も、「一般に公正妥当 な企業会計の基準」に関する見解と同様、未だ完全には一致を見ていないようである。 ただし、法務省と大蔵省(現金融庁)が、商法学者・会計学者・実務家らを招聴して とりまとめた「商法と企業会計の調整に関する研究会報告書」(1998 年 6 月 16 日 ) に 見られるように、企業会計審議会や後に ASBJ(2001 年設立)が設定した会計基準を、 全て「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」として受け入れる見解が広く知 られている。

    債権者, 選任・解任, 利害関係者, キャッシュフロー, 利益情報の提供, 会社法, 金融商品取引法, 資本金の額, 剰余金の配当, 「会社計算規則」, 財務諸表等規則, 連結財務諸表規則

  • 42

    (5) 会計規制一元化の試み  ここまで説明したように、 [1] と [2] は、それぞれの立法趣旨を達成する観点から [3] のあり方を規制している。厳密にいえば両法の立法趣旨は異な るが、例えば意思決定に必要な情報の提供を通じた [4] という点で、規制目的が類似しているのもまた事実である。こうしたことから、[1] が求 める利益情報と [2] が求める利益情報の一元化が図られてきた。今ではごく少数の 相違が見られるだけで、一元化の作業は基本的に完結したといってよい。とはいえ、 残された相違も無視できるものではない。  例えば、金融商品取引法では、財務諸表等規則第 1 条において [5] 並びに [6] の提出が [7] として要求されている。これに対して、会社法のもとで要求 される [8] は、 [9] とされている(第 435 条第 2 項)。「株式会社の財産及び損益の状況を示すために 必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」としては、[10] がある23(図表 1 - 3 参照)。  一元化が進んだ中でもなお残る相違点には、留意が必要である。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 23 株主資本等変動計算書には、連結ベースの連結株主資本等変動計算書もある。詳しくは、ASBJ が2005 年 12 月に公表した「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(2013 年 9 月最終改正)を参照。

    金融商品取引法, 会社法, 利益情報, 利害関係者の保護, 財務諸表(貸借対照 表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書), 附属明細表, 財務書類, 計算書類, 貸借対照表、損益計算書、「その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」、事業報告及び附属明細書, 株主資本等変動計算書 や注記表

  • 43

    企業会計との関係を規制する法体系の、金融商品取引法について答えよ。 ①立法趣旨 ②立法趣旨の達成手段(規制) ③適用対象 ④作成が求められる書類(5種類) ⑤企業会計との関係

    投資家の保護, 開示規制のみ, 上場会社等, 4-1 貸借対照表(連結貸借対象表), 4-2 損益計算書(連結損益計算書), 4-3 キャッシュ・フロー計算書(連結キャッシュ・フロー計算書), 4-4 株主資本等変動計算書(連結株主資本等変動計算書), 4-5 付属明細書(連結付属明細書), 「財務諸表等規則」第1条第1項「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。」

  • 44

    企業会計との関係を規制する法体系の、会社法について答えよ ①立法趣旨 ②立法趣旨の達成手段(規制) ③適用対象 ④作成が求められる書類(5種類) ⑤企業会計との関係

    当事者間の利害関係(主に株主と債権者), 開示規制及び配当規制(剰余金の分配に関する規制), すべての会社, 4-1 貸借対照表, 4-2 損益計算書, 4-3 その他会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの(株主資本等変動計算書や注記表), 4-4 事業報告, 4-5 付属明細書, 第431条「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」

  • 45

    (6) 税法の会計規制  利益の計算・開示方法は、この他、[1] の規制も受けている。法人税は、企業の [2] に応じて課される。利益は [3] の優れた指標になり得ると考えられるこ とから、法人税法第 22 条第 4 項では、益金の基礎をなす [4] と損金の基礎をなす [5] は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされている。つまり、[6] は原則として、企業会計上の [7] に準拠して算定される。こ こに、[8] と企業会計との接点が認められる。また[8] 第 74 条には、確定した [9] に基づいて申告書を作成し提出しなければならないという規定がある。こ のように、企業会計の利益を基に [6] を計算することを [10] という24。  上記のとおり、[6] は原則として一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される。それゆえ、利益計算に係る [1] の規定は、 (a) 会計基準が基本的な理念しか定めておらず、多義的な解釈が許容されてしまう状況において、解釈の 画一化や統一化を図ることや、 (b) 利益の計算目的に関する税と会計との違いが顕在化するケースにおいて、企業会計上の利益を [6] の計算目的に合わせて修正する ことに主眼が置かれている25。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 24 [10] の考え方は、例えば、[6] の計算上、損金の額に算入するためには、法人がその確定 した決算において [5] または [11] として経理するのを要件としているものがあることに現れている。こ れを [12] という。 25 こうした修正の結果、[6] と企業会上の [7] との間には、最終的に無視できない違いが生じることを背景に、後に学習する [13] が求められている。

    税法, 税金負担能力, 担税力, 収益, 費用, 課税所得, 利益, 法人税法, 決算, 確定決算主義, 損失, 損金経理要件, 損金経理要件

  • 46

    (7) 統一と分離のはざまで  他の法域にまで目を向けると、例えば米国のように、課税所得の計算と企業会上の利益計算を、原則として独立に行っているケースも見られる( [1] )。会計規制を設けているそれぞれの法が、独自のルールに基づいて利益や所得を算定すれば、 それぞれの立法趣旨はより良く達成される。ただし、その場合は、企業に対して所得 や利益に係る類似した計算の繰り返しを求めることとなる。そこでは、無視できない コストを企業が負担することとなる。逆に、一元化された計算規程を関連諸法令が共有すれば、そうしたコストは節約し得るが、「妥協の産物」としての性質を有する会計基準で、それぞれの立法趣旨を完全に達成するのは困難となる。  従来、日本の会計制度は企業会計と会社法、税法とが協力し合って、[2] を図ってきたことが知られている。一元化が達成されている状況は、 [3] などと呼ばれることもあった。現在でも大枠では、こうした一元化が保た れているといってよい。  ただし、これはコスト削減の要請が優先された結果であって、今後もこうした体制 が保たれる保証はない。後に学ぶように、今日の企業会計は、[4] との共通化や一元化の要請を強く受 けている。この [4] は、伝統的な [5] と比べて、会社法や税法の立法趣旨に馴染みにくい手続( [6] )を多く要求している といわれることがある。企業会計と関係諸法令との関係は、漸次変化していくことが 予想される。

    「税会分離」, 会計規定の統 一化, 「トライアン グル体制」, 国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards), 日本基準, 資産やストックに係る公正価値の見積りなど

  • 47

    【例題1-3】 (1) 日本の会計制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれですか。  A 金融商品取引法は、財務諸表の作成に当たって採用されるべき会計処理の内容を「財務諸表等規則」で網羅的に定めている。  B 日本において会計基準を作成する役割は、現在、主に日本公認会計士協会が担っている。  C 利益計算に関する税法の規定によって、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の内容が定められている。  D 会社法は、「会社計算規則」で規定していない部分について、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うことを求めている。

    D

  • 48

    【例題1-3】 (2)会社法の規制に関する次の記述のうち、正しいものはどれですか。  A 会社法は配当規制を通じて、企業に関わる当事者間の円滑な利害調整、特に債権者の保護を達成しようとしている。  B 会社法は、上場会社に限って適用される法律である。  C 会社法の計算書類は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表からなる。  D 計算書類および事業報告は、会社法に基づく計算書類等の開示書類に関する電子開示システム(EDINET)を通じて開示しなければならない。

    A

  • 49

    【例題1-3】 (3)日本の会計制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれですか。 A 民間団体である企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した会計基準は、金融商品取引法で遵守が求められている    「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」には 該当しない。  B 会社法で遵守が求められている「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」 の内容は、「会社計算規則」の中で明示されているものに    限られる。  C 証券取引所の自主規制による適時開示である決算短信は、株主総会等で最終的に 確定する前の決算情報である。  D ASBJが公表した「修正国際基準」は、わが国の企業による純粋なIFRSの任意適 用を防止することを目的としている。

    C

  • 50

    5. 強制開示と自発的開示の違い (1) 適時開示情報としての決算短信  前節で取り上げたのは、法定開示の対象としての利益情報と、それを規制する諸法令であった。そこでいう法定開示書類の典型例は、有価証券報告書(金融商品取引法) と計算書類(会社法)である。後に説明する公認会計士などのチェックを受けた法定開示書類は信頼性が高く、詳細な情報が収容されている。ただし、法定開示書類の作成には多大なコストを要するため、その開示回数は限られている。  ところで、投資家の意思決定に有用な情報には、信頼性などに加えて適時性も求められる。例えば、ファンダメンタル分析に基づく証券投資の場合、証券価格のファン ダメンタルからの乖離を他者よりも速やかに知ることができれば、価格がファンダメ ンタルに回帰する過程でより多くの利得を上げることができる。投資家のニーズに応 えるのであれば、厳密さや正確さを多少犠牲にしても、投資家が重視する事実を速やか(かつ公平)に提供する必要がある。こうした要請から、現在では、法定開示に加 えて、法の定めによらない適時開示も行われている。  日本取引所グループはそのウェブサイトにおいて、適時開示制度を以下のように説 明している(https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/index.html )。

    あああああ, あああああ, あああああ, あああああ, あああああ

  • 51

    店の売り物となる商品を買ってくることを(①)といい、仕入れたときの金額を(②)(または(③))という。 商品を顧客に販売することを(④)といい、販売したときの金額を(⑤)という。 また、商品を仕入れた相手先のことを(⑥)、商品を売り上げた相手先を(⑦)という。

    仕入れ, 原価, 仕入原価, 売上, 売価, 仕入先, 得意先

  • 52

    商品を仕入れたり、売り上げたりしたときの処理方法には(①)と(②)の2つの方法がある。

    三分法, 分記法

  • 53

    ■三分法による処理 三分法とは、商品の売買について(①)[費用]、(②)[収益]、(③)[資産]の3つの勘定で処理する方法をいう。

    仕入, 売上, 繰越商品

  • 54

    ■商品を仕入れたとき 商品を仕入れたときは、原価(仕入れたときの金額)で(①)[費用]を計上する。  ▶費用の増⇒(②)(左)

    仕入, 借方

  • 55

    商品を仕入れたとき(三分法) A商店はB商店から商品100円を仕入れ、代金は現金で支払った。 (①)   100  (②)   100* *(②)[資産]が減少したので、貸方(②)で処理する。

    仕入, 現金

  • 56

    ■商品を売り上げたとき  商品を売り上げたときは、(①)(販売したときの金額)で(②)[収益]を計上する。  ☞(③)の増加⇒貸方(右)

    売価, 売上, 収益