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問題一覧
1
沛公は翌朝早く、百余騎の兵を従え、項王にお目にかかろうとして鴻門に来た。
2
そして王に謝罪して言うには、
3
「私は将軍閣下と力を合わせて秦を攻めました。
4
将軍は黄河の北部地方で戦い、私は黄河の南部地方で戦いました。
5
けれども、微力の私が一足お先に関中に攻め入って秦を破ることができ、
6
この地でふたたび将軍にお目にかかる機 会を得ようとは思いもよらぬことでした。
7
いまつまらぬ者の口出しがあり、
8
将軍に私と仲たがいさせようとしていま す(まことに不都合千万で、心外にたえません)。」
9
王が言うには、
10
「これはそなたの左司馬である曹無傷が言っ たのである。そうでなければ、自分はどうしてこのような始末(沛公を疑って、一挙に撃破しようとしたこと)に及 ぶことがあろうか。
11
王はさっそくその日、(せっかく来てくれたことだからと和解のために)、沛公を留めて酒宴を開いた。
12
(酒宴にお ける座席は) 項羽と項伯とは東を向いて座り、
13
亜父は南を向いて座った。亜父とは(項王の老参謀) 范増の敬称) である。
14
沛公は北を向いて座り、 張良は西を向いて沛公のそばにひかえて座った。
15
范増はたびたび項王に目で合図を し、腰におびているぎょっけつをあげて、王に示すことが三度もあった。
16
(すなわち、 項王に沛公を殺すようにと決断をう ながした。) 項王は黙ったままで、 これに応じなかった。
17
(これは駄目だと見切りをつけた) 范増は席を起ち、宴会場を出て (項王の従弟の)頃荘を呼んで、
18
「君王(王)は 人柄が(人情もろく沛公を害するような) 残忍なことができない。 そなたは宴会場に入り、進み出てさかずきをすす めて健康を祝せよ。
19
それがすんだら、君王に願って剣舞をやり、これにことよせて沛公をその席で突き殺してしまえ。
20
もしそうしなければ、お前たちの仲間は、やがて皆彼のために捕虜とされてしまうであろう。」と言った。
21
そこで宴会場に入り、 さかずきをすすめて(項王の) 健康を祝した。
22
それが終わると(項王に向かって)言う には、
23
「君王は沛公と酒宴を開いておられます。 けれども軍中のこととおなぐさめの余興をするすべもございませ ん。
24
お許しを得て私が剣舞をし、おなぐさめ) いたしましょう。」
25
王は、「よろしい。」と言った。
26
項荘 は剣を抜いて立って剣舞をした。
27
(項荘の剣舞は非常に殺気をおびていたので、これはただごとではないと)項伯も また(現在と同じく剣を抜いて立って舞い、項荘が沛公に近づくと、親鳥が翼で難をおおいかくすように、剣舞の 間ずっと身をもって沛公をかばい守った。
28
そのため項荘はどうしても(沛公を)突き殺すことができなかった。
29
昔、東の五条に、皇太后の宮がいらっしゃった(御殿の、その)西の対屋に住む女性がいた。
30
その女性を、初めからそうなりたいと思っていたわけではなく、いつの間にか思いの深くなった男が訪ねていたが、
31
陰暦正月の十日頃に、(女性は) ほかの場所に身を隠してしまった。
32
(男は)その居場所は聞いたが、普通の身分の人間が出 入りすることのできる場所でもなかったので、一層つらいと思いながらいた。
33
翌年の正月に、梅の花盛りの頃に、去年を恋しく思い出し、その(懐かしい) 西の対屋へ行き立って見たり、 座って見たりして、あたりを見るが、去年のありさまに似るはずもない。
34
(男は)泣いて、がらんとした板敷の上 に、月が西の山に傾く夜明け頃まで臥せって、去年を思い出して詠んだ歌。
35
月は、幸せだった)あの頃の月と同じではないのであろうか。春は、喜びに包まれていたあの頃の春と 同じではないのであろうか。(この年の間に状況が一変した中にあって)私一人が取り残されて、もとのまま。
36
と詠んで、夜がほのかに明ける頃、泣き泣き帰ったことだ。
37
中納言様(藤原隆家)が参上なさって、(中宮様に)御を献上なさる時に、
38
「(この) 隆家はすばらしい 扇の) 骨を手に入れました。
39
それに (紙を張らせて差し上げようと思うのですが、ありふれた紙は張るわけにはいきそうもありませんので、すばらしい紙を探しております。
40
と申し上げなさる。「(その骨は)どんな様子です か
41
と(中宮様が)お尋ね申し上げなさると、
42
、「すべてがすばらしゅうございます。 『まったくまだ見たこともない骨の様子だ。』と人々が申しております。本当にこれほどの(骨)は見かけたことがありません。」
43
と、大きな声 でおっしゃるので、
44
「それでは、扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)というわけですね。」
45
と聞こゆれば、
46
「これは(この)隆家の言葉にしてしまおう。」
47
と言って、お笑いになる。
48
こういうことは、聞き苦しいことの中に入れてしまうべき(したがって、ここにも書くべきでない)ことであ るが、
49
「一つも落とさないで書きなさい。」
50
と(みんなが)言うので、どうしようか(どうしようもない。しかたな く書くのである)。
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1
沛公は翌朝早く、百余騎の兵を従え、項王にお目にかかろうとして鴻門に来た。
2
そして王に謝罪して言うには、
3
「私は将軍閣下と力を合わせて秦を攻めました。
4
将軍は黄河の北部地方で戦い、私は黄河の南部地方で戦いました。
5
けれども、微力の私が一足お先に関中に攻め入って秦を破ることができ、
6
この地でふたたび将軍にお目にかかる機 会を得ようとは思いもよらぬことでした。
7
いまつまらぬ者の口出しがあり、
8
将軍に私と仲たがいさせようとしていま す(まことに不都合千万で、心外にたえません)。」
9
王が言うには、
10
「これはそなたの左司馬である曹無傷が言っ たのである。そうでなければ、自分はどうしてこのような始末(沛公を疑って、一挙に撃破しようとしたこと)に及 ぶことがあろうか。
11
王はさっそくその日、(せっかく来てくれたことだからと和解のために)、沛公を留めて酒宴を開いた。
12
(酒宴にお ける座席は) 項羽と項伯とは東を向いて座り、
13
亜父は南を向いて座った。亜父とは(項王の老参謀) 范増の敬称) である。
14
沛公は北を向いて座り、 張良は西を向いて沛公のそばにひかえて座った。
15
范増はたびたび項王に目で合図を し、腰におびているぎょっけつをあげて、王に示すことが三度もあった。
16
(すなわち、 項王に沛公を殺すようにと決断をう ながした。) 項王は黙ったままで、 これに応じなかった。
17
(これは駄目だと見切りをつけた) 范増は席を起ち、宴会場を出て (項王の従弟の)頃荘を呼んで、
18
「君王(王)は 人柄が(人情もろく沛公を害するような) 残忍なことができない。 そなたは宴会場に入り、進み出てさかずきをすす めて健康を祝せよ。
19
それがすんだら、君王に願って剣舞をやり、これにことよせて沛公をその席で突き殺してしまえ。
20
もしそうしなければ、お前たちの仲間は、やがて皆彼のために捕虜とされてしまうであろう。」と言った。
21
そこで宴会場に入り、 さかずきをすすめて(項王の) 健康を祝した。
22
それが終わると(項王に向かって)言う には、
23
「君王は沛公と酒宴を開いておられます。 けれども軍中のこととおなぐさめの余興をするすべもございませ ん。
24
お許しを得て私が剣舞をし、おなぐさめ) いたしましょう。」
25
王は、「よろしい。」と言った。
26
項荘 は剣を抜いて立って剣舞をした。
27
(項荘の剣舞は非常に殺気をおびていたので、これはただごとではないと)項伯も また(現在と同じく剣を抜いて立って舞い、項荘が沛公に近づくと、親鳥が翼で難をおおいかくすように、剣舞の 間ずっと身をもって沛公をかばい守った。
28
そのため項荘はどうしても(沛公を)突き殺すことができなかった。
29
昔、東の五条に、皇太后の宮がいらっしゃった(御殿の、その)西の対屋に住む女性がいた。
30
その女性を、初めからそうなりたいと思っていたわけではなく、いつの間にか思いの深くなった男が訪ねていたが、
31
陰暦正月の十日頃に、(女性は) ほかの場所に身を隠してしまった。
32
(男は)その居場所は聞いたが、普通の身分の人間が出 入りすることのできる場所でもなかったので、一層つらいと思いながらいた。
33
翌年の正月に、梅の花盛りの頃に、去年を恋しく思い出し、その(懐かしい) 西の対屋へ行き立って見たり、 座って見たりして、あたりを見るが、去年のありさまに似るはずもない。
34
(男は)泣いて、がらんとした板敷の上 に、月が西の山に傾く夜明け頃まで臥せって、去年を思い出して詠んだ歌。
35
月は、幸せだった)あの頃の月と同じではないのであろうか。春は、喜びに包まれていたあの頃の春と 同じではないのであろうか。(この年の間に状況が一変した中にあって)私一人が取り残されて、もとのまま。
36
と詠んで、夜がほのかに明ける頃、泣き泣き帰ったことだ。
37
中納言様(藤原隆家)が参上なさって、(中宮様に)御を献上なさる時に、
38
「(この) 隆家はすばらしい 扇の) 骨を手に入れました。
39
それに (紙を張らせて差し上げようと思うのですが、ありふれた紙は張るわけにはいきそうもありませんので、すばらしい紙を探しております。
40
と申し上げなさる。「(その骨は)どんな様子です か
41
と(中宮様が)お尋ね申し上げなさると、
42
、「すべてがすばらしゅうございます。 『まったくまだ見たこともない骨の様子だ。』と人々が申しております。本当にこれほどの(骨)は見かけたことがありません。」
43
と、大きな声 でおっしゃるので、
44
「それでは、扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)というわけですね。」
45
と聞こゆれば、
46
「これは(この)隆家の言葉にしてしまおう。」
47
と言って、お笑いになる。
48
こういうことは、聞き苦しいことの中に入れてしまうべき(したがって、ここにも書くべきでない)ことであ るが、
49
「一つも落とさないで書きなさい。」
50
と(みんなが)言うので、どうしようか(どうしようもない。しかたな く書くのである)。