「うへ」、殿上(てんじやう)に出でさせ給ひて、御あそびありけり。
( )が、殿上の間にお出ましになって、管弦のお遊びがあった。天皇
「うへ」は、宮の失せたまひけるをり、さま変へたまひにけり。
( )は、(夫の)宮様がお亡くなりになったとき、出家なさってしまった。奥様
「うへ」より下(お)るる途(みち)に、弁の宰相の君の小口をさしのぞきたれば、昼寝したまへるほどなりけり。
(私が)中宮様の( )から(部屋に)下がる途中、弁の宰相の君の(部屋の)小口をのぞいたところ、(彼女は)昼寝をしていらっしゃるときであった。御座所
御方しも、受領(ずりやう)の妻(め)にて「品」定まりておはしまさむよ。
よりによってお嬢様が、受領の妻として( )が定まってしまわれるだろうよ。身分
帝よりはじめ奉りて、大臣公卿(くぎやう)みな悉(ことごと)く移ろひ給ひぬ。世に仕ふるほどの人、たれか一人「ふるさと」に残りをらむ。
天皇をはじめといたして、大臣公卿全員(福原京に)移りなさった。朝廷に仕える身分の人は、いったいだれが一人でも( )に残っていようか。古都
人はいさ心も知らず「ふるさと」は花ぞ昔の香ににほひける。
人はさあその心もわからないものだ。しかし、この( )は梅の花が昔どおりの香りで咲きほこっていることだなあ。なじみのある土地
この「ふるさと」の女の前にてだに、つつみはべるものを、さる所(=宮中)にて才さかし出ではべらむよ。
(私は)自分の( )の侍女の前でさえも、(漢学の素養を)隠していますのに、(われ知らず)宮中で漢学の素質をひけらかしているのでしょうよ(そんなばかなことはありません)。実家
そのほど(=私ノ妊娠中)の「心ばへ」はしも、ねんごろなるやうなりけり。
私の妊娠中の(夫の)( )は、心がこもっているようだった。心遣い
あまたあらむ中にも、「こころばへ」見て率(ゐ)てありかまほしき。
(お供の者は)たくさんいるような従者の中でも、( )を見て連れて回りたいものだ。性格
岩に生ひたる松の根ざしも「心ばへ」あるさまなり。
岩に生えている松の根も( )がある様子である。趣
半蔀(はじとみ)は下ろしてけり。「ひまひま」より見ゆる灯(ひ)の光、蛍よりけにほのかにあわれなり。
半蔀は下ろしてしまっていた。( )から(もれて)見える灯火の光は、蛍(の光)よりいっそうかすかでしみじみとした趣がある。すき間すき間
雪すこし「隙(ひま)」あり。
降雪が少し( )がある。絶え間
御文(ふみ)奉らむ。よき「ひま」なり。
(少将の)お手紙を(姫君に)差し上げよう。絶好の( )だ。機会
鶴(たづ)の大臣殿(おほいどの)は、童(わらは)名(な)たづ君(ぎみ)なり。鶴を飼ひ給ひける故にと申すは、「僻事(ひがごと)」なり。
鶴の大臣殿は、幼名はたづ君である。鶴をお飼いになっていたからと申すのは、( )である。間違い
かつあらはるるをも顧みず、口にまかせて言ひ散らすは、やがて「うきたる」とここきこゆ。
一方でばれることも顧みず、口からでまかせに好き放題言うのは、すぐに( )こととわかる。根拠のない
よろづの「とが」あらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かず、うやうやしく、言葉少なからんにはしかじ。
すべての( )をなくしたいと思うのならば、何事にも誠意があって、人を分け隔てず、礼儀正しく、口数が少ないようなのにまさるものはない。欠点
世治まらずして、凍餒(とうたい)(=寒さと飢え)の苦しみあらば、「とが」の者絶ゆべからず。
世の中が治まらなくて、寒さや飢えの苦しみがあるならば、( )を犯す者がなくなるはずがない。罪
世に語り伝ふること、まことはあいなきや。多くはみな「そらごと」なり。
世間で語り伝えていることは、真実はつまらないのであろうか、多くはみな( )である。嘘
こはいかに。御「消息(せうそこ)」奉りつるは、御覧ぜざりつるか。
これはどうしたことだ。お( )を差し上げたのは、ご覧にならなかったのか。手紙
門(かど)さしつ。死ぬるなりけり。「消息(せうそこ)」いひ入(い)るれど、なにのかひなし。
(季縄(すえなわ)の少将の家は)門を閉じていた。(季縄は)死んだのだった。(公忠(きんただ)は)( )(して来意)を告げたけれども、なんの意味もない。訪問
かからむ世には、「雲居」に跡をとどめても何かはし候ふべき。
このような世の中では、( )にとどまってもどうしようもありません。宮中
越路(こしぢ)をさして帰る雁(かり)の、「雲居」におとづれ行くも、(上皇ハ)をりふしあはれにきこしめす。
北陸を目指して帰る雁が、( )で鳴いて飛んで行くのも、上皇は折も折しみじみとお聞きになる。天上
長き夜をひとり明かし、遠き「雲居」を思ひやり、浅茅(あさぢ)が宿に昔を偲ぶこそ、色好むとは言はめ。
(心に破れて)長い夜をひとりで明かし、はるか( )を想像し、茅(かや)の茂る荒れ果てた家で昔を懐かしむことこそ、恋の情趣を解すると言えよう。遠く離れた所
限りなく喜び「かしこまり」申す。
(明石の入道は)この上もなく喜び(源氏に)( )を申し上げる。お礼
え参らぬ由の「かしこまり」申し給へり。
(大臣は宮のもとに)参上できないことの( )申し上げなさった。お詫び
頭の弁うれへ申されたりければ、その折にぞ、御「かしこまり」にて、しばし籠り居(ゐ)給へりし。
(成通(なりみち)の不正を上皇に)頭の弁が訴え申し上げなさったので、その折に、ご( )として、(成通は)しばらく家に籠っていらっしゃった。謹慎
心憂きものは「世」なりけり。
恨めしいものは( )であったのだ。男女の仲
昔、男ありけり。歌は詠まざりけれど、「世の中」を思ひ知りたりけり。
昔、男がいた。歌は詠まなかったが、( )をわきまえていた。男女の仲
はかなき御なやみと見ゆれども、「かぎり」のたびにもおはしますらむ。
ちょっとしたご病気と見えるが、( )の時でもいらっしゃるのだろうか。最期
罪の「かぎり」果てぬれば、かく迎ふるを、翁は泣き嘆く。
(かぐや姫の)罪の( )が償われたので、こうして(月から)迎えに来たのを、翁は泣いて嘆く。すべて
門の「かぎり」を高う造る人もありけるは。
(家の)門( )を高く造る人もいたそうだよ。だけ
さが尻をかき出でて、「ここら」の朝廷妊娠中(おほやけびと)に見せて、恥を見せむ。
そいつの尻をまくり出して、( )の役人に見せて、恥をかかせてやろう。たくさん
それ(=竜の首)が玉を取らむとて、「そこら」の人々の害せられむとしけり。
竜の首の宝石を取ろうとして、( )の人々が殺されようとした。たくさん
「かたみに」思ひあふことかぎりなし。
(男と女は)( )愛し合うことこの上ない。たがいに
「うへ」、殿上(てんじやう)に出でさせ給ひて、御あそびありけり。
( )が、殿上の間にお出ましになって、管弦のお遊びがあった。天皇
「うへ」は、宮の失せたまひけるをり、さま変へたまひにけり。
( )は、(夫の)宮様がお亡くなりになったとき、出家なさってしまった。奥様
「うへ」より下(お)るる途(みち)に、弁の宰相の君の小口をさしのぞきたれば、昼寝したまへるほどなりけり。
(私が)中宮様の( )から(部屋に)下がる途中、弁の宰相の君の(部屋の)小口をのぞいたところ、(彼女は)昼寝をしていらっしゃるときであった。御座所
御方しも、受領(ずりやう)の妻(め)にて「品」定まりておはしまさむよ。
よりによってお嬢様が、受領の妻として( )が定まってしまわれるだろうよ。身分
帝よりはじめ奉りて、大臣公卿(くぎやう)みな悉(ことごと)く移ろひ給ひぬ。世に仕ふるほどの人、たれか一人「ふるさと」に残りをらむ。
天皇をはじめといたして、大臣公卿全員(福原京に)移りなさった。朝廷に仕える身分の人は、いったいだれが一人でも( )に残っていようか。古都
人はいさ心も知らず「ふるさと」は花ぞ昔の香ににほひける。
人はさあその心もわからないものだ。しかし、この( )は梅の花が昔どおりの香りで咲きほこっていることだなあ。なじみのある土地
この「ふるさと」の女の前にてだに、つつみはべるものを、さる所(=宮中)にて才さかし出ではべらむよ。
(私は)自分の( )の侍女の前でさえも、(漢学の素養を)隠していますのに、(われ知らず)宮中で漢学の素質をひけらかしているのでしょうよ(そんなばかなことはありません)。実家
そのほど(=私ノ妊娠中)の「心ばへ」はしも、ねんごろなるやうなりけり。
私の妊娠中の(夫の)( )は、心がこもっているようだった。心遣い
あまたあらむ中にも、「こころばへ」見て率(ゐ)てありかまほしき。
(お供の者は)たくさんいるような従者の中でも、( )を見て連れて回りたいものだ。性格
岩に生ひたる松の根ざしも「心ばへ」あるさまなり。
岩に生えている松の根も( )がある様子である。趣
半蔀(はじとみ)は下ろしてけり。「ひまひま」より見ゆる灯(ひ)の光、蛍よりけにほのかにあわれなり。
半蔀は下ろしてしまっていた。( )から(もれて)見える灯火の光は、蛍(の光)よりいっそうかすかでしみじみとした趣がある。すき間すき間
雪すこし「隙(ひま)」あり。
降雪が少し( )がある。絶え間
御文(ふみ)奉らむ。よき「ひま」なり。
(少将の)お手紙を(姫君に)差し上げよう。絶好の( )だ。機会
鶴(たづ)の大臣殿(おほいどの)は、童(わらは)名(な)たづ君(ぎみ)なり。鶴を飼ひ給ひける故にと申すは、「僻事(ひがごと)」なり。
鶴の大臣殿は、幼名はたづ君である。鶴をお飼いになっていたからと申すのは、( )である。間違い
かつあらはるるをも顧みず、口にまかせて言ひ散らすは、やがて「うきたる」とここきこゆ。
一方でばれることも顧みず、口からでまかせに好き放題言うのは、すぐに( )こととわかる。根拠のない
よろづの「とが」あらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かず、うやうやしく、言葉少なからんにはしかじ。
すべての( )をなくしたいと思うのならば、何事にも誠意があって、人を分け隔てず、礼儀正しく、口数が少ないようなのにまさるものはない。欠点
世治まらずして、凍餒(とうたい)(=寒さと飢え)の苦しみあらば、「とが」の者絶ゆべからず。
世の中が治まらなくて、寒さや飢えの苦しみがあるならば、( )を犯す者がなくなるはずがない。罪
世に語り伝ふること、まことはあいなきや。多くはみな「そらごと」なり。
世間で語り伝えていることは、真実はつまらないのであろうか、多くはみな( )である。嘘
こはいかに。御「消息(せうそこ)」奉りつるは、御覧ぜざりつるか。
これはどうしたことだ。お( )を差し上げたのは、ご覧にならなかったのか。手紙
門(かど)さしつ。死ぬるなりけり。「消息(せうそこ)」いひ入(い)るれど、なにのかひなし。
(季縄(すえなわ)の少将の家は)門を閉じていた。(季縄は)死んだのだった。(公忠(きんただ)は)( )(して来意)を告げたけれども、なんの意味もない。訪問
かからむ世には、「雲居」に跡をとどめても何かはし候ふべき。
このような世の中では、( )にとどまってもどうしようもありません。宮中
越路(こしぢ)をさして帰る雁(かり)の、「雲居」におとづれ行くも、(上皇ハ)をりふしあはれにきこしめす。
北陸を目指して帰る雁が、( )で鳴いて飛んで行くのも、上皇は折も折しみじみとお聞きになる。天上
長き夜をひとり明かし、遠き「雲居」を思ひやり、浅茅(あさぢ)が宿に昔を偲ぶこそ、色好むとは言はめ。
(心に破れて)長い夜をひとりで明かし、はるか( )を想像し、茅(かや)の茂る荒れ果てた家で昔を懐かしむことこそ、恋の情趣を解すると言えよう。遠く離れた所
限りなく喜び「かしこまり」申す。
(明石の入道は)この上もなく喜び(源氏に)( )を申し上げる。お礼
え参らぬ由の「かしこまり」申し給へり。
(大臣は宮のもとに)参上できないことの( )申し上げなさった。お詫び
頭の弁うれへ申されたりければ、その折にぞ、御「かしこまり」にて、しばし籠り居(ゐ)給へりし。
(成通(なりみち)の不正を上皇に)頭の弁が訴え申し上げなさったので、その折に、ご( )として、(成通は)しばらく家に籠っていらっしゃった。謹慎
心憂きものは「世」なりけり。
恨めしいものは( )であったのだ。男女の仲
昔、男ありけり。歌は詠まざりけれど、「世の中」を思ひ知りたりけり。
昔、男がいた。歌は詠まなかったが、( )をわきまえていた。男女の仲
はかなき御なやみと見ゆれども、「かぎり」のたびにもおはしますらむ。
ちょっとしたご病気と見えるが、( )の時でもいらっしゃるのだろうか。最期
罪の「かぎり」果てぬれば、かく迎ふるを、翁は泣き嘆く。
(かぐや姫の)罪の( )が償われたので、こうして(月から)迎えに来たのを、翁は泣いて嘆く。すべて
門の「かぎり」を高う造る人もありけるは。
(家の)門( )を高く造る人もいたそうだよ。だけ
さが尻をかき出でて、「ここら」の朝廷妊娠中(おほやけびと)に見せて、恥を見せむ。
そいつの尻をまくり出して、( )の役人に見せて、恥をかかせてやろう。たくさん
それ(=竜の首)が玉を取らむとて、「そこら」の人々の害せられむとしけり。
竜の首の宝石を取ろうとして、( )の人々が殺されようとした。たくさん
「かたみに」思ひあふことかぎりなし。
(男と女は)( )愛し合うことこの上ない。たがいに