農業経営学後半
問題一覧
1
農産物相場の変動要因には、 ①長期的な変動要因として、人口増加がある。地球上の人口は、20世紀の100年間で16億人から61億人まで急激な増加を見せた。 農産物という財は、「最寄品」としての商品的特質をもつため、人口が増えれば、農産物需要も増加する。 ②季節的な変動要因がある。農産物は生産される時期が「旬」に限定されるという技術的特質をもつため、1年を通じて供給量が多い時期と少ない時期が明確に区分される。 ③気象的な変動要因がある。農業生産は、 植物の生命現象を利用しているため、台風や干ばつや長雨などの気象・自然条件に大きな影響を受けるという技術的特質をもつ。そのため、天候不順が続くと供給量が不足し、農産物価格は大きく変動する。 ④穀物生産の大部分は先進国で行われており、世界的な穀物流通は穀物メジャーと呼ばれる グローバル企業により行われているために、 均一な農産物の分配が行われないという主体的特質をもつ。また、先進国な多様な投機資金が農産物相場に流入し、影響を与えている。
2
①日本の国土面積に占める農地の割合は、約10%に過ぎず、この割合は他国と比較しても少ない。また、冬季には積雪や寒冷により農地として利用できない農地が、北海道や東北地域を中心に広範に存在している。 ②1960年代に約600万haあった農地は、2010年には約450万haに減少している。この間、約100万haの農地が干拓や開墾により増加した 一方で、約250万haの農地が宅地等への転用により消滅した。 ③日本の農地は零細分散錯圃と呼ばれ、農地は分散し他の経営体の農地と錯綜し、しかも零細である。 以上の3つの特徴を持つ日本の農地を利用した日本農業では、規模拡大は困難を極めた。 規模拡大を行うには、農地を買うか借りるか しなければならないが、自分の農地の隣に適当な農地があるかどうか分からないし、あったとしても所有者が売ったり貸したりする意思がなければ規模拡大はできない。そのため、日本農業は生産に要する費用の低下が 進まず、競争力が低下し、相対的な縮小が進んだ。
3
①需要の側面から見ると農産物は、価格が いくら高くても生きるために必要な量を購入する必要がある。他方、価格がいくら低くても、人間の胃袋の大きさは決まっているので、必要量を超えて購入することない。 そのような特徴を持つ農産物の需要の価格弾力性は小さく、その需要曲線は急である。そのため、需要量の変動に対する価格変化の割合が大きいのが特徴である。 ②供給の側面から見ると、農業生産は、工業生産と異なり、水や日照に恵まれ豊作になることもあれば、干ばつや長雨により不作になることもあり、完全に生産を制御できず、自然の制約を受けるという技術的・商品的特質をもつ。そのため、計画通りの供給ができず、 農産物価格が大きく変動する要因となる。
4
個別の農業経営体が規模を拡大する際には3つの限界がある。 ①農地の希少性と分散錯圃という農地の限界である。経済学における生産要素は、土地・労働・資本である。経済学の多くの分析では、生産要素のうち労働と資本を重視して分析しているが、農業では土地が決定的に重要 であり、農業生産は土地の投入量に大きく依存する。その中で、日本の農地は希少性が高い上に、分散錯圃の状態にあり、容易に規模拡大が達成できない。 ②農業という職業への認識に起因した人の 限界がある。規模拡大が達成されたとしても、農業は労働多投型の産業のため、農業生産には多くの労働力を必要とする。例えば、 売上高1億円を達成するためにネギを15ha生産 する場合、雇用労働力が15人必要となる。 しかし、一般的に農業労働は3K労働の代表例とされ、雇用を募集しても集まらないという 問題がある。 ③農産物は一般的に腐りやすい・傷みやすいという商品的特質があるために、短期間に効率的に販売することが必要となる。 そのため、卸売市場システムが整備されているが、多くの流通段階を経るために、 Ⅰ.余剰分の生産が必要 Ⅱ.各流通段階で手数料が必要 などの問題も指摘されている。 このような問題を回避するために、卸売市場を介さない直接販売などが行われているが、販売網を容易に拡大できないという問題が ある。 以上のことから、最近の日本農業では、地域の農地を地域住民全員で耕作して区パターンや、農業経営体同士が組織を作り雇用者を融通しあうパターンなどが現れてきている。
5
日本の食生活では、高齢化や単身世帯の増加により、中食・外食で食事を済ませる食の外部化が進んでいる。これら中食・外食産業では、以下の4つの理由からカット野菜を食材として利用する場合が多い。 ①外食産業の多くはチェーン展開されているが、これらチェーン店では画一化された多種類のメニューに対応する必要がある。これら チェーン店では、店舗ごとに味や外見が変化しないようにするために、同一の工場で前処理 された食材を店舗で調理することを嗜好 する。 ②多くの外食産業では、調理現場での経験が無い調理未技能者の雇用を可能とし、人件費を抑制している。これら未技能者を雇用するためには、いかに調理作業をマニュアル化するかが重要となる。その点から、工場で キット化されたキット野菜は調理のマニュアル化を可能としており、その要請にこたえる ものである。 ③調理の際に発生する食材の残渣を低減する必要がある。日本の法制度のもとでは、調理の際に発生する食材残渣は産業廃棄物となるために、処理費用が高額となる。そこで、食材の残渣を低減させ、産業廃棄物処理費用を低減させるために、既に皮むきや芯取りなどの前処理を行ったカット野菜を求める。 ④各店舗で発生しうる食中毒リスクを低減させる目的である。食中毒が発生する要因 として、調理者の手や口を媒介とするものが大きい。そのため、各店舗で調理者が食材に 触れる回数を減らすために、衛生環境が整備 された加工工場でカットされた野菜を、外食産業は求めている。
6
日本の農業政策の変遷は、大きく4つに区分される。 ①戦後から1960年代にかけては、戦後の食糧難に対応するために、農業の生産性の向上が進められた。また、農業従事者の所得を向上 させることで、農業経営体内に余剰労働力を発生させ、他産業で働く人材を確保することも政策として進められた。 ②1970年代に入ると、コメの生産過剰状態が顕著となり、コメの生産調整(減反)が進められた。また、都市と農村の経済格差が顕著となる中で、農村の総合的開発による農村振興も進められた。 ③1980年代に入ると、オイルショックを契機とした輸入依存型に対する懸念から、国内 食料自給率の向上が進められることとなった。また、農業は景観保全、地下水保全、野生動物の確保など多くの環境資源を保護している産業との認識が広まり、環境保全に資する農業政策が展開された。 ④1990年代以降、GATTやWTO体制下農産物貿易の輸入自由化が進められる中で、食の安全・安心に対するニーズが広がり、食料の安定的な国内供給の必要性が高まった。また、農業の高齢化や農村の過疎化が進む中で、新たな農業の担い手や農地の集積を図り、次世代の農業を 担う人材の育成や制度作りが広く進められることとなった。
問題一覧
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農産物相場の変動要因には、 ①長期的な変動要因として、人口増加がある。地球上の人口は、20世紀の100年間で16億人から61億人まで急激な増加を見せた。 農産物という財は、「最寄品」としての商品的特質をもつため、人口が増えれば、農産物需要も増加する。 ②季節的な変動要因がある。農産物は生産される時期が「旬」に限定されるという技術的特質をもつため、1年を通じて供給量が多い時期と少ない時期が明確に区分される。 ③気象的な変動要因がある。農業生産は、 植物の生命現象を利用しているため、台風や干ばつや長雨などの気象・自然条件に大きな影響を受けるという技術的特質をもつ。そのため、天候不順が続くと供給量が不足し、農産物価格は大きく変動する。 ④穀物生産の大部分は先進国で行われており、世界的な穀物流通は穀物メジャーと呼ばれる グローバル企業により行われているために、 均一な農産物の分配が行われないという主体的特質をもつ。また、先進国な多様な投機資金が農産物相場に流入し、影響を与えている。
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①日本の国土面積に占める農地の割合は、約10%に過ぎず、この割合は他国と比較しても少ない。また、冬季には積雪や寒冷により農地として利用できない農地が、北海道や東北地域を中心に広範に存在している。 ②1960年代に約600万haあった農地は、2010年には約450万haに減少している。この間、約100万haの農地が干拓や開墾により増加した 一方で、約250万haの農地が宅地等への転用により消滅した。 ③日本の農地は零細分散錯圃と呼ばれ、農地は分散し他の経営体の農地と錯綜し、しかも零細である。 以上の3つの特徴を持つ日本の農地を利用した日本農業では、規模拡大は困難を極めた。 規模拡大を行うには、農地を買うか借りるか しなければならないが、自分の農地の隣に適当な農地があるかどうか分からないし、あったとしても所有者が売ったり貸したりする意思がなければ規模拡大はできない。そのため、日本農業は生産に要する費用の低下が 進まず、競争力が低下し、相対的な縮小が進んだ。
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①需要の側面から見ると農産物は、価格が いくら高くても生きるために必要な量を購入する必要がある。他方、価格がいくら低くても、人間の胃袋の大きさは決まっているので、必要量を超えて購入することない。 そのような特徴を持つ農産物の需要の価格弾力性は小さく、その需要曲線は急である。そのため、需要量の変動に対する価格変化の割合が大きいのが特徴である。 ②供給の側面から見ると、農業生産は、工業生産と異なり、水や日照に恵まれ豊作になることもあれば、干ばつや長雨により不作になることもあり、完全に生産を制御できず、自然の制約を受けるという技術的・商品的特質をもつ。そのため、計画通りの供給ができず、 農産物価格が大きく変動する要因となる。
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個別の農業経営体が規模を拡大する際には3つの限界がある。 ①農地の希少性と分散錯圃という農地の限界である。経済学における生産要素は、土地・労働・資本である。経済学の多くの分析では、生産要素のうち労働と資本を重視して分析しているが、農業では土地が決定的に重要 であり、農業生産は土地の投入量に大きく依存する。その中で、日本の農地は希少性が高い上に、分散錯圃の状態にあり、容易に規模拡大が達成できない。 ②農業という職業への認識に起因した人の 限界がある。規模拡大が達成されたとしても、農業は労働多投型の産業のため、農業生産には多くの労働力を必要とする。例えば、 売上高1億円を達成するためにネギを15ha生産 する場合、雇用労働力が15人必要となる。 しかし、一般的に農業労働は3K労働の代表例とされ、雇用を募集しても集まらないという 問題がある。 ③農産物は一般的に腐りやすい・傷みやすいという商品的特質があるために、短期間に効率的に販売することが必要となる。 そのため、卸売市場システムが整備されているが、多くの流通段階を経るために、 Ⅰ.余剰分の生産が必要 Ⅱ.各流通段階で手数料が必要 などの問題も指摘されている。 このような問題を回避するために、卸売市場を介さない直接販売などが行われているが、販売網を容易に拡大できないという問題が ある。 以上のことから、最近の日本農業では、地域の農地を地域住民全員で耕作して区パターンや、農業経営体同士が組織を作り雇用者を融通しあうパターンなどが現れてきている。
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日本の食生活では、高齢化や単身世帯の増加により、中食・外食で食事を済ませる食の外部化が進んでいる。これら中食・外食産業では、以下の4つの理由からカット野菜を食材として利用する場合が多い。 ①外食産業の多くはチェーン展開されているが、これらチェーン店では画一化された多種類のメニューに対応する必要がある。これら チェーン店では、店舗ごとに味や外見が変化しないようにするために、同一の工場で前処理 された食材を店舗で調理することを嗜好 する。 ②多くの外食産業では、調理現場での経験が無い調理未技能者の雇用を可能とし、人件費を抑制している。これら未技能者を雇用するためには、いかに調理作業をマニュアル化するかが重要となる。その点から、工場で キット化されたキット野菜は調理のマニュアル化を可能としており、その要請にこたえる ものである。 ③調理の際に発生する食材の残渣を低減する必要がある。日本の法制度のもとでは、調理の際に発生する食材残渣は産業廃棄物となるために、処理費用が高額となる。そこで、食材の残渣を低減させ、産業廃棄物処理費用を低減させるために、既に皮むきや芯取りなどの前処理を行ったカット野菜を求める。 ④各店舗で発生しうる食中毒リスクを低減させる目的である。食中毒が発生する要因 として、調理者の手や口を媒介とするものが大きい。そのため、各店舗で調理者が食材に 触れる回数を減らすために、衛生環境が整備 された加工工場でカットされた野菜を、外食産業は求めている。
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日本の農業政策の変遷は、大きく4つに区分される。 ①戦後から1960年代にかけては、戦後の食糧難に対応するために、農業の生産性の向上が進められた。また、農業従事者の所得を向上 させることで、農業経営体内に余剰労働力を発生させ、他産業で働く人材を確保することも政策として進められた。 ②1970年代に入ると、コメの生産過剰状態が顕著となり、コメの生産調整(減反)が進められた。また、都市と農村の経済格差が顕著となる中で、農村の総合的開発による農村振興も進められた。 ③1980年代に入ると、オイルショックを契機とした輸入依存型に対する懸念から、国内 食料自給率の向上が進められることとなった。また、農業は景観保全、地下水保全、野生動物の確保など多くの環境資源を保護している産業との認識が広まり、環境保全に資する農業政策が展開された。 ④1990年代以降、GATTやWTO体制下農産物貿易の輸入自由化が進められる中で、食の安全・安心に対するニーズが広がり、食料の安定的な国内供給の必要性が高まった。また、農業の高齢化や農村の過疎化が進む中で、新たな農業の担い手や農地の集積を図り、次世代の農業を 担う人材の育成や制度作りが広く進められることとなった。