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44問 • 2年前
  • 夜宵-Yayoi-
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    問題一覧

  • 1

    この家の女房ども、この女の宿りに遊ぶとて入りて見るに、二人の者病み臥せり。怪しみて問ふに、女の言ふやう、「"させる病にはあらす"。しかしかのことの侍るを、思ひ嘆くによりて、親子死なむとするなり」と言ふ。

    たいした病気ではない

  • 2

    上は中宮の御方に渡らせ給ひければ、対の屋へ忍びて逃げさせ給ひて、春日殿へ、女房のやうにて"いとあやしきさまをつくりて"入らせ給ふ。

    とても粗末な身なりをして

  • 3

    ただ今の時、后にておはしまさむ御方々は、華やかに今めかしくも、また、"心にくくもおはしまさむ"、ことわりなり。

    奥ゆかしくもいらっしゃるようなことは

  • 4

    「なにがし、かう、田舎びたりといふ名こそはべれ、くちをしき民に、はたはべらず。都の人とても、何ばかりかあらむ。みな知りてはべり。なほ、"なおぼしあなづりそ"」とて、

    ばかになさってはいけない

  • 5

    (三条院は目が不自由で)中堂にのぼらせたまはむとなり。……"やがておこたりおはしまさずとも"、すこしの験はあるべかりしことよ。

    すぐに快方へ向かいなさらないとしても

  • 6

    故院の御かたみには、"ゆかしく思ひまゐらすれど"、(宮中に)さし出でんこと、なほあるべきことならず。

    会いたいと思い申し上げるけれど

  • 7

    さてこの文をあけて見たまへば、通盛の卿の文にてぞありける。車におくべきやうもなし、"大路にすてんもさすがにて"、はかまの腰にはさみつつ、御所へぞ参りたまひける。

    手紙を大通りに捨てるようなこともやはりできなくて

  • 8

    中ごろ、師大納言経信卿、西山の花見んとて、"さるべきすき人どもいざなひつれて"、大井川の千本の桜ながむとて、

    しかるべき、風流を解する人々を引き連れて

  • 9

    女これを聞きけるよりおぼえず悩ましき心地よいうちそひて、"うつし心ならぬけしき"を見とがめて、親王あやしみ問ひ給ふを、

    正気ではないような様子

  • 10

    大納言参り給へれば、「歌詠みどものはかばかしく歌も詠み出でぬに、さりともこの大納言の歌は、"よもつたなき様はあらじ"」と、みな人も心にくがり思ひたりけるに、

    まさか下手なことはないだろう

  • 11

    東大寺の法蔵僧都は、この左大将の御祈りの師なり。定めて御祈りの事ありなんと待つに、"音もし給はねば、おぼつかなきに"京に上りて、枇杷殿に参りぬ。

    何の便りもなさらないので、心配で

  • 12

    (父の遺品として)また弾きし琴ども、この子して運ばせて、今、母もろともに行くに、よろづのこと"かなしとはおろかなり"。

    悲しいという言葉では言い尽くせない

  • 13

    布衣なよらかにて、"そこはかとなくながめ居たるけしき"、いとほしく、をかし。

    何ということもなくもの思いにふけっている様子

  • 14

    (義家が)たたかひの間の物語を申しけるを、匡房卿よくよく聞きて、「器量は畏き武者なれども、なほいくさの道をば知らぬ」と独りごとにいはれけるを、義家の郎等聞きて、"けやけき事をのたまふ人かな"と思ひたりけり。

    こしゃくなことをおっしゃる人だなあ

  • 15

    北面の中に、藤原秀能とて、年ごろもこの道に許りたるすき者なれば、召し加へらるること常のことなれど、"やむごとなき人々の歌だにも"、あるは一首二首には過ぎざりしに、この秀能九首まで召されて、

    高貴な人々の和歌でさえも

  • 16

    「母にて候ふ者、悪き病をして死にて侍るが、父は遠く歩きて候はず。人は"いぶせき事に思ひて"、見て弔ふ者もなし。」

    うっとうしいことに思って

  • 17

    帝は"御年よりはこよなうおとなおとなしううねびさせたまひて"、世の政も(源氏が)うしろめたく思ひ聞こえたまふべきにはあらねども、

    お年よりは思った以上に強い態度で振る舞いなさって

  • 18

    「……今宵尊き聖に宿貸し参らするも、多生の縁浅からぬ故なれば、それがし"たとひ空しくなるとも、後世をとうてたび給へ"」とて、そぞろに涙を流したければ、

    たとえ死ぬとしても、往生できるように弔ってください

  • 19

    「……なほ免し給ふべきなり」と、さまざまに遁れ申し給へども、殿、"あながちにしきりにしきりて責めさせ給へば"、大納言いみじく思ひ煩ひて、

    無理やりに何度も強く求めなさるので

  • 20

    大納言なりける人、日ごろ心を尽くされける女房のもとにおはして、物語などせられけるが、世に思ふやうならで、明けゆく空も、"なほ心もとなかりければ、あからさまのやうにて"、立ち出でて、

    やはり気がかりだったので、ちょっと席を外す様子で

  • 21

    さて、この人、いみじく思ひ嘆きて日ごろを経るほどに、そこ近く、所の長なる男の、"身まかれるありけり"。

    亡くなった男がいた

  • 22

    墓より火燃えいで候ふ故、……住持聞きつけ、世にあやしき事に思ひ、さまざま経文など書きて弔ひけれども、"そのしるしなかりしに"、この頃は燃えず候ふよしを申し候ふが、

    供養の効き目もなかったが

  • 23

    女君、「いかで大納言をがな。一人なし奉りて、"あかぬことなし"と思はせ奉らむ」とのたまふを

    不満なことはない

  • 24

    夜ふけて、上達部、親王たちも"ものかづき給ひて"、いちの舎人までものかづき、禄なんど給ひてみな立ち給ひぬ。

    ご褒美をいただきなさって

  • 25

    (上皇が)京へ帰らせ給ひて後に、若君の参らせ給へりしこそ、「(亡き更衣の)御忘れ形見も"なかなかなる御もの思ひの催しぐさなりや"」と、おぼしめすらむかし。

    かえってつらいもの思いを催すたねであるよ

  • 26

    今年は五十三の秋も立ちぬ。為頼の中納言の、若き人々の逃げかくれければ、「いづくにか身をばよせまし」とよみて嘆かれけむも、"やや思ひしる身となはなれりけり"。

    しだいに思い知る身となったなあ

  • 27

    何やかやと思ひ出でて、しひて筆とらんとすれば、三人のわらはべ、"ところせきかたへに"戯れ遊びて、あとさきしどろなることをさへづりあひて、いとかしがましければ、書きさすことしばしばなり。

    狭くて窮屈なそばで

  • 28

    (西行が娘に言うことには)「尼になりて母がかたはらに居て、仏の宮仕へうちして、心にくくてあれかしと思ふなり」といふ。やや久しく打ち案じて、「承りぬ。はからひ給はせんこと、"いかでかたがへ奉らん"。さらば、いつと定め給へ。」

    どうして逆らい申し上げましょうか

  • 29

    言はばただ憂へを残さじと思ふのみ、人の親の心なるべきかもなど、"まめまめしう一人ごちてをる間に"、長き日も夕になりぬ。

    まじめに独り言を言っている間に

  • 30

    「(あなたが)夜前笛を吹きて過ぎ給ひしに、命今日明日に終はりなむずる相、その笛の音に聞こえしかば、そのこと告げ申さむと思ひしに、……"え告げ申さで、極めていとほし"と思ひ聞こえしに、……」

    お知らせすることができなくて、非常に気の毒だ

  • 31

    眉抜き、かねつけなど、女びさせたれば、かくては"いとど匂ひまさりたりけるをや"と見えて、いみじくうつくしげなるを、

    ますます美しさがつのったなあ

  • 32

    とにかくに思ひ分けにし事なく、何と又都へ帰るらむ、あぢきなく、……こことても又立ち帰らむ事もかたければ、物ごとに名残多かる心地するにも、"うちつけにものむつかしき心のくせ"になむ。

    考えが浅くてうっとうしい性格

  • 33

    長月の有明の月にさそはれて、蔵人の少将、"指貫つきづきしく引きあげて"、ただ一人、小舎人童ばかり具して、

    指貫の袴の裾を歩くのに似つかわしく引き上げて

  • 34

    賀茂にも(斎院として)同じごと、院の姫宮ゐさせ給ひけるが、"御なやみによりて"、秋の頃おりさせ給へり。

    ご病気のために

  • 35

    かの顕忠の朝臣の尼尋ねまはるに、都嶋といふに住みつきて行ひすましたるに行き合ふに、泣くを相ひ会ふしをりとて、"かたみに言ふべく、語るべき言葉もなし"。

    互いに何も言うことができず、語ることのできる言葉もない

  • 36

    (童が)修行しありくほどに、この姫君、はかなく煩ひて失せにけり。かしく廻りて、"いつしかと帰りたるに"、「姫君失せにけり」と聞くに、悲しきこと限りなし。

    少しでも早くと帰ったところ

  • 37

    平中、にくからず思ふ若き女を、妻のもとに率て来ておきたりけり。にくげなることどもをいひて、妻つひに追ひいだしけり。……"らうたしと思ひながらえとどめず"。

    女をかわいいと思うが妻を制止することができない

  • 38

    むげに老い衰へ、御世も末になりて、そのかみ参り慣れて(大齋院に)"はべりけむ人もをさをさなく"、今の世の人もはかばかしく参ることもなき末の世になりてしも、

    お仕えしていたような人もほとんどなく

  • 39

    ひたぶる心のますらをもえあらがはじと思ふに、まして"おろかなる親心にはいとかなしうて"、あこよよくこそはひ来つれとて抱き上げて、とさまかうさまもてあつかへば、

    愚かな親心にはとてもいとしくて

  • 40

    (姫君付きの女房が言うには)「(代筆の人が)ものへいましぬめりしかば、心には思ひながら、(男への返事を)えせぬぞ。"みづからは手もいとあし"、……」

    姫君自身は、字もとても下手である

  • 41

    昔、津の国に住む女ありけり。それをよばふ男二人なむありける。……いづれまされりといふべくもあらず。女思ひわづらひぬ。……親ありて、「かく見苦しく年月を経て、"人の嘆きをいたづらにおふも、いとほし"……」

    男たちの嘆きをむだに負うのも、気の毒だ

  • 42

    人々見つけてむらがり寄りて、「何ごとをしたまふ人ぞ」……なんど、たづねられけるに、"つゆばかりのいらへもせず"。

    ほんの少しの返事もしない

  • 43

    いとあやしくて、"めかれもせずまもりゐたるに"、(狐が)ひろ野などの、さゆるものなきところをゆきかふさまにて、やがてかきけつごとく出でさりぬ。

    目も離さずにじっと見つめていると

  • 44

    我仮の庵を、そこここと住み替ゆること十八箇所、はの生きなばまたも替えなん。これ、仮の世の仮なることを"忘れぬたづきなりけり"。

    忘れないための手段であった

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  • 1

    この家の女房ども、この女の宿りに遊ぶとて入りて見るに、二人の者病み臥せり。怪しみて問ふに、女の言ふやう、「"させる病にはあらす"。しかしかのことの侍るを、思ひ嘆くによりて、親子死なむとするなり」と言ふ。

    たいした病気ではない

  • 2

    上は中宮の御方に渡らせ給ひければ、対の屋へ忍びて逃げさせ給ひて、春日殿へ、女房のやうにて"いとあやしきさまをつくりて"入らせ給ふ。

    とても粗末な身なりをして

  • 3

    ただ今の時、后にておはしまさむ御方々は、華やかに今めかしくも、また、"心にくくもおはしまさむ"、ことわりなり。

    奥ゆかしくもいらっしゃるようなことは

  • 4

    「なにがし、かう、田舎びたりといふ名こそはべれ、くちをしき民に、はたはべらず。都の人とても、何ばかりかあらむ。みな知りてはべり。なほ、"なおぼしあなづりそ"」とて、

    ばかになさってはいけない

  • 5

    (三条院は目が不自由で)中堂にのぼらせたまはむとなり。……"やがておこたりおはしまさずとも"、すこしの験はあるべかりしことよ。

    すぐに快方へ向かいなさらないとしても

  • 6

    故院の御かたみには、"ゆかしく思ひまゐらすれど"、(宮中に)さし出でんこと、なほあるべきことならず。

    会いたいと思い申し上げるけれど

  • 7

    さてこの文をあけて見たまへば、通盛の卿の文にてぞありける。車におくべきやうもなし、"大路にすてんもさすがにて"、はかまの腰にはさみつつ、御所へぞ参りたまひける。

    手紙を大通りに捨てるようなこともやはりできなくて

  • 8

    中ごろ、師大納言経信卿、西山の花見んとて、"さるべきすき人どもいざなひつれて"、大井川の千本の桜ながむとて、

    しかるべき、風流を解する人々を引き連れて

  • 9

    女これを聞きけるよりおぼえず悩ましき心地よいうちそひて、"うつし心ならぬけしき"を見とがめて、親王あやしみ問ひ給ふを、

    正気ではないような様子

  • 10

    大納言参り給へれば、「歌詠みどものはかばかしく歌も詠み出でぬに、さりともこの大納言の歌は、"よもつたなき様はあらじ"」と、みな人も心にくがり思ひたりけるに、

    まさか下手なことはないだろう

  • 11

    東大寺の法蔵僧都は、この左大将の御祈りの師なり。定めて御祈りの事ありなんと待つに、"音もし給はねば、おぼつかなきに"京に上りて、枇杷殿に参りぬ。

    何の便りもなさらないので、心配で

  • 12

    (父の遺品として)また弾きし琴ども、この子して運ばせて、今、母もろともに行くに、よろづのこと"かなしとはおろかなり"。

    悲しいという言葉では言い尽くせない

  • 13

    布衣なよらかにて、"そこはかとなくながめ居たるけしき"、いとほしく、をかし。

    何ということもなくもの思いにふけっている様子

  • 14

    (義家が)たたかひの間の物語を申しけるを、匡房卿よくよく聞きて、「器量は畏き武者なれども、なほいくさの道をば知らぬ」と独りごとにいはれけるを、義家の郎等聞きて、"けやけき事をのたまふ人かな"と思ひたりけり。

    こしゃくなことをおっしゃる人だなあ

  • 15

    北面の中に、藤原秀能とて、年ごろもこの道に許りたるすき者なれば、召し加へらるること常のことなれど、"やむごとなき人々の歌だにも"、あるは一首二首には過ぎざりしに、この秀能九首まで召されて、

    高貴な人々の和歌でさえも

  • 16

    「母にて候ふ者、悪き病をして死にて侍るが、父は遠く歩きて候はず。人は"いぶせき事に思ひて"、見て弔ふ者もなし。」

    うっとうしいことに思って

  • 17

    帝は"御年よりはこよなうおとなおとなしううねびさせたまひて"、世の政も(源氏が)うしろめたく思ひ聞こえたまふべきにはあらねども、

    お年よりは思った以上に強い態度で振る舞いなさって

  • 18

    「……今宵尊き聖に宿貸し参らするも、多生の縁浅からぬ故なれば、それがし"たとひ空しくなるとも、後世をとうてたび給へ"」とて、そぞろに涙を流したければ、

    たとえ死ぬとしても、往生できるように弔ってください

  • 19

    「……なほ免し給ふべきなり」と、さまざまに遁れ申し給へども、殿、"あながちにしきりにしきりて責めさせ給へば"、大納言いみじく思ひ煩ひて、

    無理やりに何度も強く求めなさるので

  • 20

    大納言なりける人、日ごろ心を尽くされける女房のもとにおはして、物語などせられけるが、世に思ふやうならで、明けゆく空も、"なほ心もとなかりければ、あからさまのやうにて"、立ち出でて、

    やはり気がかりだったので、ちょっと席を外す様子で

  • 21

    さて、この人、いみじく思ひ嘆きて日ごろを経るほどに、そこ近く、所の長なる男の、"身まかれるありけり"。

    亡くなった男がいた

  • 22

    墓より火燃えいで候ふ故、……住持聞きつけ、世にあやしき事に思ひ、さまざま経文など書きて弔ひけれども、"そのしるしなかりしに"、この頃は燃えず候ふよしを申し候ふが、

    供養の効き目もなかったが

  • 23

    女君、「いかで大納言をがな。一人なし奉りて、"あかぬことなし"と思はせ奉らむ」とのたまふを

    不満なことはない

  • 24

    夜ふけて、上達部、親王たちも"ものかづき給ひて"、いちの舎人までものかづき、禄なんど給ひてみな立ち給ひぬ。

    ご褒美をいただきなさって

  • 25

    (上皇が)京へ帰らせ給ひて後に、若君の参らせ給へりしこそ、「(亡き更衣の)御忘れ形見も"なかなかなる御もの思ひの催しぐさなりや"」と、おぼしめすらむかし。

    かえってつらいもの思いを催すたねであるよ

  • 26

    今年は五十三の秋も立ちぬ。為頼の中納言の、若き人々の逃げかくれければ、「いづくにか身をばよせまし」とよみて嘆かれけむも、"やや思ひしる身となはなれりけり"。

    しだいに思い知る身となったなあ

  • 27

    何やかやと思ひ出でて、しひて筆とらんとすれば、三人のわらはべ、"ところせきかたへに"戯れ遊びて、あとさきしどろなることをさへづりあひて、いとかしがましければ、書きさすことしばしばなり。

    狭くて窮屈なそばで

  • 28

    (西行が娘に言うことには)「尼になりて母がかたはらに居て、仏の宮仕へうちして、心にくくてあれかしと思ふなり」といふ。やや久しく打ち案じて、「承りぬ。はからひ給はせんこと、"いかでかたがへ奉らん"。さらば、いつと定め給へ。」

    どうして逆らい申し上げましょうか

  • 29

    言はばただ憂へを残さじと思ふのみ、人の親の心なるべきかもなど、"まめまめしう一人ごちてをる間に"、長き日も夕になりぬ。

    まじめに独り言を言っている間に

  • 30

    「(あなたが)夜前笛を吹きて過ぎ給ひしに、命今日明日に終はりなむずる相、その笛の音に聞こえしかば、そのこと告げ申さむと思ひしに、……"え告げ申さで、極めていとほし"と思ひ聞こえしに、……」

    お知らせすることができなくて、非常に気の毒だ

  • 31

    眉抜き、かねつけなど、女びさせたれば、かくては"いとど匂ひまさりたりけるをや"と見えて、いみじくうつくしげなるを、

    ますます美しさがつのったなあ

  • 32

    とにかくに思ひ分けにし事なく、何と又都へ帰るらむ、あぢきなく、……こことても又立ち帰らむ事もかたければ、物ごとに名残多かる心地するにも、"うちつけにものむつかしき心のくせ"になむ。

    考えが浅くてうっとうしい性格

  • 33

    長月の有明の月にさそはれて、蔵人の少将、"指貫つきづきしく引きあげて"、ただ一人、小舎人童ばかり具して、

    指貫の袴の裾を歩くのに似つかわしく引き上げて

  • 34

    賀茂にも(斎院として)同じごと、院の姫宮ゐさせ給ひけるが、"御なやみによりて"、秋の頃おりさせ給へり。

    ご病気のために

  • 35

    かの顕忠の朝臣の尼尋ねまはるに、都嶋といふに住みつきて行ひすましたるに行き合ふに、泣くを相ひ会ふしをりとて、"かたみに言ふべく、語るべき言葉もなし"。

    互いに何も言うことができず、語ることのできる言葉もない

  • 36

    (童が)修行しありくほどに、この姫君、はかなく煩ひて失せにけり。かしく廻りて、"いつしかと帰りたるに"、「姫君失せにけり」と聞くに、悲しきこと限りなし。

    少しでも早くと帰ったところ

  • 37

    平中、にくからず思ふ若き女を、妻のもとに率て来ておきたりけり。にくげなることどもをいひて、妻つひに追ひいだしけり。……"らうたしと思ひながらえとどめず"。

    女をかわいいと思うが妻を制止することができない

  • 38

    むげに老い衰へ、御世も末になりて、そのかみ参り慣れて(大齋院に)"はべりけむ人もをさをさなく"、今の世の人もはかばかしく参ることもなき末の世になりてしも、

    お仕えしていたような人もほとんどなく

  • 39

    ひたぶる心のますらをもえあらがはじと思ふに、まして"おろかなる親心にはいとかなしうて"、あこよよくこそはひ来つれとて抱き上げて、とさまかうさまもてあつかへば、

    愚かな親心にはとてもいとしくて

  • 40

    (姫君付きの女房が言うには)「(代筆の人が)ものへいましぬめりしかば、心には思ひながら、(男への返事を)えせぬぞ。"みづからは手もいとあし"、……」

    姫君自身は、字もとても下手である

  • 41

    昔、津の国に住む女ありけり。それをよばふ男二人なむありける。……いづれまされりといふべくもあらず。女思ひわづらひぬ。……親ありて、「かく見苦しく年月を経て、"人の嘆きをいたづらにおふも、いとほし"……」

    男たちの嘆きをむだに負うのも、気の毒だ

  • 42

    人々見つけてむらがり寄りて、「何ごとをしたまふ人ぞ」……なんど、たづねられけるに、"つゆばかりのいらへもせず"。

    ほんの少しの返事もしない

  • 43

    いとあやしくて、"めかれもせずまもりゐたるに"、(狐が)ひろ野などの、さゆるものなきところをゆきかふさまにて、やがてかきけつごとく出でさりぬ。

    目も離さずにじっと見つめていると

  • 44

    我仮の庵を、そこここと住み替ゆること十八箇所、はの生きなばまたも替えなん。これ、仮の世の仮なることを"忘れぬたづきなりけり"。

    忘れないための手段であった