監査3

監査3
15問 • 1年前
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    問題一覧

  • 1

    経営者確認書の記載に関する要求事項[監基報580:8~14」 p180

    ①監査人は,財務諸表に対する最終的な責任を有し,確認事項についての知識を有する終営者に対して経営者確認書を提出するように要請しなければならない*¹。 ② 財務諸表の作成並びに監査人に提供される情報及び取引の網羅性に対する経営者の責任は,監査契約責に記載されているとおりに経営者確認書に記載されなければならない*²。 ③監査人は,財務諸表又は財務諸表における特定のアサーションに関連する他の監査証拠を裏付けるため,その他の事項について経営者確認書を入手する必要があると判断した場合,当該確認事項についての経営者確認書を提出するように要請しなければならない*³。 ④経営者確認書の日付は,財務諸表に対する監査報告書日より後であってはならない*⁴。 ⑤経営者確認書は,監査人を宛先とする書面又は電磁的記録でなければならない。 *¹)経営者確認書は,企業の最高経営責任者や最高財務責任者その他の同等の者に対して要請する。 なお,経営者は,経営者確認書に,経営者が知り得る限りにおいて確認したという旨の記述を含めることがあるが,適切な責任と知識を有する者によって陳述が行われているという心証を得ている場合には,監査人がそのような文言を受け入れるのは合理的である。 *²)上記(*¹)なお書きにかかわらず,経営者の責任の認識と理解のために,監査業務の契約条件を再度掲載する場合,「経営者の知る限りにおいて」という文言は使用しない。 *³)監査人は,監査人に提供される情報に関する追加的な確認事項として,経営者が気付いた全ての内部統制の不備を監査人に伝達した旨の陳述を経営者に要請することが必要と判断することもある。 *⁴)経営者確認書は,意見表明の基礎として必要な監査証拠であるため,監査報告書日を経営者確認書の日付より前にすることはできない(監査報告書日について、詳細は後述p.206参照)。  なお,状況によっては,監査人は,財務諸表における特定のアサーションに関して,監査の過程で経営者確認書を入手することが適切なことがある。この場合,経営者確認書の更新の要請が必要となることがある。

  • 2

    経営者確認書の信頼性に疑義がある場合及び要請した事項の確認が得られない場合 p181

    ① 経営者確認書の信頼性に疑義がある場合[監基報580:15]  監査人は,経営者の能力,誠実性若しくは倫理観,又はこれらに対する経営者の取組若しくは実践について懸念がある場合*¹,そのような懸念が頭若しくは書面又は電磁的記録による陳述の頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を判断しなければならない。 ② 要請した事項の確認が得られない場合[監基報580:18]  監査人が確認を要請した事項の全部又は一部について経営者から確認を得られない場合,監査人は以下の事項を実施しなければならない。  a)当該事項について経営者と協議すること  b)経営者の誠実性を再評価し,口頭若しくは書面又は電磁的記録による陳述の信頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を評価すること  c)監査意見への影響を判断することを含め,適切な措置を講じること ③ 経営者の責任に関する確認事項[監基報580:19]  監査人は,以下の場合には財務諸表に対する意見を表明してはならない*²。  a)監査人が,経営者の誠実性について深刻な疑義があり,監査実施の基礎となる経営者の責任に関する確認事項に信頼性がないと判断した場合  b)監査実施の基礎となる経営者の責任について経営者から確認が得られない場合    なお,監査人が経営者確認書への記載を要請した事項に経営者が変更を加えていたとしても,そのことは要請した事項の確認が得られなかったことを必ずしも意味するわけではない*³。ただし,監査人には,変更の理由が,監査報告書における意見に及ぼす影響を検討することが求められる。 *¹)経営者の能力,誠実性若しくは倫理観,又はこれらに対する経営者の取組若しくは実践に関する重要な問題は,監査手続の実施に重大な支障を来す状況として重要な事項となり,監査調書として文書化されることになる(前述p156参照)。ただし,監査人は,そのような問題を識別してもなお経営者確認書には信頼性があると結論付けることがある。 *²)上記a)又はb)の状況が財務諸表に及ぼす可能性のある影響は,財務諸表の特定の構成要素,勘定又は項目に限定されず,広範囲に及ぶことから,意見を表明しないことが求められている。 *³)経営者確認書で確認を求める事項は監査人が決定するが,監査人が記載を要請した事項について,経営者は,変更を加えることが必要と考えることがある。例えば,経営者は,適用される財務報告の枠組みにおける特定の要求事項を除いて,財務諸表は当該財務報告の枠組みに準拠して作成され表示されていると判断している旨を記載することがある。また,例えば,火災で焼失した情報を除いて,監査契約書において合意した全ての関連する情報を監査人に提供したと判断している旨を記載することがある。

  • 3

    補論:監査の最終段階 p182

    以下,本章で取り扱った監査の実施に関する議論の総括として,監査の最終段階から,次章で扱う監査報告までの流れを示す。 ① 財務諸表の表示及び注記事項の妥当性の評価と分析的手続  監査人は,財務諸表の全体的な表示が,適用される財務報告の枠組みに準拠しているかどうかを評価する監査手続を実施しなければならない*¹。また,監査人は,企業に関する監査人の理解と財務諸表が整合していることについて全般的な結論を形成するために実施する分析的手続を立案し,実施しなければならない。 ② 財務諸表に対する意見の形成無限定適正意見か除外事項付意見か  監査人は,監査意見の形成に当たり,不正か誤謬かを問わず,財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないということについての合理的な保証を得たかどうかを判断しなければならない。この判断に当たり,監査人は以下の事項を勘案しなければならない*²。  a)十分かつ適切な監査証拠を入手したかどうかについての監査人の結論(前述p.128参照)  b)未修正の虚偽表示が,個別に,又は集計した場合に重要であるかどうかについての監査人の結論(前述p.145 参照) ③ 審査  監査人は,意見の表明に先立ち,自らの意見が一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に形成されていることを確かめるため,審査を受けなければならない(詳細は後述p.308参照)。 ④ 監査報告  監査人は,監査業務に係る審査の完了を確認したうえで,監査報告書を被監査会社に提出する。監査人は,監査報告書の発行に際して,経営者確認書を入手しなければならない。 *¹)財務諸表の表示,配置及び内容の適切性の評価には,例えば,適用される財務報告の枠組みで要求される用語が使用されているか,十分詳細な情報が提供されているか,項目の集計及び細分化並びにその根拠の説明の検討が含まれ,その一環として,監査人は,後発事象(詳細は第4章第5節1で扱う。)や継続企業の前提(詳細は第4章第2節で扱う。)に関する注記事項の妥当性を検討する。 *²)上記a)及びb)に加えて,監査人は,財務諸表が適用される財務報告の枠組みに準拠して作成され適正に表示されているかどうかについて評価し勘案しなければならない。

  • 4

    ____________ p185

    第3章 監査報告

  • 5

    __________ p187

    第3章 第1節 監査報告書と監査人の意見

  • 6

    監査報告書の意義 p188

    監査報告書は,財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であるとともに,監査人が自己の責任を正式に認める手段である。  この定義に示されるように,監査報告書には次の2つの意義がある。 ① 財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段  監査の目的は,財務諸表に対する意見を表明することにあり,この目的は,監査人が監査を実施した結果に基づいて形成した意見が記載された監査報告費が発行されることにより達成されることになる。  このように,監査報告書は,財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段としての意義を有している。 ② 監査人が自己の責任を正式に認める手段  監査人の責任は,財務諸表に対する意見を表明することにあり,監査人は,自らの責任の下,不特定多数の利用者に対し,意見表明による保証を与える立場にある。  したがって,監査人が自ら表明する意見に関し,いかなる範囲でいかなる内容の責任を負担しているのかを監査報告書において明らかにすることは,監査報告書の利用者にとって,監査人の意見の性質や前提を理解して監査報告書を適切に利用するために重要となるのみならず,監査人にとっても,不当な責任追及を回避する意味できわめて重要となる。  このように,監査報告書は,監査人が自己の責任を正式に認める手段としての意義を有している。  上記定義に見るように,監査報告書には,監査の結果を利用者に報告するのみならず,監査人の責任を明らかにする意義もある。特に,監査報告書は,監査人と利用者との唯一の接点とも言われることから,監査報告書の記載形式や文言の在り方を検討するうえでは,単に利害関係者の「監査の結果が明確に報告されているか否か」という観点のみならず,「監査人の責任の範囲が明確にされているか否か」という観点もあわせて議論されなければならない。

  • 7

    監査報告書の記載要件 ~報告基準の設定理由 p189

    監査報告書の記載要件につき何ら基準を設けない場合には,監査人が不当に責任を回避するために曖味な記載を行い又は必要な記載を省略することで利用者に誤解をもたらし,利用者の利益が不当に損なわれるおそれがある。加えて,意見に関して監査人が負担する責任の範囲が不明確となることにより,利用者が査へに対して本来負担し得ない過重な責任を追及するおそれがある。  したがって,監査人の意見を簡潔明瞭に記載して利用者に報告するとともに,監査人の責任の範囲を明確に記載し,もって利用者と監査人の双方の利益を擁護するために,報告基準が設定されている。  報告基準により,監査報告書の内容は標準化され,その一貫性が保持されている。  監査報告書間の様式や内容等の一貫性は,監査報告書の利用者の理解を助けるとともに,通例でない状況が生じた場合にこれを認識することを容易にする。[監基報700:4]

  • 8

    補論:監査報告書の種類と財務諸表監査報告書 p189

    監査報告書は、その記載の内容や詳細度により、①短文式監査報告書と②長文式監査報告書とに分類される。 ① 短文式監査報告書  短文式監査報告書は,標準化された記載文言により簡潔明瞭に記載する監査報告書をいう。監査報告書が広く一般に公表されることになる金融商品取引法監査や会社法監査等の法定監査においては,不特定多数の利用者の理解に資するとともに,監査人の責任範囲を明瞭表示するために,短文式監査報告書が採用される。 ② 長文式監査報告書  長文式監査報告書は,監査依頼者の要請に応じた内容を適宜詳細に記載する監査報告書をいう。経営者の経営意思決定や債権者の融資意思決定等,特定の者の依頼に基づき行われる任意監査においては,個々の要請に応じて個別具体的な指摘・助言・対応策等を記載するために,長文式監査報告書が採用される。  監査上の主要な検討事項*¹を記載する実務の導入以前は,我が国を含め,国際的に採用されてきた短文式監査報告書は,基本的に,標準化された定型的な文言のみからなるものであった。この点,現在では,監査上の主要な検討事項として被監査会社固有の事項が記載されることにより,監査報告書は以前よりも長文化しているが,監査意見を簡潔明瞭に記載する枠組みは維持されている。 *¹)監査上の主要な検討事項について,詳細は第4章第3節2で扱う。

  • 9

    監査基準・第四 報告基準・一 基本原則2 p190

    監査人は,財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適正に表示されているかどうかの判断に当たっては,経営者が採用した会計方針が,企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかのみならず,②その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか並びに財務諸表の表示方法が適切であるかどうかについても評価しなければならない。

  • 10

    企業会計の基準とは p190

    企業会計の基準は,財務諸表の作成に当たって準拠すべき会計処理の原則及び手続を定めたものである*¹。  そのため,企業会計の基準は,二重責任の原則の下,適正な財務諸表を作成する責任を負担する経営者にとっては財務諸表の作成において準拠するべき規範として,財務諸表の適正性に関する意見を表明する責任を負担する監査人にとっては財務諸表の適正性判断において準拠するべき規範としての意義を有している。  企業会計原則の設定前文では,その意義について,以下のように示されている。 1 企業会計原則は,企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって,必ずしも法令によって強制されないでも,すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である。 2 企業会計原則は,公認会計士が,公認会計士法及び証券取引法に基き財務諸表の監査をなす場合において従わなければならない基準となる。 *¹)企業会計の基準には,例えば,企業会計審議会が設定する企業会計原則,企業計基準委員会が設定する企業会計基準・適用指針や一般的な実務慣行及び業界の実務慣行等が含まれる。

  • 11

    財務諸表の適正性判断上の評価事項 p191

    以下,経営者が採用した会計方針及び表示方法*¹に関して,前掲の報告基準が掲げている財務諸表の適正性判断上の評価事項の各々について見ていく。 ① 経営者が採用した会計方針が,企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうか(会計方針の企業会計の基準への継続的な準拠性)  前述したように,企業会計の基準は,監査人にとって財務諸表の適正性判断において準拠するべき規範としての意義を有している。  したがって,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,経営者が採用した会計方針が,企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかを評価する*²。 ② その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか(会計事象や取引の実態の反映の適切性)  経営者が採用した会計方針が企業会計の基準のいずれかに準拠し,かつ,継続的に適用されていたとしても,その選択や適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものでない場合には,作成される財務諸表は,単に形式的に適正要件を満たしているに過ぎず,財務諸表の利用者の経済的意思決定を誤導するおそれがある。  したがって,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,単なる法形式でなく,会計事象や取引の実態を適切に反映しているかどうかを評価しなければならない(実態に即した判断は,実質的判断(詳細は次頁参照)と呼ばれる。)。 ③ 財務諸表の表示方法が適切であるかどうか(表示方法の適切性)  経営者が採用した会計方針が企業会計の基準に準拠して継続的に適用され,かつ,その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであり,その実態を適切に反映した財務諸表数値が導かれていたとしても,財務諸表の表示方法が不適切である場合,財務諸表の利用者の経済的意思決定を誤導するおそれがある。  したがって,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,さらに財務諸表における表示が利用者に理解されるために適切であるかどうかについても評価しなければならない*³。 *¹)会計方針とは,財務諸表の作成に当たって採用した会計処理の原則及び手続をいう。また,表示方法とは,財務諸表の作成に当たって採用した表示の方法(注記による開示も含む。)をいい,財務諸表項目の科日分類,科目配列及び報告様式が含まれる。 *²)監査人は,財務諸表が,企業会計の基準及び財務諸表に適用される法令等を含め,適用される財務報告の枠組みに準拠して作成され,適正に表示されているかどうかを評価する。 *³)表示方法の適切性の評価には,経営者が採用した重要な会計方針が適切に注記されているかどうかや,重要な取引や会計事象が財務諸表に及ぼす影響について財務諸表の利用者が理解するために適切な注記がなされているかどうかが含まれる。

  • 12

    企業会計の基準と実質的判断 p192

    実質的判断には,企業会計の基準の枠内におけるものと枠外におけるものとがある。 ① 企業会計の基準の枠内における実質的判断  前述したように,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,財務諸表が会計事象や取引の実態を適切に反映しているかどうかを評価しなければならない。  そのため,例えば,企業会計の基準上,二つの会計事実に対して複数の会計方針からの選択適用が認められている場合には,経営者による会計方針の選択及びその適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかを評価しなければならない。  また,企業会計の基準に準拠した会計方針が継続的に適用されている場合であっても,企業の事業内容又は企業内外の経営環境に重要な変化があることを識別した場合,適用されている会計方針が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかについて検討しなければならない。 ② 企業会計の基準の枠外における実質的判断  監査人には,以下に示すような企業会計の基準の限界に起因して,明文化されている企業会計の基準の枠外において実質的判断が求められることがある。  a)企業会計の基準は,あくまで一定時点における公正な会計慣行や財務諸表の利用者の情報要求を規化したものであるため,新たな会計慣行や情報要求に適時弾力的に対応することはできない(弾力性の限界)。  b)企業会計の基準において特定個々の状況に応じて適用すべき会計方針の全てを詳細かつ網羅的に規定することは現実的に不可能であるため,企業会計の基準は,あくまで一般的に想定される会計事実を対象とする規範であるに過ぎない(網羅性の限界)。  このような限界に起因して,監査上,会計事象や取引について適用する企業会計の基準が明確でない場合や企業会計の基準において詳細な定めがない場合が想定される。この場合,監査人は,経営者が採用した会計方針が当該会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかについて,経営者との討議(ディスカッション),関連資料の閲覧等により,関連する企業会計の基準の趣旨*¹を踏まえて判断しなければならない。  ただし,この取扱いは,企業会計の基準からの離脱を容認するものではなく,適用する企業会計の基準が明確である場合又は企業会計の基準において詳細な定めがある場合,当該企業会計の基準に準拠しない基準を会計方針として選択し適用することはできない*²。 *¹)企業会計の基準を含む,財務報告の枠組みは、全ての取引や事象の会計処理又は表示・注記の方法を明記していないことがあるが,通常,一般的な原則を含んでいる。一般的な原則は,財務報告の枠組みにおける要求事項の根底にある概念と整合する会計方針を策定し適用するための基礎を提供する。 *²)我が国では認められていないが,国又は基準によっては基準からの離脱(基準に従わない会計処理を行うこと)が容認されていることもある。基準からの離脱については,後述p.297参照。

  • 13

    意見表明と意見不表明 p193

    報告基準は,以下のように,自己の意見を形成するに足る基礎が得られていることが監査意見を表明するための条件であることを明らかにしている。 第四 報告基準一 基本原則3  監査人は,監査意見の表明に当たっては,監査リスクを合理的に低い水準に抑えた上で,自己の意見を形成するに足る基礎を得なければならない。 第四 報告基準一 基本原則4  監査人は,重要な監査手続を実施できなかったことにより,自己の意見を形成するに足る基礎を得られないときは,意見を表明してはならない。  監査人と個人的信頼関係のない利用者が,監査人の表明する意見を無条件に信頼して受容するのは,制度として実施される監査において表明される全ての意見が財務諸表の頼性を合理的に高い水準で保証しているであろうことに対する社会的信頼があるからにほかならない。そのため,監査人は,監査意見の表明に当たっては,意見表明の基礎を得なければならず、一方で,意見表明の基礎を得られないときは,監査意見を表明してはならない。

  • 14

    補論:意見不表明の規定の必要性 p194

    監査の目的は,利用者の財務諸表に対する信頼性を高めるために監査意見を表明することにあり,被監査会社は監査済み財務諸表の開示による取ら関係の円滑化という便益を享受するために監査を受容する。したがって,監査意見が表明されない場合には,監査の目的が達成されないのはもちろんのこと,被監査会社が監査を受容する意図にも反することとなる。  しかしながら,監査人に帰責事由なく必要と判断した監査手続を実施できなかった結果として,意見表明の基礎が得られない場合も考えられる。このような場合にまで監査人に対して意見表明を強制することは,監査人にとって過重な責任負担となる。そのため,監査人には,意見を表明する以外にも,意見を表明しないという選択が許容されなければならない。  また,意見表明の基礎のない保証水準の低い意見は,財務諸表の利用者の経済的意思決定を誤らせるおそれが高く,そのような意見の存在を許容した場合には,財務諸表監査全体の社会的信頼性を害することにもなりかねない。そのため,その基礎が得られていないままに意見表明することは禁止されなければならない。  以上から,「自己の意見を形成するに足る基礎を得られないときは,意見を表明してはならない」*¹との規定が必要となる。 *¹)単にその基礎が得られていない場合に意見を表明しないことを許容するのみであれば,意見を表明「しないことができる」と規定すれば足りるが,その基礎が得られていない意見の表明は禁止されなければならないことから,意見を表明「してはならない」と規定されている。

  • 15

    __________ p195

    第3章 第2節 監査報告書の記載事項

  • 監査

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    問題一覧

  • 1

    経営者確認書の記載に関する要求事項[監基報580:8~14」 p180

    ①監査人は,財務諸表に対する最終的な責任を有し,確認事項についての知識を有する終営者に対して経営者確認書を提出するように要請しなければならない*¹。 ② 財務諸表の作成並びに監査人に提供される情報及び取引の網羅性に対する経営者の責任は,監査契約責に記載されているとおりに経営者確認書に記載されなければならない*²。 ③監査人は,財務諸表又は財務諸表における特定のアサーションに関連する他の監査証拠を裏付けるため,その他の事項について経営者確認書を入手する必要があると判断した場合,当該確認事項についての経営者確認書を提出するように要請しなければならない*³。 ④経営者確認書の日付は,財務諸表に対する監査報告書日より後であってはならない*⁴。 ⑤経営者確認書は,監査人を宛先とする書面又は電磁的記録でなければならない。 *¹)経営者確認書は,企業の最高経営責任者や最高財務責任者その他の同等の者に対して要請する。 なお,経営者は,経営者確認書に,経営者が知り得る限りにおいて確認したという旨の記述を含めることがあるが,適切な責任と知識を有する者によって陳述が行われているという心証を得ている場合には,監査人がそのような文言を受け入れるのは合理的である。 *²)上記(*¹)なお書きにかかわらず,経営者の責任の認識と理解のために,監査業務の契約条件を再度掲載する場合,「経営者の知る限りにおいて」という文言は使用しない。 *³)監査人は,監査人に提供される情報に関する追加的な確認事項として,経営者が気付いた全ての内部統制の不備を監査人に伝達した旨の陳述を経営者に要請することが必要と判断することもある。 *⁴)経営者確認書は,意見表明の基礎として必要な監査証拠であるため,監査報告書日を経営者確認書の日付より前にすることはできない(監査報告書日について、詳細は後述p.206参照)。  なお,状況によっては,監査人は,財務諸表における特定のアサーションに関して,監査の過程で経営者確認書を入手することが適切なことがある。この場合,経営者確認書の更新の要請が必要となることがある。

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    経営者確認書の信頼性に疑義がある場合及び要請した事項の確認が得られない場合 p181

    ① 経営者確認書の信頼性に疑義がある場合[監基報580:15]  監査人は,経営者の能力,誠実性若しくは倫理観,又はこれらに対する経営者の取組若しくは実践について懸念がある場合*¹,そのような懸念が頭若しくは書面又は電磁的記録による陳述の頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を判断しなければならない。 ② 要請した事項の確認が得られない場合[監基報580:18]  監査人が確認を要請した事項の全部又は一部について経営者から確認を得られない場合,監査人は以下の事項を実施しなければならない。  a)当該事項について経営者と協議すること  b)経営者の誠実性を再評価し,口頭若しくは書面又は電磁的記録による陳述の信頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を評価すること  c)監査意見への影響を判断することを含め,適切な措置を講じること ③ 経営者の責任に関する確認事項[監基報580:19]  監査人は,以下の場合には財務諸表に対する意見を表明してはならない*²。  a)監査人が,経営者の誠実性について深刻な疑義があり,監査実施の基礎となる経営者の責任に関する確認事項に信頼性がないと判断した場合  b)監査実施の基礎となる経営者の責任について経営者から確認が得られない場合    なお,監査人が経営者確認書への記載を要請した事項に経営者が変更を加えていたとしても,そのことは要請した事項の確認が得られなかったことを必ずしも意味するわけではない*³。ただし,監査人には,変更の理由が,監査報告書における意見に及ぼす影響を検討することが求められる。 *¹)経営者の能力,誠実性若しくは倫理観,又はこれらに対する経営者の取組若しくは実践に関する重要な問題は,監査手続の実施に重大な支障を来す状況として重要な事項となり,監査調書として文書化されることになる(前述p156参照)。ただし,監査人は,そのような問題を識別してもなお経営者確認書には信頼性があると結論付けることがある。 *²)上記a)又はb)の状況が財務諸表に及ぼす可能性のある影響は,財務諸表の特定の構成要素,勘定又は項目に限定されず,広範囲に及ぶことから,意見を表明しないことが求められている。 *³)経営者確認書で確認を求める事項は監査人が決定するが,監査人が記載を要請した事項について,経営者は,変更を加えることが必要と考えることがある。例えば,経営者は,適用される財務報告の枠組みにおける特定の要求事項を除いて,財務諸表は当該財務報告の枠組みに準拠して作成され表示されていると判断している旨を記載することがある。また,例えば,火災で焼失した情報を除いて,監査契約書において合意した全ての関連する情報を監査人に提供したと判断している旨を記載することがある。

  • 3

    補論:監査の最終段階 p182

    以下,本章で取り扱った監査の実施に関する議論の総括として,監査の最終段階から,次章で扱う監査報告までの流れを示す。 ① 財務諸表の表示及び注記事項の妥当性の評価と分析的手続  監査人は,財務諸表の全体的な表示が,適用される財務報告の枠組みに準拠しているかどうかを評価する監査手続を実施しなければならない*¹。また,監査人は,企業に関する監査人の理解と財務諸表が整合していることについて全般的な結論を形成するために実施する分析的手続を立案し,実施しなければならない。 ② 財務諸表に対する意見の形成無限定適正意見か除外事項付意見か  監査人は,監査意見の形成に当たり,不正か誤謬かを問わず,財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないということについての合理的な保証を得たかどうかを判断しなければならない。この判断に当たり,監査人は以下の事項を勘案しなければならない*²。  a)十分かつ適切な監査証拠を入手したかどうかについての監査人の結論(前述p.128参照)  b)未修正の虚偽表示が,個別に,又は集計した場合に重要であるかどうかについての監査人の結論(前述p.145 参照) ③ 審査  監査人は,意見の表明に先立ち,自らの意見が一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に形成されていることを確かめるため,審査を受けなければならない(詳細は後述p.308参照)。 ④ 監査報告  監査人は,監査業務に係る審査の完了を確認したうえで,監査報告書を被監査会社に提出する。監査人は,監査報告書の発行に際して,経営者確認書を入手しなければならない。 *¹)財務諸表の表示,配置及び内容の適切性の評価には,例えば,適用される財務報告の枠組みで要求される用語が使用されているか,十分詳細な情報が提供されているか,項目の集計及び細分化並びにその根拠の説明の検討が含まれ,その一環として,監査人は,後発事象(詳細は第4章第5節1で扱う。)や継続企業の前提(詳細は第4章第2節で扱う。)に関する注記事項の妥当性を検討する。 *²)上記a)及びb)に加えて,監査人は,財務諸表が適用される財務報告の枠組みに準拠して作成され適正に表示されているかどうかについて評価し勘案しなければならない。

  • 4

    ____________ p185

    第3章 監査報告

  • 5

    __________ p187

    第3章 第1節 監査報告書と監査人の意見

  • 6

    監査報告書の意義 p188

    監査報告書は,財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であるとともに,監査人が自己の責任を正式に認める手段である。  この定義に示されるように,監査報告書には次の2つの意義がある。 ① 財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段  監査の目的は,財務諸表に対する意見を表明することにあり,この目的は,監査人が監査を実施した結果に基づいて形成した意見が記載された監査報告費が発行されることにより達成されることになる。  このように,監査報告書は,財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段としての意義を有している。 ② 監査人が自己の責任を正式に認める手段  監査人の責任は,財務諸表に対する意見を表明することにあり,監査人は,自らの責任の下,不特定多数の利用者に対し,意見表明による保証を与える立場にある。  したがって,監査人が自ら表明する意見に関し,いかなる範囲でいかなる内容の責任を負担しているのかを監査報告書において明らかにすることは,監査報告書の利用者にとって,監査人の意見の性質や前提を理解して監査報告書を適切に利用するために重要となるのみならず,監査人にとっても,不当な責任追及を回避する意味できわめて重要となる。  このように,監査報告書は,監査人が自己の責任を正式に認める手段としての意義を有している。  上記定義に見るように,監査報告書には,監査の結果を利用者に報告するのみならず,監査人の責任を明らかにする意義もある。特に,監査報告書は,監査人と利用者との唯一の接点とも言われることから,監査報告書の記載形式や文言の在り方を検討するうえでは,単に利害関係者の「監査の結果が明確に報告されているか否か」という観点のみならず,「監査人の責任の範囲が明確にされているか否か」という観点もあわせて議論されなければならない。

  • 7

    監査報告書の記載要件 ~報告基準の設定理由 p189

    監査報告書の記載要件につき何ら基準を設けない場合には,監査人が不当に責任を回避するために曖味な記載を行い又は必要な記載を省略することで利用者に誤解をもたらし,利用者の利益が不当に損なわれるおそれがある。加えて,意見に関して監査人が負担する責任の範囲が不明確となることにより,利用者が査へに対して本来負担し得ない過重な責任を追及するおそれがある。  したがって,監査人の意見を簡潔明瞭に記載して利用者に報告するとともに,監査人の責任の範囲を明確に記載し,もって利用者と監査人の双方の利益を擁護するために,報告基準が設定されている。  報告基準により,監査報告書の内容は標準化され,その一貫性が保持されている。  監査報告書間の様式や内容等の一貫性は,監査報告書の利用者の理解を助けるとともに,通例でない状況が生じた場合にこれを認識することを容易にする。[監基報700:4]

  • 8

    補論:監査報告書の種類と財務諸表監査報告書 p189

    監査報告書は、その記載の内容や詳細度により、①短文式監査報告書と②長文式監査報告書とに分類される。 ① 短文式監査報告書  短文式監査報告書は,標準化された記載文言により簡潔明瞭に記載する監査報告書をいう。監査報告書が広く一般に公表されることになる金融商品取引法監査や会社法監査等の法定監査においては,不特定多数の利用者の理解に資するとともに,監査人の責任範囲を明瞭表示するために,短文式監査報告書が採用される。 ② 長文式監査報告書  長文式監査報告書は,監査依頼者の要請に応じた内容を適宜詳細に記載する監査報告書をいう。経営者の経営意思決定や債権者の融資意思決定等,特定の者の依頼に基づき行われる任意監査においては,個々の要請に応じて個別具体的な指摘・助言・対応策等を記載するために,長文式監査報告書が採用される。  監査上の主要な検討事項*¹を記載する実務の導入以前は,我が国を含め,国際的に採用されてきた短文式監査報告書は,基本的に,標準化された定型的な文言のみからなるものであった。この点,現在では,監査上の主要な検討事項として被監査会社固有の事項が記載されることにより,監査報告書は以前よりも長文化しているが,監査意見を簡潔明瞭に記載する枠組みは維持されている。 *¹)監査上の主要な検討事項について,詳細は第4章第3節2で扱う。

  • 9

    監査基準・第四 報告基準・一 基本原則2 p190

    監査人は,財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適正に表示されているかどうかの判断に当たっては,経営者が採用した会計方針が,企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかのみならず,②その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか並びに財務諸表の表示方法が適切であるかどうかについても評価しなければならない。

  • 10

    企業会計の基準とは p190

    企業会計の基準は,財務諸表の作成に当たって準拠すべき会計処理の原則及び手続を定めたものである*¹。  そのため,企業会計の基準は,二重責任の原則の下,適正な財務諸表を作成する責任を負担する経営者にとっては財務諸表の作成において準拠するべき規範として,財務諸表の適正性に関する意見を表明する責任を負担する監査人にとっては財務諸表の適正性判断において準拠するべき規範としての意義を有している。  企業会計原則の設定前文では,その意義について,以下のように示されている。 1 企業会計原則は,企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって,必ずしも法令によって強制されないでも,すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である。 2 企業会計原則は,公認会計士が,公認会計士法及び証券取引法に基き財務諸表の監査をなす場合において従わなければならない基準となる。 *¹)企業会計の基準には,例えば,企業会計審議会が設定する企業会計原則,企業計基準委員会が設定する企業会計基準・適用指針や一般的な実務慣行及び業界の実務慣行等が含まれる。

  • 11

    財務諸表の適正性判断上の評価事項 p191

    以下,経営者が採用した会計方針及び表示方法*¹に関して,前掲の報告基準が掲げている財務諸表の適正性判断上の評価事項の各々について見ていく。 ① 経営者が採用した会計方針が,企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうか(会計方針の企業会計の基準への継続的な準拠性)  前述したように,企業会計の基準は,監査人にとって財務諸表の適正性判断において準拠するべき規範としての意義を有している。  したがって,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,経営者が採用した会計方針が,企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかを評価する*²。 ② その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか(会計事象や取引の実態の反映の適切性)  経営者が採用した会計方針が企業会計の基準のいずれかに準拠し,かつ,継続的に適用されていたとしても,その選択や適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものでない場合には,作成される財務諸表は,単に形式的に適正要件を満たしているに過ぎず,財務諸表の利用者の経済的意思決定を誤導するおそれがある。  したがって,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,単なる法形式でなく,会計事象や取引の実態を適切に反映しているかどうかを評価しなければならない(実態に即した判断は,実質的判断(詳細は次頁参照)と呼ばれる。)。 ③ 財務諸表の表示方法が適切であるかどうか(表示方法の適切性)  経営者が採用した会計方針が企業会計の基準に準拠して継続的に適用され,かつ,その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであり,その実態を適切に反映した財務諸表数値が導かれていたとしても,財務諸表の表示方法が不適切である場合,財務諸表の利用者の経済的意思決定を誤導するおそれがある。  したがって,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,さらに財務諸表における表示が利用者に理解されるために適切であるかどうかについても評価しなければならない*³。 *¹)会計方針とは,財務諸表の作成に当たって採用した会計処理の原則及び手続をいう。また,表示方法とは,財務諸表の作成に当たって採用した表示の方法(注記による開示も含む。)をいい,財務諸表項目の科日分類,科目配列及び報告様式が含まれる。 *²)監査人は,財務諸表が,企業会計の基準及び財務諸表に適用される法令等を含め,適用される財務報告の枠組みに準拠して作成され,適正に表示されているかどうかを評価する。 *³)表示方法の適切性の評価には,経営者が採用した重要な会計方針が適切に注記されているかどうかや,重要な取引や会計事象が財務諸表に及ぼす影響について財務諸表の利用者が理解するために適切な注記がなされているかどうかが含まれる。

  • 12

    企業会計の基準と実質的判断 p192

    実質的判断には,企業会計の基準の枠内におけるものと枠外におけるものとがある。 ① 企業会計の基準の枠内における実質的判断  前述したように,監査人は,財務諸表の適正性を判断するに当たっては,財務諸表が会計事象や取引の実態を適切に反映しているかどうかを評価しなければならない。  そのため,例えば,企業会計の基準上,二つの会計事実に対して複数の会計方針からの選択適用が認められている場合には,経営者による会計方針の選択及びその適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかを評価しなければならない。  また,企業会計の基準に準拠した会計方針が継続的に適用されている場合であっても,企業の事業内容又は企業内外の経営環境に重要な変化があることを識別した場合,適用されている会計方針が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかについて検討しなければならない。 ② 企業会計の基準の枠外における実質的判断  監査人には,以下に示すような企業会計の基準の限界に起因して,明文化されている企業会計の基準の枠外において実質的判断が求められることがある。  a)企業会計の基準は,あくまで一定時点における公正な会計慣行や財務諸表の利用者の情報要求を規化したものであるため,新たな会計慣行や情報要求に適時弾力的に対応することはできない(弾力性の限界)。  b)企業会計の基準において特定個々の状況に応じて適用すべき会計方針の全てを詳細かつ網羅的に規定することは現実的に不可能であるため,企業会計の基準は,あくまで一般的に想定される会計事実を対象とする規範であるに過ぎない(網羅性の限界)。  このような限界に起因して,監査上,会計事象や取引について適用する企業会計の基準が明確でない場合や企業会計の基準において詳細な定めがない場合が想定される。この場合,監査人は,経営者が採用した会計方針が当該会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるかどうかについて,経営者との討議(ディスカッション),関連資料の閲覧等により,関連する企業会計の基準の趣旨*¹を踏まえて判断しなければならない。  ただし,この取扱いは,企業会計の基準からの離脱を容認するものではなく,適用する企業会計の基準が明確である場合又は企業会計の基準において詳細な定めがある場合,当該企業会計の基準に準拠しない基準を会計方針として選択し適用することはできない*²。 *¹)企業会計の基準を含む,財務報告の枠組みは、全ての取引や事象の会計処理又は表示・注記の方法を明記していないことがあるが,通常,一般的な原則を含んでいる。一般的な原則は,財務報告の枠組みにおける要求事項の根底にある概念と整合する会計方針を策定し適用するための基礎を提供する。 *²)我が国では認められていないが,国又は基準によっては基準からの離脱(基準に従わない会計処理を行うこと)が容認されていることもある。基準からの離脱については,後述p.297参照。

  • 13

    意見表明と意見不表明 p193

    報告基準は,以下のように,自己の意見を形成するに足る基礎が得られていることが監査意見を表明するための条件であることを明らかにしている。 第四 報告基準一 基本原則3  監査人は,監査意見の表明に当たっては,監査リスクを合理的に低い水準に抑えた上で,自己の意見を形成するに足る基礎を得なければならない。 第四 報告基準一 基本原則4  監査人は,重要な監査手続を実施できなかったことにより,自己の意見を形成するに足る基礎を得られないときは,意見を表明してはならない。  監査人と個人的信頼関係のない利用者が,監査人の表明する意見を無条件に信頼して受容するのは,制度として実施される監査において表明される全ての意見が財務諸表の頼性を合理的に高い水準で保証しているであろうことに対する社会的信頼があるからにほかならない。そのため,監査人は,監査意見の表明に当たっては,意見表明の基礎を得なければならず、一方で,意見表明の基礎を得られないときは,監査意見を表明してはならない。

  • 14

    補論:意見不表明の規定の必要性 p194

    監査の目的は,利用者の財務諸表に対する信頼性を高めるために監査意見を表明することにあり,被監査会社は監査済み財務諸表の開示による取ら関係の円滑化という便益を享受するために監査を受容する。したがって,監査意見が表明されない場合には,監査の目的が達成されないのはもちろんのこと,被監査会社が監査を受容する意図にも反することとなる。  しかしながら,監査人に帰責事由なく必要と判断した監査手続を実施できなかった結果として,意見表明の基礎が得られない場合も考えられる。このような場合にまで監査人に対して意見表明を強制することは,監査人にとって過重な責任負担となる。そのため,監査人には,意見を表明する以外にも,意見を表明しないという選択が許容されなければならない。  また,意見表明の基礎のない保証水準の低い意見は,財務諸表の利用者の経済的意思決定を誤らせるおそれが高く,そのような意見の存在を許容した場合には,財務諸表監査全体の社会的信頼性を害することにもなりかねない。そのため,その基礎が得られていないままに意見表明することは禁止されなければならない。  以上から,「自己の意見を形成するに足る基礎を得られないときは,意見を表明してはならない」*¹との規定が必要となる。 *¹)単にその基礎が得られていない場合に意見を表明しないことを許容するのみであれば,意見を表明「しないことができる」と規定すれば足りるが,その基礎が得られていない意見の表明は禁止されなければならないことから,意見を表明「してはならない」と規定されている。

  • 15

    __________ p195

    第3章 第2節 監査報告書の記載事項