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植物育種学
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  • 問題数 96 • 7/16/2024

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  • 1

    メンデルが導き出した遺伝の法則について詳細に説明せよ。

    ①顕性の法則 親から子へと伝わる遺伝形質は、生殖細胞(花粉や卵細胞)の中に存在する遺伝子によって支配されており、子は父親と母親の要素を一つずつもらって形質が決まる。 両親からもらった一組の要素の片方が優先的に子の特徴としてあらわれる。 ②分離の法則 配偶子形成の際に、アレル(遺伝子座)がそれぞれの配偶子細胞に分離する。 ③独立の法則 異なる形質を支配する遺伝子は、互いに独立して遺伝し、同じ確率で配偶子を作る。

  • 2

    遺伝子間の相互作用について説明せよ。

    アレル(対立遺伝子)間の相互作用 ①不完全顕性 顕性遺伝子が潜性遺伝子を十分に補償することができない。 花の色が、F2世代においてAA(赤):Aa(桃色):aa(白色)=1:2:1の比率で現れる。 ②超顕性 遺伝子型Aaのヘテロ個体が、ホモ個体(両親)を越えた形質を示す。雑種強勢を説明する理由の一つ。 ③共顕性 両親が子となる形質を示し、F1(雑種第一代)においてその両方の形質が発現すること。アレル(対立遺伝子)は両方とも完全に発現している。 複アレル(複対立遺伝子) 一つの遺伝子座に対立遺伝子が3つ以上存在する。 非アレル間の相互作用 異なる遺伝子座に存在する2つの遺伝子間で相互作用が働き、F2で推定される分離比AB:Ab:aB:ab=9:3:3:1から外れること検出される。 ①上位(エピスタティック) 一方の遺伝子Aが片方の遺伝子Bの作用を覆い隠す。潜性アレルaaホモ接合の時、B遺伝子の作用が覆い隠され、aaBB、aaBb,、aabbの表現型は全て同じとなる。分離比は、9:3:4 同じ形質に関わる遺伝子の相互作用 ①重複遺伝子 2組の遺伝子が全て同じ形質に関わる時、AーBー、A-bb、aaBーが全て顕性の表現型を示す。 F2での分離比は15:1 ②補足遺伝子 各遺伝子が一連の反応過程の異なる段階に関与しており、2つの遺伝子の内、片方が潜性である場合は、反応全体が停止して、2つの遺伝子が潜性の時の表現型と同じになる。F2での分離比はAB:(Ab+aB+ab)=9:7 ③相加遺伝子 2つの優性対立遺伝子が同じ効果を持ち、それが加算的に働く F2での分離比はAB:(Ab+aB):ab=9:6:1 ④抑制遺伝子 一方の雄性対立遺伝子Aがもう一方の優性対立遺伝子Bの効果を打ち消す。 F2での分離比は、(AB+Ab+ab):aB=13:3 ⑤優性上位 上位の優性対立遺伝子Aが下位の優性対立遺伝子Bの効果を隠す。劣性ホモ接合aaの時にBあるいはb対立遺伝子の表現型が生じる。 F2での分離比は(AB+Ab):aB:ab=12:3:1 ⑥劣性上位 優性対立遺伝子Aが機能型で、劣性対立遺伝子aは機能を持たないが、劣性ホモ接合aaの場合に、もう一方の優性対立遺伝子Bの効果を隠して劣性上位を示す。 F2での分離比は、AB:Ab:(aB+ab)=9:3:4

  • 3

    植物の基本構造について説明せよ。

    胚発生時に決定される。 成長後の地上部(シュート)は茎頂分裂組織、地下部は根端分裂組織に由来する。胚から成熟した植物体になる過程では、体細胞分裂が行われ、植物の成長を支える。維管束植物は、ファイトマー(葉、腋芽、節間)からなる繰り返し構造が積み重なって形成。 茎頂分裂組織は多層構造となっており、外側からL1、L2、L3層と呼ばれる。最も外側にあるL1層は表皮細胞を形成する。 茎頂分裂組織は、腋芽分裂組織は栄養成長期から生殖成長期にかけて、花序分裂組織、花芽分裂組織に転換する。 花芽分裂組織には、花器官が形成され、雄ずい(葯)には花粉が、雌ずい(子房)には卵細胞が形成。

  • 4

    植物の配偶子形成について説明せよ。

    配偶子形成は、子房の中にある胚珠と、葯での減数分裂によって行われる。葯の中で、複相(2n)の花粉母細胞が減数分裂を経て4個の小胞子(n)を生じる。小胞子はさらに減数分裂し、雄原細胞と栄養細胞になり、雄原細胞はもう一度分裂して2個の精細胞となり、成熟して花粉となる。 胚珠では、胚のう母細胞(2n)も減数分裂を経て、4個の胚のう細胞(n)となるが、そのうち3個は消失し、残った一つが3回の体細胞分裂を経て、8個の単相細胞からなる胚のうとなる。胚のうは、1個の卵細胞、両側2つの助細胞、中央の2つの極核、卵細胞の反対側にある3つの反足細胞が存在する。

  • 5

    受精について説明せよ。

    花粉は雌ずい先端の柱頭につくと膨潤、発芽し、花粉管を発達させる。花粉管は胚のう付近で助細胞がつくる物質により誘引され、胚脳内に侵入する。花粉管に存在する2つの精細胞のうち、1つが胚のう内の卵細胞と受精し、複相(2n)の胚になる。もう一方の精細胞は胚のう内の中央細胞(2n)と受精し、3nの胚乳となる。 胚と胚乳が作られる受精過程を重複受精という。 胚はメンデルの法則に従い、両親から遺伝子を1コピーずつ受け取るが、胚乳は母親由来の遺伝子を2コピー、父親由来の遺伝子を1コピー受け取るため、メンデルの法則に従わない。

  • 6

    有性生殖と減数分裂の関係性について説明せよ。

    遺伝子は、細胞内の染色体上に存在し、体細胞には、遺伝子の組成がほぼ同じ一対の相同染色体存在する。 例えば、クレピス(フタマタタンポポ)では染色体6本存在し、配偶子形成時には、一対の相同染色体が分かれて一本ずつ娘細胞に分配されるため、各配偶子は3本の染色体を持つことになる。 2つの配偶子が受精して、受精卵を形成することにより、親と同じ6本の染色体をもつようになる。

  • 7

    有性生殖によって、遺伝的多様性が生まれるメカニズムについて説明せよ。

    ①減数分裂により様々な染色体の組み合わせを持つ配偶子が生まれる。 ②受精により様々な配偶子の組み合わせから個体が生まれる。 ③減数分裂時における相同染色体の乗換えによって親とは異なる遺伝的組成の染色体が生まれる。

  • 8

    体細胞分裂の過程について説明せよ。

    細胞分裂を行う細胞は、染色分体(DNA)を間期に複製し、2本の姉妹染色分体を形成、環状構造をしたコヒーシンによってまとめられている。間期を経て、姉妹染色分体を分けるM期へと移行する。 M期は、前期、前中期、中期、後期、終期の5つに分けて行われる。 前期:クロマチンの凝縮 タンパク質コンデンシンの働きでクロマチンがループ状にまとめられ、凝縮する。 前中期:紡錘体の形成 紡錘体極から微小管が伸長し、染色体のセントロメアと結合する(紡錘糸の形成)。 残りの極微小管は紡錘体極から半谷川を目指して伸長し、両極から伸びたものが赤道面付近で重なり合う。 微小管から構成される細胞骨格を紡錘体と呼ばれる。 中期:染色体が赤道面に並ぶ。 全ての染色体が紡錘糸によって両極に引っ張られ、中央の赤道面上に並ぶ。微小管は染色体のセントロメアに結合して安定化。 セントロメア内のコヒーシンの働きによって姉妹染色分体が両極から引き寄せられて、赤道面に並ぶ。 後期:姉妹染色分体が両極に向けて移動する。 姉妹染色分体をつないでいたコヒーシンが活性型セパラーゼの働きで分解、セントロメアが分離し、染色分体は両極に向けて移動する。 セパラーゼは通常セキュリンによって不活化されているが、Cdc20により活性化したAPC(後期促進複合体)がセキュリンを分解することで不活化が解除される。 終期:染色体の脱凝縮、娘細胞の形成 紡錘糸が消失し、染色体の脱凝縮が始まる。体細胞分裂の最後の過程として、娘細胞の間に新しい細胞壁が構築される。 極間微小管が隔膜形成体を作り、そこに細胞壁の成分を持ったゴルジ体小胞が微小管に結合、赤道面領域に集結して初期細胞板が、周囲には微小管が再形成される。 ゴルジ体小胞と結合することで細胞板が拡大し、母細胞の細胞壁と融合することで新たな細胞壁となり、娘細胞が2つに分裂する。

  • 9

    減数分裂と体細胞分裂の違いについて説明せよ。

    体細胞分裂は1回の分裂であるが、減数分裂は2回起こる。, 体細胞分裂では、染色体数は変わらないが、減数分裂では配偶子形成のために染色体数が半減する。, 体細胞分裂は、姉妹染色分体の分配であり、減数第一分裂は、相同染色体の分配である。姉妹染色分体は減数第二分裂で分配される。, 減数分裂では相同染色体が対合し、乗換えにより染色体の一部を交換するが。体細胞分裂では相同染色体の対合、乗換えは見られない。

  • 10

    減数第一分裂の過程について説明せよ。

    細糸期(レプトテン期) 間期で分散していた染色体は凝縮し、細長い糸状として観察できる。, 合糸期(ザイゴテン期) 2つの相同染色体がファスナーを閉じるように結びつき、相同染色体が対合する(二価染色体)。染色体の間には、シナプトネマ構造が形成。, 太糸期(パキテン期) 相同染色体が全長にわたって、対合する。この時、シナプトネマ構造には組換え小節が形成され、この部分で染色分体が交換される(乗換え), 複糸期(ディプロテン期) 対合がほどかれ、2本の相同染色体は部分的に離れるが、乗換えが起こった部分は結合したままであり、キアズマが形成される。 染色体の末端(テロメア)は核膜に結合したままである。, 移動期(ディアキネシス期) 染色体は凝縮して太くなり、核膜から離れる。, 第一分裂後期 相同染色体の2つの姉妹セントロメアが同じ紡錘体の極に安定して付着。両極に引っ張られる。 染色体腕部のコヒーシンはセパラーゼによる分解を受けるが、姉妹セントロメアはシュゴシンによって保護される。, 第一分裂終期 各染色体がそれぞれの極に集まると、染色体がほどかれて核膜を作り、細胞壁で二分されて、2つの娘細胞となる。

  • 11

    ゲノム説について説明せよ。

    ゲノムは生物の生存に最低限必要な遺伝学的単位であり、1組の染色体のセット、そこに含まれる全遺伝情報である。, 二倍体の生物には生殖細胞(単相n)には1ゲノム、体細胞(2n)には2ゲノム存在する。体細胞に2ゲノムより多くのゲノムを持つ生物を倍数体という、, 二倍体では、減数分裂前期に相同染色体同士で対合、二価染色体を形成する。 雑種において、非相同染色体が存在する場合には、一価染色体が形成。, 染色体を核ゲノム、オルガネラに存在する細胞質ゲノム(色素体、ミトコンドリア)と区別

  • 12

    乗換えの意義について答えよ。

    乗換えの結果、親と異なるアレルの組み合わせを持つ組換え型が生じることを遺伝的組換えという。有性生殖が遺伝的多様性を生み出す上での重要なメカニズムの一つであり、集団として生物が環境への適応力を高める上で重要な役割を果たしている。

  • 13

    連鎖地図について説明せよ。

    検定交配(潜性ホモ接合体都の交配)における組換えが起こった個体数は、組換え染色体数を反映していることから、組換え型の割合を染色体上の遺伝子間の距離として定義する。 遺伝子間で乗換えが1回起こる距離を1モルガンとして、その100分の1をセンチモルガンとする。

  • 14

    ゲノムと倍数性の関係について説明せよ。

    多くの生物ではゲノムは2セット存在し、2倍体である。ゲノム1セットの染色体数を基本数xで表す。例として、シロイヌナズナは二倍体で10本の染色体を持つことからx=5となる。 偶数倍数性種は正常に種子をつけることができるが、奇数倍数性は減数分裂に異常をきたし、花粉や卵が正常に形成されず、稔性(交配により子孫を作ること)が極めて低くなる。 そのため、奇数倍数性は減数分裂を行わない繁殖方法、栄養繁殖やアポミクシスを行う場合が多い。 生殖細胞は体細胞の半分のゲノムを持っており、これを単数体という。ただし、これは一倍体ではない。例えば同質六倍体の単相体は三倍体である。

  • 15

    ホモログ遺伝子、オルソログ遺伝子、、パラログ遺伝子について区別して説明せよ。

    ホモログ遺伝子とは、塩基配列あるいはアミノ酸配列が類似した異なる遺伝子であり、異なる生物種間で共通の遺伝子から進化した同じ機能を持つ遺伝子のことをオルソログ遺伝子という。一方で、同じ生物種内の相同遺伝子をパラログといい、多重遺伝子族を形成する。

  • 16

    シンテニーについて説明せよ。

    異なる種間で遺伝子の並びが保存されていること。基本的に互いにオルソログの関係にある遺伝子群により形成される。種間の関係が近いほど、シンテニーは広範囲で正確に保存されている。 シンテニーは進化の過程で染色体レベルの再編成により失われるが、短い領域のシンテニー(マイクロシンテニー)は遠縁の生物種間であっても保存されている。

  • 17

    オミクス解析について説明せよ。

    オミクス解析とは、生物の持つ物質全てを網羅的に解析することである。オミクス解析の内、遺伝子発現(RNA)を解析することをトランスクリプトソーム解析、全タンパク質を解析することをプロテオーム解析、全ての代謝産物を解析することをメタボローム解析という。

  • 18

    完全顕性と不完全顕性の違いを述べよ。

    半分量の遺伝子発現(ヘテロ接合)でも野生型の表現型を示すか、あるいは機能が半分しか発揮できないために中間の表現型になるかの違いがある。

  • 19

    機能喪失型変異、機能獲得型変異について説明せよ。

    機能喪失型変異は、遺伝子がその機能を失う変異であり、ほとんどが潜性である。完全に機能を失ったものをnull変異といい、部分的に機能を失ったものをleaky変異という。leaky変異には、高温下でたんぱく質の構造が不安定になって起こる温度感受性変異体も含まれる。 また、プロモーター領域における変異も遺伝子の発現量や発現部位は変化しても、その機能が完全に失われることはない。 機能獲得型変異は、遺伝子に変異が入ることで新たに機能を獲得する変異であり、多くの場合顕性・不完全顕性である。 例として、タンパク質の機能抑制ドメインに変異が入り、常に活性化される(constitutive active型)や機能を失うだけでなく他のタンパク質の機能までも抑制する(dominant negative型)が挙げられる。

  • 20

    遺伝子レベルの突然変異について説明せよ。

    非同義置換:コドンが指定するアミノ酸が変化, 同義置換:コドンが指定するアミノ酸が変化しない。コドンの3番目の塩基に起こる。, ナンセンス変異:終始コドンを生じる塩基置換。タンパク質の合成・伸長が停止, 読み飛ばし置換(リードスルー):終始コドンが他のアミノ酸に置換する。結果、C末端に余分なアミノ酸配列を持つタンパク質が合成, トランジション:プリン塩基が別のプリン塩基に置き換わること。, トランスバージョン:プリン塩基(A,G)からピリミジン塩基(C,T)、またはその逆の置換が生じること。

  • 21

    染色体レベルの変異について説明せよ。

    多くの場合、DNA損傷の修復過程で生じ、逆位と相互転座が挙げられる。 逆位は、1つの染色体の一部の領域が逆方向になった変異であり、同じ染色体上に生じた2か所のDNA二本鎖切断末端が修復過程で誤って結合することにより、切断点に挟まれた遺伝子領域が反対側になることをいう。 相互転座は、異なる染色体間で染色体の一部を交換したことで起こる変異である。これは、異なる染色体上に生じたDNA二本鎖切断末端が誤って結合することで起こる。

  • 22

    DNAメチル化について説明せよ。

    DNAメチル化は、プロモーター領域にヘテロクロマチン構造を誘導することで遺伝子発現やトランスポゾンの転移を抑制する。 メチル化には、新しい位置のシトシンをメチル化するde novoメチル化とDNA複製後に同じ位置をメチル化する維持メチル化の2種類がある。 DNA複製は半保存的に行われるため、二本鎖DNAの内、片方はメチル化されているが、新しく合成された鎖はメチル化されていない。維持メチラーゼはメチル化シトシンを認識して、その反対側にあるシトシンをメチル化することでメチル化状態を維持する。

  • 23

    順遺伝学的な解析のうち、トランスポゾンタギングとポジショナルクローニングについて説明せよ。

    トランスポゾンタギング トランスポゾンの挿入によりランダムな変異を導入。変異の原因遺伝子の特定は、トランスポゾンが転移している集団の中から変異体を選抜し、トランスポゾンに隣接している破壊された遺伝子断片を同定する。 トランスポゾンの挿入前の元の遺伝子が変異の原因遺伝子である。, ポジショナルクローニング法 少数の固体を用いて変異遺伝子の位置を推測し(ラフマッピング)、その領域に焦点を当てて多くの固体を用いて精密な位置を特定する(高精度マッピング)。 変異遺伝子は、必ずホモ接合体になっていることを利用。

  • 24

    逆遺伝学的解析におけるTILLING法について説明せよ。

    表現型が現れないヘテロ接合体でも変異遺伝子を特定することが可能になる。 ①変異原処理した集団の複数系統DNAをまとめて検出し、それを鋳型にしてPCR反応により特定領域を増幅させる。 これを一本鎖に解離したのち、再び二本鎖に戻す。これにより、野生型の塩基配列と変異型の塩基配列が二本鎖を形成することになるが、変異箇所では、相補的に結合することが出来ない(ミスマッチ部位)。 このミスマッチ部位を特異的に認識して切断するCELI酵素で切断し、電気泳動法を用いてPCRで増幅された断片より短い断片、つまりミスマッチ部位が切断された断片を検出することで、鋳型DNAに用いた系統には変異体が存在することを確認できる。

  • 25

    早晩性・低温要求性について説明せよ。

    早晩性とは、作物を播種・植え付けしてから収穫するまでの期間の長短を表す。期間の短いもの、中程度のもの、長いものをそれぞれ早性、中性、晩性という。 ムギ類やアブラナ科植物などの冬作物の品種には、冬期に一定期間低温にさらされることで花芽形成が開始する低温要求性を示す。作物ごとに異なり、春化に必要な低温期間の長さを決める性質を播性という。

  • 26

    環境ストレス耐性について説明せよ。

    作物栽培で求められるストレス耐性は、ストレス条件下で生存できるかではなく、栽培環境でストレスにさらされても十分な生産性を発揮できる能力である。 植物が持つ環境ストレスへの戦略として、耐性と回避性がある。耐性はストレスを一時的に受ける場合、その間ストレスに耐える能力で、回避性は作物がストレスを受けないように反応することでストレスを回避する能力である。 例として、乾燥ストレスに対する耐性としては、乾燥条件下で植物が脱水しないように細胞内の浸透圧を高めて膨圧を維持する能力が挙げられる。 乾燥ストレスに対する回避性としては、根を土壌水分量が多い地中深くまで伸ばす深根性が挙げられる。

  • 27

    植物の環境ストレス耐性について分類せよ。

    耐冷性・耐寒性・耐霜性 低温による作物の生育障害には、発芽時の遅延、栄養成長期の生育不良、生殖成長期の不稔や登熟不良などが挙げられる。 これに対して、低温発芽性が寒冷地での畑作物やイネの直播栽培における苗立ちの安定化に寄与している。, 耐暑性 作物の生育適温以上の高温になると、呼吸量の増加と光合成量の低下により、生育阻害、開花遅延、不稔、登熟不良などが起こる。, 乾燥耐性 生理的な変化に対する耐性と形態的な変化に対する回避性を持つ。 前者は、カリウムなどの無機イオン、糖類、プロリン、グリシンベタインなどを蓄積して細胞内の浸透圧を調節する機構が挙げられる。後者は、根を深く伸長して地中深くの水を獲得する機構や葉の表面のクチクラ層を厚くしたり、気孔の数を減らすことで葉からの蒸散を防ぐ方法が挙げられる。, 耐湿性・冠水耐性 長期の降雨による排水不良が生じ、湿害、冠水害が発生する。短期間の場合は、アルコール発酵などの嫌気代謝系を活性化することで解糖系によるATP生産を促し、一時的に低酸素環境に耐えることができる。 一方で長期間にわたって、ストレス条件下に置かれると土壌中の酸素濃度低下に加えて、還元化による毒性物質の蓄積などが起こる。このため、アルコール発酵ではなく、通期組織の形成や酸素濃度が高い場所に新たに根系を構築する能力、毒性物質への耐性が必要になる。, 耐塩性 塩害の主な原因としては、高浸透圧ストレスやナトリウムなどのイオン毒性である。 浸透圧ストレスに対しては、根の細胞内に適合溶質を蓄積させて、浸透圧を調節する機構や水輸送活性の不活化により脱水を防止する機構などが挙げられる。 イオン毒性に対しては、細胞膜や液胞膜に局在するイオン輸送体によって、根の細胞内に輸送されたナトリウムイオンを細胞外に排出することや液胞内に蓄積・隔離することが挙げられる。, 酸性土壌耐性・アルカリ性土壌耐性 酸性土壌条件下では、土壌中のアルミニウムが三価イオンとなり、毒性を発揮する。これに対してコムギやオオムギでは根からリンゴ酸やクエン酸などの有機酸を分泌してアルミニウムと錯体を形成。根からのアルミニウム吸収を抑制する。, 耐病虫性・耐病性 遺伝子型、レース特異性、真正抵抗性 過敏感反応により感染部位周辺の細胞死を誘導し、病原菌の進展を防ぐ。, 耐虫性 吸汁性害虫・咀嚼性害虫 耐虫性遺伝子・ウイルス病抵抗性遺伝子

  • 28

    植物の繁殖方法について説明せよ。

    植物の繁殖法として、有性繁殖(自家受精、他家受精)、無性繁殖、アポミクシスが挙げられる。 ①有性繁殖 雄性配偶子と雌性配偶子の接合によって生じた胚から次代が形成される。自家受精は受精が同じ花の花粉と卵細胞の間で起こる場合を示し、他家受精は異なる個体の花の間で起こる場合をいう。 ②無性繁殖 地下塊茎(ジャガイモ)、りん茎(タマネギ)、腋芽(ユリ)など有性生殖器官以外の栄養器官や組織の一部から次代が発生する。次代の植物体は全て親と同じ遺伝子型を持ち、クローンと呼ばれる。 ③アポミクシス 雌性配偶子で胚のう母細胞から減数分裂を経ることなく、単為生殖的に胚が発達したり、体細胞組織の一部から直接胚が発達したり、減数分裂の異常によって受精せずに胚を形成したりすることをいう。

  • 29

    自殖性植物の育種法の種類を答えよ。

    系統育種法, 単数体育種法, 世代促進育種法, 戻し交配育種法

  • 30

    系統育種法について説明せよ。

    F2~F3の早期分離世代に良否の判定が比較的容易かつ子孫へと伝わりやすい特性(イネ:出穂期、稈長、草型、病虫害抵抗性、種子の品質、直播適性)に注目して個体選抜と系統選抜を行う。 以後のF4~F10世代でそれまでに選抜された有望系統の固定度の検定、品質、病害抵抗性などの特性検定、生産力の比較試験を行う。 個体選抜とは、分離集団、系統内の分離個体から優良な特性を持った個体を選ぶことであり、系統選抜とはきょうだい関係にある複数個体を系統単位(平均)で比較して、より優れた個体を多く含む系統を選ぶことである。 最初の分離世代であるF2世代では、全ての個体が同じ遺伝子座(Aa)の次代で系統に分かれていないので、結果として個体選抜となる。 F2で選抜した個体を自殖した系統から構成されるF3~F4世代では、最初に系統同士を比較して優れた系統を選び、次にその系統の中から優れた個体を選抜する(2段階)。 世代が進むにつれて、系統内の固定度(特定の遺伝子が集団内に100%の割合で発現する)が向上して各形質が均一になり、系統選抜の方が主体となる。

  • 31

    単数体育種法について説明せよ。

    単数体は、体細胞の染色体数が半分になっている個体を示し、通常の二倍体植物の体細胞ではゲノム(染色体)を2組持つことに対して、配偶子(花粉・卵細胞)では体細胞染色体数の半分しかもっていない。 未熟な花粉を含む葯を培地上で培養し(葯培養)、得られた単数体をコルヒチン処理することで染色体数が増加し、ホモ接合になった倍加箪笥体を作出できる。 ホモ接合の倍加単数体を多数作出することで系統育種法に比べて育種年限を短縮し、有用形質を持った個体を育成できる。

  • 32

    バルボサム法について説明せよ。

    オオムギの野生種Hordeum bulbosumとオオムギを交配させることでF1の段階で野生種由来の染色体が消失し、オオムギの単数体が得られる。この単数体をコルヒチン処理することで倍加単数体を作出できる。この方法はコムギでも利用可能。

  • 33

    世代促進育種法について説明せよ。

    大きな特徴として、ヘテロ接合体が多いF2~F4の世代には選抜を行わずに植物体集団(世代)のみを集め(世代促進)、ホモ接合体が多くなるF5,F6から個体選抜を行う。 これは、形質が安定する後期世代になって初めて選抜を開始することを意味する。

  • 34

    戻し交配育種法について説明せよ。

    既存の優良な品種・系統に耐病性など単純な遺伝をする特定の形質のみを別の系統から導入したい場合に用いる。 目的の遺伝子を持った一回親に反復親を交配、作出されたF1世代を再度反復親と交配させることで反復親の染色体の中に目的の遺伝子が組み込まれたBC1、2,3を選抜する。目的遺伝子を持つかどうかは、目的遺伝子に連鎖するDNAマーカーを用いて特定する。交配をn回行って作出したBCn系統を自殖させることで有料ホモ個体を選抜し、反復親と目的遺伝子以外は全く同じ遺伝子型を持ったアイソジェニック系統を選抜する。

  • 35

    F1品種作出法について説明せよ。

    集団内で雑種強勢が十分に得られる場合に用いる。自殖性植物において雑種強勢を示す交配組み合わせが得られた場合、母側の系統の花粉を不稔にするために細胞質・核に雄性不稔遺伝子を導入し、必要に応じて父側の系統に稔性回復遺伝子を導入する。

  • 36

    多型品種作出法について説明せよ

    病害や干ばつなどの障害による極端な減収を防ぐために、複数の系統を意識的に混合して栽培することがある。 例として、病害抵抗性を高めるために複数の真正抵抗性遺伝子を個別に持つ系統を戻し交配によってそれぞれ育成し、最も有効な割合となるように混合したマルチラインとして栽培することで圃場全体の抵抗性を高めることができる。

  • 37

    他殖性植物の育種法とその種類について説明せよ。

    トウモロコシのような他殖性植物では、各世代異なる植物体同士で自然交配が起こるため、自殖性植物のように世代が進むにつれてホモ接合が進み、最終的には全ての植物体が完全なホモ接合となることは起こらない。 また、他殖性植物において数世代の自殖と選抜を行うと、ホモ接合が進んで特性はそろうが、近親交配による近交弱性が起こりやすくなる。そのため、他殖性植物では、品種として重要な特性以外は遺伝的に固定していない(割合が低い)系統や近交系統(近親交配を繰り返して得られた、固定度が高く弱性の少ない系統)間の交配で得られた雑種系統を実用品種として用いる。 他殖性植物の育種法には、集団改良法、雑種強勢育種法、家系選抜法、循環選抜法と相反循環選抜法、剛性品種育成法が挙げられる。

  • 38

    集団改良法について説明せよ。

    既存の育種素材あるいは交配によって新たに得られた分離集団の中から、育種目標にかなう特徴を持ち、収量が高い個体を選抜して(個体を選抜)、互いに交配して集団をつくる操作を繰り返すことで集団の全体としての能力を高める。 個体選抜には、収量や化学成分の含有率の他に、評価しにくい形質に関してはきょうだい個体が持つ能力、その個体由来の種子を育成した次代系統の能力を見て行う。

  • 39

    雑種強勢が生じる理論について説明せよ。

    超優性 ヘテロ接合体の方がホモ接合体よりも強い形質を示す。 同一遺伝子座内においてヘテロ接合の対立遺伝子の相互作用が有利に働き、対立遺伝子Aaがそれぞれ異なる性質を示すためにヘテロ接合体がホモ接合体よりも優れた形質を示す。, 優性遺伝子連鎖説 両親が持つ生存に不利な劣性遺伝子がF1世代において相手が持つ優性遺伝子との組み合わせでヘテロ接合の状態となり、生存に不利な遺伝子の発現が抑えられる。, エピスタシス説 それぞれの親系統由来の非対立遺伝子間での相互作用が1つの形質に集中し、これらの形質に関わる優性対立遺伝子がF1世代であつまり、優れた形質を示す。

  • 40

    雑種強勢育種法について説明せよ。

    在来品種や新たに交配で作った集団から個体選抜ときょうだい交配を繰り返し、耐病虫性などの優良近交系統を育成する。ただし、近交弱性により生産力は高くない。 近交弱性の程度が低いものから、F1の親として優れた形質を持つ近交系統を選抜し、近交系統間で交配を行って、雑種を作り、その中から、育種目標にあった特性を持ち、生産力も高い植物体を特定する。

  • 41

    雑種強勢育種法は毎年雑種種子生産に多大なコストがかかるという問題を抱えている。これを解決するために細胞質雄性不稔の特性が用いられる。 細胞質雄性不稔を利用した雑種強勢育種法について説明せよ。

    雑種強勢育種法では、交配の手間を省くためにソルガム・タマネギにおいて両親系統の片方を花粉が成熟しない雄性不稔にして、自然交配させることにより雑種種子を生産する方法が用いられる。 雄性不稔の仕組みは2つあり、細胞質雄性不稔と核内遺伝子雄性不稔が挙げられる。 細胞質雄性不稔においては、ミトコンドリア遺伝子に由来する細胞質雄性不稔系統、同じ遺伝子型で正常な細胞質を持つ可稔の維持系統、核ゲノム上に稔性回復遺伝子を持った稔性回復系統の3種類の系統が必要である。 ここで、細胞質雄性不稔系統は正常な細胞質を持った維持系統を花粉親にして交配し、系統を維持し続ける必要がある。さらに、稔性回復遺伝子を持つ稔性回復系統を花粉親にして細胞質雄性不稔系統と交配させることで可稔のF1雑種を作出する。 核内遺伝子に由来する雄性不稔では、雄性不稔に関わる核内遺伝子(潜性)をtで表し、そのアレルで可稔を表す核内遺伝子(顕性)をTで表す。種子繁殖植物の場合、雄性不稔系統(tt)を維持するためには、その維持系統(TT)と交配して作出したF1雑種を自殖してF2個体の中からttホモ接合型の不稔個体を選抜する方法が必要である。 また、雑種をつくるための相手系統と圃場で自然交配させる場合、ttとTTの交配で作ったF2個体の中からttホモ接合型の不稔個体を残して他のTTやTtの遺伝子型の個体を開花前に除去する作業が必要である。

  • 42

    家系選抜法について説明せよ。

    家系とはきょうだい関係にある個体のグループを指し、両親が同じ個体のグループを全きょうだい家系、母親は共通だが、花粉の由来を特定できない場合を半きょうだい家系という。家系育種法では目標とする形質の個体の家系の平均値によって家系単位で評価し、選抜することに由来する。 全きょうだい選抜法では、目的とする集団から優良な個体を選んで1対ずつ交配し、F1世代の種子の一部を交配組み合わせごとに栽培して特性を評価する。優良な交配組み合わせの系統を複数選んだら、これらのF1世代の種子を等量ずつ混合して放任受粉させて改良集団とする。この1サイクル3世代を必要なだけ繰り返し、継続的に集団を改良する。 半きょうだい選抜法は、花粉の由来が特定できない放任受粉の集団の個体を選抜する(母系選抜法)。 この方法には2種類あり、一つ目の方法では、選抜した個体から播種し、次の世代で個体別に系統を育成して不良な系統を開花前に除き、優良な系統を選抜、その種子を混合して次の放任受粉集団とする。 もう一つの方法は、放任受粉集団から優良な個体を選抜、次の世代で種子の一部を系統栽培し、反復のある系統平均値で評価する。優良な系統の第1世代の残りの趣旨を等量混合して第3世代目を育成。新たな放任受粉集団とする。

  • 43

    循環選抜法と相互循環選抜法について説明せよ。

    循環選抜法は、分離集団の中から予め決めた検定系統の中で優れた組み合わせ能力を持つ個体を選んでその自殖系統を互いに交配して次の分離集団を育成する操作を繰り返すものである。 操作を繰り返す中で、様々な変異を含んでいた集団は次第に検定系統との交配で収量が高く、特性の均一な雑種を生産する集団に改良される。 相互循環選抜法とは、特定の検定系統の代わりに分離集団をもう一つ設けて、互いを検定系統として使いながら、組み合わせ能力を高める方法である。

  • 44

    合成品種育種法について説明せよ。

    多数の素材集団から特性の高い優良な系統を用いて、隔離圃場内で系統間の無作為交配を行い、生産力と栽培特性などを評価して選抜した5=10系統の親系統を何代か放任受粉して1つの品種とする方法である。

  • 45

    コルヒチン処理が倍数体の作出に用いられる理由について説明せよ。

    コルヒチン処理を行うことで、成長点を構成する一部の細胞で紡錘体の形成を阻害し、染色体の両極への分離・移動が抑制される。 これにより染色体数が倍加し、元の植物が二倍体であれば、倍加した細胞から発達した部位は四倍体となり、この部位についた花では、4xの細胞から2xの卵細胞と花粉が形成され、これらが受精すると四倍体4xの子孫が出る。

  • 46

    育種に同質倍数体を用いることの利点と問題点について説明せよ。

    倍数体の個体は、元の2倍体に比べて細胞が大きくなり、個体全体あるいは栄養期間、花、種子などの生殖器官も大きくなる。 寒さや乾燥、病害虫に対する抵抗力や色素体、毒性成分アルカロイドなどの化学成分の含量が大きく変化する。 一方で、個体あたりの花の数が減少し、開花期が遅れて種子の充実度も十分でない場合が多い。

  • 47

    同質三倍体の利用例について説明せよ。

    同質三倍体では、減数分裂時の相同染色体の対合と両極への配分が不規則であるため、正常な生殖能力を持つxあるいは2xの染色体粒を持つ配偶子が形成されない。この現象を利用して種なしスイカの育成などが行われる。

  • 48

    倍加単数体を利用した植物の性のコントロールについて説明せよ。

    アスパラガスの雄株が作る花粉の内、Yを持つ花粉から発生した倍加個体は、超雄株YYとなり、超雄株が作る花粉は性染色体に関して全てYを持つため、これと雌株(XX)との交配でできた種子から発生する個体は全て雄株となる。

  • 49

    組織培養法について説明せよ。

    植物体の一部を取り出し、in vitroで無菌的に培養して植物組織を増殖し、元の植物体に復元する方法である。 植物の脱分化(カルス化)、細胞分裂促進にはオーキシンが用いられる。植物体の再生には、オーキシン濃度を下げるためにサイトカイニンが用いられる。

  • 50

    胚培養について説明せよ。

    受精後の未熟な胚を取り出して無菌的に培養し、幼植物体へと再生させる方法である。遺伝的に遠縁の両親を交配させると種間の生理的隔離機構が働き、植物体上で受精した胚が一定の段階以上には生育しなくなる。その胚を胚培養することで雑種個体、単数体を得ることができる。

  • 51

    ウイルスフリー化苗の育成について説明せよ。

    植物の成長点付近ではウイルスが存在しないか、濃度が低いことを利用する。茎頂培養法では、植物体の成長点のみを無菌的に取り出して培養し、ウイルスフリー化した植物体を大量に増殖させる。 茎頂培養法は、植物の大量増殖にも用いられる。増殖が難しいランなどの園芸植物において、細胞分裂活性が高い茎頂、側芽、休眠芽を用いて茎頂培養法を実施することで遺伝的に同じ形質を持つ栄養体を作成、増殖することができる。この方法により得られた植物をメリクロンといい、作出した苗をメリクロン苗という。

  • 52

    育種におけるDNAマーカーの利用について説明せよ。

    DNAマーカーは品種間でのDNA配列の違いを利用している。植物体でその形質が現れているかどうかに限らず、その形質と強く連鎖しているDNAマーカーがあれば、植物体が持つ形質を判定できる。

  • 53

    生殖的隔離について説明せよ

    種の保全対象として、雑種植物の発生を抑制する現象。交雑が可能な生物学的集団は共通の遺伝子プールを構成し、その中で遺伝子の交換が行われる。雑種を作ることが難しい種間、属間では互いに異なる遺伝子プールを持つと捉えることができる。 生殖的隔離が起こる原因としては、地理的・空間的隔離と生殖的隔離に分けられる。前者は、物理的に交雑が不可能な状態をいい、後者は遺伝的な違いに由来する。 生殖的隔離機構には、受精前隔離と受精後隔離がある。受精前隔離は交配後、卵の受精が阻害されることで起こり、受精した花粉が発芽しなかったり、花粉管が伸長しない状態を指す(自家不和合性は当てはまらない。) 受精後隔離は卵が受精した後に働く隔離機構であり次の3つの現象を指す。 ①受精胚が正常に発育しないために起こる雑種致死。 ②雑種個体は正常に生育するが、不稔のため子孫ができない雑種不稔。 ③雑種第一代の生育には目立った異常は見られないが、その後代が致死や生育不良を引き起こし、雑種性を示す個体が集団から消失する

  • 54

    交雑技術の順序について説明せよ。

    ①交配親の選定 交配親の組み合わせが一般的な受精によって雑種を得ることができるかを調べる。, ②開花期及び開花時刻の同調 日長の変化に反応して開花が誘導される日長感応性の高い植物では、日長を制御し、開花の促進、抑制によって開花期をそろえる必要がある。, ③母本となる植物の除雄 人工授粉を行う前に母本品種の花粉が受粉して自殖種子ができることを防ぐ必要がある。 雌雄異花、雌雄異株、雄性不稔系統、自家不和合性系統を用いる場合は、開花前に葯を取り除く必要はないが、多くの作物では、開花前に除雄により葯を取り除く必要がある。, ④人工受粉と交雑組み合わせのラベル付け 人工受粉に用いる雌ずいは、成熟して受粉に適したものを用いる。花粉も受精能力の高い状態の良いものを用いる。, ⑤種子の収穫と雑種性の検定による交雑成否の確認 人工受粉後、種子が成熟したら収穫し、交雑種子の情報を記載した袋に入れて播種するまで保管する。雑種性検定により自殖種子ではないことを外観形質、アイソザイム、DNAマーカー分析を利用する。

  • 55

    遠縁交雑において、生殖的隔離による問題を解決する方法について各段階に分けて説明せよ。 両親の選択、橋渡し交雑

    ①両親の選択 受精後隔離において、胚乳の発生異常により種子が得られないことが多い。これを説明する考え方として、極核活性化説が提唱されている。これは、花粉親の精核には母本の卵核や極核を活性化する能力があり、卵核や極核では精核の活性化力に応じて反応する反応力があり、正常な胚発生には精核の活性化力と母本側の反応力の均衡が保たれる必要がある。 この説に基づき、活性化力が均衡した組み合わせの探索や片親の染色体数をコルヒチンなどの薬剤を用いて人工的に倍加するなどの操作により、交雑が可能な組み合わせを推定できる。 また、ゲノムインプリンティングに基づき、正常な胚乳が形成されるためには、胚乳における母本と花粉親のゲノムが特定の割合で存在する必要があることが提唱された。 ゲノムインプリンティングとは、配偶子が形成される過程で2つの対立遺伝子が受けるDNAメチル化修飾が異なることにより、父親由来か、母親由来かによって対立遺伝子の発現パターンが異なる現象である。 これを考慮して、シロイヌナズナの種間雑種では、DNAメチル化レベルを操作して胚乳の崩壊を防ぐことが行われる。, ②橋渡し交雑 2つの種A、Bが交雑できない時、いずれにも交雑可能な種Cと交雑して導入したい形質をAからC,CからBへと受け渡すことがあり、これを橋渡し交雑という。

  • 56

    生殖的隔離を防ぐための受粉時の処理について説明せよ

    花にオーキシンやサイトカイニンなどのホルモンを処理して遠縁交雑の成功率を高める。 ポプラでは交雑可能な同種の花粉を放射線や凍結融解によって不活化(メントール花粉)、異種の花粉と混合して種間交雑に用いる。 ユリ科植物のように花柱が長く、花粉管の伸長が不十分で受精できない場合には、雌ずいを花柱の途中で切開して受粉する花柱切断受粉法が用いられる。

  • 57

    組織培養を用いた生殖的隔離の克服について説明せよ

    組織培養を用いて雑種個体を得るためには、受精前隔離を克服するための試験管内受精法や細胞融合法、受精後隔離を克服するための胚培養、胚珠培養、子房培養などが用いられる。 ①試験管内受精法 未受精の子房を表面殺菌したのち、子房から胚珠がついた胎座を切り出して、固形培地に置き、異なる種から採集した無菌状態の花粉を振りかける方法や花粉を同種の柱頭に受粉し、伸長する花粉管の先で花柱を切断して表面殺菌、花粉とは種が異なる母本の胎座と共に培養する方法がある。 ②胚培養 受精した胚珠から無菌的に幼胚を取り出して、培養することで雑種胚の成長を助ける。 ③胚珠培養 受精後の胚珠を表面殺菌した子房から無菌的に取り出し、培地上で培養することで雑種を得る。 ④子房培養 受精後の未熟な子房を無菌的に培養する。受精後の初期に異常が見られ、胚を摘出することが難しい場合に用いられる。

  • 58

    細胞融合を利用した生殖的隔離の克服について説明せよ。

    ①体細胞雑種の利用 プロトプラストをポリエチレングリコール存在下で融合し、培養して植物体を再生することで交雑できない遠縁の組み合わせで雑種を得ることができる。 ②非対称細胞融合 放射線の照射などにより、片親の染色体を断片化させた後、放射線を照射しないもう一方の親細胞と融合させる。通常、片方のプロトプラストをヨードアセトアミドで処理する。 非対称細胞融合は、片親のゲノムの一部だけが取り込まれて特定の形質が付与された植物を作出する目的で用いられる。

  • 59

    質的形質と量的形質の違い

    質的形質とは、イネのウルチ、モチのように明確に区別できる形質を指し、量的形質とは、イネの草丈などの形質の値が連続分布する形質を指す(目視での判断が難しい、統計学の手法が必要)

  • 60

    QTLマッピングの原理について説明せよ。

    最大の特徴は、QTLのゲノム上の位置に連鎖する分子マーカーを利用してQTLの位置を特定する。 今、イネの頴花数が少ない自殖系統P1と多い自殖系統P2を交雑してF1雑種個体を得る。得られた雑種個体とP1に戻し交配することでBC1集団を育成。 BC1集団内では、SNPs(一塩基多型)、SSR(単純配列繰り返し)マーカー座の遺伝子型を調べて遺伝子地図を作成し、マーカーの配列順序と地図距離を予め設定する。 戻し交配により、全てのマーカー遺伝子座は、P1親ホモ型、P1,P2ヘテロ型のどちらかになる。 頴花に関与するQTLのB遺伝子座は、P1ホモにおいてB-1/B-1、P2ホモにおいてB-2/B-2のどちらかになる。 このとき、マーカー遺伝子座がP1、P2ヘテロの個体はP1ホモの個体よりもB-1/B-2のQTLが多く含まれていると考え、ここからB-1/B-1との間で平均値に差が生まれる。 次にマーカー近くのQTLの位置を確定するために統計的検定を行う。 最初にQTLがマーカー座と同じ場所にあると仮定して、QTLの分離の通りに表現型が分かれている確率(尤度)とマーカー上にQTLが存在しない時に観察される表現型分離の確立をそれぞれ計算する。なお、両確率の比率をオッズ(常用対数LOD)という。 例えば、QTLがある場合に観察される表現型分離が実現する確率が0.1でない場合に実現する確率が0.001の時、100:1でQTLがある方が確からしいとみなされる。

  • 61

    連鎖不平衡とQTLの関係について説明せよ。

    連鎖不平衡とは特定の遺伝子の組み合わせが起こりやすくなることを意味する。 連鎖不平衡は、SNPsがQTLの近くにあるほど強く、両遺伝子座間で乗り換え頻度が低いほど、連鎖不平衡の解消(組み合わせ解除)には多くの年代を必要とする。 反対にSNPとQTLの遺伝的距離が遠いほど、連鎖平衡(組み合わせ解除)に到達するまでの世代数が少なくなる。

  • 62

    GWASについて説明せよ。

    ゲノム内には、乗り換えが頻繁に起こるホットスポット領域が存在。ホットスポットで区切られた複数の連続したSNPsが連鎖不平衡にある場合、これらのSNPsは後代にブロックとしてまとめて伝達される傾向が強い。 このようなブロックをハプロタイプ・ブロックという。 GWAS(ゲノムワイド関連解析)は、QTLがどのハプロタイプ・ブロックの中にあるかをゲノムの中から網羅的に調べる研究である。

  • 63

    同質倍数体の利用について利点と問題点を説明せよ。

    同質倍数体は、二倍体に比べて各種器官が増大し、巨大性を示す。これは、細胞容積の増大によるものである。 倍数体の利点として利用する器官の増大やビタミン、アルカロイド、タンパク質などの細胞内含有成分の増加が挙げられる。 一方で、同化、呼吸、蒸散、物質転流、刺激伝達、細胞分裂などの生理作用は、同質倍数体で減退を示し、その結果、開花や成熟が遅延する。 特に茎の減少は葉数、花数の減少となり、植物体全体の生産量の低下につながる。加えて同質倍数体では、減数分裂時に染色体が正常に移動しないために稔性が低くなり、同質三倍体では完全不稔性、高不稔性を示す。

  • 64

    中立説について説明せよ。

    分子進化における変異の種内の蓄積が、主に選抜(自然淘汰)に対して中立な変異体が遺伝的に変化して、偶然固定された結果とする。

  • 65

    種間雑種を育成する目的とその育成方法について説明せよ。

    種間雑種では、同じ属内の異なる種あるいは属が違う種の間で交配(遠縁交配)を行うことで、変異が起こる範囲を広げ、新たな形質を獲得させることを目的としてつくられる。 しかし、実際には属や種が異なる植物間では、交配しても受精率が低かったり、受精が成功しても胚形成が進行しないなどの理由により雑種の育成が難しい。 最初に遠縁交配での受精を成功させるためには、花粉を放射線や植物ホルモンで処理する方法(非対称細胞融合)、両種の花粉を混合して受粉する方法(混合受粉)、雌花の柱頭を切除して受粉する方法(花柱切断受粉法)、一方の親の花枝を人工培養で維持しながら受粉する方法が行われる。 直接雑種を作ることが出来ない2つの種の場合は、橋渡し交雑を行う。一方の種と橋渡しとなる種との間で交配を行い、できた雑種をもう片方の種と交配して目的の雑種を作出する。 受精はできても、その後の胚形成がうまくいかない場合には、胚培養法を用いることが多い。 胚培養法では、発育途上の未熟胚を胚珠のまま、あるいは胚珠から取り出して人工培地上で培養する方法で雑種個体を育成できる。 これらの方法で雑種個体を作ったとしても、遠縁種の交配では染色体の対合が不安定なため、減数分裂が正常に進行しない。これを解決するためには、培養途中の雑種胚、成長した雑種個体の成長点にコルヒチン処理を行う。 染色体数が倍加した細胞では、減数分裂が正常に進行して、生殖能力を持った配偶子が形成され、受精により異質四倍体が生じる。

  • 66

    雑種個体の実用化が難しい背景について説明せよ。

    他の種由来のゲノムを導入することで、元々のゲノムの安定性が崩れ、雑種個体では生育上不利な特性を示す。種間交配を行う場合には、片方の親が野生種であることが多く、雑種は野生種由来の実用的に不利な遺伝子を多く持つ。

  • 67

    CIRSPER/Cas9が細菌の獲得免疫機構と考えられる理由について説明せよ。

    原核生物が、外敵となるウイルスやファージの一部を取り込み、Casヌクレアーゼがその配列を認識して切断する。

  • 68

    伴性遺伝について説明せよ。

    性決定遺伝子が座乗する性染色体は、雌雄の性に付随して後代に遺伝するため、メンデルの法則に従わない。 ショウジョウバエを例にして考えると、白眼を持つ変異体に由来する眼色変異遺伝子がX染色体に座乗し、雄がその変異遺伝子を持つX染色体を受け取ったときに限り、白眼の変異体を示すことが明らかになった。 雌では、野生型と変異型のホモ接合により、変異体が生じない。

  • 69

    細胞質遺伝の定義と育種学における利用例について説明せよ。

    細胞質遺伝とは、雌性配偶子から伝達される形質の遺伝様式は、メンデルの法則に従わず、独自のDNAを持つ葉緑体やミトコンドリアに由来することを示す。 細胞質遺伝する農業形質(実用的に重要な形質)に細胞質雄性不稔が挙げられる。細胞質雄性不稔は、ミトコンドリアゲノムに生じた異常なタンパク質が原因となり、花粉形成時に必要なエネルギー供給が阻害され、花粉が不稔となる現象である。 現場での利用例として、細胞質雄性不稔の株では、花粉ができないために自殖による受精が抑制され、採取の際に必要な除雄の過程を省くことができる。 細胞質雄性不稔株においても、核内に稔性回復遺伝子座に稔性回復の優性対立遺伝子を持つ場合は、稔性花粉を作ることが可能となる。 (核細胞質雄性不稔) F1品種の採取を行う場合に、雄性稔性回復遺伝子Rをホモ接合で持つ可稔個体を交配してF1種子を作出する必要がある。

  • 70

    量的形質の特徴について説明せよ。

    量的形質は、表現型の異なる2つの個体間で交配した分離集団において測定値(表現型値)が連続的な分布を示す。 この理由については、量的形質には多様な働きを持つ遺伝子が複数関与していること、量的形質に関わる遺伝子は同じ遺伝子型であっても環境によって表現型が変化することが挙げられる。 量的形質の表現型値P=遺伝子型値G+環境効果E 表現型の分散VP=遺伝子型の分散VG+環境効果の分散VE

  • 71

    品種改良を行うにあたって、遺伝子値型の分散を調べることが重要な理由について説明せよ。

    遺伝的な変異のない純系の表現型分散は環境分散に等しい。表現型の変異は、遺伝子型の変異と環境効果による変異の合計によって決まるため、表現型の変異が大きい集団であっても、環境効果の変異が大きな割合を占めている場合には遺伝的改良の効果は期待できない。 反対に表現型変異が小さな集団でも遺伝子型変異が大きい場合は、遺伝的改良の効果を期待できる。

  • 72

    広義の遺伝率と狭義の遺伝率の違いについて説明せよ。

    広義の遺伝率は表現型値の分散において遺伝子型値の分散が占める割合として求めることができる。(Hb=VG/VP) 狭義の遺伝率は、ある集団で選抜された表現型値が後代に伝わる確率を示す。具体的には、親集団から選抜された個体群の表現型とその次世代の集団の表現型の程度から求める。

  • 73

    広義の遺伝率が高い値を示しても、目的の形質が次世代に確実に伝わるとは限らない。その理由について説明せよ。

    形質の発現について、効果の小さい遺伝子が複数関与している場合には、選抜効果(目的の形質が伝わる)が小さくなる。 遺伝子型値の分散は相加効果と優性効果によって決まる。 相加効果は、2つのホモ接合AAとaaの遺伝子型値の差であり、常に正の値を示す。一方で、優性効果はヘテロ接合Aaの遺伝子型値と2つのホモ接合の遺伝子型値の中間値との差として定義され、遺伝子型によって正の値あるいは負の値を示す。 遺伝子型値の分散VGは相加効果の分散VAと優性効果の分散VDの和として表せる。 ヘテロ接合の遺伝子型に基づく優性効果の割合が大きくなると、次世代での遺伝子型の維持は困難になる。

  • 74

    量的形質の解析法について説明せよ。

    量的形質の表現型を左右する複数の遺伝子座をQTL(量的形質遺伝子座)という。QTLを調べる方法として、QTL解析とゲノムワイド関連解析(GWAS)が用いられる。2つの方法は次世代シーケンサーの発展により、一塩基多型と挿入欠失多型をゲノム上に位置づけて捉えることができるようになったことで進展した。 QTL解析では、2系統の交雑後代を対象として、両親系統の間で検出された遺伝的多型マーカーに基づいて染色体の連鎖地図を作成し、交雑後代系統群において各多型マーカー遺伝子型(A1/A1、A1/A2、A2/A2)の間で表現型値に統計学的な差が生じる部位をQTLとして解析する。 一方で、GWAS解析では、交雑集団の育成を必要とせず、任意の交雑自然集団や多数の品種群を用いて全ゲノム情報をもとに解析を行う。

  • 75

    QTL解析において組換え自殖系統(RIL)を用いた解析方法について説明せよ。

    QTL解析に組換え自殖系統(RIL)を用いることの利点は、不安定な表現型値を示すヘテロ接合の遺伝子型を排除し、ホモ接合の対立遺伝子間の効果の差に由来する相加効果を単純化して検出することができる。 組換え自殖系統(RIL) 自殖性植物を対象に量的形質の遺伝解析を行うために作成される系統群のこと。 目的の形質に対して対照的(顕性/潜性)な2つの系統を交雑し、得られたF1世代を自殖したF2世代の種子100粒を個別に育てて一つの系統として自殖を行い、世代更新する(F2,F3,F4……)。 それぞれの系統の世代更新は無作為に選抜された1つの種子を用いてゲノムが固定されるF10前後まで自殖を繰り返す。 作出された系統群は、各世代で生じる減数分裂時の組み換えにより、両親由来の染色体断片がランダムに組み換えられ、固定された独自の構造を有している。

  • 76

    GWAS解析における連鎖不平衡の利用について説明せよ。

    GWAS解析では、連鎖不平衡を利用して表現型値と関連性の高い領域を特定する。 連鎖不平衡とは、遺伝子の連鎖が数世代にわたって祖先ゲノムから受け継がれている状態、対立遺伝子が独立に伝達されていない状態(組み換えが起きていない)をいう。 例として、P遺伝子座に由来する特定の対立遺伝子P1が常にQ遺伝子座の対立遺伝子Q1を伴って(連鎖)遺伝するとき、そのゲノム構造を連鎖不平衡の状態、連鎖不平衡領域をハプロタイプ・ブロックという。 ハプロタイプ・ブロックは組み換えによって解消されるため、ゲノム断片の距離や世代数に従って短くなる。GWAS解析では、連鎖不平衡にあるハプロタイプ・ブロック中のSNPを標的として、形質との関連性を示すQTLを網羅的に探索する。

  • 77

    古典遺伝学に基づく育種方法について説明せよ。

    交雑育種法 雑種の分離集団を作り、その中から目的の形質を選抜する方法, 倍数性育種法 コルヒチンなどの試薬を用いて倍数体を人為的に誘発する。染色体数の増減によって倍数体が示す有用な形質を利用する。, 突然変異育種法 突然変異を人為的に誘発させることで生じる有用な形質を利用する。EMS処理や放射線の照射, 純系選抜法 基本集団から多数の自殖系統(純系)を分離し、系統選抜する方法。在来品種や未知の品種を用いて品種改良を行う際にホモ接合性の高い集団を育成する目的で行われる。, 系統育種法 人工受粉を通した交雑によって遺伝的変異に富む基本集団を育成し、F2集団から優れた個体を多数選んで、その自殖種子を株ごとに自殖系統として育成する方法。, 集団選抜法 集団の中から優れた形質を持つ複数個体を選んで自殖種子を採取することで繰り返す方法。選抜個体が少ないと遺伝的浮動により集団の優れた形質を失う。, 集団育種法 ヘテロ集団の初期個体で集団育成し、遺伝的固定を図る方法。世代の進んだ段階で優良個体が選抜されるが、半数体由来の純系により世代を短縮して遺伝的固定を早める。, 個体選抜法 表現型に基づいて個体単位で選抜する方法, 系統選抜法 共通の祖先に由来する個体の集団である系統を単位として行う。

  • 78

    新たな育種技術NPBTについて説明せよ。

    人工制限酵素を用いたゲノム編集, オリゴヌクレオチド指定突然変異導入技術, シスジェネシス/イントラジェネシス, RNA依存DNAメチル化, 遺伝子組み換え台木を利用した接ぎ木, 逆育種, アグロインフィルトレーション, 合成生物

  • 79

    倍数体を育種に用いることの利点について説明せよ。

    倍数体は二倍体に比べて、葉や花、果実などのサイズが増加する他、生理的機能を持つ様々な二次代謝産物の生産量が増加する。また、寒さ、乾燥、病害虫などの環境ストレス耐性も向上している。

  • 80

    非還元配偶子を用いた三倍体、四倍体の作出法について説明せよ。

    減数分裂期に形成される非還元配偶子との受精を用いる。非還元配偶子とは、減数分裂時に染色体が両極に分極せず、体細胞(2n)と同じ染色体数の配偶子が形成される。 最初に、二倍体植物の雄雌いずれかの器官で形成された非還元配偶子(2x)と通常の配偶子(x)との受精により三倍体が作出される。 次に三倍体の非還元配偶子3xと二倍体の通常の配偶子xが受精することで四倍体が作出される。

  • 81

    同質倍数体における三倍体の発生過程

    同質倍数体において、三倍体は四倍体と二倍体との倍数体間交雑によって作出できる。また、低頻度ではあるが、二倍体同士の交配でも非還元配偶子と通常の配偶子が受精した三倍体を得ることができる。

  • 82

    染色体を人為的に減数させる方法

    腋芽やカルスをp-フルオロ-L-フェニルアラニン(PEP)で処理することで部分的に染色体が脱落した個体を得ることができる。

  • 83

    同質倍数体の特性と育種法について説明せよ。

    同質倍数体は同じゲノムの重複で構成されている倍数体である。二倍体に比べて植物体全体あるいは茎、葉、根などの栄養器官や花、果実、種子などの生殖器官の大きさが増大する巨大性(ギガス)を示す。 また、耐乾性、耐寒性、病害虫抵抗性の上昇、カロテノイドやアントシアニンなどの色素や健康に有用な成分が増加している。反対に生殖においては、減数分裂時に多価染色体の形成により染色体の不均等な分配が起こるために稔性が低下する。特に三倍体の稔性は極めて低い。 同質倍数体の中で頻繁に利用されるものは、三倍体と四倍体である。三倍体は四倍体と二倍体との倍数体間交雑によって作出できる。また、二倍体間の交雑でも非還元配偶子と正常な配偶子が受精した三倍体を低頻度で得ることが可能。果実生産においては、三倍体は種なしの形質を得るために使われる。 花卉類の三倍体では、減数分裂の異常により、不稔の配偶子が形成され種子ができにくい。そのため、種子形成に必要なエネルギー消費が抑えられ、開花期間が長くなる。

  • 84

    異質倍数体の特性と育種法について説明せよ。

    異質倍数体は2種類以上のゲノムから構成されている倍数体である。異質倍数体を育種に利用する際には遠縁交雑で得られた種間雑種や属間雑種を倍加して複二倍体(種間雑種において染色体が倍加したもの)にしたものが用いられる。 例として、AAとBBのゲノム構成を持つ種間の遠縁交雑で得られた雑種ABは減数分裂時に同祖染色体1Aと1Bの対合がうまくいかず、稔性が低下する。ここで、染色体を倍加させてAABBとすることでAは1A同士で、Bは1B同士で対合し、二倍体と同じような減数分裂時の染色体行動をとり、ABの染色体構成を持つ稔性のある配偶子を形成することができる。 人為的な複二倍体の育成方法としては、種間雑種や属間雑種をコルヒチン処理などで染色体倍加する方法と予め両親を同質倍数体化してから交雑で獲得する方法がある。

  • 85

    半数体、異数体の特性と利用例について説明せよ。

    半数体は、ゲノムを1セットしか持たない個体であり、生育が極めて貧弱であり、高不稔であるため個体の維持が難しい。そのため、半数体を直接用いるのではなく、コルヒチン処理やオリザリン処理によって得られる倍加半数体が用いられる。半数体は葯培養、遠縁交雑、倍数体間交雑、X線やガンマ線などの放射線を照射した不活化花粉の受粉によって作出することができる。 異数体は、体細胞の染色体数が2nより1本あるいは数本多いまたは少ない状態を指す。二倍体(2n=2x)の植物において染色体が1本欠失した個体(2n=2x-1)をモノソミック、相同染色体が1対欠失した個体(2n=2x-2)をナリソミック、染色体が1本過剰の個体(2n=2x+1)をトリソミック、相同染色体が1対過剰になった個体(2n=2x+2)と呼ぶ。 異数体は主に交雑で作出されており、モノソミックは半数体と二倍体との交雑から、トリソミックは三倍体と二倍体との交雑によって得られた後代から選抜することができる。 ナリソミックとテトラソミックはモノソミックとトリソミックの自殖後代から得ることができる。 これらの異数体は二倍体と比べると生育が悪く、稔性が低い。

  • 86

    突然変異育種に用いられる変異源の種類と効果について説明せよ。

    化学変異原 EMSメタンスルホン酸エチル:グアニンと反応してO6-エチルグアニンを生じる。エチルグアニンはシトシンではなく、チミンと対合するため、DNA複製時にG/C塩基対からA/T塩基対へのトランジションが起こる。, 電離放射線 DNAを構成する原子が電離や励起されることで損傷を生じる(直接作用)。細胞中の水分子が電離や励起によりラジカルが合成され、DNAに損傷を与える。 電離放射線による損傷の内、塩基損傷、塩基脱落、DNA一本鎖切断は、DNAの相補鎖を鋳型として修復することができるため、正確に修復されるが、DSB(DNA二本鎖切断)は鋳型を利用した修復を行うことが出来ないため、最も重篤な損傷とされる。

  • 87

    突然変異によって発生するキメラについて説明せよ。

    キメラとは、野生型の細胞で構成されている領域と突然変異細胞に由来する領域が1つの植物体内に同時に存在すること。 茎頂分裂組織は、外側から順番にL1、L2、L3層と呼ばれ、各層の幹細胞が分裂して細胞が供給される。L1からは表皮細胞、L2からは生殖細胞、L3からは維管束、髄が形成。 茎頂分裂組織におけるキメラの様式は3つある。 周縁キメラ:一部の層にのみ突然変異細胞が見られる。 区分キメラ:全ての層にわたって、一部分が突然変異細胞によって構成されている。 不完全周縁キメラ:ある層の一部分に突然変異細胞が存在。

  • 88

    栄養繁殖作物におけるキメラの解消について説明せよ。

    栄養繫殖作物に突然変異を導入した場合、不完全周縁キメラや区分キメラなどの不安定なキメラ状態を解消し、分裂組織が生じる領域に安定して突然変異細胞が受け継がれるように工夫する必要がある。 キメラを解消する方法として切り戻しや摘心が用いられる。 一般的に突然変異処理した分裂組織から伸長した枝で突然変異形質が確認された場合、キメラとなっていることが多い。突然変異形質が見られた枝を切り戻し、下位の芽から再び枝を伸ばす、あるいは摘心して側芽の伸長を促し、伸長した枝で再び突然変異の選抜を行う操作を繰り返すことで突然変異細胞を多く含んだ芽が形成され、キメラが解消される。

  • 89

    受精前隔離機構とその解決方法について説明せよ。

    受精前隔離機構とは、遠縁交雑において受粉から受精に至る過程で生じる生殖的隔離を指す。 種間交配における流れを以下に示す 種子親・花粉親の選抜 開花時期がずれるため、花粉を保存する必要がある。一般に二細胞性花粉の方が保存がききやすい。 発芽能力の確認 同一種への受粉で発芽を確認し、交配後の柱頭上における花粉の発芽の有無を確認する。 花粉管の伸長はアニリンブルー染色を用いる。 受精の成立は、組織切片の観察によって確認する。 受精前隔離の克服方法 試験管内受精:花粉から単離した精細胞と胚珠を酵素処理して生きた状態で取り出し、電気的に融合(エレクトロポレーション)し、受精した卵細胞をえる。これをナースセル(目的の細胞の増殖を補助)と共に培養し、植物体を再生。 花柱切断受粉法 花柱を途中で切断し、柱頭を含む上部を取り除いた状態で受粉する。胚培養と組み合わせて種間雑種を作出する。

  • 90

    受精後隔離機構とその解決方法について説明せよ。

    受精後隔離では、胚と胚乳が正常に発達しないことや胚が未熟なままま発達停止し、完熟種子が形成されないなどが起こる。 胚の発達が停止する場合には、胚を取り出して組織培養を行うことにより、胚が発達して後代が得られる(胚培養、胚珠培養、子房培養)

  • 91

    ソマクローナル変異に影響を与える要因について説明せよ。

    植物体再生経路:カルスから再分化により再生した植物体において変異が高頻度で見られる。一方で、茎頂から脱分化を経由せずに再生した個体においては、変異の発生頻度が低い。, 培地に添加する植物成長調節物質の濃度(オーキシン、サイトカイニン) 濃度が高いほど、変異が発生しやすい。, 培養期間 培養期間が長いほど、変異発生の頻度が高い。同時に培養期間が長くなると植物体再生能力が低下する。

  • 92

    アグロインフィルトレーション法について説明せよ。

    アグロインフィルトレーション法とは、葉などの非生殖組織にアグロバクテリウム菌を接種し、一過的に目的の遺伝子を発現させる方法である。この時、次世代に導入した遺伝子が遺伝することはない。 これに対して、フローラルディップ法では、花などの生殖組織にアグロバクテリウムを感染させて、生殖細胞上のゲノムに目的遺伝子を導入し、形質転換体を種子として得る方法である。 具体的には、花が咲く前の蕾に菌を感染させることで、開花後に遺伝子組み換えが行われた花粉が卵細胞と受精して、遺伝子組み換えが行われた種子ができる。 リーフディスク法では、葉片を切断してアグロバクテリウム菌液に浸漬。共存培養を行った後、抗生物質を含む選択培地に移し替えて選抜培養を行い、目的の遺伝子が組み込まれた葉片を特定する。

  • 93

    マップベースクローニング(ポジショナルクローニング)について説明せよ。

    ラフマッピング、ファインマッピング、候補遺伝子の特定と機能証明の3つの段階に分けて行う。 ①ラフマッピング 少数の個体を対象にして染色体上の位置がすでに分かっているDNAマーカーを用いて目的の遺伝子のおおよその位置を特定する。 ②ファインマッピング ラフマッピングの時よりも多数の個体を対象にしてラフマッピングで連鎖が見られたDNAマーカーよりも目的遺伝子に近い新たなDNAマーカーを特定する。 ③候補遺伝子の特定と機能証明 目的遺伝子の発現器官の解析、両親間での発現量の違いの解析、両親間での配列の比較を行う。 例として、目的の遺伝子が根の形質に関わるものであれば、根で発現していない遺伝子は候補から外れる。また、根で発現していても、両親間で発現量、配列に違いがない遺伝子は目的遺伝子でない可能性が高い。 最終的に根で発現していて、両親間で発現量、配列が異なるものが目的遺伝子の候補として特定できる。