問題一覧
1
貯蓄曲線Sと投資曲線Iの交点で利子率rが決定されること
貸付資金説
2
ケインズモデルと(新)古典派モデルにおける貯蓄の考え方
ケインズモデルでは貯蓄は所得Yに依存するとし、(新)古典派モデルでは貯蓄は利子率rに依存するとする。 また、利子率については、ケインズモデルでは貨幣市場において、貨幣需要Lと貨幣供給M/Pによって決定される(流動性選好理論)とし、 (新)古典派モデルでは、資本市場において、投資曲線Iと貯蓄曲線Sの均衡点で決定されるとしている(貸付資金説)。
3
自然失業率とは何か
フリードマンが導入した概念であり、競争的経済において長期的に成立する傾向をもつ失業率のこと。ケインズの失業分類で言うと摩擦的失業と自発的失業にあたり、非自発的失業を含まない完全雇用時の失業率のこと。 自然失業率仮説: 政策当局によってどのような財政金融政策が採用されたとしても、経済は長期的には自然失業率に収束するという考えのことで、これはフィリップス曲線が長期的には垂直になることを意味する。
4
フィリップス曲線を2種類に分けて説明せよ
①短期フィリップス曲線とは、一定の期待インフレ率πeを導入したフィリップス曲線のこと。ここでいう短期とは、期待(予想)が変更できないくらい短い時間という意味。 ②長期フィリップス曲線とは、期待インフレ率πeとインフレ率πが一致する長期の場合のフィリップス曲線のこと。自然失業率仮説においては、この長期フィリップス曲線が垂直になる。ここでいう長期とは、期待(予想)が外れた時に、それを修正できるくらい長い時間という意味。 フリードマンの自然失業率仮説によれば、失業率を自然失業率以下にするような裁量的な財政・金融政策が行われた場合、短期フィリップス曲線に沿って失業率は自然失業率より改善する。しかし、現実のインフレ率に期待インフレ率が修正されることによって、短期フィリップス曲線は上方にシフトし、現実のインフレ率と期待インフレ率が一致する長期においては、失業率は自然失業率水準に戻る。また、インフレ率も当初の状態よりも上昇することになる。 「自然失業率仮説」とは、裁量的政策によって失業率は減少させることが出来ないというものである。すなわち、拡張的財政・金融政策が行われた場合、短期フィリップス曲線に沿って失業率は自然失業率水準より改善する。しかし、現実のインフレ率に期待インフレ率が修正されることによって、短期フィリップス曲線は上方にシフトし、現実のインフレ率と期待インフレ率が一致する長期においては、失業率は自然失業率水準に戻る。
5
コンドルセのパラドックスとは何か
過半数原則の多数決制が推移性を満たす社会選好を生み出すことに失敗すること。 (多数決という民主的な選択は、必ずしも社会が望む結果を示すとは限らない。) 例えば、3人の個人がいて、3つの選択肢A,B,C があったとする。そして、それぞれの個人の選好順序が、 ①A>B>C、②B>C>A、③C>A>Bだとする。 パターン1:AとBを多数決するとAになり、その後、AとCを多数決するとCになり、最終的にCが選ばれる。 パターン2:AとCを多数決するとCになり、その後、CとBを多数決するとBになり、最終的にBが選ばれる。 以上のように、3つの選択肢がある場合、二者択一の採決がどの順序で行われるかによって結果が変わってしまう。このようなことを「コンドルセのパラドックス」という。
6
選好U1と1/2U1は同じ選好だと言えるか否か。
言える。 なぜなら、効用関数は序数的であるため、単調変換に対して行動が不変という性質を持つからである。
7
不完全競争とは何か
各企業が自社の生産物価格をある程度コントロールできる、すなわち価格支配力をもった「プライスメイカー」として行動する状態のこと。 完全競争市場の条件の1つである「多数の需給者」の存在が当てはまらないことで価格支配力をもつのが、独占・複占・寡占である。 一方、完全競争市場の条件の1つである「財の同質性」が当てはまらず、製品差別化によって価格支配力をもつのが独占的競争である。
8
リンダール均衡とは何か
リンダール均衡とは、公共財の場合でもパレート最適が実現するリンダール・メカニズムによる均衡のことである。 リンダール・メカニズムとは、「受益者負担の原則」に基づく公共財の供給メカニズムであり、 ①公共財供給を担う経済主体(政府等)が、各個人に対して「費用負担」を提示する ②費用負担を提示された個人は、各個人の限界便益曲線に基づいて需要量を申告する ③公共財の需要量が等量消費になるように、費用負担の調整を繰り返す ということを行う。 要約すると、リンダール均衡は、政府が各個人に公共財の「負担割合」を提示し、各個人がその負担割合の下で望ましいと考える「量」を政府に表明する。(負担割合→量) リンダール均衡はパレート最適で、各個人の効用も最大化されるが、各個人の限界便益は本人にしか分からない私的情報であるため、消費者が嘘の深刻をしてフリーライダーになるという問題を解決できないという問題もある。 (各個人の限界便益は本人にしか分からない私的情報である)
9
消費者物価指数、企業物価指数とは何か
消費者物価指数とは、消費者が購入する財・サービスの価格を、基準年を100として算出した指数であり、ラスパイレス型物価指数である。 企業物価指数とは、企業間で取引される財の価格を、基準年を100として算出した指数であり、ラスパイレス型物価指数である。
10
有効需要とは何か
所得の裏付けがあって実際に財市場で実現される総需要の水準、すなわち、貨幣支出を伴って行われる需要のことであり、有効需要の原理によると、この有効需要の大きさによって、国民所得や雇用量の水準は決まる。
11
誘発投資とは何か
国民所得Yが増加したことによる設備投資の増加を想定する時、投資Iは国民所得Yの関数となり、これを誘発投資と呼ぶ。 I=I(Y)=I0+bY なお、I0は独立投資、bは正の定数である。
12
マーシャルのkとは何か
名目GDP(PY)に対する貨幣需要の比率のことであり、貨幣の流通速度Vの逆数で表される。 貨幣数量説とは、貨幣の価値(物価水準P)は、流通する貨幣の総量(貨幣供給量M)によって決まるという説のことで、貨幣供給量Mの増減は国民所得に影響を与えないという考えであり、以下の2つの式からなる。 ①フィッシャーの交換方程式:MV=PT (Mは貨幣供給量、Vは貨幣の流通速度、Pは物価水準、Tは一定期間内の総取引量、PTは取引額) VとTが一定ならば、貨幣供給Mの増加はPの上昇をもたらすことになる。 ②ケンブリッジの数量方程式(現金残高方程式):M=kPY
13
支配戦略とは何か
他のプレイヤーの戦略に関わらず、自分の戦略の中で常に他の戦略をとるより良いという戦略があれば、その戦略を「支配戦略」という。そして、全てのプレイヤーが支配戦略を選ぶことによって実現する均衡を「支配戦略均衡」という。 また、ある戦略より劣っており、それを選択する合理性のない戦略を「被支配戦略」という。
14
「質のはしごモデル」とは何か
生産される財の質が徐々に上昇していくこと。 ある企業が研究開発に成功し、既存の独占企業が生産する財よりもより高品質の財を生産できるようになったと仮定する。 すると、研究開発に成功した企業は、既存の企業に替わって新しい独占企業としてこの産業で生産活動を行う。新製品の開発が企業によって行われ、その結果、生産される財の質が徐々に上昇していくモデルのことを「質のはしごモデル」という。 逆選択と反対の単語である。
15
AKモデルとは何か
資本の限界生産性が一定であるような経済成長モデルのことである。
16
UV曲線(ベバレッジ曲線)
実質賃金の下方硬直性による失業とミスマッチによる失業がどの程度存在するのかを知るための曲線。 縦軸に求人数(欠員数)、横軸に求職数(or失業率)をとり、両者の相関関係を表したものであり、45度線上では求職数と求人数が一致している。 ミスマッチによる失業が発生しているのであれば、求職数と求人数は一致しており、両者の関係は45度線上で観測される。
17
ニュメレール財とは何か
ある財の価値を評価するための財のことで、価値尺度機能を果たす。
18
自然失業率仮説とは何か。裁量的財政・金融政策に触れながら説明せよ
「自然失業率仮説」とは、裁量的政策によって失業率は減少させることが出来ないというものである。すなわち、拡張的財政・金融政策が行われた場合、短期フィリップス曲線に沿って失業率は自然失業率水準より改善する。しかし、現実のインフレ率に期待インフレ率が修正されることによって、短期フィリップス曲線は上方にシフトし、現実のインフレ率と期待インフレ率が一致する長期においては、失業率は自然失業率水準に戻る。 裁量的財政・金融政策の有効性は、人々の期待形成のあり方に依存する。すなわち、短期および長期のフィリップス曲線が示すように、政策による現実の効果と人々の期待との間にラグが生じるような静学的期待や適応的期待においては、裁量的財政・金融政策は有効に機能するといえる。一方、それらの間にラグが生じない合理的期待においては、裁量的財政・金融政策は有効とは言えない。
19
裁量的財政・金融政策の有効性について期待の観点から評論せよ
裁量的財政・金融政策の有効性は、人々の期待形成のあり方に依存する。すなわち、短期および長期のフィリップス曲線が示すように、政策による現実の効果と人々の期待との間にラグが生じるような静学的期待や適応的期待においては、裁量的財政・金融政策は有効に機能するといえる。一方、それらの間にラグが生じない合理的期待においては、裁量的財政・金融政策は有効とは言えない。
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公共選択学派とは何か
民主制や官僚制の下での政治的決定過程、特に政府の財政活動に関する決定過程を、経済学的手法を用いて分析しようとする学派で、「ブキャナン」などに代表される。財政赤字批判をした。 財政赤字批判:ケインズ流の財政政策(フィスカル・ポリシー)は、政治的利害に左右されない「賢人」によって遂行されるという仮定である「ハーベイ・ロードの前提」の下では有効に機能する可能性はあるが、実際には上手く機能しない。 →現実の財政政策を遂行するのは政策の非対称性が生じる。(政策は選挙日程を反映した経済変動をもたらす=政治的景気循環) 不況時:減税や歳出拡大という選挙民に人気のある政策に結び付くので、政治家や政府は安易に財政赤字を選択する。 好況時:増税や歳出削減という選挙民に人気のない政策に結び付くので、政治家や政府は財政黒字を避けようとする。 →不況期の財政赤字は形成されるが、好況期の税収増も歳出拡大に利用されてしまい、財政黒字は達成されないという政策の非対称性が存在する。 →「大きな政府」と財政赤字の累積 →均衡財政主義を憲法上のルールとすることを主張した
21
非ケインズ効果とは何か
政府支出の削減や増減が、景気にプラスの影響を与えるという効果。 1980年代のデンマークやアイルランドにおいてこの効果が生じたと言われている。
22
ハーベイ・ロードの前提とは何か
政策は、政治的利害に左右されない「賢人」によって遂行されるという仮定のこと。 ケインズ流の財政政策(フィスカル・ポリシー)は、政治的利害に左右されない「賢人」によって遂行されるという仮定である「ハーベイ・ロードの前提」の下では有効に機能する可能性はあるが、実際には上手く機能しない。 →現実の財政政策を遂行するのは政策の非対称性が生じる。(政策は選挙日程を反映した経済変動をもたらす=政治的景気循環) 不況時:減税や歳出拡大という選挙民に人気のある政策に結び付くので、政治家や政府は安易に財政赤字を選択する。 好況時:増税や歳出削減という選挙民に人気のない政策に結び付くので、政治家や政府は財政黒字を避けようとする。 →不況期の財政赤字は形成されるが、好況期の税収増も歳出拡大に利用されてしまい、財政黒字は達成されないという政策の非対称性が存在する。 →「大きな政府」と財政赤字の累積 →均衡財政主義を憲法上のルールとすることを主張した by 公共選択学派:民主制や官僚制の下での政治的決定過程、特に政府の財政活動に関する決定過程を、経済学的手法を用いて分析しようとする学派で、「ブキャナン」などに代表される。
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タイム・ラグについて
経済政策の必要性が生じてから政策の効果が表れるまでの時間的遅れのことである。 内部ラグと外部ラグから成る。 内部ラグ:政策の必要性が生じてからその政策を実施するまでにかかる時間のことで、①認知ラグ、②決定ラグ、③実行ラグから成る。 ①認知ラグ:経済情勢の悪化を認識するまでにかかる時間 ②決定ラグ:政策の実施を決定するまでにかかる時間 ③実行ラグ:政策を決定してから実施するまでにかかる時間 外部ラグ:政策が実施されてからその政策の効果が現れるまでにかかる時間(効果ラグとも言う) 財政政策は、内部ラグが長く、外部ラグが短い。 フィスカル・ポリシー(政策)は、内部ラグ・外部ラグともに存在する。 ビルト・イン・スタビライザー(制度)は、外部ラグは存在するが、内部ラグは存在しない。 金融政策は、内部ラグが短く、外部ラグが長い。
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外生変数の変化が内生変数に与える影響を分析すること
比較静学という。 外生変数は予め分析者が設定したものであり、内生変数はモデルの解として求めるべき変数である。
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小国と大国の区別
小国:自国の経済活動は外国から影響を受けるが、外国に対しては影響を与えない。 大国:自国の経済活動は外国から影響を受けるのと同時に、外国に対しても影響を与える。
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無裁定条件とは何か
資産市場が評価したリスクと収益の関係を表したもの。
27
名目為替レートと実質為替レートの違い
名目為替レート:外国通貨1単位と交換される自国通貨の単位数 実質為替レート:外国の財1単位と交換される自国財の単位数
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ジョブ・サーチ理論とは何か
失業の原因を、求職者が労働市場の状況に関して不完全な情報しか持っていないこととする理論。 求職者は、現時点で就職可能な企業からの仕事を断って、別の仕事を探した場合に得られる期待賃金が求職活動に必要な費用を下回る場合で、その時求職者は求職活動を停止する。 求職者が求職活動を停止する最低限の賃金のことを「留保賃金」という。 したがって、留保賃金が高くなると、求職活動の期間も長くなることが予想され、摩擦的失業は増加することになる。
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人的資本とは何か
労働者がもつ知識や技能を一括りにした概念のこと。 知識や技能は一朝一夕に身につくものではなく、時間をかけて形成されるものであり、このような性質が機械などの資本ストックと似ていることから、知識や技能は「人的資本」と呼ばれる。
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合理的期待形成学派と期待の種類について
合理的期待形成学派(合理的期待派):人々が合理的な期待、すなわち、入手可能なあらゆる情報を効率的に利用して、経済の実態的構造に即した期待形成を行うとすれば、それが現在における経済の均衡を実現させる、という主張をする学派。ケインズ的な裁量的政策の短期的・長期的無効性を説く。 静学的期待:現在のある経済変数の水準が、将来もそのまま保たれるであろうとする期待。すなわち、今期の事象をその通りのものとして来期の予想とする期待。πe=π(-1) 適応的(適合的)期待:過去に行った予想の誤差を修正した上で、今期の予想を行うという期待形成方法。人々がある期のインフレ率を予想する時、1期前の予想πe(-1)および、1期前の現実のインフレ率π(-1)を参考にすることを仮定する。過去の情報を参考にするという意味では、静学的期待と似ている。 0<=α<=1 としたとき、πe=πe(-1)+α{π(-1)-πe(-1)} 合理的期待:経済主体が利用可能な情報を全て用いて期待を形成する、という考え方/現在利用可能な情報を全て利用し、将来のある経済現象を予想すること。人々が合理的ならば、所与の情報を利用して行動し、平均的には正しい予想をするはずであるという考え。πe=π なお、利用可能な情報とは、経済を動かす仕組みやどの様な確率で何が起きるかといった情報のこと。
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金融政策の有効性について、期待の種類に分けて説明せよ
①ケインジアンと静学的期待:金融緩和政策→AD曲線の右シフト→物価水準の上昇 ケインジアンは名目賃金率Wの硬直性を仮定しているので、物価水準の上昇は実質賃金率W/Pを低下させる。 労働者は貨幣錯覚に陥っているので、来期の物価水準は今期と同じ水準であるという「静学的期待」。 一方、企業は労働者よりも物価の動静に詳しいと考えられるので、金融緩和政策による実質賃金の低下を予測し、雇用量を増大させようとする。→雇用量の増価→国民所得の増加 ②マネタリストと適応的期待:金融緩和政策→AD曲線の右シフト→物価水準の上昇 マネタリストは、労働者が過去の物価水準から今期の物価水準の予想を行う「適応的期待」を用いる。 当初は予想が外れて、短期的には実質賃金の低下→雇用量増大→国民所得の増加 しかし、長期的には予想が一致し、労働者は物価水準上昇を認識して、その分だけの名目賃金率の上昇を要求する。→実質賃金率は元に戻り、長期的には物価水準だけが上昇する。よって、長期的には国民所得や失業率に変化はなし。 ③合理的期待派と合理的期待:金融緩和政策→AD曲線の右シフト→物価水準の上昇 合理的期待派は、労働者があらゆる利用可能な情報を用いて将来のインフレを予想する「合理的期待」を用いる。 労働者は、金融緩和政策が行われると同時に物価水準の上昇を予想し、名目賃金率の引き上げを要求する。→実質賃金率は変化せず、雇用量も国民所得も増加しない。よって、裁量的な金融政策は短期的にも長期的にも無効である。 物価水準をP、期待物価水準をPeとしたとき、合理的期待とはPe=Pが成立することを意味する。
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閉鎖経済下の新古典派の完全雇用マクロ経済モデルにおいて、拡張的財政政策を行った時の実質GDPと実質利子率に及ぼす影響について説明せよ
新古典派マクロ経済モデルでは、実質GDPは完全雇用が満たされるときの大きさとなり、拡張的財政政策を行っても実質GDPの大きさは変化しない。拡張的財政政策を行うと、一定である総供給(実質GDP)を総需要(消費+投資+政府支出)が上回るので、超過需要を解消するために実質利子率が上昇して投資が減少する。 新古典派は長期を想定しているためAS曲線は、完全雇用国民所得の水準で垂直となるため。
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保険市場における逆選択の説明
保険会社(売り手)は、加入者(買い手)の入院確率や事故確率を完全に知ることは出来ないので、平均的な確率を基に一律の保険料を設定する。その結果、健康な人や優良運転手は、保険料が割高になるため加入しようとせず、逆に病弱な人や危険運転手といたリスクの高い加入者ばかりになる。
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顕示選好理論とは何か
消費者の具体的行動を与えられたものとして、そこから効用関数の存在・特性を明らかにしようとする理論のことで、消費者の選好がその需要行動に顕示されている(表現されている)とみるところからこのように呼ばれる。
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リカード=バローの等価定理とは何か
政府支出の財源調達は、課税であっても公債発行であっても、経済に対する効果は同じであるとすること。 リカードは、公債発行と償還が同一世代でなされる場合を想定しており、公債が発行されると将来の増税に備えて消費を減らす行動をとる。よって、生涯のどの時点で課税されても、その現在価値が同じであるならば、生涯にわたる予算制約式に変化はないので、今課税をしても、公債を発行して将来に増税を先送りにしても、経済効果は同じであるとする。 一方で、バローは、公債発行と償還が世代を超えてなされる場合でも、親の世代がこの世代に資産を残すという合理的な行動をとるならば、世代間の負担転嫁はなく、リカードの中立命題は成立するとしている。つまり、現在世代の貯蓄を増加させて消費を減少させるので、公債発行による財政政策は無効であるとする。 ケインズモデル(45度線分析)では、政府支出の産出量へ与える効果は、その財源によって異なる。公債発行によってなされる政府支出の効果は政府支出乗数として、租税によってなされる同効果は均衡予算乗数として以下のとおりである。 政府支出乗数=1/(1-c1)、均衡予算乗数=1 これに対して、リカード=バローの等価定理は、「政府支出が家計の消費に与える影響は、財源に依存しない」とケインズモデルの結果を否定する。 両者の違いは、「消費者の意思決定に関する捉え方」から生まれる。 リカード=バローの等価定理では、消費者は生涯所得を考えた上で異時点間の消費の配分を決定する。消費者が、「現在の増税は将来の減税に繋がるが、生涯所得は変化しない」と考えたとする。この時消費者は現在借入をして、消費水準を現在と将来で同じような水準に保とうとする(消費の平準化)。よって、政府が政府支出をする際に、現在の増税で資金を調達しようが、公債発行で調達しようが同じ産出量が実現される。 しかし、このリカード=バローの等価定理には重要な仮定がある。それは、「消費者が自由に貸し借りを出来る」というものである。現実的には、資産が少ない消費者はお金を借りられないかもしれない(借入制約)。この借入制約があると、現在の消費は現在の所得によって賄う必要がある。その結果、政府支出の財源が増税である場合は公債発行の場合よりも消費は少なくなる。これはケインズモデルと整合的な帰結である。 以上より、政府支出が財源によって産出量へどう影響を与えるかは、金融市場においてどれだけ借入制約があるか(どれほど金融市場が不完全か)に依存するといえる。 なお、流動性制約がある時、等価命題は成立しない。
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価格消費曲線とは何か
価格が変化した時の最適消費点の変化を示す曲線のことで、 価格効果(全部効果)であるA→Cを結ぶ直線である。
37
限界代替率が逓増する場合はあるか
原点に対して凹な無差別曲線の場合、接線の傾きが急になっていくので、限界代替率は逓増していく。 例えば、ビールと日本酒を両方飲むのが嫌いな人:両方とも嫌いではないのだが、組み合わせて飲むのが嫌いな場合。
38
限界便益MB(限界評価)とは何か
財の追加的1単位の消費に対して、消費者が与える評価額のこと
39
一国のマクロ・バランス(or貯蓄・投資バランス)から、経常収支の黒字や赤字は、どの様に調整されるか説明せよ。
マクロ・バランス(貯蓄・投資バランス)は、(Ex-Im)=(S-I)+(T-G) で表すことが出来る。したがって、(Ex-Im)で表される経常収支は、黒字の場合、民間の投資超過または財政赤字によって調整される。赤字の場合は逆に、民間の貯蓄超過または財政黒字によって調整される。
40
経常収支の黒字や赤字は、為替レートの変動によって、どの様に調整されるか、また調整されるための条件は何か
経常収支が黒字の場合は、輸出超過のため、為替レートが下落し増価すること(円高)によって輸入が増加し経常収支の不均衡が調整される。一方、赤字の場合は輸入超過のため、為替レートが上昇し減価すること(円安)によって輸出が増加し経常収支の不均衡が調整される。 ただし、調整されるための条件として、輸出の価格弾力性と輸入の価格弾力性の和が1より大きい値をとる「マーシャル=ラーナーの安定条件」を満たすことが必要となる。なぜなら、この条件が満たされないと、当初は経常収支の不均衡が逆に拡大してしまう「Jカーブ効果」が発生してしまうからである。
41
小国で資本移動が完全に自由な変動為替相場制を採用している国を想定したマンデル=フレミング・モデルに基づいて、均衡GDPの決まり方と拡張的金融政策の効果を説明せよ。
資本移動が完全に自由な変動為替相場制におけるマンデル=フレミング・モデルの場合、国内利子率が国際利子率rwを下回れば、資本流出で国際収支が赤字、逆の場合は資本流入で国際収支が黒字になる。よって、国際収支が均衡するのは、国内利子率と国際利子率が一致する時なので、BP曲線(国際収支均衡線)は国際利子率rwの水準で水平となる。 そのうえで、財市場・貨幣市場・国際収支の3つが均衡するGDPは、IS曲線・LM曲線・BP曲線の交点のYとなる。 このモデルで拡張的金融政策を行った場合、LM曲線が右シフトして国内利子率が下落し、資本が国外へ流出する。これにより、為替レートが上昇し、輸出が増加するので、IS曲線が右シフトする。IS曲線は、国内利子率が国際利子率に一致するまで右シフトし、均衡GDPは増加する。 よって、この場合における拡張的金融政策は有効となる。
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インフレを原因によって、さらに速さによって分類せよ
~原因による分類~ ①ディマンド・プル・インフレ:需要が供給を上回ることによって生じるインフレ ②コスト・プッシュ・インフレ:原材料や賃金など生産コストの上昇によって生じるインフレ ③財政インフレ:中央銀行が国債を直接引き受けることによって生じるインフレ(財政法で禁止されている) ~速さによる分類~ ④ハイパー・インフレ:物価上昇率が数百・数千%以上になる(戦争・内乱等による紙幣増刷で発生) ⑤ギャロッピング・インフレ:年率で数%~数十%のインフレ ⑥クリーピング・インフレ(マイルド・インフレ):年率で2~3%のインフレ また、「デフレーション」とは、物価が持続的に下落することで、 「デフレ・スパイラル」とは、不況によりデフレが起こり、それがさらに不況を悪化させることを言う。 「スタグフレーション」とは、不況とインフレが同時に起こることである。 「リフレーション」とは、デフレの底を抜けて、まだインフレになっていない状態のことで、物価の下落率が弱まっている状態 「ディスインフレ」とは、インフレのピークを抜けて、まだデフレになっていない状態のことで、物価の上昇率が弱まっている状態
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貯蓄と投資の関係について(特に貯蓄・投資の調整メカニズムの相違に注目して)、伝統的理論(古典派・新古典派理論)とケインズ経済学の味方の相違を論じよ。
古典派・新古典派の伝統的理論において、貯蓄は資本市場における資金供給を表し、利子率の増加関数となる。貯蓄超過となる場合は利子率が下落することによって、貯蓄と投資が等しくなるように調整される。(利子率が高いと貯蓄して運用したくなる) 投資超過の場合は利子率が上昇することによって、貯蓄と投資が等しくなるように調整される。(rとIは負の相関関係をもつから) 利子率は財を生産するための投資資金の需要と供給によって決定されるという説を「貸付資金説」という。 伝統的理論においては、このように「利子率」による貯蓄と投資の調整メカニズムが機能する。 一方、ケインズ経済学では、貯蓄は消費と同様、所得に依存して決定され、所得の増加関数となる。投資は利子率の減少関数となるが、利子率は貨幣市場における貨幣需要と貨幣供給によって決まるという「流動性選好説」を主張している点が伝統的理論と異なる。 ケインズ経済学では財市場が均衡する時、貯蓄と投資が等しくなる。民間部門のみの閉鎖経済では、投資は所得に依存しないため、独立投資となる。 ケインズ経済学では、このように「国民所得」による貯蓄と投資のメカニズムが機能する。
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効用最大化と支出最小化について(制約関数と目的関数)
効用最大化とは、与えられた価格と所得の下で、自分の効用を最大にするような消費を行うことであり、制約条件は「予算制約」、目的関数は「効用関数」である。 効用最大化問題の解は、需要関数であり、これは、価格と所得が決まると、その時にどのくらい財を買うかを記述したものである。 支出最小化とは、与えられた価格と達成したい効用水準の下で、最も安上がりな消費を行うことであり、制約条件は「効用関数」、目的関数は「支出」である。 支出最小化問題の解とは、補償需要関数であり、これは、価格と達成したい効用水準が決まると、それに合わせてどのくらい財を買う必要があるのかを記述したものであり、h(p,u) と書く。 支出関数 e(p,u)= p× h(p,u) :価格pの下で、効用水準uを達成する最低限必要な金額 この支出関数の式より、 任意の価格pについて、支出関数と補償需要関数の間には以下の関係が成り立つ。 ∂e(p,u) / ∂pi = hi(p,u)
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スルツキー分解とシェパードの補題について
スルツキー分解とは、価格効果を代替効果と所得効果に分けること。 価格効果=代替効果+所得効果 の形で2つの効果に分解される。自己の価格変化に対する価格効果の場合、代替効果は常に負である(これにより、ヒックスの需要曲線は常に右下がりである)が、所得効果は該当財が上級財ならば負で、下級財ならば正である。したがって、下級財の中でも、所得効果の大きさが代替効果の大きさを超える場合、当該財は自己価格の上昇にも関わらず需要が増加するギッフェン財となる。(価格効果は正となる) 他財の価格変化に対する価格効果の場合、代替効果は正負いずれの場合もあり、代替効果が正の場合には2つの財は代替財の関係にあり、負の場合には補完財の関係にあると定義される。 支出最小化とは、与えられた価格と達成したい効用水準の下で、最も安上がりな消費を行うことであり、制約条件は「効用関数」、目的関数は「支出」である。 支出最小化問題の解とは、補償需要関数であり、これは、価格と達成したい効用水準が決まると、それに合わせてどのくらい財を買う必要があるのかを記述したものであり、h(p,u) と書く。 支出関数 e(p,u)= p× h(p,u) :価格pの下で、効用水準uを達成する最低限必要な金額 この支出関数の式より、 任意の価格pについて、支出関数と補償需要関数の間には以下の関係が成り立つ。 ∂e(p,u) / ∂pi = hi(p,u) シェパードの補題と、消費の二面性の関係式から、任意のi,j について、 ∂hi(pi,u) / ∂pj = ∂xi {p,e(p,u)} / ∂pj = ∂xi / ∂pj + ∂xi / ∂M ×∂e / ∂pj = ∂xi / ∂pj + ∂xi / ∂M ×hj = ∂xi / ∂pj + ∂xi / ∂M ×xj なお、xi {p,e(p,u)} = hi(p,u) である。 よって、∂xi / ∂pj = ∂hi / ∂pj - ∂xi / ∂M × xj (価格効果=代替効果+所得効果)
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完全競争下における損益分岐点と操業停止点について説明せよ(変動費と固定費の用語を用いよ)
損益分岐点は、価格が、変動費と固定費の和を生産量で割った値である平均費用と等しくなる点のことである。 利潤π = px - TC = x (p - AC) = 0 操業停止点は、価格が、変動費を生産量で割った値である平均可変費用と等しくなる点のことである。 利潤π = px - TC = x (p - AC) = x (p - AVC - AFC) = x (p - AVC) - FC = -FC
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共有地の悲劇とは何か
社会全体の観点から見て、なぜ共有資源が望ましい量以上に利用されるのかを説明する比喩のこと。 例えば、ある町の住民たちが共有の土地で各々羊を飼っていて羊毛を販売していたとする。始めは羊の餌である草は豊富にあったが、年月が経ち、人口と羊の数が増加したことによって、土地は再生能力を失い、不毛になったとすると、多くの住民は生活の糧を失うことになってしまう。 この悲劇の原因は、社会的インセンティブと私的インセンティブが異なることであり、牧草地の壊滅を避けるためには羊飼いたちの集団行動が必要であった。もし、一緒に行動して入れば共有地が維持できる程度に羊の数を減らしたはずだが、今回は個々の住民は羊の数が多すぎるという問題の責任の一部しかおっていないため、羊の数を減らすというインセンティブがなく、過剰になっていしまった。 解決策として、町が各家庭に土地を分割し、各家庭が過剰な放牧が出来ないようにすればよい。また、各家庭の羊の数を規制したり、羊に課税して外部性を内部化したりすると良い。 この教訓としては以下である。 ある人が共有資源を利用すると、他の人々がそれを利用できる量は減少する。この負の外部性の為に、共有資源は過剰に利用される傾向がある。政府は規制をしたり、課税によって共有資源の消費を減少させることで問題を解決できる。
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囚人のジレンマとは何か
協調がお互いの利益になる時でさえ、利己心の為に人々が協調を維持できなくなることを示す。
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ソロー残差とは何か
ソロー残差とは、技術進歩率、すなわち、全要素生産性の上昇率のことで、 コブ=ダグラス型のマクロ生産関数である Y = A K^α L^(1-α) を考え、両辺対数をとって微分をし、変化率の式に直すと、 (ソロー残差or技術進歩率)=(経済成長率)ーα×(資本成長率)ー(1-α)×(労働人口成長率)
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効率的規模とは何か
平均総費用を最小にする生産量のこと
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規模の経済・規模の不経済・規模に関して収穫一定とは何か
規模の経済:生産量が増価するにつれて、長期の平均総費用が減少する性質(MC逓減、MP逓増) 規模の不経済:生産量が増価するにつれて、長期の平均総費用が増大する性質(MC逓増、MP逓減) 規模に関して収穫一定:生産量が増加しても長期の平均総費用が変化しない性質
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サンクコストとは何か
既に支払うことが決まっており、回収できない費用/固定費用のうち、生産量をゼロにしても支払わなければならない
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効率賃金とは何か
労働者の生産性を上昇させるために企業が支払おうとする、均衡水準を上回る賃金のこと。
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M1,M2,M3,広義流動性の定義
M1:現金通貨+預金取扱機関に預け入れられた預金通貨 M2:現金通貨+国内銀行等に預け入れられた預金 M3:現金通貨+預金取扱機関に預け入れられた預金 広義流動性:M3+投資信託+銀行発行普通社債+国債など
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コンソル債とは
償還(元金の返済)がない代わりに、永久に毎期一定額の利子が支払われる債券
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市場価格表示と要素費用表示の違い
間接税は、「生産・輸入品に課される税」とも表示され、消費税や間接税など、市場価格を押し上げる。一方、補助金は政府から企業に交付されるマイナスの間接税で、市場価格を押し下げる。このように、GDP, GNP, NDP, NNP といった市場価格表示の国民所得には政府活動が含まれているので、純粋に自国内または自国民の国民所得を出す場合はこれら政府活動を取り除く必要がある。 国内純生産NDPから間接税を引いて補助金を足すと、要素費用表示の国内所得DIが求まる。 (これは、市場価格のNDPは、間接税により値上がりしているので、その分を差し引き、補助金によって値下がりしている分を足す、と考えられる。)
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ルーカス批判とは
過去のデータから推定されたマクロ経済のモデルである、マクロ計量モデルによって推定された構造パラメータの値は、経済政策の実行により変化するので、適切な総需要管理政策の決定は不可能というもの。 ルーカス批判を避けるためには、ミクロ的基礎付けが重要となる。
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「失業率を自然失業率以下に留めるには、物価上昇率は常に上昇を続けなくてはならない」という命題を何という
アクセレーショ二スト仮説
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インフレーションの社会的コスト2つ
①靴のコスト、②メニューコスト ①靴のコストとは、貨幣価値の下落により、銀行預金を引き出しに頻繁に銀行に行くこと。 ②メニューコストとは、価格変更に伴うメニューや値札を改定するための費用。この作業には手間や時間を要するから。
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インフレーションがもたらす予期しない所得移転
例えば、借り手と貸し手の間で、ある負債契約が結ばれたとする。お金の貸し手が借り手に対して要求する実質金利が5%で、両者が考える期待インフレ率が2%であることを仮定する。この場合、名目利子率を7%として負債契約を結べば、貸し手の要求実質金利は実現する。 しかし、契約後の実際のインフレ率が、予想に反して4%になったと仮定する。この場合、名目利子率は7%のままなので、貸し手が得る実質金利は3%に減少する。 したがって、お金の貸し手から借り手へ2%の金利分、所得移転が行われたことになる。もしデフレーションが発生すれば、反対に借り手から貸し手へ所得移転が生じる。
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買いオペレーションと売りオペレーション
買いオペレーション→貨幣量の増加 売りオペレーション→貨幣量の減少 買いオペレーションとは、債権Bを買い、その代わりに市場へ現金C、あるいは準備預金Rを供給する政策のこと。 売りオペレーションとは、債権を売り、市場から現金を吸収する政策のこと。
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法定準備率操作とは
市中金融機関の預金に対する準備預金の割合である、預金準備率rを変化させることによって貨幣量を操作する方法。市中金融機関は法令により、預金の一定割合を無利子で中央銀行に預け入れることが義務づけられている。rを引き下げると、民間銀行は中央銀行に預ける必要がなくなった資金が発生する。この資金を貸出金という形で運用すれば、信用創造により貨幣量は増加する。
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貨幣乗数とは
貨幣供給量(マネーサプライ)MがハイパワードマネーHの何倍になっているかを示す値のこと。すなわち、中央銀行が1単位ハイパワードマネーを増加させた場合の、貨幣供給量の増加量を示したもの。 m=(C+D)/(C+R)=M/H R/D: 預金準備率
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マネタリーベース/ハイパワードマネーとは
中央銀行が直接、供給する貨幣のことであり、具体的には現金Cと準備預金Rの合計のこと。 準備預金Rとは、民間銀行などの金融機関が中央銀行に預けている預金のこと。 公定歩合政策と公開市場操作は、このハイパワード・マネーの増減によって貨幣供給量Mを操作している。 因みに、法定準備率操作は法定準備率を操作することで、貨幣乗数mに影響を与え、貨幣供給量Mを操作する方法である。
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貨幣の形態が時代と共に変化した理由
金属など商品貨幣から兌換紙幣、不換紙幣と貨幣の形態が変化した理由は、機動的に流動性を供給することが要求されたからである。よって、貨幣の最大の特徴は流動性という性質にあると考えられる。
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貨幣と資産の名目利子率
流動性を確保するための機会費用と解釈可能である。
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2種類の紙幣
①兌換紙幣: 紙幣の価値と金属貨幣の価値が1対1に対応している紙幣のこと。金属貨幣の預かり証書のようなもの。 ②不換紙幣: 発行主体である日本銀行に対する信用力にその価値を依存する紙幣のこと。
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キャピタル・ゲイン、インカム・ゲインとは
キャピタル・ゲインとは、債券価格の値上がりによる収益のこと。 インカム・ゲインとは、債権を保有することで受け取ることができる利息や配当などの収益のこと。
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リスクプレミアムとは
安全資産を上回る危険資産の期待収益のこと。つまり、危険回避的な家計がリスクを引き受けることに対して支払われる代償。
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負債と資本金の違い2つ
①毎期の利益の還元の形態が異なる。 負債の場合、毎期の利息の支払いが基本的に事前に確定しているのに対して、株式の場合、毎期の配当が企業の業績によって変化する。したがって、負債の方が株式よりリスクが少ない。 ②株式の保有者である株主は企業の所有者であるが、負債の保有者である債権者は企業の所有者ではない。なぜなら、債権者と比べると株主は利益の還元という点で遥かに多くのリスクを負っているからである。配当が企業の経営方針に大きく依存するということは、同時に株主は企業の経営に関与する権利を持っている。
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企業が意図的に在庫投資する理由
生産平準化理論 ここでは、財を生産する際の平均費用が逓増的であることを仮定している。この場合、需要の変動に関わらず、各期で生産量を出来るだけ一定に保つことが望ましい。そして、販売量の方が生産量よりも多い場合は在庫のストックを取り崩し、反対に、生産量の方が販売量よりも多い場合は在庫のストックを積み上げる。
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在庫投資を投資とみなす理由
在庫品投資は生産量から販売量を差し引いたもの。在庫品自体は現時点では利益を生まないが、将来売れれば利益が生じるので投資とみなされる。
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連鎖指数とは
指数の計算に当たって毎年基準年を1年ずつ更新していくというもの。 消費者物価指数や企業物価指数は、ラスパイレス型指数であり、基準年の取引量をウェイトにとっているので以下の問題が発生する。 例えばIT関連の製品などは、消費者の需要が年々増加しているにも関わらず、基準年の取引量でウェイトが計算されるために、そのウェイトは現時点での比率と比べると小さな値になる。結果として、指数の計算でIT関連の製品価格の変化を低く評価してしまう可能性が生じる。 これを回避するために「連鎖指数」という計算方法がある。
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価格の変化と生産量の変化による名目GDPと実質GDPの変化
基準年と比べてt期の全ての財・サービスの生産量が不変でも、価格が2倍になれば、名目GDPは2倍になるが、実質GDPは変わらない。 一方、全ての財・サービスの価格が不変でも、生産量が2倍になれば、名目GDPも実質GDPも2倍になる。
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(要素費用表示の)国内所得DI
DI= 国内総所得GDI-固定資本減耗-間接税+補助金 「要素費用表示」という表記の意味は、雇用者報酬と営業余剰がそれぞれ労働と資本という生産要素に支払われる粗付加価値の一部だから。 また、国民所得NIは、NI=DI- 海外からの純要素所得(受取額ー支払額)で求まる。
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国内総所得GDIの定義
GDI=雇用者報酬+営業余剰+混合所得+固定資本減耗+(間接税-補助金)
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中間財と最終財の違い
中間財: 他の財を生産するために用いられる財のこと 最終財: 他の財を生産するために投入されることのない財のこと
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国民経済計算SNAとは
ある国のマクロ経済活動の水準を、フローとストックの両面から測る制度のこと。内閣府が作成している。
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財市場の均衡式であるY=I+C+G+NX において、民間投資Iは利子率rの減少関数とされている。ここで、なぜ”民間”投資に限定しているのか。
公的投資は政府支出に含まれるので、中央政府や地方政府といった公的投資を含まないため、民間(企業と家計)だけを考えている。また、「実物」というのは設備投資・在庫投資・住宅投資のことを指し、株式投資などの金融投資はこれに含まれない。
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反応曲線とは何か
複占市場においてライバル企業の生産量を所与としたときに、ライバル企業の生産量が変化すれば自社の最適生産量も変化する。その変化の法則を示したものが反応曲線であり、これを式で表したものを反応関数という。
81
生産可能性集合とは何か
生産可能性集合とは、その企業が達成できる投入と産出の組み合わせ全体の集まりのことで、この生産可能性集合の境界を「生産関数」という。
82
代替効果、所得効果とは何か
代替効果:効用水準(実質所得)を一定としたときの、財の価格比(相対価格)の変化が最適消費の組み合わせに与える影響 所得効果:財の価格比を一定としたときの、実質所得の変化が最適消費の組み合わせに与える影響
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三面等価の原則とは何か
生産、分配、支出のどの面から見ても国内総生産は同じ値になるということ。 ここでは、三面等価が成立するために、暗に、生産されたものが過不足なく需要されているということを仮定している。 国民経済計算SNAにおいては、計画通りに販売できなかったものも「意図した在庫投資」と同様に「在庫品増加」という項目で処理しているため、総需要と総供給は常に一致している。
84
45度線分析、ISLM分析、ADAS分析、マンデル=フレミング・モデルについて説明せよ
45度線分析では財市場を分析し、 IS-LM分析では財市場と貨幣市場を同時分析し、 AD-AS分析では財市場と貨幣市場と労働市場を同時分析し、 マンデル=フレミング・モデル(IS-LM-BPモデル)は、IS-LM分析に国際収支の均衡を表すBP曲線(国際収支均衡線)を加えた経済分析のことで、BP曲線は国際収支を均衡させる、利子率と国民所得の組み合わせを表す曲線であり、経常収支CAと資本収支CFの和で表され、この和は0である。
85
動学的総需要総供給分析(DAD-DAS分析)における長期均衡点の特徴は何か
①インフレ率はマネーサプライの増加率に等しい ②国民所得は完全雇用国民所得Yf ③現実のインフレ率と期待インフレ率は等しい
86
インフレ供給曲線を導出せよ
縦軸にインフレ率、横軸に国民所得をとると、DASは右上がりの曲線になる。 インフレ供給曲線のシフト要因はインフレ率の変化なので、 インフレ率が上昇したとする。 この時、物価版フィリップス曲線から失業率は減少する。 オーカンの法則により、失業率の低下は国民所得の増加をもたらす。 以上のことから、インフレ率と国民所得との間には正の関係があることが分かるので、右上がりの曲線となる。
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地球温暖化問題の説明とその影響を述べよ。また、その本質と原因は何か(市場の失敗等)。この解決策も答えよ。
地球温暖化とは、熱エネルギーを宇宙空間に放出するのを妨げる二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの濃度が上昇することによって、地上の平均気温が上昇する問題である。 温暖化による大気の変化により異常気象が生じ、熱波による熱中症や洪水による被害、干ばつによる不作や水不足が生じている。また、氷の溶解による海面の上昇で移住を余儀なくされる住民が生じたりするなど、我々の社会に様々な影響を与えている。 環境問題の本質は、経済主体の経済行動が対価なしに他の経済主体に負の影響を与える外部不経済である。例として運送業を考えると、運送業者の自由な経済活動に任せておくと、トラックの台数が増え、死荷重を生み、効率的な資源配分が達成されない市場の失敗に陥ることになる。 このような生産活動とその財を需要する消費活動が世界各国、特に先進国で過去から現在にかけて継続されてきた結果、地球温暖化問題を引き起こすことに繋がった。 環境政策の一つとして「ピグー税」がある。政府が外部不経済を生む企業に対し、生産量1単位当たりにつきtの従量税を課すことによって、私的限界費用曲線は社会的限界費用曲線と一致する。その結果、総余剰を死荷重分だけ増やす効果があるので、環境政策を正当化することが出来る。 具体的方法として、炭素税を導入することが考えられる。炭素税を導入することによって、運送業の過剰生産(過剰なトラックの台数)を抑制すると同時に、低燃費トラックの導入を促進させる。こうした政策を地球温暖化問題解決の一つの手段とし、二酸化炭素排出量を抑制すべきである。