問題一覧
1
細菌の説明
細菌は最小の細胞性生物で、細胞膜にエステル型脂質を含む原核生物である。
2
細胞壁をもたない細菌をあげよ
アクチノバクテリア類、ファイトプラズマ、スピロプラズマなどのモリキューテス類
3
細菌の侵入方法はどのようなものか
植物体の傷口や自然開口部から侵入する。
4
シデロフォアとはなにか。
植物病原細菌を含む多くの細菌がその増殖に必要な鉄イオンFe3+を菌体内に取り込むために、分泌するキレート物質のこと。菌体外に分泌されたシデロフォアは鉄イオンと結合し、細胞壁にあるレセプターを経由して菌体内に輸送される。
5
Rhizobium radiobacte (旧学名Agrobacterium tumefaciens)は何病の病原細菌か。
根頭がんしゅ病
6
Clavibacter michiganensis subsp.michiganensisは何病の病原細菌か。
トマトかいよう病
7
Ralstonia solanacearum(旧学名 Pseudomonas solanacearum)は何病の病原細菌か。
ナス科植物青枯病
8
Pectobacterium carotovorum(旧学名 Erwinia carotovora subsp.carotovora)は何病の病原細菌か。
野菜類軟腐病
9
Xanthomonas oryzae pv.oryzaeは何病の病原細菌か。
イネ白葉枯病
10
Phytoplasma oryzae は何病の病原細菌か。
イネ黄萎病
11
ファイトプラズマ、スピロプラズマについて説明せよ。
ファイトプラズマは感染植物の師管内に生息し、ヨコバイ類などによって伝搬される不定形の細菌で、黄化、萎縮、叢生、葉化などの病徴を示す。スピロプラズマはファイトプラズマに似るが、螺旋状で人工培養できる。
12
ウイルスベクターとして利用できる条件は?
植物に全身的な感染性を有すること。, 病原性が弱い、または無病徴であること。
13
ウイルスベクターの利点は?
発現させたい目的の遺伝子を植物体内で生産できる。, 遺伝子組み換え植物を作らなくて良い。植物の遺伝子操作を行わなくて良い。, 植物の遺伝子配列に組み込むことで、その遺伝子の発現抑制に利用できる。
14
VIGSについて説明しなさい。
ウイルスの複製過程で生成される2本鎖RNAが引き金となり、RNAiが誘導される。2本鎖RNAと相補的なmRNAが分解されるため、植物の遺伝子の発現が抑制される。
15
ウイルスの植物組織における蓄積量はウイルスのどのような能力で決定されると考えられるか。
1つの細胞においてウイルスが複製する能力。, 細胞間連絡糸(原形質連絡)を介して隣接細胞に細胞間移行する能力。, 維管束(師管系)を通って他の組織に長距離移行する能力。
16
抵抗性とは
病原体の感染行動に対して、植物が様々な手段で立ち向かう性質のこと。
17
真性抵抗性(垂直抵抗性)とは
一つあるいは少数の遺伝子に支配される比較的効果の大きい抵抗性のこと。これは遺伝子対遺伝子説によって説明され、病原体の非病原性遺伝子と宿主品種の抵抗性遺伝子によって決定されている。
18
圃場抵抗性(水平抵抗性)とは
複数の遺伝子座の相乗効果によって発揮される品種非特異性抵抗性で、作用は特に大きくはないものの、病原体の系統やレースに左右されることがなく安定性が高いという特徴がある。後者に関連する多数の遺伝子座はQTLあるいはポリジーンという。
19
侵入抵抗性とは
宿主表皮の硬さや厚さなど、穿孔に対する抵抗性である。ワックスや潜在性抗菌物質などに加えて、ファイトアレキシンなどが関わる場合がある。栄養関係が成立するまでの感染の初期過程に働き、感染の成否に大きく影響する。
20
拡大抵抗性とは
病徴の拡大に対する抵抗性であり、病原体が感染成立後に組織内に蔓延する過程に働くもので、病気の進展や繁殖体の形成量の違いとなって現れる。
21
静的抵抗性とは
植物が常時持っている抵抗性のこと。病原体による感染の有無に関係なく、もともと備えている抵抗性。細胞壁の硬さや厚さ、先在性の抗菌物質などによるもの。
22
構造的障壁の例
植物表面のワックスやクチンなどが水滴をはじくことで病原菌類や病原細菌の侵入を妨げる。細胞壁の厚さや硬さ、ケイ酸により機動細胞の物理的強度を高めること。組織形態である気孔の開閉や構造が侵入の成否に影響する。
23
化学的障壁とは
先在性抗菌物質であるフェノールやサポニンなどのファイトアンティシピンによる障壁のこと。
24
動的抵抗性とは
病原体の攻撃に伴って新しく誘導される抵抗性のこと。誘導抵抗性とも。
25
構造的抵抗反応を説明せよ。
パピラ形成や細胞壁の強化などがある。病原菌の侵入糸が表皮細胞の細胞壁を貫通して細胞質に侵入しようとすると、侵入糸の先端を取り巻くようにパピラと呼ばれる構造ができ、侵入を阻止する。
26
過敏感反応とは
非親和性の病原体に攻撃された植物細胞が示す急激な形態学的、生化学的変化の総称。結果として病原体は褐変細胞に封じ込められ、それ以上の感染行動ができなくなる。この反応は活性酸素O2-の生成によって引き起こされ、過敏感細胞死は液胞の崩壊によって引き起こされる。
27
化学的抵抗反応について説明せよ。
化学的抵抗反応では、ファイトアレキシンとPRタンパク質が重要である。ファイトアレキシンは、病原体の攻撃によって植物中に新しく生合成される低分子の抗菌物質のこと。PRタンパク質は病原体の感染過程で宿主植物に特異的に発現する抗菌性タンパク質のこと。
28
バクテリオシンとは
抗菌性のタンパク質もしくはペプチドで、生産菌の類縁菌に対して殺菌的に働く。
29
ナス科植物青枯病の感染様式
根の傷口から侵入して道管内で増殖し、植物全体を急激に萎凋させる。病原細菌が生産する菌体外多糖類が道管の水分通導を妨げる。病植物の茎を切断して水に浸すと菌泥が観察できる。
30
野菜類軟腐病の感染様式
菌体の周囲に多数の鞭毛をもつ野菜類軟腐病菌によって起こる。病原細菌が生産するペクチナーゼなどの組織崩壊酵素群によって宿主細胞を遊離させ、腐敗させる。土壌伝染性病。病原細菌は土壌中や植物遺体中で越冬し、風雨などによる傷口や昆虫による食痕から植物組織中に侵入する。
31
グラム陽性菌と陰性菌の違い
グラム陽性細菌ではペプチドグリカン層が厚く、表面にタイコ酸などの酸性多糖類をもつ。グラム陰性細菌の細胞壁ではペプチドグリカン層の外側に、タンパク質、リポ多糖、リン脂質などを含む外膜がある。外膜には多くのタンパク質が含まれていて、バクテリオファージやバクテリオシンなどのレセプターが含まれ、抗原性も強い。グラム陰性細菌の外膜と細胞膜との間隙はペリプラズムといい、酵素や基質の貯蔵場所となっている。
32
根頭がんしゅ病の感染様式
1.TiプラスミドからT-DNAが切り出される。2.性繊毛を通ってT-DNAが植物細胞内に入る。3.植物細胞の核に入る。4.植物細胞の性染色体に組み込まれる。5.植物細胞に組み込まれたT-DNAが発現し、オーキシンやサイトカイニンか生産され、細胞が異常増殖する。
33
カンキツかいよう病の感染様式
Ⅲ型分泌機構により、病原性因子が菌体内から植物細胞内に送り込まれる。標的因子との相互作用により植物遺伝子の転写を促進する。細胞肥大や細胞分裂の遺伝子発現を促進することにより、かいようが形成される。
34
遺伝子対遺伝子説
植物品種が特定の病原体(レース)に示す抵抗性(非親和性)反応は、宿主品種の抵抗性遺伝子と病原体レースの非病原性遺伝子の組み合わせにより発現する。
35
PAMPsとは
病原体の表層に存在する特有の分子パターン=どんな種の病原体でも共通して持っている構造。
36
宿主寄生者間相互作用の進化段階
1.植物は寄生菌に対して、非特異的か非宿主抵抗性によって自己を防衛していた。 2.ある腐生菌がその植物種の非宿主抵抗性を打破する方向に自己を適応させ、基本的親和性を獲得して寄生者になり、植物はその菌の宿主になった。 3.宿主のなかにある個体が品種抵抗性を獲得して菌の寄生を排除した。その結果、その菌はその宿主に対する非親和性レースになった。 4.排除された菌のうちのあるものが、品種抵抗性を打破する方向に自己を適応させ、親和性レースになった。 5.これらの繰り返しによって、複雑な宿主寄生者間相互作用ができあがった。
37
PTGSとは
遺伝子が転写された後にタンパク質に翻訳されるまでの過程で遺伝子発現が負に制御される現象。植物に外来遺伝子を導入した際に、導入遺伝子にこの現象がしばしば観察される。
38
Potyvirus属のヘルパー成分タンパク質(HC-Pro)は、1の蓄積とRISCによる2を阻害し、RNA分解の程度を低下させると考えられている。
siRNA, RNA切断
39
PAMPsの例
細菌:鞭毛を構成するフラジェリン、翻訳伸長因子EF-Tu 菌類:細胞壁を構成するキチン
40
SARの誘導には病原体の感染によって最初に1が起こるが、病徴の一部としてえそ斑が形成される必要がある。これにより感染葉では2の濃度が高まり、これが師管を経由して全身に運ばれ、3が蓄積して、菌類や細菌による感染に抵抗する。また2は、RNAサイレンシングを誘導し、ウイルスに対する抵抗性を高める。
過敏感反応, サリチル酸(SA), 酸性PRタンパク質
41
hrp遺伝子群を説明せよ。
ほとんどの植物病原細菌が持つ遺伝子群。, 20以上の遺伝子が連続して並んでいる。, それぞれの遺伝子は、他のhrp遺伝子の制御タンパク質である。, 分泌機構構成タンパク質・被分泌タンパク質をコードしている。, HRの誘導と病原性の両方に関与している。
42
プラントアクティベーター、プラントディフェンスアクチベーターの特徴
全身獲得抵抗性(SAR)を誘導する。, 直接的な抗菌活性は示さない。, 生物的に誘導されるSARと同じ発病抑制スペクトラムを示す。, 生物的に誘導されるSARと同じマーカー遺伝子を発現させる。, 薬剤に対する耐性菌が出現する可能性が低いと考えられる。
43
1の硬さや厚さなど、穿孔に対する抵抗性。ワックスや先在性抗菌物質などに加え、2などが関わる場合もある。栄養関係が成立するまでの感染の初期過程に働き、3に大きく影響する。
細胞壁, ファイトアレキシン, 感染の成否
44
病原体が感染成立後に組織内に、病原体が蔓延する過程にはたらく病気の1や2の違いとなって現れる。
進展, 繁殖体の形成量
45
菌体の周囲に1の鞭毛をもつPectobacterium carotovorumによって起きる。病原細菌が生産する2などの組織崩壊酵素群によって宿主細胞を遊離させ、腐敗させる。輸送中や保存中にも発生する。病原細菌は土壌中や植物遺体中で越冬し、3などによる傷口や、4から植物組織中に侵入する。
多数, ペクチナーゼ, 風雨, 昆虫による食痕
46
菌体の周囲に1の鞭毛をもつ、Rhizobium radiobacter(Ti)(旧学名 2)による。病原細菌は地際部の傷口から侵入し、感染した植物は主に3の拡大により生育が衰える。菌体が持っている巨大な4のT-DNAと呼ばれる部分が、5へ移行する。T-DNAを送り込む機構はⅣ型分泌系と言われ、動植物の病原細菌の多くが細胞に6(病原性因子)などを送り込む機構(Ⅲ型分泌機構)によく似ている。
数本, Agrobacterium tumefaciens, こぶ, Tiプラスチド, 植物組織, タンパク質
47
エフェクターとは
菌体内で生産され、菌体外に分泌されるタンパク質の総称。
48
TENGUによるてんぐ巣症状誘導メカニズムについて。
ファイトプラズマが分泌するTENGUによってオーキシン経路が抑制され、頂芽優勢が崩れ、てんぐ巣のように小枝がたくさん生える。
49
ファイトプラズマ感染による葉化、緑化のメカニズム
花の器官形成に関わるシグナル経路の上流に影響を与える、花芽形成に関わるクラスの遺伝子群の発現異常をもたらす、花の形態異常を引き起こす。
50
病気の主な原因となるものを1という。感染して直接に病気の原因となる2や3、4などの病原微生物を5という。病原微生物の中でも、菌類や細菌は病原菌と呼ばれることも多い。病原微生物に寄生される側の植物は6植物あるいは7という。病原微生物により起こる病気は発病植物から健全植物へ伝染するので、8病と呼ばれる。植物の生育に重要な化学的、物理的な環境要因などで起きる病気は9病と称され、これは伝染しない。
病原, 菌類, 細菌, ウイルス, 病原体, 宿主, 宿主, 伝染, 生理
51
ウイルス粒子の基本構造は、1か2。RNAまたはDNAがタンパク質でできた3に包まれている。3とは、4とよばれるタンパク質サブユニットが集合したもの。
らせん形, 正二十面体形, キャプシド, 外皮タンパク質(CP)
52
非永続型伝搬と永続型伝搬について説明せよ。
非永続型伝搬では媒介昆虫は罹病植物に口針を数秒から数十秒探り挿入するだけでウイルスを獲得する。媒介能は一時的である。永続型伝搬では獲得吸汁に数時間以上が必要で、その後数時間から数日間の虫体内潜伏期間の後に、ウイルスを獲得した虫は、数日以上、時には終生伝染能力を保持する。また永続型伝搬は循環型(非循環型)と増殖型に分けられる。循環型はウイルスが昆虫の体内を循環した後に伝染する。増殖型は虫体内でウイルスが増殖し、卵を経て子虫へ伝染する場合もある。
53
ウイルスのライフサイクルを説明せよ。
植物ウイルスは植物に感染すると5'末端から徐々に脱外被を始め、リボソームと結合してRNAポリメラーゼの合成を開始する。脱外被した+鎖RNAからは、RNAポリメラーゼの働きによって−鎖RNAがつくられ、+鎖RNAと二本鎖を形成して複製型(RF)になる。次に、-鎖側の複製中間体(RI)を鋳型にして+鎖のゲノムRNAと2種類のサブゲノムRNAが合成され、サブゲノムRNAからMPとCPが翻訳される。完成したゲノムRNAとCPは、自己集合によって自動的にウイルス粒子に組み上がる。
54
過敏反応の過程を説明せよ。
病原菌が侵入を開始してから25分後に宿主細胞の原形質流動が停止し、その10分後に細胞死が起こり、やがて侵入菌糸の生育が停止する。12時間後には細胞は黒褐色に変色し、侵入した菌も死滅する。
55
宿主の抵抗性に打ち勝つ性質とは
抵抗性抑止力
56
ウイロイドの説明ともたらす病気を挙げよ。
ウイロイドは250から400塩基ほどの単一低分子の環状一本鎖RNAでキャプシドをもたない。2通りのローリングサークルと呼ばれる様式で複製される。もたらす病気はポップ矮化病である。