問題一覧
1
我が妻も 絵に描き取らむ 暇もが
旅行く我は 見つつ偲はむ
2
あかねさす 紫野行き 標野行き
野守は見ずや 君が袖振る
3
世の中を しとやさしと 思へども
飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば
4
稲搗けば かかる我が手を 今夜もか
殿の若子が 取りて嘆かむ
5
防人に 行くは誰が背と 問ふ人を
見るがともしさ 物思もせず
6
君が行き 日長くなりぬ 山尋ね
迎へか行かむ 待ちにか待たむ
7
大和には 群山あれど とりよろふ
天の香具山 登り立ち 国見をすれば
8
石走る 垂水の上の さわらびの
萌え出づる春に なりにけるかも
9
春の野に 霞たなびき うらし
この夕影に うぐひす鳴くも
10
夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の
知らえぬ恋は 苦しきものそ
11
かはづ鳴く 神奈備川に 影見えて
今か咲くらむ 山吹の花
12
巨勢山の つらつら椿 つらつらに
見つつ偲はな 巨勢の春野を
13
信濃なる 千曲の川の 小石も
君し踏みてば 玉と拾はむ
14
世の中は 空しきものと 知る時し
いよよますます 悲しかりけり
15
若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ
芦辺をさして 鶴鳴き渡る
16
近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば
心もしのに 古思ほゆ
17
あをによし 奈良の都は 咲く花の
薫ふがごとく 今盛りなり
18
君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の
小松が下に 立ち嘆くかも
19
君が行く 道の長手を 繰り畳ね
焼き滅ぼさむ 天の火もがも
20
紫草の にほへる妹を 憎くあらば
人妻故に 我恋ひめやも