問題一覧
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⭐️捜査
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職務質問における有形力の行使
職務質問の実効性を確保するため、「停止」行為として一定の有形力を行使できる場合があると解する。 もっとも、「停止」行為は任意手段である職務質問の付随行為として許容されるのだから、強制処分に至らない程度の行為であることを要する。 また、強制処分に至らない程度の行為であってもこれを受ける者の権利を侵害するから、無制約には許容されず、必要性、緊急性、これにより害される個人の法益と保護されるべき公共の利益の権衡等を考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ許容されると解する。 ※警職法2条1項 ※前提として職務質問が適法か(不審自由があるか)を論じる ※流れ ・「停止」行為として認められる場合あり ・「強制の処分」→任意処分の限界
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所持品検査の内容
①外部から観察する ②所持品の内容について質問する ③所持品の任意提出を求める ④衣服等の外部から手を触れて所持品の有無等を確認する ⑤所持品を開披して中身を見たり、衣服等に手を差し入れてら内容物を取り出す ※①から④は問題ない
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職務質問に伴う所持品検査
所持品検査について明文の規定はないが、口頭による質問と密接に関連し、職務質問の効果を高める上で必要性、有効性があるから、職務質問に付随する行為として認められる場合がある。 所持品検査は、任意手段である職務質問の付随行為として認められるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度で行うのが原則である。 もっとも、所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であり、流動的な捜査に対応し、真実を発見するという警察の責務に鑑みれば、所持人の承諾のない所持品検査が一切許容されないとするのは相当ではない。 そこで、捜索などの強制処分に至らない程度の行為であれば、所持人の承諾がなくても認められる場合があると解する。 もっとも、強制処分に至らない程度の行為であっても、これを受ける者の権利を侵害するから、無制約には許容されず、必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ許容されると解する。 ※前提として、職務質問が適法か(不審自由があるか)の論証を忘れない。 ※流れ ・職務質問の付随行為としてok ・所持人の承諾を得て行うのが原則 ・例外的に承諾なくともokな場合あり ・「強制の処分」→任意処分の限界 ※米子銀行強盗事件
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取調の限界
任意取調(198条1項)は、任意処分として認められるのであるから、強制処分に至らない程度の行為であることを要する。 強制処分とは、相手方の意思に反し、重要な権利利益を実質的に侵害する処分をいう。 (あてはめ) 任意取調といえども、これを受けるものは精神的・肉体的に負担を被るから無制約には許容されず、事案の性質、被疑者に対する嫌疑の程度、被疑者の態度等の諸般の事情を考慮し、社会通念上相当と認められる限度においてのみ許容されると解する。 ※流れは「強制の処分」→「任意処分の限界」 ※高輪グリーンマンション事件
6
自動車検問の適否
○不審車両の場合 職務質問(警職法2条1項)にあたる ○交通検問の場合 根拠規定なし 自動車検問は、交通違反の予防・検挙のために行われるものであるところ、行政警察活動にあたることから刑事訴訟法の適用はない。また、不審事由がない車両にも一斉に検問をかけるため、警察官職務執行法の適用もない。そこで、根拠法なく行われる自動車検問が適法といえるかが問題となるも、侵害留保の原則によれば、法益侵害や権利制約がない場合には、特別の根拠規定がなくても、これを適法に行うことができると解する。 そこで、①相手方の任意の協力を求める形で行われ、②自動車利用者の自由を不当に制約することにならない方法・態様で行われる場合には、適法であると解する。
7
⭐️証拠
8
証拠能力の関連性
①自然的関連性 ・必要最小限度の証明力を有していること(無関係ではない) ・被告人の犯人性を証明するため、被告人の悪性格を立証することは、自然的関連性なし ・被告人の犯人性を証明するため、同種前科や類似行為を立証することは、自然的関連性あり ②法律的関連性 ・証拠禁止ではない ・伝聞法則、自白法則など ③証拠禁止ではない ・違法収集証拠排除法則 ・①②③の全て満たして証拠能力OK ・①②③の順で検討
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前科証拠の関連性
○自然的関連性 前科証拠は、被告人と犯人の同一性の証明に用いる上では、必要最小限度の証明力を有しているといえ、自然的関連性は認められる。 ○法律的関連性 前科については、被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価に繋がりやすく、事実認定を誤らせる恐れがある。また、当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が出てくる等、争点を拡散させる危険性もある。 そうだとすれば、前科証拠は、被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定がなされる恐れがない場合に、証拠として認められると解する。 そこで、前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合、①前科にかかる犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、②それが起訴にかかる犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであるといえるときは、法律的関連性が認められると解する。 ※前科→被告人はこんなことする悪いヤツだ(犯罪性向)→犯人性 はNG ※前科→犯人性 はOK(直接推認する) ※①はかなり特異なものでなければならない
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伝聞法則
伝聞証拠の証拠能力が原則として否定される趣旨は、供述証拠は知覚、記憶、叙述の各プロセスに誤りが混入する恐れがあり、反対尋問等によりその真実性をチェックする必要があるにもかかわらず、伝聞証拠ではそれがなし得ない点にある。 そうだとすれば、伝聞証拠とは、公判廷外における供述を内容とした供述(又は書面)で、原供述の真実性が問題となるものをいうと解する。 ※要証事実との関係で相対的に決まる。 ※立証趣旨→犯行否認(立証の必要性)→要証事実の流れが大事
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写真の証拠能力
写真は、知覚、記憶、叙述の過程を経ず、機械的に作成されるものであるから、非供述証拠であり、伝聞証拠ではない。
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違法収集証拠排除法則
違法な手続によって収集された証拠の証拠能力について明文の規定はないが、事案の真相の究明は適正な手続き(憲法31条)の下でなされるべきであり、違法な手続きによって収集された証拠を全て許容すると、司法の廉潔性に反する上、将来における違法捜査の抑制の観点から相当でない。一方で、収集手続が違法であっても証拠価値に影響があるとはいえないし、軽微な違法に過ぎない場合にまで証拠能力を全て認めないとなると、真実発見の要請に応えられない。 そこで、①証拠の収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠とすることが将来における違法捜査抑制の見地から相当でないと認められる場合は、証拠能力は否定される。 ※①を満たせば②も満たす
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違法性の承継
(先行手続に違法あり、後行手続に違法なし) 適正手続、司法の廉潔性、将来における違法捜査抑制といった違法収集証拠排除法則の趣旨の没却を防ぐため、先行手続と後行手続が別個のものであっても、両手続が同一目的・直接利用の関係にあるなど、密接な関連性がある場合には、先行手続の違法が後行手続に承継されると解する。
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自白とは
自己の犯罪事実の全部又は主要部分を認める被告人又は被疑者の供述
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自白法則
自白法則の趣旨は、任意性に疑いのある自白は虚偽の恐れがあり、誤判防止の見地から類型的に証拠能力を否定することにある。 そうだとすれば、「任意でされたものでない疑いのある自白」とは、取調べ等の状況が被告人の心理に及ぼした影響を鑑み、虚偽の自白を誘発する恐れのある状況でなされた自白をいう。 (虚偽排除説)
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「検証の結果を記載した書面」(321条3項)に比較的緩い要件で証拠能力を認めている趣旨
「検証の結果を記載した書面」(321条項)に比較的緩やかな要件で証拠能力を認めている趣旨は、検証の結果は書面の方が正確かつ詳細である上、検証は物、人、場所の存在、性質等を客観的に認識するものであり、検証者の主観的意図により内容が歪められる恐れが少ない点にある。
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「強制の処分」(刑訴197①ただし書)
「強制の処分」にあたるとなると、令状主義(憲法35条、刑訴法218条1項)や強制処分法定主義といった厳格な法的規制に服することになるため、「強制の処分」はそれだけの厳格な法的規制に見合うだけの重要な権利利益を侵害する処分と解すべき。 そこで、「強制の処分」とは、相手方の意思に反し、重要な権利利益を実質的に侵害する処分をいう。 強制の処分にあたる →①強制処分法定主義、②令状主義 の検討 強制の処分にあたらない →任意処分の限界
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任意処分の限界
任意処分といえども、何らかの権利利益を侵害し、又は侵害し得るから、無制約には許容されない。 そこで、必要性、緊急性などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ許容される。
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おとり捜査とは
おとり捜査とは、捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するよう働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところを現行犯逮捕等により検挙する捜査手法
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おとり捜査の適法性
○「強制の処分」の検討 おとり捜査に関して「特別の定」はないから、これが「強制の処分」にあたれば、強制処分法定主義(197条1項ただし書)に反して違法となる。そこで、おとり捜査が「強制の処分」に当たるかが問題となる。 ある処分が「強制の処分」に当たるとなると、令状主義や強制処分法定主義といった厳格な法的規制に服することになるため、「強制の処分」とはそれだけの厳格な法的規制に見合うだけの重要な権利利益を侵害する処分と解すべき。 そこで、「強制の処分」とは、相手方の意思に反して重要な権利利益を実質的に侵害する処分をいうと解する。 おとり捜査は、捜査機関等が相手方に犯罪を実行するよう働きかけているものの、犯罪を実行する意思は相手方に委ねられているため、相手方の意思に反するとはいえず、「強制の処分」には当たらない。 ○任意処分の限界 おとり捜査は任意処分といえども、捜査の公正さや刑事訴訟法が保護する法益を侵害し、または侵害しうるから、無制約には許容されない。そこで、必要性、緊急性等を考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ許容されると解する。 そして、少なくとも、①直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、②通常の捜査手法では摘発が困難である場合に、③機会があれば犯罪を行う意思を有していると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、任意処分として許容されると解する。
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検証とは
場所、物、人の存在、形状、状態等を五官の作用により認識する強制処分 写真撮影は、検証の結果を収録する行為
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実況見分とは
検証の任意処分バージョン
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捜索差押許可状執行の際の写真撮影の適否
(「強制の処分」の検討) 強制の処分にあたれば、 原則として検証令状必要 捜索差押許可状執行の適法性を担保するためや、差押物件の証拠価値保存のための撮影は必要性があるし、それにより相手方が被るプライバシー権侵害の程度は、捜索差押許可状の執行に伴う付随的なものであり、許容性も認められる。 そこで、①捜索差押許可状執行の適法性を担保するため、その状況を撮影することや、②差押物件の証拠価値を保存するため、発見された場所、状態においてその物を撮影することは、捜索差押許可状執行における「必要な処分」(111条1項、222条)として許容されると解する。 ※捜索差押許可状に記載のない物件の撮影は違法
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捜索差押許可状を提示する「処分を受ける者」(110条)
捜索すべき場所及び差し押さえるべき物件を現実に支配する者
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捜索差押許可状の「差し押さえるべき物件」の概括的記載の適否 「その他本件に関係ありと思料される一切の証拠」
捜索差押許可状に「差し押さえるべき物件」の記載を要求した趣旨は、捜索差押の対象を明確にすることで相手方の財産権やプライバシー権を保護し、捜査機関の捜索差押権限の濫用を防止することにあるため、「差し押さえるべき物件」はできる限り具体的に記載すべきである。 一方、捜索の初期段階では具体的内容が判明していないことも多く、厳格な記載を要求したのでは、捜査を不可能にすることもあり、一定程度概括的な記載も許容すべきである。 そこで、被疑事実に関係があり、具体的例示に付加されたものであって、例示に準じる物件を指すことが明らかであれば、概括的記載も許容されると解する。
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捜索差押許可状 「捜索すべき場所」の概括的記載の要否
捜索差押許可状に「捜索すべき場所」の記載を要求した趣旨は、捜索差押の範囲を明確にすることで、捜査機関の捜索差押権限の濫用を防止し、相手方のプライバシー権を保護することにある。そうだとすれば、「捜索すべき場所」はできる限り具体的に記載すべきである。 一方、捜査の初期段階等では具体的内容が判明していないことも多く、詳細な記載を要求したのでは捜査を困難にし、真実発見の要請に応えられない。 そこで、合理的に解釈してその場所を外形的・客観的に特定しうる程度であれば、概括的記載でも許容されると解する。 (あてはめ) ○空間的位置の明確性 →町名番地の記載は必要 ○管理権の単一性 →アパート等では部屋番号までの記載が必要
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捜索差押許可状の罪名の記載方法
憲法35条及び刑事訴訟法219条1項の文言上、捜索、差押につき、その令状に、罪名として適用罰条まで記載すべきことは規定されていない。起訴状では罪名として、罰条の記載が明確に要求されている(256条4項)こととの区別からも、捜索差押許可状においては、適用罰条の記載は要求されていないと解される。 よって、捜索差押許可状に罪名として適用罰条まで記載する必要はないと解する。
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捜索差押許可状への被疑事実の記載の要否
憲法35条及び刑事訴訟法218条1項の文言上、捜索、差押につき、その令状に被疑事実の記載まで要求されていない。また、捜索差押許可状は処分を受ける者にこれを示さなければならないところ(222条1項本文、110条)、被疑事実の詳細な記載は捜査上の秘密を害し、事件関係者の名誉やプライバシー権を害する恐れがある。 よって、捜索差押許可状に被疑事実を記載する必要はないと解する。
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捜索差押の範囲 「場所」に対する令状により人の携帯物等の捜索で可能か
捜索場所の居住者やそれに準じる者の携帯物は、捜索場所の備品や付属品と評価でき、「場所」に包摂されているものとして裁判官の令状審査を受けたといえる。 よって、捜索差押場所の居住者やそれに準じる者の携帯物には、「場所」に対する令状の効力が及ぶと解する。 なお、上記理論からすれば、捜索差押場所に偶然居合わせた第三者の携帯物は、当該場所の備品とは評価できず、「場所」に包摂されているものとして裁判官の令状審査を受けたとはいえないから、「場所」に対する令状の効力は及ばないと解する。 もっとも、第三者が当該場所にある物を捜索開始後に隠匿したと認められる場合には、捜索差押許可状執行における「必要な処分」(222条1項本文、111条1項)として当該第三者の携帯物を捜索することができると解する。
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捜索差押の範囲 「場所」に対する令状により人の「身体」の捜索が可能か
219条1項は「場所」と「身体」を明確に区別しているほか、218条1項では、身体の検査につき、別途、身体検査令状を要求していることから、法は場所と身体を別個のものとして捉えている。また、身体は場所と異なり人格を有することから、身体に対する捜索により相手方が被るプライバシー権や人身の自由への侵害の程度は、場所に対するプライバシーに包摂されているとは評価できない。 よって、原則として、「場所」に対する令状により、人の「身体」を捜索することはできないと解する。 もっとも、捜索場所に居合わせた者が、捜索開始後に捜索差押の対象物を身体に隠匿したと認められる場合には、捜索差押許可状執行における「必要な処分」(222条1項本文、111条1項)として、その者の身体を捜索することができると解する。
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「逮捕する場合」(220条1項柱書)の意義
逮捕に伴う無令状の捜索差押が許容される趣旨は、逮捕の現場には被疑事実に関連する証拠物が存在する蓋然性が高く、裁判官の令状審査を経る必要がない点にあるところ、逮捕着手の前後で当該蓋然性に変化はないといえる。 そうだとすれば、「逮捕する場合」といえるためには、逮捕との時間的接着性は必要とするが、逮捕着手との前後関係は問わないと解する。 もっとも、逮捕前に捜索差押に着手した場合において、その後に被疑者を逮捕できなかった場合は、「逮捕する場合」とはいえないから、当該捜索差押は違法となると解する。
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「逮捕の現場」(220条1項2号)の意義
逮捕に伴う無令状での捜索差押が許容される趣旨は、逮捕の現場には被疑事実に関連する証拠物が存在する蓋然性が高く、裁判官の令状審査を経る必要がない点にあるため、仮に令状請求をした場合、捜索差押許可状が発付される可能性が大きい。 そうだとすれば、「逮捕の現場」とは、通常の捜索と同じく、現実に逮捕された場所と同一の管理権が及ぶ範囲内に限られると解する。
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逮捕現場から移動した後の捜索差押の適否
逮捕に伴う捜索差押が、被疑者の身体または所持品に対するものである場合、逮捕現場付近の状況に照らし、被疑者の名誉等を害し、又は、被疑者の抵抗により逮捕現場付近の交通を妨げる等の混乱が生じるといった事情のため、その場で直ちに捜索差押を実施することが適当でないときは、速やかに被疑者を捜索差押に適した最寄りの場所まで連行した上で捜索差押を実施することも、「逮捕の現場」における捜索差押と同視できると解する。
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無令状の捜索差押における対象物の範囲
逮捕に伴う無令状の捜索差押が許容される趣旨は、逮捕の現場には被疑事実に関連する証拠物が存在する蓋然性が高く、裁判官の令状審査を経る必要がない点にある。 そうだとすれば、逮捕の理由となった被疑事実に関連する証拠物の発見を目的とする捜索差押は許されるが、それ以外の犯罪事実のみに関係する証拠物を発見すべく捜索をすることは許されないと解する。 ※仮に別罪の証拠が発見されたら ○任意提出を求めて領置(221条) ○禁制品であれば新たに現行犯逮捕し、それに伴う捜索差押
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通常逮捕の要件
通常逮捕をするためには、①逮捕の理由(199条1項本文)及び②逮捕の必要性(199条2項ただし書、規則143条の2)が必要である。 ①「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」(逮捕の理由)とは、被疑者に対する特定の犯罪の嫌疑の相当性をいう。 ②逮捕の必要性とは、逃亡・証拠隠滅の恐れがないとは明らかには認められないことをいう。 ※逮捕の必要性の要件は、勾留の場合と違い、消極的な表現(勾留より緩やか)
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勾留の要件
勾留をするには、①勾留の理由(207条1項、60条1項)、②勾留の必要性(207条1項、87条1項)が必要である。 ①勾留の理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること及び60条1項各号のいずれかに該当することをいう。ここにいう相当な理由とは、勾留が逮捕より身体拘束が長期間に及ぶことに鑑み、通常逮捕よりも高いものが要求される。 ②勾留の必要性については、勾留によって得られる捜査上の利益の程度と、勾留によって生じる権利利益の侵害の程度とを均衡し、相当性が認められるかによって判断する。 ※逮捕では必要性で論じられていた逃亡・罪証隠滅の恐れは、勾留では勾留の理由で論じられている(60条1項各号) ※勾留の理由では勾留の相当性を判断する ※60条以下で裁判所による被告人勾留を規定し、それを207条1項において裁判官の被疑者勾留に準用している。
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現行犯逮捕の要件
現行犯逮捕が無令状で許容される根拠は、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であり、裁判官の令状審査を経なくとも誤認逮捕の恐れが低い点にある。そうだとすれば、「現に罪を行い、又は行い終わった」といえるためには、①逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であること、②犯行と逮捕の時間的場所的接着性があることが必要であると解する。また、通常逮捕との均衡から③逮捕の必要性も必要である。 そして、上記根拠からすれば、①は逮捕者自身が認識した客観的状況を基準にすべきであり、目撃者の供述や被逮捕者の自白等は客観的状況を補充するものとして用いることができるに過ぎない。 ※②時間的場所的接着性は、30分〜40分が限度 ※③逮捕の必要性は、通常逮捕の場合と同じ(逃亡・証拠隠滅の恐れがないとは明らかには認められないとき)
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一罪一逮捕一勾留の原則
①重複逮捕・重複勾留禁止の原則(同時) 実体法上一罪の犯罪事実につき、同時に2個以上の逮捕・勾留を行うことは原則として許されない ②再逮捕・再勾留禁止の原則(異時) 同一の被疑事実について、時を異にして逮捕・勾留することは原則として許されない
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再逮捕・再勾留の可否
再逮捕・再勾留とは、同一の被疑事実について、時を異にして逮捕・勾留をすることをいう。 再逮捕・再勾留は、203条以下において逮捕・勾留の期間について厳格な制約を設けている趣旨に反することになり、被疑者の人権保障の見地から許されないのが原則である。 もっとも、捜査の流動性に鑑みれば、再逮捕・再勾留を一切許容しないのは、事案の真相の究明の要請に応えられない。199条3項は再逮捕が認められることを前提とした規定であり、再勾留についてもこれを禁止した規定はなく、逮捕と勾留が密接不可分であることからすれば、法は一定の場合には再逮捕・再勾留を許容しているといえる。 再逮捕・再勾留が認められる場合については、上記原則に鑑み、厳格に解すべきであり、①新事情が出現し、②犯罪の重大性等の諸般の事情を考慮し、被疑者の利益と比較してもやむを得ない場合といえ、③前逮捕・勾留の不当な蒸し返しとならない場合においてのみ認められると解する。 ※新事情(新証拠の出現、逃亡・罪証隠滅の恐れの再発生) ※①②が認められれば、基本的に③も認められる。
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重複逮捕・重複勾留の可否
重複逮捕・重複勾留とは、実体法上一罪の犯罪事実につき、同時に2個以上の逮捕・勾留を行うことをいう。 重複逮捕・重複勾留は、203条以下において逮捕・勾留の期間に厳格な制約を設けた趣旨に反することになり、被疑者の人権保障の見地から許されないのが原則である。 もっとも、同原則の根拠は捜査機関の同時処理義務に求められるから、実体法上一罪であっても同時処理が不可能であれば、重複逮捕・重複勾留禁止の原則は適用されず、一罪に対して新たな逮捕・勾留をすることが認められると解する。 また、同時処理が可能であって、同原則が適用される場合であっても、①新事情が出現し、②犯罪の重大性等の諸般の事情を考慮し、被疑者の利益と比較してもやむを得ない場合と認められ、③逮捕・勾留の不当な蒸し返しといえない場合には、例外的に、一罪に対して新たな逮捕・勾留が認められると解する。
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別件逮捕・勾留の可否
別件逮捕・勾留とは、本件についての逮捕・勾留の要件の具備がないのに、その取調に利用する目的で、逮捕・勾留の要件を具備している別件で逮捕することをいう。 逮捕・勾留の要件は被疑事実について判断するものであるところ、裁判官が令状審査において、本件の捜査目的を有する捜査官の主観的意図を推知するのは困難であることから、別件において逮捕・勾留の要件を満たす限り、原則として当該逮捕・勾留は適法と解する。 もっとも、別件を被疑事実とする身体拘束の期間が、主として本件の捜査のために利用されるに至った場合、その時点から、かかる身体拘束は令状記載の被疑事実に関する身体拘束としての実体を失い、令状によらない違法な身体拘束に転化すると解する。そして、本件の捜査のために利用されるに至ったかどうかは、本件と別件の関連性、本件と別件の罪の重大性等の取調の状況を客観的に判断すべきである。
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先行する逮捕手続に違法がある場合の勾留請求の適法性
※明文ないため問題となる 法は逮捕に対する準抗告(429条1項2号参照)を認めておらず、逮捕手続自体の適法性を裁判官が審査する術がない。また、逮捕手続に違法があるにも関わらず勾留を認めるとなれば法を軽視した運用を誘発する恐れがあり、被疑者の人権保障の見地から相当でない。 そうだとすれば、先行する逮捕手続に違法がある場合、これに続く勾留手続も違法とすべきである。 もっとも、先行する逮捕手続の違法が軽微であっても常に勾留が違法になるとすれば、被疑者の逃亡や罪証隠滅を防いだ状態で捜査の継続が困難となり、真実発見の要請に応えられない。 そこで、先行する逮捕手続に重大な違法がある場合に限り、それに続く勾留手続も違法となると解する。 ※重大な違法=令状主義(憲法33条、刑訴法199条1項)違反
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令状のない実質逮捕の適法性
令状主義(憲法33条、刑訴法199条1項)に反して、重大な違法があるとも思える。 実質逮捕の時点で令状がなくても、 ①実質逮捕の時点で緊急逮捕(210条1項)の要件を具備し、②その後直ちに通常逮捕の手続が履践され、③実質逮捕の時点から起算して法定の制限時間が遵守されていれば、重大な違法は認められないと解する。
44
⭐️公判
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訴因の機能
◎裁判所に対する審判対象識別機能 ○被告人に対する防御範囲指定機能 両者は表裏の関係
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訴因(罪となるべき事実)の特定(256条3項)
「罪となるべき事実」とは、犯罪の構成要件に該当する具体的事実を指すから、訴因の特定には、訴因に記載された被告人の行為が、特定の犯罪の構成要件に該当するかどうかを判定しうる程度に具体的に記載しなければならない。 また、訴因の機能として重要な点は、裁判所に対して審判の対象を明確にすることにあるため、罪となるべき事実が他の犯罪事実と識別できる程度に記載されている必要もあると解する。
47
共謀共同正犯における訴因の特定(共謀の日時、場所等が不特定)
・共謀共同正犯の構成要件に該当する事実は、⑴特定の犯罪の共謀の事実、⑵共謀者のいずれかの者による共謀に基づく実行行為により結果が発生した事実 ・共謀の日時や場所が特定されなくても、実行行為の日時や場所等が特定されることにより、他の犯罪事実と識別できるから、共謀の日時、場所等は訴因の特定に不可欠ではない。
48
共謀共同正犯の訴因の特定(実行行為者が不特定)
・共謀共同正犯の構成要件は、⑴特定の犯罪の共謀の事実、⑵共謀者のいずれかの者による、共謀に基づく実行行為によって結果が発生した事実 ・共謀共同正犯は一部実行全部責任として、共謀者全員に結果を帰責させるものであるから、共謀者のうち誰かが実行行為を行ったという事実は訴因の特定に不可欠な事実であるが、誰が実行行為を行ったかまでは訴因の特定に不可欠な事実ではない。
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検察官の釈明が訴因の内容になるかどうか
訴因が不特定の場合には控訴棄却判決(338条4号)がなされ、一時不再理効がなく再訴が可能となる。これによる訴訟不経済を回避するため、検察官の釈明の内容が訴因の特定に不可欠な内容である場合、釈明の内容が訴因の内容となると解する。 →裁判所がこれと異なる事実認定をするには、訴因変更(312条)を要する 一方で、検察官の釈明の内容が訴因の特定に不可欠でない内容である場合は、このような不都合を考慮する必要がないため、釈明の内容は訴因の内容とはならない。 →裁判所は訴因変更なく、これと異なる事実認定も可能 ただし、「争点顕在化措置」が必要な場合あり
50
裁判長の求釈明(規則208条1項)
○訴因の特定に不可欠な事項について →義務的求釈明 ※訴訟経済 ○訴因の特定に不可欠でない事項について →裁量的求釈明 (もっとも、被告人の防御権保障のためにも、求釈明すべき)
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争点顕在化措置
刑事訴訟法は訴因制度を採用するなど当事者主義を基礎としており、証拠について開示義務を認める(299条1項)など、証拠に対して不意打ち防止の規定を設けていることから、事実認定においても当事者の不意打ちを防止するのが刑事訴訟の趣旨にかなう。 そこで、裁判所が、当事者が主要な争点として攻撃防御の対象としていた事実と異なる認定をするには、被告人にとって不意打ちにならないよう、争点を顕在化する措置を取る必要があり、この措置を取らずに有罪判決をすることは違法となると解する。 (よど号ハイジャック事件)
52
一時不再理効とは
ある事件について被告人を一度訴追した場合に、同一事件について再度の公訴提起を許さないという原則
53
保釈と釈放の違い
○保釈 ・保釈金を納付して、被疑者や被告人を身体拘束から開放する ・勾留の効力は及んでいる →重複逮捕・重複勾留が問題となる ○釈放 ・勾留の効力は及ばない →再逮捕・再勾留が問題となる
54
⭐️ここから
あ
55
訴因変更(321条1項)の要否
あ
56
GPS捜査
検証では捉えきれない
57
エックス線捜査
か
58
訴因変更の可否
公訴事実の同一性
59
準現行犯逮捕()の要件
あ
60
接見交通権(39条1項)とは
弁護人または弁護人になろうとする者に立会人なくして接見できる権利
61
接見指定における「捜査のために必要があるとき」(39条3項)の意義
あ
62
接見指定の方法
あ
63
初回接見の場合
あ
64
余罪捜査を理由とする接見指定
あ
65
起訴状一本主義
あ
66
起訴状一本主義と訴因の特定
い
67
強制採尿
あ
68
強制採血
あ
69
秘密録音
あ
70
秘密録音と通信傍受の違い
あ
71
訴因変更の時的限界
あ
72
訴因変更命令
オ
73
科学的証拠の証拠能力
あ
74
精神状態供述と伝聞法則
あ
75
検面調子の証拠能力
あ
76
実況見分調書の証拠能力
k
77
再伝聞の証拠能力
あ
78
弾劾証拠
あ
79
増強証拠と回復証拠
あ
80
補強法則
あ
81
共犯者の自白
あ
82
一事不再理効の及ぶ範囲
f