問題一覧
1
法人は自然人ではないので、その保護は、警察法第2条第1項の「個人の生命、身体及び財産の保護」に該当しないが、法人の役職員の生命、身体及び財産の保護を行うことで、結果的に警察の責務の範囲内となっている。
×
2
警察が広報の一環として捜査結果を公表することは、「犯罪の捜査」そのものではないから警察の責務に属すると解することはできず、行政機関 として説明責任を果たすための取組として行われている。
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3
要保護児童の一時保護等を行う児童相談所の業務は、警察の責務と重なる部分があるが、児童の保護について、児童相談所が警察と連絡をとりつつ一次的に対応している場合でも、警察の責務が解除されるわけではない。
○
4
警察の権限行使には裁量の幅があるが、一定の場合には義務となることもある。
○
5
あらゆる行政活動と同様に、警察活動を行う上では「比例原則」を踏まえることが必要とされているが、「比例原則」の判断基準を3点記しなさい
比例原則の判断基準 ① 公益上の必要性の存在 ② 他の手段で国民の権利・利益を侵害する程度がより低いものがない ③ 公益上の必要性が、相手方の不利益を上回る。
6
苦情への対応に関し、当直責任者として苦情の受理時のポイントを4点あげた上、それぞれの内容について3行以内で記しなさい。
1 冷静な対応 激高して怒鳴ったり、高飛車な態度をとるなど、申出人が感情的になったとしても、売り言葉に買い言葉とならないよう冷静に対応すること。 2 具体的かつ詳細な聴取 抽象的な聴取ではなく、具体的な内容を詳細に聴取し、事案概要を把握するとともに、申出の本質を正しく掴むこと。 3 安易な約束をしない 通知期限・方法を一方的に指定してくる申出人もいるが、安易な約束は新たな苦情につながる可能性があるた絶対にしないこと。 4 苦情該当性の組織的判断 申出内容について、警部以上の階級にある職員が、速やかに苦情該当性の判断をすること。 なお、判断に迷ったときは積極的に苦情として取り扱うこと。
7
警察安全相談の管理上のポイントについて、4点述べよ。
1 相談該当性の判断に当たっては、申出者の言葉から、形式的に判断することなく、申出者の立場、申出者が置かれている状況その他諸般の事情を総合的に考慮し、実質的に判断すること。 2 総・警務部門において処理部門(担当課)の判断が困難なときは、副署長等に相談者の人定事項及び相談概要を速やかに報告すること。 3 処理部門は、相談の処理状況について記録化するとともに、警察署長に対し、当該処理状況を適時・適切に報告し、必要な指揮を受けること。 4 遅延・懈怠がないかなど進捗状況を定期的に点検すること。 点検は、原則として月に1回以上実施し、その結果を警察署長に報告すること。
8
地方の小都市に主に外国人の集まる施設が建設され、地元の人になじみのない者が多数出入りするようになった。この施設に関し、警察署協議会で、委員から「地域住民が不安に感じている」との発言があった。この発言を受け、署員の中から、「何かあった時のために、施設に出入りする者をビデオで撮影し、人定を調べてリスト化しよう」という意見が出ている。 あなたは、警察署担当課長として、署員の意見について実現可能かどうか、警察法2条1項の警察の責務等の観点から説明しなさい。
結論は「ビデオ撮影は不可、リスト化は可能」である。外国人犯罪が増加する中、地域住民が不安を抱くことは理解でき、警察の責務を達成するため可能な手段を検討することは必要である。法律の留保の原則に照らすと、ビデオ撮影自体は個別の法律の根拠を必要としない任意手段として行うことは可能である。しかし、ビデオ撮影は肖像権を侵害する行為であり、比例原則に照らすと相手方に与える不利益がより少ない手段がないとは言えず、例えば、巡回連絡、駐車苦情等の事案対応等を通じて出入り者の把握を行うことができる。さらに、現在進行形で犯罪が発生している状況にはなく、公益上の必要性が相手方に与える不利益を上回るほどの必要性は認められない。公平中正、不偏不党に反し、権限の濫用となりかねない。一方、国際テロ等の未然防止の観点から巡回連絡等を通じて把握した人定事項をリスト化することは、裁判例からも可能と判断する (東京高裁平成27年4月15日)
9
隣接県において、性犯罪前科者による女児殺害事件が発生した。彼疑者は検挙されたが、管内住民の不安は強く、関心も非常に高い。こうした中、警察署協議会において、委員から「性犯罪の前科がある者に対して、学校や公園に近づかないよう、警察から命令できないのか」との発言があった。 あなたは、警察署担当課長として、前記命令をすることの可否について、警察法2条1項の警察の責務等の観点から説明しなさい。
結論は「命令できない」である。隣県での発生とは言え、女児に対する性犯罪は住民の体感治安を著しく悪化させる事件であり、警察の責務を達成するため可能な手段を検討することは必要である。法律の留保の原則に照らすと、学校等に近づかないよう警察から命令する行為は、法22条1項の定める移動の自由を制限することとなりかねず、強制手段として個別の法律の根拠が必要となる。比例原則に照らすと相手方に与える不利益がより少ない手段がないとは言えず、例えば、警ら、見守り活動、防犯教室実施、防犯カメラの設置等他の任意手段が存在する。現在進行形で犯罪が発生している状況にはなく、公益上の必要性が相手方に与える不利益を上回るほどの必要性は認められない。 さらに、前科者の再犯の蓋然性を認定することは不可能であり、公平中正、不偏不党に反し、権限の濫用となりかねない。
10
A巡査に対し母校での警察官採用活動を実施するよう下命したところ、A巡査から「私の母校を訪問してリクルート活動を行うように言われましたが、なぜ私が採用活動を行わなければならないのか疑問です。そもそも警察育採用活動は、犯罪の予防、鎮圧、捜査、交通の取締りのいずれにも該当しませんが、それでも警察の責務の範囲内の活動といえるのでしょうか。」と質問された。 警察署担当課長であるあなたは、A巡査の質問にどう答えるか。警察法2条の内容を端的に説明しつつ、法的な論点を整理して回答しなさい。
警察法2条は警察の責務を規定しており、同責務は①個人の生命、身体及び財産の保護、②公共の安全と秩序の維持という2本柱で構成され、①②の価値を両立、循環させることが必要となる。ただし、特殊詐欺で受け子を泳がせる捜査手法をとる場合等状況によってはどちらかが犠牲になる場合もある。原則として警察の責務内の活動であれば、国民の権利や自由を制限しない任意活動は個別の法律の根拠がなくとも可能である。本件警察官採用活動は、責務を達成する上で、付随的な関連性、間接的な必要性のある事務として、責務に含まれると解されている。※リクルート活動やパンフレットの作成等により、優秀な人材を確保することで国民の期待に応えることができるのである。 ※ 音楽隊バージョン 演奏活動により、広報効果や警察のイメージ向上、防犯・交通安全意識の向上に繋がることとなり、国民の期待に応えることができるのである。
11
警察署協議会において、警部から「管内で特殊詐欺被害が多発しているため、署内各課から人員を引き上げて体制をつくり、携帯電話の設定や留守番電話の設置などを啓発するため高齢者宅への巡回活動を強化している」と説明したところ、C委員から、「お年寄り宅の訪問に大切な警察のマンパワーを割くべきではないと思う。それよりも犯罪の検挙や交通反の取締りを強化すべきである。」との発言があった。これに対する反論を述べよ。
警察法は個人の生命、身体、財産の保護のほか、公共の安全と秩序維持を警察の責務として規程しており、犯罪の予防は、ここに例示列挙されている。高齢者宅の巡回連絡は犯罪予防に資する活動であり、警察責務に必要な活動といえる。
12
パワー・ハラスメントを防止し円滑な業務運営を行うために職員が認識すべき事項を3点挙げ、それぞれ4行以内で簡潔に記載しなさい。
○パワー・ハラスメントは、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害するものであることを理解し、互いの人格を尊重し、パワー・ハラスメントを行ってはならないこと ○業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示、指導、調整等についてはパワー・ハラスメントに該当しないこと。一方、業務指示等の内容が適切であっても、その手段や態様等が適切でないものは、パワー・ハラスメントになり得ること ○部下の指導・育成は、上司の役割であること。また、指導に当たっては、相手の性格や能力を十分見極めたうえで行うことが求められるとともに、言動の受け止め方は世代や個人によって異なる可能性があることに留意する必要があること
13
自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合に、これによる枝害を深刻にしないために職員が認識しておくことが望まれる事項を2点挙げ、合計7行以肉で簡潔に記載しなさい。
・一人で抱え込まずに、相談窓口や信類できる人等に相談すること ・ パワー・ハラスメントは、相手に自覚がないことも多く、よかれと思っての言動であることもある。相手に自分の受け止めを伝えたり、相手の真意を確認したりするなど、話し合い、認識の違いを埋めることで事態の深刻化を防ぎ、解決がもたらされることがあることに留意すること
14
自動車検問事件について述べたものであるが、①から⑥の語句を埋めなさい。また⑦⑧の条件を記しなさい。 この決定は、①や ②の規定を根拠として行われる③車両に対する検問ではなく、④車両に対して停止を求める検問について判断したもよである。この決定では、警察法第2条第1項が ⑤を警察の責務として定めていることに照らして、交通の安全等に必要な警察の諸活動は⑥限り、一般的に許容されるべきものとした上で、後者の検問を、⑦⑧一定の条件の下で適法であるとした。
①刑事訴訟法, ②警職法, ③不審, ④全通過, ⑤交通の取締, ⑥強制力を伴わない任意手段による限り, ⑦運転者の任意の協力を求める形で行われたこと, ⑧短時分の停止を求める形で行われていること
15
セクハラに関して職員が認識すべき事項
・ 性に関する言動に対する受け止め方には個人間で差があり、セクシュアル・ハラスメントであるか否かについては、相手の判断が重要であることを認識すること ・セクシュアル・ハラスメントであるか否かについて、相手からいつも意思表示があるとは限らないこと ・相手が拒否し、又は嫌がっていることが分かった場合は、同じ言動を繰り返さないようにすること
16
セクハラに関して職員が認識しておくことが望まれる事項
・自分の意に反すること又は嫌なことは相手に対して明確に意思表示をすること ・一人で抱え込まずに、相談窓口や信頼できる人等に相談すること
17
良好な職場環境を確保するために職員が認識すべき事項
○問題提起をする職員をいわゆるトラブルメーカーと見たり、セクシュアル・ハラスメント等に関する問題を当事者間の個人的な問題として片付けないこと ○職場におけるミーティングを活用すること等により解決することができる問題については、問題提起を契機として、良好な勤務環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心掛けること ○職場においてセクシュアル・ハラスメント等に関する問題の行為者や被害者を出さないようにするために、セクシュアルハラスメント等が見受けられる場合は、職場の同僚として注意を促したり、相談に乗るなど、周囲に対する気配りをし、必要な行動をとること
18
リカバリー教養の意義
業務上等の失敗への対処法は、職員一人一人が十分に埋解していれば、失敗によって生じる問題を最小限にとどめることができる一方、これが適切に行われずに誤った対処がなされた場合には、非違事案に発展する場合もある。これを踏まえ、業務上又は私行上の失敗に対する適切な対処法を理解させる教養 (リカバリー教養)を推進し、非違事案の防止を図るとともに、失敗に適切に対処できる人材の育成、職員が失敗を恐れず前向きに職務に取り組める職場環境の構築を図るものである。
19
幹部職員の役割
幹部職員は、無謬性に固執して失敗させないための教養にとどまることなく、失敗は起こり得るという前提に立ち、リカバリー教養を行うことの重要性・必要性を十分に理解すること。 また、失敗した職員を単に叱責することは、当該職員を萎縮させ失敗の隠蔽を誘発するだけとなるおそれがあることを認識し、部下職員の指導に当たっては、当該失敗の問題点や適切な対処方法を教示するなど、失敗後の適切な対処につながる指導となるよう努めること。
20
失敗対処の原則とリカバリー教養の関係
失敗対処の原則は、失敗の内容に関わらず、失敗した旨を上司に直ちに報告し、その指示を受けて対処することである。 しかし、全国警察において、捜査書類の押印・指印忘れ、拾得物の権利確認忘れ等通常の警察業務を行う上で惹起しがちな失敗であっても、叱責等を恐れてその旨を報告できず、隠蔽又は不適切な処置をし、非違事案に発展した事例は少なくない。 したがって、失敗に対して適切に対処するため、失敗の内容によっては、担当者において適切な措置を誰じた後に、対処状況を上司に速やかに報告すればよい場合もあることを始め、失敗にはそれぞれ適切な対処法があると解させることが重要である。 また、たとえ失敗しても、その失敗の原因が過失によるもので、失敗対処の原則に従って上司に直ちに報告し、指示を受けるなどして適切な措置が講じられた場合には、原則として処分されることはないことについて認識させることが重要である。
21
工夫を凝らしたリカバリー教養の推進
リカバリー教養の実施に当たっては、単に対処方法を一般的・抽象的及び一方的に教示するのではなく、リカバリー教養の対象となった職員の業務内容等の特性に応じて起こりやすい失敗を具体的にイメージさせるとともに、当該失敗への誤った対処事例を示してその問題点等を考えさせるなど、工夫を凝らした教養を行うこと。
22
対処者ごとの教養上の留意点
ア 若手職員に対する教養 実務経験の浅い若手職員は、実務上の失敗経験が少なく失敗そのものをイメージしにくいことから、実際に起こりやすい失敗例を示した上で対処方法を具体的に教示するなど、実際に失敗した際に適切に対処できるような効果的な教養を行うこと。 イ 中高年等のベテラン職員に対する教養 中高年等のベテラン職員に対しては、誤った経験則・知識に基づき失敗に対処しようとすることを防ぐため、ベテラン職員がとりやすい誤った対処方法を具体的に示して誤りを認識させた上で、正しい対処方法を教示すること。
23
警察法第2条の責務を達成するために警察官に与えられた権限を行使するか否については、通常、警察官に裁量が与えられていると解されるが、一定の状況下においては、権限の行使が職務上の義務になりうると解されている。 どのような場合に義務になりうると解されるか、判例に見られる要件に触れながら、3行以内で説明しなさい。
具体的な危険が切迫していること、警察官において危険が切迫していることを容易に知りうること、権限行使における危険回避可能性があること、権限行使の容易性があることという要件の下、権限の不行使が著しく不合理である場合。