問題一覧
1
RT-PCRの原理について説明せよ。
RTーPCRでは、mRNAに対応したDNAを増幅させる。最初にmRNAの3’末端ポリA尾部に相補的なオリゴdTをプライマーとしてmRNAに相補的なcDNAを合成。cDNAを鋳型として既知塩基配列同士、既知塩基配列とオリゴdTプライマーをセットとして用いたPCRにより二本鎖cDNAを合成。ベクターに挿入することでcDNAのクローンが得られる。
2
cDNAライブラリーについて説明せよ。
cDNAライブラリーとは、転写されたmRNAに対応するcDNAをライブラリー化したもの。 合成方法としては、組織から抽出したmRNAを鋳型として、オリゴdTプライマーを用いた逆転写反応により一本鎖cDNAを合成。 その後、RNA分解酵素であるRNaseHを用いて、cDNA・mRNA二本鎖部分の内、RNAを部分分解し、同時にRNAを用いてDNAポリメラーゼにより相補的なDNAを合成。 完成した二本鎖DNAの切れ目をDNAリガーゼにより連結し、T4DNAポリメラーゼ処理により末端を平滑化する。合成した二本鎖DNAをファージベクター、プラスミドベクターに挿入することでcDNAライブラリーを作製することができる。 また、cDNAの末端に制限酵素認識部位が露出したアダプターを付加することでcDNAを効率よくベクターに挿入することができる。
3
ハイブリダイゼーションを用いたスクリーニングについて説明せよ。
標識したDNAをプローブとして、変性したDNAとハイブリダイゼーションさせることにより、プローブに相補的なDNAを検出することができる。
4
コロニーハイブリダイゼーションについて説明せよ。
固形培地上でプラスミドを導入した大腸菌を培養する。, コロニーをDNAを吸着させるナイロンメンブランに写し取る。, コロニーが付着したナイロンメンブランをアルカリ処理することにより、大腸菌からDNAを溶出させ、一本鎖へと変性させる。, アルカリ変性したDNAを中和することでメンブラン上に固定する。, 標識したプローブDNAを用いて、一本鎖に変性したDNAとハイブリダイゼーションさせる。, 標識が検出されたコロニーには、目的の遺伝子が導入されている。
5
プラークハイブリダイゼーションについて説明せよ。
DNA断片が挿入されたファージベクターをファージの体を構成するタンパク質に組み込むことでファージ粒子を形成。ファージ粒子を固形培地上の大腸菌に感染させてプラークを形成。プラークをナイロンメンブランに写し取り、プローブとハイブリダイゼーションするプラークを検出する。 単一のプラークは一つのファージから増殖した大量のクローンに相当し、標識が検出されたプラークには、目的の遺伝子が導入されている。
6
PCRを用いたスクリーニングについて説明せよ。
プラスミドを導入した大腸菌を固形培地上で培養し、任意の100個のコロニーをまとめて96穴プールプレートの1つの穴に入れる。その後、目的の遺伝子を増幅するように設計したプライマーを用いてPCRを実施。この時、バンドが検出された大腸菌を固形培地上で培養し、単一のコロニーを形成。 単一のコロニーを96穴プールプレートに、コロニーと穴が一つずつ対応するように整列化する。再度目的の遺伝子を増幅させるプライマーをを用いてPCRを行うことで、目的の遺伝子を含むクローンを特定することができる。
7
ザンガー法の原理について説明せよ
対称とするDNAの既知塩基配列を対象としてプライマーを設計し、DNAポリメラーゼによる相補鎖DNAの合成反応を行う。 この時、4種のデオキシヌクレオシドの他に、異なる色で蛍光標識した4種のジデオキシヌクレオシドを加える。DNA合成は、3’末端にジデオキシヌクレオシドを取り込んだ時点で停止する。この反応を繰り返すことで3’末端を蛍光標識した塩基が占める様々な長さの配列が形成される。 これを1塩基の違いを区別できる電気泳動で分画し、短い断片から末端の標識された塩基を特定することで塩基配列を特定することができる。
8
次世代シーケンサーを用いた塩基配列決定法について
次世代シーケンサーでは、ザンガー法と違い、電気泳動による分画を必要としない、 解析するDNAを断片化し、DNAの両端にオリゴヌクレオチドが付加したアダプターを結合させる。次にフローセルなどの担体に断片化したDNAを固定する。担体表面にはアダプターのオリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列が存在するので、アダプターとの塩基対結合により、DNAを間接的に担体表面に固定することができる。
9
サザンブロット法とノーザンブロット法の違いについて説明せよ。
サザンブロット法は、単離したDNAの量や生物間の違いを検出する。ノーザンブロット法は、遺伝子発現解析の一種であり、mRNA量を測定する。 サザンブロット法では、単離したDNAを電気泳動により分画した後、ゲルをアルカリ性溶液に浸して、DNAを一本鎖に解離させる。一本鎖DNAをメンブランに写し取り、蛍光標識したプローブとハイブリダイゼーションさせる。 ノーザンブロット法では、抽出したRNAを電気泳動で分画した後、ナイロンメンブラン上に固定する。目的の遺伝子をプローブとしてハイブリダイゼーションさせる。蛍光標識したプローブよりシグナルを検出する。
10
RTーPCRを用いた遺伝子発現解析について説明せよ。
RTーPCRを用いることで、対象の組織、細胞で遺伝子が転写されているかが分かる。微量のRNAサンプルで解析ができ、検出感度が高い。また、mRNA量を一定にして、PCRサイクルを変えることにより、複数の組織・細胞における対象遺伝子のmRNA量を比較することができる。
11
リアルタイムRTーPCRの原理について説明せよ。
二本鎖DNAに取り込まれると発色するインターカレーターを用いたインターカレーション法と蛍光色素と蛍光を抑えるクエンチャー色素が結合したプローブを用いて、DNA合成の過程でクエンチャー色素が離れた際に蛍光を発するハイブリダイゼーション方が用いられ原理
12
リアルタイムRTーPCRの定量について説明せよ。
リアルタイムRTーPCRの定量には、絶対定量と相対低量が用いられる。絶対定量では、縦軸に蛍光強度、横軸にPCRサイクル数を取り、検量線を作製。濃度既知のサンプルで検量線を作製したのち、濃度未知の目的遺伝子のサンプルで検量線を作製。両者を比較してmRNA量を算出する。 相対低量では、性質の異なるサンプル間における対象遺伝子の発現比を比較する。ここでは、全ての細胞、組織で安定して発現するアクチン遺伝子のmRNA量を測定し、対象遺伝子の発現を補正する。
13
RNAの網羅的解析に用いられる方法を2つ答えよ。
マイクロアレイ法 DNAプローブを高密度にガラスやシリコン性の小基盤上に配置(マイクロアレイ)。マイクロアレイの上で、対象組織・細胞から調製したターゲットDNAとハイブリダイゼーション反応を行う。ターゲットDNAには、mRNAから逆転写されたcDNAと蛍光色素で標識したものが用いられる。2つのサンプル間での遺伝子発現の差を分析するときには、それぞれから調製したターゲットDNAを赤や緑の蛍光色素で標識する。2つのサンプルから採取したターゲットDNAを混合して、マイクロアレイと競合的にハイブリダイゼーションさせる。 マイクロアレイから放出される各波長の蛍光強度を検出器で検出し、マイクロアレイの検出された位置から遺伝子を特定し、各波長の強度から各遺伝子のmRNAを分析する。 RNAseq法 次世代シーケンサーを用いて各サンプルの短断片の塩基配列を決定する。最小単位配列リードの検出。対象生物のゲノム塩基配列(リファレンス配列)上の各遺伝子に対応したリード数を調べることで、リードの多少を基準として遺伝子発現レベルを調べることが可能。 実際には、サンプルごとにリード数が異なるため、単位リード数(通常100)あたりの対象遺伝子に対応するリード数を算出。各遺伝子の長さも異なるため、単位長あたりのリード数に換算する必要がある。
14
RNA干渉を利用した遺伝子発現解析について説明せよ。
標的遺伝子の塩基配列を変えることなく、転写活性や転写産物を抑制的にコントロールすることが可能となる。 転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)では、標的となる転写産物を分解し、翻訳されるmRNA量を下げる。転写型遺伝子サイレンシングでは、DNAメチル化やヒストンの修飾により、転写の進行や開始を遅らせる。 標的となる遺伝子に相補的な配列から構成されるRNAを導入することで、人為的にRNA干渉を起こすことができる。
15
RNA干渉を人為的に起こす際に用いられるRNAの導入方法について述べよ。
アグロバクテリウムによる形質転換やウイルスを介したVIGSが用いられる。 VIGSでは、標的遺伝子の一部をウイルスベクターに連結し、ウイルスを植物に感染させることで、ゲノムにコードされた標的遺伝子の発現がRNAサイレンシングによって抑制され、ノックダウンすることができる。
16
ゲノム編集について説明せよ。
ゲノム編集とは、特定の遺伝子の塩基配列を変化させる方法である。標的となるDNA塩基配列を特異的に認識してその部位を切断する部位特異的ヌクレアーゼを用いる。 部位特異的ヌクレアーゼには、人工ヌクレアーゼとRNA誘導型ヌクレアーゼが存在する。ゲノム編集では、切断したゲノムDNA標的配列が細胞の持つ修復機構によって切断点を結合させる間に塩基の挿入、欠失を起こす場合があり、これにより特異的な変異が発生する。
17
ゲノム編集における人工ヌクレアーゼとRNA誘導型ヌクレアーゼの違いについて説明せよ。
人工ヌクレアーゼには、ZFNとTALENが存在する。ZFNはジンクフィンガー、TALENはキサントモナス転写因子TALEタンパク質由来ドメインを用いて標的DNAに結合する。その後、二量体を形成し、DNAを切断することができる。 RNA誘導型ヌクレアーゼには、CRISPR/Cas9が存在する。ガイドとなる短鎖RNAが標的DNAを認識して、Cas9タンパク質が切断する。
18
RNA-seq法について説明せよ。
次世代シーケンサーを用いてmRNAの塩基配列を決定する。 解読された最小の塩基配列リードをリファレンス配列と対応させる。これにより各遺伝子に対応したリード数が分かる。リード数の増減が遺伝子発現の増減に対応している。 総リード数がサンプルごとに異なるため、一般的には単位リード数あたりの対象遺伝子に対応するリード数を算出する。 加えて、各遺伝子の長さが異なることを考慮して、単位長当たりのリード数に換算する。
19
ウエスタンブロット法について説明せよ。
対象遺伝子から翻訳されるタンパク質に対応する抗体が存在するとき、電気泳動により分画されたタンパク質の中から目的のタンパク質を特異的に検出することができる。 通常、電気泳動に分画されたタンパク質をニトロセルロースメンブランに写し取り、抗体と反応させる。抗体にあらかじめ標識を行うことで、シグナルの強弱から組織・細胞間でのタンパク質量を比較することができる。
20
アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入について説明せよ。
アグロバクテリウムが持つTiプラスミドには、Vir領域とTーDNA領域が存在する。T-DNA領域には、LBとRBの間にオーキシン、サイトカイニン合成遺伝子、オパイン代謝遺伝子が存在。 遺伝子導入の際には、LB、RBを残して腫瘍形成に関わる遺伝子は除去される。 遺伝子の導入は、T-DNA領域を持つプラスミド(バイナリーベクター)、Vir領域を持つプラスミド(ヘルパープラスミド)に分けて行われる。 バイナリーベクターは、アグロバクテリウムと大腸菌の両方で複製を行う宿主範囲が広い複製開始点が用いられる。 加えて、制限酵素認識配列が付加されている。 植物へのアグロバクテリウム感染 葉や胚軸などの切片、カルス、未熟肺などの植物組織をアグロバクテリウム菌液に浸して感染させる。余分な菌液を取り除き、2~3日共存培養して植物の細胞に感染させる。選抜マーカー遺伝子を用いて抗生物質を含む培地から遺伝子が導入されたカルスを選抜する。 カルスから不定芽、不定胚を分化させ、生育、発根を経て植物体を再生させる。
21
春化におけるエピジェネティックな制御機構について
春化ては、低温処理により、分裂組織の遺伝子発現が変化し、その変化は春になって低温処理がなくなっても維持される。
22
春化におけるFLC遺伝子の発現制御について
春化を経ていない植物のシュート頂分裂組織では、FLC遺伝子が高レベルで発現している。FLCタンパク質は、葉では花成のシグナル遺伝子FTの発現を、シュート頂分裂組織では、転写因子であるFD、SOC1をコードする遺伝子の発現を抑制して、花成を抑制している。 春化後にFLC遺伝子は、エピジェネティックにオフの状態となり、残りの生活環を通して発現しない。 ここでは、FLC遺伝子のクロマチン再編により、真正クロマチンから異質クロマチンへと変化することが行われる。春化によりFLC遺伝子のクロマチンは、真正クロマチンに必要なヒストン修飾を失い、ヒストンH4リジン残基のメチル化により異質クロマチンとなる。
23
フロリゲンの発見につながった接ぎ木実験について説明せよ。
花芽形成を誘導する短日条件下で生育したシソの葉を花芽形成を誘導しない長日条件下で生育したシソに接ぎ木すると、花芽形成が誘導された。 加えて、異なる光周性誘導(長日・短日)の植物間でも花芽形成誘導刺激のメカニズムは、共通していることが明らかになった。 長日条件で育てたタバコの品種を短日種であるメリーランドマンモスのタバコに接ぎ木したところ、花芽形成を誘導しない長日条件下でも花芽形成を誘導した。
24
シロイヌナズナにおけるFT遺伝子の働きについて述べよ。
FTmRNAは、光質、日長、温度を含む複数のシグナルに対応して葉の維管束、師部細胞組織で発現している。 FTIP1タンパク質は伴細胞から師部要素をつなぐ小胞体ネットワーク内のFTタンパク質の輸送を仲介する。FTタンパク質は、師部の中を通って、葉からシュート頂分裂組織へと移動する。FTタンパク質は師部からシュート頂分裂組織へと移動し、FDタンパク質と相互作用する。 FTーFD複合体は、花序分裂組織でSOC1遺伝子の転写を活性化する。花芽分裂組織では、AP1遺伝子の転写を活性化する。さらにAP1遺伝子は、LFY遺伝子(花芽分裂組織決定遺伝子)の転写を促進する。 LFY遺伝子、AP1遺伝子は、花のホメオティック遺伝子の発現を活性化する。
25
イネにおける花芽形成の誘導について説明せよ。
短日植物のイネでは、Hd1が花芽形成抑制因子として働く。短日条件下では、Hd1タンパク質は合成されない。これにより、Hd3a(FTのホモログ)が師部伴細胞で発現。篩管を介してシュート頂分裂組織に運ばれ、シロイヌナズナと同様の経路で花芽形成を誘導する。
26
ABCモデルによる花器官の属性決定について説明せよ。
第1環域:がく片、クラスA遺伝子AP1,2、クラスE, 第2環域:花弁、クラスA遺伝子AP1,2、クラスB遺伝子AP3、PI, 第3環域:雄ずい、クラスB遺伝子AP3、PI、クラスC遺伝子AG, 第4環域:心皮、クラスC遺伝子AG
27
直接導入法について説明せよ。
アグロバクテリウムが感染しない植物あるいは、感染後の不定芽、不定胚の形成が行われない植物に用いる。 パーティクルガン法では、金の微粒子に目的の遺伝子を付着させ、葉や成長点、培養細胞、カルスに打ち込む。 エレクトロポレーションでは細胞壁を除いたプロトプラストを調製し、導入遺伝子を混合。パルスにより電圧を加えて、一次的に生じた細胞膜の穴から目的遺伝子を導入する。遺伝子は核に移動し、染色体に取り込まれる。 アグロバクテリウム法と同様に抗生物質を含む培地上で生育して、目的の遺伝子が組み込まれたかを確認することができる。
28
核型分析について説明せよ。
核型は、生物の種類により一定であり、近縁種では、類似している。 全ての染色体が明瞭に撮影されており、かつ長さや動原体の位置が明らかなとき、各染色体を切り貼りして、長さの順に短腕を上にして並べることで核型を決定し、比較解析を行うことが可能になる。
29
FISH法について説明せよ。
ハイブリダイゼーションシグナル検出に、蛍光を用いるin situハイブリダイゼーション法のこと。 in situハイブリダイゼーション法では、染色体形態の顕微鏡観察とDNAのハイブリダイゼーションを組み合わせて画像や情報を獲得すること。
30
GISH法について説明せよ。
ゲノムDNA全体を標識して、同じゲノムの染色体にハイブリダイゼーションさせる。これにより、異なる2種類のゲノム中の塩基配列n類似性を推定することが可能となる、
31
プラスミドを用いたDNAクローニングについて説明せよ。
DNAクローニングでは、目的DNA断片をベクターに挿入し、大腸菌などの宿主内で増殖させることで同一のDNA分子を大量に増殖させる。 ベクターとして用いられるプラスミドには、人工的に挿入されたマルチクローニングサイト(制限酵素認識部位が複数存在する配列)があり、通常、この場所に目的のDNA断片を挿入する。 大腸菌にプラスミドベクターを挿入して、形質転換を行う。導入法としては、ヒートショック法やエレクトロポレーション法が用いられる。ヒートショック法では、DNAを取り込みやすい状態にしたコンピテントセルとプラスミドを混ぜて短時間の熱処理を行う。 プラスミドが大腸菌に組み込まれたことを確認するために、プラスミドに抗生物質耐性遺伝子などの選抜マーカー遺伝子を組み込み、大腸菌を抗生物質を含む培地上で生育して、プラスミドが導入された大腸菌を特定する方法が用いられる。
32
プラスミドベクターを用いた制限酵素処理断片のクローニングについて説明せよ。
プラスミドpUC18はマルチクローニングサイト内に制限酵素EcoRI認識部位を持っており、ここにEcoRIで切断した目的のDNA断片(インサート)を導入することができる。 最初にベクターをEcoRIで切断し、切断したベクターに同じくEcoRIによる切断末端を持つインサートをDNAリガーゼを用いて結合。これにより目的のDNA断片を持ったプラスミドが形成される。 一方で、インサートを持たないベクターが自身でライゲーションして元のベクターに戻るセルフライゲーションが起こる場合がある。 これを防ぐために、ベクターをあらかじめアルカリ性ホスファターゼで処理して、ベクターEcoRI切断面のリン酸基を除去しておく(脱リン酸化:DNAリガーゼによる結合反応には、5’切断末端のリン酸基が必要だから) なお、制限酵素の切断末端構造が同じ場合には、異なる制限酵素で切断されたDNA断片を用いることができる。
33
プラスミドベクターを用いたPCR増幅断片のクローニングについて説明せよ。
TAクローニング TaqDNAポリメラーゼで増幅したPCR産物は3’末端にアデノシンが1塩基付加されて突出している。プラスミドベクターのマルチクローニングサイトをScaIなどの平滑末端を形成する制限酵素で切断。3’末端にチミジンTを付加して、Tが突出したベクターを作製する。その部位でAとTの相補性により、PCR産物を容易にライゲーションすることが可能。
34
広義の遺伝率と狭義の遺伝率の違いについて説明せよ。
量的遺伝学では、遺伝要因の効果と環境要因の効果の大きさを推定するために用いる。 広義の遺伝率では、F2集団において、個体間の表現型値の分散に含まれる遺伝要因の効果による分散の割合を調べる。ここには、対立遺伝子間の効果や遺伝的変異による影響も含まれている。 育種現場では、次世代に遺伝子は伝達されるが、遺伝子型(ホモ、ヘテロ)はそのまま伝達されないため、優性効果(優性遺伝子による影響)の割合が大きいほど、後代での表現型の推定が困難になる。そのため、育種における選抜の効果を予想するためには、広義の遺伝率ではなく、優性効果や相加効果を考慮した狭義の遺伝率を求める必要がある。
35
QTL解析の流れについて説明せよ
QTL解析は、分子マーカーを用いたQTLマッピングと統計学的解析に分けて行われる。 イネの粒の数を解析するとき、粒の数が少ないP1と粒の数が多いP2を交配して作出したF1雑種をP1と戻し交配してBC1個体を作出する。 BC1集団内の個体について、SNPsマーカーあるいはSSRマーカー座の遺伝子型を調べて遺伝子地図を作製し、マーカーの配列順序とマーカー間の地図距離をあらかじめ決定しておく。 戻し交雑個体BC1では、全てのマーカー遺伝子座は、P1親ホモ型(P1/P1)、P1親とP2親とのヘテロ型(P1/P2)のどちらかになる。 特定のマーカー遺伝子座に粒の数を決定するQTLのB座が連鎖していると考え、P1を対立遺伝子B-1ホモ型(B-1/B-1)、P2を対立遺伝子B-2ホモ型(B-2/B-2)であるとする。 このとき、マーカー遺伝子座がP1/P2型個体には、QTLもB-1/B-2ヘテロ型個体が多く含まれているので、マーカー遺伝子座がP1/P1型個体の表現型個体よりもP1/P2個体の表現型値の分布が粒の数が多い方に偏り、マーカー遺伝子間間で平均値に差が生まれる。 例えば、特定のマーカーM3の遺伝子型で分けて考えた時、平均値に大きな差が認められ、マーカーM3から離れた位置にあるマーカー座の遺伝子型で分けても、粒の数に違いは見られない時、QTLのB座はマーカーM3に連鎖していると考えられる、 次にマーカーに連鎖するQTLの位置を確定するための統計学的な処理を行う。 ①QTLが分子マーカー遺伝子座と同じ位置に存在すると仮定 ②QTLの分離(B-1,B-2)によって、表現型の分離が生じる確率ー尤度とマーカー上にQTLが存在しない時に観察される表現型の分離比が生じる確率を求める。 ③②で求める両確率の比率をオッズといい、尤度0.1、マーカー上にないときの確率が0.001の時、100対1でQTLによる表現型の分離比が確からしい。 ④オッズは常用対数LOD値で表す。統計学的解析では、帰無仮説「分子マーカーの位置にQTLは存在しない」を棄却する閾値を設定する必要がある。 ⑤LOD値が大きいほど、帰無仮説を棄却できる可能性が高いため、LOD値2.5~3.0が閾値の目安になる。 ⑥LOD値はマーカーの位置だけでなく、マーカー間の領域についても計算で求めることが可能になる。
36
アソシエーション解析について説明せよ。
QTL解析とは異なり、GWASでは実験的な交配を必要としない。また、QTL解析では、交雑集団の両親が持つ2種類の対立遺伝子の効果しか検証できないが、GWASでは、集団内の全ての対立遺伝子の効果を一度の解析で検証できる。 連鎖不平衡はSNPsがQTLの近くにあるほど強く、両遺伝子座間で乗り換える頻度が低いほど、連鎖不平衡の解消には多くの年代を必要とする。反対にSNPsとQTLの遺伝的距離が遠いほど連鎖不平衡は弱くなり、両遺伝子座間で乗り換える機会が多いほど連鎖平衡(連鎖の解消)に到達するまでの世代数は短くなる。 乗り換えが頻発するホットスポットで区切られた複数の連続したSNPsが連鎖不平衡にある場合、これらのSNPsは後代にブロックとしてまとめて伝達される傾向が強い(ハプロタイプブロック)。GWAS解析では、QTLがどのハプロタイプブロックの中にあるかをゲノムの中から網羅的に調べる研究である。 表現型値とSNPsの遺伝子型値のデータを統合して、SNPsの中から表現型との関連が単なる偶然ではないことを示すために統計学的検定を行う。 帰無仮説を「SNPsの違いは表現型値と関連していない」とし、帰無仮説が成立する確率pが閾値よりも小さければ、帰無仮説を棄却し、対立仮説である「SNPsの違いは、表現型の差に関連しているを採用できる。
37
植物におけるRdDMについて説明せよ。
PolⅣによる転写が行われ、一本鎖RNAが合成。次にRNA依存RNAポリメラーゼRDR2が一本鎖RNAを鋳型として、二本鎖RNAを形成する。二本鎖RNAはDCL3によって切断され、24ntーsiRNAが合成。siRNAが合成。siRNAはAGO4に取り込まれて、相補的な配列に結合し、DRMによるde nevoメチル化を誘導する。
38
DNAメチル化配列の解析法について説明せよ
①MBD2タンパク質/5メチルシトシン抗体を用いてメチル化された塩基配列を含むDNA断片を濃縮する。DNA塩基配列を決定し、得られた配列の量に基づいてDNAメチル化レベルを測定する。 ②WGBS法 バイサルファイト処理を行うことで、DNA塩基配列中の非メチル化シトシンがウラシルに変化、メチル化シトシンは変化しない。変換されたウラシルは、塩基配列決定の際にチミンとして読まれる。全ゲノム配列を決定し、リファレンス配列との比較を行う。 各シトシンについて、チミンに変換されている割合を算出、各シトシンについてメチル化レベルを明らかにすることができる。
39
ゲノムにおいて、ヒストンの化学修飾を解析する方法にはどのようなものがあるか。
クロマチン免疫沈降法とシーケンス解析を組み合わせて行う方法が用いられる。 ①クロマチンを断片化し、特定のヒストン化学修飾状態を持つクロマチン断片をH3K4me3などの修飾状態に特異的な抗体を用いた免疫沈降法により凝縮させる。 ②濃縮されたクロマチン断片に結合しているDNAを回収し、DNA塩基配列を決定。得られた配列の量に基づいてゲノム全体のヒストン修飾状態を解析する。
40
トランスポゾンサイレンシングとゲノムインプリンティングについて説明せよ
ゲノムインプリンティングとは、片方の親由来の対立遺伝子の実が発現する現象であり、植物では胚乳組織にて観察される。 受精前の精細胞・卵細胞ではDNAメチル化により遺伝子の発現が抑制されている。一方で中央細胞ではDMEによる脱メチル化により発現が誘導されている。 受精後の胚において、両親由来の遺伝子は、DNAメチル化により、発現が抑制される。胚乳では、中央細胞由来(母親由来)の遺伝子はメチル化されていないため、遺伝子が発現。 胚乳では、母親由来の遺伝子のみが発現する。
41
パラミュテーションについて説明せよ
メンデルの法則に反する現象。 特定の対立遺伝子間で相互作用が発生ー片方の対立遺伝子がもう一方の対立遺伝子の発現を抑制するなど。 この状態が後代に維持される。
42
パラミュテーションについて植物で知られている例を一つ上げて説明せよ。
トウモロコシのb1遺伝子座におけるパラミュテーションが知られている。 B´対立遺伝子はb1遺伝子が発現しておらず、緑色の形質を示し、B-1対立遺伝子は、b1遺伝子が発現していることから紫色の形質を示す。 F1系統では、B´がB-1にパラミュテーションを誘導することでB-1のb1遺伝子の発現が抑制される。 b1遺伝子の発現抑制では、後代でも安定的に発現することから、F2個体は、すべて緑色の形質を示す。加えて、抑制されたB-1´ではB-1に対してパラミュテーションを誘導する。
43
細胞質雄性不稔における稔性回復遺伝子について説明せよ。
配偶子型と胞子体型に分けられる。 配偶子型では、減数分裂が完了した後に作用し、細胞質雄性系統(rf/rf)と稔性回復遺伝子を持つ系統(Rf/Rf)を交雑して作出されるF1では花粉(配偶体)がRf:rf=1:1に分離する。Rfを持つ花粉が可稔となり、rfを持つ花粉が不稔となる。 胞子体型では、F1からできた花粉が全て稔性となる。これは、花粉を形成した胞子体である親(Rf/rf)の稔性回復遺伝子がRf遺伝子を持つ花粉とrf遺伝子を持つ花粉の両方に作用して稔性を回復させるためである。
44
真核生物において、転写共役翻訳が起こらない理由について説明せよ。
核膜が核中で行われる転写とRNAプロセシングの場所を細胞質で起こる翻訳の場所から物理的に切り離すため。
45
機能喪失型対立遺伝子について説明せよ。
機能喪失型対立遺伝子は常に劣性である。ただし、表現型が機能的なタンパク質の量に比例して変わると不完全優性が発生する。 花の色を決める遺伝子R+:野生型、r50:野生型の半分の酵素活性、r0:完全に機能を喪失 R+/R+の酵素活性のレベルの半分は完全な赤色を合成するために十分な量ではないため、R+/r0ヘテロ接合体は赤色と白色の中間値でピンク色の花を生成する。 R+やR0をr50対立遺伝子と組み合わせると、赤色とピンク色の中間色(75)、ピンク色と白色の中間(25)の色素形成が引き起こされる。
46
機能喪失型変異対立遺伝子が野生型に対して優勢となる場合について説明せよ。
ハプロ不全 1つの野生型対立遺伝子が十分な遺伝子産物を形成しない時に起こる。
47
機能獲得型対立遺伝子が優性である理由について説明せよ。
タンパクの機能を促進したり、タンパクに新しい活性を与える。単独で表現型を変えるために十分な量のタンパクを生産するため、優性となる。
48
レトロトランスポゾンとDNAトランスポゾンの転移様式について説明せよ。
レトロトランスポゾンは逆転写によりmRNAからcDNAを合成して、標的遺伝子に転移する。 最初に逆転写酵素により、二本鎖cDNAを合成。ゲノム中の新しい場所に挿入されるとき、標的部位のそれぞれのDNA鎖がずれた位置で切断。粘着末端が形成。粘着末端がDNA合成によって埋められるため、5bpの標的部位が2コピーできる。 DNAトランスポゾン トランスポザーゼがトランスポゾン(p因子)と隣接するゲノムDNAとの間を切断し、トランスポゾンの新しい部位への挿入を補助する。 p因子が切り出されると、元の場所にギャップが残る。エキソヌクレアーゼによってギャップを拡大。p因子を含む姉妹染色分体や相同染色体を鋳型として、ギャップが埋められる場合トランスポゾンは元の場所に戻ったように見える。 一方で、p因子を含まない姉妹染色分体や相同染色分体を鋳型として、ギャップが埋まる場合は、元の位置に戻らない。
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真核生物の転写調節について以下の用語を参考にして説明せよ。 基本転写因子、RNAポリメラーゼ、転写因子
真核生物の転写は、RNAポリメラーゼがコンセンサス配列であるTATAボックスを目印として、プロモーターに結合することで開始する。 しかし、RNAポリメラーゼはプロモーターに直接結合することはできない。真核生物のRNAポリメラーゼがプロモーターに結合するためには、基本転写因子が必要となる。 基本転写因子の内、TFⅡDがTBP(TATA結合タンパク)を持ち、他の基本転写因子やRNAポリメラーゼを誘導して転写開始複合体を形成。 真核生物は3種類のRNAポリメラーゼを持つ。RNAポリメラーゼⅡはmRNAの転写に関わり、C末端領域のCTDがリン酸化されることでRNAポリメラーゼの転写活性を促進する。RNAポリメラーゼⅠはrRNA、RNAポリメラーゼⅢはtRNA、5srRNAの転写に関わる。 転写因子:真核生物では、複数の転写因子が1つの遺伝子発現の調節に関与する。アクチベーターは転写を活性化し、リプレッサーは転写を抑制する。転写因子はプロモーターに加えて、上流あるいは下流に位置するエンハンサー(転写を促進する調節領域)、サイレンサー(転写を抑制する調節領域) 転写共役因子:DNAには直接結合しないが、転写因子や基本転写因子とのタンパクと相互作用して、転写を調節するタンパク質 コアクチベーターは、転写を活性化HAT(ヒストンアセチル化酵素)、コリプレッサーは転写を抑制する(HDAC:ヒストン脱アセチル化酵素)
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原核生物と真核生物における転写調節の違いについて説明せよ。
プロモーター 原核生物は、-10領域、-35領域であり、真核生物はTATAボックスをプロモーターとして用いる。 RNAポリメラーゼ 原核生物は1種類しか持たないが、真核生物は3種類持つ プロモーター認識 原核生物はσ因子、真核生物は基本転写因子を用いる。 転写調節因子 原核生物では、リプレッサーなどの転写因子がオペレーターに結合する。真核生物では、複数の転写因子がプロモーター、上流あるいは下流に位置するエンハンサーあるいはサイレンサーに結合する。 真核生物は転写共役因子(コファクター)を持つ。 真核生物は、DNAがヒストンに巻き付いたヌクレオソーム構造を取り、ヌクレオソームが数珠状につながることでクロマチン構造を形成する。 ポリシストロニック、モノシストロニック 原核生物では、複数の遺伝子を1つのプロモーターの制御下でまとめて発現するポリシストロニック転写を行う。
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真核生物で見られるRNAプロセシングについて説明せよ。
①5’末端へのキャップ構造付加 前駆体mRNAのリン酸基が脱リン酸化酵素ホスファターゼにより脱リン酸化(リン酸基を2つ除去)。GTP(リン酸基3つ)が反応して、結果的にグアノシン(グアニン+リボース)が付加する。グアニンのN7位がメチル化されて7メチルグアノシンが付加。 キャップ構造の付加 5’エキソヌクレアーゼ活性を持つRNaseによる分解を防ぐこと、5’キャップ構造を認識して翻訳を開始する。 ②3’ポリA配列付加ーmRNAの分解抑制 ③RNAスプライシング
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突然変異育種を行う目的について説明せよ。
既存の品種の中に育種目標にあった形質を持つ品種が存在しない時、既存の品種に突然変異を誘導する。変異が起こる方向は、優性から劣性であり、劣性から優性は起こりにくい。 そのため、突然変異育種は変異個体の選抜が難しいという問題を抱えている。
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突然変異育種における変異原への感受性について説明せよ。また、倍数体において感受性が低くなることについて説明せよ。
突然変異育種は、分裂細胞組織の成長点に行う場合が多い。植物体においては、放射線感受性が分裂組織細胞の核体積を染色体数(2n)で割った値に関係することが示されている。 この特徴に基づき、感受性パラメータを分裂間期染色体体積(ICV)といい、細胞核で1本の染色体が占める平均的な空間の大きさを示す。ICVが大きいほど、染色体が大きい、あるいは染色体当たりのDNA量が多いことを意味し、感受性が高いことを示す。 倍数体で感受性が低くなる理由として、遺伝子重複により放射線障害による変異が補償されることが挙げられる。
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自殖性植物、他殖性植物、栄養繁殖植物における突然変異個体の選抜法について説明せよ。
突然変異個体の選抜は自殖性植物、他殖性植物、栄養繁殖作物で異なる。 自殖性植物では、種子に変異誘導処理を行うことが多く、稔性などの形質に影響が表れやすい。変異処理した世代をM1として、以降M2,M3と世代を更新する。選抜法としては、M1個体から系統を育成する穂別系統法、変異による表現型を区別しやすいとき、各M1個体から種子1粒を得る1穂1粒法が用いられる。 他殖性植物では、圃場を物理的に隔離し、ヒルプロット内で後代を得るまで近交系統同士の交雑を繰り返す穂別系統内交雑法が用いられる。 栄養繁殖作物では、ヘテロ接合体が多い特徴があるため、遺伝子型がA/aからa/a(劣性ホモ接合体)に変化した個体でのみ表現型の変化を確認できる。
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ゲノム編集技術を用いた変異導入について説明せよ。
遺伝子組み換えとは異なり、作物が本来持っていない形質を導入することはできない。また、対象植物のシーケンス情報を必要とする。 RNA誘導型ヌクレアーゼCRISPR/Cas9を利用。ガイドRNAに相補的な配列をヌクレアーゼ活性を持つCas9により切断。目的の配列はPAM(NGG)の上流に配置する必要がある(標的配列の3’側にPAM配列が存在) ゲノム編集の種類 SDN-1:制限酵素による切断、修復時の挿入・欠失 SDN-2:1~数塩基の導入 SDN-3:外来遺伝子の導入、宿主の標的配列に相補的な配列の中に外来遺伝子を導入、ヌクレアーゼによる切断を受けて、修復の際に導入された相補鎖を利用して複製を行う。この時、外来遺伝子も組み込まれる。
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遺伝子組み換え育種について説明せよ。
遠縁交雑における生殖的隔離による影響を受けない。主な過程として、外来遺伝子の構築、遺伝子導入技術、発現解析、外来遺伝子をホモ接合体として遺伝的に固定することが行われる。 ①外来遺伝子の構築 プロモーター、タンパク質コード領域、ターミネーター ②遺伝子の導入法 アグロインフィルトレーション法、アグロバクテリウムが感染できないあるいは感染後のカルスから不定芽、不定胚を形成できない場合には直接導入法(エレクトロポレーション法、パーティグルカン法)が用いられる。 ③発現解析 外来遺伝子(DNA)が導入されているかの確認は外来遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCR、外来遺伝子をプローブとして用いたサザンブロット法が用いられる。アグロインフィルトレーション法は、直接導入法に比べて導入できる遺伝子のコピー数が少ない。コピー数が多いとRNAサイレンシングを受けやすくなる。 外来遺伝子が発現しているかどうか(mRNA、タンパク質)は、外来遺伝子由来のタンパク質を認識する抗体を用いたウエスタンブロット法が用いられる。
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アグロバクテリウム以外にウイルスベクターを用いた遺伝子組み換え技術について、説明せよ。
リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)のサブゲノムRNA2の一部に外来遺伝子を導入し、感染させて植物の形質を変化させる。
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SPT法は、F1ハイブリッドの種子親として利用される雄性不稔系統の作出についてどのような利点があるか
通常の育種法では、維持系統と雄性不稔系統を交雑して、その後代から雄性不稔原因遺伝子をホモに持つ個体を選抜して、F1雑種の種子親を増殖する。雄性不稔原因遺伝子のホモ接合体を選抜するには、DNA分析などを行う必要があり、多大な労力を要する。 より効率的に雄性不稔原因遺伝子のホモ接合体を作出する方法として、SPT法が用いられている。SPT法では、1つのバイナリーベクターに花粉稔性遺伝子、不稔誘発遺伝子、レポーター遺伝子を組み込み、3遺伝子を1つのセット(SPT)として、各遺伝子型雄性不稔系統に導入する。 F1雑種の種子親系統の選抜法としては、遺伝子組み換えを行っていない雄性不稔系統GMS系統とSPT維持系統をくみあわせて、非遺伝子組み換えのGMS系統を作出するものと、SPT維持系統を自殖することで、GMS系統(非遺伝子組み換え)とSPT維持系統(遺伝子組み換え)が1:1で発現するため、この内GMS系統を種子親として用いる方法がある。