問題一覧
1
愛知という意味で、ソクラテスの真理探求の精神を表現するのに用いられる。これからできた単語を「哲学」と訳したのは西周である。
フィロソフィア
2
古代ギリシアの都市国家のこと。アテネの最盛期で人口25万人程度。中心には、守護神を祀る神殿(アクロ○○)が設置される小高い丘があり、その麓には公共の広場(アゴラ)が置かれる。
ポリス
3
前8世紀に活動したとされる、古代ギリシアの伝説の詩人。代表作は、アキレスで有名な『イリアス』や、その後日譚にあたる『オデュッセイア』。神話的世界観が表れている。
ホメロス
4
ホメロスとならぶ古代ギリシアの最古の叙事詩人で、前8世紀に活動した。代表作は、神々を一つの系譜にまとめ、宇宙の創造を統一的に歌った『神統記』。
ヘシオドス
5
ギリシア三大悲劇作家の一人で、代表作は『オイディブス王』。
ソフォクレス
6
万物の根源を明らかにしようとする、古代ギリシアにおいて最も早く始まった学問。
自然哲学
7
秩序あるものを意味するギリシア語で、理性・法則、さらに論理や言葉をもさす。世界は、法則が支配する秩序あるコスモス(宇宙・調和)だと考えた古代ギリシア人は、世界を支配する法則である○○を、人間にそなわる○○によって把握、理解しようとした。
ロゴス
8
ギリシア語で始まり・根源・原理を意味する。自然哲学者が求めた万物の根源。自然現象の根底となり、現象がそこから生まれてそこへと消滅していく。
アルケー
9
自然哲学の始祖であり、天体の観測に基づいて日食を予言した。自然を運動変化し、生成流動する生命をもったものと考え、アルケーは水であると説いた。
タレス
10
アルケーを空気だと説いた自然哲学者。息によって生命が活動するように、息(空気)から万物が生まれると説いた。
アナクシメネス
11
万物の根源を無限なるもの(ト=アペイロン)とし、万物は無限の循環を繰り返すと説いた自然哲学者。
アナクシマンドロス
12
前6世紀ごろの哲学者・宗教家。天体の運動や、和音を出す琴の弦の長さの比例関係を理由に、万物は数の比例関係に従って秩序あるコスモスをなしていると説いた。
ピタゴラス
13
「万物は流転する(パンタ=レイ)」という言葉を残した哲学者。万物の流転は相反するものが対立する闘争であり、その緊張的な均衡の上に、ロゴスが働いていると説いた。なお、アルケーは永遠に生きる火とした。
ヘラクレイトス
14
「有るものはあり、有らぬものはあらぬ」といい、無や空虚、生成消滅や運動の存在を否定した自然哲学者。世界は永遠・不変・不動・分割不可能な、初めも終わりもない一つの実在だとした。エレア学派の祖であり、弟子のゼノンは「アキレスと亀」などのパラドクスで有名。
パルメニデス
15
万物の根源を土・水・火・風の四元素とし、それらが愛によって結合することで万物となり、憎しみによって分離、消滅すると説いた。
エンペドクレス
16
万物の根源を、それ以上分割できないものという意味でアトム(原子)と呼び、アトムが空虚(ケノン・無限の空間の意)の中で結合するという原子論を説いた。
デモクリトス
17
知者を意味するギリシア語で、前5世紀頃には職業教師を指すようになった。学問的関心をそれまでの自然界から人間や社会に移し、伝統や習慣にとらわれない批判的精神を育てた一方で、出世のため虚偽でも自己主張を正当化するようになり、詭弁家と批判された。
ソフィスト
18
物事の固有の性質、ありのままの自然の本性を意味するギリシア語で、ノモスに対置される。古代ギリシアの自然哲学者たちが、その根本的な原理(アルケー)について探求した。
ピュシス
19
ソフィストがそれに関心を移した人間の作る法律や制度のことで、フュシスに対置される。人為的につくられたこれは、民族や国家によって相対的であるとされた。
ノモス
20
ソフィストが重視した方法。自分の考えを他者に納得させるための話の仕方。後に詭弁に。
弁論術
21
ある事柄を他との関係において捉えようとする考え方一般を言うが、真理の絶対性を否定するソフィストの考え方の特色をさす。懐疑論に陥る傾向をもつ。
相対主義
22
ソフィストの相対主義的真理観を端的に表すプロタゴラスのことば。物事は各人の感じるように現れ、すべての人に共通する普遍的・絶対的な判断の基準は存在しないという考え。
「人間は万物の尺度である」
23
デルフォイのアポロン神殿の柱に刻まれていた格言で、ソクラテスがしばしば引用した、思考の出発点としての自己認識の重要性を指摘することば。
汝自身を知れ
24
ソクラテスの知的探求のきっかけとなった神託。ソクラテスの友人が巫女の口から受けた神のお告げ。
デルフォイの神託
25
ソクラテスの最も基本的な認識。心理探求の出発点として独断からの脱却の重要性を説く。
無知の知
26
ソクラテスが相手を真理(無知の自覚)に至らせるためにとった方法。自らは答えを出さず、相手に問いかけ、その答えを吟味し、真の知恵を発見させようとするやり方。
問答法
27
人間の心・霊魂のこと。ソクラテスは○○を、人間を人間たらしめる人格的な中心、自らの生き方について判断し、行動する倫理的な主体性の原理とした。
魂
28
ソクラテス及びそれに続く人々が求めた人間の「よさ」を意味するギリシア語。
アレテー
29
ソクラテスの思索のめざす目的で、『クリトン』の中で語られる言葉。徳の定義を求め、徳とは何かを知ることによって、魂に徳をそなえた善い生き方ができると説いた。
善く生きること
30
人間にとって最も大切なことであり、これを知ろうと追求することが哲学の目的。
善美のことがら
31
自らの魂に徳がそなわるようにきづかい、魂が優れたものになるよう世話をすること。
魂の配慮
32
ソクラテスが主張した、悪を悪と知って行うものはいないという考え方。悪い行為は何が善であるかについての無知に基づく。
知行合一
33
ソクラテスの考え方を示すことばのひとつ。知ることが善さと一致することを意味する。
知徳合一
34
ソクラテスが主張した、人間はその善さを実現することが幸福であるという考え方。不正を行うことは魂を傷つけて自らを不幸にする。
福徳一致
35
ソクラテスが裁判において、陪審員である市民に向かって自分の信念を述べる様子を描いたプラトン著作の対話篇。
『ソクラテスの弁明』
36
裁判で死刑判決を受けた獄中のソクラテスのもとへ、幼馴染で親友だった███が訪れ、国外への亡命を進める様子を描いたプラトン著作の対話篇。たとえ不当な評決でも、国法に従うことがポリス市民の義務であると答えている。
『クリトン』
37
理性によって認識できる、個々の現象の背後にあってそれを成り立たせている永遠不滅の真の存在。これらによって構成される世界を英知界と呼ぶ。理性が認識できるのは、理性をもつ魂が、人間という器に入る以前に英知界に存在していたため。
イデア
38
見たり聞いたりする感覚によってとらえられる、絶えず変化する現実の世界。ここにある個々の事物は、不変のイデアを原型・模範とすることで存在できている。
現象界
39
イデア界を太陽の光が輝く外の世界に、現象界を暗い洞窟にたとえた、プラトンの『国家』にでてくる話。人間は、松明の光が壁に映し出す様々なものの影を、実在と思い込む。
洞窟の比喩
40
すべての善いものを善いものたらしめている善そのもの、究極の善の理想。個々のイデアの頂点に位置し、他のイデアをイデアたらしめている。プラトンは、「学び知る最大のである」と述べた(※ソクラテスでいつところの善美のことがら)。
善のイデア
41
プラトンによるイデアを認識する方法で、理性が、かつて存在していたイデアの世界を思い出すということを意味することばとその日本語訳。
想起
42
真の存在であるイデアを恋い慕う精神的欲求を表したプラトンの言葉。人間の魂はつねにイデア界への憧れをもち、感覚的なものを見るごとにイデアの世界を想起し、善美のイデアを求めていく。
エロース
43
考えるという働きをする人間の部分。プラトンによれば、魂の三部分のリーダーであり、善美のイデアを認識して、他の部分に命令を出す。アリストテレスによれば、人間の本質となる部分。また、ストア派のゼノンは、これが万人に平等に認められることを主張した。
理性
44
プラトンの魂の三部分説による、魂の一部分。理性に従って意欲的に行動する部分であって、理性の命令を助け、もう一部分を支える働きをする。
意志
45
プラトンの魂の三部分説による、魂の一部分。本能的で盲目的に行動する部分であって、理性による命令に従うことで善さを発揮する。
欲望
46
プラトンの四元徳の一つで、理性の徳。
知恵
47
プラトンの四元徳の一つで、意志(気概)の徳。
勇気
48
プラトンの四元徳の一つで、欲望の徳。
節制
49
プラトンの四元徳の一つで、魂の三部分がそれぞれに徳を発揮することで、理性を中心にした支配と従属の関係が成り立ち、魂全体が秩序と調和のとれた状態になる徳。
正義
50
魂の三部分説を国家像に対応させた際の、理性に該当する階級であり、知恵の徳を発揮すべき人々。
統治者階級
51
魂の三部分説を国家像に対応させた際の、意志(気概)に該当する階級であり、勇気の徳を発揮すべき人々。
防衛者階級
52
魂の三部分説を国家像に対応させた際の、欲望に該当する階級であり、節制の徳を発揮すべき人々。
生産者階級
53
プラトンの説いた理想国家のあり方。国家が正義の徳を備えた統治者階級が善美のイデアを認識し、それに基づいて防衛者階級と生産者階級を治める必要があり、その役目を担えるのが哲学者だけであると説いた(哲学者による君主政治)。
哲人政治
54
プラトンがアテネの郊外に設立した学園であり、アリストテレスも学んだ。研究と教育を目的とする組織的機関として、近代のアカデミーの語源となった。
アカデメイア
55
恋の神エロースをめぐるプラトンの対話篇。〇〇と読み、酒を飲み語り合う宴会のことで、公開討論会の語源。
『饗宴』
56
毒杯を仰ぐ直前のソクラテスと、獄中に集まった友人たちとの対話篇。イデア論などが述べられており、プラトン自身の思想も混在している。タイトルの人物はソクラテスの弟子。
『パイドン』
57
理想国家を説いたプラトンの対話篇。国家の三部分や哲人政治について触れている。
『国家』
58
アリストテレスが古物を存在させる要素だと説いた、素材という意味のことば。
ヒュレー
59
アリストテレスが主張した、自分に内在し、それが「何であるか」を規定する本質。これが質料の中に潜んでいる状態。可能態(デュナミス)、質料を自らを形成する素材として使いながら姿を現し、完成した状態を現実態(エネルゲイア)という。
エイドス
60
知性の働きの善さに関わる徳。必然的な原理から推論・論証する学問(エピステーメー)やその原理を直感的に把握する知性(ヌース)、制作に関わる技術(テクネー)などがある。
知性的徳
61
知性知徳の一つで、知ることそのものを目的として知ろうとすること。アリストテレスが人間の最高の幸福だとした、心理を純粋に考察すること。セオリーの語源。
観想
62
知性知徳の一つで、学問と知性をあわせもち、物事の原因や原理を求めること。
知恵
63
知性知徳の一つで、善悪を分別し、行動や態度の適切さを判断する実践的な能力。周りの状況に応じた、過不足のない適切な行動を導く能力。
思慮
64
人間の行動や態度の善さに関わる徳。思慮により適切と判断した行動を繰り返して習慣にしたことで身につけるもの。勇気・節制・矜恃・寛大・穏和・機知などが挙げられる。
習性的徳
65
欲求や感情において過度の不足の両極端を避けて、適切な中間を選ぶこと。単純な平均ではなく、その都度の状況に最も適していると判断される具体的な適切さ。
中庸
66
他の目的のために追求されるのではなく、これ自体のために追求される究極の最高善。人間においては、徳をそなえた魂を活動させることであり、すなわち観想的生活を送ること。
幸福
67
人間はその本性により共同体を形成し、様々な仕事を分業して生きる社会的動物であるという、アリストテレスによる人間の定義。
「人間はポリス的動物である」
68
アリストテレスが、最も安定性が高いとした、市民が参加する政治体制。ただし、市民が私利私欲に走り、貧困層の利益のみを追求すると衆愚政治に堕ちる。
共和政治
69
アリストテレスが重んじた、習性知徳の一つ。人柄に優れ、互いに似た徳をもつ者同士に見出される人間性の善さによって結ばれた友情のこと。溺愛と無関心の中庸。
友愛
70
アリストテレスが重んじた習性知徳の一つである正義のうち、法に従う等の一般的な正義のこと。人として正しい行為を行う状態にあることをさす。
全体的主義
71
アリストテレスが重んじた習性知徳の一つである正義のうち、個別具体的な正義にあたる部分的正義の一つ。各人の業績に応じて、地位や報酬を正しく配分すること。
配分的正義
72
部分的正義の一つで、悪を犯した人には罰を与え、被害や損害を受けた人には保障をして、各人の損益特質が平等になるように調整すること。
調整的主義
73
アリストテレスがアテネ郊外に開いた学園。アレクサンドロス大王の支援を受け、多くの標本を収集した博物館や図書館などをそなえた高度な研究機関であった。
リュケイオン
74
アリストテレスの哲学的な講義録。実体は、ヒュレーとエイドスの合成によって成立すると説いた。
『形而上学』
75
アリストテレスの講義録であり、ポリスにふさわしい政治制度について考察している。「人間はポリス的動物である」という人間の定義や、共和政治の安定性について説かれている。
『政治学』
76
アリストテレスの講義録であり、徳の分類や中庸について、徳をそなえた人間の本来の生き方等について説いた倫理学の主著。書名は、この本を編集したとされる息子の名に因む。
『ニコマコス倫理学』
77
狭い意味ではポリス崩壊後に成立した、ギリシア文化とオリエント文化の融合した新しい文化。広い意味では、ヘブライズムに対してギリシア的な考え方全般をさす。
ヘレニズム
78
人類は理性(ロゴス)を有するがゆえに、国家・民族・階級等の社会的制約をこえ、皆平等であるとみる思想。ポリス崩壊後、とくにストア派の思想に見られた。コスモポリタニズム。
世界市民主義
79
宇宙を支配する理性(ロゴス)に従って生きることを説いたストア派など、理性や意志によって自らの感情や欲望を抑制し、道徳的・宗教的な理想の境地に到達しようとした立場。
禁欲主義
80
外界からの刺激によっておこる感情や欲望に心を乱されないことで、ストア派が賢者の理想の境地としたもの。
アパティア
81
ゼノンが説いたストア派の生活信条で、自然を支配する理法(ロゴス)に従って生きることを意味する。
「自然に従って生きる」
82
エピクロスなどによって説かれた、快楽が人生の目的であり、善であるという考え方。ここでいう快楽とは、自然な欲求のこと。
快楽主義
83
エピクロスの説いた、外界から煩わされない魂の平静な境地のこと。飢えや渇きなどに基づく肉体の苦痛がなく、神々や死への不必要な恐れを抱いていない状態。
アタラクシア
84
エピクロスは、心を乱す最大の原因はこれに対する恐れであるとした上で、デモクリトスの原子論を受け継ぎ、これと人間には何の関係もなく、恐れる必要はないと説いた。
死
85
エピクロス派が生活信条としたもので、心を乱す原因となる政治や公共生活を避け、田園の中で魂の平静さを求めて静かに暮らせ、という意味である。
「隠れて生きよ」
86
ストア派の哲学者。共和制を支持し、カエサルと対立、政界から引退。
キケロ
87
後期ストア派の哲学者。皇帝ネロの家庭教師から政治顧問まで務めた。
セネカ
88
後期ストア派の哲学者。哲学を学び、奴隷から解放された後は学園を開いた。『語録』
エピクテトス
89
ローマ皇帝であり、後期ストア派の哲学者。『自省録』
マルクス=アウレリウス
90
新プラトン派の確立者。すべてのものは超越的な一者(ト=ヘン)である神から流出し、また神へと返るという流出説を説いた。
プロティノス